教育の情報化プロジェクト

ミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」

評価・助言会議 平成16年度評価報告書

平成17年11月



 近年の著しい情報通信技術(IT)の発展に伴い、社会のあらゆる分野で情報化が急速に進み、それが世界的な大勢ともなりつつある。このことから、教育の情報化は日本の教育における最重要課題であるという認識の下、総理直属のバーチャル・エージェンシー「教育の情報化プロジェクト」の報告を踏まえ、ミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」が平成11年12月に策定された。同プロジェクトにおいては、「2005年度(平成17年度)を目標に、全ての小中高等学校等からインターネットにアクセスでき、全ての学級のあらゆる授業において教員及び生徒がコンピュータを活用できる環境を整備する」等により、「子どもたちが変わる」(「子どもたち」の論理的な思考力・想像力・表現力などの向上)、「授業が変わる」(「授業」の形態の根本的な変革)、「学校が変わる」(学校・家庭・地域間の連携をはじめ「学校」運営の在り方そのものの変革)という状況をつくり出すことを目指し、各施策を講じることとされており、5年余りにわたり着実に各施策を推進しており、今年度(平成17年度)その最終年度を迎えた。
 本プロジェクトの推進に当たっては、当「教育の情報化」評価・助言会議が、プロジェクトの進捗状況等について毎年評価を行い、それを公表することとされており、昨年(平成16年)8月、平成15年度における各事業の実施状況を当会議において評価した。
 今般、平成16年度における本プロジェクトの実施状況を評価するに当たり、本プロジェクトに掲げられた各施策の進捗状況等を関係府省より聴取するとともに、学校現場の視察を行い、ITを活用した授業やテレビ会議システムを活用した学校間の生徒同士の交流の見学及び学校関係者等との意見交換を行ったところである。これらを踏まえ、本プロジェクトの実施状況について以下の通り評価を実施するとともに、最終年度における本プロジェクトの実施に当たり留意すべき点等について助言を行うこととする。


全 体 評 価

 全体的に見ると、ミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」においては、コンピュータ整備やインターネット接続、教育用のコンテンツ開発、教育情報ナショナルセンター機能の充実など、インフラ面、ソフト面とも概ね順調に整備が進んでいる。
 しかし、学校内のインフラ整備状況には、地域間格差及び学校間格差があり、これをどのように解消していくかが重要な課題である。また、校内LANの整備や教員のIT活用についても、当初の目標(2004年度(平成16年度)までに8,100校に校内LANを整備・2001年度(平成13年度)までにすべての公立学校教員がコンピュータの活用能力を身につける)は達成したが、本プロジェクトの目標である「全ての学級のあらゆる授業において教員及び生徒がコンピュータを活用できる環境を整備する」ためには、すべての教室がインターネットに接続できるようにするとともに、概ねすべての教員がコンピュータ等のITを用いて子どもたちを指導することが重要であり、引き続き推進していくことが必要である。教室のインターネット接続については、無線LANを含めた校内LANの設置のほか、たとえば携帯端末の活用など様々な形態があり、これらを含めた教室のインターネット接続の実態把握が必要である。また、教員のIT活用指導力については、教員採用、研修等において十分なITリテラシー、応用(学習指導時)研修を行うとともに、中学校以上の教員に対しては、教科別でどのようにITを活用して指導できるかというガイドライン(指針)の提示やこれらに対応した研修を校種別・教科別に実施することが必要と考えられる。
 今後の課題としては、設備等の整備に関する数値目標だけでなく、整備されてきたIT環境を教育現場でどう利活用していくか、また、その利活用により授業がどのように変わったか、教育の質は向上したのかという実態を客観的に明確にすることが必要不可欠である。また、これらのメリットを、現場の教員や学習者にアピールすることで、ニーズを発掘していくことも重要であり、政府として、各地方公共団体等への積極的な働きがけが必要である。


個 別 評 価
   
1.公立小中高等学校、盲・聾・養護学校等のコンピュータ整備・インターネット接続
(1)実施状況の評価
 公立学校におけるコンピュータ整備・インターネット接続については、概ね順調に整備が進められている。教育用コンピュータ普及は児童生徒8.1人に対して1台の水準まで整備され、インターネット接続率はほぼ100%、高速インターネット接続率も81.7%まで達成された。
 ただし、これらの整備状況の地域間格差や学校間格差は広がっており、これは児童生徒間の情報活用能力、学力の格差につながる恐れもあるため、早急に是正していく必要がある。
 これらを踏まえ、各教室に整備されたコンピュータを有効に活用できるようにするには、インターネット接続や教員のIT活用指導力の向上が不可欠であり、ミレニアム・プロジェクトの当初の目標達成後も、「e-Japan戦略」等の目標を掲げて推進していることは評価できる。
(2)助言
1)IT環境整備のさらなる推進
 教育用コンピュータやネットワークの整備に必要な経費については、地方財政措置されており、各地方公共団体・教育委員会は自主的判断によりこの財源を予算化するものである。このため、教育の情報化を進めるためには、各地方公共団体・教育委員会が自主的かつ積極的に教育の情報化に予算措置を行う必要がある。そして、国はこの各地方公共団体・教育委員会の動きを促していくことが必要である。
 このための方法としては、国は、各地方公共団体・教育委員会に対して、「教育の情報化」が国家戦略であるという意識付けを行うことや、各県・市町村ごとの整備率データを公表し、実態が認識できるようにするとともに、各地方公共団体においては、最終年度における目標達成に向けた具体的な行動計画を明確にする必要があると考えられる。また、整備されたITの活用実態や、ITの活用による教育の効果を多面的に検証し、ITにより教育の質が高まっているというデータを明確に提示することにより、教育の情報化の有効性を客観的に示すべきと考えられる。(例えば、IT環境整備率が高い地域では、子どもたちのコンピュータ操作能力を含めた情報活用能力が高いといった相関関係を明示するなど。)
 また、コンピュータの整備に当たっては、授業等におけるコンピュータ等の活用や校務の情報化の観点から、教員用のコンピュータの整備にも配慮することが重要である。その際には、児童生徒の個人情報の外部漏洩等を防止するためのセキュリティの確保にも十分配慮する必要がある。
 なお、各地方公共団体・教育委員会への働きかけに当たっては、昨年(平成16年)7月に設立された「教育情報化推進協議会」の活動には期待がかかり、引き続き関係各省・各団体の積極的支援が望まれる。
2)コンピュータ等の活用促進と、新たな情報通信技術への対応
 整備されたコンピュータの有効活用のため、情報セキュリティの視点とバランスの取れたネットワークの整備や、教員のIT活用指導力の向上を引き続き進めていくべきである。また、昨今の地上デジタルテレビの開始や、ブロードバンド、携帯電話、ワイヤレス、大容量サーバなどの情報通信技術の発展に対応した環境整備のあり方についての検討を行うとともに、個人情報保護、セキュリティ確保、有害情報のフィルタリングといった、新たな問題に対する対策も考えていく必要がある。  学校が社会全体のIT化の流れに乗り遅れることのないよう、これらの現状も参考にして、2006年度(平成18年度)以降の整備計画についても検討を始めるべきである。
 新しい整備計画においては、上記のような情報通信技術の進歩を踏まえたIT環境整備の在り方を考える必要があると考えられる。
3.私立学校のコンピュータ整備等
(1)実施状況の評価
 私立学校にはそれぞれの特性と専門性が存在しており、多様な教育方針に沿って教育が行われていることを鑑みると、各学校の教育方針を尊重する現在のような助成制度により、私立学校の情報化が進められていることは評価できる。ただしその結果、学校ごとの格差が生じているとみられる。このような点にも配慮する必要がある。
 今般の平成16年度評価において、初めて私立学校におけるIT環境整備の進捗状況の調査結果が報告されたことは評価できる。
(2)助言
 調査結果からは、公立学校の進捗状況とほぼ同水準の整備状況であると考えられるが、引き続き高速インターネット接続などのIT環境整備に向けた取組を進めるとともに、進捗状況調査の項目を見直す必要がある。
 また、公立学校と同様に、教育現場におけるITの活用実態や、ITの活用による教育の効果を多面的に検証し、ITの活用により教育の質が高まっているというデータを明確に提示することにより、教育の情報化の有効性を客観的に示すべきと考えられる。
 さらに、コンピュータの活用・普及等、私立学校の特色ある取組を公立学校などへ紹介することにより、情報教育全体のレベルアップを図る方策が必要である。
5.学校教育用コンテンツの開発
(1)実施状況の評価
 学校教育用コンテンツについては、文化デジタルライブラリーの構築等、様々なものが開発されており、インターネット上にて無償で閲覧できるものも増えている。民間企業の開発する学校教育用コンテンツも普及しつつあり、これまで、国がモデルとなるコンテンツ開発を行ってきたことについては、一定の成果を上げたと評価できる。
(2)助言
1)開発されたコンテンツの活用促進
 これまで開発されたコンテンツが広く活用されるよう、現場の教員等への周知徹底、PRに一層の工夫が必要である。また、学校教育用コンテンツが各授業で教員・児童生徒によりどの程度活用され効果をあげているかについて、実態の把握や評価等を行い、それをもとに今後のコンテンツの活用促進策のあり方について検討を行うことも重要と考えられる。
 また、学校体育スポーツ健康教育用コンテンツについては、早急に平成17年度中に制作する体制を整備する必要がある。
2)今後のコンテンツ開発
 これまで国としてコンテンツ開発を行ってきたが、今後も、特別支援教育関連のコンテンツなど、採算に乗りにくく、民間に任せていては開発されないようなコンテンツ開発は引き続き進めていくことが望まれる。
 また、各地域で開発されたコンテンツの紹介や相互利用支援の促進など、良質なコンテンツの普及・促進や著作権にも配慮したコンテンツ管理にも留意する必要がある。
 さらに、コンテンツへのアクセス数だけでなく、どのように利用されたのか等についても分析を行うなど、質の向上に向けた取組がが重要である。
6.教育情報ナショナルセンター機能の整備(教育情報ポータルサイトの開設に係る研究開発)
(1)実施状況の評価
 教育情報ナショナルセンターにおいては、ポータルサイトにおける教育素材、授業実践事例を着々と増やしているとともに、機能の充実も進んでおり、大変評価できる。利用者に対し、とりあえずここに繋げば何らかのものがある、ということを感じさせるものになりつつあり、今後も更なる情報量の充実が期待される。
 今後は、初等中等教育や生涯学習、高等教育など、各分野のコンテンツをバランス良く充実させることが重要となる。
(2)助言
 今後は、さらなるサービスの向上のため、利用者(教員や児童生徒など)が情報を取得しやすいよう、登録されている情報の階層化による整理・分類を進めるとともに、アクセス状況等の実態調査とその結果の公開、教育情報ナショナルセンターの教育現場への普及強化など、利用者への広報と利用状況の把握が必要である。また、利用しやすいシステムの研究開発や利用者を対象とした研修の実施、多角的な分析表示やリンク先についての情報の充実も必要である。
 更に、教員や専門家、開発者等の教育関係者の相互コミュニケーションを活発に行えるような場となることや、各地域のネットワークセンターとの連携強化を図ることも今後の課題と考えられる。


お わ り に

 平成11年12月のミレニアム・プロジェクトの策定から5年余りが経過し、教育の情報化をめぐる状況は、策定当初と比べると大きく変化した。本プロジェクトの事業の中には、当初の目標を達成し、新たな段階に移行する、もしくはさらに高い目標を掲げて推進している施策も増えつつある。
 政府においては、本プロジェクトの理念も受け継いだ、「e-Japan戦略」「e-Japan重点計画-2004」「IT政策パッケージ2005」などが作られ、IT戦略本部を中心とした推進体制が軌道に乗り、「2005年までに世界最先端のIT国家となる」という目標達成に向けて着実に成果を上げている。現在は、目標達成に向けた取組にラストスパートがかけられるとともに、2006年(平成18年)以降の新戦略の策定が進められているところである。
 これらを踏まえ、「教育の情報化」の推進においても、「ミレニアム・プロジェクト」「e-Japan戦略」等を総合的に組み込んだ形で、2006年(平成18年)以降の新たな計画につなげていくことが必要となる。その際には、高度IT人材の育成が今後数年の間に国際競争力の骨格部分になると考えられることから、日本の国力、国際競争力の向上と「ミレニアム・プロジェクト」におけるIT環境整備等とが一環してつながるという意識改革が必要である。
 政府におかれては、この評価報告書を踏まえ、今後も教育の情報化の更なる推進に向けた一層の取組を期待したい。