官報資料版 平成11年7月21日




                  ▽土地白書のあらまし…………………………………………………………………国 土 庁

                  ▽毎月勤労統計調査(三月分)………………………………………………………労 働 省

                  ▽単身世帯収支調査結果の概況 ―平成十年度十月〜三月期平均速報―………総 務 庁











土地白書のあらまし


―平成10年度 土地の動向に関する年次報告―


国 土 庁


 政府は、土地基本法第十条の規定に基づき、「平成十年度土地の動向に関する年次報告」及び「平成十一年度において土地に関して講じようとする基本的な施策」(土地白書)を六月一日に閣議決定し、国会に提出した。
 本年の土地白書は、例年同様三部構成となっており、第一部「土地に関する動向」では、まず、近年、我が国の土地市場において、土地の持つ収益力が重視されるようになり、土地を有効利用することの重要性が強く認識されるようになってきたことを踏まえ、各種の有効利用施策の展開と土地市場の整備を通じて、ゆとりある空間利用の実現を進めることが重要であることを指摘している。
 具体的には、大都市における土地の有効利用に不可欠な基盤施設の整備や、収益重視の評価の確立等の重要性、地方における中心市街地の活性化をはじめとする、地域活性化のための土地利用面の取組の重要性などを指摘している。
 次に、土地の有効利用の促進をはじめとする新しい土地政策の推進状況を報告している。具体的には、土地・住宅税制の改善、国土利用計画法の改正等、これまで講じた各般の施策を報告している。
 このほか、土地の利用、所有・取引、地価などの動向についても、最新の状況を紹介している。
 また、土地に関する施策は、第二部「土地に関して講じた基本的な施策」及び「平成十一年度において土地に関して講じようとする基本的な施策」において紹介している。
 以下、第一部の概要について紹介する。

T 土地の動向

<第1章> 土地利用の動向

 我が国の国土面積三千七百七十八万ヘクタールのうち、六七%を占める森林(二千五百十二万ヘクタール)及び一三%を占める農用地(五百四万ヘクタール)は、いずれも微減の状況が続いており、五%を占める宅地と三%を占める道路は、逐年増加傾向にある。
 また、平成九年の土地利用転換面積は、三万六千九百ヘクタールとなっており、特に都市的土地利用への転換面積が減少している。

<第2章> 土地所有・取引の動向

1 土地所有の動向
 我が国の国土のうち、約八五%を占める宅地・農用地及び森林・原野について、所有主体別の状況をみると、平成九年度では、国公有地が三七%(うち国有地が二八%、公有地が九%)、私有地は六三%となっている。

2 土地取引の概況
(1) 土地の売買件数の推移
 土地の売買件数は、平成二年からは減少傾向となり、平成五年には百七十七万件にまで減少したが、近年、大都市圏、特に東京圏においては、旺盛な住宅需要に支えられ、平成五年から四年連続して増加した。平成九年に入ってからは、土地取引は低調に推移し、平成十年においても百七十万件と減少している。
(2) 土地取引面積の動向
 全国の土地取引面積は、平成二年の二十三万九千ヘクタールをピークに減少に転じ、平成五年には十五万五千ヘクタールとなった。その後、緩やかに増加し、平成八年には十六万八千ヘクタールとなったが、平成九年に入り十六万ヘクタールに減少している。
(3) 土地取引金額の動向
 国土庁が推計した土地購入金額は、平成二年には五十九兆三千億円であったものが、地価の下落、取引の減少等から、平成九年には三十一兆九千億円となっている。

<第3章> 地価の動向

1 平成十一年地価公示に見る平成十年の地価動向
 平成十年一年間の地価の動向を概観すると、全国の地価は、これまで下落幅が縮小傾向にあったが、住宅地・商業地ともに、その幅を拡大し、住宅地は△三・八%、商業地は△八・一%となった。この傾向は、地方圏よりも大都市圏において大きく、大都市圏の商業地の下落率は再び二桁台となった。

2 大都市圏の地価動向の特徴とその要因
 住宅地は、すべての地域で下落幅が拡大しており、東京都多摩地域 (△七・四%)、千葉県(△九・一%)、南大阪地域(△八・三%) 等で、大きな下落が見られた。東京圏、大阪圏では、都心部の下落幅に比べ、郊外部の下落幅が大きくなっている。
 商業地は、ほとんどの地域で下落幅が拡大しており、千葉県(△一四・九%)、京都市(△一二・〇%)、名古屋市(△一四・九%)等で、大きな下落が見られた。東京圏では郊外部の既成商業地での下落幅が大きく、大阪圏や名古屋圏では、都心部の中心商業地での下落幅が大きくなっている。なお、平成十年公示で上昇又は横ばいを示した東京都区部都心部の一部の高度商業地では、その多くが引き続き安定基調で推移した。
 このような地価動向の要因としては、住宅地については、景気の低迷に伴い、今後の雇用や所得に対する不安をはじめとする先行き不透明感が強まり、需要層の買い控えや模様眺めの傾向が生じていることが挙げられる。特に東京圏、大阪圏に共通にみられる点として、都心部では、近年、地価の下落が相対的に著しく、生活・通勤の利便性や住環境に優れた都心部の物件を中心に値ごろ感が出てきたことから、良質な住宅に対する根強い需要を背景にマンション供給が進んだが、反対に、郊外部では、通勤遠隔地やバス便などの利便性に劣る物件を中心に需要が減退し、供給過剰感が生じていることなどが挙げられる。
 また、商業地については、景気の低迷による消費の冷え込みによる収益の悪化、企業のリストラに伴うオフィス需要の減少、厳しい金融情勢下での設備投資の縮小など、需要側からの下落要因が一段と強まったことなどが挙げられる。このような中で、東京都区部都心部の収益性や立地条件を兼ね備えた代表的な高度商業地では、根強いオフィス需要が存在し、収益力に見合った価格水準になっていることなどが反映していると考えられる。

<第4章> 土地に関する指標の動向

1 地価と経済指標の推移
 地価高騰期前の昭和五十八年を基準とした指数で、近年の公示地価と名目国内総生産の推移をみると、公示地価は、昭和六十二年から三大圏を中心に高騰しはじめ、平成三年公示では、昭和五十八年公示の二倍から三・四倍の水準にまで上昇し、平成四年公示からは下落に転じた。平成十一年までの八年間に、全国住宅地価格でも二六・五%、三大圏商業地価格に至っては六八・四%下落した。

2 土地資産の動向
 平成九年末の我が国の国民総資産は七千四百二十二兆三千億円であり、土地資産はこのうち一千六百五十九兆一千億円となっており、金融資産の三千九百七十兆八千億円に次ぐ大きさとなっている。国民総資産に占める割合では、土地資産の割合は平成三年以降、地価の下落を反映して次第に低下し、平成九年末には二二・四%となっている。

3 住宅市場の動向
 住宅の着工戸数の推移をみると、地価が高騰した昭和六十二年から平成二年までは毎年約百七十万戸程度の供給が行われていた。平成三年には減少したものの、その後はおおむね増加傾向にて推移し、平成八年には、消費税率の引上げに伴う駆け込み需要等の影響により百六十万戸を超える着工戸数があった。
 しかしながら、平成十年においては、今後の雇用や所得に対する不安をはじめとする先行き不透明感が強まる中、急減しており、対前年比一三・六%減と百二十万戸を割り込んでいる。
 なお、住宅・土地税制の改正、住宅金融公庫融資の貸付条件の改善などの施策により、平成十年末以来、大都市圏を中心に住宅市場に活況がみられる状況になりつつある。
 また、平成十年に新規に供給されたマンションのうち、都心から十五分以内のマンションの割合は全体の五・二%を占め、近年増加傾向にあるが、都心から四十五分以内では全体の五三・九%を占めており、郊外から都心部への回帰傾向がみられる。

U 我が国社会経済と土地問題

<第5章> 土地を取り巻く状況の変化と土地の有効利用のための課題
 ―ゆとりある土地利用の実現に向けて―

第1節 最近の土地を取り巻く状況の変化と課題

1 我が国の土地を取り巻く状況の変化
 高齢化・少子化、第二次産業からサービス業を中心とする第三次産業へのシフト、経済のグローバル化など、中長期的に大きな動きがみられる中、今日の我が国の土地市場は、景気の低迷等の経済状況を反映して、地価は依然として下落が続き、土地取引も近年減少している。
 この背景として、土地市場における需給関係の構造的な変化、すなわち需要側がよりコストパフォーマンスの良いものを選択することのできる、いわゆる買い手市場への変化を指摘する声が強い。
 買い手市場においては、土地の有する収益力が重視され、有効利用を促進することが重要な課題となる。

2 我が国の土地利用上の課題
 土地の有効利用を進めるうえで、大都市の既成市街地の再編が大きな課題になっているが、大都市の既成市街地では、防災上、環境上、問題のある木造密集市街地や、産業構造の転換に伴う工場跡地等の有効利用の問題が指摘されており、今後、基盤施設の整備と狭小敷地の課題に取り組むことが必要である。
 他方、地方においては、都市部の中心市街地の空洞化が深刻な問題となっており、活力ある商業空間を再生することが期待されるとともに、都市近郊における都市的土地利用と農業的土地利用の調整の問題や、農山村における耕作放棄地などの問題に対処するため、地域の活性化のための土地利用の実現への取組が必要である。

3 土地市場の条件整備等
 また、あわせて、収益重視の評価手法の確立、土地情報の開示・提供の充実、不良債権担保不動産を含む低・未利用地の利用の実現等、土地の有効利用を進めるうえでは土地市場における条件整備等が不可欠である。

第2節 国民及び企業の土地に関する意識の動向

 国土庁が実施した「土地問題に関する国民の意識調査」(平成十一年一月に全国の二十歳以上の者三千人を対象に実施。回収率七一・一%)、「土地所有・利用状況に関する企業行動調査」(平成十一年一月に資本金一千万円以上の企業九千社を対象に実施。回収率三四・八%)及び「都心居住の実態に関する調査」(平成八年及び九年に東京都区部において分譲されたマンションの購入者約三千人を対象に、平成十一年二月に実施。回答率三二・〇%)等の調査結果。

1 国民及び企業の土地資産に関する意識
(国民の土地資産の有利性に関する意識)
 土地の資産としての有利性の意識に関して、「土地は預貯金や株式などに比べて有利な資産である」と考えるか尋ねたところ、「そう思う」と回答した割合は、前回調査より一二・二ポイント減少して三七・〇%、「そうは思わない」と回答した割合は三四・〇%となり、両者の比は一対一にかなり近接した形となった(第1図参照)。
(土地の所有・利用に関する国民の意識)
 土地の所有に関する意識について、住居である「土地・建物については、両方とも所有したい」とする者の割合は八三・二%と依然として高いものとなっており、国民の持ち家志向は根強いものがある。その理由としては、「自分で所有していると自由に使え、安心だから」(八一・九%)が最も多くなっている。
(企業の土地資産に関する意識)
 企業の土地資産に関する意識について、土地の担保価値の上昇を生かした資金調達や、含み資産を背景とした設備投資等を内容とした、いわゆる含み益依存型の経営に関してみると、「今後、改めていく必要がある」とする割合は年々増加し、今回調査では六六・〇%と、前回調査よりさらに四・九ポイント高くなっている。
(土地の所有・利用に関する企業の意識)
 企業の土地・建物に関する所有・利用意識について、所有と借地・賃借とではどちらが有利と思うか尋ねたところ、「所有が有利」とする割合と「借地・賃借が有利」とする割合は、いずれも四二・九%となり、今年の調査で同数となった(第2図参照)。
 所有が有利と考える理由で一番多い回答は、「事業を行う上で自由に活用できるため」(六八・八%)であり、借地・賃借が有利と考える理由で一番多い回答は、「事業所の進出・撤退が柔軟に行えるため」(五八・五%)となっており、土地の活用面に着目したものへと変化しつつある。
(まとめ)
 国民・企業ともに土地を有利な資産とする意識は薄れているが、国民の間には、土地・建物を所有しておきたいという意識は依然として強く、これに対し企業においては、土地に関する所有意識はそれほど強くはないものの、厳しい経済状況を踏まえた土地に関するコスト意識が強くなってきており、利用価値に着目して土地を活用するという方向が強くなってきている。

2 土地の取引に関する意識
 近年、土地取引件数の減少がみられるが、個人については、雇用や所得に関する先行き不安感等を背景にした住宅需要の減少が影響しているとみられる。
 次に、企業については、取引が減少した背景をみると、土地取引に至らなかった理由として、購入側では「資金手当ができなかったり、資金的な余裕がなかったりしたため」(四一・五%)、売却側では「売却損が発生するため」(四五・七%)という企業の財務面での理由が、今回は最も多くなった。

3 居住に関する意識
(国民の居住に関する不満)
 国民の居住に関する意識について、まず、現在の居住に関する不満についてみてみると、「何らかの不満を有している」と回答した者が五〇・八%、「特に不満はない」と回答した者が四八・九%となっており、地域別では、大都市圏、特に東京都区部で不満の割合が高くなっている。
 不満を内容別にみると、「住まいが狭かったり、部屋数が少ない」(一八・一%)、「住まいが老朽化している」(一四・八%)、「交通の便が悪かったり、公共施設整備が遅れている」(一三・二%)といったものが多い。
 広さに関する不満については、年齢別では三十代の不満が高くなっており(二七・六%)、家族が増える時期、子供が成長する時期に、広さに関する不満が高くなっているのではないかと推測される。
 持ち家と借家に分けて比較してみると、住居の広さに関する不満は借家に多く三六・九%となっているのに対し、持ち家では一二・二%にとどまっている。
(住居の住み替えに関する意識)
 実際の居住の選択において、どのような行動がとられているのかをみていくと、まず住み替えを考える理由で、最も多いのは「住まいが狭かったり、部屋数が少ない」(二九・〇%)となっており、交通・買い物の便などの利便性や、大気汚染などの環境問題はそれほど高くはなく、持ち家を持つための住み替え(二六・五%)や、転勤・転職を理由とするもの(一七・三%)のウエイトが高い。住み替え理由としては、家族の成長に合わせ、狭い借家から持ち家へといったライフサイクルに伴うものが大きな要因となっているものと考えられる。
(都心居住者の意識)
 東京都区部に居住していた者で、最近都区部内でマンションを購入し住み替えを行った者の、居住に関する購入前と購入後の不満についてみてみると、
@ 購入前の不満で最も高いものは、「建物の狭さ・部屋数」(六三・八%)となっており、次いで、「住居費・駐車場代などが高い」(三一・九%)が高くなっているが、このほか「日当たり」(三一・五%)、「騒音の問題」(三一・五%)といった環境に関するものが高い割合を示している。
A 購入後の不満で最も高いものは、「住居費、駐車場代などが高い」(三二・九%)となっており、経済面での不満が依然として高く、次いで、「部屋からの眺望」(三一・九%)、「日当たり」(二九・六%)など、環境に関するものが高い割合を示している。「建物の狭さ・部屋数」についての不満の割合は、購入前に比べると半分以下に減っているものの、依然二六・三%と低くはなく、一方で「駐車スペースの数」(二三・四%)、「駐輪スペースの数」(二一・五%)などについての不満が高くなっている。
(まとめ)
 国民の居住に関する意識についてみると、良質な住宅ストックを求める要望は根強いものがあり、実際の住み替えに当たっては、広さについては一定程度改善されているが、住環境については不満が解消されておらず、今後このような点も踏まえ、良質な住宅の供給を促進していくことが必要である。

第3節 大都市における土地の有効利用の課題

1 大都市の土地の利用状況
 大都市の土地利用の状況と土地の有効利用の課題について、東京都区部を例として考察する。
(1) 土地利用の概況
 東京都区部の土地利用面積を利用目的ごとにみてみると、住宅等用地が三五・五%と約三分の一を占めており、道路は一八・三%、公園・運動場は六・一%となっている。このような土地利用の状況をニューヨーク市と比較すると、住宅等用地の面積割合はあまり差がないのに対し、道路や公園等の都市基盤施設に十分な土地が配分されていない状況にあるということができる(第3図参照)。
(2) 空間利用の概況
 東京都区部においては、建築物の平均階数が二・三階であり、実容積率(建物延べ床面積/宅地面積)の全平均は一二九・五%、指定容積率に対する実容積率の割合(指定容積率充足率)は五二・五%となっている。
(3) 土地の有効利用に向けての課題
(都市基盤施設の不足)
 上記のように、東京都区部において低層な市街地が広がっている原因としては、道路等の都市基盤施設の不足が挙げられる。
 震災復興区画整理事業が施行された地区と未実施の地区をとり、両者の市街地の状況を比較すると、道路基盤の整備状況の違いを反映して、基盤整備済みの地区のほうが高い指定容積率が指定されている。さらに、指定容積率の活用度合いについても、基盤整備済みの地区のほうが比較的高くなっており、道路整備の状況が、指定容積率が実際にどれだけ利用できるかに大きく影響していることがうかがえる。
(狭小敷地の活用の課題)
 道路等の都市基盤が整備されている地域においても、狭小な敷地においては、指定容積率すべてを利用できない場合があり、また、十分な空地をとることが難しい。ここでは敷地の統合化が、利用可能な容積率と空地の面積や形状に対してもたらす効果について、モデル的な試算により検証する。
 調査対象街区の概要:
 東京都中央区の震災復興区画整理事業施行区域にある街区で、商業地域に指定されており、容積率は七〇〇%、建ぺい率は八〇%となっている。また、防火地域内にあり、耐火建築の建ぺい率については一〇〇%まで認められている。
 当該街区において、個々の敷地にそれぞれ建築するケース(通常ケース)と、敷地を統合して一体的に利用するケース(統合ケース)を設定し、街区全体としての利用可能な最大床面積と街区内の空地の状況について試算を行った結果は、以下のとおりである(第4図参照)。
@ 通常ケースでは、街区としてみると指定容積率をかなり余している。それに対し、統合ケースでは、指定容積率をいっぱいまで使うことが可能である。
A 各敷地の建築物と空地の関係をみると、通常ケースでは、空地の面積は少なく、かつ、小さく分断されてしまっている。それに対して統合ケースでは、指定容積率をいっぱいまで活用しながら、建ぺい率を低く抑えることにより、広い空地を確保することが可能である。
B 統合ケースでは、一体的にとられた空地とあいまって、良好な景観の形成が期待できる。
(まとめ)
 大都市においては、都市計画道路等の都市基盤整備を重点的に実施するとともに、街区単位での敷地の統合利用の一層の推進が必要であり、そのための施策の展開が重要性を増していると考えられる。

2 大都市における土地利用変化の状況
(土地利用の変化の概況)
 いわゆるバブル崩壊以降の土地利用の変化の動向を定量的にみると、東京都区部では、平成三年から八年の五年間に、全体の約一六%の土地において土地利用の転換がなされており、バブルの時期(昭和六十一年〜平成三年)に比べ、転換のスピードは若干ながら速まっているということができる。特に、低・未利用地については、平成三年に存在したもののうち約四割が平成八年には低・未利用地以外に転用されており、利用が進んでいるといえる(第5図参照)。
 東京都区部における利用目的ごとの土地利用面積の平成三年から平成八年の間の増減をみると、事務所建築物をはじめとする商業系の土地利用と集合住宅が大きく増加している一方で、工業系の土地利用の減少が目立っている(第6図参照)。
(東京都区部における中高層の集合住宅の動向)
 近年、いわゆる都心居住の動きが進みつつあるが、平成十年に東京都区部で民間が分譲した中高層の集合住宅のうち、良好な住居環境の維持形成を図るべき「住居専用地域」以外の地域に立地しているものが四分の三を占めている。また、住居専用地域では認められていない四〇〇%以上の高い容積率が指定されている地域に三分の一以上が立地している。
 指定容積率の高い地域では、敷地面積が小規模な中高層集合住宅が多く、それらの多くは商業施設や事務所から転換されたものである。このようなものには、いわゆる「ペンシルマンション」と呼ばれる、周囲に十分な空間を持たないものが多く、住環境の優れた永住型のものとは必ずしもいえないものが多いと考えられる。
(住環境の良好な中高層の集合住宅の供給に向けて)
 これに対し、近年の大規模な中高層集合住宅開発の事例をみると、@公開空地等の広いオープンスペースを有し、道路や公園の整備が行われるとともに、周辺の都市計画やまちづくり構想等と調和のとれた開発となっている、A計画に当たっては、地元の区等の行政側ときめ細かい調整がなされている、といった特徴がみられる。
 今後は、広いオープンスペースを有し、住環境の良好な中高層集合住宅の立地を進める観点からも、先に述べた敷地の統合利用の推進に向けての取組や、総合設計制度の一段の活用、都市基盤整備と一体となった集合住宅供給プロジェクトの推進等が望まれる。

3 低層密集市街地の整備
 大都市の既成市街地には、防災上の問題を抱える低層密集市街地が広範囲に存在しているが、このような低層密集市街地の整備に当たって、地区計画を活用するケースが近年みられるようになっていることから、低層密集市街地の整備に地区計画を活用した事例を、スプロール市街地における事例と比較しながら紹介する。
 低層密集市街地である世田谷区A地区においては、地区計画で道路を地区施設として位置づけることについて住民の合意が得られず、三路線について壁面線を指定、道路拡幅用地として十八箇所を買収している。壁面線を指定している路線については、現在のところ整備が完了している路線はないが、建替えによる壁面後退や転出に合わせた買収により、整備が着実に進んでいる。
 スプロール市街地である練馬区B地区においては、地区計画に、十七路線の道路が地区施設として位置づけられている。@農地等が多く残っていること、A宅地の敷地規模が世田谷区A地区と比較して大きいため、敷地の一部を都市計画で道路用地として位置づけることについて、沿道住民の合意を得ることができたことが理由であると考えられる。さらに、地区計画決定後、地区内で六十九件の新築、建替えが行われており、先行的な区画道路の整備が、それらの建築活動を支える一因となっていると考えられる。
 低層密集市街地の整備にあたって地区計画を活用した場合は、地区住民の合意内容を都市計画に反映できるという利点はあるが、低層密集市街地は地区内の権利者数が多く、また権利関係も複雑なことから、都市計画制限のかかる地区計画で、地区施設を位置づけたり、建築物に対する制限を行うことは、一般的には容易なことではないといえる。

第4節 豊かで魅力ある地域づくりの課題

 本節では、地方都市の中心市街地の再生に向けた課題や、都市近郊における都市的土地利用と農業的土地利用の調整、農山村の活性化などのための地方自治体の取組をみながら、豊かで魅力ある地域づくりのために必要な土地政策上の課題についてみていきたい。

1 中心市街地の再生に向けて
 中心市街地の空洞化の問題は、地方都市を中心に大きな土地利用上の問題となっており、政府においては、「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律」を平成十年六月に制定し、中心市街地活性化のための総合的な施策の推進に努めている。
 ここでは、近年郊外部に大型店舗の出店が目立つ一方、市の中心部における小売業店舗数の減少が著しく、平面駐車場や空き家などの低・未利用地が目立っているA市の中心市街地を例に、その活性化のための新規の事業投資を促進する条件等について考察する。
 A市の中心市街地では、郊外部における大型店舗との競合関係がみられることから、中心市街地の商業地への賃貸ビルの投資を促進するため、郊外部に大型店を出店した場合と同じ期待収益率になるよう、当該賃貸ビルのテナントに対する賃料収入を試算すると、賃料を約一二%程度上げ、またテナント側はこの賃料を負担するには、販売高を約一一%程度向上させる必要があると考えられる。
 このような厳しい状況下において、新規投資を促進する環境を創出していくためには、今後とも、民間企業側においては、販売コストの削減等により、収益性の向上に努めることが求められると同時に、モータリゼーションの進展等、今日的な課題に対応した商業地の形成を図っていくため、中心市街地整備改善活性化法に規定する基本計画に基づき、市街地の整備改善と商業等の活性化を一体的に推進していくことが重要になってくるものと考えられる。

2 豊かで活力あるまちづくり、地域づくりと土地利用計画
(1) 土地利用計画におけるまちづくり、地域づくりの取組
 今後、地方分権の流れの中、土地利用に関連する行政についても、市町村の役割が大きくなることが予想されるが、すでに一部の市町村では、地域の固有の実情を踏まえた土地利用計画の策定等、適正かつ合理的な土地利用を推進するための取組がなされている。
(三重県名張市における土地利用調整の取組)
 三重県名張市は、居住人口の減少等が現在懸念されていることから、住み続けていきたいと感じることのできるまちづくりに取り組んでいる。
 名張市では、市の土地利用の在り方を示す基本的かつ総合的な計画となる「名張市土地利用マスタープラン」(以下「土地利用マスタープラン」という)を積極的な住民参加を図りつつ策定した。市全域を七つに区分し、それぞれに基本的な土地利用方針を定めている(第7図参照)。
 土地利用マスタープランは、市域全体としての土地利用の望ましい方向を明らかにしたものであり、今後、各街区や集落など小単位の地区で策定することとされている地区詳細計画及び各種土地利用計画の指針として機能する、最も基本的な土地利用計画として位置づけられている。
 なお、地区詳細計画においては、地区の特性や実情に応じたまちづくりを行うに当たっての具体的な土地の利用方法や規則を、地域の住民が中心となって定め、これにより住民合意の下でのきめ細やかな規制誘導を行うこととしている。
 名張市においては、以上のような総合的な土地利用計画の策定と、それを基本とした土地利用の適正な調整と併せて、人的・物的な面や情報の提供などについて行政側が適切に支援することにより、住民自治の振興を基本とした、行政と住民のパートナーシップによるまちづくりを推進することとしている。
(2) 市町村レベルにおける総合的な土地利用計画の策定に向けて
 市町村においては、その市町村がおかれている様々な具体的状況に最もふさわしい土地利用の誘導・規制がなされることが望ましいが、土地利用上の問題に対処するため策定された条例・要綱についてみると、最近地域における住民の多様なニーズに応えるためのまちづくり関係のものが多く見受けられるようになってきている。
 このような条例等においては、まちづくりの手法として、市町村全域を対象とした詳細かつ総合的な土地利用計画を策定し、目指すべき土地利用の方向へ誘導しようとするものが増加している。
 条例・要綱に基づく土地利用計画の策定は、計画内容に対する実効性の担保という面での有効な手段の一つであるが、このほかにも、市町村独自の市町村全域の土地利用の指針的なものを定めるもの、地域において住民合意により土地利用に関する協定を計画に定めるものなど、各地域の実情に応じた多種多様な土地利用調整への取組がなされており、今後一層の展開が期待される。

第5節 土地市場の条件整備等

 本節では、土地市場の構造的な変化を踏まえ、有効利用の促進に向けた土地市場の整備等のための課題について考察する。

1 収益を重視した不動産の鑑定評価
(1) 収益性重視の背景
 右肩上がりの地価上昇を期待することができなくなりつつある現在、特に商業地の需要者は、不動産の持っている収益力を判断して、その収益力にふさわしい価格で取引しようとする行動をとりつつある。実際の地価動向をみても、大都市の高度商業地の地価は、基本的にその不動産の持つ収益力を反映した水準で推移しつつある。このような状況を背景に、商業地の不動産の評価においては、収益還元法を重視して不動産を評価すべきであるとする動きが強まりつつある。
(2) 収益重視の不動産鑑定を行うに当たっての課題と検討の方向
 収益還元法を重視する動きとして、昨年四月の総合経済対策を受けて、(社)日本不動産鑑定協会が国土庁と協力して、不動産鑑定士等が不良債権の担保不動産の鑑定評価を行うに当たって、対象不動産が有している収益力を価格に的確に反映させることを基本とすることなどを内容とする留意事項を取りまとめるなどの取組が行われている。
 我が国においては、収益還元法を現実に適用するに当たって、現時点では以下のような課題などが指摘されている。
・賃料や売買価格に関する情報が入手しにくいため、還元利回りなどの適用数値の的確な設定に難しい面があること。
・商業用不動産に関する賃貸借慣行から、不動産の長期的な収益見込みが立てにくい面があり、将来のリスクの設定が難しい面があること。
 今後、より精度の高い収益価格の算定のためには、評価手法の精緻化とともに、より的確な鑑定評価のための条件整備、とりわけ適切な還元利回りを求めるため、不動産市場において賃料や売買価格に関する情報を入手することができるような条件整備を行うことが不可欠である。

2 不動産の証券化の推進
 土地の有効利用により既成市街地の再構築などを進めていくためには、有効利用に向けた不動産関連投資に必要な資金の円滑な確保を図ることが重要である。「不動産証券化」は、このような投資促進のための一つの手法であるが、この取組の一つとして、平成十年六月、「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(SPC法)」が公布され、同年九月に施行された。
 同法の施行により、@特定目的会社の設立を通じて、不動産等の特定資産を裏付けとした有価証券の発行が可能になるとともに、A資産流動化計画の策定及びその開示等により投資家の保護が図られるなど、不動産の証券化を通じた流動化のための法的な枠組みが整備された。
 今後、不動産の証券化のスキームを使って不動産投資を活性化させていくためには、投資家に対し、当該証券の利回りに関する的確な指標が与えられることが重要であり、不動産投資関連業務の高度化を図るとともに、不動産関連情報の整備等を図っていくことが、不動産の証券化を進めていくための環境整備に資するものと考えられる。

3 土地情報の開示・提供
(土地情報開示・提供の必要性)
 土地市場の構造的変化に伴い、土地に関する正確かつ詳細な情報の必要性が高まっており、特に土地に対する投資を行おうとする者にとって、その土地の収益に関する情報は、投資を判断する上で欠かせない情報となっている。しかし我が国では、プライバシーを侵害するおそれがあるのではないかという懸念や、守秘義務の問題から、行政機関や民間機関による個々の土地に関する売買価格や賃料といった情報の提供は、ほとんど行われていない状況にある。
 「外資系資本による不動産投資の実態と意識に関するアンケート調査」(国内に所在する外資系企業約三千二百社を対象に、平成十一年一〜二月実施。回収率二六・五%)においても、我が国の不動産の取引に関係するシステムのなかで不満足な点として、「賃貸料や売買価格といった不動産取引情報の公開」との回答が多く(七〇・一%)、このような情報の不足は、情報が不明確なものほど低く評価するというルールを前提とすれば、我が国の土地に関する評価を不当に下げることになりかねない要素を有している(第8図参照)。
 以上のような現状を踏まえ、今後、我が国において、土地情報の開示・提供のあり方について検討を進めていく必要があると考えられるが、その際には、プライバシー等の問題について配慮するとともに、どのような形で情報の収集及び提供に当たることがその目的・趣旨等からみて適当であるのかという点について、諸外国の例も参考にしつつ検討していく必要がある。
 なお、欧米諸国の例では、行政機関による売買価格の開示の状況は様々であるが、情報の入手が可能になっている国がかなり多いのも事実である。これに対し、賃料に関する情報については、行政機関が開示・提供している例は少なく、売買価格とは扱いが異なっていることがうかがえる。

4 不良債権担保不動産を含む低・未利用地の有効利用
 東京都の調査によると、都心四区の低・未利用地の総量は、バブルの崩壊後減少し、平成八年にはバブル前の昭和五十六年の量にほぼ近づいており、総量でみる限り、バブル期に生じた低・未利用地が大量に残存している状況は見られない(第9図参照)。
 これらの低・未利用地については、画地数でみると、小規模な二百平方メートル未満のものの全体に占める割合は約五〇%と極めて高いが、総面積では全体の約一五%となっている。
 さらにこれらの低・未利用地のうち、国土庁等が調査したところでは、抵当権が設定されているものの割合は、全体の四割程度となっている。
 千代田区神田地区等で昭和六十一年、平成三年、平成八年のいずれかの時点で低・未利用地とされた土地の平成十一年二月時点での有効利用の状況等について、抵当権、敷地条件との関係でみてみると、
@ 過剰債務が存在している状況のままでは、有効利用は難しいこと
A 抵当権等の設定が行われていない場合でも、敷地が狭小又は不整形である等条件の悪いものは、そのままでは有効利用は進んでいないこと
等がうかがえた。

V 土地政策の推進

<第6章> 土地の有効利用に向けた施策の推進

第1節 土地政策の基本方向

(新総合土地政策推進要綱の決定)
 平成九年二月十日に、政府は新総合土地政策推進要綱(「新要綱」という)を閣議決定し、土地政策の目標を地価抑制から土地の有効利用へと転換した。
 新要綱に基づき、都市計画法・建築基準法の改正による容積率規制の緩和や、容積率の引き上げ等を行う高層住居誘導地区の創設、低・未利用地の散在する既成市街地内の再整備を進める敷地整序型土地区画整理事業の創設等の諸施策が推進されている。
(土地の有効利用促進のための検討会議提言)
 平成九年十一月十八日に、政府の関係閣僚と与党の政策責任者により構成される「土地の有効利用促進のための検討会議」において、その提言が取りまとめられた。同提言においては、当面、バブル期に講じられた措置の見直しの検討を図るとともに、バブル期に生じた土地利用の混乱の回復など市街地の再生・整備のための措置を講ずることや、土地取引の活性化を図ること等が示されている。
 この提言を受け、平成十年度の土地税制改正において、地価税の課税の停止等、所要の見直しが行われたところであり、また、国土利用計画法に基づく届出勧告制の改善など、法制度の見直しを含めた諸施策が推進されている。
(土地の有効利用・取引の活性化に向けた施策の展開)
 景気の低迷を反映して、住宅地を中心に需要が潜在化し、平成九年夏以降、土地取引件数が急速に減少した。また、バブル期に生じ、塩漬け状況となっているいわゆる虫食い土地についても、その流動化を促進する必要性が指摘されるようになってきた。このため、政府は、住宅金融公庫の金利の引き下げなどの貸出し条件の改善を図るとともに、平成十一年度税制改正において、住宅ローン控除をはじめとする税制改正を決定するなど、需要の拡大を図る観点からの施策を講じてきた。
 また、不良債権担保不動産についても、その流動化を図る観点から、平成十年四月の総合経済対策及び金融再生トータルプランに基づいて、@債権債務関係の迅速・円滑な処理策の実施と併せて、A土地の集約化と都市再開発の促進、B都市再構築のための公的土地需要の創出などの施策の実施に努めている。
(土地政策審議会提言)
 最近の社会経済構造の変化を踏まえ、土地に関する諸制度の中には、見直しを行う必要のあるものが生じてきており、平成十一年一月十三日に土地政策審議会において、国土庁長官の要請を受け、@住宅ローン減税のあり方、A流通課税の改善の方向、B収益を重視する方向での不動産鑑定評価制度の確立、C土地情報の開示・提供の仕組みの整備、D大都市の既成市街地の再編の方向(虫食い土地の集約・整理・再編・活用策を含む)、E総合的な土地利用計画制度の実現の方向について意見を取りまとめた。

第2節 土地利用計画の整備・充実

 適正な土地利用に当たっては、適正かつ合理的な土地利用計画が立てられ、それに即した利用が図られることが不可欠である。特に目指すべき土地利用の実現という観点から、市町村における総合的な土地利用計画と、その市町村において目指すべき土地利用の姿へ誘導するための地区ごとの詳細な計画を策定し、その有機的な連携を図ることが必要である。
 土地の有効利用の前提である総合的な土地利用計画の整備・充実を図るため、都道府県における土地利用に関する総合計画である土地利用基本計画の充実強化の一環として、市町村レベルにおいて土地利用の誘導方向等を示す土地利用調整基本計画や、地区住民による土地利用調整に関する協議会の設置等住民の参加の下に地区レベルにおいて土地利用のあり方やそれに向けての整備手法等を示す地区土地利用調整計画の策定等を推進している。

第3節 低・未利用地の有効利用の促進等

1 国土利用計画法の遊休土地制度
 国土利用計画法の遊休土地制度については、遊休土地制度の円滑な運用及び国土の合理的な利用の推進に資するよう、遊休土地等の利用又は保全の方向付けを行う遊休土地等利用促進計画の作成を市町村等に対して推進しており、平成十年度より、市町村等が遊休土地等の所有者に対してコンサルタントを派遣できることとしている。

2 市街化区域内農地を活用した計画的なまちづくりの促進等
 最近の市街化区域内農地については、小規模な農地が基盤整備が不十分なまま散在し、宅地化する農地と保全する農地とがモザイク状に混在している。この場合、いわゆるスプロール開発を防止しながら、農と住の調和したまちづくりを進めることが重要であり、土地利用計画に従い、良好な環境の形成に配慮しつつ、その有効利用を促進することが必要である。
 このため、道路等の基盤整備を進めつつ、宅地化する農地と保全する農地をそれぞれ有効に活用するための事業手法、支援措置が必要となっている。
 農住組合制度は、農地所有者等の自発的発意により設けられる農住組合が、まちづくりに必要な基盤整備から住宅建設や当面の営農の継続に必要な農地の利用・保全事業等を一貫して行うもので、市街化区域内農地における農と住の調和した良好なまちづくりを進めるため、財政的支援措置の拡充等を行い、同制度の積極的な活用を図っていく必要がある。

3 定期借地権制度の活用
 定期借地権制度は、「土地の所有から利用へ」というこれからの土地政策の理念に合致する制度であり、土地の有効利用の観点から、その幅広い活用が期待されている。これまで主に個人所有の土地等を活用した定期借地権付き住宅の供給が、主に民間事業者によって行われているが、今後はさらに本制度の地方公共団体等による活用や、法人所有の低・未利用地等での活用が期待される。

第4節 土地に関する情報の整備・提供

1 土地取引情報等の整備・提供
 適切な土地取引が行えるような条件を整備するためには、土地取引に関する情報の収集、整理、分析及び提供が重要である。
 このため、国土利用計画法に基づく届出情報の整理・分析を行うためのデータベースの整備を進めるとともに、登記簿等を利用して土地取引状況等を把握する土地取引規制基礎調査についてマニュアル化を推進する等の充実を図った。
 また、土地取引の活性化に資するため、国、地方公共団体等が保有する土地情報の集約化及び提供方法を検討し、公開可能な土地情報については、インターネットを通じて提供するとともに、取引価格など民間の非公開情報について、公開の可能性及び収集・整理・提供の仕組みを検討することとしている。

2 地価に関する情報等の整備・充実
 地価に関する情報等については、短期地価動向調査及び事務所賃料調査の実施・公表を行うとともに、地価公示による公示価格及び都道府県地価調査による基準地価格についても、インターネットを通じた情報提供を行っている。引き続きこれらの調査の精度の向上を図るとともに、さらに大都市の高度商業地において、モデル的に一定の地点を選んで、現実の複合不動産の収益価格の算定・公表を行うこととしている。

3 法人土地基本調査等の充実・実施
 土地に関する諸施策の基礎資料を得ることを目的として、法人が所有する土地の現状を把握するために、法人土地基本調査を平成十年十一月に指定統計調査として実施した。今後、集計、分析を進め、平成十一年度に速報、平成十二年度に報告書を公表する予定である。

4 国土調査の推進
 国土調査については、現在、第四次国土調査事業十箇年計画に基づいて計画的かつ着実な推進を図っているが、未調査地域も多く残されており、また社会経済状況の変化に即した調査内容の追加や見直しも望まれている。現行の十箇年計画は平成十一年度が最終年度であることから、今後の国土調査の推進方策についての検討を進めていく必要がある。
 地籍調査の進捗状況については、都市部が立ち遅れており、官官・官民境界のみの調査・測量を先行的に実施する手法や、開発事業等の際の調査・測量の成果を有効に活用する手法を導入することが有効であり、今後、これらの手法の導入がさらに進むよう、促進方策を検討する必要がある。このほか、今後の地籍調査の実施に当たり、境界確認等の作業について、市町村の負担を軽減する方策を検討することや、市町村における地籍情報の管理体制を整備しつつ、地籍調査の利活用を一層推進していくことが必要である。

5 地理情報システム(GIS)の整備等
 現在、一部の市町村では、既にGISを導入し、固定資産税に係る事務の効率化、都市計画業務、農地管理等、様々な分野で利用されているが、今後、より多くの市町村でGISが導入されるには、多くの部門で共通に利用できるような地図データからなる基図の迅速な整備・活用等が必要である。
 この基図の整備を一層促進する観点から、基礎的な地図データの一つとして地籍図の整備が急がれている。さらに、進捗の遅れている地域においては、土地区画整理事業等、他事業による確定測量の成果の積極的活用や、必要最小限の情報である官官・官民境界の先行的調査等を進めることが、基図の迅速な整備上求められている。
 また、政府においては、GISの効率的な整備及びその相互利用の推進に関する政府部内における取組を、関係省庁間での緊密な連携の下で進めるため、地理情報システム関係省庁連絡会議を通し、国土空間データ基盤の整備・標準化を進めるとともに、その相互利用のための環境づくりや、個人情報の保護等、GISの整備・活用に伴う諸課題についても検討を行い、「国土空間データ基盤標準及び整備計画」を策定した。

第5節 土地税制の活用

 土地税制については、新要綱や「土地の有効利用促進のための検討会議」の提言等をも踏まえ、平成十年度において、地価税の課税の停止、個人及び法人の土地譲渡益課税の軽減措置、事業用資産の買換え特例制度の拡充などの対応策が講じられたのに続き、平成十一年度においては、住宅市場の活性化等を図る観点から、住宅ローン控除が実施されたほか、登録免許税や不動産取得税等の流通に係る諸税の軽減措置等が講じられた。これらの措置は、経済の先行き不透明感等から買い控えていた層の土地に対する実需要を顕在化させる等により、土地取引の活性化に資するとともに、経済の活性化にも寄与するものと期待される。

第6節 その他の土地政策

 「土地月間」(十月)及び「土地の日」(十月一日)を中心として、各種の普及・啓発活動を一層積極的に行うこととしている。
 土地に関する調査研究の実施を円滑に行わせるため、土地に関する国内外の諸制度を含め、土地に関する情報、文献等を網羅的、体系的に整備し、情報の分析・活用・提供を行う土地総合情報ライブラリーを平成九年度に創設し、内容の充実を推進している。


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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十一年三月分結果速報


労 働 省


 「毎月勤労統計調査」平成十一年三月分結果の主な特徴点は、次のとおりである。

◇賃金の動き

 三月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は三十万五千七百八十四円、前年同月比は〇・八%減であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万七百二十六円、前年同月比〇・四%減であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万二千四百六十三円、前年同月比〇・二%減、所定外給与は一万八千二百六十三円、前年同月比は二・一%減となっている。
 また、特別に支払われた給与は二万五千五十八円、前年同月比は四・六%減となっている。
 実質賃金は、〇・四%減であった。
 産業別にきまって支給する給与の動きを前年同月比によってみると、伸びの高い順に電気・ガス・熱供給・水道業二・〇%増、鉱業一・六%増、金融・保険業一・五%増、製造業〇・七%増、運輸・通信業〇・一%増、サービス業〇・六%減、卸売・小売業、飲食店〇・八%減、建設業一・七%減、不動産業五・四%減であった。

◇労働時間の動き

 三月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は百五十四・五時間、前年同月比〇・八%減であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は百四十四・七時間、前年同月比〇・六%減、所定外労働時間は九・八時間、前年同月比五・〇%減、季節調整値は前月と同水準であった。
 製造業の所定外労働時間は十二・四時間で前年同月比は五・四%減、季節調整値の前月比は〇・四%増であった。

◇雇用の動き

 三月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・一%減、常用労働者のうち一般労働者では〇・七%減、パートタイム労働者では二・八%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものは鉱業三・二%増、サービス業一・八%増、不動産業一・六%増、建設業〇・五%増であった。前年同月を下回ったものは、電気・ガス・熱供給・水道業〇・七%減、製造業二・〇%減、金融・保険業二・六%減であった。また、前年同月と同水準だったものは運輸・通信業、卸売・小売業、飲食店であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者二・〇%減、パートタイム労働者一・一%減、卸売・小売業、飲食店では一般労働者二・八%減、パートタイム労働者五・〇%増、サービス業では一般労働者一・六%増、パートタイム労働者二・五%増となっている。














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単身世帯収支調査結果の概況


―平成十年度十〜三月期平均速報―


総 務 庁


◇単身全世帯の家計

 消費支出は、平成十年度四〜九月期に四期ぶりに実質増加に転じ、同年度十〜三月期も実質増加となった(第1図第2図第1表参照)。

◇単身勤労者世帯の家計

 単身勤労者世帯の実収入は、実質減少となった。平均消費性向は、前年度同期を上回った。消費支出は、実質減少となった(第2表参照)。

◇男女・年齢階級別の家計

 消費支出は、六十歳以上で大幅な実質増加となった(第3表参照)。

◇財・サービス区分別の消費支出
 (全国・単身全世帯)

(一) 財(商品)は、実質二・九%の減少。
   <耐久財>  実質二・四%の減少
   <半耐久財> 実質六・四%の減少
   <非耐久財> 実質一・六%の減少
(二) サービスは、実質二・四%の増加。

     ◇     ◇     ◇

     ◇     ◇     ◇

     ◇     ◇     ◇








    <7月28日号の主な予定>

 ▽環境白書のあらまし……………環 境 庁 

 ▽平成十年人口移動の概要………総 務 庁 




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