高度海洋監視システム(ARGO計画)の構築

ミレニアム・プロジェクト「高度海洋監視システム(ARGO計画)の構築」
平成15年度評価報告書



1.ミレニアム・プロジェクト「高度海洋監視システム(ARGO計画)の構築」の概要


(1)ミレニアム・プロジェクト

 平成11年12月、夢と活力に満ちた新しいミレニアム(千年紀)を迎えるため、今後の我が国経済社会にとって重要性や緊要性の高い情報化、高齢化、環境対応の3つの分野について、技術革新を中心とした産官学共同プロジェクト(ミレニアム・プロジェクト)が内閣総理大臣により決定された。


(2)「高度海洋監視システム(ARGO計画)の構築」の概要

a.目標
 2004年度までに、地球規模の高度海洋監視システム(ARGO計画)を構築し、長期予報の精度を飛躍的に向上(70%以上)させる。
b.プロジェクトの概要
<観測システムの構築>
中層フロート展開技術研究開発、国際協力体制の構築を実施する。
中層フロートのデータを検証・補完する観測システムを整備する。
国際協力体制を維持しつつ、各国による貢献とあわせて中層フロートの展開を達成し、地球規模の海洋観測システムを実現する。
<観測データ処理・管理>
観測システムから得られる全球の海洋データをリアルタイムに収集・解析・提供するシステム及びデータベース・システムを整備し、運用する。
データ品質管理手法の開発、高品質なデータセットの作成を開始する。
<モデルの高度化・研究開発>
全球の海洋データの高精度な同化を行う手法を開発する。
海面水温の予測精度を0.5℃まで引き上げる。
気候変動予測モデルの高度化を図る。


(3)ARGO計画評価・助言会議の経緯

 ミレニアム・プロジェクトについては、有識者による評価・助言体制の確立を図るという試みが取り入れられた。これを受けて、「高度海洋監視システム(ARGO計画)の構築」プロジェクトについても、専門的見地から客観的・中立的な評価を行うため、有識者で構成される「ARGO計画評価・助言会議」(別紙1)が設置され、平成12年5月に第1回評価・助言会議が開催された。その後、平成13年6月、平成14年6月、平成15年7月にそれぞれ、平成12,13,14年度の評価報告書をとりまとめ、公表している。今回は、平成15年度事業実施報告書(参考資料1)を基に、平成15年度実施事業を中心に本プロジェクトの評価を行うものである。


2.平成15年度評価・助言

 プロジェクト全体及び各事業について、現状分析、実施目標の達成度、具体的改善点を中心に検討を行ったところ、その概要は以下(詳細は別紙2)のとおり。


(1)プロジェクト全体

 推進体制は適切であり、維持・強化されている。特に、国際協力体制が進展しており、その中で我が国が主導的役割を果たしつつあることは高く評価できる。
 国内外の関係機関の各事業を有機的に結びつけた結果として生じる、総合的な成果を発信すべき時期にある。また、これまでの成果を、関連学会においてのみならず、国民に向けてアピールすることが重要である。
 国際ARGO計画において、我が国の果たしている役割の重要性及び地球観測システムにおけるARGO観測の重要性に鑑み、ミレニアム・プロジェクト(ARGO計画)終了後も、アルゴフロートによる観測が継続されることが必要である。そのため、国内観測体制と国際協力体制の強化を図ることが望ましい。


(2)観測システムの構築

a. 国際協力体制の構築

 科学者会議、実務者会議等を通じて、主要な参加国と適切な協力体制を構築している。特に、東京における第1回国際アルゴ科学ワークショップ(平成15年11月)の開催は非常に有意義なものであった。

b. 中層フロートの展開

 実施目標に対して順調に進められている。我が国が米国に次いで世界2位のフロート数を投入していることも評価できる。特に、海洋地球研究船「みらい」によるフロートの投入を通じて、南半球における観測空白域の解消に向けた貢献をしたことは重要である。しかし、フロートの生存率が低いという課題も明らかになってきており、フロートの回収及び調査などを通じて、その改善を図る必要がある。

c. アルゴフロート以外の観測システム

 検証用のフロート、海洋短波レーダを使用した事業のいずれも適切に進められており、アルゴフロートのデータの検証・補完データとしての成果も出ている。しかし、さらに一歩進めて、その精度の向上や観測結果の解析を実施する必要がある。


(3)観測データ処理・管理

a. 海洋データシステム

 適切な推進体制のもと、計画どおり順調に進められている。データ管理の国際組織はよく機能しており、我が国はその分担を適切に果たしている。ただし、データプロダクトの説明など、より使いやすいデータシステムの構築にも配慮すべきである。

b. データ品質管理

 アルゴデータの圧力・塩分補正のアルゴリズムの構築を行うなど、適切に進められている。今後、他国データの情報も含め、手法・結果の文書化及びその開示を進めることが必要である。

c. データベース

 適切な推進体制のもと、順調に進められているが、登録フロートの増加への対応など更なる拡充が望まれる。今後、データのインターネット上配布に関する説明やユーザインターフェースの充実などにより、ユーザの拡大にも配慮すべきである。


(4)モデルの高度化

a. データ同化

 全球4次元変分法データ同化システムの開発などを通じ、一定の進展がみられる。2002年度から作成を開始した全球格子点データセットを、より実際に役立つプロダクトにしていくためには、今後更なる検討と努力が必要である。

b. 気候変動予測モデル

 海洋観測データをモデルに取り込む試みが、一定の進展を見せている。今後、アルゴデータの有効性等をより具体的に示していくことが望まれる。

c. 海水温予測モデル

 適切な進展が図られている。ただし、精度改善のための要因分析、課題の整理、アルゴデータの影響評価などが一層望まれる。引き続き、実験、検証を行う必要がある。