教育改革国民会議

教育改革国民会議第12回議事録



第12回教育改革国民会議・出席者一覧
(五十音順、敬称略)
 浅利 慶太劇団四季代表
 今井 佐知子社団法人日本PTA全国協議会会長
上島 一泰社団法人日本青年会議所会頭
 牛尾 治朗ウシオ電機会長
 大宅 映子ジャーナリスト
 梶田 叡一京都ノートルダム女子大学学長
勝田 吉太郎鈴鹿国際大学学長、京都大学名誉教授
金子 郁容慶應義塾幼稚舎長
 河合 隼雄国際日本文化研究センター所長
 河上 亮一川越市立城南中学校教諭
木村  孟大学評価・学位授与機構長
 河野 俊二東京海上火災保険株式会社取締役会長
 田中 成明京都大学教授
 田村 哲夫学校法人渋谷教育学園理事長
 沈  壽官薩摩焼宗家十四代
 浜田 広リコー会長
 藤田 英典東京大学教育学部長
 森  隆夫お茶の水女子大学名誉教授

第12回 教育改革国民会議 議事次第

日  時:平成12年12月11日(月)16:00 〜17:45
場 所:内閣総理大臣官邸大食堂

  1. 開  会
  2. 教育改革国民会議報告(案)についての審議
  3. 閉  会

【牛尾副座長】それでは、ただいまから第12回の教育改革国民会議を開催させていただきます。委員の皆様方におかれましては、御多忙中のところ御出席を頂戴いたしまして誠にありがとうございました。
 本日は、座長である江崎さんがノーベル賞の授賞式に出席をされて、お帰りは明日か明後日になるので欠席をされておりますため、副座長の私が司会を務めさせていただきます。
 本日は、前回申し上げましたように、これまでの議論を踏まえた企画委員会の報告案を作成しましたので、これについて審議をしたいと思っておりますが、とりあえず長い間会議が続いておりますので、何とか今回で討議をまとめ切りたいと思っております。皆様の御協力をお願いしたいと思います。
 なお、先日の内閣改造で新しい文部大臣に町村前総理補佐官が就任をされまして、5時頃からこの会議に参加される予定になっておりますので、よろしくお願いしたいと思います。以上です。

(報道陣退室)

【牛尾副座長】それでは、議事に入りたいと思います。
 全体会議では公聴会、意見募集等で出された国民の皆様の御意見を踏まえて、11月14日の第10回全体会議、11月30日の第11回全体会議の議論を重ねてまいりましたが、これまでの議論を踏まえて11月27日に企画委員会を開催し、最終報告の案文を作成をしました。この報告案を御審議するに当たりましては、まず私から前回了解しましたように、最終報告は中間報告をもとに取りまとめるという原則と、各分科会関係につきましては現在のスタイルを維持しながら公聴会等での国民の皆さんの意見並びに全体会議のその後の議論を踏まえて必要な追加修正を行う。分科会報告書は前回の中間報告のようには添付しない。総論部分並びに教育振興基本計画、教育基本法関係については、全体会議の議論を踏まえて、国民会議の考え方をより詳しく書く。最終報告案の作成は企画委員会が起草委員として作成をするという御了解を頂戴しました。それによってまとめましたものが皆様のお手元に金曜日か土曜日にお手元に届いたかと思いますけれども、それにつきましては、まず起草委員会に参加をされました金子先生から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いしたいと思います。

【金子委員】それでは、「資料2」取扱注意と書いてある「教育改革国民会議報告(案)」というものを見ていただきたい。これは多分お手元には数日前に行っていると思います。お読みいただいた方もいると思いますが、中間報告とどこが変わったかということを一字一句はやりませんが、少し大きな点だけ、ここはこう変わったよと、この辺は今日議論していただきたいなという感じでお話したいと思います。
 この案は、企画委員会の案ということです。私もこれを作るのに参加しております。私からこのポイントが変わったんだということをお話をしてみたいと思います。
 まず、全体の構成ですが、今、牛尾副座長の方から申し上げましたように、大きな違いは『分科会の審議の報告』を付けないというところです。
 「はじめに」の部分は前とほとんど同じです。17の提案に関しても同じですが、17の提案のうち2つに関してはタイトルの字句が変わりました。どこが変わったかといいますと、2番目の「一人ひとりの才能を伸ばし、創造性に富む人間を育成する」というところの3つ目ですね。「リーダー養成のため、大学・大学院の教育・研究機能を強化する」。前はプロフェッショナル・スクールの設置を進めるということでした。この間の会議で、プロフェッショナル・スクールだけではなくてリーダー養成ということを強く打ち出した方がいいんじゃないかということで変えております。
 それから一番下、これは多分今日、多少議論になるんじゃないかと思いますが、教育基本法については「新しい時代にふさわしい教育基本法を」という前向きの形で今回は案を出しております。中間報告のときは「教育基本法の見直しについて国民的議論を」ということで書いてあります。内容につきましては後でお話ししますが、全体としては前向きなものをということでこのように変わっております。
 あとは全体の構成としてはほとんど変わらないのですが、その次のページ、「私たちの目指す教育改革」は、前は「今なぜ教育改革か」というタイトルでした。ここに関しては幾らか変わっております。どこが変わったか後で申し上げます。
 それ以降、ざっと見ていただいて2、3、4が「人間性豊かな日本人を育成する」。3が「一人ひとりの才能を伸ばし、創造性に富む人間を育成する」。7ページですね。それから11ページに「新しい時代に新しい学校づくりを」。これはそれぞれ第1、第3、第2分科会の意見を取りまとめたものでございます。中間報告との違いは、中間報告の場合には各分科会関連は2ページという制約を設けましたので、それから漏れ落ちているけれども最終報告には盛りたいというものを入れております。特に『分科会の審議の報告』を今度は添付いたしませんので、そこからかなり拾っております。各分科会ごとに1ページか2ページ増えております。どこが加わったかということに関しては、後で幾つかポイントを申し上げます。
 それから13ページ、14ページに教育振興基本計画、それから教育基本法に関してですが、これも多少分量が増えております。教育振興基本計画に関しては、余り内容は変わっておりません。教育基本法に関してはこの間とは多少変わって、後ろ向きでなく前向きのものになったと我々企画委員会では考えております。
 「おわりに」の部分はほとんど変わっておりません。中間報告から最終報告ということで多少変わっておりますが、内容としては変わっておりません。
 全体として片仮名表記はなるべく日本語にするとか、それから「ティーチング・アシスタント」など、日本語にできない場合には説明を加えるということや、字句の修正などがございました。
 少数意見はこうだとか、各論併記ということはなるべくやめようということで、表現の上でその辺の配慮も多少したつもりでございます。
 全体として申し上げますと、多少変わったのは教育基本法の部分、それから第1、第3、第2分科会のところで幾つかの項目が足されているということです。その部分を中心にこことここが変わったよということを指摘したいと思います。
 まず最初に「私たちの目指す教育改革」の部分ですが、これは分量として3ページになりました。前は1ページ半ぐらいでしたので幾らか増えました。前半の部分は余り変わっておりません。現状認識、「教育は人間社会の存立基盤」「危機に瀕する日本の教育」「大きく変化する社会の中での教育システム」、その辺まで変わっておりませんが、3ページに「これからの教育を考える視点」ということで第1に、第2に、第3はということでそれぞれ第1、第3、第2分科会で後で詳しく言うところをここでまとめました。中間報告にはこの部分がなく、少し内容的に物足りなかったということがございましたので、ここで要約をしております。文章については後でご覧になって、ここはまずいというところがあれば御意見を伺いたい思います。
 一番変わったのは4ページの「教育改革への基本的な考え方」の4ページの最後のところ、これは全く新しく追加しました。マスコミ等で、この教育改革国民会議は理念がないというようなことを言われておりますが、我々としては理念がないとは思っておりません。何が基本かと言うと、一つには基本に立ち返るということ。家族、家庭の大事さとか、学校教育の制度をやはりもう一回見直そうよということとか、グローバル化の中で一人ひとりの才能をちゃんと育成するという、今まで言われてきたけれども基礎に立ち返ってもう一度言おうということ。もう一つは、改革の具体的な動きをつくろうということで、できることをしっかりやろう。今まで改革、改革と言っても結局何も進まないじゃないかということでなくて、今回はしっかりと実行していこうという、この2つが今回の国民会議の基本的考え方ではないか。ここでその2つのことを指摘しております。それで、最後にこの2つの基本的な考え方に立って教育を変える17の提案を行うんだというふうに締めました。
 5ページ以降は今のところを受けまして、先程申し上げたように中間報告よりは多少項目が増えております。提言の中で一つ二つ項目が増えておりますが、その中で多少議論になるかなということをピックアップして今、簡単に申し上げます。いろいろな字句に関しては皆さんご覧になっていると思いますので、一つひとつは申し上げません。
 最初の◎「教育の原点は家庭であることを自覚する」のところでは、家庭教育の支援とか、教育だけでなく福祉の視点も入れるとか、それから幼稚園や保育所といったような観点が入っておりまして、中間報告でなかった部分が加わっております。それから、「『教育の日』の制定を検討するなど」ということに関しては中間報告になかったものが入っております。
 次に、◎「学校は道徳を教えることをためらわない」というタイトルの下でございますが、ここにおいては幼児期ということを言ったぐらいでほとんど変わっておりません。
 次のページにいっていただきまして、5ページの最後で◎「奉仕活動を全員が行うようにする」。これが今日少し議論をしたいなと思っているところでございます。提言の6ページにいきまして(1)、(2)、(3)のうち(1)、(2)はほとんど変わっておりませんが、(3)のところの表現がかなり大幅に変わっております。中間報告のときには(2)だったんですが、「将来的には、一定の試験期間をおいて、満18歳の国民すべてに1年間程度、農作業や森林の整備、高齢者介護などの奉仕活動を義務付けることを検討する」という文章になっておりました。ここでは、「一定期間に、すべての青年が1年程度、環境の保全など様々な分野において奉仕活動を行うようにすることを検討する」という表現になっております。
 この表現に関しては、いろいろな公聴会の意見、各方面からの意見も踏まえて、「義務化」ということで我々のメッセージが伝わるのかということが企画委員会で議論になりました。必ずしも一致したということではないのですが、幾つかの意見が出ております。これがその一つの意見というふうに考えていただきたいと思います。ここに関しては中間報告と大分変わっておりますので、今日、ひとつ議論の対象になるのではないかと思っております。
 第1分科会の部分は文句をかなり直しております。第3、第2はほとんど直しておりません。◎「問題を起こす子どもへの教育をあいまいにしない」のところで、(2)の「問題を起こす子どもに対して適切な措置を取る」という語句はこれまでございませんでした。それで、「とともに、それらの子どもへのための十分な方策を講じる」というふうな両刀使いというんでしょうか、そういう形にしております。前は「適切な措置」ではなくて、「子どもに対する教育の方策」と書いてありました。
 その次、◎「有害情報等から子どもを守る」。これも同じですが、(1)のところに「NPO、研究グループなど複数の民間団体が」の次ですね、「自主的に有害情報とは何かを検討し」という字句を入れております。有害なものは何かというのは、はじめから決まっているわけではない。政府が決めるものでもないので、「有害情報とは何かを検討し」という表現を追加しております。中間報告ではこれがなく、それから「フィルタリング」という専門用語が入っておりました。これは取りまして「有害情報等をチェックする」としております。
 それから(3)で、中間報告では国がどうすべきかということは入っていなかったんですが、国が有害情報を守るためにこうした仕組みを、中間報告では「支援する」にとどまっていたのですが、「そのための法整備を進める」という字句が入っております。
 第3分科会に対応します「3.一人ひとりの才能を伸ばし、創造性に富む人間を育成する」のところでございますが、最初の◎の「一律主義を改め」のところ、最後の義務教育開始年齢については中間報告から変わっておりません。このような形で問題を提起しようということで、「更に検討する必要がある」という表現にしております。これは中間報告のままでございます。
 それから、すぐ下の提言の(3)の中高一貫教育に関してはこの間いろいろ意見がございましたので多少丁寧に書いております。
 あとは、インターンシップというのを「(就業体験)」というふうに説明したり、TAの説明をしたり、9ページの「職業観、勤労観を育む」というところで「進路指導の専門家(キャリア・アドバイザー)」とか「人材とのミスマッチ(不整合)」という表現でもって、前よりも少し具体的にする、ないし片仮名の部分は日本語と併記するという形で多少読みやすくしてありますが、内容的にはそれほど変わっていないと思っております。
 「4.新しい時代に新しい学校づくりを」、これは第2分科会に対応するところでございますが、中間報告から変わったところが数点ございます。一番初めの「教師の意欲や努力が報われ評価される体制をつくる」のところで(2)の「教員は実践者であり、『生涯現役』がいつも適しているとは言えない」と、いろいろな役割を負うというこの文章を入れてあります。本当は「キャリアパス」という言葉を使いたかったんですけれども、片仮名はやめようということでいつでも現役ではなくていいよということで入れてあります。
 次の◎「地域の信頼に応える学校づくりを進める」。ここは前回多少議論のあったところでございます。2つ対応しております。1つは前文のところの2つ目の文章ですね。「単一の価値や評価基準による序列社会ではなく、多様な価値が可能な、自発性を互いに支え合う社会と学校を目指すべきである」ということで、序列社会を助長するのではいけないという意見がございましたのでこの文章を入れてあります。
 それから提言に関して(2)を見ていただいて、評価に関しては2行目、「評価結果は親や地域に」の部分、前は「公開し」とございましたが、ここは「共有し、学校の改善につなげる」という表現に改めております。これらが第2分科会に関わる部分の主な変更でございます。
 あとは13ページの「5.教育振興基本計画」です。これは内容的にはほとんど変わっておりませんが、どのような方向性を示せばいいかという具体的な項目として@ABCとし、具体的にこのようなことを入れたらいいのではないかということを「例えば」ということで入れてあります。これは今日お読みになってこんなところは抜けているよとか、この辺も入ったらいいということがあったらご指摘下さい。それ以外は前回とほとんど変わっておりません。
 さて、最後に基本計画のところでございますが、ここはかなり変わったので、2、3分取って説明をしたいと思います。全体として一番初めのところの文章は変わっておりませんが、我々としてはこの間の全体会で見ていただいたものから、3つの観点ということでは変わっていないのですが、前の案はどちらかというと現行の基本法を手直しするという前提で3つ観点があるよということになっていました。第1は、制定当時とは社会状況が変わっているということで情報化とか生涯学習が出てまいりました。第2の観点としては、前の案は、現行法の規定に不足している部分があるからいくつか加えなさいということで家庭、郷土、国家、宗教などが出てまいりました。第3は、理念だけではなくて実行し促進するために振興基本計画をということでした。
 今日ここに出しました案では、3番目のところは同じです。第1、第2の観点の内容を改めております。全体としては現行何が不足しているかとか、現行のものが制定当時とは社会状況が変わったから変えろという、いわば後ろ向きなものでなく、もしこれから新たにつくるとしたらどのようなものが入っていることが望ましいかという前向きな姿勢で、1つは新しい時代を生きる日本人の育成ということに言及しよう。その中に科学技術の発展とか、環境の問題とか、男女共同参画ということがございます。
 その前に、すみません。ちょっと言い忘れました。1つ前の第2パラグラフに、「これからの時代の教育を考えるに当たっては、個人の尊厳や平和の希求など人類普遍の原理を大切にするとともに」ということで、このことをまずうたうという形にいたしました。人類普遍のものは当然これからも大事になるわけです。話を元に戻しますが、第1は新しい時代を生きる日本人の育成ということで環境情報とか男女参画、生涯教育、家庭、学校、地域の連携ということを明確にせよという新しい時代ということを1つ置きました。第2が、新しい時代を生きるとともに伝承すべきものは伝承するということで、伝統、文化ということ、自然、家庭、郷土、国家ということでございます。それで、ここの2行目から宗教教育に関してのところがかなり長いんですね。私はこんなに長くする必要はないのではと思ってはいるのですが、やはり宗教教育に関しては微妙な点もあるので多少長くなっております。このくらい書かないと足りないんじゃないかという意見が多かったので。こういう形で宗教教育も教育の中で考え、情操を育むという視点から議論する必要があるということです。
 第3の視点は、前と同じように具体的な方策を規定してくれということでございます。
 この3つの観点が、新しい時代の教育基本法を考える上で重要なものであるということで、あとは、「言うまでもないが」の一番最後の文章ですね。大事なことは、教育基本法の改正の議論が国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならないということであるということに関しては前の案と同じになっております。全体としては申し上げたとおり、これから新しいものをつくるとしたら、個人の尊厳や平和ということは当然ながら、それ以外に3つの観点を入れ込もうという形で「今後も国民的な議論が広がることを期待する」と、その部分は同じでございます。
 以上、全体の構成、各論の部分、それから振興基本計画及び基本法に関して新しい案が中間報告と違う点について、少し駆け足になりましたが説明させていただきました。

【牛尾副座長】どうもありがとうございました。それでは、最終報告案についての議論を頂戴したいと思います。
 まず、今日は討議の仕方を2つに分けまして、5ページから12ページの各分科会関連の部分の議論と、それからそれ以外の「はじめに」とか、「私たちの目指す教育改革」の前段の部分と、教育振興基本計画と教育基本法の部分と、その2つに分けたいと思います。それで、初めの方の第1分科会、第3分科会、第2分科会の項目について、これは前回の中間報告の各分科会の報告を添付しないということで、そういうものを入れて大変に御苦労をかけてこれだけの文章ができ上がったわけですが、今、金子委員から非常に要領よく紹介してもらいましたので、そちらの議論をしたいと思います。
 今日は最後ですが、前回同様3分の超過は認めないということで2分30秒ぐらいのところでカードがいくと思いますが、3回やってまいりましたのでもう出尽くしていると思いますが、新たな御意見についてまず3つの分科会の分について御発言をお願いいたします。この名札を立てていただいた方から発言をお願いします。

【藤田委員】早速で恐縮ですけれども、今、御説明を伺って、いろいろ変更があったと思うんですが、金子さんの御説明の中に、前回の議論を踏まえて修正していただいたということがありました。事実そうなっていると思うんですが、例えば7ページの中高一貫校のところです。これは前回よりももっと踏み込んだ提案、記述になっているんですけれども、私の記憶では、これについて私は強い反対意見を申し上げました。しかし、もちろん賛成意見はあったかもしれませんが、このようにもっと積極的に提案すべきだという意見が出たわけではなかったと思います。それにもかかわらず、なぜこうなったのか、その理由なり経緯なりを御説明いただければと思います。
 それから、最終報告では、全体になるべく調整して、そのかわり分科会報告を付けないということは了解しているつもりでありますけれども、異論や反対意見の取り扱い方に疑問があります。例えば外部評価等については、私の反対意見にも一応御配慮いただいていると思いますが、全体として、ある委員の、あるいは、ある分科会の意見が企画委員会において採用されて、私が一貫して強く反対しているところについてはほとんど考慮されていないというふうに思うんですが、その点についても御説明いただければと思います。

【牛尾副座長】後段の方につきましては、15ページの後ろの3段目のおしまいに、私たちの議論の背景を理解していただくためにも議事録等もごらんいただくように希望するというので議事録は全文公開しておりますし、ホームページにも全文入っておりますので、その点は関心のある方は全部読めるようになっておりますので御了解願いたいと思います。
 中高一貫教育の方は、もし木村さんよければ御説明願います。

【木村副座長】確かに藤田先生からは終始一貫御反対がございましたが、第3分科会では中高一貫教育校が全体の半分ぐらいになるようにすべきだという強い議論がございましたので、それをここへ書かせて頂いた次第です。多分委員の中で御反対になったのは私の記憶では藤田先生だけだと了解しております。反対意見があることについては、この報告書は全会一致ではないということを銘記してありますので、そういうことで御了解頂きたいと思います。また今回の修正で少し詳しく説明させていただいたのは、前回の先生の御発言の趣旨を盛り込もうとしたためであります。

【藤田委員】そうでしょうか。私はむしろ批判的な意見を申し上げましたけれども、中間報告では「中高一貫教育をより一層推進する」ということだけだったと思いますが、ここでは、「更に思い切った支援策を講ずる」という文言が加わっています。これは言い換えれば、既存の3年制の中学、高校よりも中高一貫校を優遇するということでしょう。既に文部省はそういう方針を出していると思いますけれども、支援策を講ずるということ、つまり、優遇措置を講ずるということは、ある種の格差化を中学校段階から持ち込むということになると思います。これがどうして支持されるのかが私にはよくわからないんですが、いかがでしょうか。

【木村副座長】そこのところは、思い切った支援策を講ずるということで、そこだけを優遇するというふうには私個人は読んでおりません。やはり何か新しいことをしようとしたら当然それに対しては支援策、ある程度のサポートを行うことは当然だと私は理解しております。

【牛尾副座長】この議論は企画委員会でもう一度、今日の議論を踏まえて最終調整をやりますので明記しておきます。ほかに御意見はありますか。

【河上委員】私はずっと第1分科会に参加していましたので、第2、第3分科会の提言については少し引いて発言していたのでちょっと反省しています。現在の学校のある種の危機的な状況を突破するために第2、第3分科会の提言の中で利用できる提言が入っていると思うので、私の理解でいいのかどうか確認をしたいと思います。もしそれが実現すればひょっとすると現在の学校をうまく立て直せる力になるかなと思いますので。
 8ページのところなんですけれども、この中で提言の(1)のところでインターンシップなどを積極的に実施するというのは、例えば教育実習を今までよりももうちょっと考えるということになるのかどうかですね。今2週間とか3週間とか、そういう期間でやっているんですけれども、私の感じではもうちょっと長く、かなり状況の厳しいところも含めて体験させた方がいいという感想を持っています。それはそういうふうに理解していいかどうかですね。
 それからもう一つは、教員については修士号の取得を要件とするという点についてです。これは私は反対ではないんですが、そのときにほかのところで、人間の幅とか、体験とか、いわゆる専門的な知識とか学問分野以外のことについて現在の教師たちがもっと大きな能力を持った方がいいというふうに私は考えているんですが、その修士号取得の要件の中に人間の幅、いわゆる教養の分野とか、そういうようなものが含まれるというふうに考えていいのかどうかということです。
 それにつけ加えて、教員採用試験のときに現在はどちらかというとやはり専門的な学問といいましょうか、そういうものを中心にして採用しているんじゃないかという感じが強くします。ですから、その教員採用試験に危機に対応できるような能力というものを重視する方向性を考えていらっしゃるのかどうか。その辺りを是非お聞きしたいと思います。

【木村副座長】まず第1のインターンシップについてですが、これは広義に解釈しますと今、河上先生がおっしゃったように、先生方の教育実習というものも含まれると思います。ここではどちらかというと広義の解釈をしたつもりです。我々の議論の中にはそういう先生のお話のようなことも入っておりましたけれども、ちょっと字面ではなかなか読みにくいかもしれませんね。心としては入っているというふうに私自身は思っております。
 それから、次の修士号の件についてはなかなか難しい問題だと思います。こう書くと何か専門的な知識だけを増す必要があるというふうにとられるかも知れません。私は理工系の分野にいて若い人達が2年間、自分で実際に研究をすることによって人間的にもものすごく成長することをまのあたりに見てきました。これは自信を持って言えます。そういう意味で御解釈いただければと思います。
 3番目は金子先生の方ですね。

【金子委員】教員採用のことですね。これは11ページの一番上の◎の提言の(5)というところに非常勤、有期、雇用形態を多様化するということと、教員の採用方法については入り口を多様にするということで、その意図は含んでおります。

【牛尾副座長】それから、今おっしゃった中で幅広いいろいろな危機、クライシスマネジメントまで含めて広い考え方という点は、この8ページの提言(1)の教養教育と専門教育というリベラルアーツ教育というのを非常に重視するという表現を書いたんですが、それが離れて関係がないような印象もありますので、これも最終的にはちょっと留意してみたいと思いますし、インターンシップの問題も確かに今、非常に幅広く使われているので、ここを強化することが現場の打開にプラスになるようであれば、表現はもうちょっと工夫してみたいと思います。

【河上委員】もう一ついいですか。9ページの提言の(1)の最初の3行は、私は非常に教員にとっては決定的な資質だというふうに思っています。学生は自らの位置づけを学習システムに導入するという、そこの3行なんですけれども、こういうような能力を持った人たちが大量に学校に入ってくると、やはりかなり現状を改善する力になるだろうと思いますので、これは一般の学生についてお話になっているようですけれども、教員については特にこういう能力が必要だというふうに私は考えています。

【牛尾副座長】わかりました。それでは、梶田委員どうぞ。

【勝田委員】私は後の方でいろいろ意見がございますが、ちょっとお聞きしたいのはどうも頭が悪くてよくわからないんですけれども、11ページのところで……。

【牛尾副座長】教師の一番上の(2)ですね。「教員は実践者であり、生涯現役が」というところですね。

【勝田委員】はい。その文章がもうひとつ的確によくわからないんですけれども、どういうことでしょうか。ちょっと御説明していただけますか。

【河上委員】これは私もわかりません。

【金子委員】これは、中間報告では削った第2分科会の審議の報告の中に入れた文章をそのまま持ってきちゃったんですけれども、教員というのはいつでも現場でもって教壇に立って教えるだけが教員ではなくて、教頭になるとか、いろいろな役割を学校の中でもつくって、キャリアパスをたくさん増やして、それでその人の力に一番ふさわしい適性によって事ある役割を負ってほしいということです。また、必要に応じて学校教育以外の職種を選択できるようにするということです。また実践者であり、生涯現役という言い方はちょっとわかりにくいのかもしれません。

【牛尾副座長】ちょっとこれは変えましょう。今の説明だと非常によくわかりますね。

【勝田委員】これは大学にも当てはまるんですか。

【金子委員】ここは小中だけです。

【勝田委員】私は大学の教員にも当てはまるんじゃないかと思いますね。

【藤田委員】今のことについて、これは、一度校長になった人が再度校長から退いて一般の教師に戻るということも自由にできるようにするということも含めてですね。

【牛尾副座長】わかりました。それでは、これは後で金子委員、書き直してください。

【河合委員】河上先生とほとんど似た意見なんですが、私は教員が修士号を取るというのは賛成で、その修士の勉強の中に今、河上先生が言われたようなことはむしろ入るんだと。今まで修士というと何かすぐにいわゆる知的なことだけ考えるんですけれども、高度専門職業人教育ということは、つまり教師という高度な専門人を教育するためには知識だけではない。いろいろな体験が伴うんだというふうに考えて、修士号というふうに考えればちゃんと……。

【牛尾副座長】これは、(3)に1行付け加えましょう。

【木村副座長】矛盾するかもしれませんが、生涯教育ということと重ねて考えなければいけないと思うんです。ですから、一度先生になった方が、修士を初めから要件にしてしまったら修士がないと先生になれないではないかという議論もありますけれども、現状でいくとそうでない先生方はたくさんいらっしゃる。その方がまた大学院へ生涯学習で入ってくる。その辺まで意識して議論をいたしました。

【河合委員】だから、大学院教育ということも変わらなければならないということですね。ちゃんとそれにふさわしい大学教員を養成すると。

【牛尾副座長】わかりました。これはちょっと工夫してみます。

【浜田委員】6ページの真ん中の◎「問題を起こす子どもへの教育をあいまいにしない」という前文から提言(1)、(2)、(3)全部読んでいますと、そういう学校崩壊、学級崩壊の中心になっているような手に追えない子どもを学校で何とかしなさいよと、それだけしか言っていないような感じがしまして、私が学校の先生だったら、それが何ともならないで今苦労をしているところが多いのに、こういうことを言うだけならば誰だって言えるよというような感じがしなくもない。それで、結局最後は教師の資質、人格、その辺が疑問だからもうちょっとというように受け取れるんですが、この2、3か月に米国が20年ぐらい前、学校の状態が大変だったのを、デトロイトの高等学校で試みたやり方をベンチマーカーとして、それこそ10何年かかけて3代の大統領にまたがって国を挙げて進めていったという報告論文が月刊誌に出ていたんですけれども、そのぐらいのスケールの国家的問題ではないかというような視点をどこかに入れて国レベルでも何とかしなきゃいかぬ。米国の先例に学ぼう。だから学校の先生、頑張ってくれというようなムードにちょっとそこは変えた方がいいような気がします。

【牛尾副座長】英国でもサッチャー元首相がそれを行ったわけですから、それは第1分科会ですね。その前に、どうぞ。

【河上委員】私は教師の立場からとても言いにくかったのですが、ありがとうございます。教師の資質の向上、とりわけ人格的権威の確立はそのとおりなんですけれども、今、浜田さんがおっしゃられたようにそれだけでは如何ともし難い状況が広範に広がっていますから。しかし、私は(2)のところの「適切な措置」に希望を持っているんです。現在、例えば出席停止を行うということは非常に難しい状況にありますね。幾らか少しずつ出始めていますけれども、もっと踏み込まなくてはいけない状況なのです。何も手を打てなければ、このまま立ったまま崩れるということになります。
 ついでにもう一つ申し上げますと、これはそういう希望があるかなと思って私は読み換えたんですけれども、コミュニティ・スクールの提起についてです。そのコミュニティ・スクールは今のような、例えば学校の枠組みに入れない生徒たちを積極的に新しい学校をつくって何とかしようというようなものも含むとすれば、これは一つの救いになるかなという気はあるんですけれども。

【牛尾副座長】初めは河上委員のおっしゃるように、かなり厳しくつまみ出すぞという感じの表現だったのが、だんだん議論しているうちにソフトになってきたわけです。それで、浜田委員のおっしゃる懸念になっていますから、これはやはりおっしゃる通り、そういう雰囲気が出るように戻したいと思います。

【森委員】内部でもこれは議論したんですけれども、適切な措置の中にはおっしゃるような希望的なものも入っているんですが、ほかの提言のところでは支援するとか法整備をすると言っているのに、ここだけがちょっとトーンダウンしているんです。そういう意味では今、副座長がおっしゃったように検討してみたいと思います。

【牛尾副座長】これはやります。

【藤田委員】関連して、私も浜田さんの意見に全面的に賛成ですが、前回までの分科会の報告等ではわりと厳罰主義的な対応がむしろ念頭に置かれていたと思うんですが、そうではなくて、国家的、社会的なレベルの問題として取り組まなければいけないという視点をもっと明確に出してほしいと思います。

【牛尾副座長】おっしゃるとおりですね。

【浅利委員】関連で、「学校が問題を起こす子どもに対して『出席停止』などの適切な措置を取るとともに」とはっきり入れたらいかがでしょうか。

【牛尾副座長】それも込めて議論した方がいいですね。それから、国を挙げてというのもありますから。

【西川議員】昭和50年代の後半に最大の校内暴力の問題があって、それが第2次だったんですね。その前に第1次があって第2次があった。そして、その後第3次があった。つまり、何10年とかかって、なぜいつも同じパターンの問題が周期的に起こってくるのか。これはやはり学校現場の猛烈な反省があってしかるべきだし、学校だけで対応できないならばそれに対してもっと社会的なシステムをビルトインするべきだったんじゃないかということを考えると、ただいまの浜田さんの御指摘のようなもっと積極的な表現をされるという牛尾副座長の取りまとめに賛成をしたいと思います。

【牛尾副座長】政治的にもそれは十分バックアップする余地があるということですね。わかりました。それでは、次は田中委員どうぞ。

【田中委員】細かな点なんですけれども、ちょっと気になった点は11ページの最初の◎の(5)の「採用後のプロセスを評価する」という表現は何となく漠然とはわかるんですが、プロセスという表現はもうちょっと丁寧に説明した方がいいんじゃないかという気がいたします。
 それと、非常勤の次にある「有期教員」というのは、表現として適切ではないんじゃないかと思います。任期付教員というのが一般的な言い方かと思います。有期というと、それ以外は無期というので、それは余り表現としてはよくないと思います。

【田村委員】中高一貫の問題は先ほどお触れになりましたが、私としてはここに出てくる意味は18歳までに二度の受験があるということの問題点ということを重視していただきたいと思うので、中高一貫は是非進めていただきたいと思っております。反対される理由はよくわかるんですけれども、それでは対案はどうするんだということを言っていただかないと、現状のままでそういう二度の受験の意味というのは、現実には全員が入るにもかかわらず試験をやる。それで、入ってすぐまた大学の入試の準備をする。これは実際にあるわけですから、それについて何も提言しないわけにはいかないという意味で、私はこういう提言をすべきだというふうに個人的には思っております。
 それから、教員の修士というのはアメリカなどでは高等学校は特に常識ですから、修士というのは当然と考えていただくことが社会全体を変えていくのではないかと思いますので、これは是非取り入れていただきたい。
 それから最後に問題を起こす子どもに対する対応ということなんですが、これはなかなか難しいんです。というのは、実はこれはすべての学校がそうなっているわけではないんです。ほとんどの学校は何もないんです。ですから、余り書いてしまうと何を言っているんだという現場の反発があるんです。ですから、河上先生がおっしゃる部分というのは全くないなどということは私は申し上げませんけれども、いろいろなところに行っていると大体ほとんどのところは何の問題もないんです。それで、先生が自信を持ってちゃんと指導しているんです。ですから、そういう意味で書き方についてはよほど慎重に書かないと、先走って書いていると何も現場はわかっていないんじゃないかという批判につながる危険があるような気がします。ですから、その辺は十分に配慮されてお書きいただきたいというふうに思います。河上先生のおっしゃっていることが全くないなどということは言いませんけれども、しかし全国的に見ると本当にごく一部の限られた地域で起きているということははっきりしていますので、その辺のところの書き方を十分慎重にしていただきたいと思っています。

【牛尾副座長】それでは、分科会の議論をこの辺で終えまして、今度は総論と教育振興基本計画、教育基本法についての議論に移りたいと思いますので、御発言の方はどうぞ。

【勝田委員】これは既に皆様がいろいろ御議論になったに違いないんですが、6ページの上の方の提言の部分で、(3)の「将来的には満18歳後の一定期間に」と、私は大体18歳ぐらいのあの時というのは、私自身を含めまして反省しますと非常に知的にも伸び、生長するし、感性という点でも鋭敏かつ柔軟です。非常に伸びる一番大切な時期なんです。それを1年間もこれをやるのかと。私はせいぜい半年でいいんじゃないかと実は前から思っているんです。そういうお考えの先生方も多いだろうと思うんですけれども、これは文章になってしまうと全部の委員が同じ考えなのかと、なってしまうんです。半年という期間を入れるかどうかは別として、もうちょっと。

【牛尾副座長】期間を限定しないという方法もありますね。

【勝田委員】限定しないというか、余り長いことやらない方がいいです。

【牛尾副座長】御趣旨は大変によくわかりました。

【藤田委員】先ほど田村先生が対案を出してほしいと言われたんですが、対案は私は既に出ていると思うんですが。

【牛尾副座長】中高一貫はもう出していらっしゃいますので。
 では、次のセクションに入ります。

【浅利委員】今のは重大な提起だと思うんです。1年か、半年かというのは。ただ、一定期間というだけで済む問題でしょうか。もう一言、二言の議論があってもいいんじゃないかという感じがしますね。しかも、1年を2年にしたいというふうなお考えの方向の勝田さんから、逆のお考えが出たのでちょっとびっくりしているんですけれども、曽野さんは1年とかなりはっきり書いていらっしゃるものですから、どうしましょうか。どういうふうな表現がよろしいでしょうか。

【勝田委員】私は2年はとてもじゃないと思います。
 長期間というと一年以上と見なされますから、ある程度かな。相当期間というのもちょっと何か不明瞭……。

【森委員】これは最初の提案は2年だったんですが、それが1年程度とだんだん後退しているんですが、私は一歩後退二歩前進という立場に立てばこれでもいいかなと思って黙っていたんですが、これがまた半年になるようだったらもう少し議論し直さなければいけないと思います。18歳後ですから18歳にやるわけじゃないですし、18歳に選挙権をなどと言っている時代ですから。

【藤田委員】関連してですが、余り短くするとそれこそ具体化しそうなので、短くすることに反対です。この提案はむしろ、こういう奉仕活動等の経験が社会的にもっと評価されるような、そういう機運づくりをしていくという意味で了解しておりますので、期間はどうでもいいようなものですが、それでも原案通り1年にしておいてほしいと思います。その方が実現性は低いでしょうから。

【牛尾副座長】(3)はそういう感じのトーンですから、そう深刻に考えることはないので。

【浅利委員】それではこれは企画委員会にお任せいただいて、相当激論をして固めるということでよろしいですね。

【金子委員】こういうのはどうでしょうか。「すべての青年が1年間程度率先して奉仕活動に従事することが当然とされる社会をつくる」。それを実現するために学校などが努力するということの方が現実的かなと思う。私は全員にこのような体験をしてもらいたいという気持ちは強くあるんですが、この報告書は、現実性ということを強く打ち出したいと思う。それには、多少表現を工夫した方がいいと思う。

【牛尾副座長】今日の全体会議の雰囲気はそういう意見が意外と多いということで。
 それでは、大変重要な問題を提起していただきましたので、企画委員会の方で十分配慮したいと思います。それでは、次の総論並びに教育基本法等々についての御意見を河野委員からどうぞ。

【河野委員】二つ申し上げます。いずれも表現の問題なんですけれども、一つ目は3ページの上から4番目のパラグラフに、「子どもの行動や意識の形成に最も大きな責任を負うのは親である。家庭は、団体行動ができること、挨拶・・・」云々とあり、ここのところで団体行動が最初に出てきているんですが、何となく横並び的というか、日本的・集団的な感じがするのと、それから団体行動それ自体は挨拶とかいろいろな場面で、集団でやるのと相対でやるのと両方あるので、ある意味でダブっているのかなと思うので、「団体行動」を「我慢すること」の後に置いたらいいんではないかというのが一つです。
 それから、できればやはり家庭が教育の原点であると言っているわけなので、命とか生命の大事さを教えるとか、そういうことをここに入れてもいいのかなと思います。ただ、5ページで「例えば『しつけ3原則』と呼べるものをつくる。」と提言で言っているので、余りそぐわないのかなという気もしないではありませんが、ここで言えれば言った方がいいのかなと考えます。
 二つ目は、4ページの最後のパラグラフの3番目と2番目に、「今まで臨教審をはじめ、いろいろな改革をやってきたが、スピードが遅くなかなか進まなかったりして国民がいらいらしている、だから勇気をもって実行しなければならない。」と書いてあります。これ自体は結構だと思うんですけれども、やはり実行と併せて表現された政策を短期的に見るもの、あるいは長期的に見るものに分けて、その効果を評価していくということも大切であるというのをここに入れた方がよくないか。それは後の13ページの基本計画の終わりの方に「計画の作成段階及び実施後に厳格な評価を実施し、評価に基づき財政支援を行う。」と書いていることの頭出しにもなるのかなと思います。
 以上この2点です。

【牛尾副座長】これは金子委員、何かありますか。

【金子委員】評価するというのは大事ですね。実行すると言ったけれども、実際には実行だけではなくて、実行した後もちゃんと評価しないとだめですね。修正してみたいと思います。

【牛尾副座長】それでは少し修正ありですね。わかりました。他に御意見ございますか。

【河上委員】2ページと4ページに関わるんですけれども、2ページのいわゆる学校とか教育委員会等の現状認識で、下から6行目のところで、「戦前の中央集権的な教育行政の伝統が払拭されていない面がある。関係者間のもたれ合いと責任逃れの体質がある」とありますが、私は全くこのとおりだと思っています。
 それで、4ページの最初の4行目のところに「教育委員会や文部省など教育行政機関は、これまでのように管理・監督ばかりを重んじるのではなく、多様化が進む新しい社会における学校の自主性、自立性確立への支援という考えを持たなければならない」と。私は全くこのとおりだと思うんです。ということは教育委員会、文部省の権限を今までよりも少なくする、緩める。だから各市町村なり各学校の判断を重視するということを強調するような考え方として理解してよろしいんでしょうか。

【牛尾副座長】これはそういうふうに理解していいと思います。まずこの文章は間違いなく理解できるのではないでしょうか。

【文部省事務次官】文部省はまさにそういう方向にいっておりますし、さらに、学校の裁量権限の拡大、学校の自主性、自律性の確保という方向で改革が進められているところです。我々も一生懸命改革に努力しているところでございます。

【河上委員】学校そのものがまだ、古い体質を引きずっています。例えば学校長が学校の問題に責任を持って何とかしなくちゃいけないというふうに、自分で判断して決断するというのが非常にできにくい体質がまだあります。だから、教育委員会や文部省にすぐ指示を仰いで、それをそのままやってしまうという体質が残っていますので、そうだとすれば私はすごいいい方向だと思っています。

【牛尾副座長】これの下にやはりそういうふうに現場の方もそれに対応しなければならないということを書かないといけないですね。

【河上委員】そのとおりだと思います。どこかに書いてあると思うんですけれども、各論にありますね。

【牛尾副座長】総論でも書いた方がいいかもしれないですね。どうでしょうか。

【藤田委員】今の議論とも関連しますが、その次の行に「教育行政や学校の情報を開示し、適切な評価を行うことで健全な競い合いを促進することが、教育システムの変革にとって不可欠である」となっていますが、これは随分直していただいたんだと思いますけれども、一方で文部省の行政指導といいますか、そういったものが緩和されることは望ましいことですから、大いに進めてほしいと思います。しかし、もう一方で、この評価と競争ということに異論があります。市場的な競争原理といいますか、そういった要素がこの10年ほどアメリカやイギリス、ニュージーランド等でも非常に強まっていますけれども、そういったことが好ましいわけではないということを確認しておきたいと思うんです。
 評価ということ自体は私も必要だと思いますけれども、それは競い合いのためではなくて、自分たちが学校を変えていく、地域が学校を変えていく、そのための評価でなければいけないという趣旨で、私は、できればこれは「健全な競い合い」という表現ではなくて、「学校の改革、改善を促進するために」というふうに改めていただければありがたいということを申し上げておきます。

【牛尾副座長】わかりました。それでは勝田委員、どうぞ。

【勝田委員】私の場合、13ページの真ん中ぐらいからちょっと下の方に「グローバル化に対応した教育の視点からは、海外子女教育、学生・生徒・教員など教育のあらゆる分野の国際交流」、これはいいです。「留学生支援など」、これは留学生支援は今やっているんです。だから、せめて「留学生支援の拡大と充実」というふうにちょっと入れてください。

【木村副座長】先生が云われていることは、日本では全部やっていると思います。

【勝田委員】では、最後に全部にかけて「拡大と充実」とやれば。

【牛尾副座長】「拡大と充実」は全部にかければいいですね。

【金子委員】目標と具体的方策をつくれと言っているんです。すべて拡大と充実なんですよね。

【牛尾副座長】充実と拡大をするものは以下4つだと書いてあるわけですね。

【金子委員】この@からCは全部そうなんです。

【牛尾副座長】わかりました。では、田中委員どうぞ。

【田中委員】14ページですけれども、教育基本法の見直しの方向についてこういうふうに整理されて、後ろ向きの議論よりも前向きの方向にされたのは大賛成ですが、もう一つ欲を言いますと、伝統とか文化などに関して次代に継承すべきものと言いますと、何か継承という面だけが出ているんですが、やはり伝統とか文化というのは継承して発展させてそれをその次の世代に伝え、場合によっては国際的に発信していく面があるので、やはり伝統とか文化について将来に向けて発展させること、国際的な発信という面も付け加えていただいた方がより前向きな議論になると思います。伝統とか文化というのは余り固定的に考えない方がいいんじゃないかと思いますので、そういうふうに直していただければありがたいと思います。

【牛尾副座長】ありがとうございました。大宅委員、どうぞ。

【大宅委員】教育基本法のところなんですが、古いから合わないとかという話はなくなったというのは大変よかったと思うんですが、ちょっと私がよくわからないのが、つまりITとか生命科学とか、そういうものとかグローバル化が一層進展すると新しい日本人がいるというのは具体的にどういうことなのかちょっとイメージがわかないんです。人として最低やらなければいけないこと、そういうことがわかる人間に育てるというところはわかるんですけれども、こういう新しい社会になったら、例えばどういうことを書くんだろうかというのがよくわからないんです。
 2ページのところにも同じことが書いてあって、21世紀はITや生命科学など、かつてないほど進化していって人間の弱さや利己心が増大されるようになるですか。これもよくわからないんです。だから教育基本法に何なんですか、そういうことに引っ張られないようにしろというようなことを書くんですか。そのイメージがどうもわからないんです。

【牛尾副座長】この3段目の「第一は」というところにもそれの説明がまたあるんですね。今おっしゃった2段目の初めと、再度第3段目に「第一は」と新しい時代のことをまた書いているんですよね。

【大宅委員】ふわさしいというのが具体的に、では今までの人と違う何かあるか。コンピュータが増えたり、生命科学でヒトゲノムがどうのこうのというと、何か教育の仕方を変えなくちゃとんでもないことになるのでしょうか。

【牛尾副座長】グローバルとか生命倫理とか、そういった問題はわかりますが、情報技術の場合でもグローバル化がスピーディーになるのでしょうね。これをもう少しこうだということを書ければ本当はいいんですけれども、漠然とふさわしいと書いてあるのです。

【藤田委員】関連してですが、本当は前回申し上げればよかったんですが、今日の御説明でも前向きの議論をということで、この案は中間報告よりも踏み込んだ内容になっていると思いますが、どうしてなんでしょう。これまで中間報告が出た後、この基本法改正についてはむしろ批判的な意見が他の項目に比べて多かったように思いますが、それを一歩踏み込むことにした理由は何でしょうか。企画委員会で議論されて前回出てきたわけですが、もっと前向きの議論をしようということでこうなったのか。それとも、ここに掲げられた3つの要素に対応した内容を盛り込むことが重要だという理由でこうなったのか。
 どちらにしても、先ほど大宅さんの言われたことと同じだと思うんですが、特に3つの要素の第2の点ですが、私はこれは教育の内容に関わる事柄だという気がするものですから、そういう内容に関わる事柄をどこまで基本法というものに書くべきなのか疑問があります。そういう意味で基本法の性格というものをどうとらえるのかということが、ここでは問われるのでないかという気がします。

【牛尾副座長】第1分科会関係の方でどうぞ。

【梶田委員】今の藤田先生、大宅先生のお2人の意見で、基本法ですからどこまで書くかということはあるんですが、1つ私の理解するところでは未来志向ということで、教育基本法の見直しは50年前のどうのこうのという話ではなくて、21世紀の新しい社会に向かってどういう教育をつくり上げるべきかという、そこで考えられなければいけないというはっきりとしたものを出したという意味では、これはひとつ大事なポイントだろうと思うんです。こういう言い方になっているというのはですね。
 ただし、それが今おっしゃったようにITだとか生命科学だとか、これは私は「青丹によし寧楽の京師」みたいなもので枕ことばだと思っているんですが、基本的には今までは10年置きに教育内容の見直しがされていたわけですけれども、その見直しをやはり早くしなければいけない。
 具体的に何を教えるということでなくて、常にup-to-dateの教育内容を考えなきゃいけないというようなことは言わなくちゃいけないと思うんです。今、理科とか社会科なども、一部だけのことでしょうけれども、かなり中身が遅れているということはよく指摘されていますね。ですから、私はそういうことは書けるだろうと思うんです。常にup-to-dateなものですね。
 それからもう一つは、教育内容は常にグローバルだということですね。いろいろなことがリンケージで絡み合っているということ、これも何かの形でやはり書いておかないといかないなと。日本のことだけ考えるような教育になっちゃいかないわけですから。そういう広い視野の中で例えば日本のことを考える。そういうことで私は基本法の新しい提案がどういうふうになるかは知りません。しかし、やはり未来志向という点から今の基本法にない幾つかの視点は必ず入れておかなければいけないんじゃないか。そのためのリード文だというふうに理解したらどうかと思います。

【上島委員】若い世代で感じますと、ますます物にあふれた時代でこれから次の世代の人たちが大事にしないといけない基本的な教育の要素というのは入れていかないといけないので、古く感じるかもわかりませんけれども、例えば人への思いやりとか、また自分の地域を愛する、または国を愛する気持ちとか、それは日本だけではなくて全世界の人間が感じないといけないことをやはり入れておかないといけないと思うんです。
 それと、恐らく少子高齢化とか、IT化とか、これから進んでいく、また特に環境の時代と言われますけれども、今、将来を見越して取り組んでいかないといけない。特に環境などもやはり入れておくということをこの基本法のあくまでもベースにすれば、新しい目先のことをどんどん入れていかないといけないよりは基本的なことを入れるのが一番いいのではないかと思って、特に若い世代の社会性、公共性とか、個と公とのバランスというのが失われているところを強調してベースに是非置いていくということをお願いしたいと思います。

【牛尾副座長】基本法というのはこの間IT基本法もつくりましたけれども、問題提起をするだけで具体的なことは余り書かないみたいなんですが、基本法というものはどういうものかというのを説明してください。基本法というのはいろいろな種類があるんですけれども、基本法の持っているものというのはみんなそれほど具体的ではないのですね。議論する範囲を書いてあるだけだと思うんですが。

【大宅委員】書いていないからやらないわけではなくて、やっているわけでしょう。環境教育だって、生涯学習だって。だから、書かないとやらないというのは……。

【牛尾副座長】書いていないからやらないという答弁は十分あるのです。

【大宅委員】それは運用の問題ですね。

【中曽根総理補佐官】大宅先生の御意見に対してですが、この部分は、情報技術、生命科学などの科学技術やグローバル化が一層進展する新しい時代を生きる日本人という文脈ですので、新しい時代を説明する例示として情報技術や生命科学の進展をあげているのだと思います。

【大宅委員】そうすると、何が変わるんですか。

【中曽根総理補佐官】生命倫理観、グローバル化と書いてありますが、これは基本法の中にこれらに関する項目を入れろということではなくて、時代が変わってそのようなことを考慮する必要があるということではないでしょうか。先程梶田先生がおっしゃったのと同じような考え方ですけれども。

【銭谷担当室長】今、基本法と呼ばれている法律は17ございます。それで、教育基本法が実際は一番古くて昭和22年にできているものでございますが、それ以後平成に入りましてからも環境基本法とか新しい科学技術基本法とか、そういうものができてまいりました。それで、大体基本法に書いてございますのは、いわゆるこの法律の目的とか、あるいはこの問題に関する基本的な理念ですね。教育基本法も理念が書いてございますけれども、基本理念を書いたり、それから国の責任とか、そういうことが書いてあります。それで、最近の基本法に多いのは、そういう分野の施策の充実を図るための基本計画というものを書くのが非常に多くなりまして、17のうち11ぐらいがそういう基本計画をつくりなさいということが書いてあります。それから、その分野の行政を進めるための国の責務、責任とか基本方針といったようなことを書いている法律が多いと思います。

【牛尾副座長】わかりました。半分ぐらい分かられたと思いますけれども、日本の行政というのは基本法がないと動きにくいということは事実らしいのです。だから、環境の場合でも環境基本法をつくって環境行政をやるのです。その方がはるかに円滑に運ぶようです。今度のIT関係もIT基本法をまずつくって、IT戦略が何も決まっていないのにまずIT基本法をつくってから戦略に入る。これは疑問を持ち始めると限りなく、そもそも日本とは何だということになりますから、そういう部分があることは御了解願いたいと思います。

【森委員】私は、教育の理想というのは変わらないと思うんです。不易だと思うんですが、それは人格でも感性でも知徳体の調和でもいいんですけれども、ただ、現代の社会の変化を見ていますと、ひところハイテクに対してハイタッチと言われたように、技術的な可能性が先行して必ずしも人間が必要としないものがどんどんできている。それに引きずられるような人間になってはいけない。だから、人間が変わらないようにするためにもそういうことを訴える必要があるんじゃないか。そういう意味でも、この基本法を変える背景としてIT、バイオテクノロジー、その他がここに書いてあるわけで、それを基本法に盛れと言っているわけではないというふうに理解しています。

【勝田委員】私は、新しい時代にふさわしい教育基本法という文章を読ませていただいて、基本的には賛成なんです。最後のところをちょっと変更させていただきたいところはありますけれども、せっかく発表するんですから文章をこうしたらどうかなと思うようなところがございますので、よろしいですか。
 最初から読んでみます。「日本の教育は、戦後50年以上にわたって教育基本法の下で進められてきた。この間、教育は著しく普及し、教育水準は向上し」、それでいいんですが、その後に「高学歴社会が形成され」と、一文入れましょうか。そして、「我が国の社会・経済の発展に貢献してきた。しかしその一方で、社会条件は大きく変化し、また、日本人の中に、社会性の欠如や参加意識の低下など憂慮すべき状況が出現している。青少年の間でも、いじめ、校内暴力、不登校、学級崩壊などが起こっている。このような中、私たちは、新しい教育の在り方」、もうちょっと強調するんだったら「新しい教育のあるべき姿について」ぐらいにしたらどうかなと思うんですが、どうぞそれは後で。
 それから「議論し」と、この「議論」という言葉がえらくたくさん出てくるんです。全部数えたら10くらい出てくるんです。とりあえず「あるべき姿について考え」としますか。それで「具体的な対応方策」、これは「方」は除いて「対応策」でいいじゃないですか。「対応策を提言してきた。それとあわせて、教育基本法についても、新しい時代の教育の基本像を示すものとなるよう率直に議論した」。ここにも出てきましたが、「論議」したでもいいですね。

【牛尾副座長】全文問題ありならば、後で勝田委員に文書課長のような仕事をしていただいて。

【勝田委員】私はやってもいいですよ。私は京大時代は修士論文を真っ赤に直したものですから。

【牛尾副座長】それでは、時間の関係がありますので責任を持って銭谷室長が後で文章を……。

【勝田委員】それでは、私がやりましょう。だけど、ちょっとだけ、その文章の問題に関連してですけれども、先ほど大宅さんのおっしゃったことも確かにあるんです。ただ、教育というのは不易なものと、それから変わるものと両方を押さえておかなければならないという意味ではこういうふうな状況を羅列するというのは良いことだと私は思います。
 それで、進展する新しい時代を生きると、何か平凡に書いていますけれども、あえて言うならば「新しい時代に適応して雄々しく生きる」ということぐらいにしますか。そうすると、何かちょっと、どういう人間をつくるんだとおっしゃるから、そういうことで。
 そういった点についていろいろありますが、それでは最後のところだけ議論させていただきましょう。一番最後の文章だけ読ませていただきます。「新しい時代の教育基本法」、これは「新しい時代にふさわしい新しい基本法」というふうにちょっと形容詞を入れていただいて「新しい時代にふさわしい新しい教育基本法については、教育改革国民会議での議論のみならず、広範な国民的議論」−また「議論」ですからこれは「論議」ぐらいにしましょうか。「と合意形成が必要である。今後、国民的な議論」−、また「議論」が出てきましたが、まあいいですか。「が広がることを期待するとともに、政府においても本報告の趣旨を十分に尊重して、教育基本法の見直しに取り組むことが必要である」。
 その後です。ちょっと読んでみますと、「言うまでもないが、大事なことは教育基本法の改正の議論が国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならないということである」。ちょっとこの文章をこう書いたらどうでしょうか。何かこれを読んでみますといかにもおずおずと不安気に、何か老婆心みたいなところがある。そこで、「言うまでもないが大事なことは」と、これは取ってしまうんです。それで「その際」ということで、「その際、教育基本法の改正論が国家至上主義的な考え方や全体主義」と、これは「全体主義」は取りましょう。なぜかと言うと、今は政治学の講義をしていると長くなりますけれども、全体主義というのは政治、経済、社会、それから教育を含めて思想、そういったすべての分野に関して一元的に、上からの絶対権力でもって管理統制するというシステムですから、まさかこんなおそろしい怪物が出てくるとか、まるでこれをやると国家至上主義と、それから全体主義と……。
 国家至上主義が例えばネコだとすれば全体主義はトラですから、そんなことまで案ずることはないのでして、国家至上主義の考え方に導くものであってはならないことは言うまでもないと、そのくらいにしておいた方がいいと思います。その後の文章等々に関しては、それでは銭谷室長にお願いいたします。

【牛尾副座長】それでは、山下議員どうぞ。

【山下議員】先程、藤田先生から基本法の性格を確認する必要があるということで、私もそう思うんですけれども、牛尾副座長の方からお話がありました基本法というのは一体何なんですかという問題提起、私はこれをきちんと確認しないで議論するというのはおかしなことだなと思うんです。
 私は、この成熟社会における実体法の役割と限界をはっきりと確認しておかないとまずいんじゃないかと。17の基本はあるとおっしゃいましたけれども、基本法の部分では第3の教育振興基本計画のところが大事だと思っていまして、政治行政がどこまで支援するのか、これが一番日本でも欠けてきた面じゃないか。特に財政的支援が必要なわけで、それは基本法にふさわしい内容だと。教育内容について、成熟社会においてはいろいろな議論があっていいし、こうでなければならないというものは法律で確定するということになじまない。前から申し上げておりますけれども、そういうことを確認する必要があるのではないか。やはり戦後すぐの役割と今の役割は違う。今は基本法で確認すべきことは、国家がどこまで教育投資も含めて関わるのかということで、教育の理想とか哲学というようなことは、これはいろいろな議論があっていいし、それを実体法で定めるということは慎重でなければならない。そのような考え方でございます。

【牛尾副座長】時間の制約もありますので、あとは3人、藤田委員、西川委員、今井委員、最後に浅利委員で終了します。

【藤田委員】今、山下議員も言われたのですが、私も3つの見直し理由のうちの第1の部分については、確かに社会状況は変化していますから、これを踏まえて考えるということはわからないではないんです。しかし、第2の理由になりますと、これは確実に教育の内容に関わってきてしまうと思いますし、更に学校現場における実践にも非常に大きな影響を及ぼすことになると思いますから、教育の内容に直接関わっていくような性質のものだと私には思えるんです。ですから、こういう側面はこれまでの基本法では中立性を維持することが重要だという書き方になっていたと思いますけれども、その点で、今回ここで一歩踏み込むということは、この国民会議がそういう性格のものとして教育基本法を捉え直す必要があると提案しているということになりかねないので、私はこういう要素の重要性は十分承知しているつもりでありますが、それでも、これを主要な理由にするということは適切ではないと思います。
 それから、見直しの第3の理由になっている基本計画等については、これを盛り込むことはしていただいてもいいとは思いますが、私自身は現行の基本法では第11条で必要な法律を定めるとなっておりますから、本来はそれに含まれると考えていいことだと思っております。しかし、検討する、議論をするということはあっていいことですから、この基本法見直しの提案を入れること自体にこの段階で再度反対するということはしませんけれども、最初にも言いましたように、なぜここまで前向きに踏み込むことになったのか。これは、前回の全体会の前に企画委員会で議論されて、こういう案になってきたと思いますが、その辺のところをもう少し御説明いただければと思います。

【牛尾副座長】これは踏み込むことは前回の全体会議でその流れが出ましたので、企画委員会がそれを受け止めました。それでは、次に西川議員お願いします。

【西川議員】なぜ新しい教育基本法をという問題提起の文章の冒頭の3行目でありますが、「社会性の欠如や参加意識の低下など憂慮すべき状況が出現している」と書いておられて、これは概念として共有できる部分はたくさんあるわけですけれども、しかしもう少し深く考えて表現をふくらませる必要があるんじゃないか。すなわち、社会性と言うけれども、どういう社会性なのか。それから、参加意識と言うけれどもどこに参加をすることなのか。すなわち、参加をさせるということは権限を与えるということで、権限を与えるということはそれと等量の責任を持たなければ参加してはならないのですが、責任という言葉がどこにも出てこない。責任を果たそうとする気概を日本人が失ってしまったというところに問題があるということを感じております。
 したがって、この表現は悪いというのではなくてもう少し丁寧な、これを書かれた方はそういう意識を持っておられるならば、その責任と権限というのを前提にして書かれているならば、もう少し責任を果たす気概というか、そういう言葉が欲しいなという印象でございます。そういう理解でよろしいのかどうか。これを書かれた筆者というか、企画をされた方にお尋ねをしたいと思います。

【牛尾副座長】完全な筆者はいないのですが、おっしゃるとおりだと思います。だから、そういう言葉で網羅していないならば、表現をもう少し丁寧にするということで処理したいと思います。

【西川議員】つまり、要するに選挙も含めて社会制度はこの法治国家においては法律によって国民には等しく権限が与えられているわけであって、それを果たす意欲と能力を持った人をつくればいいわけだと私は思うので、そういう点が今、欠けているという指摘をするには、責任を果たす能力という言葉は大事じゃないかなという気がいたしております。最後の印象を申し上げました。

【牛尾副座長】ありがとうございました。では、今井委員どうぞ。

【今井委員】13ページの教育振興基本計画のBの「新しい学校づくりの視点」という中の「障害のある子どもたちのための教育」というところなんですが、今回のこの国民会議の提言というのは全体的には保護者の思いとか地域の思いが学校の方に届けていただけるようなスタイルになっていて大変ありがたいと思っております。
 それで今、障害のある子どもたちの教育というのが、実際には本人は普通学級に行きたくてもいろいろな事情や予算が付いていなかったりとかということで、望んだ場合に親も一緒になってついていってもなかなか普通学級の中に入れていただけないという現実があります。それで今、方向としては共に学ぼうということで、特に思いやりとか優しさとか、そういうことを体験するには同じクラスの中にいて、毎日いろいろ違う子どもたちとお互いにいたわり合ったり触れ合ったりするということが一番基本であるような気がするんですが、その障害教育において親が望めばどこまでそういうことが可能になるのかということも、これまでの視点の中に一言も出ていないので、そこら辺りを何か網羅できればと思います。

【牛尾副座長】わかりました。このBのところですね。前の方に出てこちらは出ていないから、これは配慮します。
 それでは最後になりましたが、浅利委員どうぞ。

【浅利委員】勝田先生が、国家至上主義的な考え方はネコであって全体主義的な考え方はトラであると、随分うまい表現をなさるなと思って伺っていましたが、私はトラの危険ありという論者なんです。
 というのは、私の立場を御理解いただきたいんですが、私が仕事をつづけてきた新劇界というところは圧倒的に左翼の方が多いんですね。私と福田恆存さんと山崎正和君という風に、非左翼は少数派です。この40年ぐらいはまるで社会主義国家に住んでいるようでした。ですから、左翼勢力がどういう形でこの国家や、あるいは社会に対して作用するかということはよく見てきたつもりです。
 しかし、右翼というのはもっと凄まじいものです。私は先年ザルツブルグでオペラの仕事をしておりましたので、ハイダーという右翼指導者が台頭してきたオーストリアの様子をつぶさに見ていました。ハイダー氏はすごいハンサムで、演説を見ていたら私でもうっとりして花でも持って行きたくなるような素敵な男です。しかし、思想はナチの継承者なんです。ハイダーが選挙で勝ちましたね。そのときにEU諸国がすごい反発をした。ちょっと大人げないぐらいなリアクションだったと思います。皆さんも新聞をお読みになって、こんな風に他国の内政に干渉していいのかなとお思いになったと思うけれども、ヨーロッパの人たちはナチの台頭時の迫力とスピードというものをよく覚えています。だから、非常に危険を感じて、抑えにかかったんだと思うんです。
 最近の日本の傾向。この世紀の終わるときに、いろいろな失敗があって鬱積した日本の状況は、右の人が火をつけたら一気に爆発して右傾化すると私は見ています。だから、本当は基本法の見直しを論じるのは今は危険な時期だとさえ思えます。しかし未来志向の中で考えていこうじゃないか、という考えには私も大賛成なんです。私は勝田先生とは違って、日本ではトラが出てくる危険があると思います。そうなると、ほとんどの人はトラに食われてしまうでしょう。今、右寄りと思われている自民党員だって9割はトラに食われてしまうのではないでしょうか。私はそういう危険は実際にあると思います。この2行が入ることは左翼の人たちに対する、あるいは日教組の人たちに対する配慮かというふうにおっしゃった方がいらしたんですけれども、とんでもない話です。私はこれを条文に盛り込めと言ってはいません。これから立法に当たるわけですから、法案をつくられる方々がこの視点を絶対に忘れないようにしてほしいということです。

【勝田委員】わかりました。それでは、先生の御配慮はなるほどと。では「左右の全体主義」と、「左右の」と入れますか。

【浅利委員】本当はファシズムという言葉を使いたいくらいなんです。歴史は繰り返す。昨今はそういう風にサイクルが回ってきている感じがしてしようがないんです。これは左翼の人々とずっと対立的だった人間が言っていることとしてお聞き取り願えればありがたいと思います。

【藤田委員】今の点ですが、私は浅利さんに全面的に賛成です。それで、その最後の2行なんですが、もし直すとすれば表現として「なお、言うまでもないが、大事なことは」というのを取ってもいいんじゃないかという気がしているんです。そして、「その際、教育基本法の改正の議論が国家至上主義的云々なものになってはならない」で止める。その場合、「ということである」も必要ないように思います。

【牛尾副座長】そうですね。ありがとうございました。

【森委員】これに関して一言だけよろしいですか。私は国家至上主義や全体主義的なものになってはならないというのはネガティブな否定でブレーキなんです。ブレーキだけで書くから、勝田先生がさっきおっしゃったように恐る恐るというふうな感じに取られるので、私はもっとアクセルといいますか、それで書いた方がいいんじゃないか。つまり、それは国民主権の立場で我々が議論するんだ。それで、その国家至上主義や全体主義になってはならないというふうにアクセルとブレーキの両方を書いた方がいいんじゃないかと思います。

【勝田委員】それと関連しまして、私どもの国民会議は新しい基本法をつくろうという立場でしょうけれども、一番最初にどこかに書いてあるんじゃないかと思うのは、つまり自由と民主主義の体制をあくまでも維持するといったような価値観ですね。どこかに書いてあるんですか。それを強調したいんです。

【牛尾副座長】わかりました。それはおっしゃるとおりですね。当然のことながら改めてですね。
 大変に貴重な御意見を頂戴をしたと思います。それで、対立的な御意見の方もどこかで接点もできたような感じもしますので、これをもとにして再度、企画委員会で最終の文案をつくって、でき上がったものは皆様に郵送をします。それでまた御意見のある方は事務局の方が調整をしまして、22日には最終的に総理に答申をするということで、長丁場の議論はこれで終了するということで皆様方から企画委員会の作業に御一任を頂戴したいということでよろしゅうございますか。

(「異議なし」と声あり)

【牛尾副座長】ありがとうございました。それでは、そういうことでこれからの作業は残っておりますけれども、発足のときに補佐官をされて、出来上がったときには文部大臣の町村大臣からごあいさつをいただきます。

【町村文部大臣】それでは、恐縮ですが一言だけご挨拶をさせていただきます。
 今、牛尾副座長から頭と終わりだけ現れたなという御指摘をいただき、大変失礼をいたしました。もっとも、肝心なところは全部中曽根補佐官、あるいは山下さん、あるいは西川さんに議会のサイドから御参加をいただきましたし、また江崎座長を始め皆様方には本当に熱心に御議論をいただきました。私も折に触れて銭谷室長その他から報告を受けてまいりまして、まさかこういう形で皆様方からの御意見を森総理の側に立っていただくことになるとは全く思っておりませんでした。しかし、本当にいい御提案をいただいたなと思って感謝をしているところでございます。
 早速、大臣就任後、ここにおります小野事務次官その他幹部の皆さんとも話をして、これだけの御提言をいただいたんですから最大限スピーディーに実現をしていきたいということを私は申し上げました。もちろん、全部次の予算あるいは次の通常国会の法律にというわけには参らない部分もあろうかと思います。特にこの基本法の問題は、さすがに次の通常国会でというわけにはちょっと時期的に無理があるんだろうと思います。それ以前に今、この御報告の中で法案化できるものを大車輪で検討しておりますので、まずこれをできる限り次の通常国会で取り組み、それと並行して省内でこの御提言を受け止めて、特に基本法の部分は省内で相当煮詰めた議論をした上で、新たに発足します中央教育審議会にお諮りをし、基本法の改正案を出せればいいなと思っているところでございます。
 いずれにしても、1年以内などに検討して答えを出すという形でなければ、お忙しい皆様方のこうした御努力に文部省としておこたえをすることにならないだろうと思いますので、長期検討課題などと悠長なことを言うつもりはございません。皆様方の御意思を最大限尊重して、できるだけ早く実現に持っていくという姿勢で、今後この御提言を受け止めさせていただきたいと、かように考えております。また、その折には皆様方に引き続き御指導をいただきますようにお願いを申し上げます。最初の閣議でも、次の通常国会は教育改革国会であるという総理の御発言がございました。そういう意味で、皆様方のこの報告をベースに来年の国会が動いていくんだという思いで私も一生懸命頑張ってまいりたいと、かように考えております。
 いずれにいたしましても、本当にお忙しい皆様方に精力的かつ熱心な御議論をいただき、立派な報告をおまとめいただいているということに対して心から重ねて御礼を申し上げまして、とりあえず私のごあいさつといたします。どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。

【牛尾副座長】大変力い強い行動への方向性を出していただきましてありがとうございました。
 今日の会議はこれで終了しますけれども、22日は4時からやはり会議をしますが、総理も時間的にそこで最終報告を渡すことになっております。これから22日までの間に企画委員会を中心に皆さんと再度書面討議をすることもあるかと思いますが、全体会議、分科会、本当に大変によく働かせていただいた会議でありまして、皆様の御協力に心から感謝をして、あとは事務局からあると思いますので、御発言をお願いします。

【銭谷担当室長】それでは、事務局の方から御連絡をさせていただきます。
 その前に、このように委員の皆様に御議論いただくのは本日が最後になるかと思います。この3月に発足以来、私ども担当室で皆様方のお世話をさせていただきましたが、至らない点がいろいろありましたことをおわびを申し上げますと同時にお忙しい委員の皆様方に審議に大変精力的に御協力いただきましたことに対しまして、心から感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
 それで、次回でございますが、来週金曜日の12月22日午後4時から官邸の大客間で開催をいたします。当日は江崎座長の方から森総理へ最終報告の御提出をいただくとともに、総理、座長からご挨拶をいただく予定になっております。
 会議終了後、官邸内のホールで総理主催の懇親会の開催を予定いたしておりますのでこちらの方にも御出席をお願いしたく存じます。詳細につきましては事務局からまた御連絡を申し上げます。
 私どもからの連絡は以上でございます。どうもありがとうございました。

【牛尾副座長】大体22日は4時から始まって、4時半ごろから茶話会程度のものがあって5時ごろには終了するという感じです。事務局の方ではまだ詳しいタイムスケジュールは決定していませんので、雰囲気としてはそういう雰囲気で5時頃には自由になるということで御配慮願いたいと思います。それでは、どうも今日は本当にありがとうございました。