官報資料版 平成11年12月8日




                  ▽規制緩和白書のあらまし……………総 務 庁

                  ▽毎月勤労統計調査(七月分)………労 働 省

                  ▽月例経済報告(十一月報告)………経済企画庁

                  ▽天皇誕生日一般参賀について………宮 内 庁











規制緩和白書のあらまし


総 務 庁


はじめに

 「規制緩和白書」は、本年三月に改定された規制緩和推進三か年計画において、「公的規制の現状、規制緩和の実施状況、計画の概要、規制緩和の国民生活等への影響、効果等を国民に分かりやすい形で提供するため、総務庁は、各省庁の協力を得て、規制緩和白書を速やかに作成し、公表する。」とされたことに基づき刊行するもので、去る八月三十一日の閣議に配布の後、公表された。
 本白書は、今回が五回目の刊行で、全六章及び資料編から構成されており、各章の概要は次のとおりである。
 (1) これまでの規制緩和の取組による効果・成果を、九八年度を中心に具体的な事例(三十三事例)を紹介するとともに、行政分野ごとに、年表を用いて最近十年間程度の規制緩和の取組状況を整理。さらに近年の規制緩和による経済効果の試算結果を記述(第1章)。
 (2) 現行の規制緩和推進三か年計画の改定について中心的に説明し、併せて現行計画以前の政府の取組及び本年の計画改定後における最近の動きについて概観(第2章)。
 (3) 規制緩和の推進に大きな役割を果たした行政改革委員会や規制緩和委員会の活動実績、本年度から活動を開始した規制改革委員会の活動状況について記述(第3章)。
 (4) 本年三月に閣議決定した規制の設定又は改廃に係る意見提出手続(パブリック・コメント手続)の制定の経緯、制度の内容及び申請負担軽減対策について記述(第4章)。
 (5) 公的規制の目的や許認可等の現状について記述(第5章)。
 (6) 規制緩和をめぐる経済戦略会議、産業競争力会議などの国内の動向や米国、OECDなど国外の動向などについて記述(第6章)。
 本白書のあらましは、以下のとおりである。

第1章 規制緩和の効果・成果

 我が国における規制緩和の取組の歴史は長い。中でも九〇年代の取組は、その規模、範囲、内容において、画期的な成果を上げているということができる。

第1節 経済社会を変えつつある規制緩和

 個別の規制緩和措置によって、どのような効果が現れたか、今後どのような効果が期待されるかについて、
 @ 多様で豊かな国民生活の実現
 A 経済の活性化
 B 国際的整合化などの実現
 C 国民負担の軽減
という四つのカテゴリーに沿って、三十三の具体的事例について整理している。
【@多様で豊かな国民生活の実現】
 ・医薬品のカテゴリーの見直し
  ドリンク剤等の一部が医薬部外品となり、一般小売店で販売
 ・運輸分野の需給調整の撤廃に向けた取組
  国内航空運送事業やタクシー事業で需給調整を撤廃 など
【A経済の活性化】
 ・基準認証等の整理及び合理化
  政府認証から自己確認・自主保安へ
 ・電気通信市場の規制緩和
  現在までに、六千九百社を超える活発な新規参入 など
【B国際的整合化などの実現】
 ・JAS制度の見直し
  格付けの際に国際規格の動向を考慮 など
【C国民負担の軽減】
 ・自動車検査等に係る規制緩和
  八トン未満のトラック等の車検有効期間の延長 など

第2節 規制緩和の分野別取組状況

 規制緩和の取組状況を分野別に明らかにするため、「競争政策等」、「住宅・土地、公共工事」、「情報・通信」、「流通」、「運輸」、「基準・規格・認証・輸入」、「金融・証券・保険」、「エネルギー」、「雇用・労働」、「教育」、「医療・福祉」、「法務」の各分野について、取組の概要と規制緩和年表を整理している(情報・通信分野と運輸分野の年表を例示)。

第3節 近年の規制緩和による経済効果

 九八年三月に閣議決定した規制緩和推進三か年計画においては、規制緩和に関する需要拡大効果、生産性向上効果、物価引き上げ効果等の経済効果につき数量的な分析を積極的に公表することとしており(本年の改定後も同様)、経済企画庁は、本年三月、「近年の規制緩和による経済効果の改定試算」を行い公表した。
 試算結果によると、近年の規制緩和により消費や投資が拡大された効果(需要効果)は、九〇〜九七年度の年平均で八・二兆円程度、また、規制緩和による価格低下で利用者が支出を節約できた効果(利用者メリット効果)は、同期間で六・六兆円程度となり、いずれも最近増加傾向にある(第1図参照)。

第2章 規制緩和推進三か年計画の改定

 規制緩和推進三か年計画(平成十年三月三十一日閣議決定、平成十一年三月三十日改定)は、規制の緩和や改革に関する総合的な計画であり、策定後も絶えず見直しを行い、実施時期の前倒し・明確化、措置内容の具体化を図ることから、規制の緩和や改革を着実に進める上で、極めて有効なものである。しかし、このような方式を採るように至るまでにも、政府は様々な規制緩和の取組を行ってきた。

第1節 規制緩和推進計画等による取組

1 規制緩和推進計画策定前の取組
 様々な施策の展開の歴史の中で、個々の規制について個々に見直しは行われてきた。しかし、行政分野を問わず、許認可等を整理・合理化しようという試みは、六七年の許認可等の一括整理法(許可、認可等の整理に関する法律(昭四十二法一二〇))が最初である。八〇年代以降、臨調・行革審といった行革の推進機関による取組の中で広範な内容を含む提言がなされ、政府は、それを受け累次の一括法や個別法令等により、必要な措置を進めていった。
 さらに九三年九月の経済対策閣僚会議決定「緊急経済対策」、九四年二月の閣議決定「今後における行政改革の推進方策について」及び同年七月の閣議決定「今後における規制緩和の推進等について」にも、各種の規制緩和措置を盛り込み、実施に移している。

2 規制緩和推進計画の策定
 第三次行革審は、九三年十月の「最終答申」において、「九四年度内を目途に、規制緩和に関する中期的かつ総合的なアクション・プランを策定する。」ことを提言した。これを受け、政府は九四年二月、「今後における行政改革の推進方策について」を閣議決定し、これに基づき、九五年三月三十一日、総合的な規制の緩和に関する計画である「規制緩和推進計画」(以下「九五年計画」という。)を決定した。
 九五年計画の内容は、規制緩和の目的、基本指針、計画の推進方法などに加え、十一の行政分野にわたり一千九十一事項の個別の規制緩和措置となった。
 その後、九五年計画は、「緊急円高・経済対策」(平成七年四月十四日経済対策閣僚会議決定)により、当初、九九年度までの五か年計画であったものを、九七年度までの三か年計画として実施期間を短縮し、前倒し実施することとなった。

3 九五年計画の改定及び再改定
 九六年の改定後の計画においては、新規五百六十九事項を含め、十一分野にわたり一千七百九十七事項の個別の規制緩和措置が盛り込まれることとなり、九七年の再改定後の計画においては、新たに教育の分野が追加され、十二分野二千八百二十三事項が盛り込まれることとなった。

第2節 規制緩和推進三か年計画による取組

1 規制緩和推進三か年計画の策定
 九五年計画の計画期間終了後、同期間内に措置が終了しないものを盛り込み、また、九七年十二月の行政改革委員会の最終意見を最大限に尊重し、規制緩和推進三か年計画(平成十年三月三十一日閣議決定)が策定され、十五分野六百二十四事項の規制緩和措置を盛り込むこととなった。

2 計画のフォローアップと改定
 九八年十月一日現在で規制緩和推進三か年計画のフォローアップを行い、同年十一月には結果を公表した(六百二十四事項中、二百六十事項が全部または一部措置済み)。
 同計画の改定に当たっては、九八年二月に提出された規制緩和委員会の第一次見解を最大限に盛り込む等により、新たな規制緩和方策を積極的に盛り込むとともに、改定前に盛り込まれていた事項についても、極力、実施時期の前倒し、実施時期の明確化及び実施内容の具体化を図り、本年三月三十日、規制緩和推進三か年計画の改定(以下、「改定計画」という。)を閣議決定した。

第3節 改定計画の内容

1 計画の基本的考え方と構成
 改定計画では、九八年度における計画の進捗状況や、新たな課題への取組の成果を受け、内容を更新している。他方、「我が国経済社会の抜本的な構造改革を図り、国際的に開かれ、自己責任原則と市場原理に立つ自由で公正な経済社会としていくとともに、行政の在り方について、いわゆる事前規制型の行政から事後チェック型に転換していくことを基本とする」こと、そして、「このため、@経済的規制は原則自由、社会的規制は必要最小限との原則の下、規制の撤廃又はより緩やかな規制への移行、A検査の民間移行等、規制方法の合理化、B規制内容の明確化、簡素化、C規制の国際的整合化、D規制関連手続の迅速化、E規制制定手続の透明化を重視し」、規制緩和等を計画的に推進するという九八年の決定当初以来の考え方は、改定後も一貫している。
 改定計画の構成は、第1表のとおりである。

2 横断的検討、見直しの推進
 横断的検討、見直しの推進は、個別の行政分野ごとに規制緩和に取り組むだけでなく、各行政分野を横断的に見直すことで、これまで俎上に乗らなかったような新たな課題を発掘し、または、規制緩和をより着実に進めていくことをねらいとしている。

3 規制の新設を必要最小限に抑制する努力(規制の新設審査)
 改定計画では、規制の新設に当たっては、原則として、その規制を一定期間経過後に廃止を含め見直すなど、規制の新設審査のシステムを明記している。
 これまで法律案に見直し条項を付した実績は、第2表のとおりである。今後は見直し条項の定める検討時期の到来するものについて、国民が関心をもっていくということも大切である。

4 透明性の高い計画の推進方法
 現行計画の特徴の一つに、改定やフォローアップの手順があらかじめ定められており、高い透明性を確保しつつ規制緩和が進められるように配慮されていることがある(第2図参照)。

5 行政の情報化の推進その他の諸方策
 インターネットの急速な普及、電子商取引の実用化の動きなど、内外の情報化の急速な進展に対応し、特にワンストップ・サービスの実施に向け、各種の行政手続について、早急にインターネットを活用した行政手続の案内・教示、申請等様式の提供や手続自体のオンライン化を進める。

6 「規制改革」という視点
 規制緩和の推進に併せて、市場機能をより発揮するための競争政策の積極的展開に加え、さらに、事前規制型の行政から事後チェック型の行政に転換していくことに伴う新たなルールの創設や、自己責任原則の確立に資する情報公開及び消費者のための必要なシステムづくりなどにも、規制の緩和や撤廃と一体として取り組んでいくという視点であり、この重要性に配意する。

7 個別の措置の概要
 改定計画では、「競争政策」、「住宅・土地、公共工事」、「情報・通信」など、十五分野にわたって新規二百四十八を含む九百十七の個別措置事項を整理している(第3表参照)。

第4節 中央省庁等改革との関係

 規制緩和は、現在進められている中央省庁等改革と一体をなすものである。中央省庁等改革基本法(平十法一〇三)には、規制緩和に関連する各種の事項が定められており、また、「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本計画にも資するものであり、積極的に実施する。」とし、規制緩和推進三か年計画に取り上げられた事項及び今後同計画に追加される事項について、関係する事務及び事業の減量、効率化を推進することとしている。

第5節 緊急雇用対策及び産業競争力強化対策と規制改革

 現下の厳しい社会経済情勢を踏まえ、政府は雇用機会の創出と経済の供給面での強化に取り組んでおり、本年六月、「緊急雇用対策及び産業競争力強化対策について」を産業構造転換・雇用対策本部で決定し、さらに、七月には、「雇用創出・産業競争力強化のための規制改革」を決定し、その中に医療福祉、情報通信、環境、教育・科学技術等、各分野における規制改革に関連する方策を盛り込んでいる。

第3章 規制緩和の推進体制

 最近の我が国の規制緩和の取組において、不断に新たなテーマを発掘し、あるいは、政府の取組を監視してきた行政改革委員会や規制緩和委員会の役割は、非常に大きい。これらの委員会は、政府における規制緩和の推進体制の中軸であるということができる。

第1節 規制緩和委員会等の活動

1 行政改革委員会の三年間の活動
 行政改革委員会は、九四年十二月十九日、行政改革委員会設置法(平六法九六)に基づき三年の時限で総理府に設置された(九七年十二月十八日活動終了)。
 行政改革委員会(以下この章で「行革委」という。)は、両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命した五人の委員によって構成され、規制緩和その他政府の行政改革の実施状況の監視及び情報公開法等、行政情報の公開のための制度の整備に関する調査審議を行う機関であり、必要があるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係行政機関の長に勧告を行うことができる。
 行革委は、規制緩和を当面の最重要、最優先の課題として位置づけ、積極的に取り組み、九五年四月には、規制緩和小委員会(以下「小委員会」という。)を設置し、規制緩和について専門的に調査、検討を行う体制を整えた。
 その後、九五年十二月と九六年十二月の二回にわたり、行革委は、「規制緩和の推進に関する意見」を内閣総理大臣に提出した。政府は、いずれの意見も最大限に尊重し、その内容を全面的に取り入れて九五年計画の改定、再改定を行っている。
 行革委は、九七年十二月、規制緩和に関する内容を盛り込んだ「最終意見」を内閣総理大臣に提出した。「最終意見」には、具体的な規制緩和事項のほか、@九五年計画終了後も、新たな規制緩和推進三か年計画を策定すべきこと、A規制緩和推進のため、民間人主体の委員会を早急に設置すべきことなどを提言した。政府は、十二月二十日、「規制緩和の推進等について」を閣議決定し、最終意見を最大限尊重することとした。

2 規制緩和委員会の活動(1)
 ―規制緩和推進三か年計画の決定まで―
 「規制緩和の推進等について」(平成九年十二月二十日閣議決定)においては、九八年一月中を目途に、行政改革推進本部(本部長:内閣総理大臣、副本部長:内閣官房長官及び総務庁長官、メンバー:全閣僚)の下に、民間有識者を中心とする「規制緩和委員会(仮称)」を置くこととされ、九八年一月二十六日、行政改革推進本部長決定により、規制緩和の着実な推進を図るため、行政改革推進本部の下に規制緩和委員会が設置された。
 規制緩和委員会は、二月五日の第一回会合以降三月初めにかけて、新計画案の策定作業に参画した。その後、各省庁に対し、九五年計画の計画期間内に措置が完結しない事項や、行政改革委員会最終意見指摘事項についてはもちろん、緊急経済対策や経済構造改革行動計画において取り組むこととされた事項についても、実施時期が明確になっていないものは、その明確化、実施時期が定まっているものについても、その前倒し、また、内容や手順等についても、その具体化に取り組むよう強く要請した。あわせて、内外からの意見・要望についても、真剣な検討を求めた。
 規制緩和委員会が現行の規制緩和推進三か年計画の決定に当たり果たした役割は、極めて大きい。同委員会の審議を通じた各省庁との徹底的な議論、検討過程で行われた「委員会注視事項」の公表による計画策定過程の透明性の確保など、規制緩和を大きく進める要因となったほか、規制緩和推進三か年計画の本文の部分については、委員会自らが立案した案がほとんど盛り込まれており、新たな計画下における規制緩和推進の基本や横断的取組の骨格となっている。

3 規制緩和委員会の活動(2)
 ―規制緩和推進三か年計画下の一年間―
 (1) 第1次見解の提出まで
 規制緩和推進三か年計画において、「行政改革推進本部規制緩和委員会は、本計画に係る各事項の推進状況の監視及び新たな課題への取組など、規制緩和の着実な推進を図る。」とされた。
 これを受けて、規制緩和委員会は、九八年五月二十五日、計画の進捗状況の監視及び新たな課題への取組のため、委員の若干名の交替・追加を行い、それまでの七名から十一名に改組された(その後、九月に更に一名追加)。また、総務庁行政管理局内に専担の事務室を置き、委員会の事務機能も充実させた。
 その後、規制改革委員会は、十八のワーキング・グループを設け、委員会における審議と並行して、これらのワーキング・グループにおいて調査審議を進めていった。
 これらを経て、八月十一日の第三回委員会において、今後の調査審議テーマの概定を行った。その後、九月には、「規制緩和に関する論点公開」、十月からは「公開討論」を四回(六テーマ)にわたり実施した。
 規制緩和委員会では、このようなオープンな検討過程を経て、十二月十五日に「規制緩和についての第一次見解」を取りまとめ、同日、行政改革推進本部に提出した。同本部においては、十二月十八日に、第一次見解の内容を、九八年度内を目途に改定する規制緩和推進三か年計画に最大限に盛り込むことを決定した。
 (2) 規制緩和推進三か年計画の改定まで
 本年二月以降、規制緩和委員会においては、第一次見解の内容を最大限計画に盛り込むとの方針に沿った検討が進められているか、内外の意見・要望について十分な検討がなされているかなどの観点から、規制緩和推進三か年計画の改定に関する調査審議を行った。

第2節 規制改革委員会の活動
   ―規制緩和推進三か年計画の改定後―

 本年二月、経済戦略会議答申「日本経済再生への戦略」において、規制緩和委員会の強化等が提言されたことも踏まえ、同年四月六日、行政改革推進本部長(内閣総理大臣)決定により、@規制緩和委員会の規制改革委員会への改称、A同委員会は、審議の結果、一般に規制と観念されないものであっても、規制改革の推進に密接に関連するものとして、検討が必要と判断される事項がある場合には、それぞれの関係行政機関に対し、所要の問題提起等を行っていくこと、B審議の必要性に応じた委員の追加といった規制緩和委員会の充実強化が決定された。
 六月には、審議の一層の充実を図るため、委員の追加及び参与の委嘱が行われ、新たなメンバーにあわせて、ワーキング・グループの編成を決定した。
 新たな体制の下、規制改革委員会は精力的な審議を行い、七月三十日に、「論点公開」を取りまとめ、発表した(第4表参照)。

第4章 パブリック・コメント手続等

第1節 パブリック・コメント手続

1 パブリック・コメント手続の内容
 「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続(パブリック・コメント手続)」は、規制の設定又は改廃に伴い政令、省令等を策定する過程において、国の行政機関等が政令、省令等の案を公表し、この案に対して国民・事業者等から提出された意見・情報を考慮して、意思決定を行うための手続である(第3図参照)。
 この手続の目的は、以下のとおり整理できる。
○ 行政の意思決定過程の公正を確保し、透明性の向上を図ること。
○ 国民・事業者等の多様な意見・情報を把握するとともに、それらを考慮して意思決定を行うこと。
 また、今回定めたパブリック・コメント手続には、次のような意義・特徴がある。
@ 全省庁共通の初めての統一的ルールであること。
 従来、各省庁においては、独自の方法に基づいて、本手続と類似の手続を行うことがあった。今回の閣議決定は、全省庁共通のルールとして定めたものであり、今後、国民・事業者等が、意見・情報を提出できる機会の増加が見込まれる。
A 国の行政機関等が具体的な案を公表し、これに対して意見を求める仕組みであること。
 この手続は、単にアイデアの募集ではなく、行政が作成した具体案に対して意見・情報を求めるものである。これにより、一層具体的な意見・情報の提出が期待される。
 なお、注意が必要な点は、行政が作成した具体案に対して、賛成・反対を表明するものではなく、合理的な理由に裏付けられた意見・情報を求める手続であるということである。
B 提出された意見・情報に対する国の行政機関等の考え方を公表すること。
 提出された意見・情報を取り入れて修正することとした理由や、取り入れないこととした理由を示すことにより、当該規制の設定等に関する国民の理解を一層得ることができる。
 このように、この手続は、単に広く国民各層の意見等を聴取、収集するにとどまらず、意思決定過程において、行政の説明責任をより全うしようというものである。

2 パブリック・コメント手続策定の経緯
 パブリック・コメント手続は、九八年三月に閣議決定された「規制緩和推進三か年計画」において、規制の制定、改廃に係るパブリック・コメント手続の在り方について、九八年度内を目途に結論を得ることとしたことを受けて、総務庁において検討し、策定に至ったものである。規制緩和委員会における審議なども経て、総務庁はこの手続の案(「規制の設定又は改廃に係る意見照会手続(案)」)を同年十一月に公表し、内外に意見・情報の提出を求めた。
 その結果、四十二件の意見・情報が提出され、これらを考慮していくつかの修正を行った上、本年三月二十三日、「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続」として閣議決定した。この閣議決定は、同月三十日、総務庁告示第六十二号として公示され、四月一日から適用されている。

第2節 申請負担軽減対策の策定

 政府は、九七年二月に「申請負担軽減対策」を閣議決定し、「今世紀中に申請・届出などの行政手続に伴う国民の負担感を半減する」との目標を掲げ、順次、重点実施事項を定め、その内容を具体化してきている。
 本年三月に改定した規制緩和推進三か年計画においては、「手続の簡素化、電子化、ペーパーレス化・ネットワーク化を目指した申請負担軽減対策(平成九年二月十日閣議決定)の具体化を引き続き推進する」こととしている。

1 重点的・集中的取組事項
 九七年三月に規制緩和推進計画を再改定した際に、薬局の許可(「三年」の有効期間を「六年」に倍化)をはじめとする約百二十事項についての倍化・延長を決定している。このうち、法律改正を要する事項(十六法律四十九項)については、総務庁が取りまとめ、第百四十一回臨時国会に提出された「許可等の有効期間の延長に関する法律案」が九七年十一月十四日に成立し、同月二十一日に一部を除き施行された(平九法一〇五)。
 また、国の行政機関及び特殊法人に提出する書類のうち、認印を押印することとなっているものについて、「押印見直しガイドライン」(平成九年七月三日事務次官等会議申合せ)に基づき、その在り方の見直しを行った結果、パスポートの発給申請書、車検申請書、住民票の写しの交付請求書など、国が法令又は通達等により国民に対し求めている認印約五千五百事項について、「記名押印又は署名」の選択制を始めとする合理化を行うこととし、九八年一月、その全体を総務庁において取りまとめ公表し、各省庁において、原則として本年一月までに法令改正など、具体的措置を採ることとした。
 さらに、九八年九月、総務庁において許認可等の審査・処理期間の半減・短期化についての見直し結果をとりまとめ、公表した。見直し結果の概要は、@国が直接審査・処理することとされている許認可等で、標準処理期間が設定されている三千六百二種類のうち、五百八十種類について審査・処理期間を半減化、A上記@の半減化することとしたものを含めて、一千三百八十種類について審査・処理期間を短期化、である。改定計画においては、許認可等の審査・処理期間の半減・短期化の具体的措置事項の取りまとめを確実に実施するため、本年九月末を目途にフォローアップを行い、公表することとしている。

2 中長期的取組事項
 (1) 申請・届出の電子化・ペーパーレス化
 申請・届出の電子化・ペーパーレス化については、九四年十二月に閣議決定された行政情報化推進基本計画(九九年度までの五か年計画)に基づいて推進してきたところであり、より一層具体的な施策の展開を図るため、九七年十二月に基本計画の改定を行っており、申請・届出の電子化・ペーパーレス化についても、この改定計画(二〇〇二年度までの五か年計画)に基づき一層積極的に推進することとしている。
 申請負担軽減対策に盛り込まれた事項のうち、基本計画に掲げられている事項としては、@申請・届出等手続の電子化について、計八千八百二十二件のうち、本年度末までに三千四十件の手続が電子化されることとなっており、例えば、各種輸入手続のオンライン化(大蔵省、厚生省、農林水産省)などが実施されている。
 また、A一箇所で複数の事務手続を可能にするワンストップサービスについて、対象分野、サービス項目・内容、実施手順等についての整備方針を九八年度末に策定したところであり、この整備方針に基づき、行政手続の案内・教示、様式のオンライン提供、申請者等の認証等、共通課題の解決等を図りつつ、申請・届出等のオンライン処理等を段階的に実施することとしている。
 (2) 統計調査の簡素合理化
 各省庁が所管する統計調査については、九七年二月に各省庁で申合せを行い、報告者負担の軽減の観点から、すべての調査の見直しを実施することとした「統計調査見直し五か年計画」の見直し期限を、原則として一年前倒しし、九八年度末までにおおむね見直しを完了した。本年三月末現在の見直し実績をみると、見直し計画の対象となっている三百五十六調査中、三百四十九調査(九八・〇%)について見直しが終了している。
 このほか、行政記録の統計への活用の推進、統計調査結果の所在情報案内機能の整備及び電子的提供、統計調査結果の公表早期化などの取組が行われている。

第5章 公的規制の現状

 「公的規制」についての法令上の定義はないが、八八年十二月の第二次行革審の「公的規制の緩和等に関する答申」は、「公的規制は、一般に、国や地方公共団体が企業・国民の活動に対して特定の政策目的の実現のために関与・介入するものを指す。それは、許認可等の手段による規制を典型とし、その他にも許認可等に付随して、あるいはそれとは別個に行われる規制的な行政指導や価格支持等の制度的な関与などがある。」と比較的広範囲にとらえている。
 公的規制は、特定の政策目的を達成するために関与・介入するものとされているが、規制の方法や対象は、多種多様なものとなっており、また、一つの法律をとってみても、許認可等とそれ以外の規制が一体となって内容を構成している。
 許認可等は、公的規制の典型的な手段の一つである。許認可等を整理・分析することは、どのような内容の規制があるのか、あるいはどのような分野で新設・改廃されているか、などの公的規制の現状を理解する際の一助になるものと考えられる。
 総務庁においては、八五年以来十三回にわたって、許認可等の実態の統一的把握を実施し、この結果を取りまとめて公表しており、規制緩和の基礎資料の一つとなっている。
 許認可等の件数は、第一回の把握時点(八五年十二月三十一日現在。一万五十四件)から第十三回の把握時点(九八年三月三十一日現在)までの間に一千六十三件の純増(三千百二十五件減少、四千百八十八件増加)となり、一万一千百十七件となっている。第十三回の把握時点においては、第十二回の把握時点(九七年三月三十一日現在)に比べ、五百八十五件の増加、五百件の減少があり、差引き八十五件の純増となっている。
 規制緩和と許認可等の件数との関係についてみると、許認可等の件数は、許認可等の根拠法令の項ごとに一事項として数える等の基準に基づいて機械的に数えている。
 これに対し、規制緩和の態様は、@規制の廃止、A規制対象範囲の縮小、B規制基準の緩和、C強い規制から弱い規制への緩和など、様々なケースがある。
 許認可等の数え方と前記のような規制緩和の態様の関係をみると、法律の廃止等規制自体が廃止される場合は、その根拠条項も廃止されるため、当然、許認可等の件数は減少するが、その他規制対象範囲の縮小、規制基準の緩和、強い規制から弱い規制への緩和などの場合は、許認可等の根拠条項が残るため、許認可等の件数の減少には結びつかない場合、あるいは、逆に、許可対象の一部について届出で足りることとした場合に、届出の根拠条項が設けられるなど、件数が増加する場合もあり、規制緩和と許認可等の件数の増減とは必ずしも相関関係がない。
 このため、規制緩和の進展(実質的な緩和の効果)を許認可等の件数の増減で表すことは必ずしも適切でない。

第6章 規制緩和をめぐる動向

第1節 規制緩和をめぐる国内の動向

 我が国は、九五年四月以降、九五年計画及び規制緩和推進三か年計画に基づき、総合的かつ計画的に規制緩和の推進に取り組んできているが、これら以外にも、政府、与党において、規制緩和の推進が取り上げられてきている。
 生産性上昇に向けた供給面の取組を押し進めることを主眼として、本年一月「産業再生計画」が閣議決定され、これと同時に「経済構造の変革と創造のための行動計画第二回フォローアップ」が閣議決定された。
 九八年八月に設置された経済戦略会議では、本年二月「日本経済再生への戦略」(答申)をとりまとめ、個別の規制緩和事項とともに、「「制度改革委員会」による制度改革の推進」として、行政改革推進本部規制緩和委員会(当時)の体制整備等についての提言が盛り込まれている。
 本年七月、経済審議会答申「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」が閣議決定され、規制改革において「透明性」「説明責任」「経済社会情勢の変化への適合性」の三つの視点をさらに重視すること、規制に関する政策評価の手法の確立及び共通化を推進すること、基準認証等について、自己確認、自主保安、第三者認証への移行を促進すること等が示されている。
 生産性の向上による産業の競争力強化を目指し、官民が協力して、それぞれの役割分担に応じた総合的な検討を行うため、本年三月以降、産業界委員と閣僚による産業競争力会議が開催され、自民党においても、これに対応する検討チームが設けられるなど、熱心な取組が行われている。
 これらの場における検討を受け、本年六月政府の産業構造転換・雇用対策推進本部(構成員:全閣僚)において「緊急雇用対策及び産業競争力強化対策について」が決定され、緊急雇用対策と産業競争力強化の双方の視点から、規制改革の諸方策が盛り込まれている。
 このうち、特に新事業創出を通じた雇用機会の増大に資する規制改革については、引き続き政府与党において具体化の作業が進められ、同年七月、産業構造転換・雇用対策本部において、「雇用創出・産業競争力強化のための規制改革」が決定された。

第2節 規制緩和をめぐる国外の動向

 規制緩和推進三か年計画は、規制緩和を進めるに当たっての基本の中で、我が国経済社会を国際社会に開かれたものにする旨を述べており、また、規制の国際的整合化を重視する視点の一つとしてあげている。
 他方、規制緩和・規制改革は、我が国自身の課題として取り組む課題ではあるが、我が国の国内のみに目を向けたものであってはならない。このような観点から、我が国の規制緩和の取組においては、内外を問わず意見・要望を求め、また、計画の改定などの際には、在日の外国機関や関係報道機関に対し説明を行っている(本年は四月に行っている。)。さらに、米国、EUを始めとする諸外国等との対話や、OECDやAPECにおける取組への積極的貢献を行っている。

第3節 行政監察機能の発揮

 総務庁行政監察局では、従来、規制緩和の推進に積極的に取り組んできており、その実績をみると、一九九二年度以降、九八年度までに実施した勧告等において指摘した規制緩和事項は延べ三百六十九事項あり、このうち、九七年三月に再改定された規制緩和推進計画(平成九年三月二十八日閣議決定)または本年三月に改定された規制緩和推進三か年計画(平成十一年三月三十日閣議決定)に取り上げられた事項は、合計二百六十四事項となっている。この二百六十四事項のうち、措置済み(九八年度末現在)は二百十九事項(八三・〇%)であり、行政監察において指摘した事項は着実に措置されている。
 省庁横断的な視点から規制緩和を推進するものとしては、@規制緩和に関する調査(行政改革委員会から依頼された調査)及びA規制緩和のフォローアップ調査を実施した。
 施策別の行政監察・調査においても、従来、規制緩和の観点を踏まえつつ実施してきているところである。九七年度中に勧告等を行った行政監察・調査のうち、規制緩和に関する指摘事項を含むものとしては、「アルコール専売事業に関する行政監察」、「危険物の保安に関する行政監察」、「農産物の検疫・検査、規格等に関する行政監察」などがある。また、九八年度中に勧告等を行った規制緩和に関する指摘事項を含む行政監察・調査には、「児童福祉対策等に関する行政監察」、「米の生産・流通等に関する行政監察」などがある。

第4節 規制緩和の「影の部分」とそれに対する取組

 規制緩和の推進は、我が国経済社会を市場原理や自己責任の原則に基づいた自由なものとするとともに、産業構造の大きな変革をもたらし、それによって中小企業を含む新たな起業機会や雇用の創出にもつながるという極めて重要な課題であるが、一方で、いわゆる規制緩和の「影の部分」といわれる雇用面へのマイナスの影響、中小企業の事業活動や消費者の適正な商品選択への影響が懸念される場合もある。
 これらの問題に対しては、@雇用・労働分野における規制緩和による雇用機会の拡大努力、A公正取引委員会を中心とした規制緩和後の市場の公正な競争秩序の確保に向けた取組などを、より積極的に行っていくことが必要である。
 また、以上述べてきたような施策を実行しても、なお残る規制緩和の推進によるマイナス面の影響があれば、個別の事情に即し、中小企業者に対する対策の充実や雇用機会の確保、地域住民の生活への配慮など、規制緩和の推進や競争政策の積極的展開とは別の観点からの政策努力を払いつつ、進めていくことが必要である。








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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十一年七月分結果速報


労 働 省


 「毎月勤労統計調査」平成十一年七月分結果の主な特徴点は次のとおりである。

◇賃金の動き

 七月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は四十四万三百八十九円、前年同月比は一・三%減であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万二千五百二十四円、前年同月比〇・三%増であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万四千八百四十八円、前年同月比〇・二%増、所定外給与は一万七千六百七十六円、前年同月比は二・七%増であった。
 また、特別に支払われた給与は十五万七千八百六十五円、前年同月比は四・一%減であった。
 実質賃金は、一・二%減であった。
 きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に電気・ガス・熱供給・水道業二・七%増、サービス業一・九%増、金融・保険業一・六%増、運輸・通信業一・三%増、製造業〇・一%減、鉱業〇・三%減、卸売・小売業、飲食店一・一%減、建設業一・四%減、不動産業三・〇%減であった。

◇労働時間の動き

 七月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は百五十八・二時間、前年同月比一・二%減であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は百四十八・九時間、前年同月比一・一%減、所定外労働時間は九・三時間、前年同月比二・〇%減、所定外労働時間の季節調整値は前月比一・四%増であった。
 製造業の所定外労働時間は十二・〇時間、前年同月比一・八%増、季節調整値の前月比は二・〇%増であった。

◇雇用の動き

 七月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・四%減、常用労働者のうち一般労働者では〇・九%減、パートタイム労働者では一・八%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものはサービス業一・九%増、建設業一・二%増、不動産業〇・二%増であった。前年同月を下回ったものは、運輸・通信業一・〇%減、電気・ガス・熱供給・水道業一・一%減、卸売・小売業、飲食店一・四%減、製造業二・三%減、鉱業及び金融・保険業二・九%減であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者二・六%減、パートタイム労働者は一・一%増、卸売・小売業、飲食店では一般労働者四・一%減、パートタイム労働者三・八%増、サービス業では一般労働者二・四%増、パートタイム労働者一・二%減であった。








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 放火による火災の防止


●放火および放火の疑いは出火原因のトップ

 放火(放火の疑いも含む)は、昭和六十年以降、出火原因のトップを占めており、発生件数も平成四年以降、連続して一万件を超えています。
 不特定多数の人の命や財産を危険にさらす放火は、極めて悪質な犯罪です。その危険から身を守るためには、わたしたち一人一人が放火火災に対する危機意識を持つとともに、地域の住民や事業所、関係機関などが一つになって、放火されにくい地域の環境をつくっていくことが重要です。

●放火防止のポイント

・建物や敷地内への侵入を防ぐ
 建物への放火では、建物の周辺、倉庫・物置、共同住宅の玄関ホール・共用部分など、侵入されやすい場所や人気のない暗がりでの放火が目立ちます。
 こうした放火を防ぐためには、施錠をきちんと行う、照明器具を設置する、侵入監視センサーを設置するなどして、不審者の侵入を警戒することが大事です。
・建物の周囲に燃えやすいものを放置しない
 建物の周りに燃えやすいものがあったら、放置せずに片づけておきましょう。
 また、夜間にごみ捨て場のごみや放置された新聞・雑誌などに放火されるケースも多く見られます。
 夜間にごみを出さない、古新聞や古雑誌などを外に放置しないなど、地域ぐるみで気をつけましょう。
・屋外に駐車するときは、車両に放火されない工夫を
 路上や建物周辺、屋外駐車場に駐車中の車両に放火されるケースも少なくありません。
 車両の荷台やボディーカバーに放火されることがあります。
 車両を不用意に放置しない、ボディーカバーには防炎製品を使用するなどの対策が必要です。
(消防庁)


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月例経済報告(十一月報告)


経済企画庁


概 観

 我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、収入が低迷していることなどから、このところ足踏み状態にある。住宅建設は、マンションの着工が増加しており、前年を上回る水準で推移している。設備投資は、なお大幅な減少基調が続いている。公共投資は、事業の実施が進んでいるが、着工は低調な動きとなっている。輸出は、アジア向けを中心に、増加している。
 在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準になっている。こうした中、生産は、持ち直しの動きがみられる。
 雇用情勢は、残業時間などの増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 企業収益は、持ち直してきた。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。
 以上のように、景気は、民間需要の回復力が弱く、厳しい状況をなお脱していないが、各種の政策効果の浸透に加え、アジア経済の回復などの影響もあって、緩やかな改善が続いている。
 政府は、将来の公需の鈍化等が景気減速をもたらしかねないとの懸念を払拭しつつ、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せていくとともに、二十一世紀の新たな発展基盤を築くため、十一月十一日に経済新生対策を決定したところであり、その強力な推進を図ることとする。

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 我が国経済
需要面をみると、個人消費は、収入が低迷していることなどから、このところ足踏み状態にある。住宅建設は、マンションの着工が増加しており、前年を上回る水準で推移している。設備投資は、なお大幅な減少基調が続いている。公共投資は、事業の実施が進んでいるが、着工は低調な動きとなっている。
 産業面をみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準になっている。こうした中、鉱工業生産は、持ち直しの動きがみられる。企業収益は、持ち直してきた。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。企業倒産件数は、春先からやや増加しているものの、信用保証制度の拡充の効果などで前年の水準を下回っている。
 雇用情勢は、残業時間などの増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 輸出は、アジア向けを中心に、増加している。輸入は、アジアからの輸入が増加基調にあり、緩やかに増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十月は月初の百五円台から一時百七円台まで下落したが、その後やや上昇し、十一月上旬にかけて百四円台から百六円台で推移した。
 物価の動向をみると、国内卸売物価は、下げ止まっている。また、消費者物価は、安定している。
 最近の金融情勢をみると、短期金利は、十月から十一月上旬にかけて上昇した。長期金利は、十月は上昇した後、十一月上旬はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、十月は上旬に上昇した後、中旬以降下落し、月末から十一月上旬にかけて大幅に上昇した。マネーサプライ(M+CD)は、十月は前年同月比三・五%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。
 海外経済
主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九九年四〜六月期前期比年率一・九%増の後、七〜九月期は同四・八%増となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は減少した。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準である。十月の長期金利(三十年物国債)は、月末に低下したことを除けば、総じて上昇基調で推移した。株価(ダウ平均)は、上旬に上昇、その後半ばにかけて下落したが、さらにその後上昇し、月初と月末を比較すると上昇した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに改善してきている。フランスでは、景気は緩やかな拡大を続けている。イギリスでは、景気は改善してきている。鉱工業生産は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランス、イギリスでは増加している。失業率は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している。物価は、安定している。欧州中央銀行は、十一月四日、M3増加率の加速などにみられる将来のインフレ圧力を抑制するため、政策金利(主要オペレート)を〇・五%ポイント引き上げ、三・〇%とした。また、同日、イングランド銀行も、政策金利(レポ金利)を〇・二五%ポイント引き上げ、五・五%とした。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。輸出は大幅に拡大している。韓国では、景気は急速に回復している。失業率は低下している。
 国際金融市場の十月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した。
 国際商品市況の十月の動きをみると、CRB商品先物指数は、月初から下落し、中旬にかけ急上昇したものの、その後は再び下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、概ね二十一〜二十三ドルのレンジ内で上下した。

1 国内需要
―個人消費は、このところ足踏み状態―

 個人消費は、収入が低迷していることなどから、このところ足踏み状態にある。
 家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で八月〇・一%増の後、九月(速報値)は二・九%減(季節調整済前月比一・九%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比三・七%減、勤労者以外の世帯では同一・六%減となった。形態別にみると、サービス等は減少、耐久財は増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比三・〇%減、勤労者世帯では同四・一%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で八月一・二%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で八月一・六%減の後、九月(速報値)は二・〇%減(季節調整済前月比〇・五%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で八月二・七%減の後、九月(速報値)五・三%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で八月四・九%減の後、九月一・四%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で十月(速報値)は六・八%減となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で九月は五・九%増となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、九月は前年同月比で国内旅行が二・九%減、海外旅行は一・六%減となった。
 当庁「消費動向調査」(九月調査)によると、消費者態度指数(季節調整値)は、六月に前期差〇・七ポイント低下の後、九月には同〇・三ポイントの上昇となった。
 賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で八月〇・四%減の後、九月(速報)は〇・六%増(事業所規模三十人以上では同一・一%増)となり、うち所定外給与は、九月(速報)は同三・七%増(事業所規模三十人以上では同二・四%増)となった。実質賃金は、前年同月比で八月〇・八%減の後、九月(速報)は〇・九%増(事業所規模三十人以上では同一・三%増)となった。なお、平成十一年夏季賞与は、事業所規模五人以上では前年比三・七%減(前年は同二・一%減)となった。また、民間主要企業の夏季一時金妥結額(労働省調べ)は前年比五・六五%減(前年は同一・一一%増)となった。
 住宅建設は、マンションの着工が増加しており、前年を上回る水準で推移している。
 新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で八月一〇・七%増(前年同月比八・四%増)となった後、九月は一・三%減(前年同月比一〇・五%増)の十万五千戸(年率百二十六万戸)となった。九月の着工床面積(季節調整値)は、前月比〇・一%減(前年同月比一四・八%増)となった。九月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比二・二%減(前年同月比一二・三%増)、貸家は同一・九%減(同〇・九%増)、分譲住宅は同二・六%減(同二五・〇%増)となっている。
 設備投資は、なお大幅な減少基調が続いている。
 当庁「法人企業動向調査」(十一年九月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、季節調整済前期比で十一年四〜六月期(実績)七・五%増(うち製造業五・三%増、非製造業七・三%増)の後、十一年七〜九月期(実績見込み)は六・〇%減(同一〇・〇%減、同三・三%減)となっている。年度計画では、前年比で十年度(実績)五・三%減(うち製造業六・三%減、非製造業四・八%減)の後、十一年度(計画)は九・四%減(同一一・三%減、同八・三%減)となっている。
 なお、十一年四〜六月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で一三・四%減(うち製造業二四・六%減、非製造業六・六%減)となった。
 先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で八月は二・七%増(前年同期比四・一%減)の後、九月は四・六%増(同六・七%減)となり、基調には、製造業を中心とした底固めへの動きがみられ、今後の受注動向を注視していく必要がある。
 なお、十〜十二月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で二・八%減(前年同期比四・七%減)と見込まれている。
 民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、九月は季節調整済前月比七・一%増(前年同月比一・八%減)とやや増加したものの、前年を下回る水準が続いている。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比二三・七%増(前年同月比一二・一%減)、非製造業は同三・七%増(同〇・六%増)となった。
 公的需要関連指標をみると、公共投資は、事業の実施が進んでいるが、着工は低調な動きとなっている。
 公共工事着工総工事費は、前年同月比で八月七・四%減の後、九月は一〇・八%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で九月一五・三%減の後、十月は一八・四%減となった。官公庁からの建設工事受注額(五十社)は、前年同月比で八月七・一%減の後、九月は一五・三%減となった。

2 生産雇用
―持ち直しの動きがみられる生産―

 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準になっている。こうした中、生産・出荷は、持ち直しの動きがみられる。
 鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で八月四・四%増の後、九月(速報)は、輸送機械、精密機械等が増加したものの、一般機械、電気機械等が減少したことから、〇・八%減となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で十月は輸送機械、鉄鋼等により〇・九%減の後、十一月は輸送機械、電気機械等により三・八%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で八月三・八%増の後、九月(速報)は、耐久消費財、建設財等が減少したことから、〇・三%減となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で八月〇・三%増の後、九月(速報)は、輸送機械、金属製品等が増加したものの、電気機械、石油・石炭製品等が減少したことから、〇・二%減となった。また、九月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は一〇〇・七と前月を〇・二ポイント上回った。
 主な業種について最近の動きをみると、一般機械では、生産は九月は減少し、在庫は九月は減少した。電気機械では、生産は九月は減少し、在庫は二か月連続で減少した。化学では、生産は九月は減少し、在庫は九月は減少した。
 第三次産業の動向を通商産業省「第三次産業活動指数」(八月調査、季節調整値)でみると、七月〇・三%減の後、八月(速報)は、金融・保険業が減少したものの、運輸・通信業、不動産業等が増加した結果、前月比一・四%増となった。
 農業生産の動向をみると、平成十一年産水稲の全国作況指数(十月十五日現在)は、一〇一の「平年並み」となっている。
 雇用情勢は、残業時間などの増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、八月〇・四六倍の後、九月〇・四七倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、八月〇・八一倍の後、九月〇・八八倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、八月は前年同月比〇・三%減(前年同月差十四万人減)の後、九月は〇・一%増(同八万人増)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、八月前年同月比〇・二%減(季節調整済前月比〇・二%増)の後、九月(速報)は同〇・一%減(同〇・〇%)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比一・二%減)、産業別には製造業では同二・一%減となった。九月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差二万人減の三百十五万人、完全失業率(同)は、八月四・七%の後、九月四・六%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では八月前年同月比四・五%増(季節調整済前月比二・四%増)の後、九月(速報)は同六・八%増(同一・二%増)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比六・七%増)。
 企業の動向をみると、企業収益は、持ち直してきた。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。
 大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(九月調査、季節調整値)でみると、十一年七〜九月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」−「減少」)は、「減少」超幅が縮小した。また、十一年七〜九月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」−「下降」)は「下降」超幅が縮小した。
 また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(九月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」−「減少」)は、十一年七〜九月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」−「低下」)は、「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」−「悪化」)は、十一年七〜九月期は「悪化」超幅が縮小した。
 企業倒産の状況をみると、件数は、春先からやや増加しているものの、信用保証制度の拡充の効果などで前年の水準を下回っている。
 銀行取引停止処分者件数は、九月は九百三十三件で前年同月比一四・五%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、製造業で一四・二%、建設業で一一・六%の減少となった。

3 国際収支
―輸出は、アジア向けを中心に、増加―

 輸出は、アジア向けを中心に、増加している。
 通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で八月一・七%増の後、九月は三・五%増(前年同月比六・二%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器、輸送用機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。
 輸入は、アジアからの輸入が増加基調にあり、緩やかに増加している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で八月九・二%増の後、九月二・一%減(前年同月比一〇・六%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料、製品類(機械機器)等が増加した。同じく地域別にみると、中東、アジア等が増加した。
 通関収支差(季節調整値)は、八月に九千五百五十五億円の黒字の後、九月は一兆一千五百六十億円の黒字となった。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。
 九月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大し、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、六千三百六十六億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、貿易・サービス収支の黒字幅が拡大したものの、所得収支の黒字幅が縮小し、経常移転収支の赤字幅が拡大したため、その黒字幅は縮小し、八千百十七億円となった。投資収支(原数値)は、六千六百七十一億円の黒字となり、資本収支(原数値)は、一千九百六十六億円の黒字となった。
 十月末の外貨準備高は、前月比四億ドル増加して二千七百二十八億ドルとなった。
 外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十月は月初の百五円台から一時百七円台まで下落したが、その後やや上昇し、十一月上旬にかけて百四円台から百六円台で推移した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク十七時時点)は、十月は月初の百十三円台から百十五円台に下落した後、十一月上旬にかけて百九円台まで上昇した。

4 物価
―国内卸売物価は、下げ止まり―

 国内卸売物価は、下げ止まっている。
 十月の国内卸売物価は、化学製品(塩化ビニル樹脂)等が上昇したものの、電力・都市ガス・水道(業務用電力)等が下落したことから、前月比〇・一%の下落(前年同月比〇・八%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで上昇したことから、円ベースでは前月比〇・四%の上昇(前年同月比八・五%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したことから、円ベースでは前月比〇・九%の上昇(前年同月比四・一%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比〇・一%の上昇(前年同月比二・一%の下落)となった。
 企業向けサービス価格は、九月は前年同月比一・〇%の下落(前月比〇・一%の下落)となった。
 商品市況(月末対比)は繊維等は下落したものの、化学等の上昇により十月は上昇した。十月の動きを品目別にみると、毛糸等は下落したものの、塩化ビニール樹脂等が上昇した。
 消費者物価は、安定している。
 全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で八月保合いの後、九月は一般食料工業製品の上昇幅の縮小等の一方、その他工業製品の下落幅の縮小等により保合い(前月比〇・四%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で八月〇・三%の上昇の後、九月は〇・二%の下落(前月比〇・三%の上昇)となった。
 東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で九月保合いの後、十月(中旬速報値)は、一般食料工業製品の上昇幅の縮小等により〇・二%の下落(前月比〇・一%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で九月〇・一%の下落の後、十月(中旬速報値)は〇・九%の下落(前月比保合い)となった。

5 金融財政
―短期金利は、上昇―

 最近の金融情勢をみると、短期金利は、十月から十一月上旬にかけて上昇した。長期金利は、十月は上昇した後、十一月上旬はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、十月は上旬に上昇した後、中旬以降下落し、月末から十一月上旬にかけて大幅に上昇した。M+CDは、十月は前年同月比三・五%増となった。
 短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、十月から十一月上旬にかけて横ばいで推移した。二、三か月物は、十月から十一月上旬にかけて上昇した。
 公社債市場をみると、国債利回りは、十月は上昇した後、十一月上旬はおおむね横ばいで推移した。
 国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、八月は短期は〇・〇〇九%ポイント上昇し、長期は〇・一〇一%ポイント低下したことから、総合では前月比で〇・〇二四%ポイント低下し一・七九五%となった。
 マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、十月(速報)は前年同月比三・五%増となった。また、広義流動性は、十月(速報)は同三・三%増となった。
 企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、十月(速報)は前年同月比五・五%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後一・六%減)となった。十月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が二百億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は六千五百四十億円となった。
 企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。
 株式市場をみると、日経平均株価は、十月は上旬に上昇した後、中旬以降下落し、月末から十一月上旬にかけて大幅に上昇した。

6 海外経済
―欧州、利上げ―

 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九九年四〜六月期前期比年率一・九%増の後、七〜九月期は同四・八%増となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は減少した。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は九月前月差四・一万人増の後、十月は同三一・〇万人増となった。失業率は十月四・一%と七〇年一月以来の低水準を記録した。物価は総じて安定している。九月の消費者物価は前年同月比二・六%の上昇、十月の生産者物価(完成財総合)は同二・七%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準である。十月の長期金利(三十年物国債)は、月末に低下したことを除けば、総じて上昇基調で推移した。株価(ダウ平均)は、上旬に上昇、その後半ばにかけて下落したが、さらにその後上昇し、月初と月末を比較すると上昇した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに改善してきている。フランスでは、景気は緩やかな拡大を続けている。イギリスでは、景気は改善してきている。実質GDPは、ドイツ四〜六月期前期比年率〇・二%増、フランス四〜六月期同二・五%増、イギリス七〜九月期同三・七%増(速報値)となった。鉱工業生産は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランス、イギリスでは増加している(鉱工業生産は、ドイツ九月前月比二・五%減、フランス七・八月同一・五%増、イギリス九月同〇・二%減)。失業率は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ十月一〇・五%、フランス九月一一・一%、イギリス九月四・二%)。物価は、安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ十月前年同月比〇・八%、フランス十月同〇・八%、イギリス九月同一・一%)。欧州中央銀行は、十一月四日、M3増加率の加速などにみられる将来のインフレ圧力を抑制するため、政策金利(主要オペレート)を〇・五%ポイント引き上げ、三・〇%とした。また、同日、イングランド銀行も、政策金利(レポ金利)を〇・二五%ポイント引き上げ、五・五%とした。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。輸出は大幅に増加している。韓国では、景気は急速に回復している。失業率は低下している。
 国際金融市場の十月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)をみると、十月二十九日現在一〇五・四、九月末比〇・三%の減価となっている。内訳をみると、十月二十九日現在、対円では九月末比二・一%減価、対ユーロでは同一・四%増価した。
 国際商品市況の十月の動きをみると、CRB商品先物指数は、月初から下落し、中旬にかけ急上昇したものの、その後は再び下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、概ね二十一〜二十三ドルのレンジ内で上下した。


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天皇誕生日一般参賀について


宮 内 庁


 天皇誕生日一般参賀は、十二月二十三日、皇居で次のとおり行われます。
1 午前の参賀
  天皇陛下が、皇后陛下、皇太子同妃両殿下、秋篠宮同妃両殿下及び紀宮殿下と御一緒におおむね三回長和殿ベランダにお出ましになる予定です。参賀者は、午前九時三十分から同十一時までに、皇居正門(二重橋)から参入し、宮殿東庭の参賀会場を経て、坂下門、桔梗門、大手門、平川門又は北桔橋門から退出することとなります。
  なお、お出ましは、午前十時十五分頃、同十時五十五分頃及び同十一時三十分頃の三回が予定されておりますが、混雑が予想されますので、参賀者は余裕を持ってお越しください。
2 午後の参賀
  当日の午後は、宮殿において天皇誕生日の恒例の祝賀行事が行われますので、天皇陛下始め皇族方のお出ましはなく、宮内庁庁舎前の特設記帳所において記帳又は名刺をお受けします。
  記帳は都道府県名と氏名を記入することになりますが、筆記用具等は記帳所に備え付けてあります。
  参賀者は、午後零時三十分から同三時三十分までに、坂下門から参入し、宮内庁庁舎前の特設記帳所を経て、桔梗門、大手門、平川門又は北桔橋門から退出することとなります。
  退出門は午後四時に閉門しますから、参賀者はその時までに退出されるようお願いします。
  なお、当日は退出門からは入門できませんので、御注意ください。
 皇居東御苑は、天皇誕生日当日は休園となりますが、退出する参賀者は皇居東御苑を通って、大手門、平川門又は北桔橋門から退出することができます。
 参賀当日は非常な混雑が予想されますので、次の点に御注意ください。
(1) 午前の一般参賀の閉門時刻は午前十一時となっていますが、多数の参賀者が参集されると思われますので、早目にお越しください。
(2) 混雑する場合は、参入の際、あらかじめ、午前は正門前、午後は坂下門前で列を作って入門するようになりますが、入門する場合は、列を崩したり、立ち止まったりなどしないでください。
(3) 雑踏による転倒事故が生じやすいので、履物には十分御注意ください。特に、移動コース上には坂道がありますので、ハイヒール、下駄ばきの方は御注意ください。
 危険物を携行する者、旗ざお、大きな荷物等で参賀行事を妨げ、又は他に危害、迷惑等を及ぼすおそれのある物を携行する者、その他参賀行事の運営上支障があると認められる者は、入門をお断りします。
 参賀者は、皇居内においては、次に挙げる行為をしないでください。これに反した場合は退去を求めることがあります。
(1) 立入りを禁じた場所に入ること。
(2) 喫煙所以外での喫煙等火災の危険がある行為をすること。
(3) 施設その他の物を破損し、又は移動すること。
(4) 業として写真又は映画を撮影すること。
(5) 集会又は示威行為をすること。
(6) 貼紙をし、又はビラ類を配布し若しくは散布すること。
(7) その他皇居内の秩序又は風紀を乱す行為等参賀行事運営上支障があると認められる行為をすること。
7 その他
(1) 荒天等の場合は、お出ましが中止されることがあります。
(2) 混雑や危険を防止するため、参入門の外で携帯品をお預かりすることがあります。
(3) 駐車場の用意はありませんので、御注意願います。


 十二月の気象


 十二月は冬の入り口です。月初めは移動性高気圧に覆われる日がありますが、月半ばごろからは、冬型の気圧配置が現れるようになって北西の季節風の吹く日が多くなり、日ごとに寒くなります。冬の訪れを告げる初雪、初霜、初氷などの便りが聞かれ、暦の上では、七日ごろが「大雪」、二十二日ごろが「冬至」です。
◇冬型の気圧配置
 冬型を代表する気圧配置は、西高東低ともいわれます。このような気圧配置になると冷たく乾いた北西の季節風が日本付近で吹き、暖かい日本海を渡るとき、日本海から蒸発した水蒸気をたっぷり吸い込んで湿り、日本の脊梁山脈にぶつかって日本海側に雪を降らせます。このため、冬型のときは日本海側が雪、太平洋側は晴れの対照的な天気となります。
◇年末寒波と冬山登山
 年末に低気圧が発達しながら日本付近を通ったあと、冬型の気圧配置が非常に強まって強い季節風が吹き、日本海側を中心に大雪が降る大荒れの天気となることがあります。これは、よく年末寒波と呼ばれることがありますが、クリスマスの時期に近いことからクリスマス寒波とも呼ばれます。
 年末寒波に襲われると、日本の冬山は、悪天候の連続、気象の急変、大雪、なだれなど厳しい自然条件になることが多く、天候の急変が直接遭難事故に結びつくことがよくあります。冬山登山へは、必ず経験豊かなベテランと一緒に出かけると同時に、テレビ・ラジオなどの天気予報や最寄りの気象台への問い合わせにより、最新の気象情報を入手し、無理のない計画を立てることが重要です。
(気象庁)



    <12月15日号の主な予定>

 ▽警察白書のあらまし…………………警 察 庁 

 ▽毎月勤労統計調査(八月分)………労 働 省 

 ▽労働力調査(九月)…………………総 務 庁 

 ▽新年一般参賀について………………宮 内 庁 




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