高齢者調査研究
「高齢者の雇用・就労を可能とする経済社会の実現のための大規模な調査研究」
初年度評価書
ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)は、平成11年12月、当時の小渕内閣総理大臣の下、新しいミレニアム(千年紀)の始まりを目前に控え、人類の直面する課題に応え、新しい産業を生み出す大胆な技術革新に取り組むこととして、始まった。
また、ミレニアム・プロジェクトの1つである「高齢者の雇用・就労を可能とする経済社会の実現のための大規模な調査研究」(以下「高齢者の雇用・就労の調査研究」という。)は、平成13年度末までに、高齢者の作業適性に関する調査を実施し、将来の勤務・作業形態、高年齢者対応機器等のあるべき姿を解明する大規模な調査研究プロジェクトを実施するものであり、7つの事業より構成されている。
具体的な事業内容の構築に当たっては、省庁横断的な取り組みと官民の十分な連携を図ることはもとより、明確な実現目標の設定、複数年度にわたる実施のための年次計画の明示や有識者による評価・助言体制の確立を図るとの新たな試みを取り入れている。
本評価・助言会議は、「高齢者の雇用・就労の調査研究」について評価・助言を行うために設置されているが、平成12年度が終了したことに伴い、各評価・助言委員からの意見に基づき、今般中間評価として「初年度の評価書」を以下のとおり取りまとめた。
※本評価・助言会議の構成員及び開催経緯については、別紙参照。
I 「高齢者の雇用・就労の調査研究」全般について
1 「高齢者の雇用・就労の調査研究」全体について
平成12年度までに実施された「高齢者の雇用・就労の調査研究」全体については、以下のとおり評価する。
- 本プロジェクトは、多様な研究項目・手法等により実施されてきており、しかも大部分が調査研究の中間段階であることから、現時点では統一的な全体評価は難しい。
- 個々のプロジェクトについては、各々今後の改善事項は指摘されるが、概ねテーマの設定や事業の進め方は適切と認められ、これまでの成果だけをみても研究の質、有用性の面から高く評価されるものも見受けられる。
- この中間段階までの個々の研究成果をもとに、それらの研究を高齢者の雇用・就労の促進により具体的に資する形に発展させることを期待する。
また、全体的観点からは、以下の点を指摘しておく。
- プロジェクトの実施に当たっての広報の仕方、研究の委託先や研究責任者の選定(女性の一層の参加、より広い研究分野からの参加)、研究内容と研究費の配分等について、事前の一層十分な検討が望まれる。
- 各事業間の連携を十分に図るべきであり、また、各関係機関や官民の連携を図るため、調査研究関係者が集まる会議の開催についても検討してはどうか。
- 研究成果を国民一般に広めるための体制作りの点では十分とはいえない面もあるように思われ、研究成果の公表については、印刷物等の分かり易い形で広く一般に公開し、最終的に、費用負担者である国民に対し、プロジェクトの成果が説明できるようにするべきである。
2 「高齢者の雇用・就労の調査研究」3〜6について
「高齢者の雇用・就労の調査研究」のうち、Uの3〜6の事業についての総括的評価は以下のとおりである。なお、個別の評価はUに記載する。
- 高齢者の雇用・就労について、理論的、実証的に整理した包括的な調査研究である。特に「5産業分野別高齢者活用モデルの総合的、実証的研究」及び「6高齢者の就業に係る安全確保や能力開発に係る専門的研究」の各調査研究のねらいは、高齢者が活躍できる社会の実現のために適切なものであると認められる。
- 高齢者の就業・雇用の問題を、伝統的な製造業や発展の期待される福祉産業といった働く場所に注目した視点や、情報通信技術への対応や安全面といった技術的側面に注目した視点から深く掘り下げている。
- それぞれの分析テーマに適した分析枠組みとして、経済学だけでなく、工学、経営学など多面的学問体系が活用されており、それぞれ当該分野の研究におけるベストメンバーでチームを構成していると認められる。
また、以下の点を指摘しておく。
- 各研究成果を相互に関連させ、高齢者雇用・就業についての総合的な政策含意を導出するとともに、得られた分析結果を一般に利用可能なデータベースとして整備するべきである。
- 「5A製造業における高齢者活用モデルの構築に関する研究」、「5CWebを活用した作業改善支援システムの構築に関する研究」、「6@高年齢労働者の安全と健康に配慮した作業負荷の評価基準の開発に関する調査研究」、「6A高年齢労働者の健康管理面に配慮したVDT作業に関する調査研究」の4つの調査研究は、調査目的に少々の違いが見られるが、高齢者対応型の職場づくりを目標にしているように思われ、連携がとれれば、さらにすばらしい成果になると思われる。
II 「高齢者の雇用・就労の調査研究」における各事業について
本事業は、社会保障制度の見直し、労働市場の伸縮性の回復など、高齢化経済社会へ向けての取組みが行われてきているドイツ、北欧諸国等における社会保障制度改革等、人口減少の経済・社会に与える影響の現況を調査するものである。
本事業は平成11年度に当初の予定どおり終了しているが、以下の点を指摘しておく。
- 海外の事例として、欧米先進諸国のみを取り上げることは疑問である。
- 先進事例調査の成果(女性の就業率・出生率の上昇と女性が働きやすい職場環境との関係)について、今後の「高齢者の雇用・就労の調査研究」の推進に当たっても活用すべきである。
- 実際の調査項目及び調査スケジュールを明記してほしい。
| 2 人口減少、高齢者の就労・雇用の経済社会への影響調査研究 |
本事業は、人口減少下における高齢化の進展が就労・雇用及び経済活動に与える影響を分析するとともに、望ましい経済社会システムの在り方を明らかにするものである。
本事業については、以下のとおり評価する。
- 海外の研究者、機関も含め、本共同研究プロジェクトをオープンな形で組織したことは、研究のあり方として高く評価すべきであり、個別研究項目に関して、ベストと考えられる研究機関や研究者を募って研究を進める手法は、今後政府の多くの部門で採用されるべきである。
- 個々の研究の質は、中間報告段階の研究成果を見ても高いものであると判断され、研究の手法についても、理論面では経済学の正統な枠組みに従い、実証面では最先端の計量的手法が用いられている。
- 海外に比べまだ十分とはいえないが、貴重な資料を自ら収集しているケースもあり、今後の研究の共通資産となりうる調査結果も多い。
- このプロジェクトは、既に3回、プロジェクトに参加した研究者と外部研究者による国際会議を開催しているが、プロジェクトに直接参加していない研究者によるコメントを得ることは、研究の質を担保する上で有益である。また、このような機会を通じて、プロジェクトの成果を積極的に内外に問うことも評価できる。
また、以下の点を指摘しておく。
- 本研究プロジェクトは、高度に専門化されており、いわば知的公共財というべきものである。したがって、研究の意義・価値を国民一般にわかりやすく広報していくことも大切である。
- 研究者が経済学者に偏りすぎている。
- 今後の研究において利用可能な研究手法や研究枠組みを提示してほしい。
- 本プロジェクトの最後に日本社会への提言がなされることを期待する。
| 3 高齢者の活用に係る国内外の先進事例の収集・分析 |
本事業は、欧米諸国における高齢者雇用の制度と実態、企業の高齢者活用に係る先進事例等を収集し、分析するものである。
| 4 内外の専門家による高齢者の雇用・就労の促進のための経済的社会的対応に関する共同研究の推進 |
本事業は、内外の高齢者雇用・就業に関する専門家による研究成果の発表、討議を行うことにより、我が国の高齢者雇用・就業の促進のための方策を研究するとともに、団塊の世代を中心として仕事と生活等のライフスタイルの実態を明らかにし、将来の引退過程におけるソフトランディングのあり方等を研究するものである。
3(平成12年度に実施)及び4(平成13年度に実施)は、一貫した調査研究であるため、両者を合わせて、以下の点を指摘しておく。
- 海外の先進事例の紹介が欧米先進国に偏りすぎている。高齢者の能力活用という点では、アジアに学ぶことも必要である。
- 平成13年度本格実施予定の「中高年労働者のライフスタイルと人事労務管理の課題に関する研究」は、高齢者を主体とした他の研究と異なり団塊の世代を主体としていることから、成果に期待したい。
| 5 産業分野別高齢者活用モデルの総合的、実証的研究 |
本事業は、企業又は産業分野ごとに高齢者雇用モデルの提示と、それらの取組みを支援する一般的なシステムの構築を行うとともに、企業退職後も視野に入れたボランティア・NPO活動等多様な雇用・就業地域モデルの構築を目指すものである。本事業は、さらに[1]から[7]までの事業に細分されている。
- 60歳代前半層の雇用延長の制度化を進めるための方策に関する研究
本事業は、様々な形態をとっている高齢者雇用制度と各企業の人事労務管理等の諸特性との関連を調査し、60歳から65歳までの雇用延長への移行に向けて各企業の課題解決のための実証モデルを構築するものである。
本事業については、以下のとおり評価する。
- 理論構築、実証分析手法ともに手堅い質の高い研究であると認められる。
- 60歳台前半への雇用延長は、これまで多くの調査研究が行われてきた分野であり、本調査研究において、文献の整理や、既存統計、既存調査の再分析が行われ、既存調査研究の成果を最大限活用することは適切な進め方である。
- 13年4月より年金支給開始年齢(定額部分)の延伸が開始され、相当数の企業で新たに雇用延長の施策がとられ始めた段階で、その実態を調べることは時宜にかなっており、実施先行事例や導入検討事例に関する調査を行っていることは、研究の手順として適切な進め方である。
- 高齢者雇用に関する制度の実施状況等の企業アンケート調査の結果は、資料的にも価値の高いものであり、研究終了後は当該研究分野の公共財となりうるものとして期待される。
また、以下の点を指摘しておく。
- 企業が持続可能な雇用延長制度を確立していく上では、人事労務管理体系などの経営システム全体の見直しが必要不可欠であると考えられるが、13年度の企業調査の実施に当たっては、そうした論点を明確にすることが望まれる。
- 企業調査だけでなく、実際に雇用延長を経験した人々の調査も必要である。
- 企業調査に当たっては、厚生労働省による定年延長奨励策の効果についても調査すべきである。
- 12年度の事例調査の対象産業分野はやや製造業に偏っているようにも思えるので、今後の産業構造の変化を考えると、非製造業分野の雇用延長問題についても研究を蓄積していくことが必要である。
- 製造業における高齢者活用モデルの構築に関する研究
本事業は、現に多くの高齢者が従事している製造業の中で、継続雇用制度の導入に向けての本格的な取組をスタートさせている電機産業における高齢者対応の製造・組立てモデルラインを構築・提供することによって、製造業における継続雇用制度の前進を図るものである。
本事業については、以下のとおり評価する。
- 高齢者対応型モデルの提案とモデル設計のための考え方、方法の標準化とそのビジュアル化に大いに期待する。計画通り進捗させてほしい。
- 現在の労働形態を代表する筋作業と視覚作業の問題であること、高齢者の活用を進める上で技術・機械体系の改良が必要とされる場合が多いことから、成果に期待する。
- 研究方法として二つの先進事例を取り上げ、技術と労働の両面にわたって厳格な分析を行い、そこからより一般的なモデル体系を構築しようとしている点はうなずける。
また、以下の点を指摘しておく。
- 筋作業、視覚作業に特有な自覚的症状や愁訴及び身体部位等をキーワード化し、専門家でなくても当該キーワードを使って、職場改善対策のための検索を容易にするようなシステムが必要である。
- 12年度実施した大量調査(アンケート調査)は調査単位が企業・事業所であることから、個別の製造ラインのレベルに降りた情報を得る上では限界がある。限界を克服するためには、少数企業について、製造ラインレベルに降りた量的調査又はインタビュー調査を充実させる方法が考えられる(ただし本研究の主眼である少数事例の厳密な研究に基づくモデル構築作業を優先すべきであるので、そうした方法が有益かどうか慎重に考慮する必要がある)。
- 介護分野における高齢者活用モデルの構築に関する研究
本事業は、特別養護老人ホーム等の介護施設で働くケアワーカー(寮母、寮父)等の職務の再設計(職務の細分化、それに基づく分業化及び作業の軽減化等)を行い、高齢者の雇用・就業の拡大に資するモデルを構築し幅広く提供するものである。
本事業については、以下のとおり評価する。
- 介護者数が十分でない現状を考慮すれば非常に関心のあるテーマであり、特に13年度に予定されている「どのような条件整備をすれば高齢者活用が可能か」に対する成果を期待する。
- 12年度の調査研究により、既に介護職員の24時間調査から得られた業務間時間配分の実態等、貴重な発見が行われており、13年度には介護分野への高齢者雇用を促すための方策を探ることとしていることから、さらに多くの貴重な知見が得られることが期待される。
また、以下の点を指摘しておく。
- 本研究は、施設における介護職を想定しているが、高齢者の能力活用という意味では、平成13年度には在宅ケア(家事援助等)にも注目すべきである。
- 本研究において、施設介護のあり方と、家族介護やヘルパーによる在宅介護のあり方の違いについて検討することにより、施設介護のあり方についても新たな視点を獲得する可能性があり得る(ただし調査研究の資源の分散を招かないよう注意を払う必要がある)。
- 身体介護は重労働であり、高齢者には肉体的に困難な面があることに留意すべきである。
- Webを活用した作業改善支援システムの構築に関する研究
本事業は、職場における作業負担を軽減することにより高齢者対応型の職場創出を行うため、各種産業において、"いつでも""どこでも""誰でも"利用可能なWeb(インターネット情報網)を利用した作業改善支援システムを開発・構築するものである。
本事業については、以下のとおり評価する。
- 現在の労働形態を代表する筋作業の問題であり、成果に期待する。
- 急速に進む情報技術を高齢化に伴う諸問題の解決に応用することは重要な課題である。
- 12年度に実施した改善事例データ収集のための企業調査において、中小企業を含め164の対象企業がリストアップされ、そのうちの相当数(26社)からデータが収集され、13年度も調査は継続される。このシステムに対する利用者としては独自のシステム構築が困難な中小企業が多く考えられることから、この対象設定は適切である。
また、以下の点を指摘しておく。
- 筋作業に特有な自覚的症状や愁訴及び身体部位等をキーワード化し、専門家でなくても当該キーワードを使って、職場改善対策のための検索を容易にするようなシステムが必要である。
- 本システムが企業、とりわけ中小企業で活用されるために何が必要かを考える上で、作業姿勢負担の改善に焦点を当てた本調査研究の対象領域と、その他の作業改善への取り組み全般との関わりについて、可能な範囲内で考察しておくことが望ましい。
- 情報化対応職務能力診断システムの構築に関する研究
本事業は、IT化に中高年ホワイトカラーが適応していくために職務適応能力を自己診断するための職務能力自己診断・評価チェックリスト及びそれに付随する精神・運動機能診断テストを開発し、それに基づき職務能力を診断・評価し支援するためのサポートシステムの構築を行うものである。
本事業については、以下のとおり評価する。
- 中高年ホワイトカラーにとって急速に進展する情報技術は雇用問題を悪化させる方向で働きうる。こうした人々が情報技術に適応していく上で必要な職務能力を評価・診断し、それに基づくサポートシステムを構築する本研究は、課題の重要性は明確であるし、政策的含意が大きい。
- 12年度に実施した3つのワーキンググループ(部課長職の職務能力、ソフトウェア技術者の職務能力、精神・運動系機能診断)の調査研究は、それぞれ興味深い知見を生み出している。
また、以下の点を指摘しておく。
- 13年度は3つのワーキンググループの研究成果を適切に結合して実効性あるシステムの構築が必要となる。分野の異なる研究者による共同研究であるため、成果の結合は容易でないと予想されるが、十分な注意と独自の工夫が求められる。
- 中高年ホワイトカラーのキャリアデータベースの構築に関する研究
本事業は、事務系ホワイトカラーのキャリア開発・エンプロイアビリティ(雇用能力)の向上支援を図るため、標準的なキャリアシート(職務経歴書)とその作成システムの開発等を行うものである。
本事業については、以下のとおり評価する。
- 特に事務系中高年ホワイトカラーは、その職業能力の対象化が困難であるために転職に当たって多くの問題が発生している。中高年ホワイトカラーが職務経歴書を作成するのを支援するシステムを構築する本研究の基本的アイデアの意義は明確である。
- 本研究の特徴は、単にキャリアシートやその作成システムの構築にとどまることなく、経歴書の内容が求人者に正しく理解されるための職務経験を表現する言語についての共通理解、言い換えれば共有された辞書を開発し、システムに組み込むことである。これは野心的な目標であるが、この方向で進展が見られれば、その効果は大であると期待する。
- ワーキンググループのメンバーは、ホワイトカラーの職業紹介に係わるビジネスに携わってきた実務家であり、その経験の蓄積が広く共有されるようなシステムとして結実することを期待したい。
本事業については、以下の点を指摘する。
- 目標が野心的であるだけに、一挙に完成品ができあがるとは考えにくいので、その後、多くの関係者からのインプットにより改善できるようなシステムとして構想していくことが必要である。
- 女性の利用者も念頭においてシステム設計を考えるべきである。
- 福祉・生活関連サービスにおける高齢者の雇用・就業地域モデルの構築に関する研究
本事業は、高齢社会における高齢者の就業ニーズの多様化のなかで、福祉・生活関連サービス分野を中心に、高齢者の就業、起業・創業、NPOへの参加等の社会活動促進方策を提示するものである。
本事業については、以下のとおり評価する。
- 高齢化社会では、高齢者のニーズは多様化し、従来の企業への雇用とは異なる地域での就業・活躍の場(NPO・ボランティア活動等)が開けてくるものであり、その点で本テーマは時宜にかなっており、注目される。
- 12年度は既に団体等へのインタビュー調査、個人アンケート調査、中間支援団体へのインタビュー調査などを実施済みであり、13年度にこれらを踏まえて高齢者の新たな活動の場モデルの構築を図ることとしているのは、妥当な計画である。
また、以下の点を指摘しておく。
- もし余力があれば、アンケート調査の協力者などを対象に何件かの個人インタビュー調査を実施してみるとよい。分析・整理において、データを解釈していく上で役立つものと考える。
- 日本国内の活動参加者のアンケート調査や団体ヒアリングだけでは十分でない面もあり、NPO・ボランティア活動の盛んな米国の調査も必要ではないか。
- NPO活動を盛んにし、高齢者の参加を促進するためには法律整備も必要と考える。研究会メンバーに法律の専門家が含まれていないのは気がかりである。
- 強いて言えば福祉、生活関連の分野では、高齢者の就業が、健康維持や生きがいの維持につながり、ひいては医療費の削減をもたらすという面もあり、研究の中で取り上げるべきである。
| 6 高齢者の就業に係る安全確保や能力開発に係る専門的研究 |
本事業は、従来の学問的研究成果を元に、高齢者が安全に働きやすい職場について実証的な調査研究を実施するとともに、今後高齢者の雇用が見込まれる分野に向けての効果的な職業訓練のあり方等について研究を行い、高齢者の雇用促進に資するものである。本事業は、さらに@からBまでの調査研究に細分されている。
- 高年齢労働者の安全と健康に配慮した作業負荷の評価基準の開発に関する調査研究
本事業は、高年齢労働者が過度の身体的負担を受けることによる労働災害・疾病を防止するため、作業負荷の許容基準及び事業場で作業負荷を判定できる方法の開発を行うものである。
本事業については、以下のとおり評価する。
- 平成13年度の最終成果たる「事業場が作業負荷を判定する方法の開発」は、高齢者だけでなく労働の場全体に対してかなりの波及効果をもたらすものと考えられ、その成果に大いに期待する。
- 従来高齢者就業のネックと考えられてきた労働安全の面に関する掘り下げた研究は、政策的含意が大きい。
- 高年齢労働者の健康管理面に配慮したVDT作業に関する調査研究
本事業は、高年齢労働者が過度の負担を感じることなくVDT作業を行うことができるため、高年齢労働者の健康管理面に配慮したVDT作業の進め方、VDT機器が備えるべき要件・機能等についての提言を行うものである。
本事業については、以下のとおり評価する。
- 現在の労働形態を代表する視覚作業の問題であり、成果に期待する。
また、以下の点を指摘しておく。
- 研究成果がよく利用されうるものであり、視覚作業に特有な自覚的症状や愁訴及び身体部位等をキーワード化し、専門家でなくても当該キーワードを使って、職場改善対策のための検索を容易にするようなシステムが必要である。
- 高齢者に対する訓練及び訓練手法のあり方についての調査研究
本事業は、新規・成長分野を始めとする雇用吸収力が見込める分野に高齢者が就労するための効果的な職業訓練のあり方等を調査研究し、その分野への就業誘導を目指すものである。
本事業については、以下の点を指摘しておく。
- NPO・ボランティア活動における高齢者の能力活用のための職業訓練にも目配りすべきである。
| 7 高齢者対応機器の設計のための高齢者特性の解明に関する調査研究 |
本事業は、高齢者が使用しやすく、安全で、効率の良い生産設備・機器の設計支援のため、高齢者の生産場面等において比較的共通的に現れる操作・作業場面を抽出し、開発した人間特性計測装置を用いて、機器を使用する際の高齢者の特性を計測し、得られたデータを統計的に分析し、高齢者の機器使用特性等の傾向・分布等を把握するとともに、「高齢者の身体特性データベース」「製品等の設計・評価指針」を策定・公表するものである。
本事業については、以下のとおり評価する。
- 高齢者特性データベースは今後の利用価値も高い。地道で堅実な研究であり、高く評価したい。
- 13年度目標は、今後社会的にますます求められることが予想される。最終報告に期待する。
以上。
(別紙)
高齢者調査研究評価・助言会議委員名簿
| 議長 | 清家篤慶 | 應義塾大学商学部教授 |
| 委員 | 袖井孝子 | お茶の水女子大学生活科学部教授 |
| 谷井克則 | 武蔵工業大学工学部教授 |
| 仁田道夫 | 東京大学社会科学研究所所長 |
| 養老孟司 | 北里大学一般教育総合センター教授 |
| (50音順、敬称略) |
高齢者調査研究評価・助言会議の開催経緯
- 平成12年6月5日
第1回高齢者調査研究評価・助言会議
- ○各事業毎に実施省庁が定めた調査研究の内容、方法、年度毎の達成目標について事前に評価を行った。
- 平成13年3月26日
第2回高齢者調査研究評価・助言会議
- ○平成12年度までの、事業の実施報告を行った。
- 平成13年6月12日
第3回高齢者調査研究評価・助言会議
- ○平成12年度までの達成目標に照らして、調査研究内容等について、中間評価を行い、「初年度の評価書」を取りまとめた。