教育改革国民会議

教育改革国民会議第3分科会
第2回議事録




【木村主査】教育改革国民会議第3分科会、第2回になりますが、始めさせていただきます。
 レジュメには「冒頭、カメラ撮り可」と書いてありますけれども、だれも来ていないようなので、始めさせていただきます。

<配布資料の説明>

【木村主査】討議に入ります前に、前回、委員の皆様方からご注文が出ました、資料いくつか準備してございます。これにあまり時間をかけますと、討議の時間がなくなりますので、簡単に銭谷室長からご紹介いただきたいと思います。興味のある資料も入っておりますので、よろしくお願いいたします。

【銭谷担当室長】私の方から、前回までに委員の先生方からご要請のありました資料を準備してございますので、事項だけご紹介させていただきたいと思います。なお本日、文部省からも担当の課長が出席し、議論の中でご質問等があればご説明できるようにいたしておりますので、よろしくお願いいたします。

 まず、資料2でございますが、これは高等教育の現状の客観的なデータを示したものでございます。前回の会議のご議論との関連で言いますと、「大学院在学者数の推移」がございます。平成5年の12万2,360人が、平成11年では19万1,125人と急激な増となっております。

 資料3は、卒業後の進路に関する資料であります。最初の2枚は第2回全体会議のときにお配りしました「教育を取り巻く現状に関する資料」の中に記載したものをそのまま転載いたしております。

 3枚目は、「(3)高等学校卒業後の進路状況」であります。これは高等学校の普通科、職業学科、総合学科など、学科別に見ました進路状況を記したものでございます。例えば、普通科は大学等への進学率が52.6%、職業学科が15.7%、総合学科が30.5%とか、そういうふうにご覧いただければと思います。

 次は、「(4)高等学校学科別就業者の離職率等」という資料でございます。高等学校を卒業いたしまして、1カ月以内で就職した者のうち、最初の職場を高卒後5年8カ月以内で離職した者の割合が「B新卒就業者中の初職を離職した者の比率」であります。これを見ますと、5年8カ月以内に離職したものの平均は53.2%ですが、普通科の卒業生は57.1%の離職率であるのに対し、工業科の卒業生は43.5%で、工業科を卒業した者の離職率の方が低くなっております。逆に言うと定着率が高いというデータであります。

 資料4は「起業家の最終学歴」の国際比較であります。これは自分で新しく事業を起こした方の最終学歴をアメリカ、イギリス、日本で比較したデータであります。これによると、我が国は、高等学校・高専卒業が最終学歴の人が36.2%で高いこと、大学院卒がアメリカ、イギリスは26.1、21.8%に対して我が国は1.2%ということで、大学院を終えて起業したという方が日本は非常に低いということであります。

 資料5は、イギリスの習熟度別クラスについての資料であります。これによると、イギリスの初等、中等学校におけるクラスの編成方式は、大きく2種類であります。すなわち、日本の小・中学校と同じで、能力あるいは習熟の程度の高い・低いに関わらず、同じ年齢の子どもを同じ学級に入れるという混合能力編成と習熟度別編成があります。かつてイギリスの初等・中等学校では習熟度別クラス編成が一般的であった訳でありますが、その習熟度別クラスには、ストリーミングとセッティングとバンディングという3つのやり方があります。ストリーミングは、すべての教科の学習指導を全般的な習熟度に従ってクラス編成をするやり方で、イギリスではかつては普通のやり方だったそうであります。1960年代以降、いわゆる総合制中学校の普及といったようなこともございまして、全体として習熟度別のクラスは後退して、現在どうなっているかということを見ますと、まず初等学校の方は今日では混合能力編成が最も一般的であります。日本の小学校と同じような学級編成で授業をやっている。ただ、一部の学校では、特定教科についてセッティングを採用している。このセッティングは、特定の教科について習熟度別にクラスを編成する。例えば、数学、理科とか国語などの基礎的な教科で、習熟度に応じてクラス編成をするということがイギリスの初等学校でも行われている。それから、混合能力編成のクラス編成の中で習熟度別の編成までいかなくても、能力別のグループ指導といったようなことは広く普及しているということでございます。

 それから、中等学校では、現在はセッティングやバンディング―バンディングというのは習熟度に従って、学年の生徒をいくつかの集団に分けた後、各集団の中で生徒をセッティングあるいは特定教科についてはさらにグループ分けをするとかいうやり方でございますが、そういうセッティングやバンディングによる習熟度別指導がかなり普及している。

 現在のイギリスの労働党政府は、セッティングによるきめ細かな指導を徹底する方針を打ち出しているということでございますので、特定教科について習熟度別の指導を徹底していこうというのが今のイギリス政府の方針のように伺っております。ちょっと長くなりましたけれども、資料5は以上でございます。

 資料6は、前回話題になりました「飛び入学」の資料でございます。まず、飛び入学制度は資料6の1枚目にございますように、当面、数学と物理に限定して、対象者は17歳以上、高校2年生以上のごく少数のものを想定して教育上の例外措置として大学入学年齢の特例を設けているというものであります。

 これまでにこの飛び入学を実施しておりますのは千葉大学だけでございます。2枚目にありますように、平成10年度から千葉大学の工学部で飛び入学を実施し、11年度からは工学部、理学部において実施しております。その実績は、平成10年度が受験者数11人に対して合格者数3人、11年度が14人に対して合格者3人、12年度が17人に対して合格者3人ということであります。なお、現在までは千葉大学だけでございますけれども、平成13年度からは名古屋にございます私立の名城大学においても飛び入学制度を導入の予定です。

 3枚目は、学生募集の概要でございます。ご参考までにご覧いただければと思います。

 資料7は、これも前回話題になりました「アシスタント制度」に関する資料でございます。アシスタント制度には、リサーチアシスタント制度とティーチングアシスタント制度がございます。

 リサーチアシスタント制度は、大学院博士課程後期在学者を研究補助者として参画させて、研究遂行能力の育成とともに研究支援体制の充実を図ることを目的としております。経費的には国立大学につきまして17億6,000万円の予算措置が行われております。平成11年度は15億1,200万円でございますが、これはおおむね年額44万円の積算になっております。予算上の数でございますが、11年度が2,761人、12年度が4,000人、実態もおおむねこの程度の数だと聞いております。

 ティーチングアシスタント制度は、優秀な大学院生に対しまして、学部学生などに対するチュータリングや実験、実習、演習などの教育的な補助業務を行わせるものでございます。国立大学の場合は、大体、一人1時間1,200円の積算で、年間通してやると年間で一人当たり33万円くらいの積算でやっております。実績は、そこに書いてあるような数字でございます。

 アシスタント制度としては、こういう研究補助をするリサーチアシスタント制度と教育指導の補助をするティーチングアシスタント制度が現在走っているということでございます。

 資料8は、他の審議会等での「人材育成に係る提言」の例として、科学技術会議の提言があったはずだというご意見がございましたので、科学技術会議における人材育成に係る提言を用意させていただきました。

 資料9は、大学の評価あるいは学位授与の問題についてのご質問がございましたので、木村主査が機構長をされておられます大学評価・学位授与機構のパンフレットをお配りさせていただいております。詳しい内容につきましては、ご質問にお答えする形でご説明させていただきたいと思います。

 資料10は後ほどにさせていただきます。

 あと、2種類参考資料を用意しております。ひとつは第4回全体会議でお配りしました有識者のご意見の冊子の中から、第3分科会に関連する意見を担当室の方で抜き書きしたものでございます。できるだけ網羅しようと思ったのですが、分量の関係等もありまして、一部抜け落ち等があるかもしれませんので、これは全く先生方の参考資料ということでお取り扱いをいただきたいと思います。私どもで勝手に、ここがポイントかなと思うところはゴシックで書いてみました。これは全く私どもの恣意的なものでございますので、そのつもりで読んでいただければと思います。

 1ページが大学改革関連、大学・大学院のあり方、4ページが大学入試のあり方、5ページが、英語教育、6ページが国際性の育成、8ページが企業と教育の関係、企業の求める人材や採用面の改革についてのご意見、9ページが創造性、リーダーシップの育成についてのご意見、10ページが飛び級、飛び入学についてのご意見、11ページ以降はそれ以外ということで、第3分科会に関連するご意見を集めて整理してみました。審議のご参考にしていただければ幸いです。

 もう一つは「大学のランキング」の資料です。朝日新聞が出している『大学ランキング』という本からの抜き刷りです。高校からの評価、企業からの評価、ネイチャーの掲載論文数、在学生の評価、学位授与数、学部の学生の大学院の進学率などの観点からランク付けをしております。

 本日、ご用意いたしました資料は以上でございます。

<配付資料について質問>

【木村主査】ありがとうございました。

 かいつまんでご説明いただきましたが、これらの資料につき、ご質問等ございましたら、できるだけ本分科会の議論に沿うような形でお願いできればと思います。

【河野委員】一つよろしいですか。
 このアシスタント制度はどういう根拠でやっておられるのですか?

【清木研究機関課長】リサーチアシスタントでございますけれども、博士課程の在学者を対象にするというところの意味でございますが、これは学生であると同時に研究者の卵であるというふうに受け止めております。一面では博士課程在学者といいますと、研究者の研究グループのある意味では一員という形で研究を手伝うケースも多いわけですけれども、そういう場合に報酬として給与上はきっちり評価しようという面、それによりまして研究遂行能力の向上を図ろうという面がございます。

 もう一つは、研究者の立場から見ました場合に、いわゆる「研究支援者」でございます。日本の場合、国立大学につきましては、4人に1人くらいしかいない。欧米に比べますとかなり少ないという状況がございまして、そのあたりが科学技術基本計画でも指摘されております。研究支援体制の充実も図ろうということで、アメリカの例などを参考にしながら、できるだけアメリカに近づくような形で人数をふやしていこうということでございます。

【木村主査】根拠は?

【清木研究機関課長】法令上の根拠は特にございません。予算措置によりまして、経費を手当しているということでございます。

【クラーク委員】よろしいですか。
 飛び入学は数学と物理学だけですね。どうして他の分野はできない?これは真面目な質問ですよ。

【木村主査】中央教育審議会で議論がありまして、音楽とかその他のいろいろな分野についてもできるのではないかという意見も出たのですが、手始めにここから始めようということになりました。

【クラーク委員】では、これから?

【木村主査】これからです。

【クラーク委員】昨日、うちの大学で教授会があったんです。飛び入学を許すと。大学は許すけれども、文部省は禁止するでしょう、今。法律の上で禁止でしょう? これでは英才教育、全く不可能なんです。つまり、文部省は英才教育、禁止ですね。

【合田大学課長】先ほどご説明がございましたように、中央教育審議会の議論で飛び入学を検討するにあたって賛否両論があると。その中で、とりあえず数学、物理の分野に限って、この分野であれば皆さんの合意が得られるということで、その分野に限って……。

【クラーク委員】それはわかりますけど、審議会ではなくて、文部省がどうして。

【合田大学課長】私どもは審議会の方からそういうご指摘をいただきましたので、その線に沿って制度改正を。

【クラーク委員】けど、もし直すべきだと思えば直しますか?

【合田大学課長】もし、そういうことであれば、改めて中央教育審議会の方でご審議をいただく必要があると思います。

【クラーク委員】文部省が自主的にできない?

【合田大学課長】はい。これは、中央教育審議会のご指摘を受けて制度改正したものであるということです。

【クラーク委員】では、我々、何のために集まっている?

【合田大学課長】それは、この場でも同じでございますけれど。

【寺脇政策課長】今、申し方がちょっと悪かったかもしれませんが、今やっているのは中央教育審議会の答申に基づいて今のようになっておりますが、これを変える必要があれば、この会議でのご審議でそういう結論が出るとか、あるいは私どももまた他のところでそういう必要性があると考えれば、それはつまり中央教育審議会が考えを変えない限りできないというものではございません。

【合田大学課長】そういう趣旨ではございません。

【木村主査】経過をご説明した方がいいと思います。中央教育審議会では中間まとめの後、これについて多くの団体に意見を聞きました。残念ながら飛び級反対の意見が圧倒的多数を占めておりました。

【クラーク委員】英才教育、欲しくないんです。

【木村主査】そうそう。それでも無理して、かなり強引に最終答申に飛び級を盛り込んだのです。しかしながら、現実にやっているところは千葉大学しかありません。それくらい、日本全体が飛び級ということに対してネガティブなのです。

 しかし、ここで議論して、「そういうことが必要である」ということであれば、それはまた別の話ですね。

【クラーク委員】うちの大学、やりたいのです。それで、どうすべきか。

【木村主査】法律改正しなければだめなのです。

 今のクラーク先生のご指摘はわかりました。他にご質問ございませんでしょうか。もう既に本日のテーマの議論に入っておりますね。

【クラーク委員】この前の分科会の全体のコンセンサスは、飛び級はいいことである。英才教育は必要で、エリート教育は必要だと。私、違っている?

【木村主査】黒田さんは、あまり飛び級は賛成ではないんですよね。

【河野委員】何でもという論議はしませんでしたけどね。

【木村主査】まだそれについての議論は足りませんから、その点は詰めていく必要があろうと思います。

【クラーク委員】ああ、そうですか。はい。

【木村主査】他にご質問ありますか。

【黒田委員】飛び入学の話だったので、この間、資料として、数字ではなくてどういう教育をしているのかとか、どういうパフォーマンスになるのか教えてほしいと言ったのですが、相変わらず数字しか出てこなかったので。

【木村主査】それはどうしますか。個人的には、丸山先生に伺ったのですが、丸山先生は仕掛け人ということもあって、飛び級制度の実施を評価しておられ、非常に優秀な学生が入っているとおっしゃっていますが、その辺、どうしますか。これは千葉大に聞かないとわからないですね。千葉大で実際の調査をする必要があるのですが、調べられますか?

【合田大学課長】それは可能だと思います。

【木村主査】それでは次回までによろしく御願いします。

【黒田委員】はい。数字はどこでも手に入るのですが、あまり実態がわからないので。

【木村主査】非常に優秀な学生が入っているという評価は、元学長かつ、仕掛け人ですから当然だと思います。

【黒田委員】今まで入った学生にどういうケアをして、その人たち本人がハッピーなのかどうかということと、本当に試験とか何かも、完全に抜群の成績で単位をとっていっているのかとか、いろいろありますね。そういうことがちょっと聞きたい。

【木村主査】もう3年になりますね。

【黒田委員】そういうことです。3年になりますので、どのくらい普通とは違うケアをしなくてはいけないのかも分かるはずです。この間も申し上げたと思うけれども、ものすごく優秀だったらエクストラケアなんか必要ないので、放っておいていいから、優秀な人をどんどん入れればいいと思うのですが、今みたいに特別なことをやるということは、本当は飛び入学の精神に反していて、逆に飛び入学の足を引っ張っていることになっているのではないか。つまり、あんなケアはできないから、うちは始めたくない。他の学生と不公平になるのではないか。そういう議論は当然出てくるわけで、そんなことをしなくても優秀な人は放っておいてもどんどん勉強するはずなので、そうしたら13歳でも14歳でも入れていいのではないかなと、逆に思うんですね。別に飛び入学に反対なのではありません。

【クラーク委員】ケアをやらなくてはいけないというのには非常に批判的ですね。欧米だったら、入学試験を受けて受かれば、私、16歳だったんですけど、あとは自分の努力だけですよ。別にケアを求める必要はないですね。

 私、千葉大学の飛び入学委員会のメンバーだったんですよ。だから、詳しいんです。ひどい時間の無駄があったし、特別なケアもやらなければいけない。それで、その制度は不人気になったんです、大学の中で。それで、学長、クビになっちゃったらしいんですけど(笑)。

 もともと、ケアは、全然やらなくてもいいんです。特に、数学、物理学だったらね。

【黒田委員】優秀だったら、放っておいてもいいのではないかと思うんですが、でも、私は噂でしか聞いておりませんので。

【クラーク委員】それにしても、どうして。日本の大多数の国民が反対だったら仕方がないけれども、エリート教育は必要であると分科会の中では言われているのだから、ではどういうふうにやればいいのかと。

 もう一つは、大学院をもっとオープンにすべきなのです。具体的な措置、誰か考えていますか?例えば、半分を外から取り入れないと文部省は補助金を出さないとかね。

 みんな笑っていますけど、こういう議論は、建前だけで単なるきれいな言葉しか残らないんです。具体的に何をするべきか、もっとオープンにさせるために。今の日本の風土の中ではオープンにしないのです。でもオープンにしないと、大学教育は進まないのです。エリート教育をできないのです。具体的に文部省は何か考えていますか?

【木谷企画課長】今、「オープン」といいますのは、例えば教官の構成などをもっとということですか?

【木村主査】大学院の問題です。とくに入学者選抜についてですね。

【クラーク委員】大学院に入る試験があるでしょう。自分の学部の人は優遇されるのです。だから、ある程度、外の人を入れようと思えば、アメリカのように、外国のようにやろうと思えば、文部省は何か具体的な措置をとるべきなのです。

【木村主査】今、すぐはできないと思いますが、今度、大学評価が行われますね。そうしたときに、例えば大学院について、一体、オープンの度合がどのくらいかという評価はできますね。ある大学でほとんど自分の大学しかとっていないということになったときには、それを見て文部省が「これはだめだ」ということで、ファンディングに影響させることも出来ますね。

【クラーク委員】補助金、カット(笑)。

【木村主査】カットするかどうかわかりませんけどね。

【田中委員】飛び入学が大学入学だけについて問題になっていますけれども、大学院レベルでは、かなり飛び入学を採用しているところがあるんじゃないですか?

【木村主査】かなりあります。

【田中委員】大学院の場合は、分野によって規制は全然ないわけですね。大学から大学院の場合には評価する者が一緒であるのに対して、高等学校から大学ではそうではないということなのですかね。

【木村主査】この資料だけにこだわった議論になりましたけれども、他にご質問ございますか。

【クラーク委員】最後の資料、意味はないです(笑)。というのは、有名大学は優秀な学生を引きつけるのです。だから、その大学を卒業した学生が評価されるのです。これは卒業した学生の評価なのです。大学自体が本当によくやっているかどうかの評価ではないです。だから、これは全く意味はないです。

【木村主査】それでは、資料についてはよろしいですか。

<今後の審議の進め方について>

【木村主査】本論に入ります前に、今後の審議の進め方についてお諮りしたいと思います。

 この第3分科会は、テーマが「創造性」ということになっておりますが、この間、河野さんからご提案がございましたように、この分科会は「今後、日本が必要とする」−日本だけではないかもしれませんが、「必要とする人材をどう育てるか」ということにテーマを決めた方がいいのではないかというふうに思っております。

 そういうことからすると、そのポイントとして、これまで委員の皆様方がお取り上げになっております主なところだけを申し上げますと、前回、今回議論いたしました、「高い専門性を持ったリーダーの育成」ということで、大学院の問題が一つあります。もう一本の柱として「独創性、創造性を持った人材をいかに育てるか」。これに関して、既に今日議論が始まっておりますが、「入試制度」「初等中等教育から大学・大学院までを通じた教育システムの再構築」、そういうふうなことがあるのではないかと思います。

 議論できる機会も限られていることでございますので、基本テーマとしては「我が国が必要とする人材をどう育成するのか」ということにして、柱を2本立てて、1つは「高い専門性を持ったリーダーの育成」、2番目として「独創性・創造性を持った人材をいかに育てるか」というふうなことで議論を進めていきたいというふうに考えておりますけれども、いかがでございましょうか。皆様方からいただいたものを拝見していると、大体、その辺に落ちつくと思うのですが、その辺でよろしいでしょうか。

【田中委員】前から問題になっている「生涯教育」とかは、教育システムのところに入ってきますね。

【木村主査】教育システムの関係で、できれば独創性、創造性というようなことを基軸にして、生涯教育も議論するというふうなことにしてはいかがかなと思います。回数がもう少しあれば、生涯教育だけをまた取り上げるということもできると思うのですが。

【草野委員】今、スケジュールが予定されていますね。その範囲内でやるには、もうそれくらいに絞り込まないと無理だと。

【木村主査】ええ、そうですね。例えば、あと2回増やすとか、3回増やすとか、そういうことであればまた別の話ですが、皆様方お忙しい方ですのでスケジューリングの関係でなかなかそうもいかないだろうと思いますので。

【草野委員】夏場くらいに一つの中間報告ということで、最終的なところはどうなるかというのは。

【銭谷担当室長】第1回の分科会のときに主査からご説明して、委員の先生方にご了解いただいたのは、7月いっぱいくらいまでかけまして、分科会のご審議をお願いして、分科会としての報告書を出していただく。国民会議全体としては、8月下旬頃から全体会を再開して、9月中・下旬に中間的な報告を国民会議として出していただく。それを受けて、その後、国民のご意見などを聞きながら、最終的な報告の作成に取りかかるということでございました。

【木村主査】多分これもコンセンサスが得られたと思いますけれども、前回牛尾さんからご発言がございましたように、まとまるところは早くまとめてしまおうということです。まとまらないところについては、こういう議論があったということを書くことでもいいではないかという発言がありましたが、多分、そうせざるを得ないのではないかと思います。

【草野委員】すべてのことをまとめようと思ってもなかなか時間もありませんし、難しいというのはよくわかりますので。

【木村主査】「人材」ということで、草野さんからも企業が求めている人材と大学が出してくる人材のミスマッチの問題をもう少し議論する必要があるのではないかというご指摘が出ておりますので、その辺も含めて議論していければと思いますが、それでよろしゅうございましょうか。

 もっとも議論の途中で、別のいい方向へ行くということがあったら、そちらに行っても構わないと思っております。

<自由討議>

【木村主査】それでは、恐縮でございますが、今日は2回目ということで、冒頭いろいろなご意見が出ましたが、とりあえず前回から引き続きということで、「大学・大学院のあり方」の議論ができていないところがまだあります。ほぼ、前回、網羅的にはご意見が出たと思いますが、出ていないところがあるように思いますので、その辺のところからお入りいただければと思いますが、いかがでございましょうか。

 前回も出ましたし、今、クラークさんからご指摘がありました大学院の開放性といいますか、入学試験というか、人材を集める、その辺のところも非常に重要な問題ですね。

【河野委員】「あり方」というのとちょっと離れるのかなという気もするのだけれども、今、いろいろ問題になっている、例えば教養課程とかそういう問題があって、大学の前の課程は大学に入るに当たっての基礎的というか、耐え得るような学力を持った人を入れるということになると思うのですが、その前の課程を−−これは直接の分科会ではないのだけれども、世界的な視野を持った、あるいは教養のある人を育てるという視点に立つと、それまでにどう育てるかということもあるのかなと。

 殊にいろいろなことを考えないで、教養とかあるいはそういう問題に絞ってみると、今までの教育は6−3−3−4ですか。今、中等・高等学校は一貫教育で私学は既にやっているし、公立でも、全寮制がいいのかもしれませんけれども、比較的成功しているということを見ると、小学校6年−−これはいろいろな考え方があって、別に固執しないのですが、5年なら5年でいいのではないか。その後は3年足す3年で6年でいいのではないか。その後の学校を、予科というんですか、大学につけて5年で、2年が教養で3年が専門、あと大学院というようにすると、教養というか、その部分のレベルも保てながらそういう教育ができるのではないか。私が勝手にそう思っているのですが、そのところ辺もあわせて論議しておいた方がいいのではないかと。

【木村主査】これは田中先生から出た問題ですね。

【田中委員】そうですね。大学院と学部の再編成の必要があるのではないかということです。

【木村主査】3・3ですね。今、河野さんがおっしゃったことと同じですね。

【田中委員】はい。

【木村主査】要するに、後の3年はプロフェッショナルというお考えでしたね。

【田中委員】はい。大学学部は3年に短縮して、高度教養と専門基礎教育をやる、大学院3年で高度専門教育をやり、そのあと、ドクターコースは3年くっつけ、3・3・3で再編成してはどうかということです。

 ただ、理系と文系ではちょっと今状況が違いますから、文系などはそうでもして誘導しないと、なかなか大学院重点化はしにくい状況にあるのではないかという感じがするのです。

【木村主査】黒田さん、今の田中先生のご意見についてどうですか?

【黒田委員】そうですね。悪くないのですが、そのときにいわゆる専門学校というか、職業教育をする学校と2つ目の3年間の高度専門教育との関係がどうなるのか。

 この前もダブルスクールとか、ダプルメージャーとか、そういう話が出ていましたが、本当にロースクールみたいなものが大学院として学部を3年終わった後でやるということにするのか?現在も存在しているいわゆる専門学校との関係はどうなるのか?その辺は、文科系に関してはよくわからないですね。その辺を教えていただかないと。

【田中委員】文科系の場合には、あまり専門学校でということはないですね。文系そのものがゼネラリスト養成になってしまって、専門性はあまり要求されない。修士になると、分野によって要求されるところもありますけれども、今のところはそんなに専門に特化したものは企業の側も強く要求はしていない。あとは、司法試験とか公務員試験とか、試験制度の方で管理しているという状況で、大学の教育は企業のニーズや試験制度から距離を置いてやってきたというのが実状ではないかと思います。

 だんだん資格社会とか専門職社会になっていくと、大学教育とこれらのニーズとを統合していかざるを得ないところがありますから、そうなると従来のようなゼネラリスト教育だけをやるというのでは対応できないところがあると思うんです。

【黒田委員】ゼネラリストの教育というのは、教養教育とはまた違うんですね。

【田中委員】しかし、高度な教養教育だと思うんですけどね。

【黒田委員】専門基礎と考えてよろしいんですか?

【田中委員】はい。文系の場合は、高度教養と専門基礎とは一体化しているのではないでしょうか。

【木村主査】では、3年で教養プラス専門基礎、あと3年がプロフェッショナルにするとなると、大学院との関係はどう考えていらっしゃるのですか?

【田中委員】大学院は従来どおりの5年制を少し修正して、学部3年の上に5年ないし3年でやることになります。

【木村主査】3年の上に乗せる?

【田中委員】はい。大学院などは飛び級をもっとフルに使って、早く学位をとれる者は早くとるというようにしないと、文系の場合は就職するのが早いですから、よくできる人は学位もとらずに就職してしまうという状況がありますから。

【木村主査】今の数字合わせだけでいきますと、4年の学部プラス2年というのは修士になっているわけですね。足すと6年。それを半分に割ってしまうと、もうプロフェッショナルスクールは修士を終わったものという勘定もできますね、年齢だけでいくと。

【田中委員】年齢からいうとそうなります。

【木村主査】そうすると、あとはドクターだけの問題という考え方もあるのですか?

【田中委員】プロフェッショナルスクールの方からもドクターに上がっていくという形もできると思います。

【草野委員】今、田中先生のお話ですと、3年間でもう卒業という感じになってしまうんですか?

【田中委員】そうですね。

【草野委員】今の4年間を3年間に短縮して、その後残る人は修士を含めたものを今度は3年間でやって、ドクターの場合はまたそれに足すと。

【田中委員】はい。私学などは、経営の問題ともからみますから(笑)。

【木村主査】理系とはちょっと違うかもしれませんね。

【田中委員】違うかもしれません。

【黒田委員】違うと思います。イギリスは、スコットランドが学部が4年で、それ以外は3年ですね。それをまた変えたりしているでしょう。あの辺、文部省の人がご存知だったらフォローしていただきたいのですが、逆に4年にしているところもあるはずだし、そうするとその理由は何なのか。

【木村主査】英国は理工系の大学だけ4年にしましたね。

【黒田委員】そうなんです。

【木村主査】入ってくる学生の高等学校での準備が十分できていないということで、1年、補習教育みたいな形を入れたようです。

【黒田委員】ええ。やはり専門基礎に時間がかかるので、3年間では多分……。そうすると、本当の教養教育ではなくて、1年から専門基礎みたいなことになってしまって、肝心のリベラルアーツ的なものが抜けてしまうのではないかという心配が、理系にはあるような気がします。

【河野委員】田中先生のは、大学は6年というか、3年−3年と。

【田中委員】極端に言えば、もう3年しかやらない大学があってもいいし、原則として6年やる大学があってもいいという形になるのではないでしょうか。

【黒田委員】そうすると、大学院をエリート化して、オープンにするというのは非常に難しくなりますね。3・3でつながってくると。

【田中委員】そこは、3年修了の段階で相対的に切り離していくことで工夫することになるのでしょうか。

【黒田委員】切り離せればいいんですけれども、もし、教育の教える内容とかがつながっていたりすると、逆に……。

【田中委員】そうなんですね。積み上げで順番にやっていくとなると非常に難しい。

【黒田委員】非常に難しい。他の大学がそうなっていなかったとすると、大変難しいことになりますね。

【田中委員】はい。だから、3・3にする大学としない大学があると非常に難しくて、すべてが3年か6年かのいずれかになれば、3年−3年で移動がやりやすくなりますけれども、従来どおり4年でやっている大学があって、一部の大学だけが3年−3年であるとおかしくなってきますね。

【黒田委員】理系の場合は、オープンになっていないところもありますけれども、非常にオープンになっているところもあります。試験の「過去問」という言葉があるくらいで、過去の問題集を買ってみんなそれを勉強して入試を受けますので。

【木村主査】大学院が一番オープンになっているのは、駒場の大学院じゃないかな。

【黒田委員】ああ、そうですか。本郷もそうですね。私は本郷の生物化学と駒場と両方担当していますが。

【木村主査】入って来ている人は相当バックグラウンドは違いますか?

【黒田委員】ええ、違います。

 駒場に他大学出身者が特に多いのかどうかわかりませんが、でも受験倍率は3倍くらいありまして、内部が受かるということは多いのですが、でも私の研究室は半分くらい、北大、名古屋、慶応、東京理科大……と結構外から来ております。東京理科大が一番多いかな。もちろん内部もおります。だから、それほどまでアンフェアだとは思わないし、勉強すれば入ってこれますね。

【田中委員】文系と理系の違いは、やはり文系の場合は相当誘導しないと大学院に優秀な人が来ないというところがありまして、工学部などとはかなり事情が違いますね。

【黒田委員】工学部、理学部系統はそうですね。

【田中委員】文系の場合は、相当誘導して、大学院に行けば何かメリットがある、付加価値がつくということをかなりはっきり示して、かつある程度優遇していかないと、なかなか大学院までまだ来ないという状況ですね。

【黒田委員】大学院にどんな付加価値がつけられるんですか?

【田中委員】やはり資格と結びつくのが一番わかりやすいですね。

【木村主査】浜田さん、採用側からすると、今の提案、4年で出ているところを3年にして、教養と専門基礎だけで出してしまう。それを企業がどう使うか、あるいはそれが日本のためになるかという立場からどうでしょうか。

【浜田委員】第1回を欠席してすみませんでした。いきなり、大学院をどうすべきか、我々にはちょっとわからなくて、発言のしようが難しいのですけれども、私どもの立場から期待する卒業生のレベルは、今日のテーマにあるように「専門性」と「創造性」、それから第1分科会のテーマにある「人間性」、この3つが欲しいわけですね。

 「専門性」というのは、もうちょっとわかりやすい言葉を使えば「学力」というのかなと。学力を十分身につけて卒業してくれるのかどうなのか。「大学評価」という言葉が今日も出ていますけれども、私は「大学評価」という言葉自体にちょっと心配というか、疑問を感じているのです。大学評価といっても、大学は学部がいっぱいあるのに、ドンブリで今日の表みたいに順番あるいは点数をつけられるのか(笑)。こんなことができるわけがないではないかと。

 それこそ、学部ごとの卒業時の、私どもで言えば「出す製品の品質」ですね。だから、卒業生の学力レベル、欲を言うと「創造性」とか「人間性」も入りますけれども、一応、わかりやすく言えば「学力レベル」を入学試験よりも卒業試験−−出口管理というんですか、それでもってしっかり何かで評価する仕組みをつくって、オープンにしてそれで評価される。評価を高めるように、大学の各学部は他の大学の同学部が競争相手というか、それで競争しあうというような仕組みに持っていく方法はないのかな。それしか、方法がないのではないかというような観点から、4−2−3がいいのか、3−3−3がいいのかちょっとわかりませんけれども、そういう中身を入れるというか、そういう改革……。

 今に限らず、私どもの時代からそうなんですけれども、大学は入る前までが大変で、入ってしまえばほぼ卒業できるので、中に入ったら勉強はあまりしなくても、というような感じがありましたですね。それは今は……。

【クラーク委員】出口管理できない理由は企業です(笑)。おたくです。「青田買い」です。出口管理ができなくなったんです。これは改善する見通し、全くない。学生は卒業する前に就職するのです。就職活動は、3年生まだ終わっていないのに、就職活動が始まるのです。

【浜田委員】先生、特定の企業がやっているならその企業が悪いですね。だけれども、全企業がやっているのだったら、仕組みを変えなければいけないのではないですか。そこで、青田買いをやらない企業があったら、敗北するわけです。そうしたらやらざるを得ないというのは、全部がやっているということは仕組みを変えざるを得ないのです。「企業悪人説」は通じないと思いますよ。特定の企業が青田買いをやって、特別に得しているのだったら、その企業は悪いと思います。全部がやっているのだったら、「企業が悪い」という表現は当たらないと思うんです。仕組みを変えなければならないと思います。

【クラーク委員】仕組みを変えろと何回もいろいろな試みをやったんです。みんな失敗に終わったのです。紳士協定とか……。

【浜田委員】先生は出口管理は賛成なんですか?

【クラーク委員】もちろん、大賛成です。

 例えば、オックスフォードはみんな卒業させますけれども、卒業する前に卒業試験があって、それで試験が終わって成績証を持って就職活動に入るのです。だから、卒業しても、成績が良くなければ一流会社に入れないのです。だけれども、日本ではいまのやり方を直すのはほとんど不可能なんです。だから、大学院が一つの可能性なんです。というのは、学部3年は、これ、外国で常識なんです。日本の4年はちょっとおかしいのです。

 次は、大学院。これもわりあいと普及しています。だから、大学院のオープンは非常に大事なポイントなのです。文部省はわかっているかどうかわからないけれども、非常に大事なポイントなのです。自分の学部の成績で大学院に入るのです。だから、これは自動的な出口管理になってしまうのです。成績が良くないと一流の大学院に入れない。一流の大学院に入れないと、就職もうまくいかないのです。だから、自動的に管理されますけどね。

【黒田委員】向こうはClass of Honorみたいなものがあるわけで、私はイギリスしか知りませんけれども、ファーストクラスなのかアッパーセカンドかロアーセカンドかサードかパスかということは、一生、その人について回るぐらいですね。

 だから、5月、6月くらいになるとファイナル試験のため、学生の目の色が変わる。もう必死で勉強するわけです。ボーダーの学生はものすごく大変なのです。でも、それほど真剣に勉強するのは、それが一生ついて回るからだし、それから大学院を受けるときにもファースト、アッパーセカンドまでだったら受けてもいいとか、ロアーセカンドまではうちは受け入れるよというようなプライオリティがつくので、ただ大学を出ただけではないということなんですね。

 それから、もう一つ、オナーを決めるときに、エクスターナルイグザミナーという制度がありまして、自分の大学のスタッフだけではなくて、他大学のスタッフがイグザミナーとしてファイナルのクラスを決めるときに参加しています。だから、結構、フェアにやらざるを得ない。それから、全員面接するわけにいかないので、何人かボーダーの学生をピックアップして面接もするというシステムが整っていますので、どの大学を出たかと同時に、どういうclassオナーで出たかということが大変重要になってきます。そのためにものすごい勉強するのですね。

 でも、日本は入ってしまったら、理系は結構違い、勉強している学生は非常にしていると思いますが、やはり一般的に言うとレジャーランドと言われるのが当たっていないとは言い切れません。

【河野委員】先ほどの田中さんの案だとリベラルアーツといいますか、そういう部分は大学に入ってという意味なのですか?

【田中委員】リベラルアーツもいろいろ考え方があると思うのですが、今みたいに総花的にあれもこれも大学でやるのではなくて、メジャーとサブメジャーみたいなものをつくって、例えば法学をメジャーにしているのだったら、もう一つは土木でもいいですし、経済でもいいですしという形で、もうちょっと焦点を絞った教養教育をやらないと。今みたいに、一般教養を万遍なくやっているという状況では、やってもやらなくても一緒みたいな感じですね。

【河野委員】私がちょっと申し上げたのは、私の案だと5年で、2年3年なのですが、2年のところで確かに経済の初歩的なことを教えたっていいと思うんだけれども、少なくともそういう期間を大学の方のレベルに合わせたようにすれば、試験のやり方でも知識だけを競うのではない試験でいけるのかなと。その場合は、6年生で中・高で一緒になっているので、そうすると試験を受けるのも2回で済んでしまうし、いいのかなと。そういう余裕というか、できるのではないかというのが……。

【田中委員】試験で対応できるかは難しい問題ですが、もう一つ、大学に入る段階は、基本的にはまだ親がかりで選択するという年齢ですけれども、3年くらいたてば自分の判断で、自分は経済学部に入学したけれどもやはり文学をやりたいとか、法学をやりたいとかいう形で、大学で3年間やれば、自分の意思で、自分のリスクで選択できるようになるという点もあります。

 今の学生の成熟度から見ると、18歳で全部選択させるのではなくて、もう一回、3年くらいたって専攻を変更するチャンスを与えるのが、適切ではないかと。今度は、自分の責任で選んだのだから、大学入学のときとは違った選択をする可能性があるのではないかということです。

 ただ、発想としては、事実上大学6年が望ましいので、3年で終わってそれでおしまいというのとは違って、3年やったらまた別のところに行くという、続けていく人もあってもいいと思うんです。そこでもう一度選択する機会を与えるのが好ましいというのが、試験でもう一回チェックすることの他に選択の機会をもう一回与えることのメリットです。

【河野委員】3年は要るという感じなんですか?

【田中委員】2年では結局うまくいかなかったということです(笑)。

【河野委員】そういう意味ですか。

【木村主査】2年でうまくいかなかったというのは、今申し上げましたけれども、日本は社会もそうだし、本人たちもそうなのですが、早く専門に入りたいと思うんですね。このことがいびつな姿を作ってしまっているのではないかと思います。

 そういう意味で言うと、田中先生のはハーバードスタイルですね。3年やってから決めるということは、日本の社会にとっては悪いことではないのでしょうね、きっと。

【田中委員】みんなそういう方向に動ければですが・・・。

【木村主査】すごいんですよ。一日も早く専門をやりたがるんです。

【田中委員】やりたがりますね。

 同じ大学に教養科目と専門科目があること自体がまずかったということかもしれません。

【木村主査】その辺の問題はかなり深刻だと思うんですね。リーダーをつくるとか、そういうことからすると、どうしても狭くなってしまう。

 名案がありませんか。

【河野委員】理工系とちょっと違うのでしょうね。

【黒田委員】多分、違うと思います。

【河野委員】この間からおっしゃっているけど。

【黒田委員】はい。一緒に議論するのはなかなか大変だなと。お互い、知らないものですから、よけい難しい。

 もう一つは、大学に入るまでにどこまで教養を身につけてきてくれるかということを期待できるか。

【田中委員】そうですね。

【木村主査】小・中・高、その辺をどうするか。

【黒田委員】それも、アメリカとイギリスは全然違うシステムですね。イギリスは教養教育を大学でやりませんから。でも、アメリカは全然違うということですから、その辺も……。

【河野委員】やはり、日本の道を追求してもいいのではないですか。

【黒田委員】ええ、もちろん、考えないと。

 だけど、本当に重要な「人間」とか「心」とか「他者への思いやり」というのは、本当は大学で教えるのは遅すぎることなんですね。それをやらなくてはいけないのは非常に嘆かわしいのだけれども、そこでも教えなかったらもっと困るんだったらそうせざるを得ないし、そういう意味で第1分科会は非常に関係があって、そちらに私は入るべきだったのかと思ったくらいです。

【クラーク委員】イギリスで大学の前に一般教養ができる理由は2つなんです。1つは、まず外国語の勉強で、日本のように時間の無駄はないし、非常にたくさんの時間をとるのです。それで、入学試験の問題も日本よりも厳しくないです。

 日本は、高校に入って、非常に限られた科目に集中しなくてはならないです。まず、国語と英語、もう一つ、大体、日本史なのです。これは一般教養と言えないのです。特に、理科系、数学はあまり重視しない。

 だから、入学試験の弊害と語学の問題を解決できれば、高校で一般教養はもうちょっとフルに行われるのではないかと思います。それで、大学に入ってもうちょっと専門的に勉強できる。けれども、アメリカ方式も一つの可能性なのです。学部は一般教養なのです。

 ただ、大学院3年は専門的。アメリカは17歳でよく大学に入るのですけれども、日本は文部省の反対がある限り、飛び入学を許さないでしょう。そうすると24歳で卒業なんて遅いのです。

 イギリス、オーストラリアでよく使っているhonors制度は、学部は3年だけれども、優秀な学生はもう1年勉強して、それで卒業、グラデュエート・ウィズ・オナーズ、つまり一般の学部卒業生よりもステータスは高くて、就職も好ましい。それで本当に専門的に勉強したければ大学院に入るのです。日本でもオナーズという制度があれば……。

 昨日のうちの教授会でもオナーズ制度ができるかどうか検討しました。選択肢が多いのです。

【木村主査】今、高等学校の問題が出ましたけれども、最近、総合学科でしたか、その実態を少しここでご披露いただいた方がいいのではないかと思うのですが。非常に幅広くやっています。今のクラークさんが言われたのとちょっと違って、選択の幅が広くなっていて、いろいろな科目を準備して選ばせるシステムになっています。

【寺脇政策課長】また用意をさせていただきますが、総合学科は今145校やっておりまして、中教審の答申から出たものでございますけれども、様々な種類の、それこそ専門分野を高校時代にとっておきたいと。今までの日本の高校制度というのは、普通科高校に行きますと、専門教育は全然なしで一般教育ばかり。一方で、工業高校や農業高校に進みますと、専門教育のウエートが非常に多いものですから、卒業して就職する人のためにはいいのですが、大学進学を考える人には合わないところもございました。そこで、自分で一般科目と専門科目の比率を自己選択できるシステムとして導入したものでございます。ですから、学校によってというより、生徒によってそのウエートは一人ひとり異なるという形で運営されておりまして、数が着々と増えているというのはそれだけニーズがあることだと理解いたしております。

【黒田委員】それは、一つの高校の中に普通科と総合学科、両方を併設しているということですか?

【寺脇政策課長】そういう例もございますけれども、一般的には、一般科目だけとることも当然可能ですから、総合学科の中に入って、従来の普通科高校のような選択をすれば、何も普通科である必要はないので、総合学科のみでやる場合が一般的でございます。

【浜田委員】よく言われるのですが、日本は大学は入りにくいけれども、卒業しやすいと言いますでしょう。入りやすいけれども、一定の学力を備えなければ卒業できないという仕組みに変えるべきではないかというのは昔から言われ続けてきて、それはどうしてできないのですか。それをちょっと聞きたいのです。

 といいますのは、さっき「企業が悪いんだ」と言われたけれども、それは悪い面があるのは反省しますけれども(笑)、例えば来年卒業予定者を今年の4月に決めるでしょう。予約ですね。卒業できるということが前提で予約するわけです。卒業できなかったと。会社サイドはその人が卒業できなかったら採用できないとするか、それとも卒業はできないけれども、中退という形で採用するか、その辺の合意が本人と企業との間で成立すればどちらでもいいことですし、本人が卒業試験は受からなくても、「君を採用する」と言ったのだから、あのときの面接その他でといえば、中退になるわけです。その人は中退でも就職するか、卒業するまであと1年頑張るか、判断を決めればいいことで、企業が仮に4月5月に内定を出しても、運用可能ではないかなと思うのですが、入りやすく、しっかり学力をあれするという方向にいかないと、今からどんどん子どもの数が減って、ほとんどの希望者が大学に入れるようになるとすれば、大卒の評価、水準をどう判断すればいいのか、我々も困っているのです。

【クラーク委員】今おっしゃっている中には、「卒業できる」かだけが学力の基準なのですが、日本の大学は卒業しやすいので、卒業できないのは明らかに何かおかしいのですけれども、卒業だけではなくて、成績はどうですか。実際に、企業は本当に成績に対して興味があればできますよ、3年生までの成績でも。

【浜田委員】成績に対して、著しく興味のある学部学科とそれほどでもない学部学科があります、はっきり言いまして。例えば、著しく法律の成績のいい人をたくさんとってセールスをさせるとか、こういうことはやっぱりちょっとね(笑)。

【田中委員】法学教育をする側としてはそれがネックになっているんです(笑)。

【浜田委員】だから、事務系、文科系でも著しく専門能力の高い人というのは、法律なら法律を生かす職場というのを用意する、そこには必要だ。だけど、それはごく少数でいいとなりますね。

 技術系、理科系というのは非常に関係がありますから、それはかなり関心度は高い。今でも高い。そういうふうに学部学科でちょっとその辺が違うので、一緒には論じられないのですが。

【黒田委員】先ほどのような、ただ卒業ではなくて、A、B、C、D付きでという、そういう卒業を義務づけたとしますね。そうすると、それは企業にとってはどういうふうに受け取られますか。ウェルカムですか?

【浜田委員】企業が従来どおり、「もう、採用試験で見た。君は合格なんだ。卒業できなくも採用する。」となれば、中退者が非常に増えるということですね。いいじゃないですか。卒業していないのです、その人は。中退の方が後で良かったりしたらまずいんだけど(笑)。

【クラーク委員】出口管理ですね。まあ、やっても、やらなくても、私、別に(笑)。

 むしろ、私は大学院の成績をもっと重視すべきではないかと思うのです。

【木村主査】理工系の場合は、各人の持っている点数が非常に厳しく出ます。就職のときなどは、それを企業の方でご覧になります。

 ただ、ちょっとした面白い傾向がありまして、あまり成績の良いのは要らないとおっしゃるところもあるんですね、危険だから(笑)。そういうこともあるのですが、そんなことを言うと議論できないので、大体、成績が良ければいいところで採っていただけるということですね。

【浜田委員】成績があまり良くなくてもいいというのはわかりますけれども、例えば、A、A’、B、C、Dとあったら、理科系でC、Dはノーサンキューです。Aでなくてもいい、A’でもいいから欲しいとなるだろうと思います。だから、学力というのは企業がものすごく関心が、特に理科系はですね。

【クラーク委員】今、大学の風土の中に、成績重視の制度を導入するのは非常に難しいのです。特に、男の学生は一種のステータスシンボルです、自分の成績は悪かったけれども、卒業できたんですと(笑)。これを改善するのは非常に難しいのです。全体の雰囲気を変えないと。

【木村主査】それは全般的な姿ではありません。理工系は、大学院に行くためには1点でも点数を良くしておかなければいけないから、一生懸命頑張るのです。

【田中委員】文系も、我々のころは企業もまだきちんと成績を見て採用していましたけれども、最近は、成績は無関係ですね。だから、ほとんど4回生になった段階で就職が決まっていますから、1年遊ばせているようなもので、その段階で一生懸命勉強する人もいますけれども、1年はお釣りだと。今のうちに遊んでおこうという学生と両方ありますから。

【黒田委員】文系、理系で全然違うんだと思いますね。今、私たちは試験の成績のクレーム制度というのをつくっていますが、「自分はもっといい成績だと思うのに、なぜこういう点数なんだ」とクレームをつけることができるのです。先生はもういっぺん答案を見て、「君は自分はできていると思ってるけれども、できていないのだ」ということを言って返して、「もうちょっと勉強しなさい」ということもあれば、「うっかり足し算を間違った」という先生もたまにはいるんですけれども、そのくらいシビアですよ、みんな点数に対して。

 だから、理系と文系と、やはり全然切り離して考えないといけないかなと。

【田中委員】文系は、合格点さえもらったらいいという感じで、試験場に行ってみて、ヤマが当たれば書くし、外れたら書かないというような感じで、いい成績をとろうという発想そのものがなくなってきた。企業が成績を評価しないですからね。

【木村主査】理系の場合には、企業の採用の仕方が学生にインセンティブを与えることは確かですね。というのは、以前、申し上げたように一時は、「大学院は要らないから学部をくれ」とおっしゃっていた。それがいつの間にか、採用は大学院の方が圧倒的に多くなりましたね。曲がりなりにも2年間教育していますから、自分で考えているし、成長する。そういうことで、大学院をさかんにお採りになる。大学院に行かなければいい就職ができないとなったら、やはり勉強するのですね。1点でも学部時代に成績を良くしておかないと大学院に行けないということもありますから。

 そこがまた問題で、1点でも良くしておかなければいけないというのは、中の進学者に対してのもので、外部からの受験生に対しては普遍性がない。

【黒田委員】うちは全然関係ないですから、中の成績は。

【クラーク委員】大学の中で−企業や社会は別として、成績重視制度を導入しようと思えば方法はあります。簡単な方法は、GPA。アメリカで使っています。Grade Point Average 、つまりAを4点、Bを3点、Cは2点、Dは1点とする。平均が2点以下になれば、留年あるいは退学なのです。

 その制度を導入しようと思えば、いつでもできます。日本である程度使っていますけれども、今まであまり成功しなかった、特別の理由でね。この前の審議会の答申の中でもGPAはもっと使うべきだというんですけど、それに応じて行動に移った大学はまだ非常に少ないです。うちの大学、GPAがありますけれども、非常に使いにくいのですね。

【河野委員】文系では、今、企業で大学院生を採っているのは非常に少ないと思いますね。私の方では、大体、この5年間で20人くらいしか採っていません。大学院を出ると年齢が高くなるので、そういう意味の制限をしていたことは昔ありましたけれども、今はそういうことはないですね。だから、大学院だからだめとか、そういうことは今はない。

【クラーク委員】GPAをどうして使えないか。理由は、大学にとってあまり良くない。学生をクビにするのもほとんど不可能なのです。うちの大学で使いたかったのですけれども、実際に非常に使いにくいのです。

【木村主査】2点だと追い出してしまうということができないということですか?

【クラーク委員】退学は難しい。ほとんど不可能なんです。

【浜田委員】専門性というか、理系と文系を分けて議論していいのかどうかわかりませんけれども、かなり違いますね。だから、やはり分けて議論しなければ、一緒くたではないような気がします。

 文系で、本当に専門レベルの学力を求める人というのはごく一部。民間企業の場合ですよ。役所やその他はまた専門的なあれがベースに必要な面があるかもしれませんけれども、文学部だろうが、文学部の中のドイツ文学だろうが、フランス文学だろうが、何だろうが、経済学部なんて、もう専門じゃないですから、こんなものね(笑)。自分がそうですから、はっきりわかりますけど(笑)。

 だから、どんな潜在能力を持った卒業生が入ってきたかの方がはるかに。そうすると、広い意味の「人間性」ということになるかもしれませんけれども。

【河野委員】この頃は、昔と違って入ってから大学院に行っているのが結構いるんですね。夜間とか、学校自身も新宿とか便利なところで学校を開いてくれているせいもありますけど。

【浜田委員】早く卒業して社会に一度出て、そして勉強という方がはるかにプラスかもしれないですね。

【河野委員】だから、本当は夜ではなくて、昼間、大学に、リカレントというか、そういうのがいいんでしょうけどね。

【木村主査】浜田さんの話だと、文系については先ほどの田中案の3で、教養と専門基礎みたいなものをやってそれで出るということ、それを企業がお採りになるんですね。それで、専門性を追求したい人はさらにプロフェッショナルスクールへ行く。企業もその中から、また別のカテゴリーで採っていくということですね。

 理系については、それをそのまま適用はできないと思いますが、理系も工夫する必要はありますね。出口管理をしているといいましたが、オフィシャルな形ではしていない。

【草野委員】よろしいですか。

 出口管理というのは、基本的に私も全くやるべきだろうというふうに、自分が卒業したから言うわけではないのですけれども(笑)。大学における教養課程が必要か否かということと、出口管理の必要性というのは、さっき浜田さんも言われたけれども、20数年来、もう議論されてきたことなんですね。

 だから、やるか、やらないかということだろうと思うんですが、その場合に、僕は2つポイントがあって、1つは、クラークさんが随分こだわっておられる、いわゆるエリート教育との相関関係をどうするかという問題が1つと、もう1つはこの前もちょっと申し上げたのですが、そうはいっても、大半の人は企業等に就職するわけですから、企業が求めている人材とのマッチングをどうするかというところが一番大きなポイントだろうと思うのです。

 僕も経済ですから、技術系のことはよくわかりませんけれども、技術系はともかくとして、事務系は先ほど浜田さんもおっしゃったように、どちらかというとまだ企業は基本的にはゼネラリストを求めています。これが今後ともそういうふうに推移するのか、ひょっとすると今の経済の激動の中で少し変わっていくのか、そこのところがまだちょっと読めない点があるのかなと思いますのと、発言のついでにいいますと、今、企業が新規学校、大学卒業者を採用するときに、大学名を伏せて採用するということが非常に増えてきています。それと通年採用といいまして、3月に卒業して4月から入社ではなくて、必要なときに、例えば秋なら秋に採用する、あるいは10月なら10月に採用するというのが今どんどん増えてきていますし、これは恐らくもっと今後増えていくだろう。

 それに対応というのは、なかなか大学側で対応するのは難しいのですが、そういうことで言えば、出口管理をしっかりするということと何か接点が出てくるのかなという感じがするのです。

【クラーク委員】通年採用がふえれば、もちろんそれに越したことはないけれども、実情はそうではないです。私、息子が4年生なのです。就職活動は2カ月前スタートしたのですが、「もう遅いです」と言われてしまったのです。要するに、決めてしまった会社が非常に多いのです。だから、良くなるどころか、ますます悪くなっている。本当にひどいです。だから、今、毎日毎日就職活動で、大学に全然行けないです。単位はまだ残っている、どうやってとるか(笑)。私、父親として心配していますけれども、かわいそうなのです。他の学生よりも遅れてしまって、必死になってあちこち回っています。

【木村主査】そういうことからいくと、さっき浜田さんが言われた全体的なシステムをやはり考える必要があるんですね。それが、現実ですね。

【田中委員】企業についても「今はまだゼネラリストでやっていける」というふうに判断されていらっしゃるのですけれども、これからもうちょっとスペシャリストというんですが、プロフェッショナルな人を組み合わせてやっていかないと、今は外国に行ってそれを養成していらっしゃるのですが、もうちょっと日本で養成していかないと。

【木村主査】文系の場合は、私は田中先生の案がいいのではないかと思います。3・3ということで、プロフェッショナルスクールを出る人も絶対にたくさん必要です。ですから、文系についてはさっきのシステムは非常にいいのではないかと思っているのです。

【クラーク委員】だけど、田中さんによると、企業はゼネラリストが欲しいのです。

【木村主査】今はそうだけれども、それは……。

【浜田委員】ゼネラリストかスペシャリストかで言うと、今の草野さんのをちょっと補足させていただきますと、入るときはゼネラリスト型潜在能力−−何の能力かよくわかりませんが。専門性は会社に入ってから、いろいろな職種の専門性を高めてもらわないと、今後は会社に入った後、10年後、20年後、ゼネラリストというのはいないという時代にどんどんなりつつあります。

【クラーク委員】大学院の教育はあまり要らないですね。3年間の大学院、要らないでしょう。

【浜田委員】事務系の場合はごくわずか、法律なら法律の専門とか、あるいは会社の中で、景気分析等々やる調査室のスタッフとかいうなら、学力とか専門性が入る前から高いほど。そうでないとまた役に立たない。そうたくさんは要らないんです、正直言いまして。

 その他はガッツがあって(笑)、高度教養なんとかをしっかり。わかりやすく言えば、哲学なんですね。哲学がほとんどなしで、「人間とは何か」とか「WHAT」の疑問をほとんど持たないで入ってきたゼネラリスト的な専門性のない人間は、もう使われる仕事しかできなくなってしまいますので、広い意味でいう哲学というのでしょうか、いわゆる専門的な哲学ではなくて。これがリーダーの要素だと思います。

【河野委員】この間の続きとしての「エリート教育」というか、「リーダー教育」というのは、なかなかこれ難しくなってしまいましたね。

【田中委員】文系の場合は、理系よりはもっとパーセンテージが減ってくると思いますね。理系の方がもうちょっとリーダー的な人がたくさんいて、文系の場合は組織管理とか企業経営とか、もうちょっと少なくてもいいという発想になってきますね。

【黒田委員】今の浜田委員の話でいくと、日本は大学院卒はあまり文系は要らないということになってくる気がするのですが。

【浜田委員】数は要らなくなっちゃいます。それでいいじゃないかと思いますね。

【黒田委員】それはそれで構わないのですが、資料2の大学院数の比較では日本はまだ進学率が低いという、いつも文部省に見せられる資料があるわけですね。また、文系と理系と分けてくれないから、ありがたみがないのです。あとは社会人も。いっぺん勤めた人が行っているのか、そうではないのかとか、パートタイムも入りますからパートタイムが入っているのかということを分けていただかないと統計に意味がないのですが。もしそれを分けてもさらに外国ではいわゆる文系に大学院生が多いとしたら、それは何故なのだろうか。そして、その傾向は日本にもいずれやってくるのか、その辺を分析していただきたい。

【浜田委員】文系の大学院に行っている比率が日本より欧米はかなり高いかどうかですね。

【木村主査】高いです。

 よく言われるのは、国際機関に就職する人たちは、イギリスもアメリカもドクターを持っていますからね。それから、ごく普通の会社でも、文系のドクターっていっぱいいますね。これはすごいですよ。

【浜田委員】ひょっとすると、欧米の方が日本よりも社会に出てから学歴社会なのではないか。どこ大学の大学院を卒業したという履歴がその人がエリートとして育っていくのに、昔の日本みたいに。

【田中委員】結局、中身だと思いますね。やはり学歴に見合った中身があるということだと思いますね。

【浜田委員】そうでしょうか。それならいいんですけど(笑)。

【クラーク委員】実は、日本は学名社会なのです(笑)。

【木村主査】学歴社会ではないんですか(笑)。

【クラーク委員】外国だったら、どこの大学院を卒業した、それである程度評価します。これは非常に中身のある学歴なんです。

 1つは、浜田さんのご意見をぜひ聞きたいのですが、もし学部3年だけで、紳士協定復 活して、卒業してから就職活動。それで就職活動を例えば3カ月、4カ月、夏まで……。

【浜田委員】卒業してからですか?

【クラーク委員】してから。卒業は2月でしょう。

【浜田委員】決まるまで給料もらえないわけですね。

【クラーク委員】うん、うん。だから、就職活動は、最低3カ月かかるでしょう、夏まででしょう。それで入社式は夏かあるいは9月とか、企業にとって……。

【浜田委員】私は個人的には賛成です。

【クラーク委員】じゃ、経団連とか同友会は……。牛尾さん、ノーと言ったら(笑)。

【浜田委員】大学生は大学で勉強するために大学に行っているのだから、卒業するまでは就職活動などという余計なことをさせないでくれ、させるべきではない。賛成です、私は。

【クラーク委員】紳士協定、復活しないと。リクルートはあれで頑張っていたんです。だけど、日本は紳士協定、守らないんです。

【浜田委員】卒業できた人とできない人というのは、採用試験をするときにもう明確になっているわけですね。これは非常に明快ですね。

【黒田委員】だれが学生の生活をサポートするのですか。アルバイト?

【クラーク委員】いつ?

【黒田委員】卒業した後、就職活動をしている間はどうするんですか?

【浜田委員】それは、先生、大丈夫。そうじゃなければ、4年間、給料もらわないで金を払う学生がいる今の仕組みから、それを3年にしようというわけですから、2カ月や3カ月給料がなくても、もともとあと1年も行ったのではないかと(笑)。

【クラーク委員】外国だったら、卒業式は5月、入社は9月。だから、夏休みの間、就職活動なんですけどね。その間、餓死する心配はあまりないです(笑)。

【浜田委員】それは、私は基本的に同感です。

【クラーク委員】提案としてはどうですか。

【木村主査】紳士協定というのは日本で成り立たないです(笑)。

【クラーク委員】あきらめましょうか。

【河野委員】ずっと前もこういう紳士協定というのがあって、学校別に日にちが決まっていたんです。例えば10月1日はどこそこの学校というふうに、そこでみんな筆記試験をしまして、用意ドンで就職試験が決まっていたんです。それがいい人を早いとこ採ろうという横並びの競争、それと右肩上がりの経済と合致して、ああいう姿になってしまったんですね。

 日本は、みんな一生懸命、競争が激しいですからなかなかできないのですけれども、基本的にはちゃんと守らせる以外、ないんじゃないですか。これは企業だけでもできないし、学校も学生に3年迄の成績表を出さない(企業は3年迄の成績表の提出を就職活動の条件にする。)などして、就職活動をさせないようにすればいいわけです。

【田中委員】以前に、大学は、企業が青田買いをしないように、成績を公表するのを遅らせたんですね。すると、企業の方は成績を見ずに採用しはじめたということです。

【河野委員】それが、ある意味でいいのか悪いのか、成績なんかあまり関係なくなったから。

【田中委員】成績が関係なくなってしまったから、コントロールのしようがないという感じです。

【河野委員】そういう意味では、学生が勉強しない一つの理由にはなると思いますね。

【木村主査】今、話題になっています「大学生を大学でどう勉強させるか」ということが一番大きな問題。そうすると、そのためのシステムをつくる必要があるということですね。その一番大きなのが、大学でも勉強させるようなシステムにするということと、就職活動のタイミングをどうするか、それが出口管理ということに直接つながっていくのでしょうね。

【クラーク委員】あとGPA制度の導入ですけれども、その場合は、成績の悪い学生を落とせる仕組みが必要なんですけれども、今は日本では難しいですね。

【田中委員】きちんと卒業できないと就職戦線に加われないということがはっきりすれば、大学の中でかなり勉強させることはできますね。

【河野委員】しかし、みんな、単位か何かとってしまう……。

【黒田委員】出席しなければとれないです。

【木村主査】理系の場合は非常にはっきりしているんです。

【田中委員】日本人の従来の発想から見ると、卒業した後どこに行くかわからないという不安感をどうするかという問題がありますね。

【木村主査】今、クラークさんの言われた「卒業してから」ではなくても、例えば英国みたいに卒業する前に卒業試験をやって、そこから就職活動をスタートするということでもいいわけですね。

【クラーク委員】浜田さんが取り上げたように、出口管理だけではなくて、入り口管理の問題もあるでしょう。その場合はどうするわけ? 今の入学試験制度がある限り、大学教育を改善するのは難しいとよく言われているんです。

【浜田委員】それはどういう意味なんですか?

【クラーク委員】だって、入るのは非常に難しいけれども、後で全然勉強しなくてもいいんです。これ、企業も心配でしょう。

【浜田委員】入るときに難しいというのは、特定の大学の特定の学部の話でしょう。あとはどんどんやさしくなっているんじゃないですか。

【クラーク委員】だから、入ってから勉強するインセンティブがないです、今の日本は。

【河野委員】それは大学だけのあれではないでしょうね。あと、就職の問題とか、いろいろなものが噛み合っているんじゃないでしょうか。入ったら、遊ぶというのは、学校だって、ちゃんと成績で進学させなければいいわけですね。

【木村主査】参考資料の4ページの一番下に「大学入試の変革」ということで、先生がお書きになっている。要するに、いろいろな方策があるんだけれども、筆記試験一辺倒ではなくて、試験内容を多重構造にするというご提案をされています。私も前からこれを申し上げているのですが。

 どうぞ。

【クラーク委員】昨日のうちの教授会は、こういうアイデアがあって、それで賛成されたんですけれども、私がこの前申し上げたような暫定入学というよりは、「チャレンジ入学」。入学試験は今までと同じようにやって、合格の枠はちょっと縮める。そして試験を受けて合格しなかった人でも、暫定として入ってもいいんです、だれでも。1年終わって、試験をやって、それで定員まで足切りするんです。だから、1年生はちょっと定員オーバーなんですが、つまりセカンドチャンスを与える。一発勝負ではなくて、二発勝負。例えば、うちは定員は9,300人です。今、合格は正規として250だけ。それで合格しなかった人、でもどうしても多摩大学に入りたかった人は、いわゆる暫定として入ってもいいです、入学金を払わない。それで、1年終わって、人数はわからないけれども、70だったら20落とさなければならない、100だったら50落とす。つまり、50人の枠を満たすために試験を行う。それで、1年終わって落ちても、リピートできるんです。

【木村主査】試験をするんですか? 1年間のパフォーマンスで決めるんじゃないですか?

【クラーク委員】ある程度ね。ちょっと秘密なんです。茶髪とかピアスとか(笑)。とにかく、何らかの基準の上で決めるんです。態度も見てとかね。

 いずれにしても、入学試験は今までと同じようにやるんですけれども、もう一つのチャンスを与える。そういう制度を他の大学も導入すれば、日本の入学試験問題はかなり解決できるのではないか。つまり、落ちても暫定としてあの大学に入ってもいい。けど、あきらめて別の大学を選んでもいいですとか、いずれにしても選択肢を増やすんです。

【浜田委員】全員が暫定ではないんですね?

【クラーク委員】全員ではないです。

【浜田委員】正式にという形と暫定、2種類入るわけですね?

【クラーク委員】そうそう。正規は8割、9割。残っている10%、20%は……。

【浜田委員】お互いにはわからないんですか?

【クラーク委員】わからない。わかるかどうか、これ、別の問題ですね(笑)。

 他の大学も同じようにすればいいなと思っているんですけれども、とにかくうちの大学は実験的にやる。文部省、許していただければ。

【木村主査】先生、この前、オーストラリアでやっているという話が……。

【クラーク委員】オーストラリアはみんな暫定なんです。1年生だけでなく、2年生、3年生も毎年試験をやっている。合格しないとクビになるんです。

【木村主査】全員暫定というのはどういう意味ですか。調べてみたんですが、よくわからないのです。

【クラーク委員】試験に合格しないと、1年終わって、2年終わって……。

【木村主査】暫定とは違いますね。入れるけれども、1年たったときのパフォーマンスが悪ければ、それで落としてしまうんでしょう?

【クラーク委員】そうそう、落とす。だけど、入学金、もらわないから、落としやすいんです。入学金、もらえば、落としにくいですよ。

【木村主査】入学金をもらわないから、暫定と。

【クラーク委員】そうそう。

【木村主査】入学金はとらないわけでしょう?

【クラーク委員】とらない。

【木村主査】全員がそういうことなんですね。

【クラーク委員】オーストラリアに入学金制度はないです。あるとすれば非常に低いです。学費だけです。

 特に、うちの大学は中小企業の経営者の後継者問題が深刻です。自分の息子をどうしても多摩大学に入れたいんです、専門教育だから。それで、息子は別に頭が悪くないけれども、試験はあまり慣れていないとか、要領が良くないし、落ちた。それで、どうするか。変な塾で浪人させるか、他の大学を受けるか。

 私のやり方では、その人たちにもう一度チャンスをあげる。本当に多摩大学に入りたければ、1年生として一生懸命勉強する。もう一つ、社会人にとってももっと入りやすくなるんです。もちろん試験を廃止はしないけど。大体の社会人は合格するのは難しいでしょう。落ちても、暫定としてあるいは予備入学として、入ってもいいですと。

【木村主査】その前に、先生のところの入学試験は、日本で一番支配的ないわゆるペーパーテストだけではないでしょう?

【クラーク委員】私のところは、推薦もやっている。でも、一番、リライアブルなのは、残念ながら筆記試験とセンター試験。特に、推薦とかあまりね……。だから、残念なことなんですけどもね。

【木村主査】どうしてだめなんでしょうね。日本人が慣れていないからではないですか。

【クラーク委員】後での結果を見て。特に、センター試験は非常に評判が高いです(笑)。推薦の場合は、断りにくいんですよ、系列学校とか。あの人たちは学力低いんですよ。チャレンジ入学だったら、我々にとって非常に大きなプラス面があるのです。推薦はちょっとあれだけど、チャレンジとして、予備とか暫定ではなくて、「あなた、チャレンジです。チャレンジとして入ってください。頑張れば大丈夫」とかね。

 あとは、社会人も、多摩地域で優秀な人が多いんです。大学に入りたいんです、戻りたいけれども、入学試験はちょっと難しい。これだと日本の制度の中でも入りやすくなる。だから、文部省はどうでしょうね。

【銭谷担当室長】社会人は特別選抜がありますね。

【クラーク委員】それももちろん考えられますが、それが一つのモデルケースとしてうまくいけば、他の大学も同じようにすれば、入学試験問題はかなり緩和されるのではないか。

【黒田委員】推薦入学が随分増えてきていると思うんですけれども、推薦された人が全然勉強しなくなるという弊害も出てきていると聞きますし、今のお話だと、センター試験、筆記試験はかなりリライアブルだということですが、今のセンター試験よりも高校でどれだけ習熟したか、それを見る試験の方が本当はいいのかなということを常に考えているのです。それはどの大学に入るためということではなく、科目数も狭めないで、9科目なら9科目で、自分は高校の課程をこれだけ習熟したのだということが出るような、そういう試験の方が本当はいいのではないかとうことを常々思っているのです。でも、なぜかは知らないけれど、あまりそういう意見は受け入れられないんですね。

 そうすると、本当に入試に使う3科目しか勉強しない。今、弊害があるから少しふやそうとやっと言ってくれてよかったのですが、私は常々3科目は反対だと言っていて、やはり全員に社会科目も自然科目もやってほしい。そういう人が大学に入ってきてほしい。そうすると一般の教養教育に対するバックグラウンドも、大学に入るときには当然高くなってくるはずなんですね。

 そのインセンティブとして、センター試験というのかどうかは知りませんけれども、高校での、9科目なら9科目の習熟度というものを計る試験をやるべきではないかという気がするのです。それはどこかでも言ったことがあるのですが、無視されました(笑)。

【クラーク委員】大賛成です。

【木村主査】「達成度」ですね。

 達成度というのは、アメリカでも随分盛んになっているのです。非常に多くの州で始めているんですね。達成度をどこかではかるというのは、どこの国も必要だと思い始めたようですね。

【黒田委員】それも、たったの3科目ではないのです。

【木村主査】それを国でやるかどうかという問題はありますけれども、アメリカは州によってフリーダムがありますから、調べてみると、かなり多くの州でやっているんです。

 それから、推薦入学の話ですが、クラーク先生のお話と違って、例えば慶応の藤沢なんかは推薦入学の方が良かったと言っています。それから、名古屋大学の理学部で推薦入学をやっているんです。これは、すごいのが入っているんです。ただし、その前の過程がいろいろあって、高校3年のときに集めて、独創性を発揮させるような試みをやっているんです。

【クラーク委員】藤沢は特別なケースで、うちは普通の、平凡な中間くらいの大学なのです。系列学校も多くて、藤沢ほどうまくいくはずは全くないです。

【木村主査】東京大学なんか明らかに筆記試験だけと言ってもいいくらいですが、ああいう試験でいいのかということですね。

【黒田委員】ある程度は筆記試験で習熟度みたいなものを見て、それプラスを大学でやれるんだったらよいと思います。全部大学でやるのは本当に大変ですし……。

【クラーク委員】とにかく、こういうチャレンジ入学制度があるとすれば、これはこちらがいいか、あちらがいいかという議論はもう要らなくなるんです。受験勉強が苦手で落ちても、もともと才能があれば、チャンスは与えられるんです。1年生として入って、1年が終わってそれで足切り試験を受けて、本当に優秀だったら受かるんです。ところがそういう人は今の試験制度の中で優遇されないとかね。

【黒田委員】文系も理系もやり、限られた科目ではない、そういうことをぜひやってほしいです。

【田中委員】それだと、現在の入試センター試験みたいに一斉に同じ時期にやる必要もないし、もっとバラバラにやってもいいわけですね。

【黒田委員】ええ。何度受けてもいいんです。数学を失敗したら、数学だけは点数をアップグレードするためにもう一回受ける。理科は失敗したから理科を、あるいは私は社会を、ということで何べんでも受けて、私は高校までの課程をこれだけやったのだという証となります。

【木村主査】日本の場合は全てマルティプルチョイスでしょう。英国のAレベルは、マルティプルチョイスから筆記までものすごくバラエティがあるんですね。ああいう試験を考える必要があるのではないかと思うんです。最後の方になるとものすごく難しくなってしまう。

【黒田委員】あと、スペシャルAレベルみたいになると、ものすごい専門性ですね。Aレベルになると、結構、カバーする範囲は狭いんですね。

【木村主査】そうですね。4つくらいしかとらなくていいんでしょう。

【黒田委員】Oレベルという11歳位で受ける一斉試験では9つくらいとります。もちろん人によってはとらない人もまれにはいるんですが、いろいろな人がいます。

 イギリスは非常に早く専門教育になってしまうことがいいことなのか、ちょっとわからないなというふうには見ていたのですが、少なくともみんなが社会人として社会の仕組みも自然科学系も基礎を知る必要があると思うんです。

【木村主査】ちょっと話題を戻して、最初に河野さんがおっしゃったことと田中先生がおっしゃったこととある意味では似ているのですが、文系と理系を分けるにしても、理系の話は置いておいて、文系ということでいくと、リーダーをつくるのであれば、「教養教育をどうするか」ということを、もう少し議論した方がいいと思うんですが、その辺、どうでしょうか。

【田中委員】「教養」というのは概念が曖昧で、ある意味では生涯にわたって身につけなければいけない教養もありますし、今、クラーク先生がおっしゃったような形で習熟度的なテストで万遍なくやると、かなり教養的なバックグラウンドがそれでできるというものもあります。そういうものをベースにして、大学で教養を万遍なくやるのではなくして、主専攻と副専攻というふうに限定していく、専門は専門で、専門と密接不可分の関係にある教養というのがやはりあると思うんですね。

 教養と一括するのではなくて、それぞれのレベルでそれ相応の教養教育をするというふうな形で、職業教育にもビルトインされた教養はあると思うんです。そういう形で、それぞれの教養をそれぞれの段階でやるという発想に立つのが現実的ではないかと思います。

【木村主査】そうすると、先ほどおっしゃいましたように、みんな早く専門性を追求しますね。それとの組み合わせをどうしますか。

【田中委員】専門教育をやるときにも必ず教養的なものを組み込んでいくという形で、学際的な科目を組み込んでいくとか、何かそういう形で、どの分野でもできると思うんですけどね。

 そのかわり、非常に専門に近い教養になってきますけれども、高校レベルからカレッジレベル、大学院レベルで、教養の内容というか、様式には差があってもいいような感じががするんですけどね。

 どこかある時期に教養教育を集中的にやらないといけないという発想は、僕はちょっと旧制高校のイメージにとらわれすぎているような感じがするんです。

【クラーク委員】前回の議論も忘れないでほしいのですが、学部の授業でダブル専攻制度、これは一種の教養教育プラス専門教育の組み合わせとして。

【木村主査】今、田中先生がおっしゃったことだと、ダブルメジャー制で何とかいけるかもしれませんね。理系の学生は文系の何れかを専攻するということですね。

【河野委員】基礎的な教養というのも、確かにおっしゃるように抽象的ですから、「何が教養だ」と言われるとわからないんだけれども、世界の国々の人々とつきあって、自ずから基礎的なものというのはあるのではないかと思うんです。例えば、歴史なら歴史を学ぶということは、これはもう基本として置いておいて、それにプラスする、ある者は専門あるいは職業と一緒になったような感じでとらえるというのではないでしょうか。

 それを、もう高校でできてしまえばもちろんいいんだけれども、それがなかなか今できないんじゃないでしょうか。

【クラーク委員】もう一つ、ダブル専攻制度の非常に歓迎すべき副産物なんですけれども、語学教育問題をきれいに解決できるんです。高校ではなくて、大学に入ってから。

 高校でもやってもいいんですけれども、使える語学教育は明らかに高校では足りないでしょう。だから、大学に入って集中的に英語かあるいは中国語とかやれば、語学教育問題も解決する。

【河野委員】日本人ですから、ちょっと米欧人の人と違うんですね、まず。我々はまずベースが日本語でしょう。欧米の人は、世界語的な英語というベースがあるわけですね。

【クラーク委員】欧米人だったら、語学の専攻を選ぶときは、もちろん難しいのは日本語とか中国語とかロシア語とか。それで、言葉だけではなく、その国の文化とか歴史などふくめた、非常に理想的な教養教育です。今、オーストラリアでは流行っていますが、経済と日本語とか、法律と中国語とかね。

【河野委員】語学で歴史の勉強するとか、これはいいんだと思うんです。

【クラーク委員】外国に対する興味を持つように。

【河野委員】高等学校では英語が要らないとかいうのは、我々、抵抗を感じるわけです(笑)。

【クラーク委員】いや、間違った英語教育(笑)。

【木村主査】正しい英語ならいいわけですね。

【クラーク委員】いや、本当にこれはマイナスですよ。なぜ、日本人が英語ができないか、これは唯一の原因なんです。間違った英語教育を受けて、後で直すのはほとんど不可能なのです。

【河野委員】了解しました。間違った英語ですね(笑)。

【浜田委員】一般論は恐縮なんですが、こういう話を聞いたのですが、イギリスでエリートを育てる、リーダーを育てる基本に哲学を置いたと。ドイツでは、リーダーを養成するのに実学を置いた。イスラエルが、どちらがいいのかなと思って両方試してみた。そうしたら、哲学の方が結果として良かったと。中身を聞くと何十年もかけなければ答えが出ないような話が1分話なのですが、人から聞いた話なんですが、特に事務系、文系の場合は、リーダー養成というのは学力が高いことと比例するのかしないのかという問題がありまして、これは議論は難しいですね。

【クラーク委員】イギリスのオックスフォードで、浜田先生の話とちょっと合っている面が多いのですが、一番リーダー的な教育をやっているかと思います。そこで成功した教育にPPEというコースがあります。Pはフィロソフィー、Pはポリテクス、Eはエコノミックス、3点セットなのですが、そういう意味ではイギリスで今でもフィロソフィー、哲学という教育はかなり評価されている。これはオックスフォード特有のコースなのですが、日本の大学でやればいいなと時々思っているんです。

【木村主査】だけど、ケンブリッジの学生なんかに聞いても「フィロソフィーなんていうのはほとんど習ったことはない」という返事をしますけどね、理系の学生は。日本では、哲学が何かちょっと持ち上げ過ぎられているのではないかという気がしますけどね。

【クラーク委員】昔のオックスフォードはクラシックスだったんです。ラテン語とギリシア語、その中に哲学が入っていたんです。これがだんだんと時代遅れではないかと不人気になって、それにとって代わるものがPPEになったんです。

【浜田委員】私が哲学という場合は、「自分の頭でものを考える」という、この程度のことなんです。

【木村主査】そうですね、そういう解釈もありますね。

 今、ケンブリッジの工学部のカリキュラムも極めてプラクティカルですよ。驚くほどプラクティカルです。びっくりします。エクスポジションといって、ソーシャルスキルとか、そんなことまで教えています。日本の教育よりはるかに実学です。だから、逆に言うと勝てなくなっちゃんうですね、そういうところまでやっていますから。

 一つの製品をデザインさせる。それをお客にどう売り込むかというところまで講義でやっているようです。英国も随分変わったものだなと思います。

【浜田委員】悪い方へ変わっているんですか?

【木村主査】ウーン。私は、そう思っているんですけどね。

【浜田委員】アメリカの真似をしはじめて……。

【黒田委員】すべてHow toものになっていて、大学の授業もHow toものになっていて、そういう方が人気があるというふうになっているのをやはり懸念はします。

【浜田委員】「背に腹はかえられない」という状況になっていると。

【木村主査】経済のダイナミズムを取り戻したのもその辺のところもあるんじゃないですか。

【浜田委員】また、どこかで問題が出てくるかもしれないですね。

【木村主査】出てきていますよ。

【浜田委員】今、日本はどちらかというと、経済再生もさることながら、もっと大事なものを取り戻すリーダー育成の方が私は大事なような気がしますね。経済をここまでもってきて、失ったものが何かという方がはるかに大事なような気がしますので、ここでリーダーという場合は、テレビで無責任な退き方をどんどんする、あの不様なリーダーの姿がなるべく少なくなって、責任を持って腹をくくって、覚悟を決めて取り組んでいるという姿になれるリーダー育成をね。

 「そんなこと言ったって、おまえ、きれいごとだよ」と言われるかもしれませんけれども、リーダーというのはそういうイメージを日本はもう一回あれしたいなと思います。

【木村主査】それにはどうするかということですね。

【浜田委員】ええ。そういう人材育成というか。

【木村主査】独創性、創造性と、今言った教育システムの問題を具体的に議論できればと思います。

 今日は、「いかにして大学で学生に勉強させるか」という話に終始したような気がします(笑)。出口管理ということは、草野さんもおっしゃったように20年来言われていてできていないことで、それをどうやるか。今日、初めて「達成度を計る」というご意見が出てきましたが、達成度については初中局でもかなり今取り組んでいます。ナショナルレベルでやれるかどうかというのはわかりませんけれども、ある程度自由度を持たせて、達成度をどこかの時点で計ろうという雰囲気も出てきていますので、大学の出口管理もその辺に結びついてくるのかなという気がします。
 あと、何かございますでしょうか。

<次回の審議日程、テーマについて>

【木村主査】次回は先ほど申し上げましたように、独創性、創造性について、それぞれ皆様方、独自のご解釈、考え方があろうと思いますので、その辺をまず述べていただいて、それがどうして今我が国でさかんに議論されているのか、本当に日本にとって必要なのか、それがどうやったらうまく育成できるのか、その辺を議論を出していただければと思います。

【クラーク委員】創造性をつくるのは、これは文部省とか教育制度の責任ではないです。自分は人間として社会の中に生きているいろいろな経験があって、創造性が出る。大学はそれに必要な知識を与えるのです。というのは、創造性だけでは十分ではない。知識プラス創造性です。創造性自体は、学校がつくれればそれに越したことはないけれども、ある程度、学校の教育と創造性が湧き出すのは矛盾しているんです。ある程度ね。

【木村主査】日本が今必要なのは、異才だとか異能者だとか、そういう人達なんですね。残念ながら我々の社会はそういう人達をリジェクトしてきた。異才だとか異能者の定義については、この間も申し上げたと思いますけれども、一つのタイプとしては、教育とかそういう知識がなくても、自分で何かつくれる人、エジソンみたいな人ですね。それともう一つは、今、クラークさんが言われたように、広い知識を吸収して、それで創造性を発揮できる人、そういうタイプの人っていますよね。今、教育はあまり関係ないとおっしゃったけれども、後者のタイプは教育である程度育てられると思います。うまいシステムを作れば何とかなるのではないかという気がしております。

【クラーク委員】具体的に申し上げれば、文部省の「総合的学習」と「ゆとりのある教育」、大いに歓迎すべきなのです。それである程度、創造性はできてくる。けれども、ああいう教育を受ければ受けるほど、一流大学に入るのは難しくなるんです(笑)。だから、お互いに矛盾しているんです。

【木村主査】一流大学に入るための試験を変えればいいんです。

【クラーク委員】じゃ、チャレンジ入学で(笑)。

【木村主査】何でもいいですよ。だから、そこを変える必要があります。

 オックスフォードだって、ケンブリッジだって、今、Aレベルとインタビューとスクール・レコードでしょう。そういうことでやれているわけです。それぞれ3分の1くらいの比重ですね。独自の試験はtoo eliiteだと云って社会が許さないわけですから、そうすれば子どもたちも楽になる。そうかといって英国の学問レベルが落ちたかというと、そんなことはないでしょう。だから、やはり入学試験が問題だと思います。

 今日は事務局は、我々が何もまとまらない議論をしたではないかとハラハラしているのではないかと思いますが、後で議事録を見れば何か出てくるのではないかと思います(笑)。

 それでは、先ほど申し上げましたように、「独創性、創造性はどういうものか」「今、なぜ必要なのか」「どうすれば育つのか」、その辺について3回目、4回目くらいで議論をしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【木村主査】本日はありがとうございました。

−了−