官報資料版 平成11年8月11日




                  ▽観光白書のあらまし………………………………………………総 理 府

                  ▽消費者物価指数の動向(東京都区部五月中旬速報値)………総 務 庁

                  ▽月例経済報告(七月報告)………………………………………経済企画庁

                  ▽税金365日 保険と税…………………………………………国 税 庁











観光白書のあらまし


―平成10年度 観光の状況に関する年次報告―


総 理 府


 「平成十年度観光の状況に関する年次報告」及び「平成十一年度において講じようとする観光政策」(二つを併せて「観光白書」と称している。)は、去る六月八日、閣議決定の上、国会に提出された。
 このうち、「平成十年度観光の状況に関する年次報告」のあらましは、次のとおりである。

T 観光の状況

1 国民生活の動向
(1) 平成十年、我が国経済は、九年十〜十二月期から十年七〜九月期にかけて4四半期連続でマイナス成長を記録し、これまでにない景気の低迷がみられた。十年十〜十二月期も景気の低迷状態が長引き、引き続き極めて厳しい状況であったが、幾分かの改善を示す動きもみられた。また、国内総支出は年間で前年比二・八%減、民間最終消費支出は一・一%減となった。
  一方、消費者物価は安定的に推移し、十年の消費者物価は前年比上昇率〇・七%となった。家計消費については、全国全世帯の消費支出は対前年比二・二%減となった。
(2) 余暇活動に関係する自由時間に関しては、年次有給休暇の取得、完全週休二日制等の労働時間の短縮、学校週五日制を実施し、ゆとりある休暇の拡充を推進している。総実労働時間は近年減少傾向で推移してきており、十年は一千八百七十九時間と、前年より二十一時間減少した。また、九年十二月末現在で、完全週休二日制の適用を受ける労働者の割合は六〇・九%(対前年比二・七%増)と、年々着実に増加している。
(3) 現在の国民の「レジャー・余暇生活」についての意識をみると、今後の生活で特に力を入れたい分野として「レジャー・余暇生活」を挙げる者(三五・一%)が最も多く、昭和五十八年以来、連続して第一位を占め続けており、国民の余暇活動に関する志向の根強さがうかがえる(住生活二三・七%、食生活一九・三%)。

2 国内観光の状況
(1) 十年の国内観光は、宿泊観光・レクリエーションの回数及び宿泊数はほぼ前年並みとなり、また、消費額は昨年に引き続き前年を上回った(第1表参照)。
 @ 宿泊観光・レクリエーション旅行を行った者は延べ二億五百万人、一人当たり一・六二回となっており、消費総額は全体で八兆六千七百億円、一人当たり六万八千六百円となっている。
 A 十年の国内旅客輸送は、国内航空運送事業分野において、約三十五年ぶりとなる新規航空会社の就航により好調を維持したが、それ以外の各輸送機関はともに低調に推移した。
 B 十年の主要旅行業者50社の総取扱高は、対前年比四・七%減の六兆六百十五億円であった。このうち、国内旅行は、年計では対前年比二・三%減、海外旅行は対前年比八・〇%減であった。
(2) 阪神・淡路地域の観光の状況
 平成七年一月に発生した阪神・淡路大震災により、観光面においても多大な影響が出たが、神戸市の調査によれば、十年の神戸市の観光入込客数は、震災前の六年の入込客数(二千四百四十万人)を超える二千五百二十八万人となっている。

3 国際観光の状況
 十年の日本人海外旅行者数は、対前年九十九万人(五・九%)減の一千五百八十一万人であり、長引く景気の低迷を背景に、三年以来の減少となった。一方、訪日外国人旅行者数は、対前年十一万人(二・七%)減の四百十一万人となった(第1図参照)。
(1) 国民の海外旅行
 旅行者に占める比率は、依然として男性(五三・七%、八百四十九万人)が女性(四六・三%、七百三十二万人)を上回っているが、伸び率では女性が男性を上回っている。男性の場合は三十歳代が男性全体の二一・七%で最も多いのに対し、女性の場合は二十歳代が女性全体の三五・六%で最も多く、目的別では、観光を目的とした海外旅行が一千二百九十七万人で、全体の八二・一%を占めている。
 旅行先は、アメリカ(四百九十五万人)、韓国(百九十万人)、中国(百万人)、タイ(七十八万人)、台湾(七十七万人) となっている(第2表参照)。
(2) 外国人旅行者の訪日
 訪日外国人旅行者数を、国籍・地域別にみると、台湾が八十四万人と最も多く、以下、韓国七十二万人、アメリカ六十七万人、イギリス(香港)三十万人、中国二十七万人の順となっている。なお、対前年伸び率では、中国(香港)(七四・六%増)、イギリス(香港)(二九・〇%増)、オーストラリア(二一・九%増)の増加が目立っている。
 州別構成比は、アジア州五四・五%、ヨーロッパ州二一・一%、北アメリカ州一九・二%の順となっており、近年、アジア州が主流となっている。
(3) 国際旅行収支
 十年の我が国の国際旅行収支(旅客運賃を含む)は、受取が七千四百九億円(対前年比〇・八%減)、支払は四兆六千百三十一億円(同七・七%減)で、収支の赤字は前年に比べ三千七百九十四億円減の三兆八千七百二十二億円となった。

U 景気低迷下における我が国の観光レクリエーションの動向及びそれに対する対応

1 日本人の観光レクリエーションの動向
(1) 最近の日本人の国内観光の動向
 @ 十年度の国内観光旅行市場は横ばい傾向
  十年は景気の低迷という厳しい経済状況の下で、国内宿泊観光レクリエーションは、業務関係の旅行回数が減少したものの、観光関係の旅行回数は増加し、全体では、旅行回数は微増、宿泊数は微減、消費総額は増加となった。このことは景気の低迷状況の中にありながらも、国民の国内観光に関する志向は依然根強く、国民生活にとって、国内観光が欠かせないものとなっていることがうかがえる。
 A 最近の国内観光の動向
  最近の国内観光の傾向としては、いわゆる「安・近・短」旅行の傾向と、「安・遠・短」旅行の傾向の併存が挙げられる。また、従来、海外旅行に比較して割高感が指摘されていた国内旅行商品について、消費者の低価格志向を反映する形で、旅行商品の低廉化が進んでいる。
  また、国内観光の支出傾向としては、二十・三十歳代の若い世代において、「旅行回数は少なくても贅沢に楽しみたい」と考える傾向もあり、低価格商品と並んで、多様化した旅行商品が求められる傾向にある。
  さらに、近年の景気の低迷状況の中で、企業における職場旅行等は、非常に厳しい状況となっているが、サークルや地域の親睦旅行は健闘している。また、団体旅行は、大幅な減少傾向にある一方で、個人旅行は好調さを維持している。
(2) 最近の日本人の海外旅行の動向
 @ 十年の海外旅行は七年ぶりのマイナス成長
  我が国の海外旅行者は、国民の所得水準の向上、自由時間の増大、手軽に利用できる海外パッケージ・ツアーの普及、円高傾向等を背景として、平成三年の湾岸危機の影響による落ち込みを除き、九年まで順調に増加してきたが、十年においては国内景気の低迷状況、先行きに対する不安感、円安傾向等を背景に、七年ぶりに減少に転じた。
  歴年での前年割れは、昭和三十九年の海外旅行の自由化以来、第二次石油ショックの昭和五十五年、湾岸危機の平成三年に続き三回目となる。
 A 最近の海外旅行の動向
  最近の海外旅行の傾向としては、二十歳代、四十歳代の世代の海外旅行が減少する一方で、六十歳代の世代が増加傾向にある(第2図参照)。また、海外旅行を二回以上経験した人の割合も、この十年間で二倍以上に増加しており、リピーターが海外旅行需要の下支えとなっている。
  また、十年の日本人の海外旅行は、対ドルの円安傾向、東南アジアの経済・政治情勢の悪化等を背景として、旅行先による増減の差が目立ち、中でも韓国への旅行者が増加した。
(3) 最近の旅行業、航空企業の動向
 旅行商品の価格競争が進展する中で、観光関連産業は、総じて減益の環境下にある。旅行業では、海外旅行の減少、旅行商品の低価格競争に伴い、厳しい経営環境下に置かれている企業もあり、新聞広告販売、コンビニエンス・ストアでの商品販売の開始等により、旅行商品販売の強化に努めている。
 また、航空企業においては、航空ネットワークの拡充や輸送力の増強、多様な利用者ニーズに対応した運賃・料金等の設定に努めるとともに、経営の効率化の課題に取り組んでいる。

2 外国人旅行者の訪日の動向
(1) 訪日外国人旅行者数は三年ぶりにマイナス成長
 訪日外国人旅行者数は、九年で四百二十二万人と、史上初めて四百万人台を達成した。十年は、香港及び欧米諸国からの訪日客は好調な伸びを示したが、深刻な経済不振を背景とした韓国からの訪日客の大幅な減少等により、前年比約三%減の四百十一万人となり、阪神・淡路大震災が発生した七年以来、三年ぶりにマイナス成長となった。
(2) 受入数は国際的に見て依然として低水準
 訪日外国人旅行者数を、世界における外国人旅行者受入者数と比較すると、日本は世界第三十二位であり、地理的にほぼ同条件にある韓国よりも若干多い数値となっている(第3図参照)。
(3) アジア諸国からの訪日旅行者及び商用客の訪日の減少
 アジア諸国からの訪日旅行者は、昭和四十年代から急速な伸びを示しており、平成七年以降は、全体の約六割を占めるに至っている。
 こうした中、近年の東南アジア地域や韓国の経済危機の影響により、十年のアジア諸国からの訪日旅行者は、前年比約一一%減と大幅な減少となった。
 また、経済が比較的好調な欧州・北米からは、観光客が約一七%増、商用客が約一%減となっており、我が国の景気の低迷が、特に商用客の訪日客数にも影響を与えていると推測できる。

3 我が国観光の再生に向けた政府の取組
 二十一世紀を間近に控え、我が国においては、国民の多様化した価値観に対応して、国民一人一人がゆとりとうるおいを感じられる生活を実現することが重要な課題となっている。
 このため、国、地方公共団体及び観光関連産業との緊密な連携により、国民が将来にわたり夢と希望を持てるような観光関連の施策を展開することは、政府の重要な政策課題の一つである。
(1) 観光政策審議会答申「今後の観光政策の基本的な方向について」(平成七年)
 七年六月の観光政策審議会答申「今後の観光政策の基本的な方向について」において、国内観光振興のため、国内旅行の大規模なシステム変更の必要性等が指摘された。同答申を受けて、国内観光促進協議会が設置され、行動計画の策定等、推進に向けた取組が行われた。また、国際観光振興のため、訪日外国人旅行者を、おおむね二〇〇五年時点において、七百万人に倍増させることを目指し、「ウェルカムプラン21」が策定された。
(2) 我が国の観光再生に向けた政府の取組
 @ 一部祝日の月曜日指定化と長期滞在型観光の開発・普及
  十年十月の臨時国会において、「成人の日」及び「体育の日」をそれぞれ、一月及び十月の第二月曜日とする「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案」が可決、成立し、十二年一月一日から施行されることとなった。
  これを受けて、今後、国内観光に関して旅行期間の長期化等の観光振興策を講じることが重要であり、長期滞在型旅行の推進施策に関する国内広報、観光案内設備の整備に広域的に取り組む自治体に対する補助を行い、長期滞在型観光の振興や、国内観光機運の醸成を図ることとしている。
 A 旅行者ニーズの多様化と次世代観光情報基盤の整備
  情報化が進展する中、観光に関する情報提供も量的には大幅に増加しているが、各種情報が散在、錯綜する等、利用者の利便性の観点からは、未整備な状況にある。
  また、訪日外国人旅行の促進のためにも、外国人向け情報提供体制の整備・充実が急務となっている。
  さらに、近年、旅行者ニーズの多様化と個別化が顕著であり、エコツアー、体験型ツアー等の新しい旅行形態へのニーズの高まりもみられる。
  このような状況に対応するため、国内の観光関係の各種情報を収集した大規模なデータベースを整備し、日本語及び外国語により、インターネット等を通じて国内外に情報を提供し、多様化した価値観を生かした国内旅行の促進や、訪日外国人旅行者の増大を図ることとしている。
 B 快適観光空間の整備と観光地の魅力の増進
  我が国の地方には、我が国独自の観光魅力が豊富に存在している。これらの地域への外国人旅行者の来訪を促進し、日本人の生活、文化等に直接接してもらうことは、我が国に対する真の理解を深める観点から、大きな意義を有するとともに、地域経済の活性化にも大きく役立つものである。
  このため、「外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律」に基づいて形成された外客来訪促進地域(通称「国際観光テーマ地区」)を定め、国際観光の振興を推進している。
  また、観光による地域の活性化という観点から、九年度から「観光地づくり推進モデル事業」を実施し、全国十か所のモデル地域において、観光地評価を踏まえた観光地づくりプログラムの策定及びその実施に取り組んでいる。
 C 緊急経済対策
  政府は、日本経済を一両年のうちに回復軌道に乗せ、経済を再生させるために、十年十一月十六日に、総額二十四兆円規模の緊急経済対策を決定し、このうち、国内観光振興緊急対策事業として、総額十五億円の予算を計上した。
  その内容は、連泊割引の導入促進等により、旅行期間の長期化、国内観光気運の醸成を図り、消費の拡大、景気の回復に寄与するため、長期滞在型旅行の推進施策に関する国内広報、観光案内設備の整備に広域的に取り組む自治体に対する補助を行うとともに、外国人の訪日を促進するための海外宣伝を実施することとしている。
  また、今回の緊急経済対策においては、「21世紀先導プロジェクト」として四つのテーマが選定された。そのテーマの一つである「安全・安心、ゆとりの暮らしを創るプロジェクト」の内容に「全年齢層を対象とした観光とイベントの振興」が定められ、今後新たに、各省庁が連携してこのプロジェクトに積極的に取り組むこととなった。
 D 「遊空間の拡大」(生活空間倍増戦略プラン)
  十一年一月に閣議決定された「生活空間倍増戦略プラン」において、「遊空間の拡大」は同プランの重要分野の一つに位置付けられ、魅力ある観光地づくり、国内観光の振興及び国際観光交流の促進、景観の維持・向上、ゆとりとうるおいのある空間の創出等を行うことにより、国民の余暇活動の充実、地域振興や国際交流等を可能とする遊空間の形成を図り、快適で魅力ある生活の実現を目指すことが定められた。
  具体的な目標として、日本人の旅行の平均宿泊数を二・〇泊(現在一・六泊)にすることを目指すとともに、訪日外国人旅行者について、おおむね五年後の時点で七百万人(平成九年四百二十二万人)を目指し、外国人観光客にとっても、魅力のある観光拠点の整備を進めることが挙げられている。

4 観光をめぐる社会環境の変化と今後の課題
(1) 観光をめぐる社会環境等の変化
 @ 我が国の人口構造の変化の動向
  一九九五年における日本の総人口は、一億二千五百五十七万人であったが、今後、二〇〇七年をピークに減少傾向に転じ、二〇二〇年においては、一億二千四百十三万人と、一九九一年の水準に戻ると予想されている。
  また、近年の出生率の低下により、年少人口(〇歳〜十四歳)は、一九七八年をピークに減少を続けており、少子化は着実に進行していくと予想される。
  一方、老年人口(六十五歳以上)は、今後急速に増加し、二十一世紀には本格的な高齢社会が到来することが確実視されている。
 A 社会環境の変化
  近年の高齢社会において、六十歳以上の年齢層の人々は、熟年世代としてライフスタイルが多様化し、生活者、消費者、労働者の立場から、観光関連活動へのかかわりがますます増加するものと予想される。地域における観光地づくり、祭り、伝統芸能、観光地などでのボランティア・ガイド等の場への参画も期待される。
  また、完全週休二日制のより一層の進展、一部祝日の月曜日指定化、学校の週五日制の十四年度からの実施等により、旅行発生の主要な要因である自由時間は、着実に増大していくものと想定される。
  さらに、インターネット等を活用した観光関連の情報ネットワークの拡大によるさまざまな交流機会の増大、情報システムの拡充も期待される。
(2) 我が国の観光再生に向けた今後の課題
 @ 国民の旅行環境の改善
  自由時間の拡充を図るための有給休暇の取得の促進、個人の好みに応じた旅行プラン作りを可能とする旅行環境づくり、グループ旅行、家族旅行などの旅行需要の質的変化への対応、高齢者のニーズに即した旅行情報の提供等が求められている。
 A 国内観光地の再生
  国内観光の活性化に向けた最大の課題は、その受け皿となる国内観光地の再生であり、国内旅行と海外旅行の同一市場化の中で、国内観光地の魅力の増進が不可欠である。
  今後、観光の重要性に対する理解の増進、観光地の個性化、明確なビジョンに沿った「まちづくり」、多様な観光メニューの提供、観光客の受入れに際してのホスピタリティの向上、都市や農山村における観光魅力の増進、人材の育成・確保のための仕組みづくり等、国内観光の再生に向けたより積極的な対応が求められる。
 B 訪日外国人旅行者の誘致
  訪日外国人旅行者を誘致するため、官民共同での観光客の誘致、観光地における英語以外の外国語での案内表示の整備、外国語パンフレットの充実等、地域においてさまざまな取組が積極的に行われている。
  今後とも、「ウェルカムプラン21」、「外客誘致法」等に基づく訪日外国人旅行者の受入体制の整備、海外宣伝の強化、海外からの旅行者が長期間滞在できる魅力ある観光拠点の整備、生活空間倍増戦略プランに基づいた「遊空間の拡大」による地域振興、国際交流等の促進への対応が求められる。
 C 日本人の海外旅行
  最近の日本人の海外旅行市場は、二十歳代の年齢層の減少、五十歳代から六十歳代の年齢層の増加という変化がみられ、今後、高年齢者マーケットに向けた旅行商品の企画・開発、魅力ある旅行目的地の開発等が、重要な課題となってくる。
 D 観光関連産業
  ア 宿泊業
   旅館・ホテル等の宿泊業においては、消費者の志向の変化に対応した料金体系の見直し、従来型の接客方式からの脱却、地域と一体となった誘客に向けた取組、共同宿泊プランや連泊割引の設定等が図られつつある。
   今後、連泊の促進、長期滞在型旅行の促進への取組の強化が求められる。
   また、質的な面では、宿泊自体の楽しみの増大、個人客に対応したサービス・施設体系の対応促進、労働力の確保等が、課題として挙げられる。
  イ 旅行業
   旅行業においては、最近の家族旅行の増大を受けた家族向け商品の充実、経済的、時間的にゆとりのある熟・高年層の潜在需要の喚起や、一人旅の拡大を狙った商品の開発、各種体験型ツアー等、個別化、多様化する旅行者ニーズに対応した商品開発もみられる。また、日程・料金面でもさまざまな商品開発が行われている。
   今後は、旅行市場の変化に対応した、団体旅行からパック・個人旅行への旅行商品の転換、高齢者や障害者に向けた旅行情報の収集・提供、旅行情報システムの拡充、更なる経営の効率化が求められるとともに、旅行業に対する消費者の信頼の確保に努める必要がある。
  ウ 観光レクリエーション施設等
   近年、観光レクリエーション施設等においては、単に見るだけではなく、観光客が参加・体験する等の要素が求められており、地域の文化、歴史等を興味深く紹介するハード・ソフト両面の工夫が必要である。
   また、テーマパーク等については、近年の景気低迷の中で、入場者の減少に伴う採算の悪化に直面する施設もあり、今後、各施設の個性化及びより一層のコストの削減等が求められている。
  エ 飲食・地域の特産品
   地域の食材や特産品は、旅行先の地域の特色を伝える主要な要素の一つとして、観光の魅力を高める重要な分野となっており、観光地の賑わいを創出し、季節波動の少ない観光地づくりのキーポイントになっている。
   しかしながら、海外旅行と比較すると、買物等に関する支出の志向は低調である。今後、地域独自の特色あるメニューの開発・提供、選択肢に富んだ安全な飲食の提供、宿泊施設から「まち」に出て賑わいを感じられる受入体制の整備、地域の特色ある農水産物・加工食品・民工芸品等の開発・提供が必要である。
  オ 交通
   国内宿泊観光旅行費用の支出における交通費は、宿泊費と並ぶ主要な支出分野となっている。航空分野など既に多様な利用者ニーズに対応した運賃・料金体系の進んでいる分野に加えて、今後の交通運輸分野における需給調整規制の廃止に伴い、他の分野においても運賃・料金体系の多様化等、利用者利便のより一層の増進が期待される。
   また、交通バリア・フリー化に向けた施設整備への取組、大都市圏における混雑緩和、ハード・ソフト両面の連携強化、各種交通機関のネットワーク化、公共交通機関の利用促進、外国人向け割引制度の積極的な展開、景観保持への一層の配慮等が求められる。

V 観光に関して講じた施策

 政府は十年度においても、前年度に引き続き、国際観光の振興、国内観光の振興としてさまざまな施策・取組等を実施してきたが、これらのうち主なものは、次のとおりである。

1 国際観光の振興
(1) 国際観光振興会は外国人旅行者の訪日促進のため、海外での観光展への参加・協力等を通じた広報活動、緊急経済対策の一環としての「対米訪日旅行促進キャンペーン」の実施、外国の旅行業者・報道関係者等に対する宣伝活動、インターネットによる海外への情報提供等を実施した。また、在外公館、国際交流基金の広報活動や日本放送協会の国際放送により、対日理解の増進を図った。
(2) 国内における国際交流の推進対策として、外国人旅行者向けの総合観光案内所(東京、京都)の運営、全国各地の「i」案内所の整備・充実(十年十二月現在九十五か所)、国際観光テーマ地区外客誘致推進事業(JAPAN QUEST)等を進めるとともに、善意通訳(グッドウィル・ガイド)の普及等を推進した。
  また、国際コンベンションの振興を図るため、国際観光振興会に設置した誘致センターによる情報の提供、諸外国における宣伝、誘致活動への支援等を行うとともに、受入体制の整備を進めた。
  さらに、二〇〇二年に日韓共同で開催されるサッカーのワールドカップの開催準備への支援・協力、愛知県において開催される二〇〇五年日本国際博覧会の準備等のための支援、二〇〇八年夏季オリンピックの大阪市への招請等の基本的枠組みの閣議了解等を行った。
(3) 出入国管理、査証発給手続、検疫、通関等において、手続の円滑化を進めた。
(4) 海外旅行者の増加に伴い、海外旅行中に病気、交通事故及び犯罪等に遭遇する日本人が増加しているため、外務省海外安全相談センター、国際観光振興会等が、パンフレット、ビデオ等を作成・配付し、広報・啓発に努めるとともに、インターネットを通じて五段階の「海外危険情報」を提供した。
(5) 観光関係国際機関等への協力、開発途上国に対する専門家の派遣、研修員の受入れ等の支援、協力を行った。

2 国内観光の振興
(1) 国・地方公共団体等の連携による観光振興の取組
 @ 国内観光の再生に向けた取組として、国・地方公共団体、観光関係事業者等の緊密な連携による、さまざまな観光振興施策が進められている。
   二十一世紀に向けた観光の新しい課題に対応していくため、地方ブロック単位で「広域連携観光振興会議(WAC21)」を開催し、より広域での観光振興を目指すこととした。十年十一月には、第一回目の広域連携観光振興会議が東北ブロック(青森、岩手、宮城、秋田、山形及び福島の六県)において開催され、「東北六県観光立国宣言」がなされた。
 A 地域伝統芸能等は、地域固有の歴史、文化等を色濃く反映したものであり、地域の特色を生かした観光を図るために、極めて効果的である。
   十年五月には、岐阜県高山市及び下呂町において「第六回地域伝統芸能全国フェスティバル」を開催したほか、海外においても地域伝統芸能等を披露し、観光客の誘致に努めている。
 B 送客側と受入側の地方公共団体と観光産業とが協力し、首都圏の消費者をターゲットに新しい国内旅行の提案、旅についての総合的な情報の発信と交流等を行う「旅フェア’98」が、十年四月に開催された。
 C 九年十一月の政府の緊急経済対策を受けて、モデル地域における観光地評価を踏まえた観光地づくりプログラムの策定、観光振興イベント支援事業の集中的実施を内容とする「観光地づくり推進モデル事業」に関し、全国五か所の観光地について、事業に着手した。
 D 北海道は、豊かな自然・新鮮な味覚等の多彩な観光資源を有しており、来道者数もここ数年増加傾向にある。また、観光振興は、北海道の重要なテーマであり、政府においても、観光基盤の整備、観光資源ネットワークの充実、アウトドア活動に資する施設整備等を通じ、北海道の特色を生かした観光振興を積極的に支援している。
 E 沖縄県は、恵まれた自然景観・独特の伝統文化、歴史等、魅力的な観光・リゾート資源を有しており、観光客も年々増加している。また観光振興は、沖縄県の重要なテーマであり、政府においても、沖縄振興開発特別措置法等を改正することにより、より一層の観光振興を図るとともに、道路整備等の関連インフラの整備等を通じて、積極的に支援している。
(2) 観光旅行者の保護及びサービスの向上
 @ 旅行業等に係る施策
  ア コンビニエンス・ストア等における主催旅行商品等の販売の解禁、旅行業の登録及び更新の登録の有効期間の延長等の規制緩和の実施に併せ、立入検査及び報告徴収の強化、旅行業約款等の見直し検討委員会の設置等により、消費者保護の充実を図った。
    また、十年六〜七月にかけて開催された「FIFAワールドカップフランス’98」において発生した、ワールドカップ・チケット問題に関して、旅行業者に対し、再発防止等の指導を行った。
  イ 旅行業における公正な競争の確保、適正な情報提供の推進、観光土産品の品質、規格等の表示及び包装の適正化を図った。
 A 価格・サービスの多様化等
  ア 最近の国民の旅行ニーズの多様化等に対応するため、体験型旅行商品の提供、旅館における泊食分離制度の導入等、新しい形態のサービスが提供されている。
  イ 従業員の慰安、社内の親睦等を目的とする全従業員を対象とした会社主催の四泊五日以内の従業員レクリエーション旅行については、少額不追求の趣旨を逸脱しないものに限り課税されないこととされており、日数や旅行先の選択の幅の広い多様な旅行を楽しむことができるようになっている。
  ウ 鉄道運賃制度については、従来、運賃の五〇%までの営業割引等の設定・変更については届出制としているが、九年一月から、認可された上限運賃の範囲内であれば、路線別、季節別、曜日別などの多様な運賃の設定・変更を報告により行えることとし、改善を図っている。
  エ 国内航空運賃については、七年に標準原価を上限とする一定の幅の中で、航空会社が自主的に運賃を設定できる幅運賃制を導入しており、五〇%の事前購入割引、特定便割引等、利用者の多様なニーズを踏まえた割引運賃等により、多様化、低廉化が進んでいる。
 B 観光情報提供体制の整備等
  ア 日本観光協会によるインターネットを通じた国内観光の情報提供、国際観光振興会によるインターネットを通じた観光情報の海外提供、コミュニティ放送局の開局、マルチメディア等を利用した各種観光情報の提供等、観光情報提供体制の充実に努めた。
  イ コンピュータ西暦二〇〇〇年問題に関し、我が国における交通、旅行、宿泊等の観光関連分野において、二〇〇〇年問題の国民への周知等を通じて、システムの改修等、民間部門の徹底した対応を促進した。
 C 高齢者・障害者等の円滑な移動の確保
  公共交通機関、宿泊施設、文化施設等及びその他観光関連施設において、高齢者・障害者等の円滑な移動を確保するため、エスカレーター・エレベーターの設置等の施設の整備改善などのバリア・フリー化を推進するとともに、運賃の割引措置等を講じた。
(3) 観光資源の保全・保護
 @ 国立公園等、自然公園の整備、森林の保全管理、河川、湖沼及び海洋環境の保全、都市緑地の保全、温泉の保護、野生生物の保護等を推進し、自然とのふれあいの要請にこたえるとともに、自然環境の保全を図った。
 A 国宝・重要文化財等の文化財の保存・活用、無形文化財の伝承者養成等を進め、また、歴史的集落・町並み・港湾施設についての保存・活用を図った。
 B 十年十一月〜十二月に京都において開催された、第二十二回世界遺産委員会会議において、「古都奈良の文化財」が我が国で九番目の世界遺産として、新たに世界遺産一覧表に記載された。
 C 都市、農山漁村、水辺、道路について景観の整備を促進し、良好な景観の形成と魅力あるまちづくり等を進めた。
 D 「旅しよう 日本列島再発見」を統一テーマとした第三十四回観光週間(八月一日〜七日)、みどりの週間(四月二十三日〜二十九日)等を通じて、観光資源の保全・保護等について、広報・啓発等を行った。
(4) 観光レクリエーション施設等の現況と整備
 @ 公的観光レクリエーション施設等
  各省庁においては、@宿泊を中心とするレクリエーション施設等、A農山漁村地域におけるレクリエーション地区等、B森林・公園等を活用したレクリエーション施設等、C自然体験施設・親水レクリエーション施設を総合的・広域的に整備した。
 A 民間活力の活用による総合保養地域の整備
  民間活力の活用に重点を置いて整備し、ゆとりある国民生活の実現と地域振興を図るために「総合保養地域整備法」に基づいて整備が進められ、多数のプロジェクトが供用され、地域の活性化に貢献している。また、リゾート整備を着実に整備・推進するため、アドバイザーの派遣等を行っている。
 B 民間観光レクリエーション施設
  国民の観光レクリエーション需要の高まりに伴い、民間等により、レジャーランド、オートキャンプ場、一般キャンプ場、スキー場、マリーナ、クアハウス、ゴルフ場、観光牧場等さまざまな観光レクリエーション施設等が全国的に整備・運営されている。
(5) 観光関連施設の現況と整備
 @ 博物館、美術館等の整備・充実を図り、所蔵品を収集・保管・展示して一般の利用に供するとともに、解説書の発行や各種講座等を開催した。
 A 国立競技場等の体育・スポーツ施設や青年の家等の青少年教育施設の整備を進めた。また、パラグライダー等のスカイレジャーの進展に対応し、安全の確保及びその振興・普及に係る施策を進めている。
(6) 宿泊・休養施設の現況と整備
 @ 一定規模のホテル・旅館等について、近代化を推進するため、環境衛生金融公庫において設備資金等の融資を行うとともに、「国際観光ホテル整備法」に基づく登録ホテル・旅館については、政府系金融機関による融資によって施設整備を支援した。
 A 宿泊施設やサービス・料理の面で高齢者が利用しやすい施設として、一定の基準を満たした旅館等をシルバースター旅館として認定登録し、従業員等に対し研修を実施している。十一年二月現在、六百九十四軒が認定登録されている。
 B 公的施設等として、国民宿舎、ユースホステル等の運営、整備を行った。
(7) 観光基盤施設の現況と整備
 @ 鉄道については、整備新幹線の既着工三線四区間の整備を推進するとともに、新規に三線三区間を着工した。
   また、主要幹線鉄道では、引き続き宗谷線及び豊肥線の高速化事業を推進するとともに、愛知環状鉄道の高速化事業に着手した。
   さらに、車両の居住性の向上や移動制約者対応トイレの導入等の社会的ニーズへの対応等の観点から、輸送サービスの改善が進められている。
 A 道路については、高規格幹線道路、地域高規格道路、一般国道及び地方道、有料道路の整備・建設を促進し、「道の駅」や「ハイウェイ・オアシス」の整備を進めた。高速自動車国道は、東北横断自動車道寒河江〜西川区間等の開通により、全体供用延長が六千四百五十三キロメートルとなった。
   また、一般自動車道やバスターミナルの整備・運営、観光地のバス・タクシーについて、利用者の利便の向上が図られている。
 B 空港については、航空ネットワークの拠点となる大都市圏における拠点空港の整備を最優先課題として推進するとともに、一般空港等の整備を進めた。
   また、航空運送分野における競争促進を通じて、利用者の利便の向上を図るため、国内線のダブル・トリプルトラック化、国際線の複数社化を推進した。
   さらに、羽田空港新C滑走路の供用に伴う発着枠の配分を契機として、国内航空分野において二社が新規参入した。
 C 海上交通については、運輸施設整備事業団との共有建造方式による国内旅客船の整備を進めるとともに、旅客船ターミナル等の整備を行った。
 D 観光地の環境衛生施設について、地域の生活環境の保全及び向上を図るために、水道及び下水道の整備の推進に努めた。
(8) 国内観光の安全確保
 @ 鉄道、道路、航空及び海上交通の交通安全対策
   鉄道事故の防止を図るため、自動列車停止装置(ATS)の整備等を推進するとともに、乗務員等の教育訓練の充実、厳正な服務の徹底及び適正な運行管理を指導した。
   道路については、交通事故が多発している道路等について、特定交通安全施設等整備事業七箇年計画に基づいて、交通安全施設等の整備拡充を図るとともに、交通安全思想の高揚、自動車運送事業者における適正な運行管理の確保及び整備不良車両の運行防止等により、交通事故の防止を図った。
   航空における安全を確保するため、航空保安施設の整備、航空機の運航の安全の確保、ハイジャック等に対する航空保安対策を行った。
   海上交通の安全を確保するため、海事関係法令の励行、旅客船の運航管理制度の徹底、プレジャー・ボート等の海難防止指導等により、事故防止に努めた。
 A 宿泊施設等における安全対策
   旅館、ホテル等の防火対策として、建築基準法、消防法による指導、防火基準適合表示制度の推進等を図った。
   また、ホテル・旅館、飲食店等、食品関係営業者について、食品衛生監視員の指導、食品衛生法に基づく管理運営基準の遵守の徹底を図った。
 B 観光地における自然災害防止対策
   台風や集中豪雨などの気象条件により、土砂災害の発生しやすい環境にある山地流域については、砂防工事を実施するとともに、総合的な土砂災害対策の推進、火山噴火警戒避難対策事業の実施等の災害対策を推進した。
 C 気象等の情報の提供
   台風・集中豪雨雪対策等、観測予報体制の強化、地震・火山対策の強化及び海洋・海上気象業務の強化を行い、観測体制の充実及び適時適切な予報・警報並びに情報の提供に努めた。
 D 遭難等の防止対策
   山岳遭難、水難防止を図るため、救助体制の充実、安全指導等、諸施策を推進するとともに、観光旅行者に対し、災害危険箇所及び避難地・避難路等の周知徹底を図るよう、地方公共団体に対し指導を行うなど、避難体制の確立に努めた。
(9) 地方公共団体による観光振興への取組
 @ 地方公共団体は、地域経済にとって多大な影響を及ぼす観光産業を振興するために、全国各地で特色あるイベントやキャンペーン、物産展等を実施・開催している。
   また、インターネットのホームページを活用して情報発信等を行うなど、観光宣伝に努めるとともに、地元の観光従事者の接遇の向上等、受入体制の充実に努めている。
 A 地方公共団体は、交流を通じたさまざまな地域振興の観点から、観光振興に積極的に取り組んでおり、観光基本計画等を策定し、総合的な推進を図っている。
   また、地方公共団体は、観光情報の発信・提供、各種キャンペーンの実施、外国人観光客誘致の促進、観光客受入体制の充実、自然環境の保全、文化財の保護、観光地の美化清掃等を進めるとともに、国の支援・協力を受け、また独自に、観光施設、観光基盤の整備を行っている。




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消費者物価指数の動向


―東京都区部(五月中旬速報値)・全国(四月)―


総 務 庁


◇五月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・〇となり、前月と同水準。前年同月比は二月〇・二%の下落、三月〇・四%の下落、四月〇・二%の下落と推移した後、五月は〇・六%の下落となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇一・九となり、前月比は〇・一%の上昇。前年同月比は二月〇・一%の下落、三月〇・二%の下落、四月〇・二%の下落と推移した後、五月は〇・二%の下落となった。

二 前月からの動き

(1) 食料は一〇二・八となり、前月と同水準。
  生鮮魚介は三・九%の下落。
   <値上がり> まぐろ、たこ
   <値下がり> かつお、いかなど
  生鮮野菜は四・七%の下落。
   <値上がり> ばれいしょ、ほうれんそうなど
   <値下がり> キャベツ、レタスなど
  生鮮果物は一一・一%の上昇。
   <値上がり> りんご(ふじ)、いちごなど
   <値下がり> メロン(プリンスメロン)、レモン
(2) 家具・家事用品は九二・九となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  家庭用耐久財は一・〇%の下落。
   <値下がり> ルームエアコンなど
(3) 被服及び履物は一〇四・九となり、前月に比べ一・一%の上昇。
  衣料は一・八%の上昇。
   <値上がり> ワンピース(夏物)など

三 前年同月との比較

○ 上昇した主な項目
 生鮮果物(九・四%上昇)、授業料等(二・〇%上昇)、菓子類(三・四%上昇)、上下水道料(三・九%上昇)
○ 下落した主な項目
 生鮮野菜(一六・五%下落)、教養娯楽サービス(一・四%下落)、衣料(二・四%下落)、シャツ・セーター・下着類(三・七%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇一・四となり、前月に比べ〇・四%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇一・六となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。

◇四月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・五となり、前月比は〇・五%の上昇。前年同月比は一月〇・二%の上昇、二月〇・一%の下落、三月〇・四%の下落と推移した後、四月は〇・一%の下落となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・三となり、前月比は〇・三%の上昇。前年同月比は一月から三月までそれぞれ〇・一%の下落で推移し、四月も同じ〇・一%の下落となった。

二 前月からの動き

(1) 食料は一〇三・三となり、前月に比べ〇・六%の上昇。
  生鮮魚介は二・一%の上昇。
   <値上がり> いか、かつおなど
   <値下がり> たい、あさりなど
  生鮮野菜は八・七%の上昇。
   <値上がり> ほうれんそう、レタスなど
   <値下がり> ねぎ、えのきだけなど
  生鮮果物は一・四%の下落。
   <値上がり> りんご(ふじ)、オレンジなど
   <値下がり> いちご、グレープフルーツなど
(2) 光熱・水道は一〇一・一となり、前月に比べ〇・六%の下落。
  電気・ガス代は〇・九%の下落。
   <値下がり> 電気代など
(3) 被服及び履物は一〇五・九となり、前月に比べ三・六%の上昇。
  シャツ・セーター・下着類は七・八%の上昇。
   <値上がり> スポーツシャツ(半袖)など
(4) 保健医療は一一二・九となり、前月に比べ〇・四%の上昇。
  保健医療サービスは〇・七%の上昇。
   <値上がり> 診察料など
(5) 教育は一〇八・四となり、前月に比べ一・三%の上昇。
  授業料等は一・六%の上昇。
   <値上がり> 私立大学授業料など

三 前年同月との比較

○ 上昇した主な項目
 生鮮果物(一一・五%上昇)、授業料等(一・七%上昇)、たばこ(七・八%上昇)
○ 下落した主な項目
 生鮮野菜(八・二%下落)、自動車等関係費(一・四%下落)、教養娯楽サービス(一・二%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・三となり、前月と変わらなかった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・二となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。




















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月例経済報告(七月報告)


経済企画庁


概 観

我が国経済
需要面をみると、個人消費は、収入が低迷しているため力強さはみられないものの、緩やかに回復してきている。住宅建設は、持ち直してきている。設備投資は、一〜三月期は中小企業などで動きがみられたものの、基調としては大幅な減少が続いている。公共投資は、堅調に推移している。
 十一年一〜三月期(速報)の実質国内総生産は、前期比一・九%増(年率七・九%増)となり、うち内需寄与度はプラス二・二%となった。
 産業面をみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。こうした中、生産は、最終需要の動きを反映して、低い水準にあるものの、おおむね横ばいで推移している。企業収益は、持ち直しの兆しがみられる。また、企業の業況判断は、厳しい状態にあるが改善傾向にある。企業倒産件数は、春先からやや増加しているものの、信用保証制度の拡充の効果等から前年の水準を大幅に下回っている。
 雇用情勢は、依然として厳しい。勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率は高水準で推移している。
 輸出は、おおむね横ばい状態となっている。輸入は、緩やかな増加の動きがみられる。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、六月は月初の百二十一円台から百十八円台に上昇したが、その後下落し下旬にかけて百二十一円台から百二十二円台で推移した。
 物価の動向をみると、国内卸売物価は、このところ下げ止まりの動きがみられる。また、消費者物価は、安定している。
 最近の金融情勢をみると、短期金利は、六月は横ばいで推移した。長期金利は、六月は上昇した。株式相場は、六月は大幅に上昇した。マネーサプライ(M+CD)は、五月は前年同月比四・一%増となった。また、民間金融機関の貸出は依然低調であるが、企業金融のひっ迫感はやや緩和している。
海外経済
主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九八年十〜十二月期前期比年率六・〇%増の後、一〜三月期は同四・三%増となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準である。連邦市場公開委員会(FOMC)は、六月三十日に、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を〇・二五%引き上げ五・〇〇%とし、金融政策姿勢を「引締め」から「中立」へ変更した。六月の長期金利(三十年物国債)は、総じて上昇した。株価(ダウ平均)は、上下したが、月末を月初と比べるとやや上昇した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに減速しつつあるが、回復の動きもみられる。フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。イギリスでは、景気は減速しているものの、先行きに明るさがみられる。鉱工業生産は、ドイツでは減少傾向にあるがそのテンポは緩やかになってきている。フランスでは伸びが鈍化しており、イギリスでは減少している。失業率は、ドイツ、フランスでは、高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している。物価は、安定している。
 東アジアをみると、中国では、景気は拡大しているが、消費の伸びは鈍化しており、輸出は減少している。韓国では、景気は回復しつつある。
 国際金融市場の六月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した。
 国際商品市況の六月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬に強含んだ後、総じて下落基調で推移したが、月末にはやや値を戻した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬に急上昇し、その後は十六ドル前後のレンジ内で上下したが、月末には再び上昇し、十六ドル台後半の水準まで回復した。

     *     *     *
 我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、収入が低迷しているため力強さはみられないものの、緩やかに回復してきている。住宅建設は、持ち直してきている。設備投資は、一〜三月期は中小企業などで動きがみられたものの、基調としては大幅な減少が続いている。公共投資は、堅調に推移している。輸出は、おおむね横ばい状態となっている。
 在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。こうした中、生産は、最終需要の動きを反映して、低い水準にあるものの、おおむね横ばいで推移している。
 雇用情勢は、依然として厳しい。勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率は高水準で推移している。
 民間金融機関の貸出は依然低調であるが、企業金融のひっ迫感はやや緩和している。また、企業の景況感は、厳しい状態にあるが改善傾向にある。
 以上のように、景気は、民間需要の回復力が弱く厳しい状況にあるが、各種の政策効果が浸透し、このところやや改善している。
 このような厳しい経済状況の下、政府は、緊急経済対策を始めとする諸施策を強力に推進する。また、六月十一日に緊急雇用対策及び産業競争力強化対策を決定し、これを受けて、雇用対策について十一年度補正予算案を国会に提出した。

1 国内需要
―個人消費は、力強さはみられないものの、緩やかに回復してきている―

 実質国内総生産(平成二年基準、速報)の動向をみると、十年十〜十二月期前期比〇・八%減(年率三・三%減)の後、十一年一〜三月期は同一・九%増(同七・九%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度はプラス二・二%となり、財貨・サービスの純輸出の寄与度はマイナス〇・二%となった。需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比一・二%増、民間企業設備投資は同二・五%増、民間住宅は同一・二%増となった。また、財貨・サービスの輸出は前期比〇・三%減、財貨・サービスの輸入は同一・八%増となった。
 個人消費は、収入が低迷しているため力強さはみられないものの、緩やかに回復してきている。
 家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で四月〇・七%減の後、五月は二・四%増(前月比三・六%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比一・五%増、勤労者以外の世帯では同四・〇%増となった。形態別にみると、財・サービスともに増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比二・八%増、勤労者世帯では同一・五%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で四月二・七%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で四月二・〇%減の後、五月は三・五%減(前月比〇・七%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で四月三・四%減の後、五月二・四%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で四月五・三%減の後、五月五・〇%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で六月は三・九%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で五月は五・三%増となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、五月は前年同月比で国内旅行が四・三%減、海外旅行は五・七%減となった。
 賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で四月〇・〇%の後、五月(速報)は〇・四%減(事業所規模三十人以上では同〇・一%増)となり、うち所定外給与は、五月(速報)は同〇・五%増(事業所規模三十人以上では同〇・三%減)となった。実質賃金は、前年同月比で四月〇・一%増の後、五月(速報)は〇・一%増(事業所規模三十人以上では同〇・五%増)となった。
 住宅建設は、持ち直してきている。
 新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で四月三・五%減(前年同月比一・一%増)となった後、五月は二・二%減(前年同月比〇・九%減)の十万二千戸(年率百二十三万戸)となった。五月の着工床面積(季節調整値)は、前月比一・六%増(前年同月比四・一%増)となった。五月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比八・二%増(前年同月比一七・九%増)、貸家は同八・六%減(同一〇・三%減)、分譲住宅は同九・七%減(同一六・三%減)となっている。
 設備投資は、一〜三月期は中小企業などで動きがみられたものの、基調としては大幅な減少が続いている。
 日本銀行「全国短期経済観測調査」(六月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の十一年度設備投資計画は、製造業で前年度比一一・〇%減(三月調査比一・五%上方修正)、非製造業で同六・一%減(同一・〇%上方修正)となっており、全産業では同七・九%減(同一・二%上方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比一九・二%減(三月調査比三・一%上方修正)、非製造業で同七・二%減(同五・六%上方修正)となり、中小企業では製造業で同三二・九%減(同四・八%上方修正)、非製造業で二三・一%減(同六・〇%上方修正)となっている。
 なお、十一年一〜三月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で一〇・五%減(うち製造業一九・一%減、非製造業五・八%減、資本金一億円以上の大中堅企業一一・二%減、資本金一千万円以上一億円未満の中小企業七・四%減)となった。
 先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で四月は一三・八%減(前年同月比一四・五%減)の後、五月は三・八%増(同七・五%減)となり、基調は減少傾向となっている。
 なお、四〜六月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前期比で一一・三%減(前年同期比一四・二%減)と見込まれている。
 民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、四月は前月比四一・三%減と大きく水準を落としたが、五月は同二一・六%増(前年同月比一二・〇%減)となった。内訳をみると、製造業は前月比一一・二%減(前年同月比四三・四%減)、非製造業は同三四・九%増(同一・八%減)となった。
 公的需要関連指標をみると、公共投資は、堅調に推移している。
 公共工事着工総工事費は、前年同月比で四月三一・九%増の後、五月は二・六%増となった。公共工事請負金額は、前年同月比で四月一二・二%減の後、五月は六・七%減となった。官公庁からの建設工事受注額(五十社)は、前年同月比で四月五八・八%増の後、五月は四・一%増となった。実質公的固定資本形成は、十年十〜十二月期に前期比一〇・六%増の後、十一年一〜三月期は同一〇・三%増となった。また、実質政府最終消費支出は、十年十〜十二月期に前期比〇・六%減の後、十一年一〜三月期は同〇・八%増となった。

2 生産雇用
―依然として厳しい雇用情勢―

 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。こうした中、生産・出荷は、最終需要の動きを反映して、低い水準にあるものの、おおむね横ばいで推移している。
 鉱工業生産は、前月比で四月三・四%減の後、五月(速報)は、輸送機械、電気機械等が増加したものの、化学、一般機械等が減少したことから、〇・七%減となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で六月は輸送機械、金属製品等により一・七%増の後、七月は化学、輸送機械等により〇・三%減となっている。鉱工業出荷は、前月比で四月五・〇%減の後、五月(速報)は、資本財、耐久消費財等が増加したことから、一・〇%増となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で四月〇・二%減の後、五月(速報)は、電気機械、鉄鋼等が増加したものの、輸送機械、石油・石炭製品等が減少したことから、〇・五%減となった。また、五月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は一〇六・九と前月を〇・八ポイント上回った。
 主な業種について最近の動きをみると、輸送機械では、生産は五月は増加し、在庫は二か月連続で減少した。電気機械では、生産は五月は増加し、在庫は二か月連続で増加した。化学では、生産は五月は減少し、在庫は三か月連続で減少した。
 第三次産業の動向を通商産業省「第三次産業活動指数」(四月調査、季節調整値)でみると、三月前月比〇・一%減の後、四月は、運輸・通信業、卸売・小売業、飲食店が増加したものの、不動産業、サービス業等が減少した結果、同一・〇%減となった。
 雇用情勢は、依然として厳しい。勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率は高水準で推移している。
 労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、四月〇・四八倍の後、五月〇・四六倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、四月〇・九〇倍の後、五月〇・七九倍となった。雇用者数は、減少している。
 総務庁「労働力調査」による雇用者数は、五月は前年同月比〇・六%減(前年同月差三十万人減)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、四月前年同月比〇・三%減(季節調整済前月比〇・二%減)の後、五月(速報)は同〇・三%減(同〇・〇%)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比一・三%減)、産業別には製造業では同二・四%減となった。五月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差十二万人減の三百十四万人、完全失業率(同)は、四月四・八%の後、五月四・六%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では四月前年同月比四・〇%減(季節調整済前月比一・四%減)の後、五月(速報)は同〇・八%減(同二・〇%増)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比二・三%減)。
 前記「全国企業短期経済観測調査」(六月調査)をみると、企業の雇用人員判断は、製造業で若干低下したものの、依然として高い水準にある。
 企業の動向をみると、企業収益は、持ち直しの兆しがみられる。また、企業の業況判断は、厳しい状態にあるが改善傾向にある。
 前記「全国企業短期経済観測調査」(六月調査)によると、大企業(全産業)では、経常利益は十年度下期には前年同期比一三・四%の減益の後、十一年度上期には同七・二%の減益が見込まれている。産業別にみると、製造業では十年度下期に前年同期比三三・〇%の減益の後、十一年度上期には同一九・四%の減益が見込まれている。また、非製造業では十年度下期に前年同期比七・二%の増益の後、十一年度上期には同四・九%の増益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では十年度下期に二・七一%になった後、十一年度上期は二・八五%と見込まれている。また、非製造業では十年度下期に二・二七%となった後、十一年度上期は二・一〇%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。
 また、中小企業の動向を同調査でみると、製造業では、経常利益は十年度下期には前年同期比一九・五%の減益の後、十一年度上期には同八六・五%の増益が見込まれている。また、非製造業では、十年度下期に前年同期比六・三%の減益の後、十一年度上期には同九・六%の増益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。
 企業倒産の状況をみると、件数は、春先からやや増加しているものの、信用保証制度の拡充の効果などから前年の水準を大幅に下回っている。
 銀行取引停止処分者件数は、五月は九百十九件で前年同月比三二・二%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、建設業で三三・五%、製造業で三二・八%の減少となった。

3 国際収支
―輸出は、おおむね横ばい状態―

 輸出は、おおむね横ばい状態となっている。
 通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で四月〇・四%増の後、五月は四・〇%減(前年同月比四・七%減)となった。この動きを品目別(金額ベース)にみると、一般機械等が減少した。同じく地域別にみると、EU等が減少した。
 輸入は、緩やかな増加の動きがみられる。
 通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で四月二・四%増の後、五月七・一%減(前年同月比八・八%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料、製品類(繊維製品)等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、中東等が増加した。
 通関収支差(季節調整値)は、四月に一兆五百二十二億円の黒字の後、五月は一兆五百四十九億円の黒字となった。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。
 四月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が縮小し、サービス収支の赤字幅が拡大したため、その黒字幅は縮小し、六千五百四十億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が縮小したものの、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、八千二百八十一億円となった。投資収支(原数値)は、一千八百八十八億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、二千百二十二億円の赤字となった。
 六月末の外貨準備高は、前月比二百二十七億ドル増加して二千四百六十四億ドルとなった。
 外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、六月は月初の百二十一円台から百十八円台に上昇したが、その後下落し下旬にかけて百二十一円台から百二十二円台で推移した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク十七時時点)は、六月は月初の百二十六円台から百二十二円台に上昇した後、百二十七円台まで下落し、月末には百二十四円台に上昇した。

4 物 価
―国内卸売物価は、このところ下げ止まりの動き―

 国内卸売物価は、このところ下げ止まりの動きがみられる。
 六月の国内卸売物価は、石油・石炭製品(燃料油)等が上昇したものの、電気機器(集積回路)等が下落したことから、前月比保合い(前年同月比一・七%の下落)となった。また、前記「全国企業短期経済観測調査」(大企業、六月調査)によると、製商品需給バランスは、引き続き改善がみられるものの、依然緩んだ状態にある。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したことに加え、円高から円ベースでは前月比〇・八%の下落(前年同月比一一・六%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比保合い(前年同月比一〇・九%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比〇・一%の下落(前年同月比四・〇%の下落)となった。
 企業向けサービス価格は、五月は前年同月比一・一%の下落(前月比〇・一%の下落)となった。
 商品市況(月末対比)は「その他」は下落したものの、化学等の上昇により六月は上昇した。六月の動きを品目別にみると、天然ゴム等は下落したものの、純ベンゼン等が上昇した。
 消費者物価は、安定している。
 全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で四月〇・一%の下落の後、五月はその他工業製品の下落幅が縮小したこと等により保合い(前月比〇・一%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で四月〇・一%の下落の後、五月は〇・四%の下落(前月比保合い)となった。
 東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で五月〇・二%の下落の後、六月(中旬速報値)は、持家の帰属家賃の上昇幅の拡大等により〇・一%の下落(前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で五月〇・六%の下落の後、六月(中旬速報値)は〇・四%の下落(前月比〇・二%の下落)となった。

5 金融財政
―長期金利は、上昇―

 最近の金融情勢をみると、短期金利は、六月は横ばいで推移した。長期金利は、六月は上昇した。株式相場は、六月は大幅に上昇した。M+CDは、五月は前年同月比四・一%増となった。
 短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、二、三か月物はともに、六月は横ばいで推移した。
 公社債市場をみると、国債利回りは、六月は上昇した。
 国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、前月比でみると五月は短期は〇・〇〇一%ポイント上昇し、長期は〇・一三五%ポイント低下したことから、総合では〇・〇二七%ポイント低下し一・七一八%となった。
 マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、五月(速報)は前年同月比四・一%増となった。また、広義流動性は、五月(速報)は同四・三%増となった。
 企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、六月(速報)は前年同月比五・七%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後一・二%減)となった。六月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が三百六十億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は一兆二百四十五億円となった。
 前記「企業短期経済観測調査」(全国企業、六月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いており、金融機関の貸出態度も「厳しい」超が続いているが、改善の動きがみられる。
 以上のように、民間金融機関の貸出が依然低調であるが、企業金融のひっ迫感はやや緩和している。
 株式市場をみると、日経平均株価は、六月は大幅に上昇した。

6 海外経済
―アメリカ、利上げ―

 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九八年十〜十二月期前期比年率六・〇%増の後、一〜三月期は同四・三%増となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。雇用者数(非農業事業所)は五月前月差〇・五万人減の後、六月は同二十六・八万人増となった。失業率は六月四・三%となった。物価は総じて安定している。五月の消費者物価は前年同月比二・一%の上昇、生産者物価(完成財総合)は同一・四%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準である。連邦市場公開委員会(FOMC)は、六月三十日に、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を〇・二五%引き上げ五・〇〇%とし、金融政策姿勢を「引締め」から「中立」へ変更した。六月の長期金利(三十年物国債)は、総じて上昇した。株価(ダウ平均)は、上下したが、月末を月初と比べるとやや上昇した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに減速しつつあるが、回復の動きもみられる。フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。イギリスでは、景気は減速しているものの、先行きに明るさがみられる。九九年一〜三月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率一・八%増、フランス同一・三%増(速報値)、イギリス同〇・二%増となった。鉱工業生産は、ドイツでは減少傾向にあるがそのテンポが緩やかになってきている。フランスでは伸びが鈍化しており、イギリスでは減少している(四月の鉱工業生産は、ドイツ前月比〇・七%増、フランス同〇・六%減、イギリス同〇・一%増)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ六月一〇・五%、フランス五月一一・四%、イギリス五月四・五%)。物価は、安定している(五月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比〇・四%、フランス同〇・四%、イギリス同一・三%)。
 東アジアをみると、中国では、景気は拡大しているが、消費の伸びは鈍化しており、輸出は減少している。物価の下落幅は拡大している。韓国では、景気は回復しつつある。失業率は高水準ながらもやや低下している。
 国際金融市場の六月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)六月三十日現在一一一・〇、五月末比〇・四%の増価)。内訳をみると、六月三十日現在、対円では五月末比〇・二%減価、対ユーロでは同〇・八%増価した。
 国際商品市況の六月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬に強含んだ後、総じて下落基調で推移したが、月末にはやや値を戻した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬に急上昇し、その後は十六ドル前後のレンジ内で上下したが、月末には再び上昇し、十六ドル台後半の水準まで回復した。


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税金365日 保険と税


国 税 庁


 国民の多くが加入している保険には、民間の保険会社が扱っている生命保険、損害保険のほか、農業協同組合(JA)等が扱っている各種の共済と、郵便局が窓口となっている簡易保険などがあります。
 これらの保険に加入し保険料を支払った場合は、所得税を計算する際の基礎となる所得金額から支払保険料に応じて一定額が控除されます。また保険金を受け取った場合は、契約内容などにより、相続税や贈与税あるいは所得税の課税関係が生じる場合があります。
 そこで、保険に関する税金のあらましを説明しましょう。

 生命保険料を支払った場合

 所得者本人や家族を受取人とする生命保険や簡易保険、生命共済の保険料又は掛金(以下「保険料」といいます。)を支払った場合は、その年中の支払額に応じて、一定額(最高十万円)が「生命保険料控除」として、その年の所得金額から控除されます。
 ただし、保険期間が五年に満たない生命保険契約や生命共済に係る契約で、被保険者が保険期間満了の日に生存している場合など特定の場合に保険金が支払われることになっているものの保険料は、生命保険料控除の対象となりません。
 また、その年に生命保険契約に基づいて受け取った剰余金や割戻金は、支払った保険料から差し引くことになっています。

1 生命保険料控除額の計算
 その年中に支払った保険料を、一定の要件に該当する個人年金保険料と、一般の生命保険料とに区分し、それぞれについて次により計算した金額を合計した額(最高十万円)が控除額になります(表参照)。

2 生命保険料控除を受けるための手続
 (1) サラリーマンの場合
  通常、年末調整でこの控除を受けることになりますので、「給与所得者の保険料控除申告書」にその年中に支払った生命保険料の金額などの必要事項を記載して、年末調整までに勤務先に提出してください。
 (2) 事業所などを行っている方の場合
  確定申告書に必要事項を記入して確定申告を行うことにより、この控除を受けることになります。
  なお、一般の生命保険料にあっては、支払った保険料が一契約につき年間九千円を超えるものについて、個人年金保険料については、その金額の多少を問わずすべてのものについて、保険会社などの発行する証明書などを添付又は提示することが必要です。

 生命保険金を受け取った場合

 生命保険契約に基づいて一時金や年金を受け取った場合は、生命保険契約の保険料をだれが負担していたかによって、相続税や贈与税あるいは所得税の課税対象になります。

1 満期保険金を一時に受け取った場合
 (1) 保険料を負担していた人が保険金受取人のとき
  受け取った保険金から負担した保険料を差し引いた金額が、一時所得として所得税の課税対象となります。ただし、一時所得には五十万円の特別控除があり、これを超える額の二分の一に対して税金がかかることになっています。
  なお、一時払養老保険又は一時払損害保険の差益(保険期間が五年以下のものや契約期間が五年超のもので五年以内に解約されたもの)については、受け取るときに一律に二〇%(このうち五%は地方税)の税率での源泉徴収による源泉分離課税となります。
 (2) 保険料を負担していた人以外の人が保険金受取人のとき
  受け取った保険金に対して贈与税がかかります。
  なお、贈与税は、その年一年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から六十万円の基礎控除額を差し引いて計算します。

2 死亡保険金を一時に受け取った場合
 (1) 保険料を負担していた人が死亡したとき
  保険金受取人に相続税がかかります。ただし、保険金受取人が相続人であるときは、相続人の受け取った保険金の合計額のうち、法定相続人の数に五百万円を掛けた金額までが非課税となります。
  なお、相続税は、亡くなった人の「正味の遺産額」が「基礎控除額」〔五千万円+(一千万円×法定相続人の数)〕を超える場合に、その超える額に対して課税されます。
 (2) 保険料を負担していた人が保険金受取人のとき
  受け取った保険金から負担していた保険料を控除した金額が、一時所得として所得税の課税対象となります。
 (3) 保険料を負担していた人が保険金受取人でも死亡した人でもないとき
  保険金受取人に贈与税がかかります。

3 満期保険金を年金で受け取る場合
 (1) 保険料を負担していた人が年金の受取人のとき
  毎年受け取る年金は、雑所得として所得税の課税対象となります。
 (2) 保険料を負担していた人以外の人が年金の受取人のとき
  保険金を年金として受給する権利を贈与によって取得したものとみなされ、その受給に関する権利の価額が贈与税の課税対象となるとともに、毎年受け取る年金は、雑所得として所得税の課税対象となります。
  なお、(1)及び(2)の雑所得の計算に当たっては、その年に受け取る年金に見合う支払保険料を控除することになっています。

4 死亡保険金を年金で受け取る場合
 (1) 保険料を負担していた人が死亡したとき
  保険金を年金として受給する権利を相続や遺贈によって取得したものとみなされ、その受給に関する権利の価額が相続税の課税対象となるとともに、毎年受け取る年金は、雑所得として所得税の課税対象となります。
 (2) 保険料を負担していた人が年金の受取人のとき
  毎年受け取る年金は、雑所得として所得税の課税対象となります。
 (3) 保険料を負担していた人が年金の受取人でも死亡した人でもないとき
  保険金を年金として受給する権利を贈与によって取得したものとみなされ、その受給に関する権利の価額が贈与税の課税対象となるとともに、毎年受け取る年金は、雑所得として所得税の課税対象となります。
  なお、(1)、(2)及び(3)の雑所得の計算に当たっては、その年に受け取る年金に見合う支払保険料を控除することになっています。

5 各種特約に基づく給付金を受け取った場合
 生命保険契約の特約に基づく給付金で、身体の傷害や疾病を原因とする傷害給付金や入院給付金などを受け取った場合は非課税となり、所得税も贈与税もかかりません。
 なお、多額の医療費を支払った場合は、確定申告をすることにより医療費控除が受けられますが、生命保険契約に基づく入院給付金や手術給付金などを受け取っているときは、支払った医療費からこれらの給付金を差し引いて、負担した医療費を計算することになっています。

 損害保険料を支払った場合

 所得者本人や本人と生計を一にする配偶者その他の親族が所有している住宅や家財のうち一定のものを保険の目的とする損害保険契約等、又はこれらの人の身体の傷害や入院による医療費の支出に基因して保険金などが支払われる損害保険契約等に基づく保険料や掛金を支払ったときには、保険期間が十年以上で、満期返戻金が支払われる長期損害保険料の場合は、最高一万五千円が、それ以外の短期損害保険料の場合は最高三千円が「損害保険料控除」として、その年の所得金額から控除されます。
 なお、長期損害保険料と短期損害保険料とがある場合の控除額は、合計で最高一万五千円です。
 控除を受けるためには、保険会社などの発行する証明書などを添付又は提示することが必要です。
 また、サラリーマンについては、通常、生命保険料を支払った場合と同様に年末調整の際に控除を受けることになりますので、必要事項を記載した「給与所得者の保険料控除申告書」を年末調整までに勤務先に提出してください。

 損害保険金を受け取った場合

 損害保険金を受け取った場合も、保険料の支払者や支払原因によって課税方法が異なりますが、保険を掛けていた人が建物の焼失や身体の傷害・疾病(死亡を伴わないものに限ります。)を原因として受け取る保険金には原則として課税されません。
 しかし、例えば事業の商品や店舗が火災で焼失した場合、焼失した商品の損害保険金は事業収入(売上げ)になります。また、焼失した店舗の損害保険金は、店舗の損失額を計算する際に差し引くことになります。
 また、偶然な事故に基因する死亡に伴い支払われる損害保険金で、その保険料の全部又は一部を被相続人が負担したものについては、その保険金のうち、全部又は一部に相続税が課税されます。

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     ◇     ◇     ◇

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八月の気象


 日本の夏の主役は、太平洋高気圧とオホーツク海高気圧です。夏の天気図を見ると、前半は日本の南に太平洋高気圧、北海道の北にはオホーツク海高気圧があって、この間を梅雨前線が東西に延びるパターンがよく現れます。例年ですと、東日本などでは七月下旬ごろ太平洋高気圧が日本の上空に張り出し梅雨前線が北上して、夏の訪れとなります。そして、八月になって太平洋高気圧が主役の座を確保しさらに勢力を増してくると、いよいよ暑さも本格的になってきます。
◇近年の夏の太平洋高気圧、オホーツク海高気圧の動向
 最近の夏における太平洋高気圧の強さとオホーツク海高気圧の強さの年々の変化を見ると、一九八〇年代後半からはともに平年より強い傾向となっています。太平洋高気圧におおわれると暑夏となりますが、オホーツク海高気圧が強いと、北から湿った冷たい空気が流れ込み低温やぐずついた天候となる傾向があります。一九九三年は太平洋高気圧が弱く、オホーツク海高気圧が強かったため、低温・多雨・寡照、つまり冷夏となりました。一九九四年は太平洋高気圧がかなり強く、オホーツク海高気圧は平年程度であったため暑夏となっています。一九九八年は太平洋高気圧、オホーツク海高気圧がともに強かったため、西日本、南西諸島は暑夏となったものの、北日本、東日本は夏型の気圧配置が安定せず多雨・寡照となりました。八月になっても、本州北部では梅雨前線が停滞し、活動が活発となって、大きな災害をもたらしました。
(気象庁)



    <8月18日号の主な予定>

 ▽通信白書のあらまし…………………郵 政 省 

 ▽家計収支(四月分)…………………総 務 庁 

 ▽毎月勤労統計調査(四月分)………労 働 省 




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