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APEC首脳会議後における小泉総理大臣記者会見

平成13年10月21日

冒頭発言

 今回のAPECの会合は、経済問題だけでなく、テロ以来のテロと対決する政治問題、実に有意義な会合だったと思います。お互い文化も宗教も生活も違う国が集まって、テロに対しては毅然として立ち向かわなければならないと。このテロとの闘いは米国だけではない、全世界の問題だという認識を共有して、お互いテロに対しては断固として立ち向かっていく、テロ撲滅に向かって、テロ抑止に向かって協力していこうという、テロ発生後の一番大勢の国の首脳が集まった会合ではないかと。

 普通、APECと言いますと、経済協力、経済が主ですが、今回ほど政治的意味合いの大きかったAPECの会合はなかったんではないでしょうか。実に、率直な各国首脳との意見交換ができて、有意義だったと思います。その間、私は韓国の金大中大統領、オーストラリアのハワード首相、アメリカのブッシュ大統領、シンガポールのゴー・チョクトン首相、更にロシアのプーチン大統領、ペルーのトレド大統領、そして中国の江沢民首席と、二国間の会談もすることができまして、これまた率直に意見交換ができて、お互いの友好関係を確認し、そしてテロと毅然として対決していこうという確認をし合った。私に取りましても、寸暇を惜しんでの、会議の合間を縫っての各国との首脳会談ではございましたけれども、たいへん実りの多い、日本にとっても、それぞれの両国にとっても、また世界にとってもいい会談ができたと思っております。

 特に世界経済については、テロの影響をそれぞれの国は受けていますから、経済の安定をもたらすために、それぞれの国が改革を目指して成長の軌道に乗せていこうということでありますが、日本としても、私は政権担当以来、構造改革なくして成長なしということで経済の持続的な発展を目指しているということを説明しました。その中で、一時的なプラス成長を目指すということだけでなく、今、日本、我々が一番苦心しているのは、民事主導の持続的な成長軌道に乗せることだと。

 たとえ一時期低成長でも、将来の持続的発展のための改革をしなければならないと。そのために、私はプラス成長であろうが、低成長だろうが、断固として我が国国内の改革の手は緩めないと、そういうことに対して理解を求め、大方の理解を得られたと思っております。

 日本の経済の回復というのは、APEC諸国にも非常に大きな意味があると。世界1位のアメリカ、世界2位の経済力を持っているこの両国がともに経済発展するということは、APECの諸国にとっても、世界にとっても必要だということで、私は日本の立場、日本が改革の手を緩めない、そして持続的な経済成長へのそれぞれの対策について理解が得られたと思っております。

 また、WTOに関しましても、中国の加盟が既に決まっております。これを歓迎し、新ラウンド立ち上げに協力していこうということでも一致しました。

 また、これからのAPECの将来でありますが、今後グローバル化した世界経済、グローバリゼーションとニューエコノミーに、どのように対処していくか、お互い経済の安定というのは、政治の安定にもつながります。新しい変化にどうやって各国が対応していくかということについても、お互い意見交換しながら情報交換し、経済協力の過程で発展していこうということでありますので、21世紀初頭、初めてのAPECの会合でありますが、今回上海において中国側の見事な会議の設営振り、会議の運営、そして各国の首脳に対しての温かい歓迎振り、実にすばらしいものがあったと思います。

 そういう背景があったからこそ、テロ発生後も各国がお互い協調して、今後のAPECの重要性を認識して、更に新たな発展に向けて確認し合うことができて、経済的な意味においても、政治的な意味合いにおきましても、私はすばらしい会合であったと思います。 それと、テロの問題については、皆さん一番関心があると思いますので付け加えますが、ブッシュ大統領との会談については、私は3つの点を主に指摘しました。それは、日本としてはこのテロに対して、アメリカ始め各国と協力して、できる限りの支援協力体制を取りたいと、アメリカがテロに対して毅然として立ち向かっていることを強く支持し、またアフガン攻撃に対しても、強く支持を表明しております。そういう中で、ブッシュ大統領との私との会談におきましても、アフガンを攻撃しているけれども、これはアフガン国民を攻撃しているものではない。ウサマ・ビンラディン、テロリストグループ、その拠点、それを支援している政権を攻撃しているのであって、アフガニスタン国そのもの、アフガニスタン国民を攻撃しているんではないという点を、お互い再認識しました。

 今回のアフガンに対しては、私は3つの点があると言ったんです。まず、軍事戦略、政治戦略、その後の復興戦略、これを今から考えておくべきだと。そういう中で、今、アフガンのテロリスト、あるいはテロリストの組織を壊滅させるために、どのような対応が必要かということを考える必要があると。日本としては、このアフガンにおけるテロリストの組織、拠点、この軍事戦略に参加することはできない。また、参加しない。

 今後の政治戦略を考えると、タリバン政権後、テロリストを擁護しているタリバン政権が崩壊した後、どのような安定した政権を取るか今から考えておくべきだと。アフガン国民のためにどういう政権が望ましいか。

 もう一つ、その政権がアフガン国民のために政治の安定はもとより、経済の安定を目指さなければならない。復興をどのように図っていくか、復興戦略、この点について、政治戦略と復興戦略については、日本はできるだけの協力をしたいと。

 日本は、アフガニスタンの周辺国ではありません。国境を接していません。勿論、アフガンに対する領土的野心も全然持っておりません。でありますけれども、このアフガンの安定というのは、テロ組織撲滅のためにも、また難民支援のためにも日本の持てる力、できるだけの支援協力体制を取っていきたいと。そういう点についても、今後連絡を密に相談していきたいということをブッシュ大統領にも話し、ブッシュ大統領も同感だと、これからのアフガンの復興、安定を考えながら、テロ対策を講じていかなければならないと、私は賛同を得られたと思っております。

 以上であります。

【質疑応答】

【記者】今回のAPECで、反テロの声明が発表されたことの意義、それと総理もおっしゃいましたが、APECが政治色を強めたこと、APECがある種の転換点を迎えているものかとも思えますけれども、この点ついて総理はどのようにお考えなのかお聞かせください。

【小泉総理】APECが転換点を求めたというか、そういう表現よりも、9月11日のテロ以来、世界は変わったと思います。意識が変わった。これはひとごとではないと、プーチン大統領も指摘されておりましたけれども、テロというのは、前から、もう何年前から起こっていたんです。でも、世界がそれほど注目しなかった。あるテロは、その国の反政府ゲリラと結託していた。
 そして、今回、ニューヨークとワシントン、あの同時多発テロによって初めて、これほどテロが組織的、計画的、軍事的に深い背景の下にやっているか。これはアメリカだけの攻撃ではないということを、9月11日以来世界が認識したんです。一人では立ち向かえない。一国だけでは立ち向かえない。だからこそ、アメリカもあのテロというものを、アメリカだけの攻撃ではない。世界人類に対する攻撃だということで、ロシアも中国も、イスラムの国々も、この卑劣なテロ行為は許せないということで立ち上がったと。そういう意味において転換点と言うよりは、テロに対する意識が9月11日から世界が変わったと言っても過言ではないです。
 そういう意味で、今回のAPECも経済協力が中心ではありましたけれども、このテロに対する対処の仕方によっては、経済にも影響が出てくる。現にテロ発生以来、経済に大きく影響が出てきているわけです。このテロに立ち向かうということは、政治的意味合いが強いわけですが、同時に経済にも非常に影響が大きいということで、これからのAPECも早くテロを解決すればいいですよ。そうでなかった場合は、やはりテロ問題というのは、経済にも大きく影響を与えていくものでありますから、そういう面におきまして、今までとは、随分違った意味合いを持ったAPECになったなと感じております。

【記者】2つお伺いしますが、1つは、アフガン復興への貢献ということをしきりにおっしゃられますけれども、総理としては、これを非常に日本として主体的に行っていこうと、つまり主導的に行っていこうと思っていらっしゃるのかという点と、それから、今度、森さんがインドに行かれますけれども、その周辺国に対する外交努力として、日本は独自の役割をどのようなことで果たせるというふうに考えていらっしゃるのか、この2つをお聞きします。

【小泉総理】これは、日本はアフガニスタンと国境を接していません。しかし、人道的支援、難民支援、あるいはこれからのテロの温床の地だったアフガニスタンに対する協力ということは、重要だと思っておりますので、あえてできるだけの協力をしようということを、私はブッシュ大統領にも、プーチン大統領にも表明したわけでありますが、その際には、やはり周辺国の意見を聞かないといけない。そういう意見を聞いた中で、主体的に日本がどう支援協力体制を取るか、相手が望まないと仕方ありません。押し付けがましいことはしたくない。どのようなことを望んでいるか、あるいは国連が関与することになってくれば、国際社会、国連がどのような支援を日本に要請してくるか。周辺国が、難民の問題でも大きな影響を抱えております。周辺国ではない日本が、どのような支援協力ができるか、よく意見を聞きながら日本として何をすることが必要か、どういうことが相手が望んでいるのかということを考えながら主体的に支援協力体制を取っていきたいと思います。

【記者】先ほど行われました日露首脳会談についてお尋ねしますが、今回の会談で北方領土問題については、どのような進展があったんでしょうか。
 もう一つ、次回は、日本の方からロシアへ行かれる番だと思うんですけれども、総理のロシア訪問の時期については、現時点ではどのようにお考えですか。

【小泉総理】今日の日露会談の中では、私のロシア訪問の話は出ておりません。副首相が12月に日本に来られますから、日本としても歓迎したいと。
 そして、領土問題につきましては、森路線を継承すると、お互いに意見の立場、相違はあると、そういう中で、四島の帰属の問題、この帰属の問題を解決しない限り、話し合わないという立場では進みませんから、お互いの立場、相違を認識しながらも、どういう解決方法があるか。どのように日露の平和条約締結に向かっていい方法があるかということを、今後事務当局で詰めさせようと、そういう話し合いを積み重ねていこうという話し合いをし、お互いその点で合意したわけであります。
 今後、12月には副首相も東京に見えますし、それまでにも事務当局同士の話し合いが始まります。その中で、北方四島の問題、これを一歩一歩平和条約締結に向けてどのような努力をすべきか、どのような話し合いがなされるべきか、よく事務当局間で詰めて、そして政治経済、あるいは首脳同士の交流、意見交換、その努力を積み重ねていきたいと思います。

【記者】今回のテロ声明ですけれども、アメリカの軍事行動についての言及が一切ないんですけれども、今回首脳会談のレベルの中では、アメリカの行動に対して慎重な意見も出されたようですけれども、このことがアメリカの対応、そして日本の対応に影響を与えることはないのか、今後のアフガン復興にあるいは影響を与えることはないのか、その点はいかがお考えでしょう。

【小泉総理】アメリカのアフガンに対する軍事行動については、いろいろ意見が出ました。その中で、できるだけ無辜の市民に犠牲を出さないような配慮が必要だと。アメリカもできるだけそのような配慮をしているという話でありまして、これについてはテロに協力して立ち向かっていこうという中での話であります。
 どういう具体的な作戦、戦略がいいかというのは、今私がここで相手国の了解を得ないで話していいかというのは、ちょっと外交関係もありますので差し控えさせていただきたい。

【記者】今度テロを、どこで起きても、だれがやったものでも認めないと定義したことによって、例えば中国が新疆ウィグル辺りの独立派をどう弾圧しても、なかなか文句を言いにくくなった。違いますでしょうか。これについてのお考えを聞かせていただきたいというのが1つと。
 第2に、残念ながら世界のメディアを見ていますと、日本の首相、小泉さんのお名前はどの見出しにも載っていない。これについてどうお考えになるか、いろいろ御予定の都合はあったでしょうが、御意見を聞かせていただきたいと思います。この2つです。

【小泉総理】私の名前が出るか出ないかというのは、大した問題ではない。テロに対しては、どの国も毅然として対決していかなければならないということでありますので、私はテロを正当化する理由はないと思います。
 今回のAPECの会合でも、そういう話が出ましたね。今まではテロ行為が起こると、その国の政府に対する悪政が理由だとか、あるいは専制政治が理由だとか、ある面においては、正当づけるような意見も見られたけれども、今回はそうではないのがわかったと、テロに対して正当づける理由は一切ないと。いかなるテロも許さないという認識を持てたと思います。具体的な今の質問の話は、それは話題には上りませんでした。