教育の情報化プロジェクト

ミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」

評価・助言会議 平成14年度評価報告書

平成15年8月



 ミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」においては、平成11年7月にとりまとめられた総理直属のバーチャル・エージェンシー「教育の情報化プロジェクト」の報告を踏まえ、「2005年度を目標に、全ての小中高等学校等からインターネットにアクセスでき、すべての学級のあらゆる授業において教員及び生徒がコンピュータを活用できる環境を整備する」等により、「子どもたちが変わる」(「子どもたち」の論理的な思考力・創造力・表現力などの向上)、「授業が変わる」(「授業」の形態の根本的な変革)、「学校が変わる」(学校・家庭・地域間の連携をはじめ「学校」運営の在り方そのものの変革)という状況をつくり出すことを目指し、各施策を講じることとされている。
 本プロジェクトの推進に当たっては、当「教育の情報化」評価・助言会議が、プロジェクトの進捗状況等について毎年評価を行い、それを公表することとされており、昨年7月、平成13年度における各事業の実施状況を当会議において評価した。
 今般、平成14年度における本プロジェクトの実施状況を評価するにあたり、本プロジェクトに掲げられた各施策の進捗状況等を関係府省より聴取するとともに、学校現場の視察を行い、ITを活用した授業の視察及び学校関係者等との意見交換を行ったところである。これらを踏まえ、本プロジェクトの実施状況について以下のとおり評価を実施するとともに、今後のプロジェクトの実施に当たり留意すべき点等について助言を行うこととする。


全 体 評 価

 コンピュータやインターネット環境の整備等のインフラ面、学校教育用コンテンツの開発や教育情報ナショナルセンターの整備等のソフト面の双方において、着実に進展していると評価できる。このことは、文部科学省が本年7月に公表した「学校における情報教育の実態等に関する調査結果」(以下、実態調査)にあらわれている。
 ミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」は開始から3年が経過した。昨年4月には小中学校における新たな学習指導要領が実施され、本年4月には高等学校での実施が開始された。この間、関係者の献身的な努力により、学校教育における情報化に対する取り組みは着実に定着しつつある。今後は、インフラ面、ソフト面双方において、技術革新が著しい本分野の特性も踏まえた環境整備を引き続き実施するとともに、これらの環境の利活用をより促進するための取り組みが必要であると思われる。また、目標年次である2005年の達成目標に対する到達度という視点からの評価や、これまでの取り組みによる教育効果の評価等について今後検討していくことも重要である。改めて「教育の情報化」の目的である「子どもたちが変わる」「授業が変わる」「学校が変わる」という視点からこれまでの取り組みを評価し、今後の取り組みに生かしていくことが必要である。


個 別 評 価
1.公立小中高等学校、盲・聾・養護学校等のコンピュータ整備・インターネット接続
(1)実施状況の評価
 公立小中高等学校、盲・聾・養護学校等のコンピュータ整備・インターネット接続については、概ね順調に整備が進められている。ADSLや光ファイバー等の高速回線への切り替えについても引き続き推進すべきである。また、整備の推進とともに、これらのインフラの活用促進についても配意すべきである。
 一方、実態調査の結果によると、自治体や学校種により、整備状況に格差が生じている。また、整備したコンピュータ等の維持管理や、授業での利用を円滑にするための補助教員の不足、教育の情報化を進める上で不可欠な教員用のコンピュータの不足等も指摘されている。
(2)助言
1)IT環境の整備の着実な推進
  コンピュータ等の整備に当たっては、地方交付税によりその所要額を措置していることを踏まえ、自治体や学校種による整備状況に格差が生じないよう、本プロジェクトの理念・趣旨、情報化による教育上の利点等について、自治体や学校に広報し、自主的かつ積極的な取り組みを促す必要がある。
 また、学校におけるIT環境の整備や、教員のIT指導力の向上の観点から、教員用のパソコンの充実が重要である。
2)コンピュータ等の維持管理・活用促進
 コンピュータ等の整備が進み、その維持管理・運用に対する負担が大きくなっている。維持管理等を行うSEやヘルプデスク等必要な人材の確保等により、教員の負担軽減が望まれる。
 また、コンピュータ等の活用が進むにつれて、例えばコンピュータ教室の利用頻度が高まり、コンピュータ教室を活用した授業の時間が思うように確保できない状況も起き始めている。これまでの普通教室等における整備を引き続き推進するとともに、第二コンピュータ教室の設置など、整備の新たな考え方を検討する時期にさしかかっていると思われる。
2.公立学校の校内LANの整備
 実施状況の評価
 当プロジェクトにおける校内LANの整備目標は既に達成しており、その取り組み状況としては高く評価するが、校内LANの整備によるネットワーク化は教育の情報化にとって不可欠な要件であるので、引き続き積極的な取り組みを期待したい。平成17年度までにすべての普通教室を接続するというe-Japan重点計画-2003の目標を達成するためには、財政的支援はもちろんのこと、校内LANの必要性・有効性の周知、セキュリティ確保や無線LAN等についての技術に関する研究開発等に取り組んでいく必要がある。
 これまでに取り組んできた情報セキュリティ技術や、簡易型インターネットアクセス網構築技術等の研究開発は重要であり、研究開発成果について実際の学校現場における適用・実現可能性という観点からも評価を行う必要がある。
3.私立学校のコンピュータ整備等
(1)実施状況の評価
 それぞれの私立学校が特色ある教育を展開できるよう、予算を増額したことは評価できる。しかし、学校の事情等により情報化を積極的に進めている学校とそうでない学校との間、公立学校との間で整備状況に差が生じている。私立学校の独自性を尊重する一方、少なくとも公立学校と同程度の環境が整備されるよう引き続き取り組むとともに、私立学校に対し、情報化に対するインセンティブを与えていくことが重要である。
(2)助言
コンピュータの整備状況等の調査
 私立学校間の情報化に対する取組状況に大きな差が認められることから、コンピュータ等の整備状況や活用状況に関する調査の実施・公表が不可欠である。また、優秀な活用事例を公開することも、私立学校のIT環境整備を促進していく上で効果的である。
5.学校教育用コンテンツの開発
(1)実施状況の評価
 学校教育用コンテンツの充実が教育の情報化には不可欠であり、これまでのコンテンツの開発に係る取り組みは評価できる。今後も引き続きコンテンツの充実に取り組むとともに、コンテンツの所在などの情報提供による活用促進、コンテンツの活用事例の収集・提供などにも積極的に取り組む必要がある。
(2)助言
1)開発されたコンテンツの活用促進
 学校等の教育現場において、開発されたコンテンツの存在や活用のメリット等が広く認知されているとは言い難く、コンテンツ開発のみならず、コンテンツの所在情報をはじめとした関連情報の提供や、コンテンツの活用事例の収集・提供など、コンテンツの活用促進のための幅広い取り組みが必要である。また、入手しやすい環境を整備する観点から、教育情報ナショナルセンターの活用を積極的に推進すべきである。
 これまで開発されたコンテンツの利活用の実態把握や、学校現場のニーズ調査なども、より有効なコンテンツ開発の観点から必要と思われる。
2)今後のコンテンツ充実に向けた取り組み
 今後国が積極的にコンテンツ開発を支援すべき分野として、特別支援教育分野や中・高等学校での専門教科など、商業ベースにのりにくい分野が挙げられる。また、優秀な教師による自作コンテンツの流通促進についても検討が必要である。
 一方、コンテンツの充実を図っていくためには、民間業者が重要な役割を担っており、民間業者がコンテンツ開発に参入しやすい環境作りにも積極的に取り組んでいく必要がある。
6.教育情報ナショナルセンター機能の整備(ポータルサイトに係る研究開発)
(1)実施状況の評価
 教育情報ナショナルセンターにおいては、利用者が求める情報へダイレクトに到達することができる教育用コンテンツ検索機能を実装したほか、教育用コンテンツの流通促進を目指した取り組みであるEduMart実証実験との連携など、教育情報に関する中核的なポータルサイトとしての取り組みは評価できる。教育の実践事例や画像の収集・公開は、学校での活用に非常に効果的であることから、継続していくことを期待したい。
(2)助言
機能の充実・強化への積極的な取組
 教育情報ナショナルセンター機能を充実させていく上で、教育現場での活用方法や活用度に関する情報を収集することが望ましい。また、コンテンツの充実等に対応し、例えば分散型のセンターの検討など、将来を見据えた長期的な検討も必要と思われる。
 これまで取り組まれてきたトラブル解決支援技術や学習情報検索システムに関する研究開発については、実用化の観点からも評価を行う必要がある。
 今後は、利用者拡大の観点から、技術的な機能の充実・強化に加え、バリアフリー化対策等も含めた「使いやすさ」にも一層配意すべきである。
7.インターネットを活用したフェスティバルの開催
 実施状況の評価
 インターネットフェスティバルは、昨年10月に生涯学習フェスティバルの一環として開催されたが、このような取り組みは教育の情報化の意義の普及、啓発の観点から非常に重要である。このような取り組みを一過性のものとして終わらせるのではなく、今年度も引き続き実施されることとなったことは評価したい。本事業の実施にあたっては、その実施の趣旨に立ち返り、教育現場を含めた広報を徹底し、学校教育関係者のみならず、一般市民の興味関心を引く、全国的なフェスティバルとなることを期待したい。


お わ り に

 平成11年12月のミレニアム・プロジェクトの策定から3年が経過し、当プロジェクトの施策の中には、当初の目標を既に達成したものや、新たに検討すべき点が指摘されたものがあるなど、当プロジェクトも新たなフェーズを迎えている。政府のIT戦略本部においても、これまでの基盤整備から利活用の促進へ軸足を移すべく、新たなIT国家戦略であるe-Japan戦略Uを作成したところである。
 このような中、当評価・助言会議においては、評価対象の施策に対する評価・助言に加え、本プロジェクトの範囲を越えるものではあるものの、特別支援教育に関するポータルサイトの設置や教材の情報化、新たなIT環境の整備指針の必要性等、我が国における教育の情報化の推進の観点から示唆に富む意見が数多く述べられ、幅広い意見交換が行われた。今後は、新たな技術の進展や、わが国のIT国家戦略であるe-Japan戦略Uの決定を始めとした当プロジェクト開始後の状況変化等を踏まえ、より広い視点から評価・助言を行っていくことが重要である。
 政府におかれては、この評価報告書を踏まえ、今後も教育の情報化のさらなる推進に向けた一層の取組を期待したい。