官報資料版 平成11年10月20日




                  ▽防衛白書のあらまし…………………防 衛 庁

                  ▽労働力調査(六月)…………………総 務 庁

                  ▽毎月勤労統計調査(五月分)………労 働 省











防衛白書のあらまし


平成11年版 日本の防衛


防 衛 庁


 平成十一年版「日本の防衛」(防衛白書)は、去る七月二十七日の閣議で了承され、公表された。
 白書のあらましは次のとおりである。

第1章 国際軍事情勢

第1節 国際軍事情勢概観

1 国際軍事情勢全般
 冷戦終結後、世界的規模の武力紛争が生起する可能性は低下したが、複雑で多様な地域紛争が発生し、また、大量破壊兵器などの移転・拡散の増大が強く懸念されている。このように、国際軍事情勢は、依然として不透明・不確実な要素をはらんでいる。これに対し、国連の活動や、米露や欧州における軍備管理・軍縮の動きなど、国際関係の一層の安定化を図るための様々な取組が進展している。さらに、地域的な平和と安全の確保のため、欧州などで地域的な安全保障の枠組みの活動や多国間・二国間の対話の拡大の動きが見られてきた(アジア太平洋地域の軍事情勢については、第3節で記述)。

2 複雑で多様な地域紛争
○ 武力紛争などとしては、コンゴー民主共和国の大規模な内戦のほか、アンゴラ、アフガニスタンにおいて内戦がみられた。
  また、ユーゴースラヴィア連邦共和国のコソヴォ自治州におけるユーゴー連邦政府などとアルバニア系住民の独立派勢力との武力衝突については、ユーゴー連邦政府が和平協定案に同意せず、本年三月、NATOによるユーゴースラヴィアに対する空爆が開始される事態となった。しかしながら、六月に入り、ユーゴー連邦政府が和平案を受諾し、ユーゴー連邦軍などをコソヴォ自治州から撤退させ、国際安全保障部隊(KFOR)が同自治州に展開された。
  なお、近年においては、テロリストやテロ組織に対して軍事力を行使する事例も見られる。
○ 中東では、イスラエルとパレスチナ解放機構との間で、現在停滞している和平交渉再開に向けて努力が続けられている。また、イラクが無条件の査察受入れを求める国連決議に違反する行動をとり、昨年十二月には、米国が英国とともにイラクの疑惑施設などに対する爆撃を行った。
○ インド、パキスタンは、昨年五月に相次いで核実験を行い、本年四月には、弾道ミサイルの発射実験実施を相競う形で発表した。これらは、南アジア地域の安全保障への影響のみならず、大量破壊兵器などの不拡散のための取組などに対して、深刻な影響を及ぼすことが懸念されている。また、五月、カシミールのインド側管理ライン沿いで、インド側による空爆を伴う戦闘が発生している。

3 兵器の移転・拡散
 近年、一部の国では、大量破壊兵器や弾道ミサイルなどの運搬手段を含む兵器の取得や開発が顕著な形で進められており、このような兵器の移転・拡散問題への対応は、今まで以上に国際社会の抱える緊急の課題となっている。

4 軍事科学技術の動向
 軍事科学技術の大幅な進歩に伴い、戦闘状況の変化はより迅速となり、戦域が広域化しており、兵器の破壊力の向上に加え、精密誘導技術やC4ISR技術を含む情報関連技術の研究開発が重視されてきている。

第2節 主要国の国防政策と国際社会の安定化への対応

 欧米諸国及びロシアは、軍事力の再編・合理化を進めるとともに、地域紛争など多様な事態への対応能力を確保するための努力を行っている。

1 主要国の国防政策
○ 米国は、QDRに基づく戦力再編を行っている。BMDについては、北朝鮮が米国本土までを射程に入れたICBMを予想よりも早く開発する可能性があることなどから、NMDの開発をTMDの開発とともに緊急課題としている。
○ ロシアは、軍再編全般の遅れが指摘されている。また、米英によるイラク空爆とNATOのユーゴースラヴィアに対する空爆の実施は、ロシア・NATO間に軋轢を生じさせた。
  ロシア軍の将来像は必ずしも明確ではなく、ロシアの政治・経済情勢の今後の動向は不透明であり、ロシア軍の今後の動向については引き続き注目しておく必要がある。
○ 欧州諸国においては、戦力の再編合理化を進めている。また、国連平和維持活動への参加や平和実施軍(IFOR)、平和安定化部隊(SFOR)及び国際安全保障部隊(KFOR)といった多国籍軍の派遣も進めている。

2 国際連合などによる国際社会の安定化のための努力
○ 国連の平和維持活動については、国際の平和と安全を維持する役割を発揮することが期待されたが、能力的な限界が認識されつつあるほか、国連が十分にその機能を発揮するためにはいまだ多くの課題があることも同時に明らかになってきている。
○ CTBTについては、昨年、インド及びパキスタンは条約の参加に前向きな意思表示を行ったが、現在、インドの政局が流動化していることなどもあり、速やかな条約発効の見通しは得られていない。
  また、対人地雷禁止条約は本年三月に発効し、日本を含む八十か国余りが締結している。

3 米露及び欧州における国際社会の安定化への対応
 NATOは、三月、ポーランド、チェッコ及びハンガリーの三か国の加盟が正式発効し、四月の首脳会談において新戦略概念を採択した。
 また、コソヴォ問題は、今後のNATOの統制及びその信頼性に対する重要な試金石となっているものとみられ、今後のKFORによる平和維持活動の動向が注目される。

第3節 アジア太平洋地域の軍事情勢

1 全般情勢
 冷戦終結後、アジア太平洋地域では、極東ロシア軍の量的削減などの変化が見られるものの、依然として大規模な軍事力が存在している。加えて、多くの国々で経済成長を背景に軍事力の拡充・近代化が行われてきている。さらに諸問題が依然として未解決のまま存在しており、南北の艦艇が銃撃を行った事件などもみられるなど、この地域には、不透明・不確実な要素が依然その存在感を保ったまま残されている。
 このような状況の下、米国を中心とする二国間の同盟・友好関係とこれに基づく米軍の存在が、この地域の平和と安定に重要な役割を果たしている。近年、地域的な安全保障に関する対話の努力も定着しつつあるが、これらの努力がどのように生かされていくかについては、今後の課題であるといえよう(第1図参照)。

2 朝鮮半島
○ 北朝鮮は、深刻な経済困難に直面しているにもかかわらず、軍事力の近代化、即応態勢の維持に努めており、その動向については必ずしも明確ではなく、引き続き細心の注意を払っていく必要がある。
○ 北朝鮮の核開発疑惑は、日本の安全に影響を及ぼす問題であるのみならず、大量破壊兵器の拡散の観点から国際社会全体にとっても重要な問題である。また、弾道ミサイルの開発については、ノドンの配備を行っている可能性が高いものと判断された。テポドン一号、二号も開発中であるとみられる。北朝鮮のミサイル開発は、核兵器開発疑惑とあいまって、アジア太平洋地域のみならず国際社会全体に不安定をもたらす要因となっており、その開発動向が強く懸念される(北朝鮮によるミサイル発射、能登半島沖の不審船事案については、第6章第2節、第3節で記述)。

3 極東ロシア
 極東ロシア軍は、依然として大規模かつ近代化された戦力を蓄積した状態にあり、その一部は更新・近代化されている。他方で、その規模は縮小傾向にあり、訓練などの活動は依然として低調とみられている。極東ロシア軍の将来像については、ロシア軍とロシア国内の流動的な情勢とあいまって必ずしも明確ではなく、引き続き注目しておく必要がある。

4 中 国
 軍事力について、量から質への転換を企図している。経済建設を当面の最重要課題としていることなどから、中国の軍事力の近代化は、漸進的に進むものと見られるが、核戦力や海・空軍力の近代化の推進や海洋活動範囲の拡大などについて、今後とも注目していく必要がある。
 また、今後の米中関係については、不透明な部分が存在している。

5 東南アジア・大洋州
 一昨年以降の経済危機により、軍事力の近代化に遅滞が見えはじめている。また、依然として、この地域には南沙群島などの領有権をめぐる対立や、少数民族問題などが不安定要素として存在しており、南シナ海などにおいて、船舶の安全な航行を妨害する海賊行為も発生している。
 なお、本年四月、カンボディアのASEAN加盟が正式に決定し、ASEAN10が実現した。

6 アジア太平洋地域の米軍
 QDRにも明記されたように、約十万人の兵力の維持を表明している。

7 各国の安定化努力
 近年、二国間の軍事交流などの機会の増加や、地域的な安全保障に関する努力(ARFなど)が定着しつつあるものの、安全保障上の諸問題に対する具体的な寄与については、これからの課題となっている。

第2章 日本の防衛政策

第1節 防衛の基本的考え方

1 我が国の安全保障
 我が国の安全保障のためには、外交や内政の分野のみならず、自らの防衛努力と日米安保体制の堅持が必要である。

2 憲法と自衛権
○ 日本国憲法は、主権国家としての我が国固有の自衛権を否定するものではなく、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは認めている。
○ 自衛権の発動は、いわゆる自衛権発動の三要件に該当する場合に限られ、また、集団的自衛権の行使は憲法上許されないなどの政府見解が示されている。

3 防衛政策の基本
○ 国防の基本方針において、平和への努力の促進などによる安全保障基盤の確立や、効率的な防衛力の整備と日米安保体制を基調とすることを掲げている。
○ その他の基本政策として、専守防衛、非核三原則の堅持、文民統制の確保などがある。

第2節 日米安全保障体制

1 日米安全保障体制の意義
○ 我が国は米国との二国間の同盟関係を継続し、その抑止力を機能させることで、適切な防衛力の保持と合わせて、我が国の安全を確保する。日米安保体制は、我が国の安全の確保のため引き続き堅持すべきである。
○ 日米安保体制を基調とする日米両国間の緊密な協力関係は、我が国周辺地域の平和と安定にとって必要な米国の関与や米軍の展開を確保する基盤となっており、米国と地域諸国との同盟・友好関係とあいまって、この地域の平和と安定を確保するために重要な役割を果たしている。
○ 日米安保体制を基調とする日米間の協力関係は、我が国の外交における基盤であり、国際社会の平和と安定への我が国の積極的取組に資するものである。

2 日米安全保障共同宣言
○ 日米安保条約を基調とする日米同盟関係が、二十一世紀に向けてアジア太平洋地域で安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認した上で、我が国防衛のための効果的な枠組みは日米両国間の緊密な防衛協力であることや、米国が約十万人の前方展開兵力を維持することなどを改めて確認した。
○ 日米同盟関係の信頼性を高める上で重要な柱となる具体的な分野での協力(政策協議、指針見直し、装備・技術分野での相互交流など)を進めていく。

第3節 防衛計画の大綱

1 大綱が前提としている国際情勢
 我が国周辺地域では、依然として大規模な軍事力が存在するとともに、その拡充・近代化など不透明・不確実な要素が残っている。一方、国家間の協調関係を深め地域の安定を図ろうとする動きが見られる。また、日米間の緊密な協力関係は、我が国の安全及び国際社会の安定を図る上で引き続き重要な役割を果たしていく。

2 我が国の安全保障と防衛力の役割
○ 基盤的防衛力構想を基本的に踏襲するとともに、防衛力の規模及び機能の見直しを行い、その合理化・効率化・コンパクト化を一層進める。
○ 日米安保体制の重要性を再確認している。
○ 防衛力の役割として、我が国の防衛、大規模災害など各種の事態への対応、より安定した安全保障環境の構築への貢献を掲げている。

3 我が国が保有すべき防衛力の内容
○ 各自衛隊の体制を明示し、基幹となる部隊や主要装備の具体的な規模を示す。
○ 各自衛隊が保有すべき態勢(侵略事態などに対応するための態勢、災害救援などの態勢など)を示している。
○ 防衛力の適切な弾力性を確保することとしている。

4 防衛力の整備、維持及び運用における留意事項
 中長期的な見通しの下での適切な経費配分、効率的な調達補給態勢の整備への配意、技術研究開発の態勢の充実に努めることなどが述べられている。

第3章 防衛力の多様な役割と防衛庁の諸施策

第1節 防衛力の整備と新たな体制への移行

1 中期防衛力整備計画
○ 防衛大綱に従い、防衛力の合理化・効率化・コンパクト化や、防衛力の機能の充実・質的向上、防衛力の弾力性の確保などの六つの柱を基本に、防衛力整備を進めることとしている。
○ 基幹部隊の見直しなどについて、目標を示すとともに、空中給油機能、弾道ミサイル防衛などの検討課題なども挙げている。また、一昨年十二月、中期防の見直しが行われ、実施に必要な防衛関係費の総額の限度は、おおむね二十四兆二千三百億円程度をめどとすることとされた。

2 自衛隊の新たな体制への移行
○ 各自衛隊の基幹部隊について見直しを進めている(師団の旅団への改編、護衛隊の一部廃止など)。
○ 昨年四月の法改正(本年三月施行)によって、出動時以外においても、統合運用が必要な場合には、統合幕僚会議が長官を補佐し得るように、その機能の充実が図られた。
○ 弾力性を確保することを考慮して、陸上自衛隊の一部の部隊は、即応予備自衛官を主体として編成することとされた。
○ 取得改革の具体化方策(ライフサイクルコストの抑制のための諸方策など)がまとめられた。
○ 防衛力を適切に整備・運用していくため、装備の面においてもそれを支える防衛生産・技術基盤の維持に配意するとともに、技術開発態勢の充実に努めることとされている。

3 平成十一年度の防衛力整備
○ 見直し後の中期防を踏まえ、あらゆる経費について、取得改革の推進を始めとする見直しの努力を行うことにより、引き続き聖域なく経費の縮減を行いつつ、基幹部隊の見直し、老朽装備の更新・近代化などに配意しながら、防衛力全体として均衡のとれた態勢の維持、整備を図ることとしている(第1表参照)。

4 弾道ミサイル防衛に関する日米共同技術研究
○ 各種の検討を踏まえ、昨年十二月、安保会議において、本年度から、海上配備型上層システム(NTWD)を対象とした日米共同技術研究に着手することなどについて了承された(第2図参照)。
○ 政府としては、今後の我が国の取組として、日米間で共同技術研究を行うことが最も効率的かつ実りあるものであり、また、このような日米間の協力は、日米安保体制の信頼性の向上に資するものであると考えている。
○ NTWDの四つの項目の設計及び赤外線シーカの構成要素の試作に必要な経費として、平成十一年度予算(契約ベース)に九億六千二百万円を計上した。

第2節 我が国の防衛

1 警戒監視活動など
 自衛隊は、平素から周辺海域での警戒監視や対領空侵犯措置などを実施している。

2 自衛隊は、外部からの武力攻撃が生じた場合においては、次のような作戦を実施する。
 その際、米軍は自衛隊の行う作戦を支援・補完する。
@ 防空のための作戦
 敵の航空侵攻に即応して、できる限り国土から遠方の空域で要撃して国民と国土の被害を防ぎ、敵の航空攻撃の継続を困難にするよう努める。
A 周辺海域の防衛と海上交通の安全確保のための作戦
 洋上での哨戒や護衛、港湾・海峡の防備などの各種作戦の累積効果により、敵の進出の阻止及び兵力の消耗などを通じて、海上交通の安全を確保する。
B 着上陸侵攻対処のための作戦
 敵の移動間、上陸の直後など戦闘力の発揮が困難な時期をとらえ、できる限り洋上から海岸地域の間や着上陸地点において対処し、これを早期に撃破する。

3 武力攻撃に備えるための態勢
○ 自衛隊の行動にかかわる法制の研究については、研究にとどまらず、その結果に基づき法制が整備されることが望ましいと考えている。また、自衛隊及び米軍の行動に直接にはかかわらないが、国民の生命、財産保護などのための法制については、安全保障上の課題であり、その取扱いについて、今後検討していくことが必要であると考えている。

第3節 大規模災害など各種の事態への対応

1 災害への対応
 災害派遣の形態、地震防災派遣のための態勢や災害派遣時における自衛官の権限など、自衛隊の行う災害派遣の仕組みを説明するとともに昨年度の災害派遣の実施状況(大雨や台風に伴う災害派遣、地震に関する情報の収集、救急患者の輸送)を紹介する。

2 緊急事態への対応
○ 政府は、総理の指示に基づき、我が国に対する危機が発生した場合や、そのおそれがある場合において、政府が執るべき対応について諸々のケースを想定し、@在外邦人などの輸送、A大量避難民対策、B沿岸・重要施設の警備など、C対米協力措置などの各項目について各関係省庁が連絡をとって研究、検討を進めてきている。これらについては、今後とも更に検討を深めることとしている。
○ 航空自衛隊は、自衛隊法の規定に基づき、外国における緊急事態に際し、外務大臣からの依頼を受けて生命又は身体の保護を必要とする在外邦人等を輸送機等を使用して輸送する態勢をとっている。本年五月、自衛隊法が改正され、輸送に適した自衛隊の船舶及び船舶に搭載したヘリコプターを使用して邦人輸送ができることとなった。
○ 防衛大綱では、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合には、適切に対応することとしているが、この点に関しては、指針の実行性確保のための法整備が行われたところであり、これに基づいて対応することとなる。

第4節 より安定した安全保障環境の構築への貢献

1 国際平和協力業務
○ 政府としては、日本が国際社会への応分の貢献を行うべきことは当然であり、平和維持隊本体業務の凍結解除を含む国連の平和維持活動への一層の協力について、国会はもとより国民の理解のもと、積極的に進めていきたいと考えている。
○ 一九九六年(平成八年)以来、ゴラン高原派遣輸送隊が七次(本年二月より)にわたって派遣され輸送などの業務に従事している。また、UNDOFの司令部要員として自衛官が派遣され、輸送などの後方支援分野に関する企画及び調整などの業務を担当している。

2 国際緊急援助活動
○ 自衛隊は、国際緊急援助活動として、医療、空輸の活動及びこれらに給水活動を組み合わせた活動を実施できる態勢をとっている。
○ 防衛庁としては、人道的な見地及びより安定した安全保障環境の構築への貢献という見地から国際緊急援助活動に積極的に取り組むこととしており、その意味で、初めての国際緊急援助活動となった昨年十一月のホンデュラスへの自衛隊の派遣は、意義あるものであった。
  また、初の国際緊急援助活動における貴重な経験を今後の活動に活かすべく、外務省などとも調整しつつ、検討を進めている。

3 安全保障対話・防衛交流
○ 日本の安全を確保するためには、適切な防衛力の保持と日米安保体制の堅持とともに、より安定した安全保障環境を国際社会、特に、アジア太平洋地域において構築していくことが重要である。そのため防衛庁では、この地域における関係諸国との信頼関係の増進を図り、不安定要因を取り除く上で、関係諸国との二国間交流やARFなどの多国間の安全保障対話などを重視し積極的に取り組んでいる。
○ 日韓防衛交流においては、昨年九月に韓国国防部長官が訪日、本年一月には防衛庁長官が訪韓し、核兵器開発疑惑、弾道ミサイル開発の動きのある北朝鮮情勢や防衛交流などについて意見交換を行った。このうち防衛交流に関しては、昨年九月の日韓防衛首脳会談で合意された具体的な案件について再確認されるなど両国の防衛交流をより活発化させることで一致した。
  また、外交、防衛当局間の安全保障対話や部隊間の交流などが行われている。
○ 日露防衛交流においては、昨年四月の日露首脳会談で合意された項目の一つである統合幕僚会議議長の初めての訪露が五月に、ロシア参謀総長の初めての訪日が十二月に実現した。また、昨年七月には、日本海北部において、海・空各自衛隊とロシア海軍による捜索・救難活動に関する初の共同訓練が実施された。
○ 日中防衛交流については、昨年十一月の江沢民国家主席訪日時においても、安保・防衛分野での交流を漸進的に拡充することで意見が一致した。また、昨年五月の防衛首脳会談の合意に沿った、中国人民解放軍軍医と自衛隊医官との交流及び防衛医科大学校における中国側留学生の受け入れや本年一月に日中防衛医療セミナーを開催した。
○ 東南アジア諸国やその他の諸国との防衛交流においては、防衛首脳クラスなどのハイレベルの交流が着実に継続されてきており、防衛当局者間の定期協議などを通じた安全保障分野での意見交換なども行われている。
○ 防衛庁は、ARFがアジア太平洋諸国の共同体意識を醸成し、地域の安全保障環境を安定化させるものとして積極的な関与を続けており、防衛政策について記述した文書を提出したり、各種会合に参加している。
○ 防衛庁は、各国防衛当局者との情報・意見交換を通じた相互理解の促進のため、アジア・太平洋地域防衛当局者フォーラムなど、自ら主体となって様々な対話の機会を設けてきている。
○ 防衛庁は、政府や民間などの主催による多国間の安保対話にも積極的に参加している(日米韓防衛実務者協議、北太平洋安全保障三極フォーラムなど)。

4 軍備管理・軍縮分野への協力
○ 化学兵器禁止条約(CWC)については、化学兵器禁止機関(OPCW)に陸上自衛官を査察局長及び査察員として派遣しているほか、陸上自衛隊化学学校に対する査察を受け入れている。
  また、生物兵器禁止条約(BWC)の強化に関する交渉に対し、職員を随時派遣するとともに、包括的核実験禁止条約(CTBT)に関し、所要の情報を提供している。
○ 対人地雷禁止条約の発効にともない、対人地雷の使用などが禁止されることから、防衛庁としては、我が国の防衛に万全を期するため、条約上の対人地雷に該当せず、一般市民に危害を与える恐れのない代替手段の導入を含む必要な措置を早急に講じることとしている。
  また、自衛隊が約百万個保有する対人地雷の廃棄方法については、安全性などの観点を考慮し、国内事業者に処分を委託することとしており、条約で認められた必要最小限の例外保有分を除き、条約で定められた発効後四年以内に確実に廃棄することとしている。
○ イラクの大量破壊兵器の廃棄に関する国連特別委員会(UNSCOM)の監視チームなどへの職員派遣や、ミサイル輸出管理レジーム(MTCR)などの会合への職員派遣などを行っている。

第4章 日米安全保障体制に関連する諸施策

第1節 日米防衛協力のための指針(指針)

1 指針の目的、基本的な前提及び考え方など
○ 指針は、より効果的かつ信頼性のある日米協力を行うための堅固な基礎を構築することなどを目的としている。
○ 指針及びその下で行われる取組は、日米安保条約などの基本的な枠組みは変更されないこと、日本のすべての行為は憲法上の制約の範囲内で日本の基本的な方針に従って行われること、日米両国のすべての行為は、国連憲章を始めとする関連する国際約束に合致することなどの基本的な前提及び考え方に従って行われる。

2 指針において定められた協力事項
○ 平素から行う協力
  日米両国政府は、平素から、情報交換及び政策協議、安全保障対話、共同演習など、様々な分野での協力を充実することとしている。
○ 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動など
  引き続き日米防衛協力の中核的要素であり、日米両国政府は、日本は主として防勢作戦を行い、米国はこれを補完・支援するための作戦を行うなどの協力を行うこととしている。
○ 日本周辺地域における事態で、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(周辺事態)における協力
  日米両国政府は、周辺事態が発生することのないよう、外交上のものを含むあらゆる努力を払う。周辺事態において、日米両国政府が主体的に行う活動における協力、米軍の活動に対する支援、運用面における日米協力を行う。

3 指針の下での日米共同の取組
○ 平素において指針の下での日米共同作業を実施するため、包括的なメカニズムを構築する。同メカニズムにおいては、計画についての検討を行い、準備に関して共通の基準を確立し、共通の実施要領などを準備する。
○ 緊急事態において日米の実際の活動の調整を図るため、調整メカニズムを日米両国政府が平素から構築しておき、日本に対する武力攻撃などに際して、各々が行う活動の間の調整を行う。

第2節 指針の実効性を確保するための諸施策

1 日米防衛協力のための指針の実効性確保のための閣議決定
 一昨年九月、指針が日米間で合意されたことを受け、閣議決定を行い、指針の実効性を確保し、もって日本の平和と安全を確保するための態勢の充実を図るため、法的側面を含めて、政府全体として検討の上、必要な措置を適切に講ずることとした。

2 指針の実効性を確保するための法律及び協定
 政府は、指針の実効性を確保するために必要な措置についての検討成果の一つとして、周辺事態安全確保法、日米物品役務相互提供協定を改正する協定、自衛隊法の一部を改正する法律について政府案を閣議決定の上、国会に提出し、協定に署名した。じ後、様々な議論がなされ、周辺事態安全確保法案が一部修正された後、本年五月、第百四十五回通常国会において、それぞれ成立又は承認された。

3 周辺事態安全確保法
○ 周辺事態とは、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、ある事態が周辺事態に該当するか否かは、その事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断する。したがって、その生起する地域をあらかじめ地理的に特定することはできない(第3図参照)。
○ 自衛隊の部隊等が実施する後方地域支援及び後方地域捜索救助活動については、国会での審議の結果、原則、国会の事前承認、緊急時には事後承認の対象とすることとされた。政府としても、可能な限り国会の事前承認を得るよう努めることは当然であると考えている。
○ 国以外の者に対する協力の求め又は依頼の内容については、事態ごとに異なるものであり、あらかじめ具体的に確定される性格のものではないが、例えば地方公共団体の長に対して求める協力項目例としては、港湾の施設の使用など、また、民間に依頼するものとしては、民間運送事業者の協力などが想定される。
○ 武器の使用について、国会での審議の結果、後方地域支援についても、当該職務に従事する自衛官の生命又は身体の安全確保に万全を期す観点から、慎重の上にも慎重を期して武器の使用に係る規定を設けることとされた。
○ 船舶検査活動については、国会での審議の結果、その在り方などにつき、さらに検討する必要があることから、別途立法措置をとるとの前提で削除されることとなった。政府としては、その重要性にかんがみ早期に結論が得られることを期待している。

4 日米物品役務相互提供協定を改正する協定の内容
 周辺事態に対応する活動のために必要な物品又は役務についても、提供できることとする。

5 自衛隊法の一部を改正する法律の内容
 防衛庁長官が行う在外邦人等の輸送の手段として、船舶及び当該船舶に搭載された回転翼航空機を加える。また、当該職務に従事する自衛官の武器使用に係る規定が設けられている。

6 指針の下での日米共同の取組の実施
 昨年一月の防衛庁長官などの三者会談の際、SCCの構成員が、包括的なメカニズムの構築について了承し、その下で本格的な共同作業を開始することを合意した。
 調整メカニズムは現在のところ構築されていないが、具体的な調整の方法などを含め検討を進めている。

第3節 平素から行っている協力

1 政策協議・情報交換など
 日米両国間の安全保障上の政策協議は、通常の外交ルートによるもののほか、SCC(いわゆる2プラス2)及びSSCなど、各種のレベルで緊密に行われている。
 以下、主な政策協議及びその成果について説明する。
○ 日米安全保障協議委員会(SCC)
  昨年九月、北朝鮮によるミサイル発射などについて協議するとともに、弾道ミサイル防衛の共同技術研究を実施する方向で、作業を進めていくことなどを表明した。
○ 日米防衛首脳会談
  昨年九月、核兵器開発疑惑、ミサイル開発をめぐる朝鮮半島情勢への対応について意見交換などを行うとともに、日本側からは、NTWDに関する共同技術研究に係る経費の平成十一年度予算への計上など、日本の国内手続きの現状などを説明した。

2 日米共同訓練
 日米共同訓練を通じて、平素から戦術面などの相互理解と意思疎通を促進して、インターオペラビリティを向上させておくことは、日本に対する武力攻撃などの際の日米共同対処行動を円滑に行うために不可欠である。また、このような努力は、日米安保体制の信頼性と抑止効果の維持向上に役立つものである。

3 日米物品役務相互提供協定
 自衛隊と米軍との間で、いずれか一方が物品又は役務の提供を要請した場合には、他方はその物品又は役務を提供できることを基本原則としており、共同訓練、国際連合平和維持活動、人道的な国際救援活動及び周辺事態へ対応する活動に関する協力において適用される。

4 装備・技術面での相互交流
 これまで、携行SAM関連技術など十件の武器技術について、対米供与を決定している。また、両国では、具体的な研究プロジェクトを通じて相互に技術交流の促進を図っている。

第4節 在日米軍の駐留を円滑にするための施策など

1 在日米軍の駐留に係る経費の負担など
 日本は、従来から、日本の安全保障にとって必要不可欠な日米安保体制の効果的な運用を確保していくことは極めて重要との観点から、厳しい財政事情にも十分配意しつつ、在日米軍駐留経費負担について自主的にできる限り努力してきた。

2 在日米軍の施設・区域の安定的な使用の確保
 政府は、在日米軍施設・区域に係る諸施策について、日米安保条約の目的達成と周辺地域社会の要望との調和を図りながら、問題の解決のための努力を重ねてきている。
 なお、政府は、地方分権推進計画に従い、同計画で定められた事項に係る関係法律の整備を行うために、駐留軍用地特措法の一部改正を含む関係法律を一括法として立案し、本年三月、閣議決定の上、国会に提出した。

第5章 国民と防衛

第1節 自衛隊と隊員

1 自衛隊の組織と人
○ 自衛隊は、我が国の防衛の任務を全うするため、陸・海・空各自衛隊を中心に、防衛大学校、防衛医科大学校、防衛研究所、技術研究本部、調達実施本部、防衛施設庁など、各種の機能を備えた様々な組織で構成されている。
○ 自衛隊員は、自衛官、即応予備自衛官及び予備自衛官、事務官などからなり、各々、採用や職務などが異なる。また、新たな再任用制度や官民交流制度の導入を図ることとしている。

2 自衛隊の多彩な部隊
 緊急患者輸送など、地域と密接にかかわった活動を実施して国民の生活の安定に貢献している部隊として、第一〇一飛行隊(陸上自衛隊)、大村航空隊(海上自衛隊)、千歳救難隊(航空自衛隊)の活動を紹介する。

3 日々の教育訓練
○ 自衛隊は、種々の制約の中で、事故防止など安全確保に細心の注意を払いつつ、隊員の教育や部隊の訓練などを行い、精強な隊員及び部隊の練成に努めている。
○ 昨年十一月、統合運用能力の向上を図ることを目的として、日米共同統合演習の中で、硫黄島及び同島周辺海空域において、初めて陸・海・空三自衛隊による実動の統合演習を行った。

第2節 国民生活とのかかわり

1 国民生活への貢献など
 自衛隊は、その組織、装備、能力を生かし、自衛隊が直接または関係省庁への協力を通じて、国民生活にかかわる様々な活動(危険物の処理、医療面での貢献、運動競技会に対する協力、国家的行事への参加、輸送への協力、密航船対策への協力、教育訓練の受諾、南極観測に対する支援など)を行っている。

2 自衛隊への理解を深めるための活動など
 防衛庁は、防衛問題や自衛隊に対する国民の理解と関心を深めるため、広報活動や、国民からの情報公開の要請に対して、円滑かつ的確に応えるための取組などを行っている。
 なお、情報公開法については、防衛庁としても、国民の情報公開の要請と、国家の安全と利益に直結するという防衛庁の情報の重要性との調和を図りながら、情報公開法の目的にのっとり的確かつ円滑に対応していく考えである。

第3節 自衛隊を支える力

1 自衛隊の活動に対する支援・協力
 自衛隊の活動に対し、地方公共団体や各種の団体によって様々な支援・協力がなされており、これらは隊員の士気を高揚し自衛隊の活動を支えるものとなっている。

2 自衛官の募集・就職援護に対する協力
 自衛官の募集や退職自衛官の就職援護に関して、地方公共団体のほか、各種の団体や企業などの協力を得ており、今後ともこれらの協力が不可欠である。

3 即応予備自衛官及び予備自衛官の訓練招集に対する協力
 即応予備自衛官及び予備自衛官が訓練招集に応じるには、雇用企業などの理解と協力が不可欠であり、防衛庁は即応予備自衛官雇用企業給付金の支給などにより、その理解を深めるよう努めている。

4 部外における自衛官教育に対する協力
 隊員に高い資質と能力を身に付けさせるため、部外の教育機関や企業などの協力を得て教育や研修を行っており、今後とも積極的な協力が望まれる。

第4節 地域社会と防衛施設

1 防衛施設の現状
 防衛施設には広大な土地を要するものが多く、狭い平野部に都市などと競合して存在している場合もある。特に、防衛施設周辺での都市化が進展した結果、その設置や運用が制約されるという問題が大きくなり、また、騒音などの生活環境問題も生じている。

2 防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策
 政府は、防衛施設と周辺地域との調和を図るため、騒音対策や生活関連施設の整備への助成などの施策を行っている。

3 環境保全への取組
 自衛隊は、全国に演習場などの施設を有するとともに、多数の装備を維持管理しており、粉塵などが発生する場合には、環境保全の観点からその防止、軽減に努めている。
 また、在日米軍施設・区域及びその周辺地域における環境保全へのより一層の取組が求められるようになってきていることから、体制の整備などを進めてきている。

4 在日米軍施設・区域に係る諸施策
 在日米軍施設・区域の安定的な使用と周辺地域社会の要望との調和を図るため、従来、岩国飛行場滑走路移設事業及び空母艦載機の着陸訓練場の確保に係る施策などを行ってきている。

第5節 沖縄に所在する在日米軍施設・区域

1 在日米軍施設・区域とその整理・統合・縮小への取組
○ 米軍が沖縄に駐留する理由には、歴史的経緯により、駐留の基盤となる基地、練度や即応性の維持・向上に必要な演習場などが現に存在していること、また、米本土などよりも東アジアの各地域に近く、緊急な展開を要する場合に迅速な対応が可能であるなどの地理上の利点を有することなどが考えられる。
○ 沖縄の復帰後、日米両国は地元の要望の強い事案を中心に、米軍施設・区域の整理・統合・縮小のための努力を継続的に行ってきた(佐藤・ニクソン共同発表、いわゆる沖縄3事案への取組など)。

2 在日米軍施設・区域に係る問題解決に向けての取組(SACO設置以降)
○ SACO設置以後、沖縄の米軍施設・区域に係る問題の解決のため、様々な取組が実施されている(沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会などにおける取組など)。
○ SACO最終報告の実施状況
・ 普天間飛行場の返還と代替ヘリポートの建設
  最良の選択肢として海上へリポート案を地元に提示したが、他方、政府としては、地元の頭越しにこれを進めることはない旨、繰り返し述べている。防衛庁としては、稲嶺沖縄県知事の考えを十分に聞きつつ、本問題の解決に向け真摯に取り組んでいく考えである。
・ 那覇港湾施設の返還
  防衛庁としては、知事の考えを十分に聞きつつ、浦添市をはじめとする地元の理解と協力を得て、本問題の解決に取り組んでいく考えである。
・ 安波訓練場の返還
  昨年十二月、SACO事案として初めて返還が実現した。
・ パラシュート降下訓練の伊江島補助飛行場への移転
  本年三月、移転先となる関係地方公共団体の理解が得られ、訓練移転に向け、所要の手続きを進めている。

第6章 調達改革への取組と新たな事案への対応

第1節 調達改革などへの取組

 防衛庁は、防衛調達に係る一連の不祥事を深く反省し、抜本的な防衛調達の改革を行い、自衛隊員の再就職の在り方についても見直すこととした。防衛庁では、昨年末から真摯な検討を行い、本年四月、「調達改革の具体的措置」を取りまとめ、現在職員が一丸となって改革の具体化に取り組んでいる(第4図参照)。

1 背任事件の経緯及び問題点
○ 経 緯
  東洋通信機(株)など四社が、いずれも工数の水増しなどによって防衛庁から多額の過払いを受けていた事実が判明し、調達実施本部は、各社からこの過払い額を返還させた。このうち、東洋通信機及びニコー電子事案に関し、東京地方検察庁は、当時の調本本部長などや関係会社の幹部を背任容疑で逮捕・起訴した。
○ 防衛庁の対応
  一昨年以降、調本は、原価差異事案対策特別委員会を設置し、昨年二月、制度調査の強化などの施策を公表した。防衛庁は「四社事案関連文書の管理実態に関する報告」において、いわゆる証拠隠し疑惑について、組織的に証拠隠しを行っていたと受け取られてもやむを得ない事例があったことなどを記述し、これらを踏まえ、関係者の厳正な処分を行った。
○ 防衛装備品の調達の特性
  防衛装備品の調達では、
 @ 過酷な使用環境に耐えるため、仕様内容が複雑かつ高度で、特別の製造設備及び技術などを保有する企業は限定される。
 A 武器等製造法、航空機製造事業法の適用を受け、その許可を受けている企業は限定される。
 B ライセンス生産については、外国企業と技術援助契約を締結できる企業が限定される。
 C 武器輸出三原則などにより輸出が認められず、多数企業が参入するほどの生産規模に達しないものが多い。
  これらにより製造企業が限定され、競争的な市場が形成されにくく、随意契約が多くならざるを得ない。また予定価格の算定は、専門的な知識が要求される原価計算方式によって行うことが多い。
○ 背任事件の背景となった問題点
  背任事件の背景となった問題点として、随意契約の多さなどからくる透明性の欠如、調本内の原価計算部門と契約部門の相互けん制が働かなかったこと、調達事務に精通している人材の不足などが挙げられる。

2 調達改革への取組
○ 検討の経緯
  防衛庁は、部外有識者からなる「防衛調達制度調査検討会」を開催し、調達制度・体制の改革について検討を重ねるとともに、抜本的な改革を図るため、「防衛調達改革本部」を設け、昨年十一月「防衛調達改革の基本的方向について」を取りまとめた。本年四月にはこの基本的方向を踏まえ、調達制度改革、調達機構改革及び自衛隊員の再就職の在り方見直しに関する具体的方策として、「調達改革の具体的措置」を取りまとめた。
○ 調達制度改革の具体的措置
 @ 供給ソースの多様化の追求など競争原理の強化
 ・ 民生品等を活用した防衛庁規格・仕様書の見直しを促進する。
 ・ 装備品を随意契約で調達する場合、仕様書を作成する段階などで、実質的には競争契約と同様の手続をとる。
 ・ 「長官の指示」につき、契約に先立って企業を選定しておく必要があるものは、航空機製造事業法等による製造に関する許可を新たに必要とするときなど、三つの場合に限定する。
   なお、護衛艦等、複数企業が製造能力を有するものは、体制を整備することにより、原則として競争契約に移行することとした。
 ・ 規格・仕様書の概要のインターネットによる公開を促進し、供給ソースを発掘する。
 ・ 契約品目、価格、原価計算ルールなどを公開し、必要に応じて部外の意見を受けるなどの措置を実施する。
 A 経費率の算定に関する運用基準の明確化及びその原則的公表、試験研究費の明確化など予定価格訓令等を改正する。
 B 企業側提出資料の信頼性確保のための施策
 ・ 制度調査の受入れ義務、契約完了年度の翌年度までの資料の保存義務を「入札及び契約心得」に規定する。
 ・ 不適切な資料提出に対する制裁措置として過払い額に加え、過払い額と同一金額の支払義務などを契約条項に規定する。
 ・ 民間企業における過払い事案の再発防止に関する社内管理体制を整備することが期待される。
 C 本年度は工数データの集計をオフラインで行い、その後、一元的なオンライン工数集計を行うためのシステム開発を行う。
 D 原価計算能力の向上のため、支部の原価監査官と、本部の原価計算担当者の人事交流の拡大などの施策を推進する。
 E 過払い額算定・返納方法及び措置内容の報告・公表など、過払い事案処理要領に関する統一的かつ明確な基準を定める。
 F 企業側のコスト低減に向けたインセンティブ向上のため、本年度から、減価提案制度を導入するとともに、契約手続などによる企業側負担の適正化を検討する。
 G 具体的施策の実効性確保
   改革施策の実施状況をフォローアップする体制を確立し、制度調査等に監査法人・公認会計士を活用する。また、個別の施策は、防衛生産・技術基盤への影響にも配慮しつつ実施する。
○ 調達機構などの改革
 @ 新しい中央調達機関の在り方
   調達実施本部を廃止し、次の体制に移行することとした。
 ・ 原価計算部門は、内部部局へ吸収し、装備局と経理局の機能を有機的に統合して新設する管理局(仮称)に置く。
 ・ 契約部門は、各自衛隊や、各機関の共通な防衛装備品を集約し、契約本部(仮称)を設置する。
 ・ これらの措置を執るまでの間、同一副本部長が所掌する原価計算・契約両部門を、十一年度からそれぞれ別の副本部長に担当させ、相互けん制の強化を図る。
 A 第三者による監視体制の確立
 ・ 防衛調達に係る透明性・公正性を向上させるため、部外有識者を活用した監視体制を確立する。当面の措置として、本年四月、防衛調達適正化会議をスタートさせた。
 B 調達業務に係る教育・研修の充実
 ・ 調達業務全般に共通する知識を習得する研修などを強化し、体系的に専門家を養成するとともに、各種研修において集団討議や事例研究を重視した倫理教育を拡充する。

3 自衛隊員の再就職の在り方の見直し
○ 自衛隊員の再就職を取り巻く現状と現行の仕組み
  自衛官は、若年定年制などの任用制度により若年で定年を余儀なくされており、その多くは退職後の生活基盤の確保のため再就職が必要である。再就職は自衛隊法第六二条などにより一定の制限が定められているが、@審査・承認の対象、A承認のための具体的基準、B国会への報告制度といった点において一般職公務員と相違がみられ、見直しが必要と考えられた。
○ 新たな再就職手続の整備
 ・ 離職後二年間に長官による承認の対象となる再就職範囲を「離職前五年間に在職していた防衛庁本庁又は防衛施設庁と密接な関係にある企業の全ての地位への再就職」へ変更する。
 ・ 具体的な承認基準を、自衛隊法施行規則等において規定することとする。
 ・ 再就職の承認状況についての国会報告義務を自衛隊法に新たに規定し、承認基準についても公表する。
 ・ 自衛隊離職者就職審査会の構成等について検討し、新たな承認基準は、同審査会の審議を経て定めることとする。
○ 再就職支援及び公務内での活用
 ・ 雇用情報を有効に活用するための情報ネットワーク化への着手等を含め、就職援護策を一層推進する。
 ・ 可能な限り退職自衛官の任用に努め、地方公共団体等への働きかけを行う等、公的機関での採用の推進に努力する。
 ・ 十三年度から定年退職者等を再任用し得る制度を導入すべく、自衛隊法改正案に所要の内容を盛り込んだ。
○ 退職後の生活を支えるための施策等
  民間企業等への再就職以外にも適切な措置があるかどうか、諸外国の制度を幅広く参考としつつ、不断の見直しを実施する。

4 関連する諸問題への対応
○ 過払い事案の処理状況
  防衛庁は、本年二月、東洋通信機事案で約六十二億円、ニコー電子事案で約三十一億円の返還請求を行った。ニコー電子からは、請求どおり国庫に一括納入されたが、東洋通信機とは返還額をめぐり、係争中であり、裁判を通じて算定額の正当性を明らかにし、適正な国損の回収に努めていく。このほか、二社から過大請求を行ってきたとの報告があったほか、制度調査により、新たに二社について過払いの可能性があることが判明した。
  防衛庁は過払いが判明している会社については真にやむを得ない場合を除き、契約を差し控えるとの取引停止措置をとっている。
○ 富士重工業会長などによる贈収賄事件への対応
  昨年末、富士重工業会長及び前専務と元防衛政務次官が、海自の救難飛行艇の試作製造分担の決定をめぐる贈収賄容疑で逮捕され、起訴された。防衛庁は、同社との契約については一年間、真にやむを得ないものを除き行わないとの取引停止措置をとるなどの措置をとった。

第2節 北朝鮮によるミサイル発射と防衛庁の対応

1 概 要
○ ミサイル発射前後の経緯
  防衛庁は、八月三十一日、米国より、北朝鮮東部沿岸から弾道ミサイル一基が日本時間同日午後〇時過ぎに発射され、弾着地域は日本海ウラジオストク南方海域と予想される旨の早期警戒情報を受領し、公表した(第5図参照)。
  九月四日、北朝鮮の朝鮮中央通信社が、今回の発射は「人工衛星」の打ち上げである旨発表した。
○ ミサイルの飛翔態様など
  今回発射された飛翔体は、飛翔態様などを踏まえれば、米国がテポドン一号と分類する二段式のミサイルを基礎とした飛翔体であったと判断される。
○ 打ち上げ物体の分析
  理論的には、地球周回軌道上に物体を投入し得る可能性が全くないわけではないが、その物体が何らかの有意な人工衛星としての機能を持つことは考えにくく、今回の発射の現実的な意味合いとしては、弾道ミサイルの発射そのものである可能性が高い。
○ 打ち上げ目的の分析
  総合的にみて、今回の発射については、弾道ミサイルの長射程化をにらんでの種々の技術的課題の検証などが主目的である可能性が高いと判断される。
○ 日本の安全保障などへの影響
  北朝鮮におけるミサイル開発は急速に進展し、日本全域をカバーし得るミサイルを製造する技術を保有するに至ったことは事実である。

2 教訓と課題
○ 情報収集能力などの向上
  今後のミサイル発射などに、より的確に対応するため、防衛庁としては、情報収集・分析・伝達面において、兆候把握段階における十分な情報収集・分析態勢の確保などの点について措置を講じていく必要があると考え、既に重要事態対応会議などの場において検討してきた。
○ 情報収集衛星の導入について
  政府は、北朝鮮によるミサイル発射を契機として、衛星による画像情報の利用方法について検討を行い、平成十四年度を目途に情報収集衛星を導入することを閣議決定した。
○ 防衛庁における検討態勢など
  防衛庁は、自衛隊の出動などが必要とされる重要事態が発生する場合における情報の収集など、対応の在り方についてあらかじめ検討を行うため、本年一月、重要事態対応会議を設置した。

第3節 能登半島沖の不審船事案と防衛庁の対応

1 概 要
○ 経 緯
  本年三月二十三日早朝、警戒監視活動を実施中のP―3Cが、領海内で不審船らしい船舶を発見した。「はるな」は、P―3Cが発見した船舶二隻を視認し、船名及び船舶の状況を確認することができたため、当該船舶に係る情報を防衛庁から海上保安庁に連絡した。
  防衛庁からの連絡を受けた海上保安庁が確認作業を行った結果、両船は不審船であると判断された。
  海上保安庁では、現場に到着した航空機、巡視船艇により、両船に対し停船命令、威嚇射撃を実施したが、両船は高速で逃走を続け、海上保安庁では追尾が困難な状況となった。
  防衛庁では、午後六時三十分ごろ、重要事態対応会議が開催され、自衛隊の対応についての具体的な検討が行われた。
  二十四日午前零時三十分、川崎運輸大臣から海上保安庁の能力を超える事態に至った旨の連絡があった。防衛庁では、海上警備行動が必要と判断し、この承認を閣議に求めた。これを受け、内閣総理大臣は、午前零時四十五分、海上警備行動を承認した。この承認を受け、野呂田防衛庁長官は、午前零時五十分、海上自衛隊に対し海上警備行動の発令に関する命令を発出し、海上自衛隊は直ちに不審船への対処を開始した。
  第二大和丸に対しては、午前一時十八分より「みょうこう」が、第一大西丸に対しては、午前一時より「はるな」が停船命令及び警告射撃を実施するとともに、P―3Cが、警告のため、百五十キロ爆弾を投下した。しかしながら、第二大和丸及び第一大西丸はこれを無視し、逃走を続け、日本の防空識別圏外に出た。このまま追跡した場合には、他国に無用の刺激を与えることにもなりかねないと考えられたため、追尾を終了した。その後、不審船二隻はレーダーによる探知が不可能になるほど遠くへ移動したことなどから、防衛庁長官の命により、午後三時三十分をもって海上警備行動を終結した。
  この不審船について、各種の情報を総合的に分析した結果、政府として、不審船二隻は、北朝鮮の工作船であるとの判断に至った。
○ 不審船事案における自衛隊の行動の根拠
  不審船の発見から海上警備行動発令までの間は、所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと、による行動である。
  海上警備行動発令及びその後に実施した停船命令及び警告射撃は、海上警備行動及び海上警備行動時の権限(武器使用権限、立入検査などの権限等)による行動である。

2 教訓と課題
 政府としては、不審船への対応は、海上保安庁では対処することが不可能もしくは著しく困難と認められる場合には、海上警備行動により自衛隊が対処するとの現行法の枠組みの下で、関係省庁間の情報連絡や協力の在り方及び海上保安庁及び自衛隊の対応能力の整備などの項目について検討を行ったものである。
 防衛庁としては、不審船の停船手段として、どのようなものが有効かなどの検討を行った結果、運用、装備面などでの充実などが重要であると認識したため、これらの検討を深めることとしている。

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六月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成十一年六月結果の概要―


総 務 庁


◇就業状態別の動向

 平成十一年六月末の十五歳以上人口は一億七百七十六万人で、前年同月に比べ五十万人(〇・五%)の増加となっている。これを就業状態別にみると、就業者は六千五百十九万人、完全失業者は三百二十九万人、非労働力人口は三千九百十二万人で、前年同月に比べそれぞれ八十九万人(一・三%)減、四十五万人(一五・八%)増、八十九万人(二・三%)増となっている。
 また、十五〜六十四歳人口は八千六百七十三万人で、前年同月に比べ十八万人(〇・二%)の減少となっている。これを就業状態別にみると、就業者は六千十一万人、完全失業者は三百十七万人、非労働力人口は二千三百二十八万人で、前年同月に比べそれぞれ八十九万人(一・五%)減、四十二万人(一五・三%)増、二十万人(〇・九%)増となっている。

◇労働力人口(労働力人口比率)

 労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は六千八百四十八万人で、前年同月に比べ四十四万人(〇・六%)の減少となっている。男女別にみると、男性は四千五十一万人、女性は二千七百九十七万人で、前年同月に比べると、男性は十五万人(〇・四%)の減少、女性は二十九万人(一・〇%)の減少となっている。
 また、労働力人口比率(十五歳以上人口に占める労働力人口の割合)は六三・五%で、前年同月に比べ〇・八ポイントの低下と、十七か月連続の低下となっている。

◇就業者

(一) 就業者

 就業者数は六千五百十九万人で、前年同月に比べ八十九万人(一・三%)減と、十七か月連続の減少となっている。男女別にみると、男性は三千八百四十五万人、女性は二千六百七十四万人で、前年同月と比べると、男性は五十二万人(一・三%)減と、十八か月連続で減少、女性は三十七万人(一・四%)減と、十三か月連続で減少となっている。

(二) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百二十一万人、自営業主・家族従業者は一千百七十四万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は七十万人(一・三%)減と、十七か月連続で減少、自営業主・家族従業者は二十七万人(二・二%)減と、十七か月連続の減少となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千二百八十五万人で、七十五万人(一・四%)減、十七か月連続の減少
 ○常 雇…四千六百七十四万人で、百一万人(二・一%)減、十八か月連続の減少
 ○臨時雇…四百九十六万人で、二十七万人(五・八%)増、平成八年九月以降、増加が継続
 ○日 雇…百十五万人で、同数(増減なし)

(三) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…三百五十三万人で、十六万人(四・三%)減、五か月連続で減少、減少幅は前月(二十三万人減)に比べ縮小
○建設業…六百六十一万人で、十一万人(一・六%)減、二十か月連続で減少、減少幅は前月(二十一万人減)に比べ縮小
○製造業…一千三百四十五万人で、三十六万人(二・六%)減、二十五か月連続で減少、減少幅は前月(五十二万人減)に比べ縮小
○運輸・通信業…三百九十万人で、十四万人(三・五%)減、二か月連続で減少、減少幅は前月(二万人減)に比べ拡大
○卸売・小売業、飲食店…一千四百八十六万人で、二万人(〇・一%)増、二か月連続で増加、増加幅は前月(七万人増)に比べ縮小
○サービス業…一千六百九十四万人で、十四万人(〇・八%)減、五か月ぶりの減少
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百四十一万人で、十三万人(二・三%)減、二か月連続で減少、減少幅は前月(十六万人減)に比べ縮小
○製造業…一千二百六万人で、四十二万人(三・四%)減、二十五か月連続で減少、減少幅は前月(五十万人減)に比べ縮小
○運輸・通信業…三百七十万人で、十五万人(三・九%)減、二か月連続で減少、減少幅は前月(三万人減)に比べ拡大
○卸売・小売業、飲食店…一千二百万人で、十八万人(一・五%)増、二か月連続で増加、増加幅は前月(十四万人増)に比べ拡大
○サービス業…一千四百四十四万人で、十四万人(一・〇%)減、五か月ぶりの減少

(四) 従業者階級

 企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百四十四万人で、三万人(〇・二%)減少
○三十〜四百九十九人規模…一千七百二十八万人で、二十万人(一・一%)減少
○五百人以上規模…一千二百五十二万人で、四十二万人(三・二%)減少

(五) 就業時間

 六月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千四百二十二万人で、六十万人(四・四%)増加
○三十五時間以上…四千九百八十万人で、百六十六万人(三・二%)減少
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四二・七時間で、前年同月に比べ〇・二時間の減少となっている。

(六) 転職希望者

 就業者(六千五百十九万人)のうち、転職を希望している者(転職希望者)は六百三十二万人で、このうち実際に求職活動を行っている者は二百二十八万人となっており、前年同月に比べそれぞれ二十八万人(四・六%)増、一万人(〇・四%)減となっている。
 また、就業者に占める転職希望者の割合(転職希望者比率)は九・七%で、前年同月に比べ〇・六ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は九・八%、女性は九・六%で、前年同月に比べ男性は〇・九ポイントの上昇、女性は〇・二ポイントの上昇となっている。

◇完全失業者

(一) 完全失業者数

 完全失業者数は三百二十九万人で、前年同月に比べ四十五万人(一五・八%)の増加となっている。男女別にみると、男性は二百六万人、女性は百二十三万人となっている。前年同月に比べると、男性は三十七万人(二一・九%)の増加、女性は八万人(七・〇%)の増加となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非自発的な離職による者…百十八万人で、二十八万人増加
○自発的な離職による者…百三万人で、五万人増加
○学卒未就職者…十六万人で、一万人減少
○その他の者…七十九万人で、十万人増加

(二) 完全失業率(原数値)

 完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は、四・八%で、前年同月に比べ〇・七ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は五・一%、女性は四・四%で、前年同月に比べ男性は〇・九ポイント、女性は〇・三ポイントの上昇となっている。

(三) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
〔男〕
○十五〜二十四歳…四十六万人(十一万人増)、一〇・七%(二・九ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…四十九万人(十四万人増)、五・四%(一・五ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十三万人(同数)、三・〇%(〇・一ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…三十二万人(九万人増)、三・四%(一・〇ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…四十九万人(六万人増)、七・二%(〇・八ポイント上昇)
 ・五十五〜五十九歳…二十万人(五万人増)、四・九%(一・一ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…二十八万人(同数)、一〇・三%(〇・三ポイント上昇)
○六十五歳以上…九万人(同数)、二・八%(同率)
〔女〕
○十五〜二十四歳…二十九万人(同数)、七・三%(〇・三ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…四十一万人(五万人増)、七・〇%(〇・五ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…十九万人(一万人増)、三・七%(〇・三ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…十九万人(二万人増)、二・八%(〇・四ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…十三万人(同数)、三・〇%(〇・一ポイント低下)
○六十五歳以上…二万人(同数)、一・〇%(同率)

(四) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 世帯主との続き柄別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…九十四万人(十四万人増)、三・五%(〇・六ポイント上昇)
○世帯主の配偶者…四十一万人(二万人増)、二・八%(〇・一ポイント上昇)
○その他の家族…百四十四万人(二十一万人増)、七・七%(一・二ポイント上昇)
○単身世帯…五十万人(九万人増)、六・一%(一・〇ポイント上昇)

(五) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率は四・九%で、前月に比べ〇・三ポイント上昇し、比較可能な昭和二十八年以降で最高となっている。
 男女別にみると、男性は五・一%で前月に比べ〇・二ポイント上昇し、昭和二十八年以降で最高となっている。女性は四・四%で前月に比べ〇・二ポイントの上昇となっている。






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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十一年五月分結果速報


労 働 省


「毎月勤労統計調査」平成十一年五月分結果の主な特徴点は次のとおりである。

◇賃金の動き

 五月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は二十八万三千九百六円、前年同月比は○・四%減であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十七万九千二十四円、前年同月比○・四%減であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万一千七百五十九円、前年同月比○・五%減、所定外給与は一万七千二百六十五円、前年同月比は○・五%増となっている。
 また、特別に支払われた給与は四千八百八十二円、前年同月比は四・一%増となっている。
 実質賃金は、○・一%増であった。
 産業別にきまって支給する給与の動きを前年同月比によってみると、伸びの高い順に電気・ガス・熱供給・水道業一・五%増、金融・保険業一・四%増、製造業○・一%増、卸売・小売業,飲食店は前年同月と同水準、運輸・通信業○・四%減、サービス業○・八%減、建設業一・九%減、鉱業二・九%減、不動産業三・九%減であった。

◇労働時間の動き

 五月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は百四十五・八時間、前年同月比二・四%減であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は百三十六・七時間、前年同月比二・三%減、所定外労働時間は九・一時間、前年同月比二・一%減、季節調整値は一・八%増であった。
 製造業の所定外労働時間は十一・二時間で、前年同月比は○・八%減、季節調整値の前月比は二・〇%増であった。

◇雇用の動き

 五月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で○・三%減、常用労働者のうち一般労働者では一・〇%減、パートタイム労働者では三・三%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものは建設業二・〇%増、サービス業一・六%増であった。前年同月を下回ったものは、不動産業○・四%減、卸売・小売業,飲食店○・七%減、運輸・通信業一・〇%減、電気・ガス・熱供給・水道業一・二%減、製造業及び金融・保険業二・四%減、鉱業七・三%減であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者二・八%減、パートタイム労働者は○・八%増、卸売・小売業、飲食店では一般労働者三・〇%減、パートタイム労働者四・二%増、サービス業では一般労働者一・一%増、パートタイム労働者三・七%増となっている。








秋の行政相談週間 十月十七〜二十三日


行政に対する苦情などをお聴きします

 総務庁では、全国に行政相談のための窓口を設置し、皆さんからの国の行政に対する苦情や意見・要望を受け付け、公正で中立な立場から必要なあっせんを行うなどして、その解決や表現のを促進を図るとともに、行政運営の改善などを図っています。
 行政相談週間は、毎年五月と十月の二回行われており、今年の「秋の行政相談週間」は、十月十七日(日)〜二十三日(土)まで実施されます。期間中は、行政相談について特に皆さんの理解を得るとともにその利用の促進を図るため、各種行政相談活動を活発に展開しています。

●行政相談の内容は?

 役所の仕事(国の仕事、JR、NTTなど特殊法人の仕事、都道府県、市区町村の仕事で国から任されている・補助を受けて行っている仕事)や手続き、サービスなどの関係で、「苦情がある、困っていることがある」、「こうしてほしい」、などのことがありましたら、とにかくご相談ください。道路、交通、税、年金、保健・福祉、環境など、分野は問いません。昨年度、全国で約二十三万件の相談がありました。

●行政相談はどこに?

 行政相談の窓口は、
@全国の市区町村に配置されている行政相談委員(総務庁長官の委嘱を受けた民間の有識者)
A管区行政監察局・行政監察事務所
などです。ご相談は、直接お訪ねいただくのはもちろんのこと、手紙や電話、FAX、インターネットなどでも受け付けています。また、「秋の行政相談週間」中は、一日合同行政相談所や巡回行政相談所が設けられています。
 ご相談は無料で、内容などの秘密は守られます。また難しい手続きもありません。この機会を利用して、お気軽にご相談ください。
(総務庁)



    <10月27日号の主な予定>

 ▽公害紛争処理白書のあらまし………公害等調整委員会事務局 

 ▽労働力調査(七月)…………………総 務 庁 

 ▽家計収支(五月分)…………………総 務 庁 




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