日露首脳会談後の共同記者会見(要旨)
平成15年1月10日
【プーチン大統領】 尊敬する皆様、自分は日本の総理と代表団の方々をモスクワのクレムリンにお迎えし非常に嬉しく思う。本会談は我々両国関係の発展のために特別の意義を有している。ロシアと日本は、国際社会で非常に大きな役割を果たしている国である。この意味で、我々は、最高レベルでの恒常的対話を行い、重要な地域問題及びグローバルな問題についての立場を照らし合わせることが不可欠と考えている。協議は建設的に行われ、今後数年間及び長期的展望に立った露日協力の基本的方向性を定めることができた。 我々は露日関係発展に関する行動計画の採択に関する共同声明の署名をも重視している。この文書は露日協力のほぼすべての分野を網羅しており、将来に向けられたものであるとともに、二国関係を着実に、体系的に強化していくことを目指す共通の方針を示している。自分は、行動計画に盛り込まれた課題の実現は、露日関係が新たな水準へ達することを可能にすると確信する。協議の中で、我々は、両国の、国際社会が直面しているグローバルな諸問題の解決を目指す姿勢を確認した。その内には、国際テロリズム対策、核軍縮及び核不拡散体制の維持、国連の役割の増大が含まれている。 自分は小泉総理と、両国の経済面での協力の発展の展望につき詳細に議論した。そして貿易経済関係の鍵となる諸分野に関する作業を活発化させる可能性につき分析するよう、各々の諸省庁に指示を与えるという決定が行われた。まず話し合われたのは、投資分野での協力の発展、東シベリア及び極東のエネルギー資源の開発及び輸送についてであった。テレコミュニケーション・通信分野を筆頭に、ハイテク分野においても興味深いプロジェクトが少なくない。 我々は、地域間交流の発展も重視している。 従来どおり、人文分野における協力の発展にも大きな注意を払っている。この関連で、我々が2003年のロシアにおける日本文化フェスティバルの実施を積極的に支持したことを指摘したい。 無論、特にテタテ会談において、我々は平和条約締結の問題を詳細に話し合った。我々は改めて、対話と、合意達成の方途の模索とを着実に継続することの重要性を確認した。その解決は相互に受け入れ可能なもので、且つ両国とその国民の利益をあらゆる面から考慮したものでなければならない。 我々は今後も活発な政治対話、軍事分野における対話を発展させていく所存であり、間もなく石破防衛庁長官が訪露される。両国外務省間の作業も継続される。 結びに、本日の会談は、極めてうちとけた雰囲気の中で、非常に良好な水準の話し合いが行われたことを強調したい。そして、自分と総理は、今晩また、非公式な雰囲気で意見交換を続けることとなった。代表団の方々には、明日はモスクワ及びハバロフスク訪問とまだ様々な日程が残されている。御訪問が皆様にとり有益で充実したものであり、且つ興味深いものとなることを希望したい。
今回、私は、日露関係に新たな息吹を吹き込み、本年を日露関係の新たな飛躍の年にしたい、そういう強い意欲をもってロシアを訪問した。本日、プーチン大統領とうち解けた雰囲気の中で幅広い問題について話し合い、日露行動計画に合意した。 日露行動計画は、両国関係をあらゆる分野にわたって発展させていく上での共通の指針となるものであり、今後の日露関係の「海図」となるものである。 第一に、平和条約締結問題については、これまでに達成された諸合意に基づき、四島の帰属の問題を解決し、平和条約を可能な限り早期に締結することにより、両国関係を完全に正常化すべきとの決意を確認した。 今回の首脳会談を契機に、平和条約締結に向けた交渉を首脳レベルを含め加速させることで意見が一致した。 私は、困難な過去の遺産であり日露間の最大の懸案であるこの問題を解決すべく、全力で取り組んでいく考えである。 第2に、プーチン大統領との間で、北朝鮮、イラクといった国際社会の重要な問題について話し合った。日本とロシアの間で意見が一致する問題が多いことを実感した。国際舞台において、今後とも協力を強化していくことを確認した。 特に、北朝鮮に関しては、両国は、本日北朝鮮がNPTからの脱退を表明したことは極めて遺憾であり、深刻な懸念を有していること、このような決定の速やかな撤回を求めていくこと、及び本問題の平和的解決に向けて努力することを確認した。 また、日朝平壌宣言を基礎として拉致問題及び安全保障上の問題を含む日朝間の諸懸案が解決されることが、地域の緊張緩和のために重要であることを確認した。 イラクに対しては、無条件・無制限の査察を継続し、関連する国連安全保障理事会の決議を遵守するよう働きかけることで意見が一致した。 第3に、経済分野の協力について話し合い、特に、極東・シベリア地域の資源開発及びパイプラインの協力を発展させていくことで一致した。 私は、5月末には建都300周年を迎えるサンクト・ペテルブルクを訪問する予定である。300周年にあわせ、「ロシアにおける日本文化フェスティバル2003」としてロシア各地で日本を紹介する文化行事が行われる予定である。本年が、日露間の協力と相互理解の促進にとって、飛躍の年となることを期待する。 最後に、私達を温かく迎えて頂いたプーチン大統領、それにロシア国民の皆様に対して、心から御礼を申し上げる。
日朝国交正常化交渉におけるロシアの参与については、我々はこのプロセスが前向きかつ活発に前進するために、我々の及ぶ限りのことは全てする用意がある。小泉総理とは常にコンタクトを保っており、また北朝鮮側ともコンタクトを保っている。 そして、この関連で、勇敢で正しくかつ効果的な小泉総理の決断、つまり最近の訪朝について指摘しないわけにはいかない。自分の考えでは、小泉総理の訪朝は、日本が平和とこの地域における関係の発展を求めていることをよく表す効果的なジェスチャーであった。 日朝二国間関係のため、北朝鮮との間で話題にすら上らなかったが、同時に日本にとり最もセンシティブな問題の解決に向けても、総理の訪朝は良いベースを築いたと確信している。朝鮮半島における諸問題は複雑であるが、自分には、話し合いを通じてその解決が可能であると思われる。
北朝鮮のNPT脱退宣告についてはともに深く懸念し、北朝鮮の今般の決定を断念するようはたらきかけるべきとの点でも一致している。同時に、本件の平和的解決が重要であり、米、韓とのみならず、ロシア、中国、その他各国を含めた国際社会全体を通じ、あらゆる機会をとらえ、はたらきかける。
【小泉総理】 プーチン大統領の認識を共有する。行動計画は、平和条約の問題を含め、幅広い問題を包括しており、互いに共通の認識を示した点が重要である。行動計画が経済協力分野に及ぼす影響については、具体的には極東地域におけるエネルギー協力が挙げられるが、極東エネルギー問題のみならず、また、日露二国間関係にとどまらずに国際的問題にも影響している。
【プーチン大統領】 国民の利益ということに関しては、次のことを申し上げたい。一般に、国のインテリ層や政治エリートが何らかの問題の解決をすすめたいと考える時、国民の利益ということに言及するのが常である。しかし、残念ながらその際に、常に、語るところの国民の真の利益がなにであるかを解明する労を取るわけではない。 自分は日露行動計画において立てた諸課題の実施、すなわち、互いにとりセンシティブな問題も含め、すべての分野において協力を進めることが双方の国民の利益にかなうと深く確信している。もちろん、この目標は相互に敬意をもって接することなくしては達成できない。ロシア側はまさに、このような考え方で、平和条約締結問題を含め日本との関係を進めていく所存である。 本日の少人数会合で、小泉総理はきわめて生き生きと、興味深く日露関係の歴史について内容の濃いお話をされた。自分は露日二国間関係には良き展望と明るい将来があると確信している。もちろん、私たちが両国の利益を考慮に入れつつ決定を行うときにはじめて、それに達することができる。そして、これまでの合意すべての総体を考慮に入れずに公正な解決はできないという点にも同意する。 しかし、その際、その島々がどのような出来事、そのような決定の結果としてロシアの管轄下におかれるに至ったかという点も考慮に入れる必要がある。小泉総理は、これまでに達成された全ての合意の総体を今後の作業のベースとすべきと主張された。そして我々はこの日本側の提案に同意した。我々は、日露関係を(否定的に)刺激するようなあらゆる問題がなくなるよう努力していく。 この発言は、即時に協力から経済的利益を得るための一時的なものではなく、逆に、長期的展望のもとに関係を構築することを目指している。なぜならば、それが両国の利益に合致すると完全に確信しているからである。そしてこの問題が双方にとりセンシティブであることを考慮すれば、唯一の正しい解決の道となるのは、本日我々が署名し、また互いに関心を有するすべての分野における善隣友好的協力のために不可欠な諸条件を創出すべき行動計画の実行であろう。 【小泉総理】 領土問題については、今回の行動計画で、領土問題を解決して平和条約を締結してゆくという強い意思を確認した。会談においても、日露二国間関係においては、二国間で協力できる分野のみならず、国際社会にあって協力できる分野、しなければならない分野もまたたくさんあるということも確認された。 しかし、現実の日露関係は、経済関係一つとっても日露関係は実に低い。日本と中国は国交正常化して30年経つが、30年前の日中貿易とソ連時代の日ソ貿易はほぼ同額であった。現在、日中の貿易額は日露のそれの20倍である。ロシアの潜在力を考えて、日露関係がこんなに低いわけがない。政府間の信頼関係のみならず、両国民の信頼関係が大きく経済関係にも影響してくる。その信頼関係を醸成させていく、この一番の問題が領土問題であり、平和条約締結の問題である。 また、信頼醸成のためには他にも分野はたくさんあり、経済関係、政治関係、文化関係、スポーツ関係、芸術関係あらゆる分野において信頼関係を醸成させ、領土問題解決のための基盤を強化させていく、そのためにお互い良い方向に向かっていきたいと思う。
【プーチン大統領】 まったく同感である。
【小泉総理】 イラクの問題については、まずイラクが国連安保理の決議を無条件・無制限に受け入れるべきであるというのが一貫した日本の立場である。そして、仮にイラク側がさらに重大な違反担った場合には、安保理が結束し協調して解決する必要があるというのが日本の基本的立場である。仮に攻撃があった場合にどうなるかという問題については、まだ攻撃のない状況でとやかくいうことはできないが、将来の状況については、日本は武力行使はしない。日本としては、アメリカをはじめ国際社会の状況を見ながら、主体的にそのときに判断したいと思う。 |