官報資料版 平成11年10月27日




                  ▽公害紛争処理白書のあらまし………公害等調整委員会事務局

                  ▽労働力調査(七月)…………………総 務 庁

                  ▽家計収支(五月分)…………………総 務 庁











公害紛争処理白書のあらまし


―公害紛争等の現状と処理―


公害等調整委員会事務局


<はじめに>
 平成十一年版「公害紛争処理白書」は、公害等調整委員会が、平成十一年七月三十日、内閣総理大臣を経由して国会に対し「平成十年度公害等調整委員会年次報告」として報告したものである。
 同白書は、公害等調整委員会の平成十年度(平成十年四月一日から平成十一年三月三十一日まで)の所掌事務(公害紛争の処理に関する事務及び鉱業等に係る土地利用の調整に関する事務)の処理状況をまとめたもので、昭和四十七年に公害等調整委員会が発足して以来、二十七回目のものである。
 平成十一年版「公害紛争処理白書」のあらましは、次のとおりである。

 公害紛争処理法に基づく事務の処理概要

T 公害等調整委員会における公害紛争の処理状況

 公害等調整委員会(以下「委員会」という。)は、公害紛争処理法(昭和四十五年法律第百八号)の定めるところにより、公害に係る紛争について、あっせん、調停、仲裁及び裁定を行っている。
 平成十年度に委員会に係属した公害紛争事件は、新たに申請のあった二件(調停事件一件、裁定事件一件)に、前年度から繰り越された二十四件(調停事件六件、裁定事件十七件、義務履行勧告申出事件一件)を加えた計二十六件である。このうち、平成十年度中に終結した事件は、小田急線騒音被害等責任裁定申請事件等十七件であり、残り九件が十一年度に繰り越された。
 なお、公害紛争処理法施行(昭和四十五年十一月一日)以来、委員会(四十七年六月三十日以前は中央公害審査委員会)に係属した事件(あっせん、調停、仲裁、裁定及び義務履行勧告申出)は、七百三十五件であり、そのうち終結したものは七百二十六件である(第1表参照)。

◇調停事件

 平成十年度に委員会に係属した調停事件は、新たに申請のあった一件に前年度から繰り越された六件を加えた計七件である。このうち、松枯れ対策農薬空中散布大気汚染被害等調停申請事件一件については調停を打ち切り、終結した。
 平成十年度に係属した事件の概要は次のとおりである。

一 水俣病損害賠償調停申請事件
(事件の概要)
 熊本県から鹿児島県にまたがる不知火海の沿岸の漁民等が、チッソ株式会社水俣工場からの排水に起因した水俣病にかかり、これによって精神上、健康上の被害及び財産上の損害を被ったとして、チッソ株式会社を相手方(被申請人)として、賠償金の支払等を内容とする調停を求めたものである。
 現在の調停手続では、患者グループとチッソ株式会社との間の補償協定で、水俣病患者の症状等に応じて定められたA、B、Cの三ランクのいずれに該当するかの判定を委員会に求めることとした患者について、ランク付けを行い、各ランクに応じて個々人の補償額等の決定、家族の補償等を中心とした調停を行っている。
(事件処理の経過)
 昭和四十八年度の最初の調停以来、平成十年度末までに一千四百五十八人の患者について調停が成立した(第2表参照)。
 また、調停の成立した患者のうち、Bランク及びCランクの生存者の場合には、調停条項の中に、将来、申請人の症状に慰藉料等の金額の増額を相当とするような変化が生じたときは、これを理由として、調停委員会に対し、当該金額の変更を申請することができるものとする旨の条項があり、これに基づいてなされた慰藉料額等の変更申請を、平成十年度末までに五百一件受け付け、四百九十八件を処理した(第3表参照)。

二 豊島(てしま)産業廃棄物水質汚濁被害等調停申請事件(三件)
(事件の概要)
 平成五年十一月十一日、香川県小豆郡土庄町豊島の住民四百三十八人から、廃棄物処理業者、廃棄物排出業者及び香川県ら計二十七人を相手方(被申請人)として、公害紛争処理法第二十七条第一項の規定に基づき、香川県知事に対し調停を求める申請があった。
 申請の内容は以下のとおりである。被申請人らが共同して、違法な産業廃棄物の処理等を行ったため、有害物質を含有している膨大な量の産業廃棄物が放置され、その結果、申請人らに有害物質による水質汚濁のおそれ等による生活上、健康上及び精神上の被害等が生じている。
 これらを理由として、被申請人らに対し、@共同して香川県小豆郡土庄町豊島家浦字水ケ浦三一五一番地の一外四十九筆の土地(面積約二十八・五ヘクタール)に存在する一切の産業廃棄物を撤去すること、A連帯して、申請人各自に対し金五十万円を支払うことを求めるというものである。
 その後、平成五年十一月十五日、同一原因による被害を主張する豊島の住民百十一人から参加の申立てがあり、調停委員会は、六年一月二十四日、これを許可した。
 また、平成八年十月二十三日、平成五年の申請人五人から国(代表者厚生大臣)を相手方(被申請人)として、香川県小豆郡土庄町豊島家浦字水ケ浦三一五一番地の一外四十九筆の土地に存在する一切の産業廃棄物を撤去することを求める調停申請が、委員会に対してあった。
(事件処理の経過)
 本事件は、産業廃棄物の処理を委託した被申請人会社等の事業所の所在地が福井県、大阪府、兵庫県、鳥取県、岡山県、愛媛県、香川県に及ぶことから、いわゆる県際事件であり、香川県知事は、公害紛争処理法第二十七条第三項の規定により、前記関係府県知事と連合審査会の設置について協議したが、協議が整わなかったため、平成五年十二月二十日、同条第五項の規定により、本事件の関係書類を委員会に送付した。
 委員会は、本事件の関係書類の送付を受けた後、直ちに本事件の調停委員会を設け、現地調停を含む三十三回の調停期日を開催した。
 その過程で、産業廃棄物の実態についての認識の食い違いのため、当事者の主張に大きな隔たりがあることが判明したことから、調停委員会は、第四回調停期日において、三人の専門委員による産業廃棄物不法投棄地の実態調査を行い、その結果に基づき調停を進めることとした。実態調査は平成六年十二月十三日から七年三月末まで行われ、その結果を踏まえて、専門委員において科学的・技術的知見に基づいた産業廃棄物の撤去及び環境保全に必要な措置並びにこれらに必要な費用の検討が行われた。
 その後、前記調査検討結果を当事者に示した上で、各々の主張を聴取するなどした結果、第十四回調停期日において、香川県が、自らが主体となって処分地に存する廃棄物及び汚染土壌について、無害化するための中間処理を施す方向で検討する旨の意向を示し、申請人もこれを受け入れたので、細部について合意を図るべく手続を進めた結果、平成九年七月十八日、申請人と被申請人香川県との間で中間合意が成立した。
 その後、中間合意に基づき香川県が設置した技術検討委員会が十五回、第二次技術検討委員会が五回開催され、廃棄物の溶融処理、再資源化処理方式等の実験、処理実施期間中の環境保全対策などの検討がなされ、平成十一年三月、本件処分地に存する産業廃棄物の処理方法、暫定的な環境保全措置の方法等を盛り込んだ最終報告書案がまとめられた。
 また、第十五回調停期日において、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に定める委託基準に違反した廃棄物の処理委託を行った排出事業者は、同法上の責任を免れない旨を指摘するとともに、対策に要する費用等について、応分の負担をするよう求めた。
 その後、排出事業者との個別協議を重ねた結果、平成十一年三月末日までに、一部の排出事業者が負担に応ずることに同意し、それら排出事業者と申請人との間で調停が成立した。

三 中海本庄工区干陸事業水質汚濁被害等調停申請事件(二件)
(事件の概要)
 平成七年八月九日、島根県及び鳥取県の住民三十五人から、国(代表者農林水産大臣)を相手方(被申請人)として、公害紛争処理法第二十七条第一項の規定に基づき、島根県知事に対し調停を求める申請があった。
 申請の内容は以下のとおりである。国が計画している中海干陸事業が実施された場合、遊水域、浅瀬及び海水の流入・出の消滅などにより、災害、水質汚濁及び生態系の破壊を招くおそれがある。
 これらを理由として、被申請人国に対し、@全面干陸を行わないこと、A水質汚濁及び生態系の回復を目指し、森山堤防及び大海崎堤防の一部を早期に開削するなど、必要な措置を講じることを求めるというものである。
 その後、平成八年一月十九日、同一原因による被害を主張する島根県の住民一人から参加の申立てがあり、調停委員会は同日これを許可した。
(事件処理の経過)
 本事件は、いわゆる県際事件であり、島根県知事は、公害紛争処理法第二十七条第三項の規定により、関係県知事(鳥取県知事)と連合審査会の設置について協議したが、協議が整わなかったため、平成七年九月五日、同条第五項の規定により本事件の関係書類を委員会に送付した。
 委員会は、本事件の関係書類の送付を受けた後、直ちに調停委員会を設け、五回の調停期日を開催するなど鋭意手続を進めてきたが、平成八年八月に当時の与党三党(自由民主党、社会民主党、新党さきがけ)の合意により、本件事業については九年度から二年間、農林水産省において調査研究を行い、工事の再開については、その結果に基づいて判断することとなったことから、その間は、必要に応じて両当事者との連絡をとることにとどめ、手続はその調査結果を待って進めることとしている。

四 松枯れ対策農薬空中散布大気汚染被害等調停申請事件
(事件の概要)
 平成八年五月二十七日、島根県及び山口県の住民三人から、島根県益田市、島根県、山口県田万川町、山口県及び農林水産省を相手方(被申請人)として、公害紛争処理法第二十七条第一項の規定に基づき、島根県知事に対し調停を求める申請があった。
 申請の内容は以下のとおりである。被申請人益田市と田万川町が松枯れ対策事業として農薬の空中散布を行うことにより、散布区域及び周辺の広範な区域の大気、水及び土壌が汚染され、健康被害が生じている。
 これらを理由として、被申請人益田市及び田万川町に対し、@農薬の空中散布を行わないこと、A松枯れ対策として農薬空中散布以外の方法を選択すること、被申請人島根県及び山口県に対し、それぞれ益田市及び田万川町に対し、農薬空中散布の中止及び農薬空中散布以外の方法の選択を指導すること並びに、被申請人農林水産省に対し、@島根県及び山口県に農薬空中散布の中止及び農薬空中散布以外の方法の選択を指導すること、A農薬空中散布において使用している農薬の安全性を科学的に立証すること、B「松くい虫被害対策特別措置法」の有効期間を延長しないこと、をそれぞれ求めるというものである。
(事件処理の経過)
 本事件は、いわゆる県際事件であり、島根県知事は、公害紛争処理法第二十七条第三項の規定により、関係県知事(山口県知事)と連合審査会の設置について協議したが、協議が整わなかったため、平成八年八月二十日、同条第五項の規定により、本事件の関係書類を委員会に送付した。
 委員会は、本事件の関係書類の送付を受けた後、直ちに調停委員会を設け、三回の調停期日を開催したほか、農薬空中散布の方法等に関する当事者双方の主張を聴取するなど鋭意手続を進めたが、当事者間に合意が成立する見込みがないことから、平成十一年三月十五日、公害紛争処理法第三十六条第一項の規定により調停を打ち切り、本件は終結した。
 なお、調停委員会は平成十年八月五日、申請人一人について、公害紛争処理法第三十五条の規定により調停をしないものとする決定をした。

五 四日市市産業廃棄物処分場水質汚濁防止等調停申請事件
(事件の概要)
 平成十年七月二十二日、三重県四日市市の住民八人から、廃棄物処理業者及び廃棄物排出業者計二十一社を相手方(被申請人)として、公害紛争処理法第二十七条第一項の規定に基づき、三重県知事に対し調停を求める申請があった。
 申請の内容は以下のとおりである。被申請人廃棄物処理業者は、産業廃棄物処分場を造成するに当たり、その地盤を申請人らが農業用水利権を有する溜め池の底より深く掘り下げたため、同溜め池からの漏水が生じており、また、当該廃棄物処分場に安定五品目以外の腐敗性又は有害性のある産業廃棄物を埋め立てたため、汚染された水が申請人らの利用する農業用水路に排出され、農業用水の濁り、悪臭等を生じており、申請人らの農業に重大な支障が生じるおそれがある。
 これらを理由として、被申請人廃棄物処理業者に対し、@溜め池の漏水防止工事を行うこと、A農業用水路への汚濁水排出防止工事を行うこと、B処分場内に産業廃棄物運搬車両が来場したときは積み荷の展開検査を行うこと等を、被申請人廃棄物排出業者に対し、被申請人廃棄物処理業者に処理を委託した産業廃棄物の種類、性質、数量、有害物質含有の有無等について公開すること等を求めるというものである。
(事件処理の経過)
 本事件は、産業廃棄物の処理を委託した被申請人会社等の事業所の所在地が、愛知県、岐阜県、滋賀県及び三重県に及ぶことから、いわゆる県際事件であり、三重県知事は、公害紛争処理法第二十七条第三項の規定により前記関係県知事と連合審査会の設置について協議したが、協議が整わなかったため、平成十年十二月四日、同条第五項の規定により本事件の関係書類を委員会に送付した。
 委員会は、本事件の関係書類の送付を受けた後、直ちに調停委員会を設け、鋭意手続を進めている。

◇裁定事件

 平成十年度に委員会に係属した裁定事件は、新たに申請のあった一件に前年度から繰り越された十七件を加えた計十八件である。
 その概要は次のとおりである。

一 小田急線騒音被害等責任裁定申請事件(十四件)
(事件の概要)
 平成四年五月七日、東京都世田谷区の住民三百二十五人から、小田急電鉄株式会社を相手方(被申請人)として、責任裁定を求める申請があった。
 申請の内容は以下のとおりである。被申請人は、小田急小田原線において鉄道事業を営むものであるが、昭和三十二年ごろから、車両のスピードアップ、増発、営業時間の延長などにより騒音、振動及び鉄粉じんによる被害を沿線住民に及ぼしてきており、このため、申請人らは睡眠を妨げられ、日常生活における会話や電話、テレビ・ラジオ等の聞き取りにも不自由し、不快感、不安感(いらいら)等を感じるほか、屋根瓦のずれ等の物的被害も生じており、これらは受忍限度の範囲を超えた違法なものである。
 これらを理由として、被申請人に対し、申請人一人につき、@平成元年五月八日(本裁定申請日の三年前)から四年五月七日(本裁定申請日)までの損害に対する賠償として、金五十万円及びこれに対する裁定申請書送達の日の翌日から支払完済の日まで、年五%の割合による遅延損害金の支払、A四年五月八日(本裁定申請日の翌日)から本件公害による被害が解消されるまで、一日当たり金五百円の割合による金員の支払を求めるというものである。
 その後、同一原因による被害を主張する小田急小田原線沿線住民から、平成四年七月以後、十三回にわたり計四十三人の参加申立てがあり、裁定委員会はこれを許可した。
 なお、平成十年二月の審問終結までの間に、申請人五十九人及び参加人四人から申請の取下げがあり、申請人及び参加人は三百五人となった。
(事件処理の経過)
 委員会は、本事件の責任裁定申請を受け付けた後、直ちに裁定委員会を設け、二十七回の審問期日及び二回の証拠調期日を開催し、平成十年二月二十四日、話合いによる解決の余地を残しながら、審問を終結した。その間、申請人居宅等について六年五月に騒音測定を、七年五月に振動測定を、その後の参加人居宅等について九年三月及び六月に騒音・振動測定をそれぞれ実施するとともに、六年十一月には騒音に関する専門委員を、七年三月には振動に関する専門委員を選任し、それぞれの専門分野について意見を求めるなどして、裁定手続を進めてきた。
 裁定委員会は、申請人らにとって生活環境の悪化を改善することが真の問題解決につながることを考慮し、審問終結後の平成十年四月六日、本事件を公害紛争処理法第四十二条の二十四第一項の規定により職権で調停に付し、小田急線騒音被害等職権調停事件(平成十年(調)第一号事件)として、自ら処理することとした。四月二十一日開催の第一回調停期日において、両当事者に対して同法第三十四条第一項の規定に基づき、三十一日間の期間を指定し、調停案の受諾を勧告した。
 この結果、期間内に受諾しない旨の回答がなかった申請人ら七十八人と受諾する旨を回答した被申請人との間で、同法第三十四条第三項の規定により調停案と同一の内容の合意が成立したものとみなされ、同法第四十二条の二十四第二項の規定によりこれら申請人らの責任裁定の申請については取り下げられたものとみなされ、事件は一部終結した。
 また、期間内に受諾しない旨の回答があった二百二十七人の申請人らについては、同法第三十六条第二項の規定により調停が打ち切られたものとみなされ、裁定が行われることとなった。その後、申請人ら三人が責任裁定申請を取り下げたため、残る二百二十四人の申請人らについて、平成十年七月二十四日、これら申請人らの請求を一部認容し、その余の申請を却下あるいは棄却する裁定が行われ、本件は終結した。

二 飯塚市廃棄物悪臭被害責任裁定申請事件
(事件の概要)
 平成八年四月二十四日、福岡県飯塚市の住民五人から、飯塚市を相手方(被申請人)として、責任裁定を求める申請があった。
 申請の内容は以下のとおりである。被申請人が、昭和四十五年ごろから平成四年までの間に、同市大字目尾一一六一番地外二十筆等の土地に投棄した、し尿汚泥等による悪臭の発生により、申請人らは、日夜悪臭に悩まされ、終日窓を閉めた生活を余儀なくされる等の被害を被った。これらを理由として、被申請人に対し、申請人一人につき金三百六十万円の損害賠償を求めるというものである。
(事件処理の経過)
 委員会は、本事件の責任裁定申請を受け付けた後、直ちに裁定委員会を設け、八回の審問期日を開催するなどして鋭意手続を進めていたが、当事者間において話合いにより紛争を解決する気運が高まってきたことから、平成十一年一月二十九日、公害紛争処理法第四十二条の二十四第一項の規定により本件を調停に付し、飯塚市廃棄物悪臭被害職権調停事件(平成十一年(調)第二号事件)として、自ら処理することとした。同日、第一回調停期日を開催し、後述の飯塚市し尿処理場等悪臭被害職権調停事件(平成十一年(調)第一号事件)に併合して手続を進めることとした。

三 飯塚市し尿処理場等悪臭被害原因裁定申請事件
(事件の概要)
 平成八年四月二十四日、福岡県飯塚市の住民四人から、飯塚市を相手方(被申請人)として、原因裁定を求める申請があった。
 申請の内容は以下のとおりである。被申請人が設置管理する、し尿処理場及びそれに隣接する下水道終末処理場から発生する悪臭により、申請人らは、終日窓を閉めた生活を余儀なくされている、外に出ると「つん」と鼻をつき目を刺激して涙が出る、子供たちを外で遊ばせることができない等の生活上の被害を被っているが、被申請人は悪臭の発生を否定している。
 これらを理由として、被申請人によるし尿処理場及びそれに隣接する下水道終末処理場の設置管理と、これらの被害との間に因果関係があるとの原因裁定を求めるというものである。
(事件処理の経過)
 委員会は、本事件の原因裁定申請を受け付けた後、直ちに裁定委員会を設け、八回の審問期日を開催し、平成九年八月には、職権による臭気測定を行うなど鋭意手続を進めていたが、当事者間において話合いにより紛争を解決する気運が高まってきたことから、平成十一年一月二十九日、公害紛争処理法第四十二条の三十三で準用する同法第四十二条の二十四第一項の規定により本件を調停に付し、飯塚市し尿処理場等悪臭被害職権調停事件(平成十一年(調)第一号事件)として、自ら処理することとした。同日、第一回調停期日を開催し、前述の飯塚市廃棄物悪臭被害職権調停事件(平成十一年(調)第二号事件)を併合して鋭意手続を進めている。

四 杉並区における不燃ゴミ中継施設健康被害原因裁定申請事件
(事件の概要)
 平成九年五月二十一日、東京都杉並区の住民ら十八人から、東京都を相手方(被申請人)として、原因裁定を求める申請があった。
 申請の内容は以下のとおりである。平成八年四月、杉並区に被申請人が不燃ゴミ中継施設を開設して以来、申請人らは、それまでに経験したことのない喉の痛み、頭痛、めまい、吐き気、動悸等のさまざまな健康被害を受けている。これら被害は、同中継所から排出される有毒物質によるとの原因裁定を求めるというものである。
(事件処理の経過)
 委員会は、本事件の原因裁定申請を受け付けた後、直ちに裁定委員会を設け、七回の審問期日を開催するなど、鋭意手続を進めている。
 また、平成十一年一月二十六日、申請人らが訴える健康被害と不燃ゴミ中継施設の排気との因果関係を判断するのに必要な事項等を調査させるため、公害等調整委員会設置法第十八条の規定に基づき、三人の専門委員を選任した。

五 金属板印刷工場悪臭被害原因裁定申請事件
(事件の概要)
 平成十年四月二十四日、千葉県市川市の住民三人から、金属板印刷工場を相手方(被申請人)として、原因裁定を求める申請があった。
 申請の内容は以下のとおりである。申請人らが受けている頭痛、吐き気、目まい、息苦しさ、四肢知覚異常等の健康被害の原因は、被申請人工場から排出する悪臭によるものであるとの原因裁定を求めるというものである。
(事件処理の経過)
 委員会は、本件裁定申請に対して、事務局による現地調査、申請人からの事情聴取等を行った結果、本事件については、申請人らが被申請人を被告として提起した損害賠償請求訴訟が終結間近まで進行しているところであり、本件の被害の態様及び規模、紛争の実状その他一切の事情を考慮すると、原因裁定を行うのは相当ではないと認め、公害紛争処理法第四十二条の二十七第二項で準用する同法第四十二条の十二第二項の規定により、平成十年六月二十二日、本件申請を受理しないことを決定し、本件は終結した。

◇義務履行勧告申出事件

一 冷暖房室外機騒音職権調停事件の調停条項に係る義務履行勧告申出事件
(事件の概要)
 冷暖房室外機騒音職権調停事件は、東京都保谷市の住民一人が、隣接するアパートの所有者を相手方(被申請人)とし、被申請人の所有するアパートの冷暖房室外機からの騒音により精神的な苦痛を受けたとして、慰謝料の支払を求めた責任裁定事件について、職権で事件を調停に付し、平成三年十一月五日、調停が成立した事件である。
 平成九年八月二十六日、前記調停事件の申請人から、調停条項のうち一部について被申請人が義務を履行するよう、義務履行勧告を求める申出があった。
(事件処理の経過)
 委員会は、申出を受けた後、義務の履行状況について当事者双方等から事情を聴取し、平成十年三月に夜間騒音測定を実施するなど、実態の把握に努めたところ、被申出人が正当な理由なく義務を怠っているという事実は認められなかったことから、四月二十七日、当事者に対し義務履行勧告は行わないことを決定した旨の通知を行い、本件は終結した。

U 都道府県公害審査会等における公害紛争の処理状況

 都道府県に設置されている都道府県公害審査会(公害審査会を置かない都道府県にあっては都道府県知事。以下「審査会等」という。なお、平成十一年三月末現在で、公害審査会を置いているのは三十八都道府県、公害審査委員候補者を委嘱しているのは九県である。)において、公害に係る紛争について、あっせん、調停及び仲裁並びに義務履行勧告を行っている。
 公害紛争処理法施行以来、平成十一年三月末までに審査会等に係属した公害紛争事件は、八百六十七件であり、そのうち終結したものは八百四件である。平成十年度には三十九件の事件を新たに受け付け、これに前年度からの繰越しとを合わせた百八件の事件が係属した。このうち四十五件が同年度中に終結し、六十三件が十一年度に繰り越された(第4表参照)。
 近年の事件の特徴としては、次の点が挙げられる。
 @ 加害行為とされる事業活動の種類は、廃棄物・下水等処理関係、交通・運輸関係、製造・加工業関係、建築・土木関係等となっており、発生源が多様化する傾向にある。また、最近は廃棄物・下水等処理関係が多くなっている。
 A 環境基本法第二条第三項に定める公害(大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下及び悪臭の七種類の公害をいう。以下「典型七公害」という。)のみでなく、日照阻害、通風阻害、眺望阻害、土砂崩壊、交通環境悪化等、生活環境を悪化させる要因を併せて主張するものが増加しており、それらを含めた紛争の一体的、総合的な解決を求める事件が目立っている。
 B 国、地方公共団体、公団等が発生源側の当事者に含まれる事件が増加している。

◇申請の状況

 平成十年度中に受け付けたあっせん及び調停事件三十九件について、典型七公害の種類別にみると、大気汚染に関するものが二十三件、騒音に関するものが十八件、水質汚濁に関するものが十七件、悪臭に関するものが十五件、振動に関するものが十三件、土壌汚染に関するものが九件となっている(重複集計)。
 また、加害行為とされる事業活動の種類をみると、廃棄物・下水等処理関係が二十二件、交通・運輸関係(道路建設に係るものを含む。)が五件、製造・加工関係が四件、建築・土木関係が三件、製錬・採石関係が二件、その他が三件となっている。

◇処理の状況

 平成十年度中に終結した四十五件について、その終結区分をみると、あっせん又は調停が成立したものが二十二件、調停を打ち切ったものが十七件、調停申請を取り下げたものが五件、その他(移送)が一件である。
 また、申請受付から終結までの期間をみると、三か月以内に終結したものが二件、三か月を超え六か月以内に終結したものが八件、六か月を超え一年以内に終結したものが十二件、一年を超え一年六か月以内に終結したものが五件、一年六か月を超え二年以内に終結したものが八件、二年を超えているものが十件となっており、約半数が一年以内に終結している。なお、制度発足以来の全事件の平均処理期間は、十五・六か月である。
 平成十年度中に調停が成立した事件のうち、幾つかの概要を以下に示す。

一 東京都平成八年(調)第一号事件外九件
(申請の概要)
 東京都の住民二百八十人から、平成八年一月、東京都公害審査会に対して、東京都を相手方(被申請人)として、建設予定の清掃工場について、
 @ 次の事項がなされるまでの間、本件施設の建設を停止すること。
  ア 清掃工場建設の必要性に関する資料の開示及び釈明
  イ 周辺住民の健康調査の実施及び調査結果の公表
  ウ 環境影響評価の再実施
 A 周辺地域、近接沿道の大気汚染、騒音、振動の連続測定の実施及び測定結果の公表を行うこと。
 B 燃焼型拠点集中方式の施設から資源循環型分散配置方式の施設への転換を図ること。
を求める調停申請がなされた。
 その後、九件の参加申立て、申請の取下げ及び事件の分離があり、申請人及び参加人は計九百七十九人となった。
(申請の理由)
 清掃工場建設予定地は、交通量が極めて多い場所であり、清掃工場が建設されると、ゴミ収集車両による窒素酸化物や煙突からの大気汚染物質の増加も予想され、季節や風向、風速により人口密集地へ局地的な汚染をもたらすおそれがあり、建設には不適切な場所である。また、この沿道は、昭和六十三年度の大気汚染調査の際、極めて高濃度の汚染地域であることが判明しており、小児呼吸器系疾患の発生率が高い。
 その後、請求事項及び申請の理由については、第十七回調停期日において、次のとおり変更されている。
(請求事項)
 @ 大気及び土壌中のダイオキシン類の濃度を測定すること(清掃工場焼却炉排出口の中央部を中心とする半径五キロメートルの円内において、東西南北方位各一か所、四季各一回。ただし、大気については、一回の測定につき連続七日。)。
 A 血液及び母乳中のダイオキシン類の濃度を測定すること(本件清掃工場焼却炉排出口の中央部を中心とする(ア)半径一キロメートルの円、(イ)半径二キロメートルの円、(ウ)半径三キロメートルの円、(エ)半径四キロメートルの円、(オ)半径五キロメートルの円、の円内に居住する住民からそれぞれ、血液について二十人、母乳について五人を選ぶ。)。
(申請の理由)
 被申請人が計画中の清掃工場が完成・稼働すると、工場からダイオキシン類その他の化学物質及び重金属等が排出されることは必至である。一方、都内、とりわけ本件清掃工場予定地周辺において、ダイオキシン類の汚染状況等に関する基礎的データが存在しないため、調査を行うことにより、@被申請人が清掃工場建設を続行するか、中止するかを判断する前提となり、清掃工場建設予定地周辺のダイオキシン類の汚染の現況が把握できる、A清掃工場稼働後、周辺のダイオキシン濃度が悪化した場合に、清掃工場が原因かどうか知る手掛かりとなる、B被申請人が清掃工場を稼働させる場合に、ダイオキシン汚染を周辺に及ぼさないよう注意を払うことが期待できる。
(調停の内容)
 調停委員会は、申請受付以来、現地調査及び二十一回の調停期日の開催等、調停の成立に向け手続を進めた結果、第二十一回調停期日において、本件清掃工場から半径五キロメートル以内に居住又は勤務する者以外の者(百四十二人)を本件手続から分離して別事件とするとともに、分離後の本件事件について、公害紛争処理法第三十四条第一項の規定により次の内容の調停案の受諾勧告を行ったところ、当事者双方から指定期間内に調停案を受諾しない旨の申出がなかったので、平成十年十一月、同法同条第三項の規定により調停が成立したものとみなされた。
 @ 被申請人は、清掃工場を稼働する前に、清掃工場の焼却炉煙突から半径五キロメートル以内の四か所以上で、ダイオキシン類の大気中及び土壌中の濃度の測定調査を行い、調査結果を申請人らに速やかに公表すること。
 A 被申請人は清掃工場稼働後、通常運転中の焼却炉煙突から排出される排出ガス中のダイオキシン類の濃度を少なくとも六か月に一回定期的に測定し、測定結果を公表すること。
 B 区が@の測定を実施した場合は、被申請人は当該測定を@の測定とみなすことができること。
 C 被申請人は、清掃工場稼働による排出ガスの総量を毎年減少させるよう努力を継続し、将来清掃工場の管理を区に移行した後も、区に努力を継続させるように指導すること。
 D 申請人らは、被申請人が清掃工場を建設し、稼働を開始することに異議を述べないこと。

 なお、分離した東京都平成十年(調)第八号事件については、合意が成立する見込みがないとして、調停が打ち切られている。

二 福岡県平成九年(調)第一号事件
(申請の概要)
 福岡県の住民二人から、平成九年四月、福岡県公害審査会に対して、鉄道会社を相手方(被申請人)として、
 @ 車両の出入り時における騒音・振動を準工業地域並みの規制基準値内に抑えること。
 A 運転区(列車車両基地内)における車両の入出庫列車本数を減らすこと。
 B 申請人所有の家屋の損傷を修理すること。
 C 申請人の経営する事務所の営業妨害を解消すること。
を求める調停申請がなされた。
(申請の理由)
 被申請人が操業している運転区における車両の出入り時に発生する騒音・振動により、申請人は家屋のひび割れによる財産的被害を受けているほか、感覚的・心理的被害を受けている。
(調停の内容)
 調停委員会は、申請受付以来、現地調査及び十回の調停期日の開催等、調停成立に向け手続を進めた結果、平成十年九月、次の内容の合意が成立した。
 被申請人は、申請人宅に隣接した博多運転区三十三番線から三十九番線における列車操作に伴う振動の低減を図るため、
 @ 十八地点のレール継目溶接、三地点のポイント弾性化工事及び一地点の可動クロッシング工事を、それぞれ平成十一年二月末日までに完了すること。
 A 調停成立後五十日以内に、当該運転区に入出庫する列車の運転速度について、午前六時から午後十時までの時間帯は時速十五キロメートル以下、午後十時から翌日午前六時までの時間帯は時速十キロメートル以下(@の工事により振動の低減が図られたと調停委員会が判断した場合は時速十五キロメートル以下)とすること。
 B この調停が成立した日以降、列車の運行本数を増加させないよう最大限努力すること。
 C 被申請人の工作物である防音壁を、被申請人の責任において速やかに補修すること。
 なお、申請人一人については、事務所の移転が決定したため、平成九年十二月に調停申請を取り下げている。

V 地方公共団体における公害苦情の処理状況

 地方公共団体が行う公害に関する苦情の処理については、公害苦情の適切妥当な処理が公害紛争全体の解決のために重要であることから、公害紛争処理法は、地方公共団体が関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるべきこと、都道府県及び市区町村に公害苦情相談員を置くことができること、委員会は地方公共団体が行う公害に関する苦情の処理について指導等を行うことを規定している。
 公害苦情相談員は、公害に関する苦情について、住民の相談に応じ、その処理のために必要な調査を行うとともに、関係行政機関と連絡を取り合って、当事者に対し改善措置の指導、助言を行うなど、苦情の受付から解決に至るまでの一貫した処理に当たっている。
 平成九年度の全国の地方公共団体における公害に関する苦情の動向及びその処理状況は、次のとおりである。

◇公害苦情件数の推移

 平成九年度に全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口で受け付けた(他の機関等から移送されたものを含む。)公害苦情件数は七万九百七十五件で、前年度に比べて八千六百六十件増加した(第5表参照)。
 公害苦情件数を、典型七公害に係るものと、典型七公害以外に係るものとに分けてみると、平成九年度の典型七公害の苦情は五万三千六百二十五件、典型七公害以外の苦情は一万七千三百五十件となっている。
 なお、典型七公害の苦情件数の推移をみると、昭和四十七年度の七万九千七百二十七件をピークに、四十九年度から五十三年度までが六万件台、五十四年度から六十三年度までが五万件台、平成元年度以降が四万件台と減少傾向で推移していた。しかし、平成八年度から二年連続して増加し、九年度は昭和六十三年度以来の五万件台となった(第6表参照)。

◇公害苦情の種類

 典型七公害の苦情件数を種類別にみると、平成九年度では大気汚染が一万九千六百六十八件(典型七公害の苦情件数の三六・七%)と最も多く、次いで騒音が一万三千十件(同二四・三%)、悪臭が一万二千百四十一件(同二二・六%)、水質汚濁が六千九百九十件(同一三・〇%)、振動が一千五百九十件(同三・〇%)、土壌汚染が二百一件(同〇・四%)、地盤沈下が二十五件(同〇・〇%)となっており、前年度に比べて、大気汚染、悪臭及び地盤沈下の苦情が増加し、騒音、振動、水質汚濁及び土壌汚染の苦情が減少した(第7表参照)。
 次に、典型七公害以外の苦情件数を種類別にみると、平成九年度では廃棄物の不法投棄が四千百六十九件(典型七公害以外の苦情件数の二四・〇%)と最も多く、次いで害虫等の発生が二千二百七十三件(同一三・一%)などとなっている(第8表参照)。

◇典型七公害に係る発生源別苦情件数

 典型七公害の苦情件数を発生源別にみると、平成九年度では、製造業が一万一千九百五十三件(典型七公害の苦情件数の二二・三%)と最も多く、次いで建設業が一万九百六十九件(同二〇・五%)、サービス業が七千二百九十六件(同一三・六%)、卸売・小売業、飲食店が四千六百七十七件(同八・七%)、家庭生活が四千二百十八件(同七・九%)、農業が三千三百八十二件(同六・三%)、などとなっている(第9表参照)。

◇公害苦情の処理状況

 平成九年度において全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口が取り扱った苦情件数(八年度以前に受け付けたが、処理されず九年度に繰り越されたものを含む。)は、七万九千七百十六件である。
 平成九年度の公害苦情取扱件数七万九千七百十六件のうち、公害苦情相談窓口において直接処理した件数(以下「直接処理件数」という。)は、六万五千三百九十件であり、他の機関等へ移送した苦情件数が一千百七十件、翌年度へ繰り越した苦情件数が九千六百三十七件などとなっている。
 直接処理件数を、苦情の申立てから処理までに要した期間についてみると、「一週間以内」が三万三千七百四十六件(直接処理件数の五一・六%)と最も多く、「一か月以内」が九千百二十五件(同一四・〇%)、「三か月以内」が六千二百八十二件(同九・六%)、「六か月以内」が七千四十二件(同一〇・八%)、「一年以内」が三千五十一件(同四・七%)、「一年超」が一千七百五十四件(同二・七%)などとなっており、一か月以内に約三分の二が処理されている(第10表参照)。
 また、苦情の処理結果に対する申立人の満足度についてみると、「一応満足」が二万一千二十二件(直接処理件数の三二・一%)と最も多く、次いで「満足」が九千九百八十三件(同一五・三%)、「あきらめ」が三千三百九十六件(同五・二%)、「不満」が二千二百三十四件(同三・四%)となっており、「満足」と「一応満足」を合わせた件数と、「あきらめ」及び「不満」を合わせた件数との比は、約六対一となっている(第11表参照)。

◇公害苦情を担当する職員数

 全国の地方公共団体において、公害苦情の処理に関する事務に従事している職員数は、平成九年度末で、一万二千九百五十五人であり、このうち、公害紛争処理法第四十九条第二項に規定する公害苦情相談員は二千九百九十八人である。

W 地方公共団体に対する指導等

◇公害紛争処理に関する連絡協議

 委員会及び審査会等は、公害紛争処理法によって定められた管轄に従い、それぞれ独立して紛争の処理に当たっているが、紛争の円滑な処理のためには、委員会及び審査会等が相互の情報交換・連絡協議に努めることが必要である。
 このため、委員会は、平成十年度においても、第二十八回公害紛争処理連絡協議会等の会議を開催し、また、参考となる情報・資料の提供を行った。

◇公害苦情等に関する指導等

 公害紛争処理法では、公害苦情の処理は地方公共団体の責務とされ、また、委員会は地方公共団体が行う公害に関する苦情の処理について指導等を行うこととされている。
 このため、委員会は平成十年度においても、第二十六回公害苦情相談研究会等の会議を開催し、また参考となる情報・資料の提供を行った。

 鉱業等に係る土地利用の調整手続等に関する法律等に基づく事務の処理概要

 委員会は、鉱業等に係る土地利用の調整手続等に関する法律(昭和二十五年法律第二百九十二号)、鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)、採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)等の定めるところにより、鉱区禁止地域の指定及び鉱業等に係る行政処分に対する不服の裁定を行うとともに、土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)に基づく建設大臣に対する意見の申出等の事務を行っている。

◇鉱区禁止地域の指定制度

 本制度は、各大臣又は都道府県知事の請求に基づき、委員会が、通商産業大臣の意見を聞き、公聴会を開いて一般の意見を求め、利害関係人を審問した上で、請求地域において鉱物を掘採することが、一般公益又は農業、林業その他の産業と対比して適当でないと認めるときは、当該地域を鉱区禁止地域として指定し、また、同様の手続によりその指定を解除する制度である。
 平成十年度に委員会に係属した事件は三件であり、すべて十一年度に繰り越された。
 なお、本制度が施行された昭和二十六年一月から平成十年度末までに指定した鉱区禁止地域は、二百三十七地域、総面積六十五万六千六十一ヘクタールとなっている。これらの地域を指定理由別にみると、ダム及び貯水池の保全を理由とするものが百四十六地域と最も多い(第1図参照)。

◇行政処分に対する不服の裁定制度

 委員会は、法律の規定に基づき、鉱業、採石業又は砂利採取業と、一般公益又は農業、林業その他の産業とのいずれかの利益に係る行政処分に対する不服の裁定を行うことを通じ、鉱業等に係る土地利用の調整を図っている。そのため、これらの行政処分については、鉱業等に係る土地利用の調整手続等に関する法律の定めるところにより、専ら委員会が準司法的な手続により不服の裁定を行っている。
 平成十年度に委員会に係属した事件は、新たに申請のあった二件と、前年度から繰り越された二件との計四件であり、このうち三件が終結し、残りの一件は、十一年度に繰り越された。
 なお、本制度が施行された昭和二十六年一月から平成十年度末までに委員会が受け付けた裁定事件は百十八件であり、そのうち終結した事件は、百十七件である。これを関係法律別にみると、採石法関係(三十四件)が最も多く、鉱業法関係(三十一件)がこれに次いでいる。

◇土地収用法に基づく不服申立てに関する意見の申出等の制度

 土地利用の複雑・多様化に対応して、土地利用に関する行政庁の適正な処分を確保するため、土地収用法、森林法、鉱業法等に基づき、公害等調整委員会は、主務大臣が裁決等を行う場合に、意見の申出、承認等を行っている。
 平成十年度に委員会に係属した事案は、新たに意見を求められた百五十三件と、前年度から繰り越された六件の計百五十九件であり、すべて土地収用法の規定による意見の申出に関するものである。
 これらの事案のうち、平成十年度中に百五十二件について意見を申し出て、残り七件については十一年度に繰り越された。
 なお、本制度が施行された昭和二十六年以降、平成十年度末までに、土地収用法に基づく建設大臣に対する意見の申出は、七百八十七件であり、その内訳は収用委員会の裁決を不服とするもの五百八十一件、事業認定に関する処分を不服とするもの二百六件(処分庁が都道府県知事であるもの十八件、建設大臣であるもの百八十八件)となっている。
 また、その他のものとしては、森林法に基づく農林水産大臣に対する意見の申出が二件、鉱業に関する掘採制限の決定に対する承認が一件、採石権の設定等の決定に対する承認が四件となっている。

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十月の気象


 十月に入ると九月よりも晴れる日が多くなります。九月にはまだ太平洋高気圧が南の海上で勢力を保っていて、その高気圧の北側の縁で秋雨前線が形成されて秋の長雨になったり、台風が高気圧の縁に沿って日本に襲来することが多く、一方十月には太平洋高気圧の影響が小さくなって、移動性高気圧が日本に秋晴れの天気をもたらすことが多くなります。

◇放射冷却と初霜

 移動性高気圧に覆われて晴れると日中は気温が上がり、夜間には冷え込みます。晴れた日の夜間に気温が大きく下がる現象を「放射冷却現象」といい、秋に起こりやすい現象です。秋の移動性高気圧は、大陸の乾いた空気を運んでくるため雲ができにくく、地表の熱が放射によって上空へ運ばれやすいことによります。例年、北日本と東日本の内陸部では、十月にこの放射冷却現象により初霜が観測されます。

◇紅葉

 咲いている花は少ないのですが、十月の楽しみは紅葉の美しさでしょう。草木は冬に向かって寒くなると紅葉を開始しますが、昼夜の寒暖の差が大きいときに美しく色付きます。ですから移動性高気圧に覆われて、昼間に暖かく、夜冷えるような気象条件が続いた年には、美しい紅葉が見られることになります。
 南西諸島を除いた気象官署ではカエデの葉の大部分が赤く色付き、緑色が目立たなくなった最初の日を紅葉日とし、その日を一九五三年以降毎年観測しています。紅葉は十月初旬に北海道から始まり、一か月以上かけて日本列島を南下して十一月下旬ごろに九州に達します。
(気象庁)


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七月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成十一年七月結果の概要―


総 務 庁


◇就業状態別の動向

 平成十一年七月末の十五歳以上人口は一億七百八十一万人で、前年同月に比べ五十四万人(〇・五%)の増加となっている。これを就業状態別でみると、就業者は六千四百九十七万人、完全失業者は三百十九万人、非労働力人口は三千九百四十八万人で、前年同月に比べそれぞれ八十万人(一・二%)減、四十九万人(一八・一%)増、七十七万人(二・〇%)増となっている。
 また、十五〜六十四歳人口は八千六百七十三万人で、前年同月に比べ十三万人(〇・一%)の減少となっている。これを就業状態別にみると、就業者は五千九百九十四万人、完全失業者は三百六万人、非労働力人口は二千三百五十五万人で、前年同月に比べそれぞれ八十五万人(一・四%)減、四十五万人(一七・二%)増、十四万人(〇・六%)増となっている。

◇労働力人口(労働力人口比率)

 労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は六千八百十五万人で、前年同月に比べ三十二万人(〇・五%)の減少となっている。男女別にみると、男性は四千三十三万人、女性は二千七百八十三万人で、前年同月に比べると、男性は十五万人(〇・四%)の減少、女性は十七万人(〇・六%)の減少となっている。
 また、労働力人口比率(十五歳以上人口に占める労働力人口の割合)は六三・二%で、前年同月に比べ〇・六ポイントの低下と、十八か月連続の低下となっている。

◇就業者

(1) 就業者

 就業者数は六千四百九十七万人で、前年同月に比べ八十万人(一・二%)減と、十八か月連続の減少となっている。男女別にみると、男性は三千八百三十八万人、女性は二千六百五十九万人で、前年同月と比べると、男性は五十万人(一・三%)減と、十九か月連続で減少、女性は三十万人(一・一%)減と、十四か月連続で減少となっている。

(2) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百八万人、自営業主・家族従業者は一千百六十四万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は六十三万人(一・二%)減と、十八か月連続で減少、自営業主・家族従業者は二十五万人(二・一%)減と、十八か月連続の減少となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 非農林業雇用者…五千二百七十七万人で、六十一万人(一・一%)減、十八か月連続の減少
 ○ 常 雇…四千六百六十六万人で、六十一万人(一・三%)減、十九か月連続の減少
 ○ 臨時雇…四百九十七万人で、五万人(一・〇%)増、平成八年九月以降、増加が継続
 ○ 日 雇…百十四万人で、五万人(四・二%)減

(3) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 農林業…三百四十一万人で、十九万人(五・三%)減、六か月連続で減少、減少幅は前月(十六万人減)に比べ拡大
○ 建設業…六百五十一万人で、同数(増減なし)、前月は十一万人の減少
○ 製造業…一千三百六十一万人で、二十五万人(一・八%)減、二十六か月連続で減少、減少幅は前月(三十六万人減)に比べ縮小
○ 運輸・通信業…三百八十九万人で、八万人(二・〇%)減、三か月連続で減少、減少幅は前月(十四万人減)に比べ縮小
○ 卸売・小売業、飲食店…一千四百九十万人で、七万人(〇・五%)減、三か月ぶりの減少
○ サービス業…一千六百八十三万人で、二十四万人(一・四%)減、二か月連続で減少、減少幅は前月(十四万人減)に比べ拡大
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 建設業…五百三十三万人で、一万人(〇・二%)減、三か月連続で減少、減少幅は前月(十三万人減)に比べ縮小
○ 製造業…一千二百三十万人で、二十六万人(二・一%)減、二十六か月連続で減少、減少幅は前月(四十二万人減)に比べ縮小
○ 運輸・通信業…三百七十万人で、十万人(二・六%)減、三か月連続で減少、減少幅は前月(十五万人減)に比べ縮小
○ 卸売・小売業、飲食店…一千百九十五万人で、五万人(〇・四%)増、三か月連続で増加、増加幅は前月(十八万人増)に比べ縮小
○ サービス業…一千四百三十二万人で、二十一万人(一・四%)減、二か月連続で減少、減少幅は前月(十四万人減)に比べ拡大

(4) 従業者階級

 企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 一〜二十九人規模…一千七百三十二万人で、十一万人(〇・六%)減少
○ 三十〜四百九十九人規模…一千七百二十四万人で、二十五万人(一・四%)減少
○ 五百人以上規模…一千二百五十八万人で、十九万人(一・五%)減少

(5) 就業時間

 七月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 一〜三十五時間未満…一千四百六十四万人で、十二万人(〇・八%)減少
○ 三十五時間以上…四千八百八十七万人で、七十四万人(一・五%)減少
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四二・五時間で、前年同月に比べ〇・二時間の増加となっている。

(6) 転職希望者

 就業者(六千四百九十七万人)のうち、転職希望をしている者(転職希望者)は六百十六万人で、このうち実際に求職活動を行っている者は二百三十二万人となっており、前年同月に比べそれぞれ十五万人(二・五%)増、一万人(〇・四%)増となっている。
 また、就業者に占める転職希望者の割合(転職希望者比率)は、九・五%で、前年同月に比べ〇・四ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は九・四%、女性は九・六%で、前年同月に比べ男性は〇・二ポイントの上昇、女性は〇・五ポイントの上昇となっている。

◇完全失業者

(1) 完全失業者数

 完全失業者数は三百十九万人で、前年同月に比べ四十九万人(一八・一%)の増加となっている。男女別にみると、男性は百九十五万人、女性は百二十四万人となっている。前年同月に比べると、男性は三十五万人(二一・九%)の増加、女性は十三万人(一一・七%)の増加となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 非自発的な離職による者…百五万人で、二十一万人増加
○ 自発的な離職による者…百三万人で、四万人増加
○ 学卒未就職者…十六万人で四万人増加
○ その他の者…八十二万人で、十三万人増加

(2) 完全失業率(原数値)

 完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は四・七%で、前年同月に比べ〇・八ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は四・八%、女性は四・五%で、前年同月に比べ男性は〇・八ポイント、女性は〇・五ポイントの上昇となっている。

(3) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 [男]
○ 十五〜二十四歳…四十二万人(七万人増)、一〇・一%(二・二ポイント上昇)
○ 二十五〜三十四歳…四十二万人(九万人増)、四・六%(〇・九ポイント上昇)
○ 三十五〜四十四歳…二十四万人(二万人増)、三・一%(〇・三ポイント上昇)
○ 四十五〜五十四歳…二十九万人(八万人増)、三・一%(〇・九ポイント上昇)
○ 五十五〜六十四歳…四十七万人(七万人増)、六・九%(〇・九ポイント上昇)
 ・五十五〜五十九歳…二十一万人(八万人増)、五・一%(一・八ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…二十六万人(二万人減)、九・七%(〇・四ポイント低下)
○ 六十五歳以上…十万人(二万人増)、三・一%(〇・五ポイント上昇)
 [女]
○ 十五〜二十四歳…三十万人(三万人増)、七・七%(一・一ポイント上昇)
○ 二十五〜三十四歳…三十九万人(五万人増)、六・七%(〇・六ポイント上昇)
○ 三十五〜四十四歳…十九万人(一万人減)、三・七%(〇・一ポイント低下)
○ 四十五〜五十四歳…二十万人(四万人増)、三・〇%(〇・七ポイント上昇)
○ 五十五〜六十四歳…十四万人(二万人増)、三・二%(〇・四ポイント上昇)
○ 六十五歳以上…二万人(同数)、一・〇%(同率)

(4) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 世帯主との続き柄別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○ 世帯主…九十万人(十四万人増)、三・三%(〇・五ポイント上昇)
○ 世帯主の配偶者…三十六万人(一万人減)、二・五%(同率)
○ その他の家族…百四十二万人(二十五万人増)、七・七%(一・四ポイント上昇)
○ 単身世帯…五十一万人(十万人増)、六・二%(一・一ポイント上昇)

(5) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率は前月と同率の四・九%で、比較可能な昭和二十八年以降で最高となっている。
 男女別にみると、男性は前月と同率の五・一%で、昭和二十八年以降で最高となっている。女性は四・六%で前月に比べ〇・二ポイントの上昇となっている。















     ◇     ◇     ◇

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消費支出(全世帯)は実質二・四%の増加


―平成十一年五月分家計収支―


総 務 庁


◇全世帯の家計

 全世帯の消費支出は、平成十年十一月は実質増加、十二月は実質減少、十一年一月は実質増加となった後、二月以降三か月連続の実質減少となり、五月は実質増加となった。

◇勤労者世帯の家計

 勤労者世帯の実収入は、平成十年十一月、十二月は実質減少となったが、十一年一月は実質増加、二月は実質で前年と同水準となり、三月以降三か月連続の実質減少となった。
 消費支出は、平成十年十一月は実質増加、十二月は実質減少、十一年一月は実質増加となった後、二月以降三か月連続の実質減少となり、五月は実質増加となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十八万九千五百八十七円。
 前年同月に比べ、名目三・五%の増加、実質四・〇%の増加。













    <11月4日号の主な予定> 

 ▽平成十年賃金構造基本統計調査結果の概要……………………労 働 省 

 ▽統計からみた我が国の高齢者―敬老の日にちなんで―………総 務 庁 

 ▽消費者物価指数の動向(東京都区部八月中旬速報値)………総 務 庁 




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