教育改革国民会議

教育改革国民会議全体会議への意見について

2000年11月30日

教育改革国民会議
座長 江崎 玲於奈 殿

日本労働組合総連合会
副会長 草野 忠義



 本日の全体会議に下記のとおり意見を提出しますので、各委員の皆さまの議論や、最終報告に反映していただくようお願いいたします。
 なお、今回の意見は、本日以降議論される第2分科会および第3分科会に関わる課題を中心とするとともに、とくに問題意識を持つ全体的な課題についても触れさせていただきました。
 また、先の「中間報告」は、上から教育理念・方針を押しつける姿勢が強いという印象を受けます。議論するのに当たっては、教育を受ける側・子どもの目線で教育問題をとらえていく視点や、地域住民とともに教育問題を議論していく姿勢を重視して議論を深めるべきであると考えます。

1 中間報告に対する意見

〔第2分科会・第3分科会への意見〕

(1)学習達成度試験
 学習達成度試験の導入を「高校での学力向上を目的」に提案しているが、その意図や効果が曖昧であり、進学しない生徒まで対象とする全国統一的な試験制度は不要である。
 また、大学入試センター試験を見直すのであれば、偏差値的学力評価を見直し、受験競争を緩和する観点から、高校在学中に教科ごとに積み上げ取得できる「資格試験制度」に改め、有資格者が特定の大学に集中した場合は面接と論文による選抜を行う、新たな大学入試制度の創設を検討すべきである。

(2) 暫定入学制度
 「暫定入学制度」を導入するのであれば、大学運営上の問題として、成績評価の厳密化に伴う留年・除籍の取り扱い、入学・収容定員のあり方について整理が必要である。
 また、制度を導入する場合は、その前提として、敗者復活の仕組みやリカレント・社会人入学等の複線型の制度を拡大・定着させることが必要であり、そうした前提がないなかでの導入は、かえってやり直しが困難になり、結果として学生の選択肢を狭めることになるなど、効果に疑問がある。

(3) 学校の評価制度
評価制度の導入は、学校の情報公開と合わせて多面的な評価を行なうこと等が必要であり、具体的には、@現在、試験の点数による偏差値的な価値観で序列化されているそれぞれの学校に対して、多様な価値観に基づく評価を行うこと、Aそれぞれの学校が、保護者・地域と協力し合って、自主的・主体的に自らの教育内容を改善していくための契機となるような評価を行うこと等が必要である。
 学校が一つの物差しで序列化されないよう、多様な価値観・基準でそれぞれの学校を横断的に評価するための条件整備を、先行して検討すべきである。

(4)教育委員会
教育に対する価値観の多様化に対応し、教育分野での分権化と地域社会との連携、地域で育つ、地域を育てる学校をめざしていく観点から、情報の公開や教育委員の多様性の担保と合わせて、教育委員の選出方法について、公選制度の復活を検討すべきである。

〔その他〕

(1)教育休暇制度
 保護者が、家庭での教育責任を十分発揮するためには、子どもとのふれあう時間を拡大するとともに、学校や地域の教育活動等に積極的に参加していくことが重要である。
 そのためにも、今回提起している「教育休暇制度」を早急に導入し、休暇を活用して、保護者が実質的に活動に参加できるよう、企業としても支援すべきである。

(2)職業観・勤労観
「フリーター」の増加など、若者を中心に職業観や勤労観に変化が見られる一方、子どもが、保護者の働く姿を見る機会は少ない。保護者が誇りを持って職場で働いている姿は、家庭のなかの生きた教材そのものであり、大人たちが、額に汗して働く姿を子どもたちに見せていくことは、職業観・勤労観を培っていく上で重要である。
 また、職業観・勤労観を育むためには、とくに体験学習が重要であり、中間報告では、ものづくり教育等の充実とあわせて、@職業体験、職場見学、インターンシップ(就労体験)などの体験学習の積極的な推進、A進路指導の専門家の活用等を提案しているが、こうした提案に賛成である。
 ただし、実施するに当たっては、「自分探し・仕事探し」にむけた動機付けや、体験学習の選択肢を幅広く設定して自らが選択できるようにするなど、一人ひとりの自主性・主体性を引き出す視点を大切にすべきである。

(3)教育基本法
教育問題は、「国家百年の計」と言われるように、21世紀の我が国の教育をどうするのかという観点から、社会全体のなかの大きな課題として位置づけて取り組む必要がある。そのためにも、はじめに教育基本法の「改正ありき」の姿勢で議論するのではなく、今後の教育の理念・基本像について、国民的な議論を十分深めるべきである。

2 最終報告に追加すべき意見

(1) 幼児教育
 核家族、共働き、少子化と一人っ子の増加等のなかで、子どもは同じ年齢はもちろんのこと、異なる年齢の遊び相手も少なく、親もまた、他の親と子育てについて話し合う機会が少なくなっている。
 教職員・保育士・保護者・子ども・地域住民などの参加する子育てネットワーク機能を高めるため、就学前の子どもたちが何歳からでも選択的に通える幼児教育の場として、幼稚園と保育園を一元化することを検討すべきである。また、「通学合宿」等を促進する前に、放課後、異年齢の子どもたちが安心して地域のなかで生活し、遊び、学び合えるよう、1997年の児童福祉法の改正で「生活の場」として位置づけられた学童保育を充実すべきである。

(2)生涯学習等
 「中間報告」は、若年層を対象とした教育問題や学校教育が中心で、人生の全ステージを対象とした生涯学習の視点が希薄である。生涯学習の視点からは、学び直しの機会を保障する仕組みを整備することが重要である。
 さらに、階層間格差の拡大(教育機会の均等を実現するための施策等)、諸外国から来日した外国語を母語とする子どもたちの増加(日本語および母国語教育の実施方策等)、障害を持つ子どもたちの問題(ノーマライゼーションの理念を基本として、障害者と健常者がともに学ぶ教育を推進するための条件整備等)などの幅広い観点からも、学校・家庭・地域社会の役割を議論すべきである。

ー以 上ー