高度海洋監視システム(ARGO計画)の構築
第13回ARGO計画評価・助言会議 議事概要
日 時:平成17年7月20日(水)14:00〜16:50
場 所:中央合同庁舎4号館共用第3特別会議室
出席委員:
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浅井冨雄議長、木本昌秀委員、久保田雅久委員、田宮兵衞委員、西野伊史委員、松山優治委員
(説明者)
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内閣府参事官、文部科学省研究開発局海洋地球課、海洋研究開発機構、国土交通省総合政策局海洋室、気象庁地球環境・海洋部地球環境業務課、同海洋気象課、海上保安庁海洋情報部技術・国際課、同環境調査課
議事
○今後の進め方及び個別評価報告書の作成について
内閣府より資料1に基づき、今年度の評価・助言会議は、5年間のミレニアム・プロジェクトに対する最終評価とし、個別評価報告書の作成と提出等について説明があった。
○ARGO計画の成果報告書(平成16年度事業実施報告を含む)について
(1)資料3成果報告書の作成経緯及び構成について、文部科学省より説明があった。
(2)長期予報の精度の向上について、気象庁より説明があった。
(3)観測システムの構築について、海洋研究開発機構より「国際協力体制の構築」及び「中層フロートの展開」、気象庁より「フロートデータを検証する観測システム」、海上保安庁より「フロートデータを補完する観測システム」の説明があった。
(4)観測データ処理・管理について、気象庁より「全球海洋データ解析・提供システム」、海洋研究開発機構より「データ品質管理」及び「データベース」の説明があった。
(5)モデルの高度化・研究開発について、海洋研究開発機構より「データ同化」及び「気候変動予測モデルの高度化研究」、気象庁より「海水温予測モデルの高度化」の説明があった。
(質疑応答)
浅井議長:
5年間にわたるプロジェクトの成果を報告していただいた。まず、全般的な問題について、それから各事業について、そして最後にまた全般的な質問について質疑応答という順序で進めたい。
全体の目標について、主要なポイントは、ARGOの観測システムを構築することがまず第一にある。それから、ARGO計画が、モデルに基づく長期予報の精度の向上にどう貢献したか、というポイントの2つがある。しかし、総括の説明ではモデルによる予測の成果の方に重点が置かれすぎではないか。
内閣府:
今年は最終年度であり最終報告書を作成する必要があるため、目標である長期予報精度の向上について説明していただいた。
田宮委員:
ARGO計画という用語について、高度海洋監視システムのARGO計画とかミレニアム・プロジェクトのARGO計画といった場合は日本の場合で、国際事業としてのときは何もなしでARGO計画と書くという理解でよいか。
気象庁:
ARGO計画は、国際的な枠組みで行われているが、評価いただくのは日本のミレニアム・プロジェクトのARGO計画である。
木本委員:
総括では、各事業の単なるサマリーが書かれているが、それよりも海洋のリアルタイムの観測体制ができて実際に利用されているということを強調すべきである。また、長期予報精度を70%以上に向上させることよりも、ARGOフロートを展開してデータを実用に利用できるようにし、世界のプロジェクトの中で重要なリーダーシップを発揮することが計画の大目標であったので、プロジェクトの直接の成果でなくても、初めてARGOの観測で得られた科学的知見等の成果をもっと強調すべきではないか。
気象庁:
多くの成果は国際シンポジウム等において発表されており、論文等も発表されている。本報告書では、あくまでもミレニアム・プロジェクトの成果について記述した。
浅井議長:
公平に淡々と事業を書いているが、アクセントをつけて強調すべき成果は特に強調した方が社会的に訴えるところが大きい。
田宮委員:
事業の羅列ではなく、国際的な計画において、例えば大西洋でわかった成果などについても触れた形で総括を書く努力が必要。間に合うかどうかという時間の問題があるが。
気象庁:
成果報告書を書き直した方がよいという意味か。
田宮委員:
総括のところだけでも何とかならないか。
浅井議長:
評価・助言会議の役割は実施側である推進委員会がとりまとめた成果報告書の評価をすることであって、それをどうするかは実行者側の判断に任せざるを得ない。
内閣府:
浅井議長のいうスタンスで評価・助言会議は成り立っているので、時間とお金の関係があると思うが、推進委員会側で判断していただきたい。
浅井議長:
それでは、各個別事業についても質問をお願いしたい。
田宮委員:
国際協力体制の構築について、太平洋島嶼国にARGO計画について教えるだけでなく、長期的に海洋学者を輩出することまで狙ったものか。ポリシーを伺いたい。
海洋研究開発機構:
全く新しい観測システムとしてのARGO計画を理解してもらうことが狙いである。太平洋島嶼国の研究者や行政官は、プロジェクトを進める上で窓口や連絡役になる。継続的な研修等を通じて各国の理解が深まることで、ARGO投入に関わるEEZの事前許可を得ることができ、今までに島嶼国の中で拒否する国はない。長期的には海洋の専門家やARGO計画に積極的に加わる人が出てきて欲しいという希望を持って研修を行っている。
木本委員:
計画が終わるとそういう地道な国際協力活動は終わってしまうのか。
海洋研究開発機構:
現在も続けている。太平洋島嶼国への研修は新たな財源を探すか、或いは自前の予算を使ってでも行いたい。先方から人を受け入れて訓練すること等を考えている。
浅井議長:
国際協力体制の構築という観点からは、日本がイニシアティブを取って強力に推進されてきた点を大変高く評価したい。ただ、今後の発展につなげていくには、国際的な政府レベルでの承認等、政府間組織が事業をバックアップする形の必要が出てくるのではないか。そこまで持っていく準備的なプロジェクトとしては非常によく機能した。
海洋研究開発機構:
基本的にはARGO計画は、永続的なシステムとして構築しなければならない。そのためには各国の政府が国際的レベルで承認して、どういうふうに進めるかを決めるべきであるが、まずは各国・各機関がやれるところから進めてきた。
久保田委員:
フロートデータを補完する観測システムについて、海洋短波レーダーがかなり劣化しているということだが、そうすると継続的にはデータとして使えないということか。
海上保安庁:
劣化した原因はレーダー制御箱の中が結露してアンテナ基板の回路が駄目になったことである。劣化は観測データを見ていておかしいと気づく、あるいは検証観測でわかるので、随時不具合が見つかれば直しており、今後も検証観測は継続してやっていく。
久保田委員:
データについての継続性はどうか。補正したりするのか。
海上保安庁:
現在のところ、過去の部分をさかのぼっての補正はやっていない。ただ、補正結果を見てみると、流速が弱いところで流速は変わるものの、強いところの流向に大きな変化はないようなので、そういう意味では前のデータをさかのぼって修正は考えていない。
久保田委員:
データの品質管理(QC)は、万国共通で同じようにやっているわけではないということか。
海洋研究開発機構:
一応、遅延QCの内容については、合意が国際ARGOデータ管理チームの中にあるが、どのように実施するかは各PI(フロート運用者)に任せられている。
久保田委員:
そうすると、誰がデータQCを施したかを明示しなければARGOデータとして使えないという可能性はあるか。
海洋研究開発機構:
例えば目視チェックも塩分補正に関してもPIによって判断はまちまちである。また数字の意味も遅延QCをやっているPIによって異なる場合がある。
久保田委員:
同じ観測に対して、数字が変わっている複数のデータがARGOデータとして世の中に流布している場合に、それぞれがどういう違いがあるということをどこかでやるとういうことか。
海洋研究開発機構:
あるARGOフロートの一つのプロファイルに対しては一つのデータファイルしかなく、そのフロートに対して責任を持つPIがベストを尽くしたデータである。しかし、海盆規模で均質なQCを実現するために地域データセンターが置かれPI間の遅延QCの相互比較を行うことになっている。
久保田委員:
世界中で比較するのか、それともある特定の場所で特定のデータを比較するのか。
海洋研究開発機構:
特定の場所である。太平洋域ならば赤道から北緯10度の帯の中で幾つかのフロートを選んで相互比較をすることになる。
久保田委員:
データ同化について、今後もARGO観測を継続していくならば、どこに投入すればどういうインパクトがあるかをきちんと評価しなければいけない。効率的に観測するためにどういうふうにデザインしていくかをデータ同化から調べるべきではないか。
海洋研究開発機構:
今のところ、国際ARGOサイエンスチーム主導のサイエンティフィックな狙いで投入しており、品質管理の面からどの辺りに必要という観点ではまだ議論されていない。
久保田委員:
現在やっていなくても方向性としてはそういうことをやらなければいけないと思う。
海洋研究開発機構:
どこを見たいとかどこを調べたいとか研究者の側から出たときに、フロートをどこに投入すればよいか、同化システムによる感度解析を使えると思うが、まだそういう体制になっていない。もう少し高解像度にする必要があるが、ターゲットさえ絞れば、どこを観測したらどう効いてくるというのは、基本的には今のシステムでできる。
木本委員:
資料2−7データ同化について、17年度以降はマンパワーの関係から他の機関、組織にゆだねると書いてあるが、これはやめるということか。
海洋研究開発機構:
海洋研究開発機構のARGOグループでは、観測フロートの展開、技術的な開発、遅延品質管理、データベース、太平洋地域データセンター等を抱えており手一杯である。データ同化をやるならばそれだけでひとつの大きなグループが必要と考える。そういう点では、海洋研究開発機構の地球環境観測研究センターではやれないということである。また、国際的なフロート展開の立場からすると、グローバルに一様に展開したシステムを構築することを最初の目標としてきた。今後は効率的な投入方法を考える上で同化モデルの結果等を利用することは非常に重要だと思う。
松山委員:
フロートは空白域を埋めるように世界に展開しているが、冬の船で観測ができないところのデータが取れることは大変な成果である。報告書で強調すべきである。
海洋研究開発機構:
いかにこれが新しいシステムで空白をどんどん埋めているかはそのとおりであるが、報告書では、冬の観測できなかったところのデータが取れていることを強調した表現にはなっていない。
松山委員:
目的が地球規模の高度海洋観測監視システムを構築するということなので、そういうところはもっと強調していい。
フロートデータを補完する観測システムについて、補完する目的をもう少し入れた方がよいのではないか。
海上保安庁:
地球規模の海洋監視システムという中で、定点で時系列的な変化を追う観測データを、流れて移動しながら観測するARGOフロートデータに組み合わせていくことで、総合的な観測精度の向上を考えていきたい。
松山委員:
この海域はARGOフロートを投入しても流れていってしまう海域なので、やはり固定して見ていく必要があるということで設けた場所だろう。そういうことを記述してほしい。
浅井議長:
いわゆる黒潮大蛇行の現象に対して、プロジェクトとしてどういう取り組みをしたか。観測的に、或いは予測という観点からどうか。
海上保安庁:
四国から本州南方の海域で黒潮の蛇行を見ていたが、そこへ回ってくるフロートは時々あるという程度。黒潮続流域ではこれまでデータが少なかったが、ARGOフロートによって、しかも深いところの水温のデータが飛躍的に増えて、黒潮蛇行に匹敵する続流域の蛇行現象が非常に鮮明に分かるようになった。
浅井議長:
数年前まで黒潮の予測実験研究プロジェクトをやっていたが、黒潮の大蛇行については手に負えなかった。黒潮の変動、大蛇行は亜熱帯循環から把握しなければいけないと言われており、グローバルスケールでの観点からみてみる必要があると思う。プロジェクト期間中にそういう現象が起こったことはラッキーなので、もう少し調べたらどうか。気象庁ではある程度予測できたという話も聞いた。黒潮は日本社会にとって極めて関心の高い問題である。
気象庁:
気象庁では、海洋予測モデルの結果を踏まえて、蛇行が発達する状況になるのではないかという発表をした。また、今度は消滅するのではないかという兆候が現れたのでその旨発表した。ARGOの成果とどこまで結びつくかは難しいところであるが、モデル等の改良と軌を一にして行われてきた成果であることは確かである。
木本委員:
予測するときにARGOのデータを抜いた実験はやらなかったのか。
気象庁:
予報業務の中で、実験を行うことは難しい。
浅井議長:
中層フロートの展開について、国際的には3000台のフロートを展開させる計画で、現在は1600台くらいということでよいか。
海洋研究開発機構:
現在は1928台まできており、この夏に2000台までいくと思う。
浅井議長:
その中で、日本の目標は幾つか。
海洋研究開発機構:
ミレニアム・プロジェクトの初めの目標では300〜400くらいの台数を公言した。実際の投入は、海洋研究開発機構分が378台、気象庁分が8台で計386台であり、投入数としては目標に達した。
浅井議長:
国際的には目標3000台はいつごろ達成するのか。
海洋研究開発機構:
2006年中には達成されるように努めたい。
気象庁:
3000台展開されたとしても300キロ四方に1つ程度なので、黒潮の大蛇行の中には1つあるかどうか程度である。気象庁としては今年度からARGOフロートと同等のものを日本近海にまいて黒潮等をもっと密に観測する方策を考えている。
田宮委員:
中層フロートはもともと海流測定が始まりであったが、今は水温、塩分の方がメインになっているが、海流を測るという問題はどう位置づけられるのか。
海洋研究開発機構:
フロートが中層で流れる深さ、例えば1000メートル深の絶対的な流れの情報が得られ、それと、2000メートル深からの水温、塩分のプロファイル、人工衛星から見た海面の凸凹等を組み合わせて海洋全体の絶対的な流れの場を押さえることが可能になる。現在、フロートが流れる深さについては特別な研究目的がない限り1000メートルにしようということになっている。
浅井議長:
全球海洋データ解析・提供システムについて、31ページの「図−1アルゴデータの流れ」の米国とフランスは何か所掌事項が異なるのか。
気象庁:
同じである。バックアップの機能を果たせるように冗長性をもたせている。
浅井議長:
日本には国別データセンターという役割と地域データセンターという役割があるのか。
気象庁:
遅延データを取り扱う太平洋の地域データセンターを海洋研究開発機構が担当している。世界データセンターの窓口である国別のデータセンターは気象庁が業務としてやっている。
久保田委員:
資料2をみると、平成17年度以降の実施方針でかなりの部分が継続すると書いてあるが、ずっと継続すると考えていいのか。予算的に難しい面もあると思うが非常にうれしいことである。
気象庁:
気象庁としては、データ管理について継続する。
文部科学省:
成果報告書の書き方で総括部分について手直しをするとすれば、推進委員長と相談が必要である。期限を1週間くらいもらいたい。
浅井議長:
ぜひアピールする部分は強調した方がいいと思う。
○アルゴ計画推進委員会の立ち上げについて
文部科学省より資料3の参考資料4に基づき、今後の実施体制について説明があった。
浅井議長:
地球観測の観点からも、海洋そのものだけに限ってもARGO計画の重要性、有用性はよく認識される。評価・助言の一部として数年前から、プロジェクトの次のステップを考えることを助言してきたが、それを真摯に受け止められたことを高く評価する。
ARGO計画は国際的に協力してやらなければならないが、他の主要な参加国がどのようにやろうとしているかの情報もいただきたい。ARGOをこれから数年間は続けられるのだろうが、将来性を確保するためにも、その間に、科学的にはもちろん、社会的にも重要性を大いに広く理解していただくように努めていただきたい。
内閣府:
次回の評価・助言会議は8月19日14時から開催する。
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