教育改革国民会議

第5回教育改革国民会議・議事概要



(日時)平成12年8月28日(月)16時〜18時

(場所)総理官邸大客間


○江崎座長挨拶、森総理大臣挨拶、大島文部大臣挨拶、中曽根総理補佐官挨拶、西川議員挨拶に引き続き、第1、第2、第3各分科会主査より「分科会の審議の報告」について説明が行われた。概要は以下のとおり。

【第1分科会報告の説明】

(森委員)
 「日本人へ」においては、日本人全体が物質的豊かさと平和の中で見失っているもの、家庭教育はあらゆる教育の原点であること、人格のできていない人間は本来高等教育を受ける資格がないことなど、現在の教育の問題の本質を明らかにすることを通じて、道徳教育の充実や奉仕活動の義務化の必要性などを提言した。
 「具体的方策の例」においては、家庭、学校、社会のそれぞれについて、例えば「心の庭」づくり運動、奉仕活動の義務化(小中2週間、高校1か月、将来的には満18歳のすべての国民に1年間)、有害情報の規制などを提案し、
 「教育基本法について」では、はじめに改正ありきの姿勢ではなく議論した結果、国民的合意を前提として、教育基本法の改正が必要であるという意見が大勢を占めた。

【第2分科会報告の説明】

(金子委員)
 義務教育段階を中心に、教員や学校の組織論、運営論に絞って議論した。教員・学校には自ら改善しようという動きが出にくいことから、学校の情報を積極的に公開し、「全国の学校のバージョンアップ」として、教員や学校が評価を受けフィードバックしていくべきことを提言した。
 また、「新しいタイプの学校」として、市町村のニーズに基づいて有志が公立学校を作るというコミュニティースクールを改善のためのモデルとして提案するとともに、研究開発校の拡充や私立学校をつくりやすくすることを提言した。

【第3分科会報告の説明】

(木村委員)
 テーマそのものを大きく捉え、創造性だけではなく、「今後、我が国が必要とする人材をいかに育成するか」とした。
 「独創的、創造的な活動ができる人材の育成」として、高校での学習達成度試験の導入による評価の必要性、大学入学の年齢制限の撤廃、モラトリアム期間を作るという観点からの大学9月入学制度などを提案した。「リーダーの育成」として、学部3年での大学院進学を一般化し、プロフェッショナルスクールの整備などを提案した。
 また、「職業観、勤労観の育成」として、インターンシップ制の導入、ものづくり教育・職業教育の充実などを提案した。

○第1分科会の審議の報告についての議論の概要は以下のとおり。

(藤田委員)
 道徳や奉仕活動の重要性など、報告の主旨について異論はないが、一律に期間を決めて奉仕活動を義務づけることには違和感を感じる。これまでも行われている修学旅行や林間学校での体験学習をより充実させるという方向で考えられないか。
 「反省会」というものにおいては、本当に反省してほしい人は決して反省しないように、義務化しても狙ったとおり効果を得られないのではないか。

(河合委員)
 基本的な考え方には賛成だが、全国民に1年の奉仕活動義務化するということは、よほど慎重に議論しなければならない。先端的な研究をしている人などについては、奉仕活動をしなくても、頭脳による社会への貢献という考え方もあるのではないか。
 理系の研究者における18歳の1年間をどのように捉えたらよいのか。

(木村委員)
 オックスフォードやケンブリッジで立派な業績を挙げている人でも、モラトリアムにおいて奉仕活動などを経験している。その際、モラトリアムの実施時期についてあまりこだわらなくてもよいのでは。日本は年齢にこだわりすぎている。

(江崎座長)
 理系の研究者についてもケース・バイ・ケースで一概には言えない。芸術家にとっては18歳の1年間が重要なのではないか。

(田村委員)
 全体的に賛成であるが、義務化する内容を奉仕活動に限ってしまうことは疑問。総理の施政方針にあったように「奉仕活動と自然体験」とし、学校生活以外のどういう活動をやるかについて選択できるようにすべきではないか。

(森総理大臣)
 今の若者には、なぜ大学に入ったのか、何をやりたいのか明確な目的意識を持っている人がほとんどいない。社会に出る前に半年から1年間くらい色々な体験をして自分の進路を決める期間が必要ではないか。
 教育基本法については、改正に反対という立場からは、なぜ変えてはいけないのかが明確に議論されていないと思う。
 PTAの在り方や教育委員会の在り方といった点についても考える必要があると思う。

(石原委員)
 「家庭が大事」というが、家庭の養育機能自体が崩壊してしまっている場合がある。そのような家庭については教育政策でも、福祉政策でも対応できていない。家庭教育そのものが遂行できない場合の総合的支援施策も考える必要がある。
 また、高卒者の求人も減っており、無職の中卒者、高卒者が増加している。若年世代でも先行きが不透明になっており、青少年が生きがいを見出されるような社会の仕組みなど、経済と教育にまたがる問題についても議論すべき。

(河上委員)
 学校を混乱させる生徒がいても、親権が強過ぎて、学校としての対策が取れない。福祉の支援が必要と考えるが、第1分科会の議論では、問題を抱えた生徒については、寄宿舎を作ってそこで手厚く教育・保護するという意見も出た。

(黒田委員)
 外国人労働者が増加し、日本人以外の親を持つ子どもが増えている現状と「日本人へ」という表題は合わないのではないか。グローバル化の時代を踏まえた議論も行うべき。

(藤田委員)
 イギリスの家庭崩壊などは、地域レベルの問題であり、問題地域にターゲットを絞って政策を行っている。日本の場合、問題を抱える家庭は拡散しており、教育政策だけで対応することが難しい。社会政策として考えなければならない。

(大宅委員)
 個別の施策についての是非を言い出したらきりがない。例えば、奉仕活動は義務にすべきでない、個の確立が先だ、という意見がある一方で、個の確立は何十年待ってもできず、今の子どもには自分の意志がない、個を確立するために義務化すべき、という意見もある。両者は「鶏が先かと卵が先か」の関係にすぎない。具体的な行動をおこすために、有効性などで施策に優先順位をつけるべき。そうしないと単なる施策の羅列になってしまう。

(クラーク委員)
 奉仕活動には賛成である。アメリカでは一流大学に入りたければ奉仕活動をしなければならないという形で導入されている。ただし、アメリカにはロータリークラブやボーイスカウトなどの奉仕活動を行う場があるので、日本でもそこを整備することからはじめてはどうか。

(森委員)
 奉仕活動については、教育課程に入れるという形をとれば、「義務」教育の一環として導入することが可能である。
 第1分科会の報告は、長期的な視点での原則論を提案させていただいたものであり、反省してほしいが反省しないことや、中卒の無職者も30年後には親になり、将来的に役に立つので、義務化することに意義はある。

(浅利委員)
 18歳での1年間の奉仕活動の義務化は、現実的には難しい面があるが、小中学校で2週間、高校で1ヶ月は可能である。できるところから始めて将来的には18歳で1年間の義務化を目指そうという趣旨である。
 また、外国人をどう扱うのかという意見はあったが、まず日本人の心をしっかりすることが重要と考えて、あえて「日本人へ」という題としている。


○第2分科会の審議の報告についての議論の概要は以下のとおり。

(森委員)
 教育内容についての議論が少ないのではないか。

(クラーク委員)
 義務教育では、義務と考えなければ解決できる問題もあると思う。

(勝田委員)
 コミュニティースクールには賛成。広島県においても、実際に第3セクターの学校を作ろうという動きがあり、この動きが全国に広まっていけば面白いことになるだろう。

(沈委員)
 幼児教育が重要であると考えるが、(どこの分科会報告においても)ほとんど触れられていない。厚生省が所管している保育園については教育的機能を高めることが必要であり、省庁の枠を越えて取り扱ってほしい。

(金子委員)
 第2分科会では、小中の学校運営システムに絞って議論したため、教育内容については学校・地域に任せようという提言になった。これから全体会で議論してほしい。幼児教育についても今後、全体会議で取り扱ってほしい。


○第3分科会の審議の報告についての議論の概要は以下のとおり。

(今井委員)
 同一年齢間でも身体的・精神的な差は大きい。同一年齢同一学年の原則を崩すといじめが促進されるのではないか。そのようなエリートをどのようにして見定めていくのか、どれぐらいの割合で異年齢の子どもを学級に入れるのか。

(梶田委員)
 科学研究費を拡充し、若手研究者にもっと配分してほしい。
 また、小・中・高校の生徒や大学生でもプロジェクトを組んで科学研究費をもらえるようにしたらいいのではないか。

(上島委員)
 職業観、勤労観の育成と並んで起業家精神の涵養をもっと強く打ち出してはどうか。

(勝田委員)
 大学教員の任用・任免、任期制についての議論はどうなのか。

(江崎座長)
 日本の大学生の8割は私学。私学の財政についても考えても良いのでは。
 また、留学生についても触れてほしい。

(森委員)
 創造性については、自然科学的な「クリエイティビティ」が強調されているが、仮説を導くための文学的な「イマジネーション」想像力も大事である。創造性を発揮させるためには、理科教育だけ、大学院教育だけではなく、小・中・高校で文学的なロマンを教えることも必要。
 また、全国民にわかりやすいように、カタカナ言葉は避けるべき。

(藤田委員)
 中高一貫には疑問がある。高校以降の学校の多様化は推進すべきだが、小中の段階においては、学校間の差異化は望ましくなく、個々の学校の中での弾力的対応とすべきではないか。また、モラトリアム期間を設けるため大学9月入学を推進するとの議論があるが、日本の若者はすでに、モラトリアムを謳歌しているのではないか。

(金子委員)
 飛び級をどんどん早くやることは個人的には疑問であるが、そういう人も認めようということには賛成。
 また、日本の大学ついては、設置時の審査は厳しいが、あとは野放しなっている。私学はもっと情報開示をするべき。国立大学はカリフォルニア大学とカリフォルニア州立大学が並存しているように一定の国立大学には選抜権を認め、それ以外の国立大学は誰でも行けるという形にしてはどうか。

(大宅委員)
 人材というのは管理する側の言葉であり、自分たちが生きたいように生きるという時代には違和感がある。

(文部大臣)
 子どもが自分の意見を持っていないのではという議論については、親や教師など大人が子どもの主張を押さえているとの印象を持っている。大人社会が子どもの意見・主張を聞いて育てていくという視点が必要なのではないかと考える。

以上
[文責は教育改革国民会議担当室]

(注)本議事概要の内容については、今後変更の可能性があります。