第3回議事次第

資料1

アメリカ大統領制の特徴と首相公選制
(首相公選制を考える懇談会第3回会合)9/13/2001

久保文明(慶鷹義塾大学法学部)

1.統治原理
 行政権は大統領に帰属(日本:内閣が連帯して国会に責任を負う)。
 統治権力は大統領、議会、裁判所にかなり厳格に分離。「大統領制」というよりは「権力分立制」。とくにアメリカの「大統領制」は分立が徹底している。

2.大統領と議会の関係
 議会には不信任案を通す権限はない。大統領を解職させる方法は弾劾裁判にかけて有罪とした場合のみ(重罪および軽罪、上院の三分の二)。
 大統領にも議会の解散権はない。
 法案提出権はない。ただし、法案拒否権が与えられている(三分の二の多数の再可決で議会は覆すことができる)。
 閣僚、高級官僚、大使、裁判官の任命には上院の過半数の賛成が必要。
 議員と閣僚(次官や次官補も含む)の兼任は不可。

3.選出方法
 立候補には国籍・年齢以外にはとくに制約がない。
 党員の予備選挙ないし党員集会による公認候補の決定(1月末から8月)。本選挙は11月。
 建国当初は候補者乱立が予想されたため選挙人投票は一種の予備選挙と想定され、上位5人のなかから下院が選出するとなっていた(議会との協力関係が想定されていた)。

4.政治的効果
 安定性(大統領と議員それぞれが4年、2年、6年の任期をつとめる)(解職・解散は原則としてない)と政治的革新(擬似革命?)の併存。
 大統領ないし政権の責任がある程度明確。派閥政治は発生しにくい。
 強すぎる大統領? 権力濫用の例(ヴェトナム戦争、ウォーターゲート事件・・・)
 弱すぎる大統領?議会の政党との関係が希薄。とくに少数与党(分割政府)状態のとき。  政治的停滞(暫定予算すら通らず連邦政府が閉鎖)、膠着状態、政治責任の分散。大統領の孤立の危険。ただし、相互の抑制は達成される。また分割政府でも統治は継続。
 議会がきわめて強力(予算決定など。権力の中心はむしろ議会にある?)。
 分割政府による政治的膠着状態を打破する決定的な手段はない。是々非々的な議会。
 アメリカの政党制との関係  二大政党制の交代(8年、12年、20年といった長期の政権独占はある)
 党内規律の弱さ・‥多数与党の時でも大統領の指導力を制約。少数与党でも法案ごとに多数派形成の可能性は残る。全体として争点ごとの多数派形成という面が大きい。
 ただし、アメリカの政党は価値観・イデオロギーなどとも絡み合って社会に根を張っているために全体としては非常に強靭。
 選出方法  最近の候補はワシントン政界のアウトサイダーが多い。また議会の政党と関係が薄い人物が当選する可能性も少なくない。
 ただし、個人としては予備選挙と本選挙で徹底してテストされ、鍛えられる。個人としての資質・能力・ピジョンが問われる。そこでは所属政党との関係も1つの要素ではある。
 政党を選ぶだけでなく、個人(特定の指導者)を選ぶ、という性格が強い。

5.以上との関連で、日本として考えるべき点
 統治原理の根本的な転換になる、という認識。
 国会との関係  アメリカ的な徹底した権力分立制か、あるいはより多くの議会との協力関係を残すか。
 国会は首相不信任の権利をもつか、またそれは単純過半数かあるいは三分の二の多数によるか。
 首相には解散権があるか、それは随時発動可能か、あるいは対抗的なものに限るか。
 あるいは首相弾劾の制度だけを用意するか。
 法案提出権は議員に限定するか、首相に法案提出権を認めるか。
 首相による法案拒否権を認めるか。それを覆す権利を国会はもつか。
 議員の閣僚などとの兼任を認めるか。
 「分割政府」状況をどのように乗り越えるか(政党の規律がアメリカより強いのでより厳しい対立になる?しかし、イギリスほど社会構造に根ざしておらず、離合集散が多い。)
 アメリカの議会はきわめて強力。国会強化という視点もありうる。アメリカの官僚制は議会と大統領双方から監督され、指令を受ける。国政調査権、国会のスタッフ、国会の機関(予算局、会計検査局)などの強化、新設を考慮する余地もある(行政部と官僚に対するより強力な統制)。
 議員の立法責任はきわめて大きくなる。
 地位  任期4年8年までという制度はそのまま妥当するか(3−5年?)。
 立候補資格  誰でも立候補可能か、国会議員に限るか、あるいは国会議員(あるいは衆議院議員)総数の10分の1ないし20分の1の議員の推薦などを要件とするか(国会との関係)。
 初回投票を一種の予備選挙と位置付け、過半数獲得者がいないときは2回目の投票を行う・‥という選択肢もありうる(候補者乱立状態への対応)。