官報資料版 平成11年9月1日




                  ▽平成十一年度農業観測………農林水産省











平成11年度


農業観測


農林水産省


 農林水産省は、農林水産統計観測審議会(農業観測部会)の答申を得て、去る六月十一日に「平成十一年度農業観測」を公表した。その概要は次のとおりである。なお、生産見通しについては平年作を前提としており、見通しの増減、騰落幅については、表の用語で記述している。


第1 農産物需給をめぐる動向

1 国内経済

 最近の我が国経済の動向をみると、八年度は、堅調な設備投資や住宅投資、消費税率引上げ前のかけ込み需要等もあり、緩やかな回復を続けた。
 九年度は、個人消費が低調に推移し、在庫調整圧力の高まりや生産、雇用の減少等により、最終需要の停滞の影響が実体経済全体にまで及んだことから、景気は停滞し、実質GDPの伸びはマイナス〇・四%と、昭和四十九年度以来、二十三年ぶりにマイナス成長となった。
 十年度は、金融機関の経営に対する信頼の低下、リストラや企業倒産の増大による雇用不安や年金の先行きに対する不安等から、家計や企業のマインドが冷え込み、年末以降、経済対策の効果が徐々に現れ始めてきたものの、消費、設備投資、住宅投資といった民間需要が低調なため、きわめて厳しい状況となった。
 分野別にみると、個人消費は、収入の減少に加え、将来に対する不安等から消費者の財布のひもが固く、九年度に引き続き低調に推移した。住宅建設は、低水準で推移したものの、持家を中心に持ち直しの動きがみられた。設備投資は、大幅な減少が続いた。鉱工業生産・出荷は、年末以降、下げ止まりの動きがみられ、鉱工業生産者製品在庫は、在庫の調整が進み、在庫率は前年度を下回る水準にまで低下してきた。雇用情勢は、完全失業率がこれまでにない高さに上昇するなど、厳しさを増した。国内卸売物価は弱含みで推移した。経常収支黒字は振れを伴いつつも拡大傾向で推移した。
 十一年度は、公的需要が下支えをし、民間需要も緩やかながら回復すると見込まれることから、政府経済見通し(一月十八日閣議決定)において、実質経済成長率は〇・五%程度と見込んでいる。

2 食料経済

(1) 食生活
 我が国の食料消費は、主食である米の消費が低下する一方、畜産物や油脂類の消費が大きく伸びてきたが、近年、量的には伸びが鈍化してきており、飽和水準に達しつつあるとみられる。また、供給熱量についても、ほぼ飽和水準に達したものとみられる。九年度の国民一人・一日当たり供給熱量は二千六百三十八キロカロリーとなった。
 なお、米を中心に水産物、畜産物、野菜等、多様な副食品からなる「日本型食生活」は、栄養的にもバランスが取れており、健康維持の点からも適当であるとして、諸外国からも注目されていた。
 しかしながら、近年の栄養の摂取状況を必要量に対する摂取量の割合(充足率)でみると、エネルギーの摂取は、男女別・年齢階層別で過不足がある。また、栄養素別の比率では、脂質が二六・六%となり、適正比率の上限値とされる二五%を超えるなど、栄養バランスの点で問題が生じてきている。

(2) 食料消費第1図参照
 一人当たり実質食料消費支出(全世帯)の主要品目分類の動向を、総務庁「家計調査」でみると、九年度は、調理食品は増加したものの、穀類等の多くの品目で減少したことにより、一・三%減少した。十年度は、景気が依然として低迷していること等から、穀類、し好食品は増加したものの、副食品、外食で減少したことにより、〇・一%減少した。そのなかで、食の外部化やサービス化等の傾向を反映し、弁当類、冷凍調理食品等を含む調理食品が増加した。世帯主の年齢階層別の外食及び調理食品の動向をみると、外食では、若年齢層で増加し、調理食品では、若年齢層に比べて高年齢層で増加している。また、男性単身者では外食と調理食品を合わせると、食料消費の七割弱を占めている。
 十一年度の食料消費は、消費支出全体が緩やかながら回復に向かうとみられることから、わずかに増加すると見込まれる。また、食料品消費者価格は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。

(3) 食品産業
(概 況)
 我が国全体の飲食費の動向を、総務庁ほか十省庁の「産業連関表」を用いた農林水産省の試算でみると、七年の飲食費の総額は八十兆四千億円となっている。飲食費に占める帰属割合をみると、関連流通業、外食産業で伸びている一方、食品工業、農水産業で低下しており、農水産業は実額ベースでも年々低下する傾向にある。また、食用農水産物の国産・輸入別取扱い額では、輸入の割合が増加しており、国産農水産物に比べ直接消費や外食の割合が高まっている。
(外食産業)
 外食及び中食の動向を、(財)外食産業総合調査研究センターが推計した市場規模でみると、十年は個人消費の低迷等により、外食の伸びが鈍化し、〇・九%減の二十八兆九千億円と四年ぶりに前年を下回った。また、着実な伸びを示していた中食でも増加率が縮小し、二・九%増の五兆八千億円にとどまった。
(食品流通業)
 飲食料品小売業の業態別販売額構成比を、通商産業省「商業統計調査」でみると、「スーパー及びコンビニエンス・ストア」が増加しており、飲食料品専門店等は減少している。また、スーパーにおける食料品販売額(既存店)は、七年度以降前年度を下回っており、十年度は一・七%の減少となった。
 飲食料品卸売業の規模別商店数の推移をみると、大規模店化の動きがみられる。
(食品工業)
 加工原材料に占める国産農水産物の割合は、近年、大きな変化はなく、七年では約六六%となっている。一方、輸入では、未加工の農水産物が年々減少し、一次加工品の割合が約九%と増加している。

3 世界の食料需給

(1) 近年の穀物等の需給動向
 近年の穀物等の国際需給の動向をみると、需要面では、開発途上国を中心とした人口の増加に加え、畜産物消費の増加に伴う飼料需要が増大していること等から、消費量は着実に増加している。
 一方、供給面では八〇年代前半には、米国での豊作、EUでの共通農業政策(CAP)の効果、品種改良の進展や農業資材投入量の増加などによる単収の伸び等の影響により、生産量は大きく増加し、農産物の過剰問題が深刻化した。
 九〇年代に入ると、米国やEUなど主要輸出国において、財政負担の軽減にむけて在庫水準を削減するために、生産調整による供給管理が行われたこと、八八年の北米地域を中心とする干ばつや、ソ連、中国の不作等により過剰在庫は解消し、九五/九六年度の米国の天候不順による不作等により、九五/九六年度の穀物の期末在庫率は、七〇年代前半のひっ迫期の水準を下回るなど、需給はひっ迫した。
 しかし、九六/九七年度以降、米国においては、九六年農業法によって減反が廃止されたほか、EUにおいても同年度から実質減反率を大きく縮小させる方向が打ち出され、作付面積の増加により生産量が再び大きく増加していること、中国においても九六年以降生産刺激策がとられたことから生産が拡大していること、さらに、潜在的な生産力が高いアルゼンチンやブラジル等南米諸国においても最近急速に生産が拡大していること等もあり、ここ数年需給は緩和傾向で推移している。九八/九九年度は、飼料穀物は米国におけるとうもろこしの豊作の影響等により生産量が消費量を上回るものの、小麦、米については、それぞれ旧ソ連等における干ばつ、中国における洪水の影響等により生産量が消費量を下回ることから、世界全体の穀物の生産量は三年ぶりに消費量を下回り、期末在庫量は九七/九八年度の水準を下回るものと見込まれている。

(2) 価格の推移第2図参照
 近年の小麦、とうもろこし及び大豆の価格動向を国際取引指標となるシカゴ商品取引所の期近価格でみると、九五年は、低水準の在庫率等を背景に穀物等の価格はほぼ一貫して上昇を続けた。これは、九三年の米国中西部の洪水、九四年のオーストラリアの干ばつ及び中国の洪水と干ばつ、九五年の米国中西部の作付期における長雨及び夏期の高温等、主要国において天候不順が続いたため、九三/九四年度から九五/九六年度までの三年間、穀物の生産量が消費量を下回り、期末在庫率が低下したことによる。特に、九五/九六年度は、世界の消費量が引き続き増加する中で、最大の輸出国である米国の生産量が、小麦で六・〇%、とうもろこしで二六・四%、大豆で一三・五%と大きく減少し、供給力が著しく低下したこと等から、期末在庫率は史上最低となり、小麦及びとうもろこしの価格は、九六年四月から七月にかけて史上最高を記録するとともに、大豆の価格もこれに連動して高騰した。
 しかし、九六/九七年度は中国で史上最高の豊作となったのをはじめとして、米国、カナダ、EU等でも記録的な豊作となったことから、四年ぶりに生産量が消費量を上回り、九六年夏をピークに小麦とうもろこしの価格が下落に転じた。また、大豆は、九六年秋に一時下落した後、九七年夏ごろまでは中国の堅調な飼料需要等により上昇していたが、夏をピークに再び下落に転じた。
 特に、九七年夏以降は、アジア諸国における経済危機を背景として、それまで堅調であった穀物等の需要が鈍化する一方、生産面については、米国や南米諸国、中国での豊作等により輸出国間での競争が激化したこと等から下落を続け、九八年九月には小麦が約二十一年ぶり、とうもろこしが約十年ぶりの安値水準にまで下落したほか、九九年二月末には大豆が約二十三年ぶりの安値水準にまで下落するなど、価格は低迷を続けている。
 また、主要輸出国である米国においては、期末在庫量が九六/九七年度以降いずれも大幅に増加しており、期末在庫率が高水準にあること、近年の世界的なデフレ傾向や、当用買いによる対応が中心となり、価格低落時にも需要が伸びないという傾向があること等から、現在の低価格は当分の間続くとみられる。
 しかしながら、世界の穀物の在庫率をみると、九八/九九年度は、一七・七%と見込まれており、価格の高騰した九五/九六年度の一四・四%に比べると若干高い水準にあるものの、過去の傾向からみるとむしろ低い水準にあることから、気象変動等の要因によっては、需給環境が大きく変わる可能性があることに留意が必要である。
 米については、国際取引指標となるタイ国貿易取引委員会公表価格(うるち精米、砕米混入率一〇%未満のFOB価格)をみると、九七年当初は、タイの収穫遅れや輸出業者による調達の遅れ等により上昇したが、中国等の豊作で輸出不振となったこと等から四月以降下落し、八月にはほぼ二年ぶりに二百ドル/トン台となった。その後も東南アジア各国の通貨の切下げ等により続落していたが、九七年末になりエルニーニョ現象の影響を受けているインドネシア、フィリピン等への輸出が拡大したため再び上昇し、九八年十月まで堅調に推移した。十月中旬以降、需要の一巡や輸出競争の激化、タイの豊作見通し、大口需要の低迷等により価格は低下傾向にあったが、十二月に入ってからは下げ止まりをみせ、九九年に入るとバーツ高の影響もあり再び上昇に転じた。しかし、二月以降、インドネシアの輸入需要の減少、イラクやイラン、フィリピンなどが、価格の安いパキスタンやベトナム産に買付けをシフトさせていること等から四月末にかけて再び下落した。しかし、ここ数年、タイにおいては輸出量が多かったことから在庫量は減少しており、新穀を含めても需給はひっ迫するとみられること等もあり、五月に入って多少値を戻している。

(3) 九八/九九年度の穀物等の需給動向
(生 産)
 九八/九九年度の穀物等の生産量は、小麦は、天候に恵まれ高単収となった米国、生育期後半から収穫期にかけて洪水や降霜被害に見舞われたものの作付面積の増加により増産が見込まれるオーストラリア、デュラム小麦を中心に増産が見込まれるEU等で増加するとみられるものの、干ばつに見舞われた旧ソ連、作付面積の大幅減に加え単収も低下するとみられるアルゼンチンにおいて大幅に減少し、また、中国でも、作付期に乾燥した天候が続き作付けが遅れたことからかなりの程度減少するとみられること等から、全体では三・六%減の五億八千七百九十六万トンと見込まれている。
 飼料穀物は、天候に恵まれ豊作となった米国やカナダ、作付面積の増加に加え単収が大幅に上昇した中国等で増加するとみられる一方、干ばつの影響により単収が大幅に低下した旧ソ連、降雨不足と価格低迷によりとうもろこしの作付面積が減少したアルゼンチン、面積の減少に加え三月の熱波によりとうもろこしの単収が大幅に低下するとみられる南アフリカ等で大幅に減少するとみられることから、全体では〇・三%減の八億七千七百七十五万トンと見込まれている。なお、品目別には、とうもろこしは、高単収により史上最高の生産量となったカナダ、面積の増加に加え順調な天候により高単収が見込まれる中国等で大幅に増加するとみられることから、三・三%増加すると見込まれている。また、大麦は、旧ソ連や東欧、オーストラリア等で減産とみられることから一一・二%減少し、ソルガムは、インドや中国での増産等により八・一%増加すると見込まれている。
 大豆は、中国、アルゼンチンでやや減少し、ブラジルでわずかに減少するとみられるものの、最大の生産国である米国で、作付面積が史上最高となったうえ、遺伝子組換え大豆が増加したことや天候に恵まれたことから高単収となり、わずかに増加するとみられることから、〇・一%増の一億五千七百八十四万トンと見込まれており、史上最高の生産量になるとみられる。
 米は、前年度に干ばつにより生産が落ち込んだインドネシア、作付面積が増加した米国やブラジル等において増加するとみられるものの、洪水に見舞われた中国、インド、バングラデシュ、干ばつにより単収が低下したベトナム等で減少するとみられることから、全体では一・五%減の三億七千九百六十万トンと見込まれている。
(消 費)
 消費量については、小麦は、大幅な生産減となった旧ソ連で大幅に減少するほか、インドでわずかに減少するものの、低価格により飼料用消費が増加するとみられる米国やEU等で増加するとみられるため、〇・九%増の五億九千十万トンになると見込まれている。また、用途別には、価格が安かったこと等から、飼料用消費の伸び率がその他の消費の伸び率を上回るとみられている。
 飼料穀物は、米国で工業用需要が増加するとみられるほか、中国でも家畜飼養頭数の増加により飼料需要が増加するのに加え、モルト用大麦の消費も増加するとみられるものの、旧ソ連において畜産部門の縮小により大幅に減少するとみられるほか、EUにおいては畜産用配合飼料に大豆かすや低品質小麦が多く使われ、とうもろこしや大麦の割合が減少するとみられることからわずかに減少するとみられること、畜産の縮小と飼料用小麦の輸入拡大が続く韓国でもかなりの程度減少するとみられることから、〇・三%減の八億七千三十一万トンになると見込まれている。
 大豆は、中国やインドにおいて引き続き油脂需要が堅調であるほか、アルゼンチンやブラジル等においても消費量の増加が見込まれるなど、引き続き世界的に需要が堅調とみられることから、五・七%増の一億五千四百四十五万トンと見込まれている。
 米は、インドネシアやベトナムでわずかに減少するとみられるものの、世界の全消費量の約六割を占める東南アジア全体でみるとほぼ前年度並みとなるほか、米国でやや増加するとみられること等から、〇・五%増の三億八千五百七十一万トンと見込まれている。
(貿 易)
 貿易量については、小麦は、とうもろこしに代わって小麦の飼料用消費が増加した韓国や、洪水に見舞われ、大量の食糧援助を受けたバングラデシュで輸入量が大幅に増加するほか、干ばつ被害により生産量が大幅に減少したロシアでかなり大きく増加するとみられるものの、生産量が回復するEUやモロッコ等エジプトを除く北アフリカ諸国、多くの小麦粉在庫を抱えているうえ、小麦粉への消費者補助金の廃止により消費が米にシフトしているインドネシア、近年の豊作により大量の在庫を抱えている中国等で大幅に減少するとみられること等から、五・四%減の九千五百三十八万トンと見込まれている。
 飼料穀物は、韓国において畜産の減少や飼料用小麦の輸入増加によりやや減少するとみられ、最大の輸入国である日本においても家畜の飼養頭羽数の減少等により減少するとみられるものの、ロシアにおける大幅な減産により米国やEUからの援助によるとうもろこしやライ麦を中心に輸入量が大幅に増加するとみられるほか、中国においても大麦を中心に輸入量が大幅に増加するとみられること等から、全体では四・四%増の九千十八万トンになると見込まれている。
 大豆は、ブラジルにおいて生産量の減少にもかかわらず、通貨レアルの下落により競争力を高めたことから中国やEU向けを中心に堅調な輸出が続いているものの、全体としてみれば大豆製品(大豆油、大豆かす)の輸入需要に押されて大豆の輸入需要は低迷しており、米国やアルゼンチン等他の主要輸出国において輸出量が減少するとみられることから、三・〇%減の三千八百五十一万トンと見込まれている。
 米(九九暦年)は、干ばつによる減産により前年度に大量の輸入を行ったインドネシア、台風被害による減産により同じく前年度に大量の輸入を行ったフィリピン、九八/九九年度は大幅な増産が見込まれるブラジル等で輸入量が大幅に減少するとみられるため、全体では一九・九%減の二千百九十六万トンと見込まれている。
(在 庫)
 期末在庫量は、小麦は、生産量が減少する一方で消費量は着実に増加するため、一・五%減少すると見込まれる。在庫率については、〇・六ポイント低下し二三・二%になると見込まれている。なお、米国及びEUの期末在庫量は輸出量の増加にもかかわらずともに大幅に増加すると見込まれる。
 飼料穀物は、生産量が消費量をわずかに上回るため、五・五%増加するとみられ、在庫率は〇・九ポイント上昇して一六・四%になると見込まれている。また、米国の期末在庫量は、前年度に比べ三二・五%増加するとみられ、世界の全在庫量の三分の一強を占めている。なお、米国のとうもろこしの期末在庫量は、世界の約五割を占めている。
 大豆は、消費量が増加するとみられるものの、依然として生産量が消費量を上回るとみられることから一一・八%増加するとみられ、在庫率は一・一ポイント上昇して四年ぶりに二〇%を超え、二〇・七%になると見込まれている。なお、米国の期末在庫量は、前年度に比べ二一七%増の一千百八十万トンに達するとみられており、世界の期末在庫量の約四割を占めている。
 米は、消費量が生産量を上回ることから、期末在庫量は一一・六%減の四千六百七十四万トンと見込まれている。この結果、在庫率も一・七ポイント低下し、一二・一%と七二/七三年度以来の低水準になると見込まれる。

(4) 一九九九/二〇〇〇年度の穀物等の需給動向の見通し
@ 小 麦
(生 産)
 一九九九/二〇〇〇年度の小麦の生産量は、南半球の小麦の作付けが行われていないため流動的な要素はあるが、インド、旧ソ連、アルゼンチン等で増加するとみられるものの、米国、EU、中国等で減少するとみられることから、世界全体ではわずかに減少すると見込まれる。
(消費、貿易)
 旧ソ連諸国を中心に飼料用消費が減少する一方、発展途上国を中心とした人口増加及び食生活の高度化による食糧用消費が増加するとみられるため、消費量はわずかに増加すると見込まれる。貿易量は、前年度に飼料用小麦の輸入が増加した韓国で減少するとみられるものの、減産が見込まれる中国、東欧、モロッコや、消費量が伸びているイラン等で輸入量の増加が見込まれること等から、やや増加すると見込まれる。
(在庫、価格)
 期末在庫量は、生産量がわずかに減少し、消費量がわずかに増加するとみられることから、かなり大きく減少し、期末在庫率は史上三番目の低水準になると見込まれる。特に、生産量の減少が見込まれるEU及び中国で在庫量は大幅に減少するとみられる。
 価格の動向を国際取引指標となるシカゴ商品取引所の期近価格でみると、九八年は、三月まではおおむね三・二〜三・四ドル/ブッシェルで推移したが、四月以降は、米国での好天や、低調な消費・輸出等によりスパイラル的な下げが続き、ロシアの金融危機や米国の株価急落の影響を受けた九月一日には約二十一年ぶりの安値をつけた。九月に入ってからは、米国における乾燥懸念や輸出需要の増加等から上昇に転じ、その後もアジア株式・通貨の上伸やロシアに対する食糧支援への期待等から上昇を続けていたが、十月中旬以降は一進一退で進んだ。年末から九九年一月初旬にかけて、援助がらみで一時上伸したものの、その後は輸出需要の低迷、世界的な供給過剰感等からさらに大きく下落し、九九年二月二十六日には昨年秋の安値水準近くまで値を下げた。三月に入り、中国や米国の冬小麦地帯での乾燥懸念や輸出需要の改善等から大きく値を戻したものの、米国産地の天候回復や低調な輸出による高い在庫水準等により再び下落し、現在、二・五ドル/ブッシェル台前後で推移している。
 今後については、一九九九/二〇〇〇年度の作付けが確定していないため流動的な要素もあるが、生産量が減少するなかで消費量は着実に増加し、世界の在庫率が一〇%台に低下するとみられるものの、米国やカナダ、EU等の主要輸出国における、持越在庫により、供給面で余力があるとみられることから、当面は現在の弱含みの水準で推移するものと見込まれる。
A 飼料穀物
(生 産)
 一九九九/二〇〇〇年度の世界の飼料穀物の生産量は、北半球で作付けが始まったばかりであり、南半球での作付けは秋以降とかなり先であるため、流動的な要素があるが、米国、カナダ、EU等で減少するとみられるものの、中国、旧ソ連、アルゼンチン等で増加するとみられることから、わずかに増加すると見込まれる。品目別には、大麦、ソルガムは減少が見込まれるものの、とうもろこしは増加が見込まれる。
(消費、貿易)
 消費量は、経済危機が回復しつつあるアジアや、工業用需要が伸びている米国で増加するとみられるほか、中国でも畜産需要に加えモルト用大麦の消費も増えるとみられることからわずかに増加すると見込まれる。これらの結果、消費量は史上最高に、貿易量はわずかに増加すると見込まれる。
(在庫、価格)
 期末在庫量は、消費量が史上最高に達するものの、依然として生産量が消費量を上回るとみられるため、わずかに増加すると見込まれる。
 価格の動向(とうもろこし)を国際取引指標となるシカゴ商品取引所の期近価格でみると、九八年は、米国産に対するアジアの需要減や南米の豊作等から下落傾向が続き、七月中旬以降は、作況の改善、輸出の不振等により再び大きく下落し、八月末から九月中旬にかけては、約十年ぶりに二ドル/ブッシェルを割り込む水準となった。その後は米国中西部での降雨やアジアの株式・通貨の上伸、南米の乾燥懸念等による上昇局面もみられたが、天候回復や米国における豚飼養頭数の減少による飼料用需要の減少等により再び下落に転じた。年末から年初にかけて、米国で寒波を背景とした飼料消費の増加期待により一時上伸したが、南米での豊作見通し等により再び下落した。二月中旬以降、供給過剰感等により再び下落した後、輸入需要の増加や南アフリカの乾燥懸念、米国における作付面積の減少見込み等から二月末を底値に三月末にかけて大きく上昇した。四月に入り、在庫水準が高いこと等から再び下落に転じたが、米国での作付作業が本格化しつつある現在、価格は天候要因によって動く展開になっており、五月中旬現在、二・二ドル/ブッシェル台で推移している。
 今後については、一九九九/二〇〇〇年度の作付けが確定していないことや、今後の気象動向により流動的な要素もあるが、堅調な輸入需要が見込まれる一方で、豊富な持越在庫により、主要輸出国における供給余力は記録的水準に達するとみられること、期末在庫量の増加が見込まれること等から、当面は現在の弱含みの水準で推移すると見込まれる。
B 大 豆
(生 産)
 一九九九/二〇〇〇年度の世界の大豆の生産量は、北半球で作付けが始まったところであり、南半球では秋以降に作付けられるため流動的な要素があるが、ブラジル、アルゼンチン等で減少が見込まれるものの、米国でやや増加するとみられること等から、史上最高であった前年度を上回り、わずかに増加すると見込まれる。
(消費、貿易)
 消費量は、中国等を中心として引き続き油脂需要が堅調とみられることから増加すると見込まれ、貿易量も増加が見込まれる。なお、遺伝子組換え大豆については、除草剤耐性があること等から米国を中心に近年作付けが増加しているが、一方で、安全性確認の観点からEUにおいて遺伝子組換え食品の表示が義務付けられるなどの動きが出ており、遺伝子組換え品種の動向は今後の需給構造に影響を与えるものとみられる。
(在庫、価格)
 期末在庫量は、生産量が消費量を上回るとみられることからかなりの程度増加すると見込まれる。なお、米国の期末在庫量は、輸出や消費の伸びにもかかわらず大幅に増加し、八五/八六年度の記録を上回り、史上最大になると見込まれる。
 価格の動向を国際取引指標となるシカゴ商品取引所の期近価格でみると、九八年は、南米諸国の豊作見込みや、米国の順調な作付け等から下落傾向が続き、六月から七月にかけて干ばつ懸念等から一時急伸したものの、七月下旬以降は、米国の豊作見込みや低調な輸出需要により再び大きな下落に転じた。十月以降は、アジアの株式・通貨の上昇と米国産大豆の収穫の遅れ、ロシアへの食糧支援期待や南米産地の乾燥懸念等から十二月上旬まで上昇したが、その後は南米主産地における降雨により作柄が改善したため急落した。九九年に入ってからも、ブラジルの通貨下落や南米での豊作見通し等からほぼ十二年ぶりに五ドル/ブッシェルを割り込むなど大きく下落しており、二月末には、四・四九七五ドル/ブッシェルと約二十三年ぶりの安値となった。その後は、降雨による南米産地での収穫遅延の懸念等から上昇に転じているものの、市場には依然として過剰感がみられることからその水準は低く、五月現在、四・七ドル/ブッシェル台となっている。
 今後については、油脂需要を中心に消費量は増加するものの、生産量の増加により米国を中心に期末在庫量の増加が見込まれ、供給過剰気味であることから、当面は低水準の現在の水準をさらに下回って推移すると見込まれる。
 ただし、秋以降については、一九九九/二〇〇〇年度の作付けが確定していないことや、気象動向により流動的であるため、今後の動向を注視する必要がある。

第2 農産物

1 概 況

(1) 国内農業生産第3図参照
(十年度の動向)
 十年度の農業生産の動向を生産指数でみると、米、果実等でかなりの程度減少したため、全体では六%程度減少したとみられる。
 耕種作物では、米は生産調整目標面積の大幅な増加等から一〇%程度の減少、麦類は作柄不良となったことから一〇%程度の減少、大豆は作付面積が大幅に増加したことから九%程度の増加、野菜は春野菜、夏秋野菜、秋冬野菜で天候不順により葉茎菜類を中心として単収が低下したとみられることから四%程度の減少、果実は前年産が豊作であったことや天候不順の影響により一三%程度の減少、花きは切花類等の収穫量が天候不順の影響を受けたものの一%程度の増加となったとみられる。これらの結果、耕種作物は、かなりの程度減少したとみられる。
 畜産物では、肉用牛及び豚はほぼ前年度並みとなったとみられるものの、ブロイラー、鶏卵等は減少したとみられることから、全体では一・四%程度減少したとみられる。
(十一年度の見通し)
 十一年度は、果実、野菜等の増加により、全体ではわずかに増加すると見込まれる。
 耕種作物では、米は作柄の悪かった前年産に比べわずかに増加、麦類は作付面積の増加もあり作柄の悪かった前年産に比べかなりの程度増加、大豆は作柄の悪かった前年産に比べ大幅に増加、野菜は春野菜、夏秋野菜、秋冬野菜で作柄不良となった前年産に比べ増加するとみられること等からわずかに増加、果実はみかん、りんご等で増加するとみられることからややないしかなりの程度増加、花きは球根類でやや減少、切花類、鉢もの類、花壇用苗もの類で増加するとみられること等からわずかに増加すると見込まれる。これらの結果、耕種作物は、わずかに増加すると見込まれる。
 また、畜産物では、豚、生乳はほぼ前年度並みとみられるものの、ブロイラー、鶏卵、肉用牛は減少するとみられること等から、全体では前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。

(2) 農産物輸入第4図参照
(十年度の動向)
 十年度の農産物輸入の動向を数量指数でみると、全体では二・二%増加した。
 品目別にみると、穀物及びその調製品は、大麦及び裸麦が増加したことに加え、米がWTO農業協定に基づくミニマム・アクセス分により増加したこと等から二・〇%増加、果実及びその調製品は、米国産のオレンジ、グレープフルーツが減少したこと等から一・九%減少、野菜及びその調製品は、国内の天候不順による減産の影響等により、キャベツ、にんじんが大幅に増加したこと等から一五・〇%増加した。
 鳥獣肉類及びその調製品では、牛肉は調理食品等の堅調な需要を背景に冷凍品が増加、豚肉は冷蔵品が増加、鶏肉は国内生産量の減少から増加、鶏肉調製品では輸入先国の生産能力の向上等により増加したことから、全体では一・九%増加した。
(十一年度の見通し)
 十一年度は、全体では前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。
 品目別にみると、穀物及びその調製品は、ミニマム・アクセス分として米が増加するとみられるものの、小麦が前年度並みないしわずかに減少するとみられること等から前年度並みないしわずかに減少、野菜及びその調製品は、国内生産が増加するとみられることから減少、果実及びその調製品は、生鮮果実が米国産オレンジの減産等により減少するとともに、果汁が減少するとみられること等から減少すると見込まれる。
 鳥獣肉類及びその調製品では、牛肉は調理食品等の需要が堅調であるとみられること等から冷凍品を中心に増加、豚肉は在庫水準が低水準にあること等から増加、鶏肉は国内生産量の減少等から調製品を中心に増加するとみられること等から、わずかに増加、酪農品・鳥卵は、堅調な乳製品需要等からわずかに増加すると見込まれる。

(3) 農産物生産者価格
 十年度の農産物生産者価格は、全体では七・〇%上昇した。
 耕種作物では、米が二・七%、野菜が一三・一%、果実が三六・七%上昇した。これらの結果、全体では一〇%程度上昇した。
 また、畜産物では、生乳が前年度をわずかに上回った一方、鶏卵や肉畜等が下落したこと等から、全体では三・九%下落した。
 十一年度は、全体ではやや下回ると見込まれる。
 耕種作物では、野菜が、春野菜、夏秋野菜、秋冬野菜で大幅に下回るとみられること等から、かなりの程度下回り、果実が、みかん、りんご等で高値であった前年産を下回るとみられること等から、かなり大きく下回り、花きは、やや下回ると見込まれる。これらのこと等から、耕種作物ではやや下回ると見込まれる。
 また、畜産物では、鶏卵がかなりの程度上回り、肉畜がほぼ前年度並み、生乳が前年度をわずかに下回るとみられること等から、全体ではほぼ前年度並みになると見込まれる。

(4) 農業生産額第5図参照
 十年度の農業生産額は、農業生産数量がやや減少したとみられるものの、農産物生産者価格が野菜、果実等の上昇により、かなりの程度上回ったとみられることから、一%程度増加し、十一兆円程度になったとみられる。
 十一年度は、農業生産数量が果実、野菜の増加等によりわずかに増加するとみられるものの、農産物生産者価格がやや下回るとみられることから、わずかに減少すると見込まれる。また、農業純生産は、やや減少すると見込まれる。

2 穀物及び特産物

(1) 米
(消 費)
 米の一人一年当たり消費量(供給純食料)は、減少傾向で推移しており、七年度は、五年産の不作の影響等により六年度に減少した需要の一部が回復したことから、二・三%の増加となったものの、八年度は〇・七%の減少、九年度は〇・九%の減少となった。
 また、米消費世帯一人一年当たり消費量も減少傾向で推移しており、十年度(四〜二月)は、九年度に引き続き減少し、〇・九%の減少となっている。
 十一年度の米の消費量については、食生活が多様化しているなか減少傾向で推移してきており、直近の米消費世帯の動向等からみて、引き続き、わずかに減少すると見込まれる。
(供 給)
 十年産の水陸稲作付面積は、生産調整目標面積の拡大等により、百八十万一千ヘクタールとなった。収穫量は、水稲は作況指数九八の「やや不良」となったことに加えて、作付面積が減少したことから、一〇・六%の減少、陸稲は作柄が作況指数一二二の「良」となったものの、作付面積が減少したことから一・四%の減少となり、水陸稲では一〇・六%減の八百九十六万トンとなった。
 十一年産水陸稲の作付面積は、生産調整目標面積が十年度と同水準に設定されていることから、前年産並みになると見込まれる。収穫量については、平年収量によれば、わずかに増加すると見込まれる。
 なお、輸入量は米の特例措置を関税措置に切換えたことにより七十二万玄米トンとされている。また、在庫量(十一年十月末)は、「新たな米政策大綱」に基づく各般の施策が総合的に推進されてきていることから、減少すると見込まれる。

(2) 麦
(消 費)
 近年の小麦の消費量は、六百三十〜六百四十万トン程度で推移しており、一人一年当たりの消費量は三十二〜三十三キログラムとなっている。十年度の動向を家庭における小麦加工品の一人当たり購入数量でみると、パン類が一・九%の増加、めん類が〇・六%の増加となっており、これらの計では一・三%の増加となったものの、麦加工品の生産動向でみると、パンは、一・四%の増加、めん類は〇・四%の減少となっており、これらの計では前年度並みの生産量となった。
 十一年度の小麦の消費量は、近年、おおむね横ばい傾向にあり、家庭における小麦加工品の消費が引き続きわずかに伸びているものの、最近の麦加工品の生産動向からみて、前年度並みと見込まれる。
(供 給)
 十年産の麦類の作付面積は、一・〇%増の二十一万七千ヘクタールとなった。収穫量は、六・九%減の七十一万三千百トンとなった。小麦については、北海道産の作柄は良好であったものの、都府県産が不良となったことから、作況指数九四の不良となったほか、二条大麦、六条大麦、裸麦が、それぞれ七四、七四、五八の不良となった。
 十一年産の作付面積は、小麦、裸麦がわずかに増加、二条大麦がわずかに減少、六条大麦がかなりの程度増加し、四麦計ではわずかに増加すると見込まれる。収穫量は、作柄の良くなかった前年産と比べて単収が上昇するとみられること等から、かなり大きく増加すると見込まれる。小麦の輸入量は、国内産収穫量がかなりの程度増加すると見込まれることから、ほぼ前年並みと見込まれる。

(3) 大 豆
(消 費)
 十年の大豆の需要量は、食品用が〇・四%の増加となったものの、需要の大宗を占める製油用が四・四%の減少となり、飼料用については、四・五%の減少となったことから、全体では三・四%減の四百六十六万三千トンとなった。十一年は、需要量の大部分を占める製油用については国産の大豆かすの需要量が回復すると見込まれること、食品用については納豆向け需要が引き続き増加すると見込まれること等から、わずかに増加すると見込まれる。
(供 給)
 十年産の作付面積は、転作大豆が大幅に増加したことから、三一・一%増の十万九千百ヘクタールとなった。収穫量は、天候不順により作柄不良となったものの、作付面積が大幅に増加したことから、九・三%増の十五万八千トンとなった。
 十一年産の作付面積は、前年産並みになると見込まれる。収穫量は、単収が上昇するとみられること等から、大幅に増加すると見込まれる。輸入量は、前年並みないしわずかに減少すると見込まれる。

(4) 茶
(消 費)
 緑茶の消費量は、近年増加傾向にあり、十年は一・七%の増加となった。十一年の緑茶の消費量は、消費者の健康志向により引き続き需要が拡大し、茶系飲料の消費が伸びるとみられること、茶の持つ機能性を活用した食品以外の新規用途の需要があること等から、わずかに増加すると見込まれる。
(供 給)
 茶の栽培面積は近年減少傾向で推移しており、十年は一・二%の減少となった。十一年産の茶の栽培面積は、高齢化等による小規模農家の栽培中止等から、わずかに減少すると見込まれる。荒茶生産量は、栽培面積が減少すると見込まれるものの、生産団体の生産拡大に向けた取組等から、かなりの程度増加すると見込まれる。緑茶の輸入量は、前年からの繰越量が五八・〇%減の七千六百トンと大幅に減少していること、消費者の健康志向による需要が拡大するとみられることから、下級茶や成分抽出用の需要を中心として、かなりの程度増加すると見込まれる。また、荒茶価格は、かなりの程度上回ると見込まれる。

3 野 菜

(1) 最近の動向
(消 費)
 近年の野菜の消費量(国内消費仕向量)は一千七百万トン台前後で推移していたが、九年度は、国内生産量、輸入量ともに減少したことから、二・二%減の一千六百七十一万五千トンとなり、一人一年当たりの供給純食料は二・六%減の一〇一・七キログラムとなった。
 生鮮野菜の一人一年当たり購入数量をみると、十年度については、春野菜、秋冬野菜が高値となり減少したものの、夏秋野菜は増加したことから、購入数量は、〇・二%増加した。なお、一人当たりの購入金額は高値の影響から、六・八%増加した。
(供 給)
 野菜の作付延べ面積は、六十二年以降減少傾向にあり、十年産は、夏秋野菜がほぼ前年産並みないしわずかに減少し、春野菜や秋冬野菜がわずかに減少したとみられることから、全体ではわずかに減少したとみられる。十一年産は、春野菜は、前年産並みないしわずかに増加すると見込まれ、夏秋野菜、秋冬野菜及びたまねぎは、わずかに減少すると見込まれる。これらの結果、野菜全体の作付面積は、わずかに減少すると見込まれる。
 野菜の作付面積がすう勢的に減少している主な要因としては、他作物に比べ収益性は比較的高いものの、農家の高齢化の進行、機械化の遅れ等による長時間労働や、だいこん、キャベツ等の重量野菜にみられる労働の過重感があげられるが、さらに、消費者のし好の変化、多品目少量摂取化、加工品、半加工品の輸入の増加による影響等があるとみられる。
 生産量は、近年、作付面積の減少に伴い、わずかながら減少傾向にあり、十年産は、やや減少したとみられる。このうち、春野菜は、日照不足等によりやや減少し、夏秋野菜は、天候不順の影響等によりやや減少したとみられ、秋冬野菜は、根菜類及び葉茎菜類が天候不順によりかなりの程度減少したとみられる。たまねぎは、都府県産が不作となり減少したものの、北海道産が豊作となり増加したとみられることから、全体ではやや増加したとみられる。十一年産の生産量は、春野菜、夏秋野菜はやや増加、秋冬野菜はわずかに増加、たまねぎがやや減少すると見込まれることから、全体ではわずかに増加すると見込まれる。
 十年度の野菜全体の輸入量は、一七・七%増の二百五万トンとなった。内訳をみると生鮮野菜が、三一・〇%増の七十九万トンとなったほか、冷凍野菜が一四・九%増の四十八万トン、塩蔵野菜が一一・八%増の二十五万トンとなった。
(価 格)
 十年産の野菜の卸売価格は、全体では七・九%高の二百二十八円/キログラムとなった。季節区分別にみると、春野菜は、一五・七%高の二百三十九円/キログラム、夏秋野菜は、六・〇%高の二百二十四円/キログラム、秋冬野菜は、四・七%高の二百二十四円/キログラム、たまねぎは、九十六円/キログラムとなった。
 十一年産については、春野菜は入荷量が増加するとみられること、前年産が高値であったこと等から、かなりの程度下回ると見込まれ、夏秋野菜は前年産が高値であった葉茎菜類で下回ること等から、かなりの程度下回ると見込まれる。秋冬野菜はかなり大きく下回り、たまねぎはわずかに上回ると見込まれる。これらの結果、全体としてはかなりの程度下回ると見込まれる。

(2) 春野菜(主要出回り時期四〜六月)
(生 産)
 春野菜の作付面積は、近年緩やかな減少傾向にあるが、十年産については、八年産に続き、九年産の価格が軟調であった果菜類を中心に多くの品目で減少したことから、〇・八%減少したとみられる。収穫量については、多くの品目で日照不足等により作柄不良となり、全体では五・四%減少したとみられる。
 十一年産の作付面積は、根菜類等がわずかに減少するとみられるものの、葉茎菜類がわずかに増加するとみられることから、前年産並みないしわずかに増加すると見込まれる。収穫量は、多くの品目で日照不足等により作柄の良くなかった前年産に比べ増加すると見込まれることから、やや増加すると見込まれる。
(価 格)
 十年産春野菜の卸売価格については、一月から二月にかけての天候不順並びに三月下旬から四月の降雨等による影響で果菜類をはじめとして多くの品目で生育の遅延や作柄不良となったこと等から入荷量が減少したため、一五・七%高の二百三十九円/キログラムとなった。
 十一年産は、入荷量が増加することと前年産が高値であったことから、かなりの程度下回ると見込まれる。

(3) 夏秋野菜(主要出回り時期七〜十月)
(生 産)
 近年の夏秋野菜の作付面積の動向をみると、果菜類は労働力不足等により減少傾向が著しく、その他の多くの品目も前年産並みないし減少傾向で推移している。十年産については、にんじん等の根菜類において減少したこと等から一・三%減少したとみられる。収穫量は、根菜類が作付面積の減少により減少したほか、八月中旬以降の天候不順等により、はくさい、レタス、きゅうり等が減少したことから、三・一%減少したとみられる。
 十一年産の作付面積は、前年産が高値となったレタスをはじめ葉茎菜類が増加するとみられるものの、なすをはじめとして果菜類が減少するとみられることから、わずかに減少すると見込まれる。収穫量は、作付面積はわずかに減少するとみられるものの、はくさい、レタス等をはじめとした多くの品目が、台風及び天候不順の影響で作柄不良となった前年産に比べ増加するとみられることから、やや増加すると見込まれる。
(価 格)
 十年産の卸売価格については、七、八月は天候不順の影響で減少していた入荷量が回復してきたものの、九、十月は長雨等の影響で入荷量が減少したことから高値となり、全体では六・〇%高の二百二十四円/キログラムとなった。
 十一年産の卸売価格は、葉茎菜類が入荷量の増加と前年産が高値であったことから前年産を下回るとみられ、果菜類も入荷量の増加により下回るとみられることから、かなりの程度下回ると見込まれる。

(4) 秋冬野菜(主要出回り時期十一月〜翌年三月)
(生 産)
 最近の秋冬野菜の作付面積の動向をみると、だいこん、はくさい等の重量野菜を中心に減少傾向にあり、十年産についても、重量野菜が労働力不足等により減少したこと等からわずかに減少したとみられる。収穫量は、果菜類が作柄の良くなかった前年産に比べ増加したとみられるものの、根菜類及び葉茎菜類が、八月以降の天候不順による単収の低下等により減少したとみられることから、かなりの程度減少したとみられる。
 十一年産の作付面積は、消費構造の変化や労働力不足等のため、だいこん、はくさい等の重量野菜の作付面積がわずかずつ減少してきていること等から、わずかに減少すると見込まれる。収穫量は、作付面積がわずかに減少するとみられるものの、前年産の作柄の良くなかったキャベツ、はくさい、レタス等が増加するとみられることから、わずかに増加すると見込まれる。
(価 格)
 十年産の卸売価格は、キャベツ、はくさい等の葉茎菜類が入荷量の減少により高値となったこと等から、全体では、四・七%高の二百二十四円/キログラムとなった。
 十一年産の卸売価格は、入荷量の増加により、前年産が高値となった葉茎菜類が大幅に下回ると見込まれること等から、かなり大きく下回ると見込まれる。

(5) たまねぎ
(生 産)
 たまねぎの十年産の作付面積は、都府県産の減少により一・八%減の二万六千七百ヘクタールとなったとみられる。収穫量は、都府県産が作柄不良となったものの、北海道産の作柄が良かったことから、三・九%増の百三十万六千トンとなった。
 十一年産の作付面積は、北海道産はわずかに増加するとみられるものの、都府県産はわずかに減少するとみられることから、全体ではわずかに減少すると見込まれる。収穫量は、都府県産は、作柄の良くなかった前年産に比べかなりの程度増加すると見込まれ、北海道産は、作柄の良かった前年産に比べかなり大きく減少すると見込まれることから、全体ではやや減少すると見込まれる。
(価 格)
 十年産の卸売価格は、上期は、作柄不良により入荷量が減少したこと、前年産が比較的安値であったことから、五六・五%高の百十七円/キログラムとなり、下期は、北海道産の作柄が良好で入荷量が増加したことから、二〇・四%安の七十六円/キログラムとなり、全体では、一三・一%高の九十六円/キログラムとなった。

4 果 実

(1) 最近の需給動向
 果実の一人一年当たり供給純食料は、七年度に続き八年度も四・九%の減少となったが、九年度は国内産果実の多くが豊作であったこと等により四・七%増の四十・五キログラムとなった。
 生食消費量(生鮮果実の購入数量)は、近年は微減傾向で推移しており、九年度は国産果実の多くが豊作で価格が下落したことから増加に転じたものの、十年度は国産果実、輸入果実ともに供給量が減少し価格が上昇したこと等により、四・四%減と再び減少に転じた。
 果樹の栽培面積は減少が続いており、十年も消費の多様化等を受けて増加している品目もみられるが、みかん等主要な品目が減少傾向にあり、全体では二・〇%減の二十九万五千三百ヘクタールとなった。
 果実の収穫量は、気象条件等による変動がみられるものの、栽培面積の減少等により減少傾向にあるなかで、九年産は主要な品目が豊作となったことから増加したものの、十年産の収穫量については前年産が豊作であったこと、台風や長雨等の影響により作柄不良となった品目が多かったこと等から、かなり大きく減少したとみられる。
 十一年産の収穫量については、みかん、りんご等が増加するとみられ、全体ではややないしかなりの程度増加すると見込まれる。
 生鮮果実の輸入量は、近年減少傾向で推移しており、十年度も引き続き国内需要が鈍いなかで、天候不順により減産となった輸入先国が多いことや夏までの円安傾向と併せて、輸入価格が上昇したこと等から三・一%の減少となった。品目別には、バナナがフィリピンとエクアドル産の天候不順による減少により一・二%の減少、オレンジが米国の天候不順の影響等により一三・九%の減少、グレープフルーツが前年度増加した南アフリカ等からの輸入が減少して八・五%の減少等となった。
 果汁の輸入量は、八年度以降、果実飲料の消費低迷や過剰在庫等の影響で減少しており、九年度は四・八%の減少、十年度も八・三%の減少となった。品目別には、ぶどう果汁はスペイン、レモン果汁はイスラエル、イタリア等主要輸入先国からの輸入増加により増加したものの、オレンジ果汁は国内需要の低迷やブラジルの減産による価格上昇の影響等により減少し、グレープフルーツ果汁も減少した。
 十年度の国産果実の卸売価格は、夏季を中心に出回る日本なし、ぶどう、もも等が前進出荷で出回り初期に安値となったものの、みかん、りんご、かき等秋以降に出回る品目の多くが天候不順の影響等で品薄高となり、全体では、安値であった前年度比で一七・〇%高の三百三十八円/キログラムとなった。

(2) みかん
(消 費)
 みかんの一人当たりの消費量は近年減少傾向にあり、十年産の生食消費量(購入数量)は、収穫量の減少によって一一・二%の減少となった。また、加工仕向量も収穫量の減少に伴い、増加した前年産に比べ減少したとみられる。
 十一年産は、収穫量が大幅に増加するとみられること、価格も大幅に下回るとみられること等から、生食消費量、加工仕向量ともに大幅に増加すると見込まれる。
(生 産)
 結果樹面積は、高齢化による廃園、他果樹への転換等から引き続き減少しており、十年産は二・三%減の六万六百ヘクタールとなった。収穫量は、隔年結果性が顕著に現れる傾向のなか、十年産は豊作であった前年産の影響で着果数が減少したこと等により、二三・三%減の百十九万二千トンとなった。
 十一年産は、結果樹面積がわずかに減少するとみられるものの、樹体内の養分が増加しているとみられることや、着蕾、着花数が増加していること等により単収が大幅に上昇するとみられることから、収穫量は大幅に増加すると見込まれる。
(価 格)
 主要出回り時期(十月〜翌年三月)における卸売価格は、入荷量の増減、品質の良否等から隔年ごとに大きく変動する傾向にある。十年産は入荷量が大幅に減少したことに加え、品質が良好であったこと等により、九九・二%高の二百五十五円/キログラムと高値になった。
 十一年産は、入荷量が大幅に増加するとみられることから大幅に下回ると見込まれる。

(3) 晩かん類
(消 費)
 晩かん類の消費量は横ばいないし減少傾向で推移しているが、十年産(三月まで)の生食消費量については出荷の前進化等から前年に比べ増加している。
 十一年産は、収穫量が減少するとみられること等から、わずかに減少すると見込まれる。
(生 産)
 結果樹面積は他のかんきつ類への転換等により減少傾向にある。十年産の収穫量は、いよかんが四・八%の増加、ネーブルオレンジが一三・四%の減少、はっさくが一四・三%の減少となり、なつみかんは九%程度の減少とみられ、全体では三%程度減少したとみられる。
 十一年産は、結果樹面積はやや減少し単収はわずかに上昇すると見込まれ、収穫量は、いよかんはやや減少、はっさく、なつみかんはほぼ前年産並み、ネーブルオレンジはかなりの程度減少するとみられることから、全体ではわずかに減少すると見込まれる。
(価 格)
 主要出回り時期における卸売価格は、十年産は入荷量(三月まで)は前進傾向にあるものの、みかんが高値で推移している影響等を受け、いよかん、なつみかん、はっさく、ネーブルオレンジのいずれも上昇している。
 十一年産は、入荷量が前年産よりもわずかに減少するとみられるものの、みかんの価格が大幅に下回るとみられること等により、いよかんはかなりの程度下回り、なつみかん、はっさく、ネーブルオレンジは、わずかに下回ると見込まれる。

(4) りんご
(消 費)
 りんごの一人当たり消費量は、最近は供給純食料ベースで伸び悩んでおり、生食消費量も減少傾向にある。十年産(九〜三月)は収穫量の減少等から九・九%の減少となり、加工仕向量も、収穫量の減少と単価の上昇から、減少するとみられる。
 十一年産の生食消費量、加工仕向量は、収穫量がやや増加することと、購入単価が前年を下回るとみられること等から、ともにやや増加すると見込まれる。
(生 産)
 結果樹面積は毎年わずかに減少しており、十年産は二・一%減の四万五千五百ヘクタールとなった。収穫量は、着果数が少なかったことに加え、台風等の被害が発生したこと等により単収が低下したことから、一一・五%減の八十七万九千百トンとなった。品種別には、ふじが一五・七%の減少、つがるが八・五%の減少、王林が九・九%の減少、デリシャス系が一七・一%の減少となり、ジョナゴールドは面積増加により四・八%の増加となった。
 十一年産は、結果樹面積はわずかに減少し、単収はかなりの程度上昇するとみられることから、収穫量はやや増加すると見込まれる。品種別には、ふじはかなりの程度増加、つがる、ジョナゴールドはわずかに増加、王林はほぼ前年産並み、デリシャス系はかなり大きく減少すると見込まれる。
(価 格)
 主要出回り時期(九月〜翌年五月)の卸売価格は、十年産(九〜三月)は、入荷量が減少していること、出回り初期のふじ等が台風の被害を受けたことで品薄高に拍車がかかったこと等により、四六・四%高の二百八十一円/キログラムと大幅な高値となっている。
 十一年産は、入荷量がやや増加するとみられることから、高値となった前年産をかなりの程度下回ると見込まれる。

(5) な し
(消 費)
 なしの生食消費量はほぼ横ばいで推移しているが、十年産は五・八%減少した。
 十一年産は収穫量が減少し、購入単価が前年産を上回るとみられること等から、わずかに減少すると見込まれる。
(生 産)
 収穫量は、結果樹面積が一・二%減少し、単収が天候不順等により三・二%低下したことから、四・三%減の四十万九千七百トンとなった。
 十一年産は、結果樹面積がわずかに減少し、単収は前年産並みないしわずかに低下するとみられることから、収穫量はわずかに減少すると見込まれる。
(価 格)
 主要出回り時期(七〜十一月)における卸売価格は、十年産は、天候不順による入荷量の減少等により二・七%高の二百九十九円/キログラムとなった。十一年産は、入荷量が減少するとみられること等により、前年産並みないしわずかに上回ると見込まれる。

(6) ぶどう
(消 費)
 ぶどうの生食消費量は、微減傾向で推移してきたが、十年産は一〇・一%減少した。
 十一年産については、生食消費量、加工仕向量ともにほぼ前年産並みになると見込まれる。
(生 産)
 収穫量は、十年産は結果樹面積が二・三%減少し、単収も五・二%低下したことから七・四%減の二十三万二千七百トンとなった。
 十一年産は、結果樹面積がわずかに減少、単収がわずかに上昇するとみられることから、ほぼ前年産並みになると見込まれる。
(価 格)
 主要出回り時期(六〜十一月)における卸売価格は、入荷量が減少したこと等から、十年産は九・一%高の七百四円/キログラムとなった。
 十一年産は、入荷量が前年産並みになるとみられること等から、ほぼ前年産並みになると見込まれる。

5 花 き

(1) 最近の需給動向
 切花の家計消費は近年伸び悩んでおり、十年度も二・五%の減少となった。
 鉢もの類や花壇用苗もの類はガーデニングの流行等により堅調に推移しており、鉢もの類、花壇用苗もの類等を含む園芸品・同用品の家計消費は一一・〇%の増加となった。
 十年産の花きの生産量は、天候不順が作柄に影響したこともあり、切花類はわずかに減少、球根類はやや減少したものの、鉢もの類はわずかに増加、花壇用苗もの類は大幅に増加し、全体ではわずかに増加したとみられる。
 近年の花きの輸入量は、球根が伸び悩み、切花が減少傾向で推移しているが、十年は切花は国内産の品薄から、球根は小売需要の伸び等によりいずれも増加している。
 十年度の卸売価格は、切花類は三・三%高、鉢もの類は七・四%安、花壇用苗もの類は一・七%安となった。

(2) 切花類
(消 費)
 切花の消費は、近年、伸び率が鈍化し、減少と増加を繰り返しながら横ばい傾向となっている。十年度は、景気低迷が続くなかで前年度から引き続き減少傾向で推移し、秋以降、増加傾向に転じたものの、全体ではわずかに減少した。十一年度は、今後の景気動向等にもよるが、十年秋以降回復のきざしもみられることから、前年度並みないしわずかに増加すると見込まれる。
(生 産)
 切花類の作付面積は、近年約二%増で推移してきたが、九年産は伸び率が鈍化して〇・五%の増加にとどまった。十年産はわずかに増加したとみられる。出荷量も九年産は〇・三%の増加にとどまり、十年産は、作付面積がわずかに増加したとみられるものの、天候不順等の影響によりわずかに減少したとみられる。
 十一年産の切花類の作付面積は、伸び率が鈍化しているもののわずかずつ増加を続けていること、規模拡大や産地形成等に取り組んでいることから、わずかに増加すると見込まれる。出荷量もわずかに増加すると見込まれる。十一年度の輸入量は、国内需給が依然として緩和基調で推移するとみられること等から、前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。
(価 格)
 十年度の卸売価格は、年度前半は前進傾向による入荷のずれ等により、年度後半は天候不順による入荷量の減少から前年度を下回った。
 十一年度の卸売価格は、消費が前年度並みないしわずかに増加するとみられるものの、入荷量がわずかに増加するとみられること等から、やや下回ると見込まれる。

(3) 鉢もの類等
(生 産)
 鉢もの類の収穫面積は、各品目において堅調な需要を背景に増加傾向にあるが、十年産も引き続き需要が堅調であること等からわずかに増加したとみられる。出荷量も、十年産はわずかに増加したとみられる。
 十一年産は、規模拡大等により収穫面積がわずかに増加し、小鉢化等により単収も引き続き上昇するとみられることから、出荷量はやや増加すると見込まれる。
 球根類の収穫面積は減少傾向にあり、十年産も引き続きやや減少したとみられ、出荷量もやや減少したとみられる。
 十一年産は、生産農家の規模縮小等により、収穫面積、出荷量ともにやや減少すると見込まれる。
 花壇用苗もの類の作付面積は、家庭用需要の増加等により増加傾向にあり、十年産はかなり大きく増加したとみられる。また、出荷量も大幅に増加したとみられる。
 十一年産は、需要の増大を背景に作付面積、出荷量ともにかなり大きく増加すると見込まれる。
(価 格)
 鉢もの類の卸売価格は、入荷量の増加や小鉢化等により下落傾向にあり、十年度も前年度を下回った。
 十一年度は、入荷量がやや増加し、小鉢化も進展するとみられること等から、ややないしかなりの程度下回ると見込まれる。
 また、花壇用苗もの類の卸売価格は、入荷量が増加しているものの、需要が堅調であること等からほぼ横ばいとなっている。
 十一年度は、入荷量がかなり大きく増加するとみられるものの、需要が引き続き堅調であるとみられることから、卸売価格はわずかに下回ると見込まれる。

6 畜産物

(1) 概 況
(消 費)
 近年の畜産物の消費量を一人一年当たり供給純食料でみると、豚肉がほぼ横ばいとなっており、他の品目では、総じて増加傾向となってきたものの最近では伸び悩んでいる。九年度は、牛肉が回復傾向となり、牛乳・乳製品、鶏卵がほぼ前年度並みとなったものの、豚肉、鶏肉はわずかに減少した。十年度は、牛肉、豚肉がわずかに増加したものの、他の品目ではわずかに減少した。
(供 給)
 近年の畜産物の国内生産は、家畜の飼養動向等を反映した動きとなっている。九年度は、豚肉、鶏卵がわずかに増加し、鶏肉、生乳がわずかに減少し、牛肉がやや減少した。十年度は、牛肉、豚肉がわずかに増加したものの、生乳、鶏卵がわずかに減少し、鶏肉はやや減少した。一方、畜産物の輸入量は、需要や国内生産の動向により増加傾向にあり、九年度は、牛肉、乳製品が増加し、他の品目は需要低迷や円安傾向から減少した。十年度は、鶏卵が減少したものの、牛肉、豚肉、鶏肉がやや増加し、乳製品がわずかに増加した。
(価 格)
 近年の畜産物の卸売価格は、輸入量の増加、消費の伸び悩み等により、総じて低下傾向で推移してきた。九年度は、牛肉、生乳が前年度を上回ったものの、他の品目では需要の低迷等から下落した。十年度は、鶏肉が国内生産量の減少等から前年度をやや上回り、生乳が前年度をわずかに上回り、牛肉、豚肉、鶏卵では、前年度をややないしかなり下回った。

(2) 牛 肉
(消 費)
 牛肉の一人一年当たり消費量は、九年度以降、調理食品等の需要が堅調なこと等から増加しており、十年度は一・八%増の八・一キログラムとなった。
 十一年度の牛肉の消費量は、家計消費はほぼ前年度並みとみられ、加工・外食等消費は調理食品等の堅調な需要等によりわずかに増加するとみられることから、全体では前年度並みないしわずかに増加すると見込まれる。
(供 給)
 成牛枝肉生産量は、七年度以降減少していたが、十年度は、〇・四%増の五十三万百トン(部分肉ベース:三十七万一千百トン)となった。
 十一年度の成牛枝肉生産量は、肉用種がわずかに減少するとみられ、乳用種がほぼ前年度並みになるとみられることから、全体では前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。
 また、牛肉の輸入量は、九年度以降増加しており、十年度は、調理食品等の需要が堅調であること等から冷凍品を中心に増加し、全体では三・五%増の六十八万一千八百トンとなった。
 十一年度の牛肉の輸入量は、消費量の増加や国内生産量の減少等から、わずかに増加すると見込まれる。
 なお、牛肉の在庫量は、十一年三月末で二・七%増の八万四千七百トンとなった。
(価 格)
 牛枝肉卸売価格(省令規格)は、八年度、九年度と前年度を上回ったが、十年度は、八・七%安の一千九十円/キログラムとなった。
 十一年度の牛枝肉卸売価格(省令規格)は、供給量は増加すると見込まれるものの、家計需要が回復傾向にあること等からみて、ほぼ前年度並みになると見込まれる。

(3) 豚 肉
(消 費)
 豚肉の一人一年当たり消費量は、九年度は牛肉消費の回復等から二・六%の減少となったが、十年度は、家計消費、加工・外食等消費ともに増加していることから、二・一%増の十一・六キログラムとなった。
 十一年度の豚肉の消費量は、家計消費、加工・外食等消費ともにほぼ前年度並みになると見込まれることから、全体でもほぼ前年度並みになると見込まれる。
(供 給)
 豚枝肉生産量は、九年度以降は、子取り用めす豚頭数の減少に歯止めがかかったこと等から回復傾向にあり、十年度は、〇・二%増の百二十九万一千トン(部分肉ベース:九十万三千六百トン)となった。
 十一年度の豚枝肉生産量は、最近の子取り用めす豚の飼養動向等からみて、ほぼ前年度並みになると見込まれる。
 また、豚肉の輸入量は、九年度は、台湾産の輸入禁止等から大幅に減少したが、十年度は、五・五%増の五十四万五千八百トンとなった。
 十一年度の豚肉の輸入量は、年度当初の在庫量が低水準にあること等から、わずかに増加すると見込まれる。
 なお、豚肉の在庫量は、十一年三月末で二九・一%減の七万六千二百トンとなった。
(価 格)
 豚枝肉卸売価格(省令規格)は、十年度は、冷蔵品の輸入量が増加したこと、米国やEUにおける原産地価格が低下したこと等から六・二%安の四百五十五円/キログラムとなった。
 十一年度の豚枝肉卸売価格(省令規格)は、消費量、国内生産量ともにほぼ前年度並みと見込まれること、輸入量がわずかに増加すると見込まれるものの、在庫復元に伴うものであること等から、ほぼ前年度並みになると見込まれる。

(4) 鶏 肉
(消 費)
 鶏肉の一人一年当たり消費量は、九年度以降は景気低迷の影響もあって減少に転じており、十年度は、二・五%減の一〇・七キログラムとなった。
 十一年度の鶏肉の消費量は、家計消費、加工・外食等消費ともにほぼ前年度並みになると見込まれることから、全体でもほぼ前年度並みになると見込まれる。
(供 給)
 鶏肉の生産量は、飼養戸数の減少を背景に減少傾向となっており、十年度は、種鶏の産卵率の低下を背景としたひな供給の減少等から三・七%減の百十八万二千トンとなった。
 十一年度の鶏肉の生産量は、ひなの供給体制は回復しつつあるものの、需要の減退等を背景にひな導入が減少傾向にあること等から、前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。
 また、鶏肉の輸入量は、九年度はかなりの程度の減少となったが、十年度は四・七%増の六十一万一千トンとなった。
 十一年度の鶏肉の輸入量は、消費量がほぼ前年度並みになると見込まれるなか、国内生産量が前年度並みないしわずかに減少すると見込まれること、消費動向が回復傾向にあり在庫復元に伴う増加要因も潜在していること等から、わずかに増加すると見込まれる。
 なお、鶏肉の在庫量は、十一年三月末で〇・五%減の九万四百トンとなった。
(価 格)
 十年度のブロイラーの正肉卸売価格(東京)は、「もも肉」は国内生産量の減少等から八・五%高の六百十四円/キログラムとなり、「むね肉」は輸入量の増加等から五・〇%安の二百六十三円/キログラムとなった。
 十一年度のブロイラーの正肉卸売価格は、「もも肉」は国内生産量が前年度並みないしわずかに減少すると見込まれること等から、前年度並みないしわずかに上回ると見込まれる。また、「むね肉」は輸入品との競合等から前年度並みないしわずかに下回ると見込まれる。

(5) 牛乳・乳製品
(消 費)
 牛乳・乳製品の一人一年当たり消費量は、九年度以降減少に転じ、十年度は一・〇%減の九二・三キログラムとなった。このうち、飲用牛乳等は二・一%減の三九・三キログラム、乳製品は前年度並みの五二・八キログラムとなった。
 十一年度の牛乳・乳製品の消費量は、前年度並みないしわずかに増加すると見込まれる。このうち、飲用牛乳等はわずかに減少し、乳製品はわずかに増加すると見込まれる。
(供 給)
 生乳生産量は、十年度は、〇・九%減の八百五十四万八千トンとなった。用途別処理量は、飲用牛乳等向けは一・九%の減少となり、乳製品向けは〇・七%の増加となった。
 十一年度の生乳生産量は、増産型の計画生産が設定されているものの、最近の地域別の生乳生産の動向等からみて、ほぼ前年度並みになると見込まれる。用途別処理量は、飲用牛乳等向けはわずかに減少、乳製品向けはわずかに増加すると見込まれる。
 また、十年度の乳製品の輸入量は、ナチュラルチーズ等が増加していること等から、〇・三%の増加となった。
 十一年度の乳製品の輸入量は、乳製品の消費量、国内生産の乳製品向け処理量ともにわずかに増加すると見込まれることから、わずかに増加すると見込まれる。
 なお、乳製品の在庫量は、十一年三月末で、脱脂粉乳が九・一%減の四万七千トン、バターが二三・一%増の三万二千トンとなった。
(価 格)
 十年度の生乳の農家手取価格(総合乳価、全国)は、加工原料乳保証価格が引き下げられたものの、生クリーム等向け生乳の価格が上昇したこと、加工原料乳処理比率が低下したこと等から、〇・六%上回る八二・九円/キログラムとなった。
 十一年度の生乳の農家手取価格(総合乳価、全国)は、飲用牛乳等向け乳価の動向いかんによるが、加工原料乳保証価格が引き下げられたこと、加工原料乳に対する奨励金(二円/キログラム)が見直されたこと、飲用牛乳等向け処理量の割合が低下すると見込まれること等から、わずかに下回ると見込まれる。

(6) 鶏 卵
(消 費)
 鶏卵の一人一年当たりの消費量は、十年度は、家計消費、加工・外食等消費ともに低迷しており、二・二%減の一七・二キログラムとなった。
 十一年度の鶏卵の消費量は、家計消費がほぼ前年度並みとみられ、加工・外食等向け消費がわずかないしやや減少するとみられることから、全体ではわずかに減少すると見込まれる。
(供 給)
 鶏卵の生産量は、七年度以降、ほぼ横ばい傾向となっていたものの、十年度は、九年十二月以降の卵価低迷により採卵用成鶏めす羽数が減少したこと等から、二・〇%減の二百五十二万トンとなった。
 十一年度の鶏卵の生産量は、最近のひなえ付け羽数の動向や採卵用成鶏めす羽数が減少すると見込まれること等から、わずかに減少すると見込まれる。
 また、鶏卵(卵黄液、卵白粉等)の輸入量は、十年度は、上期は円安傾向等からかなりの程度減少し、下期は円高に転じたことから増加傾向となったが、年度全体では〇・四%減の十万三千七百トンとなった。
 十一年度の鶏卵の輸入量は、加工・外食等需要が減少すると見込まれること等から、わずかに減少すると見込まれる。
(価 格)
 鶏卵の卸売価格(東京、M規格)は、九年十二月以降大きく下落しており、十年度は、生産量は前年度を下回っているものの、需要の低迷から引き続き低水準で推移しており、一〇・七%安の百七十一円/キログラムとなった。
 十一年度の鶏卵の卸売価格(東京、M規格)は、国内生産がわずかに減少すると見込まれるなか、家計消費がほぼ前年度並みになると見込まれることから、かなりの程度上回ると見込まれる。

第3 農業資材

1 農業資材の動向

(需 要)
 農業経営における農業生産資材購入額(実質)の推移をみると、六十三年以降増加傾向で推移していたが、七年に減少して以降停滞しており、十年は〇・三%減少した。
<農業生産要素>
 十年の作付延べ面積は、米の生産調整面積の増加による水稲作付面積の減少等からわずかに減少したと見込まれる。
 十年一月一日現在の販売農家戸数は、一・八%減の二百五十二万戸であり、九年の農業総産出額は、四・七%減の九兆八千三百十六億円と昭和五十一年以降始めて十兆円を下回り、生産農業所得は、一一・四%減の三兆九千三百四十三億円となった。また、九年の販売農家一戸当たりの生産農業所得は、九・五%の減少となった。
 十一年度の農業生産の動向を数量指数でみると、わずかに増加するとみられるものの、農業生産額が減少すると見込まれること、農家戸数、作付延べ面積のわずかな減少は続くとみられること等から、需要は前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。
(供 給)(第6図参照
 十年度の農業資材の供給は、全体ではかなりの程度減少したとみられる。
 個別資材別にみると以下のとおりである。
 十年度の農業機械の実質国内向け出荷額は、稲作経営をめぐる環境の悪化等や水稲の作付面積の減少に伴い一五・〇%減少している。
 十肥料年度前半(十年七月〜十年十二月)の化学肥料の国内向け出荷量は、作付延べ面積の減少や単位面積当たり施肥量の減少傾向等から、一一・九%減少している。
 十農薬年度(九年十月〜十年九月)の農薬出荷量は一部地域において病害虫が多く発生したものの、全体では耕種生産の動向や剤型の変化等から、一〇・三%減少したとみられる。
 十年度の飼料の供給量(可消化養分総量(TDN)ベース)は、濃厚飼料が一・二%の減少となり、粗飼料が一・〇%の減少となったことから、全体では、一・二%の減少となったとみられる。
 十年度の諸材料の供給量は、農業用フィルムが七・三%減少し、青果物用段ボール箱が野菜・果実の出荷量の減少から〇・五%減少している。
 十年度(四〜二月)の農林業向け石油製品(灯油、重油、軽油、家庭用を含む。)の販売量は、暖冬や農家需要の減少や農業関連施設需要の減少等から一一・三%減少している。
 十一年度の農業資材の供給は、需要が前年並みないしわずかに減少するなか、生産流通の再編を通して、供給体制の合理化に伴う流通在庫の削減に取り組んでいること等から、わずかに減少すると見込まれている。
(価 格)
 農業生産資材の農家購入価格は、七年十一月以降、円安傾向を反映し前年を上回って推移しており、また、九年度は消費税率の引上げもあり二・〇%上昇した。しかし、月別にみると九年四月に上昇した価格は八月以降下落傾向にあり、十年度は飼料や光熱動力を中心に一・二%下落した。
 十一年度の農業生産資材の農家購入価格は、資材需要の減少を上回る供給側の合理化や生産調整により、需給は引き締まる方向にあるとみられるものの、農家においては厳しい経営環境を背景に資材投入の適正化が進んでおり、農家購入価格への反映は難しいとみられることから、ほぼ前年度並みになると見込まれる。
 なお、為替要因等に伴う原材料輸入価格の動向を注視していく必要がある。

2 個別資材

(1) 農業機械
(需 要)
 全国販売農家一戸当たり平均(以下、「販売農家平均という」(農業経営統計調査))の大農具・農業用自動車購入金額(以下、「農機具購入金額」という。)をみると、おおむね前年の農業所得等の余剰の増減と連動しており、八年以降減少している。九年は、二・四%減少した。十年は、前年の農業所得が大幅に減少し、水稲作付け面積の減少が稲作関連機械の投資を抑制したとみられること等から、農機具購入金額は、前年に引き続き一六・一%と大幅に減少した。
 十一年度の農業機械の需要は、十年産米価が上昇していること、十年度の農業所得が増加したこと等から、前年度並みないしわずかに増加すると見込まれる。
 なお、稲作機械の需要に影響する水稲の作付面積の動向については、緊急生産調整対策が十一年度で終了することから、その動向が注目される。
(供 給)
 国産農業機械の出荷額(輸出分を含む。)は、六〜八年度は堅調に推移したが、九年度は、消費税率引上げ前のかけ込み需要の反動や、米価の下落等の農産物価格の低迷により農家の農業機械に対する投資意欲が減退したとみられ九・六%減少した。十年度は、水稲の作付面積の減少等に伴い田植機、自脱型コンバイン等稲作関連機械の出荷が減ったことから一〇・二%減少した。なお、農業技術の進展から、従来より馬力の低いクラスでも、より高速に作業が可能な高速ロータリー耕耘トラクターや、シンプル農機の需要増加等性能が良く価格の安い農業機械が支持されている。出荷額及び輸出入額から国内向け出荷額を推計すると、九年度は一五・二%減少し、十年度は一五・〇%減少している。これらのことから、十年度の実質国内向け出荷額は一四・八%減少した。
 十一年度の農業機械の実質国内向け出荷額は、前年が低水準であったことや、需要がわずかに回復する見通しがあるものの、低価格機の普及が進むとみられることから、ほぼ前年度並みになると見込まれる。
(価 格)
 全農供給価格の推移をみると、六〜十一年まで、六年連続して据置きとなった。
 農家の購入価格の推移をみると、消費税率引上げのあった九年度が二・三%上回ったのを除き、おおむね一%程度の上昇と安定的に推移した。十年度は〇・三%上昇しほぼ前年度並みとなった。なお、シンプル農機の出荷割合が九年度はトラクター、コンバイン、田植機の機種によって異なるが二〜四割と増えており、農家にとっては実質的な価格引下げの効果が見込まれている。
 十一年度の農機具の農家購入価格は、厳しい農業情勢を反映し、十一年のメーカー出荷価格が据え置かれたこと等から、ほぼ前年度並みになると見込まれる。

(2) 肥 料
(需 要)
 肥料の需要に影響する作付延べ面積は、稲の作付面積の減少を中心に一〜二%程度の減少傾向にある。また、農家の施肥については、農業改良普及センター等における環境への配慮に基づく施肥基準の見直し(施肥の適正化)、側条施肥の進展及び肥効調節型肥料の普及による施肥効率の向上等から、単位面積当たりの投入量を減少させている。これらのことから販売農家平均の肥料費(実質)は七年以降減少しており、十年は四・一%減少した。
 十一年度の需要は、作付面積の減少に加え、環境への配慮、省力化を背景とした側条施肥の進展や肥効調節型肥料の普及等による単位面積当たりの肥料投入量の減少から、わずかに減少すると見込まれる。
(供 給)
 化学肥料(窒素、りん酸、加里の三成分換算合計)の国内向け出荷量(工業用内需を除く。)は、需要の減少から、おおむね減少傾向で推移している。十肥料年度前半(七〜十二月)は、一一・九%減の六十五万六千トンとなった。なお、有機農産物やオーガニック生産方式(民間団体基準)にみられるように、消費者の農産物に対する健康志向への対応や、持続可能な環境保全型農業への転換が進むことに伴い、たい肥等のリサイクルが促進されるなかで、化学肥料は引き続き減少する方向にあるものとみられる。
 十一肥料年度(十一年七月〜十二年六月)の化学肥料(窒素、りん酸、加里の三成分換算合計)の国内向け出荷量(工業用内需を除く。)は、需要の減少等から、わずかないしやや減少すると見込まれる。
(価 格)
 化学肥料の価格は、オイルショック以降、生産が急速に国内向けに変化していくなか、おおむね肥料(原料)の輸入価格動向を反映して推移してきた。
 主要原材料(化学肥料)の国際価格の動向をみると、尿素は中国の輸入規制措置(八年)等の影響から、最近は弱含みで推移している。りん安は、米国肥料会社の合理化と生産調整により、堅調に推移している。加里については、主要輸出国が限られ、中国、インド、ブラジル等で需要が増加し、価格は堅調に推移している。輸入価格は、国際価格の上昇、為替相場の円安動向を反映して上昇傾向で推移している。これらのことから、肥料のメーカー出荷価格は、八年一月〜十年七月にかけて連続して引き上げられ、十年度の農家購入価格は一・一%上昇した。
 十一年度の化学肥料の原材料の国際価格は、りん安、塩化加里は、世界的な肥料需要の増大等を反映してわずかに上昇し、尿素は国際需給が大幅に緩和し価格は横ばいで推移するとみられることから、全体ではわずかに上昇すると見込まれる。輸入価格は、為替相場が前年度より円高であることから、前年度並みないしわずかに下落すると見込まれる。肥料の農家購入価格は、このような原材料価格の動向や生産流通の合理化等から、前年度並みないしわずかに下落すると見込まれる。

(3) 農 薬
(需 要)
 農薬の需要は、その年々の、病害虫の発生状況や天候等の農薬散布条件によって変化するものの、作付延べ面積が減少していることや、効率的な農薬利用の推進が図られていること等により減少傾向にある。十年度は、水稲の葉いもち病が東、西日本を中心に発生が多く、トビイロウンカが東、西日本の広い地域で多く発生したほか、八〜九月の多雨の影響で野菜・畑作において一部の地域で病害の発生が多かったものの、水稲作付面積が減少したこと、空散面積及び散布回数が減少したこと等から全体ではやや減少したとみられる。
 なお、食品の安全性や環境問題に対する消費者の関心が高まるなかで、無農薬・減農薬による農業生産が増加傾向にあるとみられる。また、農家の高齢化や規模拡大を背景に集中する防除作業を効率化するため、育苗箱で殺虫殺菌処理できる箱処理剤の利用が増加している。新しい剤型として、水稲用除草剤において従来の薬剤と単位面積当たりで同等の効果があり、三分の一に軽量化された一キログラム粒剤や散布機が不要でけい畔から散布ができるフロアブル剤、ジャンボ剤等の利用が増加している。
 十一年度の農薬の需要は、天候、病害虫の発生状況にもよるが、作付面積の減少や、効率的な農薬使用の推進等から、わずかに減少すると見込まれる。
(供 給)
 農薬の供給は量、金額とも昭和六十年ごろをピークに減少している。
 農薬の出荷量は、需要の減少に加え、箱処理剤の普及や剤型の変化による軽量化等により、最近では、五農薬年度(四年十月〜五年九月)の四十八万トン以降は減少傾向で推移している。九農薬年度は六・三%減の三十九万トンとなった。十農薬年度は、稲作等の耕種生産の動向や剤型の変化等から、一〇・三%減少したとみられる。農薬の出荷額は、新しい剤型の構成比が高まっていることから、出荷量に比べ減少幅が小さい。九農薬年度は一・三%減少し、十農薬年度は六・一%減少したとみられる。
 十一年農薬年度の農薬の出荷量は、需要の減少やフロアブル剤、ジャンボ剤等の普及がさらに進むとみられることから、わずかないしやや減少すると見込まれる。
(価 格)
 農薬のメーカー出荷価格は、十農薬価格年度は〇・四%、十一農薬価格年度は〇・三%とそれぞれ下落し、農家購入価格は十年度は、〇・四%下落しほぼ前年度並みとなった。
 十一年度の農薬の農家購入価格は、メーカーによる製造の合理化及び流通の効率化に伴うコスト削減等により、十一農薬価格年度(十年十二月〜十一年十一月)のメーカー出荷価格が、ほぼ前農薬価格年度並みになること等から、ほぼ前年度並みになると見込まれる。

(4) 飼 料
(需 要)
 飼料の需要量(TDNベース)は、家畜の飼養動向等を反映し、わずかな減少傾向で推移しており、十年度は、豚及び肉用牛でほぼ前年度並みになったとみられるものの、他の畜種では減少したとみられることから、全体では一・二%減の二千六百十九万一千トンとなったとみられる。
 十一年度の飼料の需要量は、豚でほぼ前年度並みになるとみられるものの、他の畜種では減少するとみられること等から、全体ではわずかに減少すると見込まれる。
(供 給)
 十年度の配合・混合飼料の生産量は、肉用牛用が増加しているものの、他の畜種用では総じて減少していること等から、全体では一・〇%減の二千四百五十一万六千トンとなった。飼料作物の収穫量は、十年は、天候要因等の影響もあり一・一%減の三千九百十万六千トン(生草収量ベース)となったとみられる。
 十一年度の配合・混合飼料の生産量は、養豚用がほぼ前年度並みになるとみられるものの、他の畜種用は減少するとみられることから、全体ではわずかに減少すると見込まれる。飼料作物の収穫量は、作付面積がわずかに増加し、単収がやや上昇するとみられることから、かなりの程度増加すると見込まれる。
 また、粗飼料の輸入量(TDNベース)は、九年度以降減少しており、十年度は一・四%減の百二十二万五千トンとなったとみられる。
 十一年度の粗飼料の輸入量は、国内生産の増加等から、わずかに減少すると見込まれる。
(価 格)
 十年度の配合飼料の農家購入価格は、飼料穀物の国際価格が下落傾向となっていること、為替相場が十年九月以降は円高に転じたこと等から四・六%下回っている。
 十一年度の配合飼料の農家購入価格は、今後のとうもろこしの国際相場や為替相場の動向等にもよるが、現在の相場の水準が継続すれば、かなり下回ると見込まれる。

(5) 諸材料
(需 要)
 十年の販売農家平均の諸材料費は、トンネル栽培面積の減少傾向等により農業用フィルムの需要が減少したことに加え、果実生産の減少に伴い段ボール需要が減少したこと等から、一・四%減少した。
 十一年度の諸材料の需要は、農業用フィルムが野菜(果菜類、葉茎菜類)の作付けがほぼ前年産並みと見込まれることや長期耐用フィルムが普及していることの影響等により前年度並みないしわずかに減少し、段ボール箱は、野菜がわずかないしやや増加すると見込まれ、果実がややないしかなりの程度増加すると見込まれることにより、やや増加するとみられることから、全体ではわずかないしやや増加すると見込まれる。
(供 給)
 施設園芸等の被覆用資材として用いられる農業用フィルムの出荷量は、マルチ、トンネル栽培が労働力不足等により減少していること、五年以上の長期の展張が可能な長期耐用フィルムへの転換が進んでいること等から、三年以降減少傾向で推移した。九年度は七・九%減の十三万トン、十年度は七・三%減の十二万トンとなった。
 段ボールシートの青果物向け製箱投入量は、青果物及び切花の市場入荷量の変動に左右されるものの、近年は、出荷段階におけるネット袋等の荷造材の段ボール箱化や小箱化、また重量野菜から軟弱野菜や施設園芸野菜への転換等に伴い、全体では増加傾向で推移している。しかし、九年度は野菜の減少等から、二・五%減の十二億一千万平方メートル、十年度は、野菜、果実の減少から〇・五%減の十一億九千五百万平方メートルとなった。
 十一年度の農業用フィルムの出荷量は、施設生産の動向や張り替え作業の省力化及び使用済みプラスチックの適正処理の観点から長期耐用フィルムが普及していることなどもあり、全体では前年度並みないしわずかに減少すると見込まれる。
 十一年度の段ボールシートの青果物向け製箱投入量は、青果物の出荷量が野菜ではわずかないしやや増加すると見込まれ、果実でややないしかなりの程度増加すると見込まれていることから、価格引上げのための在庫調整が行われているものの、全体ではわずかないしやや増加すると見込まれる。
(価 格)
 農業用ビニール、農業用ポリエチレンの農家購入価格は、五年度以降、円高による原材料価格の下落等から、おおむね前年度を下回って推移してきた。十年に入り、原油価格が下落し、春以降ナフサ価格がかなりの程度下落しているものの、国内の樹脂メーカーの生産調整によりポリエチレン樹脂価格が堅持されていることから、十年度の農業用ポリエチレン、農業用ビニールはそれぞれ、〇・二%、〇・一%上昇している。段ボールは消費の低迷等による需給の緩和により弱含みで推移している。十年度は、需給動向を反映し一・七%下落している。
 諸材料全体の農家購入価格は、九年度は消費税率引上げの影響もあり二・一%上昇した。十年度は、〇・九%下落した。
 十一年度の農業用フィルムのメーカー出荷価格は、原材料であるポリエチレン樹脂価格が最近の円高傾向と輸入の増加等からわずかに下落するとみられ、農業用フィルム需要がわずかに減少するとみられることから、前年度並みないしわずかに下落すると見込まれる。
 十一年度の青果物用段ボール箱のメーカー出荷価格は、段ボール原紙メーカーが大幅な減産を続け在庫量を減らしていること等から、わずかに上昇すると見込まれる。
 これらのことから、十一年度の諸材料の農家購入価格は、全体では前年度並みないしわずかに上昇すると見込まれる。

(6) 光熱動力
(需 要)
 販売農家平均の光熱動力費は、園芸用ガラス室・ハウス等の増加に伴い、重油、農業用電力が増加しており、九年は三・九%増加した。また、十年はガソリン、灯油等、光熱動力価格が下落したことから六・〇%減少した。
 十一年度の光熱動力の需要量は、農業生産がわずかに増加するとみられることから、わずかに増加すると見込まれる。
(供 給)
 燃料の供給を農林業向け石油製品(灯油、重油、軽油、家庭用を含む。)の販売量でみると、八年度以降減少傾向にあり、九年度は暖冬の影響等から、五・〇%減の八百十一万キロカロリーとなった。
 十年度(四〜二月)は、暖冬や農家需要の減少、農業関連施設需要の減少等から一一・三%減少した。製品別にみると、灯油、重油(主にA重油)軽油はそれぞれ九・五%、一二・二%、一二・六%減少した。
 また、農業用電力は、近年増加傾向にあったが、九年度は二・二%減の六十一億二千八百四十六万キロカロリー/時となった。
 十一年度の軽油は景気の低迷からわずかに減少すると見込まれ、灯油及び重油は、冬季の天候にもよるが、前年が暖冬で推移したことから、ともにやや増加すると見込まれる。電気の需要量は、施設の増加や大型化の傾向が続くとみられることからわずかに増加すると見込まれる。これらのことから、全体では、わずかに増加すると見込まれる。
(価 格)
 十年度の原油輸入価格(CIF価格・円ベース)は、九年度に引き続き原油国際価格が下落したことや秋以降円高となったことを受けて、二七・六%と大幅に下落した。十年度(四〜二月)国内石油製品の卸売価格は、原油輸入価格の下落に加え、産業活動が停滞し需要が減退していることから、ガソリン、灯油、軽油、A重油がそれぞれ三・八%、九・五%、九・五%、一〇・三%下落した。電気料金は九年春以降の原油等原材料価格の下落により、九年十月〜十年十二月において逐次下落している。これらのことから、十年度の光熱動力の農家購入価格は、ガソリンが九・〇%、灯油が一一・〇%、軽油が六・三%、重油が六・四%、農用電力が二・〇%とそれぞれ下落しており、全体では五・九%下落している。
 十一年度の光熱動力の農家購入価格は、ガソリンは販売競争により下落が続くとみられるものの、原油等の輸入価格がOPECの減産により前年を上回って推移するとみられることからガソリンを除く石油製品及び電気料金は上昇し、全体ではわずかに上昇すると見込まれる。




 交通安全ファミリー作文
 コンクール作品募集

作文の題材
 「我が家の交通安全」
 皆さんの家庭において、また、家族の構成員として学校、職場、地域において交通安全について考え、話し合った内容や方法、その結果、実行していること、そのほか、交通安全につながる日常会話や工夫について、作文にして下さい。
応募期間
 平成十一年七月一日から同年九月二十日(消印有効)まで
応募区分
○小学校低学年の部(一・二年生)
○小学校中学年の部(三・四年生)
○小学校高学年の部(五・六年生)
○中学生の部
○母親・一般の部
応募方法
○小・中学生各部
四百字詰原稿用紙三枚以内
○母親・一般の部
四百字詰原稿用紙五枚以内
 作文には、内容にふさわしい題名をつけ、また、応募区分、住所、郵便番号、氏名(ふりがな明記)を明記して下さい。(なお、小・中学生各部は、学校名、学校の所在地・郵便番号・電話番号を、また、母親・一般の部は職業、電話番号も明記して下さい。)
送り先
○小・中学生各部
〒一〇一―〇〇二一
東京都千代田区外神田二―二―十七
 共同ビル (社)日本交通福祉協会
 交通安全作文募集KS係
 TEL 〇三―三二五五―二〇八一
○母親・一般の部
〒一〇〇―八九〇五
東京都千代田区霞が関三―一―一
 総務庁交通安全対策室
 交通安全作文募集KS係
 TEL 〇三―三五八一―一六四五
 作文は未発表のもので、自作のものに限ります。

最優秀作:総務庁長官賞 各部一名
優秀作 :総務庁長官官房交通安全対策室長賞 各部三名以内
佳  作:総務庁長官官房交通安全対策室長賞
    ○小・中学生各部 各学年六名以内
    ○母親・一般の部 六名以内
表彰
 最優秀作受賞者は、平成十二年一月開催予定の、交通安全国民運動中央大会において表彰します。
主催
 総務庁、(社)日本交通福祉協会、(社)全国交通安全母の会連合会、(財)全日本交通安全協会、(財)住友海上福祉財団及び(財)日本交通安全教育普及協会
後援 警察庁及び文部省
その他
 審査結果は入賞者のみ本人あて通知します。
 応募原稿は一切返却しません。入賞作品の著作権は、主催者に帰属するものとします。


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    <9月8日号の主な予定>

 ▽労働白書のあらまし………………労 働 省 

 ▽労働力調査(五月)………………総 務 庁 

 ▽月例経済報告(八月報告)………経済企画庁 




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