一日教育改革国民会議

一日教育改革国民会議(第3回・東京)



次   第
平成12年10月28日(土) 於:千代田区公会堂
開会14:00 ・ 閉会16:30
  1. 開会
    ○中曽根弘文内閣総理大臣補佐官挨拶
    ○教育改革国民会議出席者紹介

  2. 意見発表(敬称略・五十音順)
    ○佐々木あい子 (会社役員)
    ○佐藤 初雄  (NPO法人代表)
    ○高木 寛夫  (会社員)
    ○高橋 七與  (中学生)
    ○千田 捷熙  (高校長)
    ○中山 修   (会社員)
    ○林 久美子  (NGO職員)
    ○藤波 ゆかり (大学生)
    ○星 正雄   (中学校長)
    ○宮本 登   (教育委員会職員)

  3. 意見発表者との質疑応答

  4. 閉会

教育改革国民会議出席者一覧(敬称略・五十音順)
  • 梶田叡一(京都ノートルダム女子大学学長)
  • 木村 孟(大学評価・学位授与機構長)
  • 田村哲夫(学校法人渋谷教育学園理事長)
  • 浜田 広(リコー会長)
  • 森 隆夫(お茶の水女子大学名誉教授)
  • 山折哲雄(京都造形芸術大学大学院長)

  • 中曽根弘文内閣総理大臣補佐官
  • 西川太一郎衆議院議員(オブザーバー)



一日教育改革国民会議(第3回・東京)議事概要



<中曽根補佐官よりの挨拶、出席委員紹介の後、意見発表者より意見の発表>

(佐々木あい子)
 長年地域の子ども会活動に携わってきた経験から、子ども会は異年齢集団による地域の重要な教育的活動であると実感。挨拶や奉仕活動も地域の大人が日常的に子ども達に呼びかけることが重要である。そのためにも、地域、家族、学校の連携が重要であり、最終報告には地域社会における教育力の向上を提案事項として盛り込んでいただきたい。

(佐藤初雄)
 自然体験プログラムを実践する民間団体を設立し、活動してきた。全ての子供に体験活動の機会を与えることは重要であり、奉仕活動については、基本的に賛成である。しかし、方法論が見えないために「義務になることを無理やり押し付ける」というイメージを生じていることが問題。活動内容を環境保全、国際協力、青少年育成活動、自然体験活動等より幅広い分野とすれば、選択肢も広がり、強制のイメージを軽減できる。また、小学生ができる活動は限界があり、介護など相手のある活動では問題。そのために、小学生の受け入れ団体等の活用が重要である。高校生は団体内で指導者として活躍できるようにする制度の検討も必要である。

(高木寛夫)
 教育基本法は目的の内容があまりにも理想主義的であり、完全な人間の育成を強いている点で、現代社会に適合しないものとなっている。教育は「家庭教育」が基本であり、その中で善悪の区別と権利と義務の躾を行うことが重要。まず必要なのは家庭教育の改革であり、大人社会の認識の改革である。

(高橋七與)
 現在「だいだらぼっち」という通年合宿所で生活している。学校とは違い、「強制」ではなく自分達でやることを決めてやっており、家事仕事や住む家の設計・建築なども全て自分達でやっている。大変な作業ではあるが、強制ではないから楽しく、仲間と共に行っているからさらに楽しい。

(千田捷熙)
 奉仕活動は、本来、家庭・学校・地域社会の関わりの中で行われるべきものであり、学校教育の一部として一律に義務付けることには反対。そのための条件整備が必要。特に、平成14年度から学校週5日制が実施される中で1ヶ月もの奉仕活動を組み入れることは困難。高校での学習達成度試験は、基礎基本の部分の学習達成度を測るためには必要であるが、様々な分野から学校を抽出するなど、各学校の様々な個性・特色を尊重し、序列化につながらないような工夫が必要である。大学入学年齢制限の撤廃は、生徒の全人的な成長を妨げ、受験戦争の低年齢化を招く恐れがある。意欲ある生徒に広い学習機会を与えるという意味では、高校在学中に大学での授業を受講できるようにすることにより対応することが望ましい。

(中山修)
 これまでの教育は一律・公平を重んずるあまり、マニュアル化。これからの教育には、全ての国民に必要な基礎的能力の習得及び道徳・文化・伝統など人格育成を目的とした教育と、個人のニーズに対応した多様性のある教育の2つが必要となる。そのために、モティベーションを高める、自己認識、選択肢の多様化、トライアンドエラーの許容の4つがキーワードである。具体的には@企業人講師の招聘、インターンシップなど実学教育の推進A国際感覚を身に付けるため小・中学校レベルからの単位交換留学制度の振興、外国人教師招聘、短期海外留学等の機会の提供B地域との密着性を高め、地域と一体となった学校づくりを行うため、親の教育現場への参加を推進することが必要。

(林久美子)
 学校教育における奉仕活動の導入には賛成。NGOに勤務し学生にボランティアの場を提供してきた経験から、「人のために」が「自分の成長」につながっていると気付くことは、学校教育において大きな効果があると確信している。同時に、奉仕活動を教員のチャンス材料とすることが必要である。創造性の高い人材の育成を目的としたプログラムの実施、また、奉仕活動の効果的な実施のためにも、教員自らが学校外で一定期間何らかの活動を体験することが不可欠である。

(藤波ゆかり)
 今回中学校の新学習指導要領の改訂により和楽器の使用が義務化されたが、これまでの西洋音楽一辺倒の日本音楽教育の中で、音楽教科の教員免許取得のためには西洋音楽の素養のみしか必修とされておらず、教員自身が伝統邦楽を知らないというのが現状。しかし、伝統邦楽には、自然や神を敬い先人を尊ぶなど我々の祖先の世界観や美意識が反映されており、そうした先人の姿を身近に感じ、先人の築かれた文化に誇りと感謝をもてるようになることは、子供達の生きる力になっていくのみならず、真の国際化のためにも必要。音楽教科が日本の伝統文化の誇りを子供たちに伝えられる場となるためにも、教育基本法に伝統の尊重という項目を加えることが必要である。

(星正雄)
 @中学校における「人間科」については、道徳教育との関係を総括する必要がある。A奉仕活動については、従来から行ってきた体験活動やボランティア活動等の様々な活動に「奉仕の精神」を加え、さらに充実させた広い意味での「体験活動」としていただきたい。その実施については各学校に任せていただきたい。B問題を起こす子供への対応は、多くの子供たちの学校における平穏な生活や学習権を守るためにも厳格な措置が必要。校長の判断と外部機関とを連動させた対応策が必要。C学校外部評価には説明責任と結果責任の両立の原則からも賛成。ただし、前提として学校の自己点検・自己評価の確立が必要。D学校の組織マネジメント構想には賛成。E中間報告の拘束性についても疑問。現場では新学習指導要領の14年度全面実施に向けて邁進中ということもあり、国の教育行政は一つに統合した形で行っていただきたい。

(宮本登)
 義務教育開始年齢引き下げについては、基準が定かでなく混乱を招く恐れがあり反対。社会性は違いを認めることで育まれるものであり、人格形成の妨げにもなる。奉仕活動については、直接体験の不足が心の成長に大きく影響していることから、その機会を与え豊かな心を育む意味からも効果的な教育活動と考える。実施にあたっては、各学校での創意ある活動を支援し、発展させるための条件整備を国をあげて実施する必要がある。子供達の健全育成のためにも、有害情報の規制に国をあげて取り組むべき。個性を伸ばし確かな学力を身につけさせるため、少人数学習が可能な体制づくりが必要であり、そのために教員の配置についての措置が必要。また、教員に不向きな者は転職できるようにすべき。地域に開かれた学校づくりが必要であり、そのためにも教員の意識の改革が必要。

<以下質疑応答>

【梶田委員】
 家庭教育の重要性が叫ばれているが、現状ではうまくいかない。子育てについて新しい自覚を促すための方策はあるか。

(宮本登)
 様々な角度からの啓発活動を諦めずにやることが必要。PTAとの連携なども重要。

(星正雄)
 家庭においてはまず子供ありきであることを自覚してほしい。そして、社会的にどういった姿勢で生きていくべきか優先して教えるべきである。

(高木寛夫)
 家庭、学校にはそれぞれ役割がある。子供の教育は親の責任で行うべきである。他人の子供を教育する教員には限界があり、親が我が子をよく知ることが第一である。

【森委員】
 星さんの疑問についてご説明をしておきたい。道徳を人間科とすることについては、学校段階ごとに名称を変えることによって授業が活性化する効果を狙ったもの。奉仕活動は細目は決めていないが、実施方法は学校や教育委員会に任せるつもりである。ただし、学社連携で行う必要がある。中間報告の拘束力については、会議自体は現行制度を前提として提言をしているわけではなく、行政・政治の側で調整する問題である。
 林さんは、教師にも奉仕活動をと言われたが、既に憲法・法律で教員は全体の奉仕者であると規定されている。教員の奉仕というのは教育を通じた奉仕でなく、教育以外の奉仕を意味するのか。また、教員はスタディツアーへの参加が少ないと言われたが、スタディーツアーの説明をお願いしたい。なお、2週間とか1ヶ月というのは継続的でなく累積的に行ってもよいし、長期休業中などに行ってもよい。弾力的に考えていただきたい。

(林久美子)
 スタディーツアーでは年間1500人ほどを現場へ派遣し、植林などを中心に環境保護と国際協力のボランティア活動を行っている。総合的学習などに生かせるとして教員の参加も多い。参加者はボランティアが自分を高めるための手段であるということを実感している。こうした機会は教員の学校外の活動としてNGOが提供できると考えている。

【田村委員】
 教員の評価については、少数のやる気のある人と大人数のそうでない人に分かれるからあまり効果がないという意見もあったが、どのように思われるか。

(中山修)
 最初そのようなことはあるかもしれないが、そうしないと変わらないのではないか。ただし、評価と同時に教員が自らを磨く場を与えることが必要。教員と企業の間で考えを共有できるよう、企業との相互交流なども有効だと思う。

(千田捷熙)
 逆だと思う。教師ほど評価されたがっている人はいない。教師は生徒からどのように評価されているかを非常に気にかけており、評価をオープンにして率直に語り合うことで問題点を具体化し、改善につなげることが可能。心理的抵抗感は一時的なものだろう。

【山折委員】
 夕日を見て感動するなど自然との触れ合いの中で心に深い感動を覚えることが大切と思っているが、そうした体験についてどう考えるか。

(佐々木あい子)
 子供に小さい頃から自然を体験させることは非常に重要である。子供会活動の一環として子供達を釧路へ連れて行っているが、子供達は北海道の大きな空を見て感激する。こうした体験が必要である。また、家庭教育については、子供は親の背中を見て育つものであり親が変わらないと子供は変わらない。さらに、今の子供は自分で考えることが少ない。自ら問いを立て検証する力を育てることも必要。

(高橋七與)
 山に囲まれ豊かな自然の中で生活しているが、自然体験は楽しいしよいことだと思う。

【木村委員】
 大学入学年齢制限の撤廃については、大学に個性を出してもらいたい、という意味で提案した。今日本が必要としている人間は、今の受験競争をくぐりぬけ、今の企業で採用されたような人間ではない。受験戦争の低年齢化にはならないと思うがどうか。

(千田捷熙)
 優れた才能を持つ子供の才能を伸ばすことは大切。しかし、飛び級・飛び入学というのではなく、ある科目は大学で学び、その他は同一年齢で学ばせるなど、学年制、学制にとらわれない多様な学習機会を提供することが必要なのではないか。

【浜田委員】
 現在の日本の学校内秩序の崩壊は、20年前のアメリカの惨状を見ているかのようである。アメリカはこれを20年かかって立て直してきた。日本でも国をあげて取り組むべき問題と考えている。学校の現状とともにお考えを教えていただきたい。

(星正雄)
 そうした状況はそれほど多いわけではないと思う。学校内秩序とは何か、学校の役割は何か、教師とは何か、指導力とは何かということと深くかかわっており、秩序回復の方法は1つではない。自己点検・自己評価の姿勢を教員が持ち、地域、保護者にも求めながら学校を活性化していくことが必要。暴力的な生徒には厳しい態度も必要である。

【山折委員】
 藤波さんの「伝統文化に学べ」という意見には大賛成である。例えば、多くの子守唄集には日本の子守唄が入っていないというのが現状。これについてはどう思うか。

(藤波ゆかり)
 子供の音楽教育は日本のわらべうたから始めるべきという意見が大学内にもあり、私自身も同じ意見である。日本の子供達の内在的な価値観を引き出す上でも重要だと思う。

【梶田委員】
 ラテンアメリカの会の活動に参加し、ペルーに行った時、現地の人が自らの伝統文化や歴史について熱っぽく語る姿、また、アフリカの青年達が日本の社会の教科書を見て、独立前の教科書と同じ、アメリカやヨーロッパのことは詳しくても先人の様々な功績などが抜け落ちている、と言っていた。日本の教育の中に日本が欠けていることを痛感した。教育基本法の問題をこのような点から根本的に考える必要があると思うがどうか。

(佐藤初雄)
 自然体験活動にも海外の手法がかなり導入されているが、現在はそれでいいのか考え直している。日本にも伝統的な外遊びがあったように思うが、現在の親も子供もそうしたものにはあまりついてこない。自分達の文化を見直そうと言うことで指導者自身がそういう方向に目を向けているのが最近の状況である。

(林久美子)
 日本に招聘している海外の青年に、学校でその国のことについて教えてもらうことがあるが、先生も生徒も彼らが自国のことに誇りを持って話すことに感動し、国を大切にするということを外から学んでいる。また、ある作文の審査を担当した時、最近の子供の国語力のなさを痛感し、日本をまず学ぶことが必要であると思った。外国を通じて日本を知ることと、日本を学んでから国際的なことを学ぶという2つの方法があると思う。

(藤波ゆかり)
 小さい頃から西洋音楽に親しんできて、大きな声で豊かに表現することを教えられてきた。しかし、水琴窟に出会い、静寂を大切にする日本人の繊細な価値観に感動し、先人との見えないつながりを感じた。これは西洋にはない感覚であり、こうしたものの中から子供達の内在的な価値観が引き出されるのではないかと思う。

【森委員】
 親切に大小はない。奉仕もボランティアも日常化され、思いやりの心が循環する社会を目指すことが必要。奉仕活動は子供達にこうした心を育むために必要であるが、子供の奉仕は奉仕学習の側面がある。そのためには、社会の側も少しは我慢をする必要があるのではないか。それが学社連携である。また、教育改革は人間改革であり、究極には自己改革であり、その中で最も大切なのが意識改革と考えている。その一つが人のためは自分のためということであると思う。義務観を改革し、国が課するのではなく、自分が自分に課する義務と考えられるような人間改革ができないかと考えているがどうか。

(佐藤初雄)
 教育のためということが行きすぎると、特に人が相手の場合は問題。実施する際に最も注意すべき事項であると考えている。

(林久美子)
 自己改革のためには、自分が生まれ育った環境と全く違う環境に出会うことが大切である。先生には、校外活動にもっと取り組んでほしい。そして、義務ではなく自分のためにやっているのだ、という考え方を持ってほしい。

[文責は教育改革国民会議担当室]