全体的に見ると、ミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」においては、コンピュータ整備やインターネット接続、教育用のコンテンツ開発、教育情報ナショナルセンター機能の充実など、インフラ面、ソフト面とも概ね順調に整備が進んでいる。
しかし、学校内のインフラ整備状況には、地域間格差があり、これをどのように解消していくかが重要な課題である。また、校内LANの整備や教員のIT活用についても、当初の目標(2004年度までに8,100校に校内LANを整備・2001年度までにすべての公立学校教員がコンピュータの活用能力を身につける)は達成したが、本プロジェクトの目標である「全ての学級のあらゆる授業において教員及び生徒がコンピュータを活用できる環境を整備する」ためには、必要なLANの整備等により、すべての教室がインターネットに接続できるようにすることや、概ねすべての教員がコンピュータ等のITを用いて子どもたちを指導することが重要であり、引き続き推進していくことが必要である。
今後の課題としては、目標に向けて整備されてきたコンピュータ、インターネット環境を、整備するだけで終わりにするのではなく、教育現場でどう利活用していくか、コンテンツのさらなる充実などの観点も含めて検討していくとともに、2005年度以降の教育の情報化のあり方について、考えるべき時期にさしかかっていると思われる。
| 1. | 公立小中高等学校、盲・聾・養護学校等のコンピュータ整備・インターネット接続 |
| (1) | 実施状況の評価 |
| 公立学校におけるコンピュータ整備・インターネット接続については、概ね順調に整備が進められている。教育用コンピュータ普及は児童生徒8.8人に対して1台の水準まで整備され、インターネット接続学校は99.8%、高速インターネット接続校も71.6%まで達成された。 |
| ただし、これらの整備状況の地域間格差は広がっており、これは児童生徒間の情報活用能力、学力の格差につながる恐れもあるため、早急に是正していく必要がある。 |
| また、各教室に整備されたコンピュータを有効に活用できるようにするには、校内LANの整備や、教員のIT指導力の向上が不可欠であり、ミレニアム・プロジェクトの当初の目標達成後も、次の目標を掲げて推進していることは評価できる。今後もこれらを推進していくことが望ましい。 |
| (2) | 助言 |
| 1) | IT環境の整備のさらなる推進 |
| 教育用コンピュータやネットワークの整備の財源については、地方交付税交付金により措置されており、各自治体・教育委員会は自主的判断によりこの財源を予算化するものである。このため、教育の情報化を進めるためには、各自治体・教育委員会が自主的かつ積極的に教育の情報化に予算措置を行う必要がある。そして、国はこの各自治体・教育委員会の動きを促していくことが必要である。 |
| このための方法としては、各自治体・教育委員会に対して、「教育の情報化」が国家戦略であるという意識付けを行うことや、各県・市町村ごとの整備率データを公表し、実態を認識させることが考えられる。また、ITの活用による教育の効果を多面的に検証し、ITにより教育の質が高まっているというデータを明確に提示することも有効であると考えられる。 |
| なお、各自治体・教育委員会への働きかけに当たっては、本年7月に設立された「教育情報化推進協議会」の活動には期待がかかり、関係各省・各団体の積極的支援が望まれる。 |
| また、コンピュータの整備に当たっては、授業等におけるコンピュータ等の活用や校務の情報化の観点から、教員用のコンピュータの整備にも配慮することが重要である。 |
| 2) | コンピュータ等の活用促進と、新たな情報通信技術への対応 |
| 整備されたコンピュータの有効活用のため、校内LANの整備や、教員のIT指導力の向上を引き続き進めていくべきである。また、昨今の地上デジタルテレビの開始や、ブロードバンド、携帯電話、ワイヤレス、大容量サーバなどの情報通信技術の発展に対応した環境整備のあり方についての検討を行うとともに、個人情報保護、セキュリティ確保、有害情報のフィルタリングといった、新たな問題に対する対策も考えていく必要がある。 |
| 学校が社会全体のIT化の流れに乗り遅れることのないよう、これらの現状も参考にして、2005年度以降の整備計画についても検討を始めるべきである。 |
| 3. | 私立学校のコンピュータ整備等 |
| (1) | 実施状況の評価 |
| 私立学校はそれぞれの特性と専門性が存在しており、多様な教育方針に沿って教育が行われていることを鑑みると、各学校の教育方針を尊重する現在のような助成制度により、私立学校の情報化が進められていることは評価できる。ただしその結果、学校ごとの格差が生じているとみられる。このような点にも配慮しつつ、引き続き取組を進めていくことが望まれる。 |
| (2) | 助言 |
| 私立学校のコンピュータ整備などの実態は明確ではなく、早急な実態調査が望まれる。これまでかなりの規模の国費を投入していることを考えれば、実態の調査・報告は当然であり、少なくともミレニアム・プロジェクトの目標年次である平成16年度評価時までには、私立学校関係団体にアンケートもしくは実態調査報告を依頼するなど、調査とその結果の開示が必要である。 |
| 5. | 学校教育用コンテンツの開発 |
| (1) | 実施状況の評価 |
| 教育用コンテンツについては、学校体育スポーツ健康教育用コンテンツや文化デジタルライブラリーの構築等、様々なものが開発されており、インターネットで上にて無償で閲覧できるものも増えている。民間企業の開発する教育用コンテンツも普及しつつあり、これまで、国がモデルとなるコンテンツ開発を行ってきたことについては、一定の成果を上げたと評価できる。 |
| (2) | 助言 |
| 1) | 開発されたコンテンツの活用促進 |
| これまで開発されたコンテンツが、広く活用されるよう、現場の教員等へのPR、周知徹底が必要である。また、教育用コンテンツが各授業で教師・生徒によりどの程度活用されているかについて、実態の把握等を行い、それをもとに今後のコンテンツの活用促進策のあり方についても検討を行うことも重要だと考えられる。 |
| 2) | 今後のコンテンツ開発 |
| これまで国としてコンテンツ開発を行ってきたが、今後も、特別支援教育関連のコンテンツなど、採算に乗りにくく、民間に任せていては開発されないようなコンテンツ開発は引き続き進めていくことが望まれる。また、大規模な問題解決型学習コンテンツの開発や、不登校児童生徒のためのeラーニングコンテンツについても、今後の課題として検討を行うべきである。 |
| 6. | 教育情報ナショナルセンター機能の整備(ポータルサイトに係る研究開発) |
| (1) | 実施状況の評価 |
| 教育情報ナショナルセンターにおいては、ポータルサイトにおける教育素材、授業実践事例を着々と増やしているとともに、機能の充実も進んでおり、大変評価できる。利用者である教員に対し、とりあえずここに繋げば何らかのものがある、ということを感じさせるものになりつつあり、今後も更なる情報量の充実が期待される。 |
| (2) | 助言 |
| 今後は、さらなるサービスの向上のため、ユニバーサルデザインの導入や、利用者が情報を取得しやすくするため、登録されている情報の階層化による整理・分類を進めるとともに、アクセス状況の公開や、教育情報ナショナルセンターの教育現場への普及強化など、利用者への広報と利用状況の把握が必要である。 |
| また、有料コンテンツを今後どう扱っていくかについても検討を進めるべきである。 |
平成11年12月のミレニアム・プロジェクトの策定から4年が経過し、教育の情報化をめぐる状況は、策定当初と比べると大きく変化した。本プロジェクトの事業の中には、当初の目標を達成し、新たな段階に移行する、もしくはさらに高い目標を掲げて推進している施策も増えつつある。
政府においては、本プロジェクトの理念も受け継いだ、「e-Japan戦略」「e-Japan戦略U」「e-Japan重点計画-2004」などが作られ、IT戦略本部を中心とした推進体制が軌道に乗っているところである。
これらを踏まえ、教科書を含めた教材のデジタル化など、プロジェクトの範囲を超える内容についても、検討を進めていくべきということを最後に付け加える。
政府におかれては、この評価報告書を踏まえ、今後も教育の情報化の更なる推進に向けた一層の取組を期待したい。