第7回議事次第

「議会からの首相の独立性に力点を置くモデル」(案)

首相公選制を考える懇談会第7回報告(首相官邸)

平成14年1月28日
久保文明(慶應義塾大学法学部)




1. 本報告は座長の指示により、「議会からの首相の独立性に力点を置くモデル」を、討論の材料として提示するものである。
2. 上記の事情を考慮して、「首相と議会との一体性を再構築するモデル」との違いを敢えて強調するモデルとしている。
3. 天皇制との関係については後日別の機会に集中的に討議されることと思われるので、ここでは深く立ち入らない。
4. 下記においては、憲法で記すべきことと法律によるものとはとくに区別していない。

1. 選出方法
 a. 首相と副首相は国民の直接投票に基づき選出する。
 選出された者を天皇が任命する。

b. 首相と副首相は一対となって立候補し、国民も一対として投票する。
 立候補要件は、衆議院議員総数の20分の1以上の推薦をえた者とする。
 (国籍条項および年齢資格を加える。)

c. 任期は3年とし、4選を禁止する。
  (衆議院議員の任期も3年とする。首相・副首相選挙、衆議院議員選挙、参議院選挙は同時に行うものとする。)

d. 首相・副首相候補の推薦は投票日の2ヵ月前までに行うものとし、2ヵ月間を選挙期間とする。

e. 最初の投票において投票数の過半数を越える候補者が存在しない場合は、2週間後に上位2人の候補者による再選挙を行うものとする。そこでは最多獲得候補を当選とする。

2. 議会との関係
 a. 行政権は首相に属する。首相は直接国民に責任を負う。
 (内閣の地位の変更。)

b. 首相は国務大臣、副大臣、政務官等を任命できる。ただし、衆議院は3分の2の多数で個々の閣僚の任命を拒否することができ、また不信任決議を通して解任できる。
 (議員と首相を含む国務大臣、その他の行政部の地位との兼職は認める。国務大臣の過半数は国会議員という要件ははずす。)

c. 首相は国会に予算・条約・法律案を提出することができる。首相は国会の審議に参加できる。

d. 首相は国会を通過した法律・予算につき、その全部または一部の拒否権をもつ。ただし、衆議院は3分の2の多数で再可決することによって拒否権を覆すことができる。

e. 首相は最高裁判所長官を指名し、天皇が任命する。また、首相は最高裁判所判事を任命する。ただし、いずれの場合も事前に衆議院議員の過半数の承認をえるものとする。

3. 首相・副首相の弾劾
 a. 衆議院は3分の2の多数で首相の弾劾を決議できる。決議が可決された場合、衆議院から15名、参議院から15名、最高裁判所判事15名からなる首相弾劾裁判所を構成し、総員の3分の2以上が賛成の場合、有罪が確定し、首相は失職する。裁判長は最高裁判所長官が務める。副首相の弾劾についても同様とする。

b. 弾劾の事由は以下の通りとする。
 憲法上・法律上の権限の濫用、反逆・収賄などの重罪、その任に耐えられないと認められた健康上および身体上の障害

c. 首相が欠けた場合は副首相が昇格する。首相と副首相が同時に欠けた場合、衆議院議長が昇格する。衆議院議長も同時に欠けた場合には衆議院が首相を指名する。任期は前任者の残任期間とする。

d. 副首相が欠けた場合には、首相が指名し、衆議院の承認を得るものとする。任期は前任者の残任期間とする。

長所
 単純・明快。
 国民が国の指導者を直接決定する。
 政治的なサイクルの安定。予測可能性。
 首相の議会からの独立性。
 議会の自律性。案件ごとの独立の審議。大きな立法責任を負う。国会の強化。
 地元利益の代表から解放された政治的機関を政府の中枢部分に据える。
 政党についての評価と同時に、人物を評価できる。
 派閥政治、「気配り」政治からの解放。
 与党内調整などは首相・議会交渉として表に出る傾向が生まれ、政治過程の公開度が高くなる。

短所
 人気取りの政策に走りやすい。あるいはそのような候補が当選しやすい。
 いわゆる「分割政府」が生じ、首相と議会の間の政治的停滞ないし膠着状態がおきかねない。
 責任が議会と首相に分散する。
 政党が弱体化する恐れがある。