一日教育改革国民会議

一日教育改革国民会議(第1回・福岡)



次第

平成12年10月14日(土) 於:大博多ホール
開会14:00 ・ 閉会16:30

1.開会

○中曽根内閣総理大臣補佐官挨拶
○教育改革国民会議出席者紹介

2.意見発表(敬称略・五十音順)
○糸井 清  (教育実践コンサルタント)
○桐明和久  (会社社長)
○佐藤雅枝  (花卉農家家族従事者)
○關 敏治  (中学校長)
○福泉 亮  (高校教員)
○古川孝明  (専門学校講師)
○三谷孝子  (小学校教頭)
○山口敏博  (中学校教員)

3.意見発表者との質疑応答

4.閉会

教育改革国民会議出席者一覧
(敬称略・五十音順)
  • 浅利慶太(劇団四季代表)
  • 上島一泰(社団法人日本青年会議所会頭)
  • 梶田叡一(京都ノートルダム女子大学学長)
  • 河上亮一(川越市立城南中学校教諭)
  • 黒田玲子(東京大学教授)
  • 曾野綾子(日本財団会長、作家)
  • 田村哲夫(学校法人渋谷教育学園理事長)

  • 中曽根弘文内閣総理大臣補佐官

一日教育改革国民会議(第1回・福岡)議事概要

<中曽根補佐官よりの挨拶、出席委員紹介の後、意見発表者より意見の発表>

(糸井 清)

 校長として荒れていた中学校の正常化に取り組んできた経験から言えるのは、@現在の学校の荒れの原因は子供ではなく、教員とそれを束ねる校長にある。A学校正常化の核は授業の充実である。中でも総合的学習の充実は教員に課せられた大きな課題である。 ここから、以下を提言する。@日本人の伝統文化を愛し、日本国民としての誇りが持てる法体系の整備A人材がいないと嘆く前に、「適所適材」、すなわち仕事が教員を育てるという原理にたって、教員を養成する。B議論を進めるにあたって安易な妥協論には与しない。

(桐明 和久)

@学校週5日制に向け、教育休暇制度を導入し保護者が積極的に教育活動に参画できる体制を充実させる。
Aボランティア活動の方が、奉仕活動を義務付けるより成果がある。
B有害情報は子供に与える影響が大きいので、十分な配慮が必要である。
C学校は集団生活のルールを学ぶ場。道徳を中心に自分自身について考える時間が必要。習熟度別学級編成も考慮すべき。地域の協力をもとに地域の特色ある学校づくりが必要。
D職業観・勤労観を育むため、中高校生の時期に就労体験を行わせる。
E教師の採用については、2,3年の研修期間を設けて教師としての自覚と誇りを持たせた後職場に配置する制度や免許の更新制度を設ける。
F復興を目指す教育と物質的豊かさの中で心とのバランスを失った現在の目指す教育は大きな違いがある。教育の方向性を示すためにも、教育基本法の見直しが必要。

(佐藤 雅枝)

 教育問題の本質は、今の学校教育システムや家庭教育が常にホワイトカラーのキャリアを目標とした偏った価値観だけを子供に押し付けていることにある。大人は、自分が社会に関わっている姿を通して子供に自尊心を伝える必要がある。

(關 敏治)

ア 教育の原点は家庭教育。求められる家庭教育への支援方策を具体的に示してほしい。イ 教師評価は避けて通れない。評価システムを明らかにし、評価事項は学校・教師の責任範囲や守備範囲との関連で論じてほしい。
ウ 小人数学級や習熟度別学習、IT教育、社会人の参加による多様な授業展開や学校選択等の具体化を期待。ただし、問題生徒の排除にならないこと、受験中心にならないこと、不登校生徒も通える場所をつくるよう配慮が必要。新しいタイプの学校については、現行の小中学校と設置者が同じであることから役割の明確化など慎重な検討が必要。
エ 校長としての識見を高める努力をしたい。そのため教育委員会等の条件整備を。
オ 奉仕活動は義務的なものより生徒選択など自発的な面を取り入れる工夫を。
カ 新教育課程への移行期のこの時期に新たな改革が提議されるので戸惑いを感じる。改革のスケジュールや内容を基本計画等で分かりやすく示して欲しい。

(福泉 亮)

 環境教育を通じて様々な企業の方と知り合い、学校、教員を外から見る機会を得た。学校の問題は教員の問題であり、その改善のためには「頑張っている先生が報われるシステム」が必要である。その前提として、新たな評価制度を構築する必要がある。

(古川 孝明)

 労働者がもっと教育に参加できるよう、企業も考え方を変える必要がある。
 これからはスペシャリストが必要とされる時代であり、それに対応した大学の教育内容の改革が必要。そのために、学校は年齢にこだわらず誰でも行けるものとすべきであり、企業の有給休暇、教育休暇やワークシェアリングなどの支援体制の充実が必要。また、奨学金の充実も必要。
 大学生のコミュニケーション能力の低下は大きな問題。特に医学部ではコミュニケーション能力、医療経済、バイオエシクスなど学際的な分野の教育が必要。また、大学4年間は教養課程を教え、その後専門的教育を行うようにして、全人的教養を身につけることを重視すべき。
 高校教育では学校間、教員間の競争が必要。各学校がそれぞれ特色を出し、質を上げることが必要。校長もマネジメントができる人物を民間から公募する必要がある。
 奉仕活動については、ボランティアを単位として認定する、授業の一環として行うのはよいが、一方的に強制することはボランティアの精神に反するので反対である。

(三谷 孝子)

 子供達の人間関係が希薄になっており、「共に生きる力」を育むために奉仕活動は重要。国が大まかな方針を示し、各学校が主体的に取り組めるような実施体制の整備が必要。
 地域の信頼に応える学校づくりのために、教育休暇制度の導入など、親が学校の活動に積極的に参加できるよう支援体制を充実させることが必要。社会全体が子育ての重要性を理解することも重要である。

(山口 敏博)

@「古典哲学、歴史の学習」など重視すべきものが列挙されているが、従来の教科の枠組みをどう変えていくのかについての具体的な方向が見えず不安を感じる。
A教育は経済と異なるものであり、教員評価のような競争原理を持ち込むことには反対。目の前の子供で教員が評価されるならば、問題のある子供が排除される可能性がある。有能な教員を生かすためには、その教員が持っている教育技術を他の教員にフィードバックするための条件整備を考えるべきである。学校評価の導入は教職員にプレッシャーがかかり、子供も萎縮する。現場の教職員をどう支えるかという視点が大切。
B提言実現のための財源をぜひ確保してほしい。
C習熟度別学習については、学習能力の高い子を引き抜いて教育を行うと学校の序列化につながり競争が激化するので問題。能力の高い子供を集団の中でどう生かしていくかを考えることが重要。
D大学入試制度改革のみならず高校入試制度改革も必要である。過度の競争を避けるためには中高一貫校を増やすのではなく、高校全入制がよい。

<以下、質疑応答>

【梶田委員】
 中間報告の提言について、2002年の新カリキュラムへの移行準備をする上で現場で混乱を招くようなものがあれば教えていただきたい。

(關 敏治)
 提言がどういう法律になり、どう具体化されるかが不明なので不安。また、現在行っている体験活動と奉仕活動の関連性についても不明である。

【上島委員】
 校長の裁量、人事権、予算権を拡大することについてはどのようにお考えか。

(糸井 清)
 大変ありがたい考えだ。問題のある教師も学校で育て直すことが必要。

(福泉 亮)
 現在の校長にそれだけの能力が備わっているか疑問。校長がマネジメントについて学ぶ場がないのではないか。また、客観的な評価を行なえるよう研修もすべき。

【田村委員】
 子供の自尊心を育てるためには具体的にどうすればよいと思われるか。

(佐藤 雅枝)
 総合的学習で地域産業を子供に学ばせるためにはきちんとしたノウハウを確立することが必要。また、各家庭がどうやって生計をたてているのか教えることが基本である。

(關 敏治)
 評価の軸を学力以外にも多様化することにより、生徒のできる点を認めていくことが必要である。

(三谷 孝子)
 福祉教育は相手の立場にたって考える心を築くという効果が大きい。

【浅利委員】
 有害情報の規制について、具体的なイメージをお聞かせいただきたい。

(桐明 和久)
 CMなどのスポンサーである企業に協力をお願いしている。

【浅利委員】
 我々は、法規制よりも自覚が大切であり、市民運動的に行うことがよいと考えている。

【曾野委員】
 ボランティア活動については、臨教審の時にも単位として認定するか枠外でやるべきかを考えた。私は単位にすると不純なものになると考えていたが、最初の体験をさせるために機会を与え、その後単位に認定するのは構わないのではないかという意見もあった。また、コミュニケーション能力をどう充実させていけばよいか。

(古川 孝明)
 アメリカでは大学院の進学や教員の採用で社会的活動を評価している。そうした活動を単位として認めていくのはよいことだと思う。一律の義務化には反対。コミュニケーション能力の向上は大きな課題であり、中高でもそうした教育が必要。

【黒田委員】
 パートタイム学生は場所に縛られないような学問分野では可能か。また、日本では、一旦会社を辞めて大学院で学んだあと、よりよい職に就くことは可能か。

(古川 孝明)
 現状では仕事と研究の両立は難しい。社会人もいつでも大学に戻って学べるような、流動性のある社会にしていくことが必要。また、社会人が大学に戻ってよりよい職を得ることは難しい。教育休暇やワークシェアリングの仕組みが必要である。

【河上委員】
 小学校の学級崩壊や中学校の暴力的な行動を取る生徒の増加は、教師の能力の低下だけでは説明がつかないと思っているが、どう思われるか。

(糸井 清)
 教師が授業等を通して一生懸命やる姿や人生観を伝えることができれば、必ず子供はついてくるのであり、荒れた子供を立て直すのは決して難しくない。むしろ、これからの新しい教育をどうつくっていくかが難しい。

(山口 敏博) 
 教師の能力が低下したということには反対。今の子供達は育ち方が変わった。親が子供に気を遣って我慢ができなくなっている。それに教師の頭が切り替えられなかったという面はある。まず子供の現状からスタートするという意識改革が必要。

【河上委員】
 公立の小中の教員は特別の能力を持った人がなっているわけではない。教員の評価を導入しても、少数のやる気のある教員と圧倒的多数のもういいという教員に分かれ、うまくいかないだろう。昔は地域の大人が教員を支えることでうまくいっていたが、評価だけで教師の質を向上させるのは難しい。

【梶田委員】
 教員評価は、授業を受ける子供の評価や利害関係を持たない人が公正な立場で評価することをイメージしている。また、評価には頑張る人やそれぞれの職場で能力のある人をきちんと処遇することも含んでいる。

【田村委員】
 教師の評価の議論は一生懸命やっている人を元気付けようというところに端を発している。駄目な人に変わってもらうのは別の話。教師に合わない人は職を変わってもらう方が本人のためでもある。

【上島委員】
 いいものはきちんと評価していこうというのが基本的な考え方である。

【銭谷室長】
 最後に評価の問題も含め、皆様方から御意見をお伺いしたい。

(糸井 清)
 子供の人気と評価は別。きちんとした評価を支えるのは校長である。評価により給料が変わること自体は若い人にはいいと思うが、日本にはなじまないのではないか。駄目な先生には職場を変わってもらう方がその人も生きる。学校選択にも賛成。

(桐明 和久)
 先生には自信と誇りを持ってやっていただきたい。先生と生徒の間に相互信頼を築ければと思う。また、いい意味で競争しながら地域が学校をつくっていくことが大切。そのためにも、いい意味での学校評価はあっていいと思う。

(佐藤 雅枝)
 現状では一生懸命やっている先生ほど大変である。教科を教える先生と総合的に子供を育てる先生を分ければいいのではないかと思う。

(關 敏治)
 評価については、踏み込まなくてはいけない時期だと思う。しかし、不登校の生徒にも人と接する機会を与えるような教育が必要。

(福泉 亮) 
 一生懸命やっている教員が報われる体制作りのためには評価が絶対に必要。しかし、評価する側が責任ある評価ができるか疑問。管理職には、評価能力を含め、マネジメント能力を持つよう研修や養成が必要。

(古川 孝明)
 教育は公共財であるが、教育サービスを受ける消費者、すなわち保護者と子供の満足度を高める努力が必要である。また、一般の人や地域の市民が入っての教員、学校の評価も必要である。

(三谷 孝子)
 教員は、金銭的なものよりも、子供が変容したことに満足するもの。自己評価も大切だと思う。また、一人一人を大切にする教育を行なえるよう、ティームティーチングや非常勤講師の活用なども必要である。

(山口 敏博) 
 評価については、一生懸命頑張っている先生を金銭面だけで処遇することには不安がある。また、教育現場の声が行政に届いていないというのが現状。中間報告は大胆な提言であるが、現場の実態に合わせた形で実行していっていただきたい。

[文責は教育改革国民会議担当室]