教育改革国民会議

教育改革国民会議第1分科会(第6回)議事録

教育改革国民会議第1分科会(第6回)審議事項



時 間:平成12年7月18日 18時00分〜20時00分

場 所:虎ノ門第10森ビル5階会議室

出席者:江崎座長 浅利委員 今井委員 梶田委員 勝田委員 河上委員 沈委員 森主査  山折委員 山下委員 田村委員 草野委員 クラーク委員 中曽根補佐官 山下議員 西川議員 銭谷室長

次 第

  1.分科会報告の検討

開 会

【森主査】それでは、教育改革国民会議第1分科会第6回会議を開かせていただきます。皆さん、お忙しいところ、どうもありがとうございました。

 まず、委員の出欠状況でございますが、曾野委員が欠席でございます。江崎座長に出席ねがっております。第2分科会から田村委員、第3分科会からは草野委員、クラーク委員の出席を得ております。

 続きまして、オブザーバーの紹介に入りますが、新しいオブザーバーとして出席していただいておりますのは、自由民主党からは本日付で内閣総理大臣補佐官に任命されました中曽根弘文参議院議員でございます。公明党からは山下栄一参議院議員でございます。保守党からは西川太一郎衆議院議員でございます。なお、文部省の鈴木総括政務次官もご出席なさっておりますので、ご紹介いたします。

 続きまして、総理補佐官及びオブザーバーのごあいさつを一言ずつお願いいたします。まず、総理補佐官からお願いいたします。

あいさつ

【中曽根補佐官】今、森主査からご紹介いただきましたが、今朝の閣議で内閣総理大臣補佐官を決定いただき、総理から辞令をいただきました。文部大臣時代には先生方に大変お世話になりましたが、今回、総理補佐官という形でまた国民会議の皆さんとともに教育改革に取り組んでいくことになったわけでございます。

 先生方には、3月の発足以来、精力的にご審議いただき、特にこの暑い時期にも分科会という形でこうして毎日やっていただいておりまして、心から感謝申し上げる次第でございます。

 今朝ほど官邸で総理から辞令をいただきました後、山下先生、西川先生とともに総理と多少の時間をいただいて懇談させていただきました。いよいよ沖縄サミットが始まるわけでありますが、先生方もご承知と思いますが、昨年のケルンサミットで教育が初めて主要議題として取り上げられまして、またそのときにケルン憲章も発せられたわけでありますが、それを受けてこの4月に東京でG8の教育大臣会議が初めて開かれたわけであります。そこでまとめられた議長サマリーが各国の首脳にそれぞれの国の教育大臣を通じて報告されているわけでありまして、いわば昨年のケルンサミットから1年後のこの沖縄サミットは、私は教育という面でも大事なサミットだと認識しているところであります。

 今回、IT等が中心の議題になるようでありますが、教育につきましてはそれぞれの議題の中で教育の関連があることについて言及なされると伺っておりまして、私は先ほど総理に、そういう経緯があるわけですので、ぜひ議長国の総理として教育の問題を積極的にご発言いただきたいとお願いいたしました。イギリスのブレア首相も「内閣の重要課題は、教育、教育、教育」と3回も教育をおっしゃっておられるということですし、私は5月にアメリカへ科学技術庁長官として会議にまいりましたときに、クリントン大統領にお会いしたいと思いましたら、ちょうどその時期はアメリカの3つの州を教育のために巡回して、国民の皆さんと対話しているとのことでした。教育は各国でそれほどの大きな課題であり、日本でも国民のどなたも教育の問題を大変心配されているわけです。ぜひ、このサミットで積極的に取り上げてくださいとお願いしたところでございます。

 先生方には、ご議論いただいておまとめの段階にきているわけでございますけれども、今後ともぜひご指導賜りますようにお願い申し上げまして、簡単ですが、ごあいさつにさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【森主査】どうもありがとうございました。

 続きまして、山下参議院議員からお願いいたします。

【山下議員】前任の太田党国対委員長からあとを受けまして、公明党を代表いたしまして、大事な会議に参加させていただくことになりまして大変緊張しております。私、大阪出身でございまして、大阪選挙区でございます。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

 私、こういうメインの席に座らせていただくということは全然予想しておりませんで、サイドテーブルでちょっと聞かせていただくのかなと思っておりましたので、大変びっくりいたしているわけであります。

 一言だけお話しさせていただきますが、子育ても含めまして「後継者を育てる」ということはだんだん国民にとって中心課題になってきていると思っております。片手間にできることではないと。人間、生まれてきて、きちんとした後継者を育てるということが実は最重要また最も基本的な生まれてきた使命だと。それがだんだん端っこの方に追いやられてきたのではないか、片手間でできることではないということを今突きつけられてきているというふうに感じておりまして、大変なご見識の諸先輩にしっかりと学ばせていただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【森主査】どうもありがとうございました。続きまして、西川衆議院議員からお願いいたします。

【西川議員】西川でございます。前任の泉信也君がこのたび運輸総括政務次官に就任されました。私、防衛政務次官を終えてバトンタッチという形になりました。東京都議会議員を若いころいたしましたときに、厚生文教委員長という仕事をしました。ちょうど、2回目の校内暴力のピーク時でございまして、都議会で集中審議を行って、いろいろな経験をそのときにさせていただきました。また、東京都の教員の異動システムをその時期に変更した経験も持っております。

 この間、ネパールに行きましたら、私に会うために、結果的にちょっと時間がずれて会えなかったのですが、一人の青年が3日間歩いてバス停に来て、2日間バスに揺られて会いにきてくれた。結果的に会えなかったことはまことに残念だったのですが、しかし交通がそんなに不便なところ、お医者さんもいないところに農業指導にJICAの日本の青年がたった一人で行っている。私は、日本の若い人は捨てたものではないなと心から尊敬して、こういう人がいるんだということを思いました。また防衛庁にまいりまして、防衛大学校や防衛医科大学校等の教育にも若干触れさせていただきました。いろいろな意味で、私は日本の青年を肯定的に見ていきたいという気持ちでおりますが、全く門外漢でございまして、参加させていただいて大いに勉強させていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。きょうは所用で失礼いたしますが、お許しいただきたいと思います。

【森主査】どうもありがとうございました。

 それでは、本日の議題に入ります。お手元に資料がございますが、「分科会報告の検討」であります。まず、銭谷室長から、配付資料の説明をお願いいたします。

配付資料説明

【銭谷室長】私の方から本日の配付資料につきまして、ご説明申し上げます。

 本日の配付資料は3点でございます。まず、「日本人へ」という表題の資料でございますが、分科会報告の一部をなすものでございます。曾野綾子先生が森主査、梶田副主査、浅利委員と意見交換をした上でお書きいただいたものでございます。

 2つ目は「具体的方策の例」という資料でございます。

 3つ目が「教育基本法について」という資料でございます。

 この2つの資料も章は報告書の一部をなすものでございますが、今までの議論をもとに主査、副主査、浅利委員が協議をされ、森主査の御指示の下、事務局の方で作成したものでございます。以上3点が本日分科会報告の検討に当たりまして、ご用意させていただいた資料でございます。

 なお、勝田先生の「教育基本法についてさらに一言」という資料を本日また改めてお配りさせていただいております。

 本日ご用意させていただきました資料は以上でございます。なお、これまで第1分科会の所属の委員の先生方から寄せていただきましたご意見、それから教育基本法説明資料は席上のピンクのファイルに入れておりますので、ご審議の際、ご参考にしていただければと思います。以上でございます。

議 事

分科会報告の検討

(1)教育基本法について

【森主査】ありがとうございました。

 それでは、討議に入ります前に、二、三、私の方からご報告しておきたいことがございます。

 第1点は、本日は予定しております最後の分科会審議でございます。したがいまして、本日の資料に基づきましてご自由にご議論いただければと考えております。

 2番目は、他の分科会も大体終わっておりますので、もし皆さんの同意が得られれば、分科会の審議は本日で終わりとしたいということであります。

 次に、本日ご欠席の曾野委員には、きょう出されましたご意見をお伝えした上で、報告書をまとめて公表するということで、この会でご一任いただければと思いますが、それはよろしゅうございますでしょうか。

〔「はい」という声あり〕

【森主査】なお、公表前には、あらかじめ皆さんには原文といいますか、最終案をお送りいたします。

 それから、本日、配付いたしました資料はいずれもマスコミは非公開というふうに考えたいと思いますので、取扱については十分ご注意願いたいと思います。

 それでは討議に入りますが、本日、勝田委員が所用があって途中で退席されますので、勝田委員、特に一文も出ておりますし、教育基本法についての審議を先にさせていただきたいと思います。お手元に「教育基本法について」という2ページものがございますが、これについてご自由にご意見をいただきたいと思います。

【勝田委員】どうしても明日出席しなければならない会議がございまして、最終ののぞみに乗ることになっておりますが、事務局が大変心配して、ちょっと早めに退席したらどうかというので、そのご意見に従わさせていただきます。恐縮です。

 それでは、森先生からのご指名がございましたし、お許しを得まして、私は既に教育基本法についての私の考え方を皆様にお配りいたしました。さらに1週間ほど前の会議では、梶田先生にお願いいたしまして、私は欠席せざるを得なかったものですから、教育基本法についての私の考えを読んでいただき、本当に恐縮しております。

 さて、本日は、これまでと重複するところがあると思いますけれども、かねて考えていることを手短にお話しさせていただきたいと存じます。

 私は、前文はあまりにも翻訳調あるいはむしろ誤訳が多いという意味で、これを削除してもいいのではないかとかねてから論じております。それは、一番最初のところで、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し」といって、まるでこれは確定申告みたいなことだと。日本国憲法の前文にもちゃんとこの文言がございます。これを英文で見ますと“イスタブリッシュ”、これは英語辞典を見なくても今の高等学校の生徒だったらわかっていると思いますが、「法律を制定する」という意味がございます。なぜ、わざわざこんな悪訳をつけたのかなと。これは、考え過ぎかもしれませんが、憲法の前文さらにまた教育基本法の前文で、こういう言葉を使うことによって、早く国民に直しなさいよということをあの当時のお役人が(笑)、そういう意図があったのかとも思っている次第です。

 ともあれ、この悪文等々、何としても削除した方がいいのではないかと思っているところでございます。

 もうちょっといきますと、2番目の段落のところで「普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底する」という文言がございます。普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化──これは哲学的にいえば非常に難しいことで、ヘーゲルがこの点をいろいろ論じておるところです。しかし、ヘーゲル哲学の難しい思考を持ち出すまでもなく、我々の常識を持ってみますと、私はかねてから“文明”と“文化”というものがここで混乱されているのではないかと思っているのです。文明というものは、何といってもその推進力は科学技術です。そして、現在生きている人間の幸福と豊かさと利便を図る、快適性を図るというものでしょう。そういった点でいえば普遍的なものでして、そういう文明には進んだ文明と遅れた文明、その両方があるだろうと言っていいと思います。

 しかしながら、文化というのはあくまでも個性的なものです。文化を一言でいえば、私は「人々の生活の様式」あるいはさらに“生きる”ということは“死ぬ”ということは裏腹ですから、「人々の死生観」といったようなものを反映している。そういった意味で、あくまでも文化は非常に個性的なものでして、文明の方を普遍的だというふうに考えるならば、進んだ文明、遅れた文明ということで、“進歩”を考えることができ、言ってみれば“段階”ということが言えます。日本は非常に段階が進んだ進歩した文明であり、アフリカの何とかという国はそうではないというふうに言えます。しかし、文化というものは人々の死生観を反映する。さらに、現在生きている人間の現世と、言ってみれば永遠的なものといいましょうか、“永遠なるものへの思い”の接点といいましょうか、交差する、そういう地平に文化というものの姿が見えてくるだろう。そんなふうに考えていますので、「普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化」、これはちょっと首をかしげる文章だと。ヘーゲルのこむずかしい弁証法の思考を全部除いて、いわば常識という点でいえば、いっそのこと、「普遍的にして」ということばをとってしまって「個性ゆたかな」だったらまだしもわかる、そういうふうに思われます。

 ともあれ、この前文のは考えれば考えるほど、いろいろな点で疑問が出てくる、そういうふうに思っております。

 さて、第1条「教育の目的」。

 これは、読めば読むほど、私、顔が赤くなるほど、あまりにも立派な美辞麗句で飾られて、冗談じゃないわと。冗談というか、立派過ぎるように思っております。しかも、ここで田辺哲学の田辺先生の言葉を借りれば、「種の論理」が欠けている。種というのは、要するに家族であり、郷土であり、国、また国の裏面にある民族、そしてその伝統と文化というものですから、そういうものの尊重をうたう必要があるだろうなと。したがって、「家族愛、郷土愛、祖国愛を教育上重視し」といったような文言を入れたいと思っております。

 同時に、教育というものは、過去の世代が生きている我々を通して、未来の世代に文化や伝統を承継させていくという面がありますので、そういった点も「美しい祖国の文化と伝統を未来の世代に承継させること、これが教育の目的」といった文言を入れておくといいなという気がします。同時に、何度も申しているのですが、教育の目標として「世界と祖国の平和と福祉のために貢献する知識と志操と活力ある青少年の育成」を謳うのはどうでしょうか。これはあくまでも単なる私の思いですので、どうぞいろいろご批判もいただきたいと存じております。

 それから、第2条の「教育の目的は、あらゆる機会にあらゆる場所において実現されなければならない」、これもいかにも翻訳調でございますね。もうちょっと日本語らしい表現に改めることができないかなと思っております。翻訳調みたいな、つまりあまり良くない日本語が至るところで出てくると思われてなりません。

 それから、第3条の「教育の機会均等」。これは、まあこれでいいのだろうなと思っております。

 次いで、第4条の「義務教育」。9年の普通教育云々、6・3・3制の3・3を一緒にするとかいろいろな議論があると思いますけれども、一応、9年の義務教育ということを前提にして考えれば、これはこれで悪くはないのかなと思っております。

 第5条の「男女共学」。今さらこんなものは削除していいのではないでしょうか。教育上の男女の共学は認めなければならないと。しかし今や、男だけあるいは女だけの学校が欲しいくらいな時代ですから、これは削除してもいいのではないかと思っております。

 次いで、第6条「学校教育」。「法律で定める学校は、公の性質をもつものであって」、それは教育は公の性質をもつ、これはいいと思いますが、これもちょっとゴテゴテした文章でございますね。もう少し簡潔に改めていただいたらありがたいと思っております。

 第2項「法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚し」。「全体の奉仕者」−−それはわかるんですが、かつてのソ連の共産党綱領の中の言葉をすぐ思い出しまして、全体主義ではあるまいし、むしろ「国民の奉仕者であって」くらいに改めた方がいいのではないか、そんなふうに思っております。

 「自己の使命を自覚し」−−「自己の崇高な」とか「教育という作業に伴う高い職業倫理に目覚め」とか、そんな文句をちょっとそこに入れておいていただきたい。教師は労働者だなんていって、張り切っているような人もいますが、人間を教育する教師の職業倫理はあくまでも重要だといった意味で、そういう職業倫理の高さと厳しさを謳う、崇高さを謳う、そういうことがあってもいいのではないかと思われます。

 「このためには、教員の身分は尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない」−−これ、立派な文句ですね。私も教員の端くれでので、本当に尊重されて、もっと待遇の適正が図ってもらえたらよいなと思うくらいなのですが、これは冗談としまして、これはどうなんでしょうか。恐らく、日教組はこういった類の文言を錦の御旗にして、「もっと待遇改善を」と言って、要求するのだろうと思いますが、私はかねてからこの席でもいろいろ申しましたけれども、教員は学校を卒業して、教員免許をもらうと教員に就職して定年まで安全に勤められる−−それではお話にならない。視野が非常に狭くなるのであって、10年に1回くらい、よその全く違う職業、企業等々に研修に行く。分限研修制度といんうでしょうか、そういう制度もあってしかるべきだろうと思っておりますし、さらにまた、これは大学の先生に一番必要だと思いますが、義務教育段階の教師にも任期制の導入も図るべきではないのかと思っておりますので、そういう類の措置はまかりならぬといった批判が出ないように、「待遇の適正が期せられる」とか「尊重される」とか、ここのところをもうちょっと常識的な文章に改めたらどうかなと思っております。

 第7条はありきたりなことだと思いますが、皆様、いろいろご批判があればぜひ承りたいと思います。

 第8条の「良識ある公民に必要な政治的教養」を尊重しなければならない、これはいいと思います。学校の教育の政治的中立性をうたっている、それも当然だと思う。

 第9条の「宗教教育」。何べんもペーパーで提出させていただきましたが、「宗教に対する寛容の態度」という言葉がございますけれども、日本は多神教の国でございまして、寛容というのはいわずもがな、これはむしろ一神教、キリスト教国とかイスラムの国にぜひこれを言ってほしい。何も日本に寛容の重要性を謳う必要があるのかと思うのですが、そういう類の疑問は私だけではないと思います。

 第2項「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」。これはもともと21年9月段階で、その当時は文部大臣の田中耕太郎先生の田中イズムが反映していると言えばそうなんですが、つまり「宗教的情操の涵養は、教育上これを重視し」、これはもういっぺん復活したらどうかと思っております。同時に、公立学校においては「宗教的教育及びその他宗教的活動をしてはならない」これを「宗派的」というふうに改めた方がいいのではないかと。現行法の文言だって「特定の宗教のための宗教教育」ということなのですから、特定の宗教でないような宗教一般の、あるいは宗教的情操の教育だったら構わないという解釈は無論できますが、ざっと読んだところでは宗教教育そのものがうさん臭いといったように解釈されるような−−これは誤解だと思いますが、そういう解釈もできるような余地が残されている。だから、「特定の宗派的教育」というふうにはっきり限定した方がいいのではないかと思っております。

 それから、第10条の「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対して直接に責任を負う」。これはいいんですが、「不当な支配」、この文句ですね。この教育基本法全体に通じるいわば底流となっておりますのは、「迫害・弾圧を加えるのは政府であり、国家である」という類の考え方です。しかし、私は思うのですが、今や政府や国家がこういう弾圧、迫害を上から加えるという時代は去ってしまいまして、むしろそれよりも社会的な偏見あるいは社会的な支配といったものに関しての監視、これが重要ではないかと思っております。

 言い換えれば、自由に対する脅威、自由を脅かすものは政府とか公権力とかいうよりはむしろ社会的な圧政ではないかと。そのことは、ご承知のようにトクビルが強調しまして、トクビルは英語で言えば「デモクラティック・デスポティズム」(民主的暴政)という言葉を作り出しましたし、またトクビルの親友であったジョン・スチュワート・ミル(J.S.ミル)は、同じような考え方でそれを「タイラニー・オブ・ザ・マジョリティ」(多数者の圧政)というふうに表現しました。まさしく、民主主義の時代だからこそ、かえってこういうふうな社会的な圧政、社会的な偏見に基づく支配、こういったものが大きな自由への脅威になるのであって、この点は「不当な支配」というところを、せめて例えば「政治的並びに社会的な不当な支配及び偏見に従属することなく」とか、そういうような文言に改めたらどうかなと思っている次第です。

 こんなようなところが一番言いたいところで、かなり時間を費やしましたが、こんなふうに私は考えております。

【森主査】どうもありがとうございました。前回ご欠席だったので、詳しくご意見を伺いましたが、本日の議題は、お手元にございます2ページものの「教育基本法について」というのがありますが、これを総会に報告する資料として提出してよろしいかどうかということが議題でございますので、これをお読みいただいてご意見をいただきたいと思います。

【勝田委員】「教育基本法第1条に規定する教育の理念などは普遍的なものであって否定すべきものではない。」そういう面もございますけれども、しかし、むしろ欠けている面として、先に申し上げましたような家族愛とか郷土愛とか、祖国愛とかいったようなものをここでうたう必要はないのかなという気がいたしますし、さらに教育の目的ないし目標として、私はかねてから文言としては「祖国及び世界の平和と福祉のために貢献する知識と志と活力」、体力というか活力、つまり知情意或いは知徳体、この3つを備えた青少年の育成、こう言ったところをはっきりとうたったらどうかなと思っている次第なんです。

【森主査】それは、教育基本法の位置づけといいますか、性格をどう認識するかで変わってくると思うんですが、教育の「目的」と「目標」を分けて考えれば、目標に当たるようなものは学校教育法以下ほかの法律でも規定されていますので、目的のところでは1ページの下の方で「国家や郷土、伝統、文化、家庭、自然」というふうに入っています。

【勝田委員】失礼しました、そのとおりです。

【森主査】これは、前回、皆さんが出された意見を整理してあります。

【勝田委員】私は、教育基本法の中で「教育的情操の涵養が必要だ」ということをうたっても、決して憲法20条に抵触するものではないと思っております。これは、この文章がいいと思います。「教育は不当な支配に服することなく……」、おっしゃるとおりです。「過去に拡大解釈された経緯がある」−−こういうことがございますが、私が先ほど申しましたように、不当な支配というのは専ら上からの「公権力からの支配」という面が強調されている。むしろ、今後は社会的な偏見並びに圧政、そういったものから教育をどうやって守っていくかということが重要になってくるのだろうと思っております。

【森主査】皆さんのご意見を集約してここにあるわけでございますが、第1分科会としては、基本的には「はじめに教育基本法の改正から出発する」というスタンスではなくて、教育改革を進める上では、教育基本法に触れることなしに改革論は進まないという形で来た、そういう認識では一致していたと思うんですが、よろしゅうございますでしょうか。ここにはそれを書いてございます。

【勝田委員】全体としては、私はこれでいいと思います。

【浅利委員】質問があるんですが、教育基本法を直すときの文案の起草はどこがやるんですか。

【森主査】これは、また別途、政治の方でお考えいただく。これは国会で変えなければいけないでしょうね、法律ですから。

【浅利委員】そうすると、どういうふうに直した方がいいという提案をこの教育改革国民会議がすればいいと?

【森主査】ここに書かれているのは、削るというのではなくて、欠けている面を付け加えているという記述が多いですね。ですから、教育基本法、まさに改正・改善といいますか、その提案だと思います。

【浅利委員】今、勝田先生がおっしゃった「日本語がなっていないではないか」というのは、非常に重要な問題だと思うんです。ですから、これは政治家が文部省と相談して起草されるようになるにしても、その起草委員会の中に今の勝田先生のような方に入っていただいて、少なくとも日本語のおかしいところは直していただくという、原案起草者として教育改革国民会議のメンバーが教育基本法を変えるときには参画するというような、1章を入れておかれたらどうでしょうか。今のお話を伺って、まことにごもっともなことだと思いますので。

【勝田委員】それに浅利先生もご一緒に。

【浅利委員】私は文章には向いていないんです(笑)。曾野さんが、「日本人へ」という文を非常に厳しく書いてくだすっているんですけど、先生もそういう参画をなさっていただいたらいいんじゃないでしょうか。

【勝田委員】そういうときはそのときで。

【森主査】「日本の文章として表現上いかがかと思われる点がある」ということと「改正の起草案作成に改革会議のメンバーのどなたかの参画を期待する」くらい、どこか入れておきたいと思います。それはその方向で直させていただきます。

【浅利委員】これは中曽根補佐官にもお願いしておきたいと思います。

【中曽根補佐官】 最終的な提言がどういう形になるかわかりませんが、もしそういうような方向ということになりました場合には、基本的には内閣で法律案の改正原案をつくるということになりますね。

 改正という場合、農業などは新農業基本法を制定しましたけれども、一部改正か、または新しい教育基本法をつくるということも考えられます。そこら辺は先の話でありますが、いずれにしても手続的には内閣が法律を提出するということです。

【浅利委員】起草は文部省が起こすと?

【中曽根補佐官】 はい、そうです。

【浅利委員】ですから、これだけご縁があるわけですから(笑)、現場の意見というか、文章に対する注文を起草のときによくお考えいただきたい。

【河上委員】2ページに「学校や家庭の役割を明確に記述すべきである」と書いてありますが、学校教育法には学校の役割をそれぞれ小学校、中学校、高等学校にわけて書いてあるんですけれども、できれば教育基本法に「義務教育というのはこういうことを行うところなんだ」ということを書いていただけるとすごくいいと思います。

 現在、ほとんどの親、教師の中にも義務教育の学校の役割が非常に不明確になっている状況があると思うんです。「社会的自立」よりも「個性」を伸ばすみたいなことがものすごく強くなっていて、そのことが子ども達を生き辛くしていると思うんです。

 ですから、私は義務教育の関係ですから、「義務教育の役割」あるいは「目的」みたいなものをぜひとも入れてもらいたいと思っています。以上です。

【森主査】教育基本法は憲法といろいろな教育関係法規との中間に位置づくというふうにすれば、憲法と同じような義務教育は9年というのをまたここで繰り返すだけではなくてもっと詳しくということですね、学校教育法その他ではなくて。

【河上委員】はい。

【森主査】ご意見として。

【山折委員】これは非常によくおまとめいただいたと思います。全体としてはこの方向で大変結構だと思っております。

【山下委員】「個人や普遍的な人類などが強調され過ぎ」とあるんですが、そのとおりで、公共の福祉の概念というのも非常に欠けてきていると思うんですが、検討していただいてもいいのではないかと思います。

【森主査】「具体的な方策」の方でそれがまた出てまいりますので、教育基本法に規定した方がいいのかどうかということをまた絡めてご検討いただきたいと思います。

 次の議題に移ってよろしいでしょうか。

 それでは、これを手直しして修正して、それをまた皆さんのところに案文をお送りいたしますが、ほぼこれでご了承いただいたということでよろしゅうございますでしょうか。

〔「はい」という声あり〕

【森主査】どうもありがとうございました。

(2)日本人へ

【森主査】続きまして、「日本人へ」というのがございますが、これをごらんいただきたいと思います。

 これは先ほどご説明がありましたように、私と梶田先生、浅利先生とで曾野先生に作文していただいたのを横で討議しながら、「文責 曾野綾子」となっておりますが、作成したものでございます。格調の高い文章になっていると思います。

【山折委員】これは「日本国民へ」「日本人へ」「日本人の皆様へ」、いろいろな言い方があるかと思いますけれども、「日本人へ」は大変結構だと思います。

【銭谷室長】この「日本人へ」という文章は曾野先生を中心に4人の委員の方で作成していただき、文責は曾野先生になっておりますが、カッコ書きで小見出しをつけております。小見出しをつけることのご了解は曾野先生にいただいておりますが、小見出し自体は主査と副主査と浅利先生と事務局で一応つけてみたというものでございます。

【森主査】そういうことです。

 非常に含蓄のあるといいますか、コンノーテーションのある文章なので、これは英文に翻訳する人は大変だなと思っていたんですが(笑)、訳は難しくなるでしょうね。

【山折委員】例えば、教育基本法では“教員”という言い方ですけれども、ここではっきりと“教師”と出しているわけですね。こういう出し方というのは非常にいいと思います。本当は教育基本法でも“教師”とやりたいくらいですけれども、それはまた別の問題があるでしょうから。

 感心いたしました、この文章を読んで。

【森主査】皆さん、一度お読みなのですが、小見出しについてはきょう議論してつけたばかりなので、小見出しについても議論いただきたいと思います。それと、「日本人へ」というのはなかなかいいというご意見ですが、よろしいでしょうか。

 どうぞ。

【田村委員】大変すばらしい文章なのですが、最後の4ページの「奉仕の志」のところですが、小学校と中学校で2週間、高校で1カ月という形で書かれますと、学校でやるという話になってしまうだろうと思うんです。今、カリキュラムができ上がっている学校の中にこれを突っ込むということになると、現実的には非常に難しい問題がいっぱいあるだろうという気がします。

 デンマークなどではグルントヴィといって、子どもたちの「いろいろな人に親切にしよう」という運動をやっています。それは非常に成果を上げているのですが、別に学校が何かしているというわけではないのですが、国民運動になっているということです。

 今、思いつきですけれども、夏休み中に体操をやりますが、手帳を持っていってハンコを押してもらうというのがありますね。あの程度のやつでやったらどうかと思うんです。「学校にやれ」というふうに言って終わってしまうと、ほかの人は関係ない、学校がやればいいというふうにならないかなという気がするんです。

【中曽根補佐官】 この部分を“小学生”“中学生”“高校生は”という言葉にしたら、かなり違いますか?

【河上委員】ただ、今までの議論では、そういう形にしたのではほとんど実現しないだろうということなんです。ここの一番大きなポイントは、その段落の一番下の「義務付ける」というところでこの第1分科会の一番大きな目的はそこなのです。

【森主査】ターゲットはそこにあるんです。

【河上委員】そうなんですね、だから、仮に期間はどうであれ……。

 ただ、今の学校の能力のままでこういうことを実現するのは非常に難しいということがあるので、そこに書かれているように、例えば各業種の熟練者、青年海外協力隊員等々の全面的なバックアップが必要だと思います。

【森主査】ですから、これは教育課程を変えなければいけないでしょうし、財政的にもいろいろなハード面で設備が必要になるかもしれませんし、学校が中心になって推進してはじめてできるのではないか。

 ラジオ体操のようなものは付加的にどんどんおやりになって結構なので、それを禁止しているわけではないので。

【河上委員】今までの第1分科会の議論の中で、こういうことが最も欠けているであろうということが共通認識としてあったわけで、そういう意味で言えば、具体的にどう展開するかわからないにしても、これが絶対必要だということを突き出すのはものすごく大事だと思います。

【森主査】議論の中では、茅さんがおやりになった「小さな親切運動」、あれも普及しているのか普及していないのかよく分からないんですが(笑)、「小さな親切」と言っているからだめなので、親切に大小はないので、私は「大きな親切」でやった方がいいのではないかと思うくらいなので、ともかく義務教育のときにやるというところに重点がある。

【今井委員】そこに付け加えてなんですが、私は小・中で義務化をお願いしたというのは、奉仕活動だけではなくて、今いろいろなところで自然体験とか社会体験・文化、ボランティア体験など長期のプログラムでやっていて、本当にいい効果を上げてきているので、そういう部分も含めて夏休みのあり方を見直していただきたい。学校の中にこういう新しいプログラムをつくって、ひ弱な子どもたちをしっかり育成すれば、これはかなり違ってくると思うんです。ですから、しっかりした国の財政支援と青少年育成団体か、地域の支援がほしい。それから私たちPTAで2週間とまではいきませんけれども、小学校などで1泊2泊くらいで親子キャンプをすることがあります。そうすると父親の参加がかなり出てきます。

 ですから、子どもだけのメリットではなくて、父親や母親がそ子どもの様子を見たり、一緒に活動をすることによって、自分達ががいかに子どもを今まで甘えさせてきたかということを確認できる。そして様々な体験活動を地域と学校と家庭が一緒になって行うことにより「絆(きずな)」ができる。私は施策として強く打ち出していただければと思います。

 だから、この「2週間」というのも、2週間と決めているわけではなくて、発達段階においてどれが一番いいのかという調査・研究も含めてしっかり検討していただきたいと思います。

【田村委員】全く同じ意見を言っているのですが、ただ学校に任せておけばいいというふうにならないかということを心配しているのです、こういう書き方をしてしまうと。

 だから、もうちょっと詳しく書いた方がいいのではないかと。

【梶田委員】森先生、ついでに「具体的方策の例」も一緒に皆さんにご検討いただいたらどうでしょうか。

【森主査】では、理念の方はこの文章、小見出しともよろしいでしょうか。曾野先生には事後承諾になりますけれども、こういうのでよろしいかというので出しますが。

【沈委員】どこにつけるのかわかりませんが、先生のことは全部賛成です。

 ただ、教育は家庭と学校だけではない。地域の教育力というものについて、全く触れられていない。そこを何とか加えていただきたい。

【森主査】地域は3ページに入っているんですが。

【沈委員】3ページの下の方に入っていますが、これはもう少しはっきりと出す必要がある。今日の混乱は、地域の教育力の衰退が大きな責任なんですから、地域にもう一回元気を取り戻すためには、どこかに入れてもらいたい。

【森主査】それでは、3ページの真ん中の方の小見出しで、「最後は自己責任」とありますが、原案は「地域」という言葉があったのですが、「地域の教育力、最後は自己責任」とか、“地域”という言葉を復活させるということでよろしいですか。梶田さん、よろしいですか。

【梶田委員】はい、結構です。小見出しの工夫ではっきり出ていないので。

【森主査】そうですね、「地域の教育力」。

【河上委員】私がどうしてもというふうに最初から主張している点は、現在の学校の教育力がどんどん落ちている状況の中で、「学校に教育する権限と義務を与えろ」ということです。はっきりそれを明記してほしいのです。前に言いましたけれども、小学校入学時点で、学校という社会生活に耐えられるような子どもに家庭でしてほしいというとが一つあるわけです、これは地域も当然絡むんですが。

 そのときに、学校という社会生活に耐えられないような生徒については、就学を猶予するようなことも考えるべきではないかと。

【森主査】それは、具体的な方策提案のところで出てきますので。

 「日本人へ」というのを皆さんに読んでいただいて、自分の問題として主体的に受け止めて考えていただいて、次に具体的方策で、こういうことをみんなでやろうかという流れで考えられていますので、それは入っているつもりですが。

 どうぞ、クラークさん。

【クラーク委員】4ページはすごくすぱらしい。僕は体験教育、大賛成なんです。農作業、森林の整備、ボーイスカウトなどの青少年活動指導者の参加を求める−−これはいいんですけれども、大きな問題があります。日本の独特の過保護社会。万一、事故があれば、怪我があれば、その指導者の責任になってしまうんです。損害賠償とか、訴訟をされたらとボーイスカウトはすごく悩んでいます。外国だったら考えられないことなんです、これは日本だけと言ってもいいです。

 うちの大学は森林整備を、奉仕活動として夏休みの間、学生に紹介しようとしたんです。教授会は原則として大賛成なんですが、万一、怪我すれば学校の責任になってしまという問題が出て、結果、やめさせられたんです。計画では、アメリカでホームレスの建築とか、奉仕活動に参加すれば、それで単位をあげるんです。でもこれも事故になると、大学ではなくてアメリカの責任になってしまう。

 いずれにしても、この問題はみんな危惧しているんです。何かしないと、特にボーイスカウトにとっては大きな問題です。

【森主査】かつて、「親切がお白州」にという事件がありまして、親切で面倒を見たのに、事故を起こして裁判になったという、それ以来、たしか保険制度が整備されていると思うんですが、ちょっと説明してもらえますか。

【教育助成局審議官】スポーツ安全協会というのがございまして、そこで社会スポーツ等に関する一応の保険制度ができておりまして、集団で活動するようなときにはそこに加入していただくような制度も一応はできております。

【クラーク委員】ボーイスカウトも?

【生涯学習振興課長】青少年活動については、保険制度がかなり近年発達してきておりますので、そういったものに加入していただいて、事故が起こったときには保険制度が適用されるような、そういった形で青少年活動は事故問題に対応するような仕組みがとられつつございます。

【クラーク委員】これ、国家の保険制度ですか?

【生涯学習振興課長】違います、民間ベースです。

【クラーク委員】そうすると、掛け金も払わなくてはならないですね?

【生涯学習振興課長】そういうことになります。数百円程度です。

【梶田委員】兵庫県の全部の中学2年生に1週間、トライアルウィークで外でいろいろな活動をさせたんです。今おっしゃったとおりの論議が出まして、私はあれをやるときの委員をしたんですが、あれをやるというのを決めたときに一番反対したのは市町村教育委員会だったんです、「もし、問題が起こったとき、だれが責任を持つか」と。

 結局、今の保険制度を全部活用しながら、同時にここで踏み切らないと、曾野先生のこちらの方のあれにあるんですが、日本ではやはり責任がどこにということで今までは臆病になり過ぎていたと。それを一歩踏み出さなければいけないと。兵庫県の委員会の場合もその論議があって、踏み切ったんです。2年間やりましたけれども、その問題は一切起こっておりませんし、一番心配していた市町村教育委員会が非常に安心して推進しております。

 ですから、おっしゃるとおりなんですけれども、今のような保険とか幾つか手だてをあらかじめ講じていけば……。それからこの小学生、中学生2週間というのはカリキュラムに組めばいいというものではなくて、かなりお金をかけなければいけないですね。兵庫県も1校あたり何十万というお金を出しましたが、そういうようやれば、危なくないように、そのときの臨時の人間の配置などもできますので、不安はありますけれども、私はやはりこの辺で踏み切らなければいけないのではないかというふうに思うんです。

【クラーク委員】ボーイスカウトがそのくらいの掛け金を払えるかどうか。

【梶田委員】それは公的なところで払ったらいいんです。兵庫県の場合も、教育委員会がお金を払っているんです。安いんですけどね。

【勝田委員】うちの大学のことをちょっと説明させていただきますと、私どもの大学では1回生に対して、主として中国を含めて東南アジア、スリランカ、ネパールに、1週間ないし10日間、学生を派遣するんです。それは大学が全部原則としてもつんです。そのときに民間の保険をちゃんと掛けさせまして、それは各人が払えよということでやっておりますが、大したお金ではございません。かなりのお金を大学が負担して、そういう比較的貧しいところへ行って、いわゆる異文化接触というのかな。1週間ないし10日間で帰ってきて、レポートを読んでみますと、意味がありますね。日本の社会というのはどんなに相対的に見て安全で、平和で、豊かか、ありがたい国に生まれたかなというようなことも含めて、行く価値は大いにあるんです。

 だから、私は1週間、10日、できればもう少し、国が面倒を見て、そういうふうな国々に派遣する、異文化の接触をやるといいなと思っているんです。曾野先生は前から奉仕活動ということを強調されている。私もそれは賛成なのですが、それ以外に異文化、特に貧しい国々のいろいろな文化を眺めるということはその人の人間性を豊かにする所以だと私は思います。

【浅利委員】よろしいですか。

 森主査を中心に、曾野さん、梶田先生、私もお手伝いして進んできたやり方というのは、長く積み重ねてきた第1分科会の議論をマニフェストという形にまとめようではないか。そして具体策をつけて、双方で合掌造りのようにまとめる。

 今、片側の屋根の部分をつくったのですが、実は問題なのは具体的方策の方で、この議論を詰めていただいてその結果が、マニフェストとの整合性に問題があるようなら曾野先生にまたご一考いただくことがよろしいのではないかと思います。

(3)具体的方策の例

【森主査】そういうふうに今移はと思っていたところなのですが、それでは「具体的方策の例」に移ります。「父母へ、学校へ、広く社会へ」と分けてあります。これは国民会議の精神としては、上から押しつけるのではなくて、国民自らが主体的に考えて活動する方が効果的だということでそうしてありますから、こういう表現になっておりますが、これをさっとごらんいただいて、「日本人へ」と関連してまた両方でご意見をいただきたいと思います。

【河上委員】1行目の「父母へ」のところで、「家庭はあらゆる教育の原点」ということで多分あらわしていると思うんですが、後半の「家庭はくつろぎの場、ストレス解消の場であり」というのがものすごく強いですね。

【森主査】これは黒丸の方に移してもいいですね。「原点。」で終わってですね。「原点」というのは臨教審が言ったことで、中教審は「出発点」と言っている。それは問題を指摘しただけで、その後の対策がないから、国民会議でそれをフォローしようということなんです。

【河上委員】私の感覚的な言い方ですけれども、家庭は、例えば父性的な役割が3割くらい、母性的が7割くらいかなという感じなんですね。

【森主査】それも議論しました。それは、ここに書くのか、各論に入れるのかということで議論になったのですが、ぜひ書けとおっしゃれば検討します。

【河上委員】いえ、3割とか何割とかいうのはいい加減ですから(笑)。

 ですから、子どもに対してつらいことをさせたりという厳しいことも家庭でやっていただかないとまずいということがあらわれていれば私はいいと思うんです。

【森主査】それは「しつけ三原則」を各家庭ごとに考えるときに、お手伝いしようとか、厳しく何とかとか、それは各家庭で考えてもらったらどうかと。

【河上委員】今の浅利さんのお話でいえば、どちらかといえば家庭の親たちが子どもたちにものすごく甘くなっている、お父さんもお母さんもやさしくなっている。そういう状況に大きくふれていますから、それに対抗する意味ではもうちょっと家庭の厳しさを書いてもらった方がいいと思うのです。

【勝田委員】それも同感なんですけれども、私は実は子どもがまだ比較的小さかったときにウィーンに、私も本当にありがたかったんですけれども、外務省が「学生紛争で勉強できないでしょうか、行きませんか」というようなことを言ってくれて、外交官の資格で行ったんです。ウィーンで1年半くらいおりましたが、そのとき痛切に感じたのは、ウィーンの見知らぬ母親、父親、そういった連中が、例えば私が子どもを連れてオペラを見にいくでしょう。オペラで騒いだりなんかすると、「だめ」と言って怒るんですね。そういった意味で、家庭のしつけも大事です、これは一番です。ですけれども、社会も「子どもをほめよう、叱ろう」だと。つまり、今、日本では見てみないふりを……。

【森主査】「社会へ」のところであるんですが。

【勝田委員】「広く社会へ」でしょう。ここのところで、しつけ三原則の提唱、これもいいです。私は前から言っておることなんですが、しかしもう一度はっきり見て見ないふりを……。

【森主査】「子どもをほめよう、叱ろう運動」もそこに書いてありますが。

【勝田委員】見て見ないふりをする、そういう戦後の風習を改めようではないかということを伝えていただきたいなという気がするんです。

【森主査】はい。どうぞ、ほかにありませんか。

【田村委員】先ほどの「学校へ」というところに、「小・中2週間、高校1カ月」ということだと、これは学校でやるということになりますね。

【森主査】そうです。学校の教育課程の改定で……。

【田村委員】カリキュラムを変えようというわけですか。

【森主査】それをやらなければできないでしょうね。

【田村委員】何かほかに方法はないですか。

【森主査】ないと思いますね。そういう塾はできないし……。

【梶田委員】ここは、ボランティアベースでやっていたのではどうにもならない。ボランティアベースではもちろんいろいろなことをやらなければいけないし、民間でもそういうチャンスもいろいろとつくってもらわなければいけないけれども、「最低限、学校でも」という感じなんですね、ここは。

【森主査】2行目が本来のターゲットなんです。

【梶田委員】「将来的には満18歳のすべての国民に1年間の」というね。曾野先生の言い方からすると、徴兵義務の代わりに奉仕義務という……。

【森主査】いや、そう書いていない。兵役ではないと書いてある。

【梶田委員】ではないけれども(笑)。

【田村委員】書くのは自由ですからいいんですけど、実際、できるかなということを考えた場合ですね。

【森主査】そうしたら何もできないです、ここで提案しなければ。

【田村委員】だけれども、実際、例えば18歳のすべての国民に1年間やらせるということができるんでしょうか。でも、構わず提言するということですか。

【河上委員】大学入試の一つの資格にすればいいわけでしょう、例えばね。

【田村委員】だけれども、それは私立大学もあるから、私立大学が「うん」というかどうか。国立は言うかもしれない。

【梶田委員】だから、これは最後は、はっきり言うと政治家の人たちの腹なんですよ。やるという気はあるかどうかなんです。今のような積み上げで、みんながコンセンサスで下から全部やっていくというだけだったら、昨日までやってきたことしか今日できないし、今日やっていることしか明日はできないんです。それを一歩やろうと思えば、大胆な提言をしておいて、あとはその実施はお任せするよりしようがないですね。

【森主査】だから、教員免許をとるのに福祉体験、介護体験が必要だと義務付けましたね。田中真紀子さん、頑張って、頑張って、頑張って、それで実施されるようになったわけですね。だから、政治家がだれか頑張ってやれば、これはできないことはないんです。

【勝田委員】1年の奉仕義務の中に、いわば選択というとおかしいですけれども、海外の貧しい国に行っての奉仕活動……。

【森主査】それは、多様な方策があるでしょうね、各論としては。

【山折委員】学校のそもそもの本質的機能は何かというと、かつては強制的な機能ですね。“飼い馴らし”“訓練し”“叩き直す”という、強制的な機能は学校の本質的な機能だったと思います。それが特に戦後教育においては、その部分がほとんど消されてしまったという問題がありますので、これは世論の反発はすごくあるだろうと思いますけれども、学校の基本的な機能にそういう機能があるんだということをアピールするということは、今の時点で必要だと私は思います。

【クラーク委員】第3分科会の話とちょっと関係がありますが、特に木村主査が強く主張しているのは、大学の学年を欧米と同じく9月にずらすべきだと。そうすると、高校が終わって3月で半年くらいあくようになるんです。そうすると、この提案はもうちょっと現実的になるのではないか。もしそういうふうになれば、可能性は随分出てくるのではないかと思います。

【浅利委員】さっきの河上先生のご発言をずっと考えていたんですけれども、「家庭はあらゆる教育の原点。くつろぎの場、ストレス解消の場であると同時に厳しいしつけの場でもある」と入れたらどうでしょうか。やはり「厳しいしつけの場」というニュアンスはあった方がいいと思います。

【森主査】それはいいですね。そこで間接的に、父性原理、母性原理を足していけば。

【河上委員】言葉はどう書いてもいいですが、是非入れて下さい。

【勝田委員】「学校へ」という中で、「授業において古典、歴史を重視」、これは全く賛成なんです。もうちょっと具体的に、私はかつてお話ししたことがあったんですが、三重県の場合にはいろいろな人の名前が出ましたが、結局のところ、芭蕉と本居宣長、この伝記と芭蕉の代表的な句を小学生、中学生にぜひ覚えさせようと。そういったことで、各郷土の偉人たちの伝記、そういったものを勉強する。これは教育勅語の代わりになりはせんかなと思うんですけどね。

【森主査】各学校で、地域の特性を生かした郷土のそういう副読本つくりはすでにやっています。

【河上委員】先ほど途中で変なことを申し上げて申しわけありませんでした。

 「学校へ」の一番下のところで、私は小学校入学時に一定レベルの家庭教育がなされていない生徒については、就学を保留するというようなことをやはり入れてほしいのですが。

【森主査】私は、ちょっと無理なのではないかと。

【河上委員】どこまで書くかは別なんですけれども、そのことが先ほどから出ている家庭に対するある種のプレッシャーになると思います。

【森主査】そのプレッシャーのかけ方はいろいろあると思うんです。肉体的・精神的に明らかに遅れていて猶予するというのならわかりますが、「お宅の家庭の子どもはしつけができていないから入れません」というのは、教育としてちょっと……。

【河上委員】例えば、小学校1年生のときに、学級崩壊状況が既にあちらこちらで起こっている状況がありますね。そのときに、しつけという単純な問題ではないと思うんですが、少なくとも社会生活を営めないような生徒が大量にふえている現実があるわけですから、そのことを何とか問題にしないと。

【森主査】そうすると、M教師も今度は問題になりますよ。

【河上委員】当然、そうではないでしょうか。実際には、そういうことに手を触れないできているでしょう。

【森主査】これは、子どもも大人もみんな脛に傷があるのでつらいですね(笑)。

【浅利委員】「子どもへの対応を曖昧にせず、他の子どもたちの教育を守る措置をとる」というだけにしたらどうですか。

【森主査】ぼかしますか。

【浅利委員】「転校制度を創設する」という具体例を入れるので、かえって……。

【河上委員】具体的なことは入れなくてもいいんです。ただ、考え方として少なくとも現在の状況で、一緒にはもうできない状況になっているということがありますので、そのことはどうしても伝えてもらいたいんです。具体的には、これは文部省にもお願いしたいんですけれども、そういうような現場をよく見ていただいて、これは政治家の皆さんもそうなんですが、どうするのかはやはり考えていただかないと、学校そのものがつぶれるという方向に動いていると思いますので。

【梶田委員】サッチャー政権のもとで、イギリスがそれを断行したわけですね、今おっしゃっているようなあれを。だから、これの次の段階の細目を考えるところで、いろいろなことを考えられるかもしれない。

 だから、今おっしゃったように、「対応を曖昧にせず、他の子どもたちの教育を守る措置をとる」という……。

【河上委員】それで十分です。

【浅利委員】細目でやりたいですね。

【今井委員】この前会議でもお話ししましたが、これが単なる排除の論理になってしまうと、これは大変大きな問題で、私はとてもデリケートな問題だと思っています。ですから、そこを言うのであれば条件とか手続とか、その辺も十分な検討が必要ですし、そういう子どもたちを今度は社会でどういうふうに守っていくのか。学校にもどってくるというだけでも、いったん排除すると大きな傷を負って、そこで学校の子どもたちとなじめるのか、それはなじめないという議論がありました。では、その子ども達に対する社会的な支援というのはどうしたらいいのかというと、今それに対する施策は皆無だと思います。

 だから、排除うんねんというんだったら、それに対するフォローが検討されていないと書かれていないとだめだと思います。

【山下委員】河上先生の発言はよくわかるんですけれども、一つ、障害者の問題とか、そういうのも全部のけてしまえというふうにとられたり、その辺のところは弱者とそれがこんがらかるから、僕はこれくらいの方が……。そうしないと、みんなそういう形の中にというふうに思い込んでしまって、逆の批判が出てくるのではないかと。

【勝田委員】私は、昔、興味をもって、天才の伝記をいろいろ調べてみたんです。天才というのは、ほとんど全部落ちこぼれ(笑)、学校の成績が悪い、そして先生から排除される。エジソンなんか、ひどい目に遭いましたがね。天才は鋳型にはまることのできないエクセントリックな人間ですね。

【森主査】ただ、逆も真ならずなんですよ。

【勝田委員】そこが難しいね(笑)。

【森主査】アメリカのズッカーマンという女性社会学者が書いた、ノーベル賞受賞者ばかりを調べた学位論文があるんです。だけど、そういうのをいくら調べても自分はノーベル賞はもらえない。『科学エリート』というすごい本がありますけどね。

【江崎座長】ケース・バイ・ケースですね。

【田村委員】今の最後の「転校制度を創設するなど」をとるというご意見は私も大賛成なんですが、ただこれをもし書くとすれば、義務教育というのは強制的に行かせるところだという根っこがありますね。現実に、東京などでは今の義務教育、日本の義務教育に絶望して、国際学校とかインターを選ぶという人がどんどんふえているんです。だから、そういうことについても、反省が必要だと私は思っているんです。

 義務教育段階で、自分たちがやっていることが完全なので、言うことを聞くやつだけ入ってこいというようなふうに受け止められないように書く必要があるんですね。

【森主査】そう。それと、これは普通の小学校と教護院−−今は名前が児童自立支援組織という名前に変わりましたが、その中間くらいのものを制度化しようということなので、優れた子とか、アメリカのようにバッシングでまたどんどん別なものをつくるとか、そういうことではなく、いわばフリースクール的なものの変型を制度化するという、そんな感じではないですか。

【河上委員】私は具体的なイメージとか、そういうようなことを詰めて考えていませんので、責任を持ってお話しできませんけれども、ただ何度も私がお話ししているのは、子どもたちが非常に個性化している状況がありますから、いい意味でも悪い意味でもですが、それを一つの場所に入れて、一定の普通教育を行うということは無理な状況になっているということですね。今の日本の状況でいえば、2割か3割くらい私立に行っていますが、ほとんどの子どもたちが地域の学校に来るわけです。ほとんどの子どもたちが地域の学校に来るということを前提にして考えた場合に、非常に個性化した生徒たちを今の状況で全部受け入れて、秩序を保つことが不可能になっているということを何とかしてほしいというふうに言っているだけなんです。

【森主査】今は、保護者の同意を得れば、転校はできますね、学校の地域外指定という形でね。

【河上委員】まあ、同意はしませんから。

【森主査】例外をもう少し制度化しようということではないかと思うんです。これを徹底するなら、私は寄宿制にしなければ意味がないと思うんです。ただ、昼間だけ別の学校に行ったって意味ないです。

【河上委員】前に、町村さんがいらしたときにお話ししましたけれども、いじめが非常に激しくなったときに、いじめる生徒といじめられる生徒がいたときに、今の日本の制度ではいじめられる生徒が学校を出ていかなければいけないんですね。いじめる生徒に対して、例えば出席停止ということを行っていいというふうに、あの当時、町村さんがおっしゃいましたけれども、現実にはそれは非常に難しいです。

 現在の日本の場合には、例えば学校の中の秩序が乱れて、弱い生徒がそういうふうにされたときには、自分の身を守るためにはその子たちが出ていかなければいけない状況があるので、それはおかしいだろうと言っているんです。

 ですから、何らかの形で、例えば加害者側の生徒、あるいは授業を混乱させる生徒、私はそういう生徒を悪いというふうには全く考えていませんが、いろいろな原因があってそういうことをすることは確かですから。しかし、そういう子たちをどうするかということを考えていただかないと……。

 だから、小学校段階から中学校に来るときに、もう公立の中学校に見切りをつけて私立にどんどん出ていくわけです。そういうのを放っておいていいのかということがあるわけです。ですから表現の仕方が難しいことはよく分かるし、先ほど今井さんがおっしゃったように、いろいろな問題も当然出てくることはあるんだろうけれども、100人普通の学校に通っている現実があったときに、何名かの生徒たちの行動によってほかの九十何人が学校生活を安定して送れないということがあるとすると、そこは何とかしてもらわないと困るだろうと。

【森主査】だから、これは「排除の論理」ではなくて、分けるけれども義務教育なんだよと。そこで個性を生かす特色を出す、セパレーツ,バット・イコールという形で。

【河上委員】私は、前に言ったように、1兆円で30人学級にするよりも、何千億か使えば、今の普通の学校でやっている教育よりも非常に手厚い教育が行えると思うんです。

【森主査】ただ、日本人としては、「恥の意識」とかなんかありますから、問題になりますね。

【河上委員】そのとおりです。

【森主査】だから、「個性を生かす」とか何か言わなきゃ(笑)。表現をもう少し工夫するとか、少し考えてください。

【河上委員】私は単純ですから、あまりストレートにしゃべりすぎますから。ここではストレートにしゃべっていいと思ってしゃべっているんですけれども、文章表現はお任せしたいと思うんです。

 ただ、現実的に、ともかくいじめが激しくなった10年くらい前から、同じような状況がずっと続いているんですね。どこの学校でもいじめられた生徒が転校するというのが現実ですから、それではちょっとあまりに公立学校としては情けないだろうというふうに考えます。

 それから、学校の授業が、こんなうるさい状況でもうあきらめたという生徒たちは、学校の授業ではボーッとしていて、夜、塾で一生懸命勉強するという、本末転倒ですね。それが現実的にはあるわけですから、そこは何とかしてもらわないと、ここに出てきた私の役割が果たせないと思っています。

【勝田委員】お尋ねしますけれども、クラーク先生、オーストラリアでは日本のようにこんないじめというものは多いですか。

【クラーク委員】外国ももちろんありますけれども、日本は特別、陰湿的ですね。これ、ちょっと資本主義社会の避けられない現象ではないか。

 ただ、日本によくある、河上先生の悩みなんですけれども、学級崩壊、これは非常に不思議な現象なんです。外国はあまりないです。大きな原因は、外国だったら高校の卒業試験をちゃんとやっている、特に私の国はね。つまり、強制的に勉強しなさいというのではなくて、みんなわかっているんです、勉強しないと、学級の中で余計に遊べば、いじめとかやれば、卒業できないです。日本はみんな卒業確実でしょう。第3分科会も学力低下問題を取り上げられたんですが、同じ結論なんです。一生懸命勉強する、まじめにやるインセンティブがないです。もうちょっとインセンティブの面から考えるべきなんです。日本は理想論が多いんですが、具体的なインセンティブが目の前にあれば……。これは文部省にふさわしい役目なんです。

 今、センター試験があります。センター試験はすごくいい試験だと思います。大学入学のためではなくて、高校卒業に全国的な試験があれば、大学入学にも利用できるんです。オーストラリアの場合は入学試験はないです、高校卒業試験を使っているんです。それに、科目も増えているんです。日本はだんだんと狭くなっているでしょう。

 だけど、一番大きな役割は高校に入って、もちろんオーストラリアでも悪い子ども、いっぱいいますよ。でも、高校3年間座っていて卒業できないと、その3年間はむだなものになってしまう。結果として、悪い子どもでもある程度勉強するインセンティブがあります。日本はそれがないから、大きな問題ではないかと思います。

【勝田委員】卒業のときにセンター試験といったものを導入する、これ、考えていただけませんか。そうすると、いじめをやっているやつらは、とてもではない、できませんしね。私の中学のときに、嫌なやつがおりましたけど、試験のときにカンニングですけど、見せてやるんです。ですから、「勝田君、すまんな」といって、結構、それはもちつもたれつだったんですけどね。

 卒業試験、センター試験、これ、ひとつ全国的にやるとおもしろいと思います。

【中曽根補佐官】 それは、もちろん一つのお考えでしょうけれども、現在ある高等学校での試験、単位の認定というか、それはそれで厳しくやればできるということですね。

 そうすると、不登校がふえてしまうとか、そういうのもあるかもしれない。

【河上委員】現実的には、私の友人の高校の教師が言っていますけれども、例えば赤点をつけると、「おまえの教え方が悪いから」という論理になるんだそうです。赤点をつけたのは、おまえが授業できちんと教えてくれなかったからだということを主張する。ですから、赤点をつけて、落第させるというのは非常に難しい状況になっているようですね。

【中曽根補佐官】 そうすると、一律の試験の方が……。

【河上委員】ええ、ですから、そこはどうもなかなか一筋縄ではいかない状況のようです。

 学校としては、そういう生徒をなるべく早く送り出した方が安全ですから、そういう教師の方の考え方もあるんじゃないでしょうか。

【森主査】センター試験にしたって、この学校の先生の教え方が悪かったと言われたら、どうするんですか。だから、子どもの意識というか、国民の意識を変えなければいけない。教育の最後は「自己責任」。曾野さんじゃないけれども、50%は自己責任。

【中曽根補佐官】 センター試験のための今度は受験勉強みたいになるんじゃないですかね(笑)。

【山下議員】森先生、先ほどおっしゃっている「問題を起こす子ども」ですけれども、他の子どもたちを守るという観点と同時に、先ほど一般の学校と教護院の真ん中とおっしゃいましたけれども、問題を起こす子どもというのはものすごくケアが必要な子どもということですね。それを蘇生させる工夫というか、そういう制度を考えるという前向きの方を議論した方がいいと思うんです。

【河上委員】そのとおりだと思います。それは、私も最初から発言させてもらっていたんですが、不登校の子どもたちも同じなんです。現在の日本の普通の学校に適応できない生徒たちが大量に、今十数万出ているわけですから。ところが、具体的にはその生徒たちについては、国が具体的な施策を何もしていない。民間のフリースクールみたいなところにお任せしているわけですから。それも「問題のある生徒」の中に入っているんですけどね。

【森主査】それは家庭的雰囲気なんです。ベスタロッチが孤児院の院長になったときに、まず頭に浮かんだのは、立派な家庭の長所を孤児院に取り入れようと。だから、今の教護院の教育方針も、家庭教育の長所を取り入れるという制度でしょう。お父さん、お母さんに代わる教護・教母が一緒に生活するという、そこでは「一緒に」がキーワード。“Withの精神”というんですが、そういう意味ではやはり寄宿制にしなければいけない。

 イギリスの貴族階級がなぜ子どもを小学校から寄宿学校に入れるかというと、自分で教育すると子どもがだめになるというのが親がわかっているから、寄宿学校に入れてしつけとスポーツをしてもらうわけでしょう。日本も金持ちになったから、日本中の学校を寄宿学校にすれば、いじめなんかなくなるかもしれないんです、極論すれば(笑)。

 それは大変だから、家庭教育、しっかりしてくれよと言っているんです。

【田村委員】よろしいですか。

 また、いろいろなところで発言して申しわけないんですけれども、今の新しいシステムの学校をつくるというのは、僕は非常に難しいと思うんです。なぜかというと、戻ってこれないんです、一回行ってしまったら。それを絶対に親は「うん」と言わないと思います。混乱するだけじゃないですかね。

【森主査】今までの日本の教育の欠点は、横の転学がないんです。学校制度でも、接続の問題でも、縦のアーティキュレーションだけを問題にしている。水平レベルのインテグレーションのことを問題にしていないからだめなんです。ヨーロッパの学校は転学自由ですね。日本は、「高校中退」という。あれは法令用語にもない言葉を使って、社説なんか「中退」は悪いように、「中退をなくそう」と。それは「転学」と言えばいいんです。高校から各種学校へ転学する。「中退」という言葉は差別なんです。

【田村委員】現実にはそういう社会でしょう。

【森主査】そういう現実を直すには、横の転学ができるように。

【河上委員】私はこういう具体的なことを言うのは控えようとずっと我慢していたんです。新しいことを提言すればそのことについて、当然いろいろな問題点があるわけですから。

 私の役割は、学校の現状はこうなっているので、ここにいらっしゃる方々にそれについて考えていただきたいということで何とか我慢しようと思ったんですけど。

【森主査】第1分科会の中間報告までのノルマとしてはこの程度で、今出たようなこの各論がそれぞれ必要なんですね。それは、今までの審議では議論されていないんです。それは今後の課題です。

【河上委員】ただ、一つだけ。何度も言っていますけれども、ともかく「現在の学校をつぶさない」ということを前提とするのであれば、あちらこちらの学校が悲鳴を上げている現状があるわけですから、そのことを何とかしていただかないと困るのです。ともかく、今の状況のままで、先ほどから繰り返していますけれども、やられている子が逃げなければいけない状況は何とかしてほしい、それだけです。

【森主査】こういう制度ができると、親も慌てて息子に、「おまえ、あんなところに行ったら大変だから、しっかりしろ」とか、案外、ほかの効果もあるかもしれませんよ(笑)。

【浅利委員】田村さんは河上先生の提起されている問題に対して、具体策をどういうふうにお持ちなんですか。

【田村委員】もし、そういう問題が起きる学校があれば、公立学校でもつぶれるという方向にいくということだろうと僕は思っているんです、無理することはない。それについて、真剣に考えるなら、教育委員会はしっかりやるだろうと思います。

【河上委員】しかし、それは権限がなくてできないですよ。

【田村委員】ちょっと発言中なので。

 公立学校はつぶさないというところで、こういう混乱が起きているんですね。だから、そういう根源のところで僕は考え方が少しずれているんだと思うんです。

【河上委員】つぶれたとしますね。うちの学校なんか、混乱していますから、うちの学校はもうつぶすということになったときに、そこの生徒たちはほかへ行くわけでしょう?

【田村委員】いえ、そうではなくて、そのことは学校の選択制につながっていくんです、私の意見は。義務教育といえどもある程度選択制にすべきだろう。だめなやつはつぶせばいいと。当事者努力が全然反映していないのではないか。

【河上委員】それは構わないですけれども、うちの学校をつぶすということになって、その生徒はほかに行きますね。ほかへ行って、同じことをしますよ。

【田村委員】だけれども、それは学校の……。

【河上委員】学校の教師の能力が高くて、学校の管理能力とか、いろいろものが優れている学校ならば、そういうことは起こらないと考えているのであるとすると、私と現状認識は違うんです。

【田村委員】それは、そういう問題が起きてそうなったところで、教育委員会は真剣に考えると思いますよ。そうではない学校を考えようと。

【河上委員】考えることはいいですが。

【田村委員】私が一番気になるのは、河上先生は今ある学校を守るということを中心に発言されるんです。僕は今ある学校を守るという発想ではなくて、社会が変わってきたら、学校も変わらなければならないんだから。

【河上委員】私はそうだと思いますよ。

【田村委員】そうでしょう。だったら、「今ある学校」というふうにおっしゃったから。そうすると、学校の努力が足りないのではないかという、必ず反応が出てきます。

【梶田委員】これは、あと細目のところで考えなければいけない問題だと思いますが、ただ大事なのは、これは論点ははっきりしているんです。今までは加害者は守られてきたんです。それで、被害者がうろうろとせんといかんような状況が10年も20年もどんどん広がってきているわけ。これに対してどうするかという話なんです。ですから、ここではまず原則論だけ書いておいて、それには幾つか選択肢があり得ると。

【森主査】これは「義務教育は何か」という問題に究極はいくんです。そうすると、義務教育を憲法で規定した以上、公教育として学校をつぶせないんです、変えなければいけないんです。学校をつぶすということは、僕はあり得ないと思う。変えればいいんです。

【河上委員】これも田村さん、誤解してもらったら困るんだけれども、さっき言った問題を起こす子どもたちだって将来大人になるんですから、社会的自立のための能力をつけなくてはいけないんです。圧倒的多数の、例えば98人の子どもがつけなければいけないのと同じように2人の子どももつけなければいけないんです。現状では、2人の子どもたちが学校の中をかき回すことに対して、学校の権限が全くない状況ですから、両方ともダメなんです。

【田村委員】それは抜本的な議論というところでいえば、私の解決策は選択制だと思っているんです。

【森主査】選択制というのは強者の論理なんです。

【田村委員】そうではないです。つまり、学校が変わるきっかけがそこでできるんです。

【森主査】選択できない人もいるんです。

【田村委員】だから、学校をつぶさないんだったら、変えようがないわけです、現状では。だって、教員は全部身分保障されているんだしね。

【森主査】変えるというのとつぶすというのと、ちょっと言葉の使い方が違うような気がする。

【河上委員】田村さんは、きっと現在の学校の教師の能力は低いから問題が起こっているとお考えなのでしょう。

【田村委員】それはあると思うんです。

【河上委員】ありますよ、それは。しかし、そうなら簡単な話でしょう。優秀な教師をいっぱい雇えばいいわけでしょう。そういうふうに法律を変えればいいわけです。例えば、現在の状況で教員の身分が守られ過ぎていて、だめな教師がたくさんいる学校が非常に混乱しているということであれば、それはその学校をつぶしていい教師を雇えばいいという理屈です。しかし、それで解決するなら、私はこんな楽な話はないと思う。

【田村委員】現場を知っていてこういう発言になるんですが、実際に働いているのは半分しかいないという中学校だってあるんです。

【河上委員】そんなことはないですよ。それ、田村さん、見ているところが違います。

【田村委員】それは、幾つもあります。

【森主査】変えるべきところは変えなければいけないけれども……。

【田村委員】それを放っておいて、生徒の方を追い出すということを先にやったら、僕は必ず反発が出てくると思う。

【森主査】先にやるのではなくて、学校も変える。村に中学が一つしかないのに、それをつぶしたらどうなるんですか、行くところがないでしょう。

【田村委員】そういうところには大体起きないですよ、問題は。

【河上委員】そんなことはない。

【森主査】だから、選択制は否定しません。選択制もあってもいいけれども、全国画一的に選択制にする必要はないと私は思いますね。

【田村委員】それはそうでしょう。

【江崎座長】もとに戻るんですが、田村さんもちょっとおっしゃったですけれども、共同生活による奉仕活動の義務化ですが、私が学生のときに“アルバイト・ディーンスト”という言葉がはやりまして、奉仕活動をしたわけです。これは戦争中、人が足らなくなって、農村と工場などに奉仕活動に行ったわけです。

 それはいいんですが、ここで「満18歳すべての活動で奉仕期間」、どういう奉仕をする場所がありますか。大体120万の人間が18歳でいるわけです。もし、これを義務化するのだったら、ちょっと言葉足らずではないかと思うんです。

【勝田委員】曾野さんの考えられているのは、私が理解するところでは身障者施設とか老人ホームとか、そういうところでやれば……。

【江崎座長】だけれども、1年間120万の人間が働く場所ですよ。これをこのまま書くというのは、ちょっと僕はプラクティカルティーからいって、大変問題があるのではないか。ですから、もう少しソフトに書かれる方が実際的ではないか。

【クラーク委員】じゃ、半年くらい。

【江崎座長】期間は、これ曖昧にしておく方が……。

【今井委員】期間はもう少し曖昧というか、今の国民の18歳の1年にしても、もう少しこれは幅を持たせた方が。

【森主査】例えば、議論に出たのでは、介護保険が問題になっているときに、例えば病院の清掃を1年間するとか、いろいろあるわけです。

【江崎座長】しかし、それは……。つまり、我々のときは戦争中だったし、人が足らなくなって、ちゃんと奉仕する場所があったわけです。しかし、現在は別にレイバーショーテージが起こっているわけではありませんし。

【森主査】海外青年協力隊にはたくさん行くんですが、国内協力隊が少ないんです、日本は。

【梶田委員】おっしゃるとおりですけれども、例えば兵庫県の場合、わずか1週間ですけれども、全員がどこかで奉仕活動的なことをやっているんです。

【江崎座長】1週間だったらいいです、私はね。

【梶田委員】そのときも同じ論議が出たんです。ですから、これは考えようなんです。例えば老人ホームも本当に必要なのは3人、5人かもしれませんけれども、いろいろなことでお手伝いするのに30人行ったっていいわけですし、これは考えようですから、これは各論で私は考えられるし、確かに今井さんがおっしゃるように「1年」という言い方を出すかどうかという問題はあるんだけれども(笑)。

【江崎座長】もう一つは、やりがいがあったという気持ちを持たさないとこれは意味がありませんからね。

【梶田委員】でも、意外とあるものなんですよ。

【江崎座長】120万の人間が1年間働くというのは……。

【梶田委員】でも、一つの県で中学2年生全員行くということを今やっているわけですね。ですから、これは県が国になったのと同じことですよ。

【江崎座長】基本的に私は賛成しますけど、ちょっとこれをソフトに書いていただいた方がいいのではないかと思います。それだけです。

【勝田委員】1年というのは、ちょっと、まあね。

【森主査】2年を1年にしたんですよ。

【勝田委員】そうなの(笑)。

【河上委員】ただ、どうなんでしょう。そういうふうに「1年」と書くことによって、みんなが「なんだ、こんなのは絵空事じゃないか」というふうに笑ってしまって黙殺されるのは困りますね。ただ、「1年」と書くことによるショックも大きいと思うんですけれども、どっちを選択するか。

【江崎座長】だけれども、あまりプラクティカルティーでなければ、ちょっと。

【河上委員】ただ、実際に私なんかの住んでいるところなんかでも、具体的に市がやらなくてはいけないような仕事が財政上の問題でやっていないんですね。道路の清掃活動にしても、雑草が生えっ放しで、そういうものもほとんど手つかずの状態で、地域の住民もほとんどやっていない状況があって、そういうものは探せばごまんとあるのではないかと思うんです。ですから、具体的に本気になってやろうとすれば、いくらでも見つかるかなという感じはするんですが、ただ今座長がおっしゃったように、「何だ、これは全く絵空事で、馬鹿馬鹿しいマンガだよ」と言われて黙殺されるのが一番困るという感じはするんですけどね。

【今井委員】私は、まず小・中学校で、まず実施してほしい。その中で勤労や奉仕の大切さとか、合意がとれるといいですね。段階的に導入すると経験を積んだ子ども達は18歳で奉仕ということも視野に入るかもしれない。奉仕の大切さはわかるが、社会全体がそういう流れになることが大切。

【森主査】これはインターネットで流せばごまんと来るんじゃないですか、奉仕を我が方は要求しますというのが。

【江崎座長】やはり、18歳にその体験をさせるという、充実した奉仕期間をつくってやらなくてはいかんわけですから、それが僕は120万の人間、1年、充実した奉仕をする場は今ちょっと見当たらない。あまりプラクティカルティーではないと。

【森主査】教員免許のときも議論になって、そんなにできるのかという議論があったんですが、結局、見学も入ったんですね。

【江崎座長】教員免許はそれは違いますよ。これは全員を、120万ですよ(笑)。

【森主査】教員免許ですらそういう意見が出たんですから。

【沈委員】時間がないものですから、ちょっと言わせていただきたいのですが、大変なおもしろい話の腰を折ったようで申しわけないのですが、大変大事なことが決められていきます。そして、「広く社会へ」というところでは「マスコミの協力を得た国民運動の推進」ということが書かれております。ただ、これがおもしろい話で、楽しい話であれば、マスコミにも影響力が大きいでしょうけれども、この難しい問題をマスコミを通して、どれだけ一番下の国民にまでこの会議の意思が届くかということを僕らはもう一回考えなければいけないだろうと思うんです。

 文部省の生涯局は二百数十名の陣容であります。これが200万の県に行くと二十四、五名です。そして、1万を超える町に行くと社会教育担当は2人です。これが文化財も社会体育もみんなやって2人なんです。だから、これは何もできない。結局、これを受け継ぐのは公民館運動なんです。

 公民館というのも、社会教育法の20条から40条まで書いてある官製の公民館ではなくて、住民たちが自治的につくっている小さな公民館ですね。これは、国では類似機関であるとして、法律でも認めていないくらいの小さな20〜50ファミリーくらいでつくっている団体です。国で決めたものが最後にここにおりていったときに、話がしみ込んできて、広がっていく。ところが、これが非常に能力を低下して、地方の教育力が落ちたというのは、そういう自治体、住民が自治的につくっている組織がまさに崩壊しようとしている。これを建て直さなければいくらマスコミの協力を得てもうまくいかないと思います。

 それで、この問題をどうしても「広く社会へ」という中に1項目をあげてもらいたい。全国で一生懸命、自分たちでお金を出して、自分たちで地域を支える会をつくっている人間に、国も注目しているということを知らすためにも、これは見出しを変えるのではなくて、ぜひ1行はっきりと入れてもらいたい。

【森主査】具体的にどういう言葉を?

【沈委員】例えば、彼らは集まる会場も持っていないような組織もあります。そうした人たちに少なくも小学校単位に1つくらいは、触れ合って、みんなが集まって、研究し、子どもの教育を論じられるような、そういう建物を含めた支援がほしい。しかも、今までの公民館の目標の中には社会教育的な、地域の教育団体を結集して一つの力にするという目標が入っておりません。それがなければ、何を決めても画餅に帰します。ぜひ、そういうことを視野に入れて、その方途を考えなければいけないと思います。

 ぜひ、地域の教育力復活のために、法律で決まっていない、自分たちがお金を出してつくっている自治組織に力と支援を与えてもらいたい。

【森主査】自治的なものは本来自治的にやるのが自治的なのですが、それを支援すればもっといいというご意見だと思うんですが、それはいいのですが、マスコミの協力で非常に貴重な意見をいただいたのですが、マスコミはコマーシャリズムでスポンサーのことばかり聞いていて、本当にするかどうかという問題はありますが、私は法務省の人権救済の審議会で一覧表を見ていましてハッとしたのは、各県の人権救済機関の一覧表があるのですか、そこの責任者に静岡県と愛知かどうかでしたか、テレビ局の社長とか新聞社の会長がなっているんです。だから、しつけの国民運動推進会議というのができたら、各県の会長にテレビとか新聞社の社長を据えつける、それで利用したらどうかなと思ったのですが、どうなんでしょうね、各論では(笑)。

 ほかにどうぞ。

 それでは、これは「具体的な方策の例」なので、これをもう少し整理して、それぞれ各論がこの後につくのだということで、きょういただいた意見も織り込むということと、18歳1年奉仕期間は厳しいのではないか、もう少し中身を想定しながらソフトにということなので、これは考えることにいたします。

 それから、「日本人へ」というこちらの方と両方絡めてご意見ございますでしょうか。小見出しはこれで確定してもいいのでしょうか。

【今井委員】「具体的な方策」のところで、3つ目のポツに「小学校に道徳、中学校に人間科目」とありますけれども、これは「例えば」くらいで、道徳の名前についてはもう少し幅を持たせていただいてもいいのではないかという気がします。

【森主査】「道徳を教科にし」というのはいいですか。

【今井委員】はい。

【森主査】では、「道徳を教科にし、例えば小学校では……」とかね。

【今井委員】できれば、外部の専門的な人に入っていただく。

【森主査】それは入っています。

【河上委員】もう一つですが、沈さんがお話しになった通学合宿というのがありましたね。あれは非常に興味深く聞いたのですが、今まで全然知らなくて申しわけなかったのですが、あれはすぐにでもできますから、例としてどこかに入れて下さい。

【森主査】あれはもうやっているんです。

【河上委員】この前、パンフレットがありましたね。ああいうことを全国的に広げるということはおもしろいと思うんです。

【森主査】短期寄宿学校ですね。

【河上委員】そうそう。それを具体策のところでちょっと書いておいていただけると。

【森主査】「通学合宿」というのはもう定着した言葉ですか。文部省が使えば定着するんですけどね(笑)。

【銭谷室長】「通学合宿」と言ったり、「合宿通学」と言ったりいろいろありますけれども、かなり使われてはいると思います。

【森主査】どちらがいいんでしょうか。

【沈委員】異年齢の交流というのが一番大事なことだと思います。同じクラスで移動して、そこで一晩いたって何にもならない。

【森主査】地域のことですから、異年齢なんです。

【河上委員】そこで、さっき沈さんがおっしゃった自治公民館みたいなものとの絡みが出てくるんでしょうね、きっと。

【森主査】前回の文部省の報告書は「通学合宿」でしたね?

【銭谷室長】「通学合宿」です。

【沈委員】子どもは変わりますよ。集まって異年齢で交流すると。そして、暇があったら、いい場所があったら、福祉の奉仕に行けと。そのくらいの方が私はよろしいと思います。

【森主査】文部省はいろいろいいことをやっているのに、どうしてもっと宣伝しないのかな(笑)。学校の先生が知らないというから。

【河上委員】本当に申しわけない。

(4)その他

【森主査】では、「日本人へ」の方の小見出しを確認します。
 物質的豊かさと平和の中で
 善と悪の狭間で
 人生の最初の教師
 教室で道徳を教えるのにためらう必要があろうか
 教師へ
 地域の教育力と最後は自己責任−−表現をちょっと工夫します。
 奉仕の志
 道は厳しいが

 そういうことで、これは曾野先生の了解を得まして、修正点があれば修正したものを皆さんのお手元にお送りいたします。
 全体を通じて、若干時間がございますが、意見がございましたら。

【山折委員】先ほどの奉仕活動のことなんですが、この「日本人へ」の方にも出てまいりますね。その説明の仕方なんですが、「個の自立と公の創出」という言い方がありますね。真の公の創出のためには、献身とか奉仕の精神が必要だということを一言入れられたら、説得力が増すのではないかと思います。

【森主査】それは「日本人へ」の方にですか。

【山折委員】どちらでも結構ですが。

【森主査】そうですか。

【中曽根補佐官】 よろしいですか。

 ちょっとぶり返すようで申しわけないのですが、この奉仕活動の小・中2週間というのは、小学校6年の間で1回2週間ということなんですか。それとも毎年ですか?

【今井委員】いえ、私は毎年と。

【中曽根補佐官】 わかりました。

【森主査】それをわかるような表現にした方がいいですね。

【中曽根補佐官】 毎年ですね。でしたら、私も大賛成です。

【今井委員】夏休みとか長期休暇のあり方をちょっと見直しをしていただいて、体験学習ももう少しいろいろな選択ができるようにと。

【中曽根補佐官】 高校も毎年1カ月ですか?

【今井委員】それはちょっと……(笑)。

【森主査】学校が指定するのではなくて、本人が見つけてきて行ってもいいわけでしょう。

【梶田委員】これも各論ですからね。これは、むしろショッキングな表現をしておいた方がいいんですよ。インパクトのあるやつをね。どうせ、また全体会があるわけですから、そこで揉んで、大分トーンダウンするわけですから(笑)。

【中曽根補佐官】 もう一ついいですか。先ほど山下先生がおっしゃった問題を起こす子どもの対応ですが、被害者の救済だけでなく、問題を起こす子どもの矯正という趣旨もぜひ、わかるようにしてください。

【河上委員】両方とも将来の国民だということをやはりはっきり言うべきでしょうね。排除して、おまえら要らないよということではないわけですから。

【森主査】前に、むしろ問題児と言われている子どもから、非常に能力がある、一芸に秀でた人が出るという意見が出た(笑)。

【沈委員】鹿児島で青年教師二十数名の会をもったんです。私の意見だということで、河上説を彼らに伝えてみました。ことごとく反対でした。別にいたずら坊主が集まる学校をつくったら、第2少年院となるだろう。それは少年法でやれという、これは教師の意見です。それから、「親が承知しない」「だれがその子どもを選定するのか」、さまざまな意見がありまして、我々教師は命懸けで子どもにぶつかっているか、それをしてからのことだというようなことで。

【森主査】正論ですよ、それは。

【沈委員】私の意見として河上先生の意見を。

【河上委員】いいえ、河上の意見と言っていただいてかまわないんです。

【沈委員】えらく厳しくやりました。現場はそういう気概がまだ残っていました。

【山下委員】全く個人的な考えですけれども、柔道界がもっとしっかりして、僕は柔道で救われた人間ですから、そういう問題を抱えた子どもたちを小学校、中学校でもどんどん呼び込んで入れようではないかと。そして、逆にいじめられている困っている子どもも入れようではないか。それをぜひ成功させて、いろいろなスポーツでそういう子どもたちをどんどん入れて、もちろん全部はできないけれども、何とか……。今の柔道界では無理ですが、そこに柔道なり、武道あるいはスポーツが、本来一人ひとりの指導者がしっかりした自覚を持っていけば、僕はある程度役割を果たしていけるのではないかと。

【森主査】警察署は道場をもってやっていましたね。

【河上委員】頑張っていますね。問題の生徒を集めてやって、成果を上げていますね。

【森主査】それを少し拡大していただく。

【山下委員】シドニーオリンピックが終わったら少し時間が出てきますから(笑)、そうしたら、まず柔道界の内部の指導者の意識改革をして、そして全国に向けてやろうと。それだけではなくて、いろいろな熱心の運動の先生方、そういうところから何かやれるのではないかと。

【田村委員】それはすごいですよ。私も日体大のレスリング部の後援会長をやっているんですけれども、高田っていたでしょう、モスクワで泣いた。あれは、暴走族でどうしようもなかったんですよ、中学校で。それをスカウトに行きまして、とにかくやれというのでレスリングをやらせたら世界一になってしまった。だから問題児は天才というのは、ある意味ではわかりますね。

【森主査】お相撲さんもいましたね。問題を起こす子どもへの新しい教育の可能性を考えるとか、何とかそういうふうにぼかしますかね。

【田村委員】だから、「転校」というのは書かないでいただきたいですね。

【河上委員】それはいいです。そういう考え方が出れば構わないですから。ともかく、それをきっかけに皆さんに考えていただくということが必要だろうと。

【森主査】「排除」「隔離」ではなくてね。

【クラーク委員】千代海?

【森主査】千代大海ですね。

【山下委員】私もそうです(笑)。かなりタイプも違いますから、それだけで片づくというものではないと思います。

【河上委員】多分、スポーツにも耐えられないんですね、今のそういう学校の中で好きなように動いている子たちはね。エネルギーそのものがそういうふうな爆発的に、あり余ってやっているという昔の校内暴力の時代の生徒と違うんですね。だから、ちょっと簡単にはいかないと思うんです。でも外側のいろいろな人たちがそういうことをやってもらえれば、学校はすごく楽になるということは確かです。

【山下議員】教育基本法の問題で既にご意見が出たかもしれませんけれども、第1条ですが、「教育の目的」というのは議論はものすごく大事な時期だと思うんですが、ただ法律に「教育の目的」を規定することは、極めて慎重でなければならない。「教育の目的」というのは、法律になじむのかなという考え方を持っていまして、これは大変大事な問題なのですが、これはぜひ議論していただけたらなと。

【森主査】これは、裁判のときにたしか10条絡みで問題になったんですね。10条の条件整備に教育の内容が入るかどうかという議論のときに、入るという人は内容の中の内容である教育の目的が第1条に書いてあるじゃないかと切り返したんですが、文部省の方で何か意見はありますか。非常に難しい問題ですね。

 江崎座長、最後に何か。

【江崎座長】分科会の成果として、きょう読ませていただきまして、一番の問題はどれほど国民にアピールするような改革ができるかという線でございますが、かなりインパクトが出るのではないかと。プラクティカルティーは大事だと思いますけれども、大変成果があって、座長としてもありがとうございます。

【沈委員】きょうで分科会は終わりでしょう?

【森主査】終わりですが、なくなるわけではないんです。必要に応じて。

【江崎座長】ほかの分野とオーバーラップするところなども当然ございますから、全体会でそれをどういうふうに整合して最後の……。

【沈委員】細目はいつ、どこで承認するんですか。

【森主査】細目までここでやるのかどうかも全体会で決めなければいけないということですね。

【江崎座長】全体会はいろいろな議論が出ますから、なるべく分科会でまとめていただく方がかえっていいのではないかと私は思うんですが、23人が集まったときよりも、これだけ集まる方が割にまとまりやすいですから。

【森主査】どうもありがとうございました。

 では、最後に、確認事項として再度皆さんに申し上げておきますが、きょうの審議した原案はほかの分科会との兼ね合いがありますので、皆さんの同意が得られれば、これについての審議は一応終わりにいたしますということと、公表前にはあらかじめ必ず最終案をお送りします。皆さんに送る前に公表はいたしませんということです。ですから、本日の資料は取扱注意になっております。漏れないようにということです、まだ手直しが必要かと思います。それを最初に申しましたが、重ねて申し上げておきます。

【銭谷室長】最終発表資料は主査一任ということでよろしいわけでございますね。

【森主査】曾野委員の了解を得た上で、取りまとめにつきましては主査一任、梶田先生と一緒ですが、そういうことでよろしゅうございますでしょうか。

〔「はい」という声あり〕

閉 会

【森主査】どうもありがとうございました。
 6回にわたってご審議どうもありがとうございました。

─了─