官報資料版 平成11年8月4日




                  ▽高齢社会白書のあらまし………………………………………………総 務 庁

                  ▽労働力調査(四月)……………………………………………………総 務 庁

                  ▽単身世帯収支調査の概況 ―平成十年度平均速報の結果―………総 務 庁











高齢社会白書のあらまし


平成10年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告


       平成11年度において講じようとする高齢社会対策     


総 務 庁


 「平成十一年版高齢社会白書」は、高齢社会対策基本法(平成七年法律第一二九号)に基づき、政府が毎年国会に提出するものであり、「平成十年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告」及び「平成十一年度において講じようとする高齢社会対策」の二つから成っている。
 今回の白書は、去る六月十一日、高齢社会対策会議における案の作成を経て、閣議決定され、同日国会に提出された。
 白書のあらましは、次のとおりである。

 平成十年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告

<概 説> 高齢社会の動向

<第1節> 高齢者の健康と疾病

1 序
○ 高齢期における生活の質を高く維持するとの観点から、高齢者の健康状況は極めて大きな影響を有するものと考えられる。

2 高齢者の健康
○ 六十歳以上の者を対象とした「健康に関する意識調査」(平成九年)(総務庁)をみると、約四分の三は、健康の維持増進に心がけており、多くは食事・休養・運動の健康の三大要素に気を付けている(第1図参照)。

3 高齢者の疾病
○ 六十五歳以上の高齢者の推計患者数は、「患者調査」(平成八年)(厚生省)によれば、入院が約七十七万人、外来が約二百七十六万人となっている。六十五歳以上の高齢者人口の十万人当たりの推計患者数の割合を示す受療率は、入院が四千五十八、外来が一万四千五百九となっている。受療率を都道府県別でみると、入院では、高知県が最も高く、最も低い長野県の約二・九倍、外来では、広島県が最も高く、最も低い沖縄県の約二・三倍となっている(第2図参照)。
○ 六十五歳以上の高齢者が入院した際の平均在院期間を「患者調査」(前出)でみると、六十三・五日で、全年齢の四十・八日の約一・六倍となっている。
○ 七十歳以上の高齢者の一人当たりの老人医療費は、「老人医療事業年報」(平成八年)(厚生省)によると、約七十八万円となっており、国民一人当たり医療費約二十三万円の約三・四倍となっている。
○ 高齢者に多くみられる疾病として、がん、脳血管疾患、心疾患、高血圧性疾患、糖尿病などが特徴的なものとして挙げられる(第3図参照)。

4 健康の維持増進に向けた取組
○ 長寿化に伴い「健康寿命」(寝たきり等にならず健康に生活できる期間)を伸ばし、高齢期の生活の質を高めていくことが重要となっている。
○ 近年、「生活習慣病」という考え方のもと、若年期からの生活習慣を健康的なものとし、病気の発症そのものを予防することが重視されてきている。
○ 政府においては、これまで生涯にわたる健康づくりを推進してきたが、十年度からは生涯を通じた健康づくりの推進及び生活習慣病の予防等の観点に立ち、総合的かつ包括的な国民の健康づくりのための具体的な達成目標と手順を示した「健康日本21」計画の策定について検討を行うなどの取組を進めている。
○ 若年期からの健康づくりは、「健康寿命」を伸ばし、高齢期を充実した実りあるものとすることにつながると考えられる。

<第2節> 高齢社会対策の動向

1 高齢社会対策関係予算
○ 一般会計予算における高齢社会対策関係予算は、平成十年度においては九兆九百三十二億円、十一年度においては十兆二千八百九十億円となっている。
○ 施策・事業の主な予算額(平成十一年度)をみると、国民年金及び厚生年金保険(国庫負担分)が五兆三百九十億円、老人医療費の確保が三兆八千六百十一億円、老人保護事業(特別養護老人ホーム等)が四千四百五十三億円、在宅サービス事業が三千三十二億円などとなっている。

2 高齢社会対策の動き
○ 平成十年度に推進された高齢社会対策について、主な動きを挙げれば次のとおりである。
 @ 国家公務員法等改正法案等の国会提出
  高齢者の知識・経験を社会において活用するとともに、年金制度の改正に合わせ、六十歳代前半の生活を雇用と年金の連携により支えることが課題となっていることを踏まえ、公務員制度を高齢社会に対応したものとするため、国家公務員法等の一部を改正する法律案を第百四十五回国会に提出した。
  改正法案は、国家公務員の定年退職者等の新たな再任用制度を、満額年金の支給開始年齢の引上げスケジュールに合わせて段階的に導入し、最終的に六十五歳までの在職を可能とすること、短時間勤務の制度を設けること等を内容としている。
  また、国との均衡を図る観点から、地方公務員についても、新たな再任用制度等を導入するための地方公務員法等の一部を改正する法律案を同国会に提出した。
 A 男女共同参画社会基本法案の国会提出
  男女共同参画社会の実現により、男女の人権が尊重され、かつ、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会がもたらされることにかんがみ、男女共同参画社会の形成に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、男女共同参画社会基本法案を第百四十五回国会に提出した。
  同法案は、男女共同参画社会の形成について、基本理念を定め、国・地方公共団体・国民の責務を明らかにし、政府による男女共同参画基本計画の策定等施策の基本となる事項を定める等を内容としている。
 B 民法改正法案等の国会提出
  高齢社会への対応,高齢者福祉等の充実の観点から、痴呆性高齢者等の判断能力が不十分な者の保護を図るため、禁治産・準禁治産制度の改正等及び任意後見制度の新設を内容とする、民法の一部を改正する法律案、及び任意後見契約に関する法律案を第百四十五回国会に提出した。
  民法の改正は、現行の禁治産・準禁治産制度を、各人の判断能力及び保護の必要性の度合いに応じた柔軟かつ弾力的な措置を可能とする制度とするため、補助(新設)・保佐(準禁治産の改正)・後見(禁治産の改正)の制度に改めるとともに、社会福祉協議会等の法人や複数の者が成年後見人等となることを可能とし、成年後見人等の権限濫用を防止するために、監督制度の充実を図ることなどを内容としている。
  任意後見契約に関する法律案においては、本人が自ら選んだ任意後見人に対し、判断能力の不十分な状況における自己の後見事務について代理権を付与する任意後見契約を締結することにより、公的機関の監督の下で任意後見人による保護を受けることができることとしている。
  また、これらの法律案の提出に併せて、制度を利用しやすいものとする観点から、禁治産・準禁治産の宣告を戸籍に記載する現行の公示方法に代え、補助・保佐・後見及び任意後見契約について新しい登記制度を創設する後見登記等に関する法律案を第百四十五回国会に提出した。

<第3節> 国際高齢者年への取組

1 国際高齢者年の概要
○ 平成四年(一九九二年)の国連総会において、一九九九年を国際高齢者年(International Year of Older Persons)とする決議が採択された。
  国際高齢者年は、平成三年(一九九一年)の国連総会で採択された高齢者のための国連原則(高齢者の自立、参加、ケア、自己実現、尊厳)を促進し、政策や実際の計画・活動において具体化することを目的としている。
○ 国連により、国際高齢者年のテーマとして、「すべての世代のための社会をめざして」(to‐ wards a society for all ages)が設定されている。これは、高齢化が、多次元、多分野、多世代等の多様な問題を含んでいるからである。

2 我が国の取組
○ 平成九年(一九九七年)の国連総会決議において、国連は、高齢化に対する人々の認識を高めるため、各国政府を含むあらゆる主体(民間団体、地方公共団体、企業、学校等)が国際高齢者年を活用するよう促している。
  なお、国連では、毎年十月一日が国際高齢者の日と定められていることから、国際高齢者年に関する活動の開始時期を一九九八年(平成十年)十月一日からとしている。
○ 我が国においては、平成十年三月に、国際高齢者年に関する諸活動を行っていくに当たって、関係行政機関相互の緊密な連絡を図るため、関係二十二省庁による関係省庁連絡会議を設置した。同会議においては、十年七月、国際高齢者年における取組の基本的考え方について申し合わせたところであり、この基本的考え方に沿って、広報啓発活動、地方公共団体等への情報提供その他の国際高齢者年に関する取組を推進している。
  なお、国際高齢者年については、高齢者に関する活動を行っている民間団体など国以外においても自主的な取組が進められており、様々な国際高齢者年関係事業が積極的に行われている。

<第1章> 高齢化の状況

<第1節> 高齢者人口の状況

○ 六十五歳以上の高齢者人口は、「人口推計」(総務庁)でみると、二千五十一万人(平成十年十月一日現在)と二千万人を超え、総人口(一億二千六百四十九万人)に占める割合(高齢化率)は一六・二%となっている。一年前の九年十月一日現在の同調査と比較すると、七十五万人の増、高齢化率は〇・五ポイントの上昇である。
○ 今後の高齢化の推移を「日本の将来推計人口」(平成九年一月推計、中位推計)(厚生省)でみると、六十五歳以上の高齢者人口及び高齢化率は、平均寿命の伸長や低い出生率を反映して今後も上昇を続け、平成二十七年(二〇一五年)には、高齢者人口は三千百八十八万人となって高齢化率は二五%を超え、国民の四人に一人以上が六十五歳以上の高齢者という本格的な高齢社会が到来するものと予測される(第4図参照)。

<第2節> 高齢者世帯の状況

○ 高齢者のいる世帯について、「国民生活基礎調査」(平成九年)(厚生省)でみると、六十五歳以上の者のいる世帯数は一千四百五万世帯であり、全世帯(四千四百六十七万世帯)の三一・五%を占める。
○ 六十五歳以上の者のいる世帯の内訳は、「単独世帯」が二百四十八万世帯(一七・六%)、「夫婦のみの世帯」が三百六十七万世帯(二六・一%)、「親と未婚の子のみの世帯」が百九十二万世帯(一三・七%)、「三世代世帯」が四百二十五万世帯(三〇・二%)であり、六十五歳以上の者のいる世帯における三世代世帯の割合が低下し、単独世帯及び夫婦のみの世帯の割合が大きくなってきている(第5図参照)。

<第3節> 人口高齢化の要因

○ 我が国の平均寿命については、最近の状況を「平成九年簡易生命表」(厚生省)でみると、平成九年(一九九七年)には男性が七十七・一九年(前年より〇・一八年の延び)、女性が八十三・八二年(同〇・二三年の延び)となっている。
○ 出生の最近の状況を「人口動態統計」(平成九年)(厚生省)でみると、平成九年の合計特殊出生率は一・三九で、過去最低となった。なお、九年の出生数は百十九万一千六百六十五人で、八年と比べて一万四千八百九十人減少し、出生率(人口千人当たりの出生数)は、九年は九・五で、八年の九・七を下回った(十年推計値百二十一万人、九・六)(第6図参照)。
○ 我が国では婚姻外での出生が少なく、有配偶女性の出生児数は大きく低下していないことから、出生率低下は、主として初婚年齢の上昇 (晩婚化)や結婚しない人の増加(非婚化)によるものと考えられる。晩婚化・非婚化の進行に伴い、結婚する人が減り、結婚に伴う出生が減少して、出生率が低下する。
○ 未婚率の推移を「国勢調査」(総務庁)でみると、昭和五十年ごろから二十五〜三十九歳の男性及び二十歳代の女性で上昇が際立っている。また、生涯未婚率は、「人口統計資料集」(平成十年)(厚生省)によれば、平成七年(一九九五年)に男性八・九二%、女性五・〇八%と上昇してきており、初婚年齢も上がってきている。

<第4節> 高齢化と経済

○ 平成十年(一九九八年)の労働力人口総数(十五歳以上労働力人口)は、六千七百九十三万人であったが、そのうち六十歳以上は九百二十四万人であり、一三・六%を占めた。労働力人口の高齢化は着実に進んでおり、労働力人口総数が二十一世紀に入ると減少していくと予想される中で、今後一層進展していくものと見込まれる。
○ 高齢化の進行に伴い、社会保障給付や公的な負担の増大、さらに家族の私的な負担の高まりが予想される。租税負担、社会保障負担及び財政赤字を合わせた国民負担率(対国民所得)は、昭和四十五年度(一九七〇年度)の二四・九%から、平成十一年度(一九九九年度)の四八・六%(当初見込み。財政赤字を含む)へと上昇している。

<第5節> 高齢者の経済生活

○ 高齢者世帯の年間所得(平成八年の所得)について、「国民生活基礎調査」(平成九年)(厚生省)でみると、三百十六・〇万円であり、公的年金・恩給が六二・五%を占める。高齢者世帯の年間所得は全世帯の半分程度に過ぎないが、世帯人員一人当たりでは大きな差はみられなくなる。
○ 世帯主の年齢が六十五歳以上の高齢者世帯一世帯平均の貯蓄現在高は、二千三百五十三万三千円となっている(第7図参照)。
○ 高齢者の就業状況について、「高年齢者就業実態調査」(平成八年)(労働省)でみると、男の場合、就業者の割合は、六十〜六十四歳で七〇・〇%、六十五〜六十九歳で五三・四%である。不就業者であっても、六十〜六十四歳の不就業者(三〇・〇%)のうち六割以上が、六十五〜六十九歳の不就業者(四六・六%)のうち四割近くが就業を希望している。
  女の場合、就業者の割合は、六十〜六十四歳で四一・一%、六十五〜六十九歳で二八・一%である。不就業者であっても、六十〜六十四歳の不就業者(五八・九%)のうち三割以上が、六十五〜六十九歳の不就業者(七一・九%)のうち二割以上が就業を希望している。

<第6節> 高齢者の健康

○ 六十五歳以上の要介護等の高齢者の割合について、六十五歳以上人口千人当たりの数でみると、在宅の要介護者は四九・三、特別養護老人ホームの在所者は一二・四、老人保健施設の在所者は六・九となっている。また、病院・一般診療所に六か月以上入院している六十五歳以上の高齢者は、六十五歳以上人口千人当たり一五・六となっている。これらの割合は、年齢階層が上がるにつれて大きく上昇する傾向がある(第1表参照)。
○ 六十五歳以上の死亡者の生前の状況やその死亡者の介護者の状況等を調査した「人口動態社会経済面調査」(平成七年度)(厚生省)によると、主に介護をしていた者については、「世帯員」が六六・八%、「世帯員以外の親族」が五・五%、「病院・診療所の職員」が一六・四%などとなっている。
  「世帯員」又は「世帯員以外の親族」であった主な介護者の平均年齢は六十・四歳であり、これが「妻」では七十一・四歳、「長男の妻」五十四・二歳、「長女」五十四・三歳となっている。
○ 親や配偶者など家族が寝たきりになった場合、主にどのように介護すべきかについて、「中高年齢層の高齢化問題に関する意識調査」(平成十年)(総務庁)でみると、四十〜五十九歳の者では、「家族、親族が面倒をみて不足分を福祉施策活用」が四七・二%と最も多く、次いで「家族、親族が面倒をみるべき」三三・五%の順となっている。一方、六十歳以上の者では「家族、親族が面倒をみるべき」が四六・二%と最も多く、次いで「家族、親族が面倒をみて不足分を福祉施策活用」三一・〇%の順となっている。
○ 六十五歳以上の者で在宅の寝たきり者について、その寝たきりの期間を、「国民生活基礎調査」(平成七年)(厚生省)でみると、「三年以上」となっている割合が半数近くになっている。

<第7節> 高齢者の活動

○ 高齢者の社会的活動への意識について、「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成七年度)(総務庁)でみると、同好会、サークル活動や種々の行事、催し物への参加を通じて、社会とのかかわりを持って生活したいと思うかについては、意欲を示す者が七割を超える。
○ 高齢者の各種サークルや団体への参加状況について、「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成十年)(総務庁)でみると、六十歳以上で何らかのサークルや団体に参加している者は六六・四%となっている。

<第8節> 高齢者と生活環境

○ 高齢者が居住地域に感じる問題点について、「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(前出)でみると、「医院や病院への通院に不便」が二二・九%と最も多く、次いで「日常の買物に不便」二〇・六%、「水害、地震など自然災害が心配」二〇・二%となっている。自然災害への関心は、阪神・淡路大震災の影響のためか、前回調査から大きく上昇した。
○ 高齢者が現在住んでいる住宅に感じる問題点について、同調査でみると、「住まいが古くなりいたんでいる」一九・三%、「住宅の構造や設備が高齢者には使いにくい」一三・五%、「住宅に関する経済的負担が重い」一一・五%などとなっている。
○ 高齢者世帯の住宅について、最低居住水準を満たしているかを「住宅統計調査」(平成五年)(総務庁)でみると、高齢者夫婦主世帯(夫婦のいずれかでも六十五歳以上の夫婦主世帯)では九九・二%、六十五歳以上の高齢者単身主世帯では九五・〇%が水準を満たしている。ただし、借家に住む世帯では、水準を満たしていない世帯が、高齢者夫婦主世帯で三・六%、高齢者単身主世帯で一二・三%ある。
○ 高齢者の交通安全に関して、六十五歳以上の高齢者の交通事故死者数を「交通事故統計」(平成十年)(警察庁)でみると、三千百七十四人で交通事故死者全体の三四・五%を占めている。交通事故死者数は、平成四年までは十六〜二十四歳の若者が多かったが、五年以降、高齢者が若者の死者数を上回るようになっている。
○ 高齢者と犯罪、災害に関し、六十五歳以上の高齢者の犯罪による被害の状況について「犯罪統計書」(警察庁)の刑法犯被害認知件数でみると、平成九年は十一万七千七百四十件である。八年に比較すると一万五千八十六件、一四・七%増加しており、被害認知件数全体に占める割合も上昇傾向にある。
  また、「消防白書」(自治省)によると、六十五歳以上の高齢者の火災による死者数(放火自殺者を除く。)は、平成九年で六百四十九人であり、全死者数の約半分を占めている。

<第2章> 高齢社会対策の実施の状況

<第1節> 高齢社会対策の基本的枠組み

○ 我が国の高齢社会対策の基本的枠組みは、高齢社会対策基本法(平成七年法律第一二九号)に基づいている。
○ 高齢社会対策会議は、内閣総理大臣を会長とし、委員には閣僚が任命されており、高齢社会対策を総合的に推進するための中心となっている。
○ 高齢社会対策大綱は、高齢社会対策基本法によって政府に作成が義務付けられているものであり、政府の高齢社会対策の基本的かつ総合的な指針となるものである。高齢社会対策大綱は、平成八年七月五日、高齢社会対策会議における案の作成を経て、閣議において決定された。

<第2節> 高齢社会対策関係予算

○ 高齢社会対策は、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、調査研究等の推進という広範な施策にわたり、着実な進展をみせている。一般会計予算における関係予算をみると、平成十年度においては九兆九百三十二億円となっている。
  これを各分野別にみると、就業・所得四兆四千七十八億円、健康・福祉四兆五千四百七十六億円、学習・社会参加五百九十三億円、生活環境四百四億円、調査研究等の推進三百八十億円となっている。

<第3節> 分野別の施策の実施の状況

1 就業・所得
○ 高齢者の雇用・就業の機会の確保については、継続雇用の推進、再就職の促進、定年退職後等における臨時・短期的な就業の場の確保等に重点を置いて、多様化する高齢者の就業ニーズを踏まえつつ、総合的な雇用・就業対策を推進している。
○ 六十五歳までの継続雇用を推進するため、継続雇用制度の導入又は改善に関する計画の作成指示、計画の適正実施勧告など事業主に対する指導や相談援助を行うとともに、各種の高齢者雇用関係助成金の活用により継続雇用の促進を図っている(第2表参照)。
○ 平成十年度からは、中高年労働者を出向・再就職により受け入れた事業主に対して、中高年労働移動特別支援助成金を支給している。
  また、シルバー人材センター連合において、事業主団体等との連携の下、六十歳代前半の者を対象に技能講習、合同面接会等を一体的に行うシニアワークプログラムを実施している。さらに、中高年求職者の早期就職を図るため、職場体験講習、民間教育機関を活用した職業訓練等を行う中高年求職者就職支援プロジェクトを実施している。
○ 能力開発給付金の支給等による企業における計画的な職業能力開発の推進、中高年齢労働者等受講奨励金の支給による個人の自発的な職業能力開発の推進などにより、労働者自身あるいは企業を通じての職業能力開発を推進している。
○ 男女共同参画推進本部において、「男女共同参画二〇〇〇年プラン」に基づき、男女共同参画社会の形成を目指した施策を総合的に推進している。
○ 公的年金制度については、高齢期における生活の基本的部分の保障としての機能の確保、その財政の長期的な安定の確保を図っていく(第3表参照)。

2 健康・福祉
○ 国民の健康に対する認識と自覚を深め、健康の増進、疾病の予防、早期発見、早期治療を図り、栄養、運動、休養のバランスのとれた生涯にわたる健康づくりを推進している。
  また、平成十年度から、総合的かつ包括的な国民の健康づくりのための具体的な達成目標と手順を示した「健康日本21」計画を策定するための検討を行っている。
○ 老人保健や母子保健など住民に身近で利用頻度の高いサービスは、市町村が市町村保健センター(平成十年十二月末現在、一千五百七十七か所)等を拠点として一元的に提供し、専門的・技術的サービスは、保健所(十年四月一日現在、六百六十三か所)が提供している。
○ 高齢者の保健・医療・福祉サービスについては、在宅サービスや施設サービスなど高齢者介護サービス基盤の整備目標、今後取り組むべき高齢者介護サービス基盤の整備に関する施策の基本的枠組みを示した新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)(平成六年、大蔵・厚生・自治三大臣合意)に基づき、保健・医療・福祉サービスの充実を図った(第45表参照)。
○ 平成十年度から、都市部等住民参加型在宅保健福祉サービス推進試行的事業として、民間非営利組織等の在宅福祉サービスの導入条件等に関する調査研究と二十四時間対応も含めた訪問介護(ホームヘルプサービス)事業を都市部等において行っている。
○ 平成十年度には、寝たきりとなることを防止し、地域住民として充実した生活を送ることを目的として、都道府県リハビリテーション協議会の設置・運営などを内容とする地域リハビリテーション支援体制整備推進事業を創設した。
○ 平成十年度から、十二年四月に施行されることとなっている介護保険法に基づき、市町村が策定する介護保険事業計画の作成準備に要する経費の補助、保険者(市町村)等の事務を正確かつ迅速に処理するための電算処理運用方式の開発等を行っている。
○ 国民生活の変化に伴い、健康・福祉サービスに対する高度化及び多様化したニーズに迅速かつ的確に対応し、サービスの効率化を図るためには、民間事業者等の創意工夫を生かし、利用者の選択の幅を広げていくことが重要であることから、民間事業者による健康・福祉サービスの積極的な活用を推進している。
○ 少子化への対応に関して、平成十年十二月に、少子化への対応を考える有識者会議(十年七月、内閣総理大臣決裁に基づき設置)において、「夢ある家庭づくりや子育てができる社会を築くために(提言)」が取りまとめられた。有識者会議の提言においては、新たな家庭を築き、子供を育てていくことを困難にするような制約要因を取り除くための、働き方や家庭、地域、教育の在り方などに関する環境整備、提言を実施するための推進体制の整備等が必要であるとされている。
○ 保育対策については、平成六年十二月策定の「緊急保育対策等五か年事業」(大蔵・厚生・自治三大臣合意)に基づき、近年の保育需要の多様化に対応したサービスの供給を推進している。

3 学習・社会参加
○ 地域における生涯学習の推進体制の整備については、生涯学習担当部局の設置(平成十年四月現在、四十七都道府県、七百四十二市町村で設置)、都道府県生涯学習審議会の設置(十年四月現在、三十四都道府県で設置)、生涯学習推進会議の設置(十年四月現在、四十七都道府県、一千九百九十四市町村で設置)等を促進している。
○ 生涯学習のニーズの高まりに対応するため、大学においては、科目等履修生制度の実施、夜間大学院の設置、昼夜開講制の実施、社会人特別選抜の実施などを行い、履修形態の柔軟化を図って、社会人の受入れを促進している。
○ 公民館を始め、図書館、博物館、婦人教育施設等の社会教育施設や教育委員会において、青少年から高齢者まで幅広い年齢の人々を対象とした多くの学習機会が提供されている。この中には、高齢社会について理解を促進するためのものや高齢者を直接の対象とする学級・講座も開設されている(第6表参照)。
○ 平成十年度から、高齢者を始めとする地域住民を対象として、広域的な学習サービスのための体制を整備し、多様化・高度化する地域住民の学習ニーズに対応するため、都道府県が実施する広域学習サービスのための体制整備事業に対し、補助を行っている。
○ 高齢者自身が積極的に社会に参加できる各種社会環境の条件整備を図るため、地域においてボランティア活動などを始めとする社会参加活動を総合的に実施している老人クラブに対し助成を行い、その振興を図っている(第8図参照)。
○ 高齢者の持つ豊かな知識・経験や学習の成果を生かした社会参加活動を支援する観点から、高齢者が地域の指導者として社会参加活動を行う際に必要な基礎的素養を養うためのセミナー等の開設に対して補助を行っている。
○ ボランティア活動に対する興味・関心は年々高まっており、平成十年四月におけるボランティア活動者総数は六百二十一万九千人、ボランティアグループ数は八万三千四百グループに達している(第9図参照)。
○ 学校教育において、ボランティア教育を充実させるため、教員等による研究協議会の開催等を行うとともに、児童生徒が一定地域において様々なボランティアの体験等を行うボランティア体験モデル推進事業を行っている。さらに、新学習指導要領(小・中学校は平成十四年度、高等学校は同十五年度より実施)において、特別活動、道徳等の中でボランティア活動を行うこととするなど、内容の改善を図っている。

4 生活環境
○ 公営住宅において、老人世帯向公営住宅を供給するとともに、五十歳以上の者の単身入居を認めている。また、公団賃貸住宅においては、高齢者同居世帯等に対して、募集時に当選率を優遇するとともに、一階又はエレベーター停止階への住宅変更を認めるなどの優遇措置を行っている(第7表参照)。
○ 住宅金融公庫においては、高齢者に対応した構造・仕様等をあらかじめ備えた住宅に対して割増貸付けを行うとともに、高齢者用の設備設置を行う場合に割増貸付けを実施している。また、平成十年度には、高齢者向け優良賃貸住宅制度を創設し、民間の土地所有者等が供給する、高齢者の生活特性に配慮した設備・仕様や緊急時対応サービス等を備えた優良な賃貸住宅に対して建設費補助、家賃対策補助等を行っている。
○ シルバーハウジング・プロジェクト事業として、生活援助員(ライフサポートアドバイザー)による日常の生活指導や安否確認などのサービスが受けられ、かつ、高齢者の生活特性に配慮した設備・仕様を備えた公共賃貸住宅の供給を推進している。
○ 鉄道駅、旅客船・空港ターミナルにおけるエレベーター・エスカレーター等の施設整備を促進している。また、乗合バス事業者が行うノンステップバス等の導入に対して、補助及び融資を行っている。
○ 高齢者等が安全、快適に、また不便なく歩行できるよう、各種施設の整備等を推進している。
○ 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)に基づき認定を受けた建築物に対しては、補助、税制上の特例措置及び融資を実施している(第10図参照)。
○ 市街地再開発事業、土地区画整理事業等の面的な都市整備と併せて、社会福祉施設等の適正かつ計画的な立地を推進している。また、福祉・医療施設と一体となった公園の整備を推進している。
○ 第六次交通安全基本計画等に基づき、高齢者への交通安全意識の普及徹底、高齢者等が安心して暮らせる道路環境づくり、高齢者の安全運転対策等を実施した。
○ 高齢者を犯罪や事故から保護するため、交番、駐在所の警察官を中心に、巡回連絡等を通じて高齢者宅を訪問するほか、痴呆症等によってはいかいする高齢者を発見、保護する体制づくりを地方公共団体等と協力して推進している。
○ 病院、老人ホーム等の施設を守る土砂災害対策の重点的な実施、高齢化率の特に高い地域等が激甚な水害、土砂災害を受けた場合の再度災害防止等を図っている。
○ 都市公園等整備七箇年計画に基づき、都市公園等の緊急かつ計画的な整備を行った。また、農山漁村地域の農林漁業生産基盤と生活環境の一体的・総合的な整備を積極的に推進している。

5 調査研究等の推進
○ 痴呆疾患、骨粗しょう症等の高齢者に特有の疾病については、長寿科学総合研究事業等において調査研究が行われている。平成八年度からは長寿医療の専門家で研究班を組織し、老年病の成因、診断、治療、予防等に関する基礎的、臨床的研究を推進している。
○ 福祉機器に関しては、使用者ニーズに対応する新しい技術の可能性(シーズ)に関する調査を行っている。
○ 情報通信等の新たな技術の活用は、高齢者の生活の様々な局面に利便をもたらすものと考えられることから、ハード及びソフトの両面において研究開発を推進している。
○ 長寿科学研究を推進するため、国立療養所中部病院に設置された長寿医療研究センターを中心に老人性痴呆症、寝たきりの予防、支援機器の開発に関する研究等に取り組んでいるほか、長寿科学総合研究事業等において、自然科学から人文社会科学に至るまでの幅広い分野の研究を行っている。
○ 科学技術の進歩は、研究開発に携わる人々の能力や創造力に依存する面が多く、科学技術の振興を図るために人材の養成、確保、資質の向上及び流動化に努めている。

平成十一年度において講じようとする高齢社会対策

第1 平成十一年度の高齢社会対策

1 高齢社会対策関係予算
○ 高齢社会対策は、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、調査研究等の推進の各分野にわたり着実に実施する。
  一般会計予算における平成十一年度の高齢社会対策の関係予算は、十兆二千八百九十億円であり、各分野別では、就業・所得五兆二千九十五億円、健康・福祉四兆九千四百二十億円、学習・社会参加五百七十九億円、生活環境三百九十七億円、調査研究等の推進三百九十八億円となっている。

2 高齢社会対策の推進
○ 高齢社会対策は、高齢社会対策大綱の基本的考え方に基づいて、策定し、各分野にわたる施策の展開を図る。
  大綱の基本的考え方が特に反映されている施策として、平成十一年度の新規施策を挙げれば、次のとおりである。
  「高齢者の自立,参加及び選択の重視」については、高齢者の自営開業に対する支援施策の推進事業、サラリーマンOB等の知識や経験を社会の様々なシステムでいかすための高齢者のボランティア活動相談事業等がある。
  「国民の生涯にわたる施策の体系的な展開」及び「地域の自主性の尊重」については、市町村が地域の実情に応じて、高齢者等の生活支援事業と併せて、生きがい対策、保健予防対策などを実施する場合に補助を行う在宅高齢者保健福祉推進支援事業等がある。
  「施策の効果的推進」については、地域の経済団体との連携の下、高齢者と事業主双方の意識改革を促し、雇用に関するミスマッチを解消する高年齢者マッチング支援事業等がある。
  「関係行政機関の連携」については、老人クラブ連合会とシルバー人材センター連合等の連携により、関係機関・団体の協力の下、老人クラブ会員の就業支援を実施する事業等がある。
  「医療・福祉、情報通信等に係る科学技術の活用」については、高度な機能を持つ福祉支援情報通信システムを構築・展開するための研究開発等がある。
  また、一九九九年が国際連合の提唱による国際高齢者年とされていることを踏まえ、平成十一年度においては、高齢者や高齢社会に関する国民の理解と認識を深める機会として、国際高齢者年に関する取組を進める。

第2 分野別の高齢社会対策

1 就業・所得
○ 六十五歳までの継続雇用を推進するため、継続雇用制度の導入又は改善に関する計画の作成指示、計画の適正実施勧告など事業主に対する指導や相談援助を行うとともに、各種の高齢者雇用関係助成金の活用により継続雇用の促進を図る。
○ 平成十一年度からは、自営開業を希望する高齢者を支援するため、高齢者のための自営開業講座等を実施するとともに、地域の経済団体との連携の下、高齢者と事業主双方の意識改革を促し、雇用に関するミスマッチを解消する高年齢者マッチング支援事業を行う。
○ 能力開発給付金の支給等による企業における計画的な職業能力開発の推進、職業能力開発サービスセンター等における職業能力開発に関する各種の情報提供・相談援助などにより、労働者自身あるいは企業を通じての職業能力開発を推進する。
○ 男女共同参画推進本部において、平成八年十二月に決定された「男女共同参画二〇〇〇年プラン」に基づき、女性労働者の能力の活用を始めとした男女共同参画社会の形成を目指した施策を総合的に推進する。
○ 公的年金制度については、今後とも高齢期における生活の所得保障の中核を担えるよう、引き続き給付と負担の均衡を図る等の施策を推進しつつ、制度の安定的運営を行う。また、平成十一年が年金財政の将来見通しを見直す五年に一度の財政再計算の年に当たることから、制度全般にわたる見直しを図る。

2 健康・福祉
○ 壮年期からの健康づくりについては、老人保健法に基づく保健事業を着実に推進するため、保健事業第三次計画に従い、健康診査、機能訓練、訪問指導の充実等を総合的に推進する。
○ 高齢者の保健・医療・福祉サービスについては、新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)(大蔵・厚生・自治三大臣合意)に基づき、総合的に推進する。
○ 平成十一年度からは、在宅高齢者保健福祉推進支援事業として、市町村が、高齢者等の生活支援事業と併せて、地域の実情に応じて、在宅高齢者の生きがい対策、寝たきり予防のための普及啓発及び健やかで活力あるまちづくり計画策定・普及啓発推進事業を選択して実施する場合に、これに対して補助を行う。
○ 平成十一年度から、地域福祉支援体制の整備として、一人暮らしの痴呆性高齢者等の自己決定能力が低下している者に対して、その者の権利を擁護し、自立した地域生活が送れるよう、社会福祉士等の生活支援員を派遣し、日常的金銭管理サービスや日常的生活支援サービス等の支援を行う。
○ 各種の介護サービスの量的な充実、質的な向上を図るため、訪問介護員(ホームヘルパー)、寮母・介護職員、看護職員等、OT(作業療法士)・PT(理学療法士)等の高齢者介護マンパワーを確保し、その資質を向上させる。
○ 民間事業者等の創意工夫をいかし、民間事業者による健康・福祉サービスを積極的に活用する。
○ 「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(エンゼルプラン、平成六年、文部・厚生・労働・建設四大臣合意)に基づき、子育て支援施策を総合的・計画的に推進する。

3 学習・社会参加
○ 地方公共団体における生涯学習担当部局、都道府県生涯学習審議会、生涯学習推進会議の設置を促進する。
○ 放送大学においては、衛星放送を含めテレビ・ラジオの放送を利用して大学教育の機会を提供する。
○ 社会教育施設や教育委員会が開設する各種の学級・講座を始め、地域住民の多様な社会教育活動を総合的に推進するため、市町村が実施する地域社会教育活動総合事業に対し補助を行う。
○ 地域において、ボランティア活動などを始めとする社会参加活動を総合的に実施している老人クラブに対し助成を行うとともに、平成十一年度からは、老人クラブ連合会とシルバー人材センター連合等との連携により、老人クラブ会員を対象に、生きがい促進のための就業を支援する事業を行う。
○ 平成十一年度から、退職後間もない、又はこれから定年を迎えるサラリーマン等が、それまでの仕事で蓄積した知識や経験を社会の様々なシステムの中で生かし、充実した人生を送れるよう、電子メール等を活用して、ボランティア活動等社会参加に関する相談・アドバイスなどを行う高齢者のボランティア活動相談事業を実施する。
○ 一九九九年が国際連合の提唱による国際高齢者年とされていることを踏まえ、高齢者の社会参加促進等の観点から広報啓発活動等の記念事業を行う。
○ ボランティア活動入門講座の開催、情報誌の発行、登録・あっせん・相談等を行う市区町村ボランティアセンター活動事業、地域の特性に見合ったきめ細かな福祉サ−ビスが効率的、総合的に提供される体制をつくる地域福祉総合推進事業(ふれあいのまちづくり事業)に対し補助を行う。

4 生活環境
○ 公営住宅については、老人世帯向公営住宅の供給を行うとともに、五十歳以上の者の単身入居を認める。また、公団賃貸住宅においては、高齢者同居世帯等に対する入居又は住宅変更における優遇措置を行う。
○ 住宅金融公庫においては、高齢者に対応した構造・仕様等をあらかじめ備えた住宅に対して割増貸付けを行うとともに、高齢者用の設備設置を行う場合に割増貸付けを実施する。また、高齢者向け優良賃貸住宅に対して建設費補助、家賃対策補助等を行う。
○ 市町村の総合的な高齢者住宅施策の下、シルバーハウジング・プロジェクト事業を推進する。
○ 鉄道駅、旅客船・空港ターミナルにおけるエレベーター・エスカレーター等の施設整備を促進するとともに、乗合バス事業者が行うノンステップバス等の導入を促進する。平成十一年度においては、新たに、鉄道駅について、駅前広場、自由通路等周辺の都市機能整備と一体的にその構造を総合的に改善する事業について、補助を行う。
○ 病院、百貨店、銀行等の不特定多数の人が利用する特定建築物のバリアフリー化を推進する。
○ 市街地再開発事業、土地区画整理事業等における社会福祉施設等の円滑な導入のための補助を行う。また、福祉・医療施設と一体となった公園の整備等を推進する。
○ 第六次交通安全基本計画等に基づき、高齢者への交通安全意識の普及徹底,高齢者等が安心してくらせる道路環境づくり、高齢者の安全運転対策等を推進する。
○ 高齢者を犯罪や事故から保護するため、交番、駐在所の警察官を中心に、巡回連絡等を通じて高齢者宅を訪問するなどの施策を推進する。
○ 病院、老人ホーム等の施設を守る土砂災害対策の重点的な実施,高齢化率の特に高い地域等が激甚な水害、土砂災害を受けた場合の再度災害防止を図る。
○ 快適な都市環境の形成のため、都市公園等の整備を行う。また、農山漁村地域の農林漁業生産基盤と生活環境の一体的・総合的な整備を推進する。

5 調査研究等の推進
○ 痴呆疾患、骨粗しょう症等の高齢者に特有の疾病については、長寿科学総合研究事業等において調査研究を進める。
○ 福祉用具及び医療機器については、医療や福祉に対するニーズの高い研究開発を効率的に実施するためのプロジェクトを推進する。
○ 平成十一年度からは、効率的な福祉サービスの提供と高齢者等の自立支援を目的とした福祉支援情報通信システムを構築展開していくための研究開発を行う。
○ 老人性痴呆の研究等については、長寿医療研究センター等において推進する。
○ 国立大学等においては、老化等の長寿関連の研究を行うほか、科学研究費補助金等により大学等の研究者に対し研究費等の補助を行う。


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四月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成十一年四月結果の概要―


総 務 庁


◇就業状態別の動向

 平成十一年四月末の十五歳以上人口は、一億七百六十九万人で、前年同月に比べ五十五万人(〇・五%)の増加となっている。
 これを就業状態別にみると、就業者は六千四百六十九万人、完全失業者は三百四十二万人、非労働力人口は三千九百三十九万人で、前年同月に比べそれぞれ六十三万人(一・〇%)減、五十二万人(一七・九%)増、六十万人(一・五%)増となっている。
 また、十五〜六十四歳人口は八千六百七十三万人で、前年同月に比べ十三万人(〇・一%)の減少となっている。これを就業状態別にみると、就業者は五千九百八十六万人、完全失業者は三百三十一万人、非労働力人口は二千三百三十八万人で、前年同月に比べそれぞれ五十八万人(一・〇%)減、五十二万人(一八・六%)増、十万人(〇・四%)減となっている。

◇労働力人口(労働力人口比率)

 労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は六千八百十一万人で、前年同月に比べ十一万人(〇・二%)の減少となっている。男女別にみると、男性は四千十七万人、女性は二千七百九十四万人で、前年同月と比べると、男性は十三万人(〇・三%)の減少、女性は二万人(〇・一%)の増加となっている。
 また、労働力人口比率(十五歳以上人口に占める労働力人口の割合)は六三・二%で、前年同月に比べ〇・五ポイントの低下と、十五か月連続の低下となっている。

◇就業者

(一) 就業者

 就業者数は六千四百六十九万人で、前年同月に比べ六十三万人(一・〇%)減と、十五か月連続の減少となっている。男女別にみると、男性は三千八百十一万人、女性は二千六百五十八万人で、前年同月と比べると、男性は四十七万人(一・二%)減と、十六か月連続で減少、女性は十六万人(〇・六%)減と、十一か月連続で減少となっている。

(二) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百十二万人、自営業主・家族従業者は一千百四十万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は三十九万人(〇・七%)減と、十五か月連続で減少、自営業主・家族従業者は二十二万人(一・九%)減と、十五か月連続の減少となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 非農林業雇用者…五千二百七十八万人で、三十九万人(〇・七%)減、十五か月連続の減少
 ○ 常 雇…四千六百七十五万人で、六十三万人(一・三%)減、十六か月連続の減少
 ○ 臨時雇…四百八十二万人で、二十三万人(五・〇%)増、平成八年九月以降、増加が継続
 ○ 日 雇…百二十一万人で、二万人(一・七%)増、二か月連続の増加

(三) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 農林業…三百五十万人で、七万人(二・〇%)減、三か月連続で減少、減少幅は前月(十二万人減)に比べ縮小
○ 建設業…六百五十六万人で、四万人(〇・六%)減、十八か月連続で減少、減少幅は前月(九万人減)に比べ縮小
○ 製造業…一千三百十四万人で、五十九万人(四・三%)減、二十三か月連続で減少、減少幅は前月(六十五万人減)に比べ縮小
○ 運輸・通信業…四百九万人で、十万人(二・五%)増、四か月連続で増加、増加幅は前月(十九万人増)に比べ縮小
○ 卸売・小売業、飲食店…一千四百八十一万人で、十三万人(〇・九%)減、二か月連続で減少、減少幅は前月(十万人減)に比べ拡大
○ サービス業…一千六百九十五万人で、十三万人(〇・八%)増、二か月ぶりの増加
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 建設業…五百五十五万人で、七万人(一・三%)増、十一か月ぶりの増加
○ 製造業…一千二百一万人で、五十三万人(四・二%)減、二十三か月連続で減少、減少幅は前月(六十万人減)に比べ縮小
○ 運輸・通信業…三百八十七万人で、九万人(二・四%)増、四か月連続で増加、増加幅は前月(十九万人増)に比べ縮小
○ 卸売・小売業、飲食店…一千百九十一万人で、七万人(〇・六%)減、二か月連続で減少、減少幅は前月(三万人減)に比べ拡大
○ サービス業…一千四百三十七万人で、九万人(〇・六%)増、三か月連続で増加、増加幅は前月(六万人増)に比べ拡大

(四) 従業者階級

 企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 一〜二十九人規模…一千七百四十八万人で、三十三万人(一・九%)減少
○ 三十〜四百九十九人規模…一千七百五十三万人で、十六万人(〇・九%)増加
○ 五百人以上規模…一千二百二十九万人で、二十七万人(二・一%)減少

(五) 就業時間

 四月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 一〜三十五時間未満…二千百三万人で、二万人(〇・一%)減少
○ 三十五時間以上…四千二百三十七万人で、六十七万人(一・六%)減少
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四〇・二時間で、前年同月に比べ〇・一時間の増加となっている。

(六) 転職希望者

 就業者(六千四百六十九万人)のうち、転職を希望している者(転職希望者)は六百十二万人で、このうち実際に求職活動を行っている者は二百四十五万人となっており、前年同月に比べそれぞれ十八万人(三・〇%)増、十四万人(六・一%)増となっている。
 また、就業者に占める転職希望者の割合(転職希望者比率)は九・五%で、前年同月に比べ〇・四ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は九・二%、女性は九・八%で、前年同月に比べ男性は〇・一ポイントの上昇、女性は〇・七ポイントの上昇となっている。

◇完全失業者

(一) 完全失業者数

 完全失業者数は三百四十二万人で、前年同月に比べ五十二万人(一七・九%)増加し、比較可能な昭和二十八年以降で最多となっている。男女別にみると、男性は二百六万人、女性は百三十六万人で、男性は昭和二十八年以降で最多となっている。前年同月に比べると、男性は三十四万人(一九・八%)の増加、女性は十八万人(一五・三%)の増加となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 非自発的な離職による者…百十五万人で、二十四万人増加
○ 自発的な離職による者…百八万人で、十万人増加
○ 学卒未就職者…二十三万人で、同数(増減なし)
○ その他の者…八十四万人で、十八万人増加

(二) 完全失業率(原数値)

 完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は五・〇%で、前年同月に比べ〇・七ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は五・一%、女性は四・九%で、前年同月に比べ男性は〇・八ポイント、女性は〇・七ポイントの上昇となっている。

(三) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 [男]
○ 十五〜二十四歳…四十五万人(五万人増)、一〇・八%(一・七ポイント上昇)
○ 二十五〜三十四歳…四十四万人(十万人増)、四・九%(一・〇ポイント上昇)
○ 三十五〜四十四歳…二十七万人(七万人増)、三・五%(〇・九ポイント上昇)
○ 四十五〜五十四歳…三十二万人(八万人増)、三・四%(〇・九ポイント上昇)
○ 五十五〜六十四歳…四十九万人(二万人増)、七・二%(〇・二ポイント上昇)
 ・五十五〜五十九歳…十九万人(六万人増)、四・六%(一・三ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…三十一万人(三万人減)、一一・三%(〇・八ポイント低下)
○ 六十五歳以上…九万人(同数)、三・〇%(〇・一ポイント上昇)
 [女]
○ 十五〜二十四歳…三十八万人(四万人増)、九・四%(一・三ポイント上昇)
○ 二十五〜三十四歳…四十一万人(七万人増)、七・〇%(〇・九ポイント上昇)
○ 三十五〜四十四歳…二十二万人(三万人増)、四・三%(〇・七ポイント上昇)
○ 四十五〜五十四歳…二十一万人(二万人増)、三・一%(〇・四ポイント上昇)
○ 五十五〜六十四歳…十三万人(二万人増)、三・一%(〇・四ポイント上昇)
○ 六十五歳以上…二万人(一万人増)、一・一%(〇・六ポイント上昇)

(四) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 世帯主との続き柄別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 世帯主…九十三万人(八万人増)、三・四%(〇・三ポイント上昇)
○ 世帯主の配偶者…四十二万人(六万人増)、二・九%(〇・五ポイント上昇)
○ その他の家族…百五十五万人(三十一万人増)、八・三%(一・六ポイント上昇)
○ 単身世帯…五十一万人(七万人増)、六・六%(〇・七ポイント上昇)

(五) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率は前月と同率の四・八%で、比較可能な昭和二十八年以降で最高が続いている。
 男女別にみると、男性は五・〇%で前月に比べ〇・二ポイント上昇し、女性は四・五%で前月に比べ〇・三ポイント低下となっている。








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単身世帯収支調査の概況


―平成十年度平均速報の結果―


総 務 庁


◇単身全世帯の家計

 消費支出は、平成八年度、九年度と実質減少であったが、十年度は実質増加となった(第1図第2図第1表参照)。

◇単身勤労者世帯の家計

 単身勤労者世帯の実収入は、実質減少となった。平均消費性向は、前年度を上回った。消費支出は、実質減少となった(第2表参照)。

◇男女・年齢階級別の家計

 消費支出は、六十歳以上で大幅な実質増加となった(第3表参照)。

◇財・サービス区分別の消費支出(全国・単身全世帯)

(一) 財(商品)は、実質二・二%の増加。
   <耐久財> 実質八・二%の増加
   <半耐久財> 実質一・二%の減少
   <非耐久財> 実質二・六%の増加
(二) サービスは、実質一・五%の減少。


     ◇     ◇     ◇

     ◇     ◇     ◇

     ◇     ◇     ◇




    <8月11日号の主な予定>

 ▽観光白書のあらまし………………総 理 府 

 ▽消費者物価指数の動向……………総 務 庁 

 ▽月例経済報告(七月報告)………経済企画庁 




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