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第164回国会における小泉内閣総理大臣施政方針演説


平成18年1月20日


(はじめに)
 内閣総理大臣に就任して4年9か月、私は、日本を再生し、自信と誇りに満ちた社会を築くため、「改革なくして成長なし」、この一貫した方針の下、構造改革に全力で取り組んでまいりました。
 この間、改革を具体化しようとすると、逆に「成長なくして改革はできない」、「不良債権処理を進めれば経済が悪化する」、「財政出動なくして景気は回復しない」という批判が噴出しました。道路公団民営化の考えを明らかにした時は「そんなことはできるはずがない」、郵政民営化に至っては「暴論」とまで言われました。
 このような批判が相次ぐ中、揺らぐことなく改革の方針を貫いてきた結果、日本経済は、不良債権の処理目標を達成し、政府の財政出動に頼ることなく、民間主導の景気回復の道を歩んでいます。道路公団の民営化の際には、初めて高速道路料金の値下げを実施しました。一度国会で否決された郵政民営化法案は、「正論」であるとの国民の審判により成立を見ることになりました。
 改革を進める際には、総論賛成・各論反対に直面し、現状を維持したい勢力との摩擦・対立が起こります。政治は、一部の利益を優先するものであってはならず、国民全体の利益を目指すものでなければなりません。郵政民営化の是非を問うた先の総選挙における国民の審判は、これを明確に示しました。これまで着実に改革を進めることができたのは、多くの国民の理解と支持があったからこそであります。
 今日、日本社会には、新しい時代に挑戦する意欲と「やればできる」という自信が芽生え、改革の芽が大きな木に育ちつつあります。ここで改革の手を緩めてはなりません。私は、自由民主党及び公明党による連立政権の安定した基盤に立って、郵政民営化の実現を弾みに改革を続行し、簡素で効率的な政府を実現します。


(簡素で効率的な政府の実現)
 政府の規模を大胆に縮減するには、国・地方を通じた公務員の総人件費削減、政府系金融機関や独立行政法人などの改革、政府の資産・債務管理の見直し、特別会計の整理合理化は避けて通れません。これらの改革の基本方針を定めた行政改革推進法案を今国会に提出し、成立を期します。
 公務員の総人件費を削減いたします。現在69万人の国家公務員について、今後5年間で5パーセント以上減らします。横並び・年功序列の給与体系を抜本的に改めるとともに、給与水準も民間の給与実態に合わせたものとなるよう見直します。
 政府系金融機関の改革については、民業補完の原則を徹底します。残すべき機能は、中小零細企業や個人の資金調達支援、重要な海外資源の獲得や国際競争力の確保に不可欠な金融、円借款の三分野に限定し、8つの機関の統廃合や完全民営化を実現いたします。
 庁舎・宿舎などの国有財産を有効に活用するため、民間への売却や貸付けを進めてまいります。
 道路特定財源については、現行の税率を維持しつつ、一般財源化を前提に、見直しを行います。
 公共的な仕事や公益の追求は、国だからできて民間では難しいという、これまでの考え方から脱却し、役所より民間に任せた方が効果的な分野については、「官から民へ」の流れを加速します。
 官民の競争を通じて優れたサービスを提供する「市場化テスト」を実施したところ、ハローワークの就職支援、社会保険庁の国民年金保険料の収納事業、刑務所の周辺警備の三分野で、120社を超える入札がありました。本格的導入を内容とする法案を提出し、住民票の写しや戸籍謄本の窓口業務、統計調査の業務など対象の拡大を図ります。
 公益法人制度については、明治以来100年ぶりに抜本的な見直しを行い、役所の許可を廃止し登記による設立に改めることなどを内容とする法案を国会に提出します。
 「国から地方へ」、この方針の下、地方の意見を真摯に受け止め、3兆円の税源移譲、地方交付税の見直し、4兆7000億円の補助金改革を実施いたします。
 3200あった市町村が、今年度末には1800になります。これに伴い、市町村の議員数は1万8000人減ります。引き続き市町村合併を推進するとともに、北海道が道州制に向けた先行的取組となるよう支援いたします。
 来年度予算においては、一般歳出の水準を今年度以下にするとともに、新規国債発行額を削減し30兆円以下に抑えました。景気対策の一環として導入した定率減税は、経済情勢を踏まえ廃止します。本年6月を目途に、歳出・歳入を一体とした財政構造改革の方向についての選択肢及び工程を明らかにし、改革路線を揺るぎないものといたします。公正で活力ある社会にふさわしい税制の実現に向け、国民的な議論を深めながら、消費税、所得税、法人税、資産税など税体系全体にわたって、あらゆる角度から見直しを行ってまいります。


(経済の活性化)
 主要銀行の不良債権残高はこの3年半で20兆円減少し、金融システムの安定化が実現した今日、「貯蓄から投資へ」の流れを進め、国民が多様な金融商品やサービスを安心して利用できるよう、法制度を整備します。
 どの町も村も、独自の魅力を持っているはずです。地域や街の潜在力を引き出し、日本あるいは世界の中で一流の田舎や都市になろうとする意欲を支援してまいります。
 既に700件を超える構造改革特区が誕生しました。特区第1号に認定された姫路市では、廃棄されたタイヤを再資源化する事業に対し役所の許可を不要としました。今や姫路市は、環境・リサイクル産業の集積地に変貌しつつあります。このほか幼稚園と保育所の一体的運用など、53の規制緩和の特例を全国に拡大しました。
 3年前には500万人だった外国人旅行者は、昨年、「愛・地球博」の開催や韓国・台湾に対する査証免除措置などにより、700万人に迫る勢いです。ビジット・ジャパン・キャンペーンなどにより、2010年までに外国人旅行者を1000万人にする目標の達成を目指します。
 外国からの日本への投資を5年間で倍増させる計画は、着実に進展しています。北海道でスキー観光客向けのリゾート事業を始めたオーストラリアの企業、デジタル家電の研究開発拠点を設けたアメリカ企業など、外国からの投資は、地域の活性化や雇用の拡大につながるとともに技術に新たな刺激を与え、我が国にとって歓迎すべきものであります。更に大きな目標を掲げて、一層の投資促進を図ってまいります。
 中心市街地の空洞化に歯止めをかけ、高齢者でも暮らしやすい、にぎわいのある街を再構築してまいります。
 新産業の創造には、高い技術力によりモノづくり基盤を支えている中小企業の存在が欠かせません。東京墨田区にある従業員6名の町工場は、針先をミクロン単位まで細くすることで痛くない注射針を開発するなど、「不可能を可能にするモノづくりの駆け込み寺」と呼ばれています。独創的な技術を持っている人材の確保・育成、新事業への挑戦支援など、やる気のある中小企業を応援してまいります。また、国際競争力の強化、生産性の向上、地域経済の活性化などを目指した新たな成長戦略の在り方を夏までに示します。
 世界的な日本食ブームやアジア諸国の生活水準の向上を背景に、リンゴやイチゴ、長芋、コシヒカリ、アワビなど日本の農水産物が海外で高級品として売れています。北海道と青森県のホタテ加工業者は、5年以上かけEUの厳しい衛生管理審査に合格して輸出を始め、昨今はアメリカ、韓国へ販路を拡大しています。意欲と能力のある経営に支援を重点化し、「攻めの農政」を進めます。
 市場における公正な競争を確保するため、改正された独占禁止法に基づき、違反行為には厳正に対処します。


(暮らしの安心の確保)
 社会保障制度を将来にわたり揺るぎないものとしていくため、給付と負担の在り方などを含め制度全般を見直し、年金、介護に続き、本年は医療制度の改革を進めます。
 国民皆保険を堅持しつつ、患者本位で持続可能な医療制度となるよう、予防を重視し、医療費の適正化に取り組むとともに、高齢者の患者負担の見直しや診療報酬の引下げを行います。75歳以上の高齢者の医療費を世代間で公平に負担する新たな制度の創設、都道府県単位を軸とした保険者の再編・統合を目指します。
 年金制度に対する国民の信頼を確保するため、国民年金の未納・未加入対策を強力に推進するとともに、社会保険庁については、年金と医療保険の運営を分離し、それぞれ新たな組織を設置するなど解体的出直しを行います。また、厚生年金と共済年金の一元化に取り組みます。
 昨年は、出生数が110万人を下回り、戦後初めて人口が減少すると見込まれています。少子化の流れを変えなくてはなりません。就任時に表明したとおり、昨年度末までに保育所の受入児童を15万人増やしました。それでもまだ足りない現状を踏まえ、引き続き「待機児童ゼロ作戦」を推進いたします。昨年度末には、小学生が親の帰宅までの間、安心して過ごせる場としての放課後児童クラブを、目標どおり1万5000か所整備しました。さらに、経験豊かな退職者や地域の力を借りて、多様な放課後児童対策を展開いたします。子育て期の経済的負担の軽減を図るために児童手当を拡充するとともに、育児休業制度の普及など企業や地域のきめ細かな子育て支援を進め、子育ての喜びを感じながら働き続けることができる環境を整備してまいります。
 本年度、審議会等における女性委員の割合を3割にするという目標を達成しました。2020年までに社会のあらゆる分野において、指導的立場に女性が占める割合が3割となることを目指し、いったん家庭に入った女性の再就職を支援するなど、昨年末に改めて策定した男女共同参画基本計画を推進します。
 多くの健康被害が発生しているアスベスト問題に迅速に対処するため、既存の制度では補償を受けられない被害者を救済するための法案を提出するとともに、アスベストの早期かつ安全な除去など被害の拡大防止に取り組みます。
 鳥インフルエンザの脅威に対しては、資金協力や専門家派遣などの国際支援を行うとともに、治療薬の備蓄、ワクチンの開発と供給を進めてまいります。
 昨年12月、科学的知見を踏まえ、アメリカ産牛肉の輸入を再開しました。消費者の視点に立って、食の安全と安心を確保してまいります。
 今年の春に日本司法支援センターを設立し、秋には全国で業務を開始します。どこでも気軽に法律相談をできるよう、国民に身近で頼りがいのある司法を実現いたします。


(国民の安全の確保)
 「世界一安全な国、日本」の復活は、今後も内閣の最重要課題であります。
 一昨年4月に2000か所あった空き交番は、1年間で700か所解消しました。平成19年春までの3年間に「空き交番」をゼロにします。犯罪を起こした者が再び罪を犯す例が後を絶ちません。再犯防止に向け、情報の共有化など関係機関のより緊密な協力体制を構築してまいります。
 増加している外国人犯罪に対処するため入国時に指紋による審査を導入するとともに、警察と入国管理当局の連携を強化して、25万人と推定される不法滞在者を平成20年までに半減することを目指します。
 テロの未然防止を図るため、情報の収集・分析、重要施設や公共交通機関の警戒警備等の対策を徹底いたします。
 新宿歌舞伎町を始めとする繁華街や一般の住宅地においては、地域住民による防犯活動が活発化しており、2年前には3000だった防犯ボランティア団体が1万4000に増え、80万人が自主的にパトロールを行っています。小さな子供たちを犯罪から守るため、警察や学校だけでなく、PTAや地域住民とも連携して、登下校時の警戒強化、不審者情報の共有などを進めます。
 昨年末に決定された基本計画により、犯罪被害者や遺族が一日も早く立ち直り安心して生活できるよう支援いたします。
 一時期1万7000人に及んだ交通事故死者数は、昨年、半世紀ぶりに6000人台に下がりました。5000人以下にすることを目指して交通安全対策を進めるとともに、公共輸送についても、安全管理体制の構築を推進します。
 先月に入ってから、寒波や大雪により、各地で被害が発生しています。民家の雪下ろしや雪崩の警戒強化、交通や電力の確保、食料品や石油製品の安定供給などの生活支援に万全を期してまいります。
 耐震強度の偽装事件は、住まいという生活の基盤への信頼を土台から崩すものであります。マンションの居住者及び周辺住民の安全を最優先に、居住の安定確保に努めるとともに、国民の不安を解消するため、実態を把握し、書類の偽造を見抜けなかった検査制度を点検し、再発防止と耐震化の促進に全力を挙げます。


(「人間力」の向上と発揮)
 今後の日本を支えていくのは「人」であります。「物で栄えて心で滅ぶ」ことのないよう、新しい時代を切り拓く心豊かでたくましい人材を育てていかなければなりません。
 教育基本法については、国民的な議論を踏まえ、速やかな改正を目指し、精力的に取り組んでまいります。
 「社会の中で子供を健やかに育てる」との認識に立ち、学校だけでなく、家庭や地域と連携しながら、体験活動や触れ合い交流を通じて命の尊さ、社会貢献の大切さを教え、道徳や規範意識を身に付けることを促します。
 豊かな心と健やかな体の育成に、健全な食生活は欠かせません。食育推進基本計画を策定し、食生活の改善に加え、我が国の食文化の普及、地元の食材を使った給食の推進など、食育を国民運動として展開してまいります。
 教育現場の創意工夫を促すとともに、習熟度別の指導、学校の外部評価、保護者や地域住民の学校運営への参画、学校選択制の普及を通じて、教育の質の向上を図ります。
 国民に夢と感動を与えるトップレベルのスポーツ選手を育成するとともに、国民が生涯を通じてスポーツに親しめる環境を整備いたします。
 定職に就かず臨時的に仕事に従事しているフリーターや、学業・仕事・職業訓練いずれにも就かないニートと呼ばれる人が増加しています。民間の力を活用して研修を全国で実施するなど、若者の就業を支援します。
 文化・芸術は、国の魅力を世界に伝えるだけでなく、多様な価値観を有する世界各国の間をつなぐ架け橋になると信じます。伝統文化ばかりでなく、映画やアニメ、ファッションなど我が国の文化・芸術は世界で高く評価され、多くの人々を魅了しています。新進気鋭の人たちによる創作活動を支援したり、子供たちに我が国の文化・芸術を体験させる活動を充実するとともに、「日本ブランド」を育成し国内外に広く発信してまいります。模倣品・海賊版の取締強化や特許審査の迅速化など、知的財産を創造し、保護・活用するための基盤を整備します。


(将来の発展基盤の整備)
 科学技術の振興なくして我が国の発展はありません。「科学技術創造立国」の実現に向け、国全体の予算を減らす中、科学技術の分野は増額し、第三期基本計画を策定して研究開発を戦略的に実施してまいります。
 大学発ベンチャー企業は1100社を超え、地域と協力しながら、まちづくりや地域再生の核となっている大学も現れています。沖縄に科学技術大学院大学を設立するため、法人を立ち上げました。世界最高水準を目指し、教員・学生の半分以上を外国から迎えるとともに、アジアなど海外の大学との連携を図ってまいります。
 就任時に約束したとおり、政府の公用車をすべて低公害車に切り替えました。今やペットボトルの6割以上が回収され、その大半がシャツや風呂敷、卵パックなどに生まれ変わっています。物を大切にする「もったいない」という心と科学技術の力を結び付け、「ゴミを減らし、使える物は繰り返し使い、ゴミになったら資源として再利用する社会」を実現し、環境保護と経済発展の両立を図ります。
 原油価格の高騰が続いていますが、今日の世界情勢を踏まえ安全保障の観点から、石油や天然ガスの安定供給の確保、省エネルギーの一層の促進、新エネルギーの開発、安全を大前提とした原子力発電の推進に取り組んでまいります。
 我が国にとって、京都議定書で約束した目標を達成することは容易ではありません。人類を脅かす気候変動問題の解決に向け、昨年策定した計画を官民挙げて着実に進めます。すべての国が行動を起こし、世界が一つになって温暖化対策を進めていくことができるよう、アメリカ、中国、インド等も参加する共通ルールの構築に向け、主導的な役割を果たしてまいります。
 我が国は、この4年半で、高速インターネットの加入者数が85万から2200万人へ、インターネットを使った株式取引の割合が6パーセントから29パーセントへ、それぞれ急成長し、世界で最も低い料金で素早く多くの情報に接することができる「世界最先端のIT国家」となりました。「IT新改革戦略」に基づき、診療報酬明細書の完全オンライン化や役所に対する電子申請の利用拡大などを進め、高い信頼性と安全性が確保され、国民一人ひとりがITの恩恵を実感できる社会をつくってまいります。


(外交・安全保障)
 「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」、この憲法前文の精神を体して、戦後、我が国は自由と民主主義を守り、平和のうちに豊かな社会を築いてまいりました。今後も、日米同盟と国際協調を外交の基本方針として、いかなる問題も武力によらずに解決するとの立場を貫き、世界の平和と安定に貢献してまいります。
 在日米軍の兵力の構成見直しに当たっては、抑止力の維持と沖縄を始めとする地元の負担軽減の観点から、関係自治体や住民の理解と協力が得られるよう、全力を傾注いたします。
 テロとの闘い、貧困の克服、感染症対策など国際社会が抱える問題に対して、ODAの戦略的活用や人的貢献により、日本も積極的に協力してまいります。国連が効果的に機能するよう、安全保障理事会を含めた国連の改革に取り組みます。
 イラク国民は、自らの手で平和な民主国家をつくり上げようと、テロに屈せず懸命に努力しています。2年にわたるサマーワでの自衛隊員の献身的な活動は、医療指導や住民への給水に加え、多くの学校や道路の改修など多岐に渡っており、我が国自衛隊は、日本国民の善意を実行する部隊として、現地から高い評価と信頼を得ております。現地情勢と国際社会の動向を注視しつつ、自衛隊員の安全確保に万全を期しながら、日本は国際社会の責任ある一員として、イラクの国づくりを支援してまいります。
 先月、国連総会で、北朝鮮の人権状況を非難する決議が初めて採択され、拉致問題の解決の必要性が国際社会において広く認識されました。北朝鮮との間では、平壌宣言を踏まえ、拉致、核、ミサイルの問題を包括的に解決するため、関係国と連携しながら粘り強く交渉してまいります。
 ロシアとの間では、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を早期に締結するとの基本方針の下、様々な分野における協力を拡大いたします。
 中国、韓国とは、経済、文化、芸術・スポーツなど幅広い分野において、いまだかつてないほど交流が盛んになっています。中国はアメリカを抜いて我が国最大の貿易相手国となり、40年前の国交正常化当時は年間1万人だった日韓の人の交流は今や1日1万人を超えています。一部の問題で意見の相違や対立があっても、中国、韓国は我が国にとって大事な隣国であり、大局的な視点から協力を強化し、相互理解と信頼に基づいた未来志向の関係を築いてまいります。
 先月、開催された東アジア首脳会議では、多様性を認め合いながら、自由と民主主義を尊重し、貿易の拡大、テロの根絶、鳥インフルエンザ対策などに協力して取り組み、開かれた「東アジア共同体」を目指すことで一致しました。アセアン諸国の地域統合を支援するとともに、アジア・太平洋諸国との友好関係を増進してまいります。
 WTO新ラウンド交渉は成功させなければなりません。日本は、後発の開発途上国から輸入する産品の関税を原則撤廃するとともに、途上国が新たな市場を開拓できるよう支援いたします。
 昨年12月、マレーシアと経済連携協定に署名しました。更にアジアを始め各国との協定締結に向け、精力的に取り組みます。
 我が国周辺の大陸棚及び海底資源の調査を進め、海洋権益の確保に万全を期してまいります。
 テロや弾道ミサイル等の新たな脅威や緊急事態に対して、国や地方、国民が迅速かつ的確に行動できるよう、国民保護法に基づき、有事における態勢を整備します。


(むすび)
 象徴天皇制度は、国民の間に定着しており、皇位が将来にわたり安定的に継承されるよう、有識者会議の報告に沿って、皇室典範の改正案を提出いたします。
 戦後60年を経て、憲法の見直しに関する議論が各党で進んでいます。新しい時代の憲法の在り方について、国民とともに大いに議論を深める時期であります。憲法改正のための国民投票の手続を定める法案については、憲法の定めに沿って整備されるべきものと考えます。
 我が国は、明治維新以降、幾たびか国家存亡の危機に立たされました。戦後の平和な時期においても、二度の石油危機、円高ショック、あるいは阪神・淡路大震災を始めとする大災害など、経済と国民生活の根幹を揺るがす危機に見舞われました。しかしながら、先人たちはいずれの難局をも克服し、日本は今日まで発展を遂げてまいりました。
 いつの時代においても、高い志を抱いて行動する人々が大きな役割を果たしています。先の総選挙では、経歴や学歴にかかわらず、政治を変えたいという志ある人が何人も国会議員に当選しました。欧米諸国で日本食を広めている料理人、フランスでワイン醸造を始めた女性など、海外の様々な分野で日本人が活躍しています。また、外国人が日本に来て、廃業寸前の造り酒屋を再建し町おこしに貢献したり、老舗旅館の女将となり地域の温泉地を国内外に広めるなど、生き生きと活動している例も多く見られます。国技である相撲では、朝青龍や琴欧州の外国人力士が活躍する一方、野球の本場アメリカでは、野茂、イチロー、松井、井口選手など大リーガーとして立派な成績を上げています。皆、志を持って挑戦し、懸命に努力し、様々な試練を克服して、夢と希望を実現しています。
 我々には、難局に敢然と立ち向かい困難を乗り越える勇気と、危機を飛躍につなげる力があります。先人たちの築き上げた繁栄の基盤を更に強固にし、新しい時代、激動する内外の環境変化に対応できる体制を構築しなければなりません。
 幕末の時代、吉田松陰は、「志士は溝壑(こうがく)に在るを忘れず」、すなわち、志ある人は、その実現のためには、溝や谷に落ちて屍をさらしても構わないと常に覚悟している、という孔子の言葉で、志を遂げるためにはいかなる困難をも厭わない心構えを説きました。
 私は、「改革を止(と)めるな」との国民の声を真摯に受け止め、明日の発展のため、残された任期、一身を投げ出し、内閣総理大臣の職責を果たすべく全力を尽くす決意であります。
 国民並びに議員各位の御協力を心からお願い申し上げます。