ゲノムプロジェクト

評価を踏まえた対応方針



分野名 ヒトゲノム多様性

項目名評価・助言評価を踏まえた対応方針
1.現状分析 各事業ともに明確な目標の下に計画が作られており、また、研究体制の整備についても十分な進展が見られるなど、全体としては順調に進展している。完全長cDNA解析、このデータに基づく遺伝子領域中心とした標準SNPs解析、使用DNAの少量化等によるSNPsタイピングの高速化・低価格化等の計画は合理的であり、また、バイオインフォマティクスグループ等との連携も行われている。 今後とも、疾患遺伝子解析グループ・バイオインフォマティクスグループとの連携を積極的に進めていきたい。
新規のものと思われる日本人固有のSNPが総数の80%近くを占めるという結果は、外国での同様な解析結果と比べて異常なくらいに高い。これは単に新規性の基準とした既知のSNPsの総数が足りないためなのか、SNPs探索を遺伝子部位に限定したなどのためなのか、今後の解析の結果を待ちたい。 新規SNP発見率が高いのは、本計画の対象が遺伝子領域に限定していること、日本人集団に特化していることの複合理由であると考えている。疾患遺伝子解析において、これらの成果は、わが国のSNPs探索技術が諸外国に比して優位に立っていることを示すものであり、この有利な状況を生かし、システマティクなタイピング体制の構築により、知的財産の確保につながる計画作りが期待される。
現状では解析自体が目標であるが、標準SNPs、疾患関連SNPsを関連させ、いかに最も効率よくテイラーメイド医療に繋げていくのか、今後の方策について検討すべき。 本チームの目標は、疾患・再生・バイオインフォマティクスのための基盤データの産出にあり、2年間で当初の目標は達成して終了することとなっており、テイラーメイド医療に向けて、各プロジェクトへの成果を提供していく予定。
2.実施目標の達成度 本プロジェクト全体について、予想以上の速度で解析が進んでおり、十分に評価できる。 本年度末の目標達成に向けて着実に計画を進めていきたい。
cDNAの取得数は数の上では達成されるであろうが、取得したcDNAから本当にタンパク質が発現するかどうかについては、in vitroでのタンパク質合成等によって実際に確認する必要がある。 平成13年9月現在で、新規ヒト完全長cDNAの塩基配列決定数は約2.2万であり、平成13年度中に目標を達成する予定である。塩基配列解析したcDNAについては、平成13年度から、民間部門の参画を得て発現検討を開始することとしている。
3.具体的改善点 遺伝子多型の高速タイピングに対して重点的に取り組み、他のSNPs関係プロジェクトをサポートすることで、SNPsの技術開発及び研究の進展に対してうまく機能しているので、これを一つのモデルとしてうまく普及させるべきであり、また、収集したデータは、他のプロジェクトの参考データとして活用するべき。 収集したデータは、疾患遺伝子解析チームの標準データ等として共有されることになっている。
理化学研究所遺伝子多型研究センターが行う疾患SNPsの解析とミレニアム「疾患遺伝子プロジェクト」との関係及び連携体制を明確にするべき。また、「疾患遺伝子プロジェクト」の解析過程において、本事業がどういった形で関係しているのかを明らかにすべき。 理化学研究所の遺伝子多型研究センターは、SNP解析を疾患解析研究に生かすパイロット的な研究を行うミッションを持ってスタートしており、順調に研究が進んでいる。同センターには、疾患遺伝子研究のための様々なノウハウが蓄積されつつあり、疾患研究や遺伝子研究の推進のため、疾患遺伝子解析チームとの一層の連携・協力を図る。
研究成果の特許化に対するシステマティックな取り組みを行い、研究成果が民間に速やかに移転されるようにすべき。 研究成果のうち、特許性のあるものは特許を申請し、その後に公開する方針であり、そのための支援(必要経費の計上)も行っているところ。また、特許化しにくいものについては、速やかに公開し、民間でも利用でき、すでに10万以上のSNPs、約9千以上のcDNA配列情報が公開されている。
4.その他 標準SNPs事業は高い達成度を上げており、他の事業の基幹となるものであることから、他の事業との連携強化を期待。ただし、海外のベンチャー企業がSNPsに取り組んでいることを考えると、ナショナルプロジェクトとしての存在意義を明確にすべき(日本人集団ということの意味を含めて)。また、その機能解析については、海外のデータとの連携も視野に入れるべき。 疾患遺伝子解析チームとの連携は緊密に進んでいる。ナショナルプロジェクトとしての意義は、本事業が組織等を越えた能力結集により進められてきており、十分な役割を果たし得たものと考えるが、本事業は2年間の事業であり、その成果を今後他チームで活用されることを期待したい。
タンパク質機能解析について、発現分布や遺伝子導入等との従来の方法のみならず、新しい解析法の試みが積極的になされることを期待。また、機能解析が現実に進展している(或いは可能性が高い)という具体例を示すべきではないか。 完全長cDNA構造解析事業の成果である塩基配列データは、バイオ・インフォマティクスプロジェクトにおけるタンパク質機能解析プロジェクトにおいて利用されている。

分野名 疾患遺伝子プロジェクト

項目名評価・助言評価を踏まえた対応方針
1.現状分析
  • 痴呆、がん、糖尿病、高血圧、喘息、薬剤反応性の6つのサブチームの準備ができあがっており、ほぼ主要な疾患を網羅。また、技術の導入等、多様性プロジェクトとの連携も進められつつある。
  • コメント無し
  • サブチームの体制整備の段階であるために、プロジェクトの進行を評価する段階に来ていない。また、各サブチームには、人的配置、研究方法等相当な差違があり、将来的にチーム間の達成度に差が出てくるのではないか。
  • 平成12年度は2度実施会議を開いて、サブチーム間の連絡を密にした。今後も、定期的に実施会議を開催し、連携を図っていく。
  • 解析の対象となっている各疾患はそれぞれ多岐に及ぶ病因が関与する症候・病態であるが、このような場合に、診断基準、サンプル摂取、対照集団、サンプル数等に問題がないかを議論すべき。
  • 各疾患サブチームで検討した診断基準・対照集団・サンプル数等について、さらにサブチームリーダー会合等で専門家を含めて議論する。その際、日本人標準SNPsの頻度など、議論に必要な情報も積極的に導入していく。
    2.実施目標の達成度
  • 初年度はプロジェクトの準備を行ったのに留まり、あまり進展がなかったので、現段階では最終目標と照らし合わしての評価は困難。しかし、疾患遺伝子解析については、ある一定数以上の質の高いサンプルを収集することが極めて重要であるが、これに係る診断基準が決められてサンプルが収集され、研究が始まったこと自体は評価できる。
  • コメント無し
  • 本プロジェクトを遂行する上で、研究サンプルの収集を適切に行うことが不可欠であることから、ゲノム・遺伝子研究に関する倫理指針が確立されたのは評価できる。
  • コメント無し
  • ゲノムワイドの疾患遺伝子解析は十分に技術導入を行って連携を図ることが重要。こうした中で、SNPs解析が国立がんセンターと理化学研究所を中心とするセンター方式で行われることが決まったことは評価。
  • コメント無し
    3.具体的改善点
  • サブリーダー間、サブリーダーと各チームのメンバー間の連絡を密にするべき。疾患遺伝子の分野によってはサブチームの組織整備が十分行われていない。具体的には、糖尿病、高血圧、喘息分野の体制整備は遅れている。
  • 平成12年度は2度実施会議を開いて、サブチーム間の連絡を密にした。今後も、定期的に実施会議を開催し、サブチーム間、及びサブチーム内の連携を図っていく。
  • 糖尿病以外の分野においては、焦点の絞り方を明確にするべき。また、喘息等での発現解析は、細胞集団の変化による要因との関係を明確にすべきではないか。
  • 5大疾患のそれぞれについて、罹患率や死亡率が高く、有効な予防法・治療法が確立していない疾患・病態を選んで焦点を当てることを原則とするが、比較的稀な疾患や病態の解析から重要な研究の突破口が開かれることもあることに留意して対象疾患を選ぶ。 ぜんそくの発現解析については、初年度はベッドサイド応用、すなわち少量の血液試料で短時間に解析する方法を優先し検討した。細胞集団の違いによる発現遺伝子の違いについても検討している。
  • 理化学研究所と国立がんセンターのSNPセンターが担うべき疾患のSNP解析の内容を明確にすること。また、タイピングセンターを早急に立ち上げること。
  • 5大疾患のそれぞれについて、サブチームが選んだ約200例を対象に、ヒトゲノム多様性プロジェクトが、平成12年度末までに日本人集団について同定する約10万カ所のSNPsのタイピングを行うこと、参照群データとしては、日本人標準SNPsデータベース等を用いることとが決まっており、疾患ごと又は、タイピングを行うSNPsごとに分担することを予定している。国立がんセンターのタイピングセンターは、作業を進めており、組織としての立ち上げを早急に行う。
  • 具体的な遺伝子同定に係る解析において、サブグループ間でその遂行能力に差があるように見られる。将来、事業遂行に問題を来しているグループが発生した場合には、新しい人材の投入も含め、柔軟な対応が必要。また、疾患遺伝子分野によって事情が異なる面もあろうが、インフォームドコンセント、個人遺伝情報の保護などについては、共通の体制を作った方が効率よく、整合性も取れるのではないか。
  • サブグループ間の調整は、今後もサブグループリーダー会合を随時開催し、柔軟に対応していく。遺伝子解析研究に付随する倫理問題等への対応は、研究計画書や説明・同意文書作成の段階から情報交換に努めて効率性と整合性を確保する。
    4.その他
  • 本プロジェクトのチーム全体及びサブチーム内での診断基準、分類基準等の方法についての意思統一を図るべき。また、家系分析のマイクロサテライトは十分にその特長を生かし、ゲノムワイドの解析につなげるべき。
  • 各疾患サブチームで検討した診断基準・対照集団・サンプル数等について、引き続きサブチームリーダー会合等で専門家を含めて議論し、意思統一を図っていく。
  • ゲノム技術に関する差が個々の研究者、サブグループ間であるようなので、技術的なトランスファーを含めて意見交換の場を設けるべき。また、疾患動物実験チームとの協力も視野に入れるとともに、バイオインフォマティクスグループとの協力を強化するべき。
  • 今後も引き続きサブグループリーダー会合等を通して技術的な情報・意見交換に努める。また、今後疾患関連候補遺伝子が同定されるに従って、疾患動物実験チームとの具体的な共同研究の計画を進める。バイオインフォマティクスグループとの協力関係については、研究者同士の情報・意見交換の場をさらに増やして有効な共同作業に努める。
  • 疾患SNPsの研究は諸外国で盛んに行われており、日本人固有の視点を考えても、国際競争の中で極めて厳しい状況に置かれている。しかし、日本人のgenetic backgroundが比較的均一という有利さを利用して、今後のプロジェクトの発展を期待したい。
  • コメント無し

    分野名 バイオインフォマティクス

    項目名評価・助言評価を踏まえた対応方針
    1.現状分析
  • 他のミレニアムプロジェクトとの関係を考慮すると、当面はバイオインフォマティクス技術の開発、遺伝子多型情報データベースの整備、疾患遺伝子データ整備を中心に行うのがよいのではないか。また、本プロジェクトは、国内のデータのみを集めようとしているのか、国際的レベルでの展開を考えているのかを明確にすべき。
  • 現在、「バイオインフォマティクス技術の開発」、「遺伝子多型情報データベースの整備」、「疾患遺伝子データの整備」を鋭意行っている。引き続き、ミレニアム・ゲノム・プロジェクトの着実な実施を推進する。
  • また、本プロジェクトは、この分野における我が国の国際的遅れを取り戻すべく、当面は国内のデータベース整備に全力を挙げることとするが、各データベースの充実度合いにより、海外でのデータも含むことを排除していない。例えば、統合データベース事業では、国内外両方のバイオ関連情報を広く収集し、これにアノテーションを行い、効果的かつ効率的な研究、産業利用に役立つことを目指している。その際、国内外の成果の活用等に関する十分な配慮が必要である。
  • バイオインフォマティクスといった今後急速に発展していく分野では、従来の体制が急速に陳腐化する可能性があることから、各チームのメンバー間の連携を密接にするとともに、常に若い優れた人材を加えることが必要。
  • これまで各チームにおける研究会や成果報告会等の場の活用や、インターネット上の意見交換等を通じてメンバー間の連携は図っているが、今後ともよりメンバー間の連携が密接になるよう努めたい。
  • 次代を担う若い世代の育成のため、ポスドクの活用や、国際的な協力関係の構築の模索等、若い優れた人材を加えるための努力は今後とも行いたい。一方で、我が国のバイオインフォマティクスにおける人材は根本的に不足しており、長期的視野も含め人材養成のための体制強化策が必須と考える。
  • 2.実施目標の達成度
  • データベースの整備やin silicoでデータ解析技術などがほぼ順調に進んでおり、バイオインフォマティクスに係る体制の整備が進められたことは評価できる。ただし、初年度であるためか、今回の報告では目標の設定が理念的、総論的であって具体的な目標が不明瞭
  • 本プロジェクトでは、データベース整備、解析技術開発等を行っており、これらの統合化されたデータベースを構築することを目指しているが、目標設定をより具体的なものとなるよう研究開発の進ちょく、国際的な研究開発動向等を含めて検討をして行きたい。
  • 我が国のバイオインフォマティクス研究は国際的に遅れており、生命システム解析、技術開発、ソフトウェア開発等、早急に我が国独自のシステムの開発を進めるべきである。また、海外との競争でイニシャティブをとる可能性がある分野の見通しも早急に立てるべき。
  • 我が国のバイオインフォマティクスが国際的競争力を確 立することは極めて重要である。今後、我が国のバイオイ ンフォマティクス分野がいかに大きく展開していけるか    は、研究課題の設定、研究資源の投入規模等に大きく影響 されるものと考えられる。また、国際的にも、バイオイン フォマティクスは今後急速に進展する分野であり、我が国イニシャティブによる世界標準をどう構築していくかが重要である。本ミレニアムプロジェクトの進行の下に、国際的競争力を持つプロジェクトやチームを見極め、その推進を図っていくこととしたい。
  • 3.具体的改善点
  • データベースが整いつつある中、サブプロジェクトの責任 者を明確にするとともに、サブプロジェクト相互の意志統一、 密接な連絡を行うべき。
  • サブプロジェクトの責任者は明確に決められているので、サブプロジェクト間の連携が重要と考えている。成果報告会等を通じて、サブプロジェクト間相互の意思統一、密接な連絡を引き続き図っていく。
  • ミレニアムプロジェクトの進展に伴い、これから我が国が 得意とするcDNA、日本人SNPs、タンパク質立体構造に 係るデータが集まってくることを踏まえ、これらをデータ  ベース化するのに必要な解析機能を担い得る人材の育成 にも十分配慮すべき。現状ではまだ少ない。また、国際的 なイニシャティブをどの分野で打ち出すのかを検討すべき。
  • ミレニアムプロジェクトの成果等が膨大に生み出されてくる中で、そのデータ間の有機的関連付け等を行うための大規模アノテーションが必要になると考える。このために必要なアノテータの育成のために、ポスドクの活用や、国際的な協力関係の構築を模索する。
  • 重要な生物情報をデータベース化するのに必要な解析機能を担い得る人材の養成のためには、関連分野の教育の充実を図るとともに、民間企業等における当分野の人材養成も急ぐことも必要である。さらに、本プロジェクトの進行に伴って、どの分野で国際的イニシャティブをとっていくかの検討も行う予定である。
  • 外部から見た場合に、DDBJ、KEGG、JBiCその他のデータベースそれぞれの役割が分かりにくいので、それぞれの役割を明確にするとともに、場合によっては整理・統合も必要ではないか。また、研究者レベルに留まらず、広く一般に互換性を有する情報を提供すべき。
  • それぞれ適切な役割分担の下に、研究開発を実施してきている。ここで得られる統合データベース事業の成果は、広く研究者、産業界において利用可能な形で公開していく。
  • DDBJは、国際DNAデータベースの構築、KEGGは代謝パスウェイデータベースの構築、JBiCは生物情報解析研究センターと共同で統合データベースの構築という主たる役割がそれぞれ明確にされている。これらの間のデータの互換性は、プロジェクトの進行のもとに、XMLという共通フォーマットで確保する予定である。
  • 統合データベースは、これらと連携して活用できるようにしていくことが重要である。
  • 4.その他
  • 本プロジェクトにおいては、民間企業や公的研究機関からも研究者を集めることで、バイオインフォに係る教育機関としての役割を果たすことが望まれる。
  • 民間企業や、公的研究機関(大学等を除く)に関しては、社団法人バイオ産業情報化コンソーシアムを通じて、人材養成のための教育活動を進めていきたい。例えば、大規模アノテーションを進めることにより、この過程を通じて、バイオインフォマティストの教育機関としての役割を果たすことも想定される。大学等については、科学技術振興事業団バイオインフォマティクス推進センターや科学技術振興調整費「振興分野人材育成」において本プロジェクトとの十分な連携の下、必要な施策が進められている。
  • 国際的なイニシャティブがとれる可能性がある分野に対する戦略が必要。
  • 増え続ける膨大なバイオ関連データに有用な生物学的知識を付加(アノテーション)し、より高度化したデータベースの構築及び統合化の実施、さらに関連するソフトウェアの研究開発は国際的に見ても進んでおらず、本研究プロジェクトにおいて、こうした分野における知的基盤整備等を早急に行い、この分野における国際的なイニシャティブを取ることを目指す。このほか、本研究プロジェクトの進行に伴い、どの分野で国際的イニシャティブをとっていくかについての検討を深化させる。
  • 未開拓細胞周期、情報伝達系等、生命科学上の中心的課題が簡単にはバイオインフォマティクスと短絡して解決がつかず、基礎研究も別途必要との印象あり。
  • バイオインフォマティクスは、従来から行われている生化学実験系から得られるデータを活用することで、生命科学の観点からより良い仕事を進めることが出来る。未開拓細胞周期、情報伝達系等の課題についても、バイオインフォマティクスの観点からの研究のほか、そもそもバイオインフォマティクスで活用出来るデータの取得という観点からの基礎研究も別途必要になるものと考える。・ しかしながら、一方で、未開拓の細胞周期や情報伝達系のなどの生命科学の中心課題の解明に、本プロジェクトのデータベースの整備は必須である。また、遺伝子ネットワーク解明のためのアルゴリズム開発などの基礎研究の重要性はいうまでもなく、データベース構築と連携して進めるべきと考える。
  • 分野名 発生・再生

    ゲノムプロジェクトが診断中心となるのに対して、本プロジェクトは治療中心となる点など、本プロジェクトは他のミレニアム事業とは直接的な関係がなく、やや異質であることを考慮すべき。

    項目名評価・助言評価を踏まえた対応方針
    1.現状分析 基礎研究の成果を円滑に医療応用に結びつけるという基本コンセプトの下、ES細胞、幹細胞等を用いた分化誘導などの基礎から応用まで、総合的な研究から実験治療に向けての体制の確立と方向性が明確になされ、これに対する組織の構築も進みつつある。  
    基礎から臨床応用にわたる、余りにも多くの領域の研究をカバーしているため、評価が困難な側面があるが、本プロジェクトの目標が実際の治療に役立ち、研究の現状が多くの解決すべき問題を抱えていることを考慮すると、総合的に他方面の分野を対象として進めざるを得ないのは理解できる。 ゲノムプロジェクトは決して診断中心ではなく、高齢化社会における新たな医療全体を構想するものでなければならない。事実、ゲノムプロジェクトは、新たな創薬の可能性に直結しているからこそ、製薬企業等の期待を帯びている。ただ、治療全体をかんがえる時、これまでほとんど不可能であった様々な細胞を治療手段として利用する治療法の展開は、現在最も重要な領域となっている。加えて、ゲノムプロジェクトは必然的に細胞や個体の理解へと統合されていくことを考えると、発生や再生は医学応用のみならずゲノムプロジェクトが将来試される最も重要な場である。
    2.実施目標の達成度 欧米では分散した形で研究が行われている中、我が国において研究展開の方向性が明確にされているという点は評価できる。また、準備も着々と進んでいる。 研究の集中化、効率化とともに、大学や既設の研究組織、医療機関での幅の広い研究振興の重要性も認識しており、両者の適切なバランスにより研究が進められていくことが適当である。
    本プロジェクトの性格上、達成度の量的な評価は難しいが、時間軸を尺度としてどこまで完成したかを基準として評価するのはどうか。また、本プロジェクトは特に医療応用との関係が深いにも関わらず、臨床サイドからの研究の進展がほとんど報告されていないのではないか。 それぞれの施設で既に行われている日本発の治療法等も進展しているので、次回には報告する。最初にあげた5疾患の実際の治療までの到達度マップを作成する。

    造血細胞移植の分野(骨髄、末梢血、臍帯血、donor leukocyte infusion:DLI)では、年間2000例を越える移植が実施され、血液難病、癌、膠原病等の患者を、良好な治療率、社会復帰率をもって救済しつつあり、本プロジェクトの成果により、その成功率供給率はさらに向上してきている。

    3.具体的改善点 本プロジェクトが対象とする発生、分化、再生は未だに基礎研究が必要な分野であることに十分配慮し、基礎研究を重視した展開を図るべき。また、基礎研究を重視するとともに、臨床・医療の場での成果を把握し、この分野の成果がいかに実際の医療に役立っているのかも明確にすべき。 この点は、最も留意している点であり、todays science, tomorrows medicineを常に意識したプロジェクト運営を行う。
    個々のプロジェクト間の有機的な関係を再構築し、各プロジェクト横断的な目標を再設定するべきではないか。 本年度から、いくつかの重要な細胞治療について基礎から臨床まで全員が集まった報告会を行う。今年度は血管について行う予定。
    4.その他 ES細胞の研究が全世界的に容認される方向にあり、我が国でもES細胞に係るガイドラインがまとまりつつある中で、できるだけ早くスタートすべきである。 役所の協力、研究者のモチベーションともにうまく進んでおり、ガイドライン策定後速やかに推進体制をとることができる。
    研究成果を実用化するためには、基礎研究、トランスリレーショナルリサーチ、医療への応用というシステムが必要。 関西地区において、基礎から臨床、そして産業と言う大きなコンプレックスを準備しており、例えばCPCなど必要に応じて臨床応用に必要な施設は着々と整備している。一方、関東地区においては医科学研究所を中心とした独自の取り組みがそれ以前より進んでおり、それを未来開拓、理研との連携等で積極的に支援をしている。

    特に、造血幹細胞移植による血管の再構築や心筋の再生等は、一部臨床応用が可能になってきている。

    骨、血液、神経、皮膚、血管と多くの目標を設定しているが、相互に利用可能な基盤研究は利用しあうべき。 本分野が対象とする臨床応用は、多様であるが当然幹細胞研究としての共通性が存在している。例えば、ES細胞を用いた細胞の調整、或いはリプログラミングの問題等は全てに共通な重点項目として推進しているところ。
    倫理面や社会面での広報活動は、本分野の研究を将来実用化するために不可欠。 広報活動についての重要性は認識しており、新しいIRBのあり方を理研で試みたり、産業化の問題も含むscience communicationのあり方や、ベンチャー育成等に向けての普及活動は、ミレニアムの重点課題、特にプロジェクトリーダーの課題として進めていく予定である。

    分野名 イネゲノム

    項目名評価・助言評価を踏まえた対応方針
    1.現状分析 イネゲノムの解析については一定の成果を上げているが、シンジェンダ社によるドラフトシークエンスの完成との報道も踏まえ、本事業を今後どのように展開していくのか、すなわち、次の段階である遺伝子の機能解明の一層の加速化^をどのような方策で行うのか議論すべき。 本年1月のシンジェンタ社からの公表を受けて2月に国際コンソーシアムが解読の加速をアピールし、3月に日本が第1染色体の解読終了を公表した。6月には国際コンソーシアム主要6カ国会合が開かれ、2002年中に重要部分の解読を終了することを確認した。並行して我が国では、外部有識者によるイネゲノム有識者懇談会(座長:榊佳之東京大学医科学研究所教授)を開催し、新たな情勢変化に対応した今後のイネゲノム研究の報告と方策を検討した。報告書では、全塩基配列の解読と完全長cDNAライブラリーの早期終了、遺伝子の機能解明の加速、そのための産官学の一層の連携、成果の利活用の促進等が示されており、今後はこれらの方向と方策をイネゲノム研究の指針として推進していく。
    トウモロコシ等穀物関係植物のゲノム解析の過去の状況を踏まえ、本プロジェクトの意義についての説明が必要。ややもすれば、イネゲノム解析それ自体が目標のようにも取られるおそれがあるので、その実用化を含めた目標を明確にすることが必要ではないか。  イネは我が国を代表する農作物であり、また世界の穀類作付け面積の8割がイネ科作物によって占められていることからも、イネを研究対象とすることは我が国農業への貢献度の観点、また世界の食糧事情の改善等への貢献度の観点からも重要な選択である。
     イネ科作物については、遺伝学的研究も含めてイネのほかトウモロコシや、ムギ類についての各種研究が各国で行われてきた経緯があるが、いずれもイネに比較してゲノムサイズが大きく、また塩基配列の構造が複雑であること等から、ゲノム研究に用いることが最適な作物としてイネがクローズアップされる。また、我が国には、100年以上に及ぶイネ育種・栽培関係研究データの豊富な蓄積があり、全国的に研究体制が整っており、本研究の成果の波及効果の点からもイネを研究対象として選択することが重要である。
    また、イネゲノムの解読は他の穀類ゲノム解析に広く応用でき、植物生命科学の発展に寄与できるとともに、得られる遺伝子等は食料・農業の発展はもとより、機能性食品の開発、環境浄化植物の開発、医薬品等有用物質生産等に広く利用できる研究として意義付けている。
     さらに、ミレニアムプロジェクトでは、ゲノム解析、有用遺伝子の機能解明の目標とともに、高血圧等の生活習慣病予防、アレルゲンフリー等の機能性作物・食品の開発、化学農薬を50%削減できる病害虫抵抗性作物の開発等も目標としている。
    2.実施目標の達成度 イネゲノムの解読が前倒しされ、完全長cDNA 解析は予定よりも早く進展しており、初年度としては十分に目標を達成している。ただし、シンジェンダ社がドラフトシークエンスを完成したとの報道を踏まえ、こうした世界的な研究開発の動向にも留意すべきではないか。  世界の研究開発が加速していることから、イネゲノムの解読についても一層の加速化を図っていくとともに、完全長cDNAライブラリーの整備も着実に進め、有用遺伝子の機能解明の促進につなげていきたい。
    本プロジェクトは研究のバランスとともに、スピードが要求されるものであり、国際競争が激化している中で国際的な主導権を握るためには、ゲノム解析のみならず、有用遺伝子の単離・機能解析、作物への応用等についても一層のスピードアップが必要。このためには、各研究についてスピードを抑制する律速因子を明確にするべきではないか。  有用遺伝子の機能解明等については、完全長cDNAを活用したタンパク質レベルでの機能解明研究の強化など拡充を図るとともに、大学や民間機関が得意としている分野、課題について連携し研究を行う等により、効率化を図り、一層のスピードアップを図ることとしている。農業上の重要遺伝子の単離・機能解析については、マップベースクローニング、ミュータントパネル等の活用により、先端的研究水準を維持しているが、今後、cDNAの活用、特に発現遺伝子解析(DNAマイクロアレイ) の研究を強化し、これらの連携を強化することにより、加速する予定である。
    3.具体的改善点 海外の研究動向について現状分析を行い、厳しい競争状況の下で日本の独自性をいかに発揮するかについて慎重に検討すべき。具体的には、@本プロジェクトを継続することでシンジェンダ社に対抗できるのか、Aシンジェンダ社が研究成果を公表した場合に本プロジェクトはどのような方向性で進めるのか、B公表されないにしても特許等による知的財産権の取得を考慮に入れて本プロジェクトに投資効果があるのか、といった点について、早急に専門家委員会を立ち上げて今後の対応方策を検討すべきではないか。 1.ンジェンタ社のデータは99.9%の精度と公表されているが、地図情報との関係は不明である。有用遺伝子の単離・機能解明を推進する観点からは、国際コンソーシアムが進めている、99.99%の高精度解読と正確な地図情報が効果的であり、今後解読を加速化し、早期に解読を終えることとしている。また、ミュータントパネル等生物研独自の研究材料を活用し、遺伝子の機能解明の促進に取り組んでいる。今後は民間企業の参入や国際共同研究の開始も検討したい。
    2.現状ではシンジェンタ社のデータは自由に利用できるものではなく、国際コンソーシアムの情報の早期公開が望まれているところである。もし、データの公表が行われた場合は、当然評価をおこなう予定であるが、現在の情報では国際コンソーシアムのデータを凌駕するものではないと考えており、塩基配列の解明を加速し高精度解読を進めることが必要である。
    3.ミレニアムの目標である100個以上の遺伝子の機能解明・特許化を行い、機能性を有する作物の開発、病害虫抵抗性を強化し農薬の使用量を50%削減する作物等の開発が達成されることにより投資効果は十分にあるといえると考えている。
     なお、農水省内でも新たな状況を受け平成13年5〜7月に「イネゲノム有識者懇談会」を開催し、高精度解読による塩基配列の解読の早期終了とポストゲノムシーケンス研究への重点の移行等の報告を得ており、今後その方向と方針に沿って研究を推進する予定である。
    イネゲノムの全塩基配列の解析について、我が国に存在する他の大規模塩基配列解析機関と協力して、配列のスピードを上げるべきではないか。また、完全長cDNAライブラリーの整備が順調に進む中で、これを有効に活用した有用遺伝子の特許化の促進を図るべき。さらに、イネの交配実験から得られたデータをイネcDNAと関連させて解析すれば、品種改良にも有効に活用できるのではないか。  全塩基配列の解読については、農水省関連機関のみならず解読能力のある民間機関等の協力を求めて加速化する予定である。
     また、完全長cDNAライブラリーが充実してきたことからこれらを活用した遺伝子の機能解明、タンパク質の立体構造解明等を進め、特許化を図ることとしている。
     さらに交配実験から得られたデータをイネcDNAなどのゲノム解析データと関連させるために、我が国に長年にわたり蓄積されているイネ栽培実験や交配実験等の世界最高水準のデータのデータベース構築も進めており、各種ゲノムデータとの相互リンクを計画している。
     また、イネの交配実験等から得られるデータの活用については、「イネゲノムシミュレーターの開発」プロジェクトにおいて他の多様なデータベースの作成とそれを基にした交配シミュレーションモデルの作成を計画しており、仮想イネを用いたイネ育種の効率化を目指す予定である。
    4.その他 本プロジェクトはイネの品種改良の問題なのかどうか、具体的な目標とグランドデザインを示すべき。  イネゲノム研究の目標は、食料・農業問題、環境問題の解決や新産業の創出、植物生命科学への貢献である。ミレニアムプロジェクトの中で具体的な目標として2004年度までに、
    1. 高血圧性疾患等の生活習慣病や痴呆症の予防、アレルゲンフリー等の機能を有する作物の開発
    2. 化学農薬の使用を50%削減できる病害虫抵抗性作物等の開発を産学官の研究者が一体となって行うこととしている。
     また、イネゲノムは他の穀類と強いシンテニーをもっていることを明らかにしてきた。このため、イネゲノムの解明は単にイネの改良のみを目的とするのではなく、イネ科作物さらには作物全体の改良の共通材料を提供することに大きな意義がある。これらの観点から、塩基配列の解読と同時に有用遺伝子の単離と機能解明の研究に取り組んでいる。さらに、DNAマーカーを用いた効率的な育種技術の開発に資するため、イネ科作物、果樹、野菜等のDNAマーカーの開発にも力を入れている。
    ゲノム解読の完成まで、あと2、3年かかるという想定だが、この数年間の時間的ギャップが問題。この間に外国勢はさらに先行して特許の独占をすることで、我が国によるイネゲノム研究の実用化が困難になる事態も予想される。これに対応するためには、下記の二つのオプションを検討すべきではないか。
    一つ目のオプションは、外国の有力ゲノム解析機関にイネゲノム解析を依頼し、その情報に基づいて品種改良等の次のステージに一刻も早く参入する。
    二つ目のオプションは、イネゲノム解析を継続するが、@現在のイネゲノム解析国際コンソーシアムを効率性等の観点から体制強化し、A塩基配列決定については国内機関への外注の実施によるスピードアップを図り、B外注では困難な配列決定については、イネゲノム固有のインフォマティクスを強化し、C全ゲノム解析完成に向けた責任あるタイムスケジュールを明確にすること。いずれにせよ、いわゆる後追い研究に国費を投入べきではない。
     イネゲノム塩基配列の解読は平成14年度中に重要部分を終了する予定であり、その段階でシンジェンタ社を凌駕する情報が自由に利用できるようになる予定である。また、その間にも順次情報が公開されるため(平成13年10月現在、43%公開済み)、それらを利用して機能解明・特許化を目指す研究者数も順次増加することになる。
     我が国では、国際コンソーシアム参加各国の協力のもとイネゲノムの塩基配列の解明に取り組むとともに、そこから得られる塩基配列データをもとに、有用遺伝子の単離・機能解明については我が国の研究者勢力で取り組んできたところであり、平成12年度から16年度までの5年間に、有用なイネ遺伝子を100個以上単離・機能解明し、特許につなげていくことを目標にしている。
     塩基配列の解読は、99.99%の高精度で進められており、一つ目のオプションに従って外国の有力ゲノム解析機関に依頼するとしても99.99%を確保するためには迅速な物理地図作成が必要であり、結局生物研/STAFF研の経験ある高度な専門技術をもつ技術者に頼らざるを得ない。イネゲノム研究の特長は、遺伝地図情報(マーカー)、物理地図情報(PAC、BAC、YAC)ともに我が国が主体的に貢献してきたところにある。これらの情報がなければ、意味のある全塩基配列解読は進まないと考える。また、シンジェンタのデータと国際コンソーシアムのデータとでは精度が大きく違う。
     2つ目のオプションについては、@については、まず国際コンソーシアムの枠組みを維持していることで、米国NSF等から高い評価と全面的な協力の申し出を受けており、同時にモンサント社から無償で同社の解読データを国際コンソーシアムに寄贈させる等の影響力を持っている等我が国にとってもメリットがあるものである。このためコンソーシアムの体制については、このメリットを生かしつつ、さらに効率的になるよう我が国としても積極的な提案を行っていきたい。Aの国内機関への外注の実施Bのインフォマティクスの強化は実施していきたいと考えている。また、Cのタイムスケジュールの確定については10月末に開催される国際コンソーシアムの2001年中間会合で議論し確定することとしている。また、先に述べたようにシンジェンタとは解読の精度が大きく違うため決して後追いではない。
    植物ゲノムの研究において、イネゲノムとともに、既に全塩基配列の解読が終了したシロイヌナズナ・ゲノムの解析成果は、植物全体の現象の解明に大きく貢献するものであることから、世界の植物研究をリードするために、今後両者の連携の強化を通じて、効率的かつ積極的な研究の促進を図るべき。  有識者懇談会でも示されているところだが、植物ゲノム研究を発展させ、世界をリードしていくためには、イネとシロイヌナズナの相違等を考慮に入れた上で双方のゲノム研究が連携していくことが必要であると認識しており、データ交換、共同研究を含め密接に研究交流を行い、研究を促進していきたい。