教育改革国民会議

内閣総理大臣挨拶

平成12年5月11日


 教育改革に関する私の基本的考え方は、去る四月十四日の第二回会合の際に申し上げた通りでありますが、今後、分科会を設けて具体的課題ごとに集中的にご議論いただくとのことでありますので、この際、私より一言申し上げたいと存じます。

 私は、過去五十年間にわたる戦後教育が、今日まさに問われていると受け止めております。

 昨今の社会状況を見てみますと、例えば官公庁や企業での不祥事など、社会の病理現象とでもいうべきものが現れております。とりわけ、中学生による恐喝事件や高校生による主婦刺殺事件、更には高速バス乗っ取り事件など、青少年による凶悪犯罪は我が国社会に大きな衝撃を与えております。それらの背景には、家庭でも、学校でも、また、社会でも、最低限守るべき規範が崩れていることがあると思います。私は、戦後教育を振り返った時に、この点を率直に反省すべきであると考えております。
 そのほかにも、我が国の教育に関しては、平等が行き過ぎた結果、個性が軽視され画一化が進んでいるなどの指摘もなされているところであり、戦後教育のあり方を見つめ直すことが不可欠になっていると存じます。

 私は、今後の教育の目標として最も大切なものは、人間としての全人教育であると思います。そして、個性や能力を伸ばしていけるような教育環境の整備が重要であると思います。今回、三つの分科会において、人間性、学校教育、創造性の問題を中心にご検討いただくということは、このような私の思いとも一致するものであると感じております。
 分科会ごとの検討事項例を拝見いたしますと、例えば、ボランティアや農業体験活動など社会体験・自然体験の充実、カウンセラーの配置など青少年・保護者の相談体制の整備、職業観・勤労観を養う教育の充実など、極めて重要な課題について種々ご論議いただけるものと考えておりまして、その成果に大いに期待いたしたいと思います。

 教育基本法につきましては、既に委員の方々からご意見が出されているところでありますが、私といたしましても、教育基本法について見直すことが必要であると考えております。例えば、我が国の文化や伝統を尊重する気持ちを養う観点や生涯学習時代を迎える観点から、充分なものであるのか。あるいは、教育において家庭や地域が果たすべき役割が充分規定されているかなど、教育基本法についての議論を深める必要があると考えているところであります。皆様方におかれましては、この際、我が国の教育のあるべき姿について、是非根本的なご議論をお願いしたいと存じます。

 教育改革は、所信表明演説でお誓い申し上げた「心の豊かな美しい国家」を実現するために、まず最初に取り組まなければならない、待ったなしの最重要課題であると考えております。私といたしましては、今後の皆様方の議論の状況に応じて、可能なものから、できるだけ早急に改革に着手し、教育改革に全力で取り組んでまいる所存であります。どうかよろしくご協力を賜りますようお願い申し上げます。