高齢者調査研究

「高齢者の雇用・就労を可能とする経済社会の実現のための
大規模な調査研究」 最終評価書

平成14年6月26日
高齢者調査研究評価・助言会議


 ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)は、平成11年12月、当時の小渕内閣総理大臣の下、新しいミレニアム(千年紀)の始まりを目前に控え、人類の直面する課題に応え、新しい産業を生み出す大胆な技術革新に取り組むこととして、始まった。
 また、ミレニアム・プロジェクトの1つである「高齢者の雇用・就労を可能とする経済社会の実現のための大規模な調査研究」(以下「高齢者の雇用・就労の調査研究」という。)は、平成13年度末までに、高齢者の作業適性に関する調査を実施し、将来の勤務・作業形態、高年齢者対応機器等のあるべき姿を解明する大規模な調査研究プロジェクトを実施するものであり、7つの事業より構成されている。
 具体的な事業内容の構築に当たっては、省庁横断的な取組みと官民の十分な連携を図ることはもとより、明確な実現目標の設定、複数年度にわたる実施のための年次計画の明示や有識者による評価・助言体制の確立を図るとの新たな試みを取り入れている。
 本評価・助言会議は、「高齢者の雇用・就労の調査研究」について評価・助言を行うために設置されているが、平成13年度が終了したことに伴い、各評価・助言委員からの意見に基づき、今般「最終評価書」を以下のとおり取りまとめた。
 ※ 本評価・助言会議の構成員及び開催経緯については、別紙参照。


T 「高齢者の雇用・就労の調査研究」全般について

1「高齢者の雇用・就労の調査研究」全体について

 平成13年度までに実施された「高齢者の雇用・就労の調査研究」全体については、以下のとおり評価する。

  •  本プロジェクトは、それぞれの分野において定評のある研究者を構成員に選び、また方法論的にも当該分野で標準的とされ、あるいは最先端とされている手法によって調査・分析を行っていると認められる。
  •  本プロジェクトは、それぞれの分野で結果の内容を記した冊子を編纂し、あるいは広範な専門家を交えた会議を公開するといった方法で広く一般の意見を取り入れる努力が認められる。また内容的にも、学問水準の向上への寄与、政策上の含意、あるいは実用的な有用性といった社会的有用性を認められるものである。
  •  それぞれの調査研究は、先駆性、新規性を含んでおり、提言内容も理解、納得できるものである。今後の高齢者の雇用と就労に関する「政策」、「研究」、「実現」にとって非常に示唆に富んでおり、企業側に対して各種対策の手がかりやヒントを提供できるものと思われる。
 また、全体的な観点からは、以下の点を指摘しておく。

  •  各プロジェクト間の連携強化という点では不十分の感があり、これから各プロジェクトの成果を政府一体となって実施することで、埋め合わせていってほしい。
  •  本プロジェクトにおいて、研究相互の連関を踏まえた骨太な全体像の提示を総論として行うことができれば、研究成果を一層明確な形で社会に還元し、政策形成にも参考になったのではないか。一つの考え方として、プロジェクト全体を統括する研究面でのリーダーを置き、班編成を含めてその研究リーダーのリーダーシップを発揮させて、研究全体をコーディネートする方法論がありうる。他方、調査研究の方法には、分権的に専門分野に即して先端的課題の追求することが適切であるという考え方もありうるが、この場合には、さまざまな研究者・研究グループによるプロポーザル(提案)を競争させ、研究者集団によるピアレビュー(相互評価)を介在させて選考し、研究を進めていくことが普通であり、有効である。今後の政策的プロジェクト研究推進においては、そうした方法論的観点をあらかじめ明確にしておくことが重要である。
  •  中間評価以後小幅な手直しはあったが、事前評価ができなかったため、本プロジェクトの大きな変更ができなかったのが残念である。
  •  社会保障制度や労働市場などマクロ面に偏っており、生活面への配慮が少ない。本プロジェクトへの女性の研究者の参加が少ないことが、研究の方向性に歪みを生じさせているように思われる。
  •  経済成長の持続という目標が厳しいと思われる中で日本がどのような国のかたちを展望するのかが、もう少し明白になると良かった。
  •  高齢者の問題はそれを支える若年人口や年少人口の問題でもあるので、未婚化、晩婚化の原因や若者の将来不安など少子化にもっと注目すべきであった。
  •  本プロジェクトの成果は、年金、医療、少子化対策、高齢者雇用、女性の就業継続など省庁の壁を超えて、現在進行している政策形成のための議論に広く活用してほしい。
  •  本プロジェクトの成果は、実際の労働場面や企業活動に応用されるべきであり、現場に成果を届ける必要がある。また、一般にも分かりやすいかたちで発表してほしい。データの一般への公開も期待したい。
  •  厚生労働省の普及版は分かりやすい。企業、組合関係、福祉施設などに配布してほしい。
  •  テーマをしぼって、一般向けの講演会やシンポジウムをし、結果を新聞発表してはどうか。
  •  福祉関係者や製造業など、特定の関係者を対象にしたセミナーを開催することも可能である。
  •  高齢化先進国として日本がどのような方向をたどるかは大いに注目されるところであり、今回の研究成果をアジア諸国に伝える努力をしてほしい。
  •  少なくても数年後に、本調査研究が中高年齢者の雇用・就労を可能とする経済社会の実現のために有益であったと他方面から評価されることを期待している。そのためにも成果普及の情報発信を継続する必要があると思われる。
  •  本研究の評価に携わったのは、結果の段階からであるので、主題の選び方により適切なやり方があったのではないか、という疑問は残る。高齢化対策という主題からすれば、高齢者の積極的な社会参加を目指す主題だけではなく、むしろ老人医療の適切性のような、議論の余地があって社会的には差し障りがあるが、経済的に重要な問題をも取り上げるべきではなかったか。そうすれば、社会的コストの節約自体も主題となるので、研究コスト(コストパフォーマンスの点で、いまだ研究についての客観評価の基準がない)のみが問題になることはない。
  •  全体が行政的な研究なのだから、純粋に研究として評価すべきかどうかという疑点がある。行政は与えられた枠内で行われるものであり、その評価はまったく社会的に行われるしかない。こうしたケースでの評価は、研究結果がどのように公開され、どのように利用されたかという調査によるべきである。行政的研究については、研究の経過や結果を論文、書物、口頭発表だけではなく、インターネットのような形で可能な限り詳細に公表するということで、評価に換えるというのがもっともよい評価方法ではないか。

2「高齢者の雇用・就労の調査研究」3〜6について

 「高齢者の雇用・就労の調査研究」のうち、Uの3〜6の事業についての総括的評価は以下のとおりである。なお、個別事業ごとの評価はUに記載する。
  •  高齢者が年齢に関わりなく働き続けることができる職場環境について、個別具体的な検討を加えたもので、政策的・実用的に価値の大きなものと評価できる。特に高齢者の活用を一般論ではなく、具体的なモデルというかたちで産業分野別に分析したことは、こうした研究の応用可能性を数歩前進させたものとなろう。
  •  高齢者就業に関わる安全確保や能力開発について、工学的な研究を含めて深い考察を加えていることは科学的根拠をもとにした経営、政策の実現という視点から高く評価されるものであり、高齢者雇用についてのビジネスモデルを提示したといってもよい。
  •  研究の広報体制において、研究成果を一般向けにわかりやすく冊子等にまとめる努力をしている
 また、以下の点を指摘しておく。
  •  本調査研究で提出されたモデルを広めるための動機付けについての政策手法を開発することが課題である。
  •  高齢者の雇用・就業に偏りすぎており、世代間の関係や若者が持つ高齢者のイメージなど、若年世代にも目配りが欲しかった。


U 「高齢者の雇用・就労の調査研究」における各事業について

1 世界の先進事例調査

 本事業は、社会保障制度の見直し、労働市場の伸縮性の回復など、高齢化経済社会へ向けての取組みが行われてきているドイツ、北欧諸国等における社会保障制度改革等、人口減少の経済・社会に与える影響の現況を調査するものである。

2 人口減少、高齢者の就労・雇用の経済社会への影響調査研究

 本事業は、人口減少下における高齢化の進展が就労・雇用及び経済活動に与える影響を分析するとともに、望ましい経済社会システムの在り方を明らかにするものである。
 1(平成11年度に実施)及び2(平成12年度、13年度に実施)は、一貫した事業であるため、両者を合わせて、以下のとおり評価する。

  •  本研究は、当該分野における国内外の研究者を組織して、学問的水準の高い研究を実現させたという点で評価できる。特に雇用や年金などを巡る様々な論点を整理したこと、その論点の一部について最先端の理論と現在利用可能な最良の統計資料によって質の高い経済分析を加えたことは高く評価できる。
  •  運営手法上、数度の国際会議を開催し、研究者相互の意見交換と情報共有を図ったことは、この分野における研究資源の蓄積という視点で有益であった。また、このような場を通じて日本から世界へ向けた情報発信を行ったことも評価できる。
  •  年金、医療など現在の日本社会にとって急を要する課題に取り組んでおり、現在、政府で進行しつつある制度改革に反映されることを期待したい。
  •  育児休業制度や保育所への入所しやすさなどが出生率の向上に与える効果を数量的に明らかにしており、示唆するところが大である。
 また、以下の点を指摘しておく。
  •  本プロジェクトによる基礎的な研究蓄積を具体的な政策の実施にどう反映させるかが今後の課題である。
  •  今後、研究結果を国民向けに分かりやすく解説、広報するような工夫をさらに講じてほしい。
  •  研究成果を日本語にして発表してほしい。

3 高齢者の活用に係る国内外の先進事例の収集・分析

 本事業は、欧米諸国における高齢者雇用の制度と実態、企業の高齢者活用に係る先進事例等を収集し、分析するものである。

4 内外の専門家による高齢者の雇用・就労の促進のための経済的社会的対応に関する共同研究の推進

 本事業は、内外の高齢者雇用・就業に関する専門家による研究成果の発表、討議を行うことにより、我が国の高齢者雇用・就業の促進のための方策を研究するとともに、団塊の世代を中心として仕事と生活等のライフスタイルの実態を明らかにし、将来の引退過程におけるソフトランディングのあり方等を研究するものである。
 3(平成12年度に実施)及び4(平成13年度に実施)は、一貫した調査研究であるため、両者を合わせて、以下のとおり評価する。
  • これらの事業については、おおむね適切なものであったと認められる。

5 産業分野別高齢者活用モデルの総合的、実証的研究

 本事業は、企業又は産業分野ごとに高齢者雇用モデルの提示と、それらの取組みを支援する一般的なシステムの構築を行うとともに、企業退職後も視野に入れたボランティア・NPO活動等多様な雇用・就業地域モデルの構築を目指すものである。本事業は、さらに@からFまでの事業に細分されている。

@60歳台前半層の雇用延長の制度化を進めるための方策に関する研究
 本事業は、様々な形態をとっている高齢者雇用制度と各企業の人事労務管理等の諸特性との関連を調査し、60歳から65歳までの雇用延長への移行に向けて各企業の課題解決のための実証モデルを構築するものである。
 本事業については、以下のとおり評価する。
  •  本調査研究においては文献の整理や既存統計・調査の再分析など既存調査研究の成果が活用されており、このような点から見て適切な進め方である。
  •  年金支給開始年齢の延伸の開始に対応して、相当数の企業で雇用延長の施策がとられ始めた段階で、実施先行事例等についての調査を行っていることは、時宜にかなっている。
  •  12年度はやや製造業に偏った研究であったが、13年度は製造業以外の多様な産業の企業について追加調査が行われ、バランスのとれたものとなっている。
 また、以下の点を指摘しておく。

  •  高齢者の雇用促進という課題がある一方、職業生活から引退生活への段階的な移行が奨励されており、高齢者に相応しい働き方(パート、部分就労、ワークシェアリング、有償ボランティアなど)も考えられるであろう。

A製造業における高齢者活用モデルの構築に関する研究
 本事業は、現に多くの高齢者が従事している製造業の中で、継続雇用制度の導入に向けての本格的な取組をスタートさせている電機産業における高齢者対応の製造・組立てモデルラインを構築・提供することによって、製造業における継続雇用制度の前進を図るものである。
 本事業については、以下のとおり評価する。
  •  機械の技術的体系に労働・雇用のあり方が規定される度合いの強い製造業において、高齢者の活用を進める上で、技術・機械体系の改良が必要とされる場合が多いと考えられ、この調査研究の課題の重要性は明らかである。
  •  研究方法として2つの先進事例を取り上げ、技術と労働の両面にわたって厳格な分析を行っている。これにより、作業集約化方式を高齢者活用生産システムのモデルとして利用する可能性が検証されている。
  •  事例研究の補足として、大量調査・インタビュー調査が併用されており、特に作業集約化方式採用企業の調査は類例が少ないため、有益である。

B介護分野における高齢者活用モデルの構築に関する研究
 本事業は、特別養護老人ホーム等の介護施設で働くケアワーカー(寮母、寮父)等の職務の再設計(職務の細分化、それに基づく分業化及び作業の軽減化等)を行い、高齢者の雇用・就業の拡大に資するモデルを構築し幅広く提供するものである。
 本事業については、以下のとおり評価する。
  •  高齢者雇用問題を発生させる社会状況は、同時に高齢者介護問題を発生させるが、高齢者介護への高齢者の活用が可能になれば、これらの問題が同時に解決されるという点で、本調査研究の重要性は明瞭である。
  •  12年度の調査研究では、介護職員の24時間調査から得られた業務間時間配分の実態など、貴重な発見が行われており、13年度においては、これを踏まえて、介護分野で高齢者を活用する際に必要とされる職務再設計の方法についての技術的検討や介護現場での雇用管理制度の見直しなど高齢者活用に関する社会的条件の検討が行われ、興味深い知見が得られている。
  •  実際における介護業務への高齢者の新規採用の難しさをかんがえると、本研究の成果が直ちに高齢者の雇用促進に結びつくとは思われないが、介護という職業の客観的な職務分析はこれまでに行われたことがなく、その点で評価できる。

CWebを活用した作業改善支援システムの構築に関する研究
 本事業は、職場における作業負担を軽減することにより高齢者対応型の職場創出を行うため、各種産業において、"いつでも""どこでも""誰でも"利用可能なWeb(インターネット情報網)を利用した作業改善支援システムを開発・構築するものである。
 本事業については、以下のとおり評価する。

  •  高齢化が進む現代は、同時に情報革命が進む時代でもあり、急速に進む情報技術を高齢化に伴う諸問題の解決に応用することは、重要な課題である。
  •  企業調査において、中小企業を含め164の対象企業がリストアップされ、そのうちの相当数(35社)の企業からデータを収集しており、これら調査データに基づくデータベースを活用して、職場改善チェックシステムが構築されている。このシステムに対する利用者としては独自のシステム構築が困難な中小企業が多く考えられることから、この対象設定は適切である。
  •  作業姿勢負担の改善に焦点をあてた分析は高齢者が仕事を継続していく上で、重要な隘路であり、この研究によって開発されたシステムが各企業、とりわけ中小企業で活用されることを期待したい。
  •  本調査研究により、労働の場での安全性の確保や生産性の向上につなげることができる。また、高齢者に限らず、一般にも適用が可能である。
 また、以下の点を指摘しておく。

  •  職場改善チェックシステムを有効化するためには、データベースの充実に加えて、高齢者自身にパソコンを使える能力が必要であるが、現時点ではかなり難しいと思われる。

D 情報化対応職務能力診断システムの構築に関する研究
 本事業は、IT化に中高年ホワイトカラーが適応していくために職務適応能力を自己診断するための職務能力自己診断・評価チェックリスト及びそれに付随する精神・運動機能診断テストを開発し、それに基づき職務能力を診断・評価し支援するためのサポートシステムの構築を行うものである。
 本事業については、以下のとおり評価する。
  •  従来高齢者就業のネックと考えられてきた情報通信機器利用技術等の面に関する掘り下げた研究は、政策的含意が大きい。中高年ホワイトカラーにとって急速に進展する情報技術は雇用問題を悪化させる方向で働きうる。こうした人々が情報技術に適応していく上で必要な職務能力を評価・診断し、それに基づくサポートシステムを構築しようとする本研究の課題の重要性は明確である。
  •  中高年者だけでなく、若年労働者にも応用可能であり、今後広範な利用が期待される。
 また、以下の点を指摘しておく。

  •  本調査研究で構築されたシステムが実際にどれほど活用されるかは、活用結果に基づくデータベースの充実に依存し、実際の利用促進が研究成果そのものにはね返ってくることになろう。

E 中高年ホワイトカラーのキャリアデータベースの構築に関する研究
 本事業は、事務系ホワイトカラーのキャリア開発・エンプロイアビリティ(雇用能力)の向上支援を図るため、標準的なキャリアシート(職務経歴書)とその作成システムの開発等を行うものである。
 本事業については、以下のとおり評価する。
  •  特に事務系中高年ホワイトカラーは、その職業能力の対象化が困難であるために転職に当たって多くの問題が発生している。中高年ホワイトカラーの職務経歴書の作成支援のためのシステムを構築しようとする本研究の基本的アイデアの意義は明確である。
  •  ワーキンググループのメンバーは、ホワイトカラーの職業紹介に係わるビジネスに携わってきた実務家であり、その経験の蓄積が広く共有されるようなシステムとして一応の完成をみている。
  •  中高年だけでなく、若年労働者にも応用可能であり、今後広範な利用が期待される。
 また、以下の点を指摘しておく。

  •  目標が野心的であるだけに、一挙に完成品ができあがるとは考えにくいので、その後、多くの関係者からのインプットにより改善していくことが望まれる。

F 福祉・生活関連サービスにおける高齢者の雇用・就業地域モデルの構築に関する研究
 本事業は、高齢社会における高齢者の就業ニーズの多様化のなかで、福祉・生活関連サービス分野を中心に、高齢者の就業、起業・創業、NPOへの参加等の社会活動促進方策を提示するものである。
 本事業については、以下のとおり評価する。
  •  高齢者の能力活用という面では、正規雇用だけでなく、NPO・ボランティア活動が重要である。その点で本テーマは注目される。高齢化社会においては、高齢者のニーズは多様化し、従来の企業への雇用とは異なる地域での就業・活動の場が開けてくると考えられる。この調査研究では、福祉・生活関連サービス分野におけるそうした就業・活動の場が発展する可能性とその条件についての研究が行われており、時宜にかなった研究である。
  •  団体等へのインタビュー調査、個人アンケート調査、中間支援団体へのインタビュー調査などを実施した上で、高齢者の新たな活動の場モデル(NPOや婦人会などの既存地域団体の連携によるコミュニティプラットフォームの形成)の構築が追求されており、意欲的な調査研究である。
  •  コミュニティプラットフォームというモデルは、高齢者のみでなく、世代を超えて適用できるものであり、高齢者と若者世代の交流を促進することも可能であり、興味深い。

6 高齢者の就業に係る安全確保や能力開発に係る専門的研究

 本事業は、従来の学問的研究成果を元に、高齢者が安全に働きやすい職場について実証的な調査研究を実施するとともに、今後高齢者の雇用が見込まれる分野に向けての効果的な職業訓練のあり方等について研究を行い、高齢者の雇用促進に資するものである。本事業は、さらに@からBまでの調査研究に細分されている。

@ 高年齢労働者の安全と健康に配慮した作業負荷の評価基準の開発に関する調査研究
 本事業は、高年齢労働者が過度の身体的負担を受けることによる労働災害・疾病を防止するため、作業負荷の許容基準及び事業場で作業負荷を判定できる方法の開発を行うものである。
A 高年齢労働者の健康管理面に配慮したVDT作業に関する調査研究
 本事業は、高年齢労働者が過度の負担を感じることなくVDT作業を行うことができるため、高年齢労働者の健康管理面に配慮したVDT作業の進め方、VDT機器が備えるべき要件・機能等についての提言を行うものである。
B 高齢者に対する訓練及び訓練手法のあり方についての調査研究
 本事業は、新規・成長分野を始めとする雇用吸収力が見込める分野に高齢者が就労するための効果的な職業訓練のあり方等を調査研究し、その分野への就業誘導を目指すものである。

 これら3つの事業については、以下の点を指摘しておく。
  •  本調査研究により、作業負担の軽減や労働の場での安全性の確保を図り、生産性の向上につなげることができる。これは、高齢者に限ったことではなく、一般にも適用が可能である。

7 高齢者対応機器の設計のための高齢者特性の解明に関する調査研究

 本事業は、高齢者が使用しやすく、安全で、効率の良い生産設備・機器の設計支援のため、高齢者の生産場面等において比較的共通的に現れる操作・作業場面を抽出し、開発した人間特性計測装置を用いて、機器を使用する際の高齢者の特性を計測し、得られたデータを統計的に分析し、高齢者の機器使用特性等の傾向・分布等を把握するとともに、「高齢者の身体特性データベース」「製品等の設計・評価指針」を策定・公表するものである。
 本事業については、以下のとおり評価する。
  •  実用性の高い有益な研究である。
  •  高齢者の人体計測、筋力・視力・聴力などの測定は、労働の場のみでなく、衣服のサイズやデザイン、住宅や都市構造のバリアフリー化にも応用が可能である。
  •  データベースの充実によってファッション産業や建築・都市関連の分野にも生かすことができる。
 また、以下の点を指摘しておく。

  •  6の調査研究とかかわりが深く、今後とも両者の連携が必要である。
以上。

(別紙)

高齢者調査研究評価・助言会議委員名簿
議長清家篤慶應義塾大学商学部教授
委員袖井孝子お茶の水女子大学生活科学部教授
谷井克則武蔵工業大学工学部教授
仁田道夫東京大学社会科学研究所所長
養老孟司北里大学一般教育・総合センター教授
(50音順、敬称略)
 

高齢者調査研究評価・助言会議の開催経緯


平成12年6月5日
 第1回高齢者調査研究評価・助言会議
〇各事業毎に実施省庁が定めた調査研究の内容、方法、年度毎の達成目標について事前に評価を行った。
平成13年3月26日
 第2回高齢者調査研究評価・助言会議
〇平成12年度までの、事業の実施報告を行った。
平成13年6月12日
 第3回高齢者調査研究評価・助言会議
〇平成12年度までの達成目標に照らして、調査研究内容等について、中間評価を行い、「初年度評価書」を取りまとめた。
平成14年4月24日
 第4回高齢者調査研究評価・助言会議
〇平成13年度までの、事業の実施報告を行った。
平成14年6月26日
 第5回高齢者調査研究評価・助言会議
〇平成13年度までの達成目標に照らして、調査研究内容等について、最終評価を行い、「最終評価書」を取りまとめた。