成層圏プラットフォームプロジェクト

別紙2

成層圏プラットフォーム

平成12年度

事業実施報告書



(調査票1)

ミレニアム・プロジェクト「成層圏プラットフォーム」事業実施報告書

【府省名:文部科学省】

事  項説     明
実施施策名 成層圏プラットフォーム(飛行船分野)
実施目標 二酸化炭素等の温室効果気体の直接観測を可能とする成層圏滞空飛行船(成層圏プラットフォーム)について、飛行船を成層圏に到達可能とする技術及び定点に滞空する技術を確立し、関連する飛行試験を実施すること。
平成12年度の事業実施状況 (総括:本年度の目標に対する達成状況、来年度以降の課題)
当初計画に従って必要な要素技術開発を行なうとともに、飛行試験機の設計作業を進捗させた。来年度から飛行試験機の製作に着手する等、事業規模が拡大すること。

(具体的な事業実施内容)
1.要素技術開発
成層圏滞空飛行試験及び定点滞空飛行試験の両方に必要な要素技術開発試験を実施し、必要な膜材強度の見通し、膜構造の試作、風洞試験による設計データの取得等、多くの成果を獲得。
2.成層圏飛行試験
成層圏滞空試験については平成12年度上期に飛行試験機の概念設計、予備設計、下期には基本設計を行い、基本仕様を確定。
3.定点飛行試験
定点滞空試験については飛行試験機の概念設計、予備設計を行い、システム、運用概念の設定を実施。
成層圏滞空試験及び定点滞空試験の試験場を選定。また、開発協議会、広報活動を行った。
4.大気採取測定システム
大気採取測定システムについては、概念設計において要求性能の要目を決定し、詳細設計において主要部品のテストを行い、要求性能ならびに積載重量・寸法の目途を立て、基本設計図面を決定した。

平成13年度以降の事業実施計画・方針(本年度の改善点) 成層圏滞空試験については、飛行試験機の製作に着手するとともに、必要な詳細設計・維持設計を実施。
定点滞空試験については、平成14年度より飛行試験機の製作に入ることを目標に、平成13年度は基本設計を実施し、基本仕様の確定を目指す。引き続き、必要な要素技術開発を実施。
大気採取計測システムについては、詳細設計を基に、プロトタイプの機器製作を行い、平成14年度にシステムの諸テストを行い、平成15年度の実搭載に備える予定である。
関係機関や民間との連携の状況 本施策は文部科学省、総務省及び、その付属機関である航空宇宙技術研究所、通信・放送機構等との密接な連携により実施。その一環として、航空宇宙技術研究所と通信・放送機構との間で共同研究契約が締結されている。また、産学との連携を図るため成層圏プラットフォーム開発協議会が設けられ、本事業の方針検討、評価、普及活動などを実施。航空宇宙技術研究所においては客員研究官、特別研究員などの制度を利用し、産学との人材交流を積極的に実施。
大気採取測定システムは海洋科学技術センターの協力により開発を進めている。
当該テーマにかかる外的な研究環境(国際動向、研究動向等)など参考事項 ・平成12年9月21、22日に「第2回成層圏プラットフォームワークショップ」を開催し、海外の実施機関等外国からの43人を含み、総数378人の参加申し込みあり。
・平成12年9月25、26日にインドネシア衛星協会の主催でHAPS2000シンポジウムが開催された。
平成12年度所要経費
平成13年度予算措置
526百万円
1,105百万円

1. 概 要

 地球温暖化対策等に必要な地球観測の手段として、成層圏に飛行船を滞空させる成層圏プラットフォームが期待されている。このため、平成15年度(2003年度)までに成層圏滞空飛行船(成層圏プラットフォーム)による二酸化炭素等の温室効果気体の直接観測(図1)を実現することを目的として、成層圏滞空飛行試験、定点滞空飛行試験の2つの飛行試験を計画し、平成12年度からミレニアム・プロジェクトとして研究開発活動が開始された。

 平成12年度は、機体システム、追跡管制、地球観測の各分野において各システムの設計を開始し、両飛行試験の実現に必要な要素技術の研究開発等を実施するとともに、試験場選定等の飛行試験に向けた作業、開発協議会を通じた産学官の連携のための活動、広報活動等が実施された。

2.平成12年度事業実施内容

 成層圏プラットフォームミレニアム・プロジェクトの研究開発を平成12年4月より開始し、機体システム、追跡管制、地球観測の各分野において成層圏、定点滞空飛行試験機、追跡管制システム、搭載ミッション機器等のシステムの設計検討が開始されるとともに、両飛行試験の実現に必要な要素技術の研究開発等が実施された。また、飛行試験に向けた飛行試験場の選定、開発協議会を通じた産学官の連携のための活動、広報活動等も実施された。
 平成12年度に実施した事業内容のうち、飛行船分野について報告する。

2.1 要素技術研究開発

 成層圏滞空飛行試験機、定点滞空飛行試験機のために必要な以下の要素技術研究開発が実施された。

(1)材料開発・製造確認試験
イ.大気密度が地上付近の16分の1程度しかない成層圏高度に飛行船を上げるためには機体の超軽量化が必須であり、船体質量の多くを占める船体膜構造の軽量化が成層圏プラットフォーム実現の鍵となる。このために必要な超軽量・高強度の膜構造を目標として超軽量・高強度膜材料を開発し、各種試験により強度を確認し、今後の設計に用いる設計データの確認を行った(図2-1)。開発した膜材料の引張強度試験により、膜材単体の引張強度、面密度として成層圏滞空飛行試験機、定点滞空飛行試験機の実現に要求される水準である引張強度100kgf/cm、面密度180g/m2(ガスバリア層を含めた場合の面密度は250g/m2)を達成する膜材が開発された。さらに、現在では強度低下が予想される高温、低温環境下での強度、赤外線放射率や太陽光吸収率等の今後の設計に用いるための設計データの取得を行っている。今後検討が必要とされる課題としては、高温環境下で膜材の性能が低下することが挙げられる。

ロ.飛行船の船体に所要の強度を持たせるには、膜材単体の強度を損なわずに、飛行船の形状に合わせた袋状の構造を製造する技術が必要。このため膜材を裁断、融着させて小型の船体膜構造を製作し、熱特性試験、リーク試験、耐圧性確認試験等を行って、膜構造の設計・製作技術を確認すると共に、各種データを取得した。
 全長10m級の膜構造供試体により赤外線放射下で内部の熱分布等を取得する熱特性試験を実施し、熱制御シミュレーションモデルの検証等に必要なデータを取得した。また、全長3mから10m程度の供試体を製作し、内部にヘリウムガス、空気を充填して圧力等の変化を調べるリーク試験を行って内部ガスの洩れ特性を取得した後、破壊に至るまでの加圧を行う耐圧性確認試験を行い、膜構造の設計・製造手法を確認すると共に耐圧強度、破壊個所、破壊モード等、今後の開発に必要なデータを取得した(図2-2)。

(2)回収系開発試験
 成層圏滞空飛行試験機は、軽量化のため、大気採取終了後、船体の膜を引き裂きヘリウムガスを放出することで降下・海上着水する仕様。膜を切り裂きヘリウムガスを放出する機構を回収系と称している。この技術は定点滞空飛行試験機以降の飛行船において、安全装置として必要な技術である。この技術を取得するための機能確認試験を実施した(図2-3)。小型の膜構造供試体に開発した回収系機構を装備して実験を行い、機能確認をするとともに、降下時の挙動の予測等に必要な内部ガスの放出特性など、今後の開発に必要な設計データを取得した。内部ガスの放出に予想以上に時間が必要であったこともあり、更なる対策を検討予定している。

(3)構造様式評価試験
 成層圏プラットフォームの構造様式は、構造重量を軽量化しつつ安定した上昇、姿勢制御、降下が可能で、離陸、回収、飛行に充分な剛性の確保が出来る構造様式を選定することが必要。定点滞空飛行試験機の概念設計で5つの様式から絞り込まれたマルチバロネット様式、マルチセル様式の2つの様式について、構造様式の評価のための供試体を製作した。今後、この供試体を用いて安定性等の試験を実施する予定である。

2.2 成層圏滞空飛行試験

(1)設計の進捗
 成層圏滞空飛行試験機については平成12年4月から6月まで概念設計を実施し、空力、構造、差圧調整系、計測系、回収系、ミッションインターフェイス等のシステム設計を行い、また製造、試験運用の検討を行った(図2-4)。この結果に基づいて7月から9月まで予備設計を行い、
  1. 搭載ミッションインターフェイス
  2. 船尾安定板
  3. 飛行試験安全
  4. 離陸・回収運用と地上支援設備の具体化
等に重点をおいて設計検討を行い、全体システムの設計を行った。この結果、一重膜隔膜様式を中心とする機体システム、またその運用概念を設定した。これを受けて10月より年度末まで基本設計を行い機体の基本諸元を設定し、現在最終的な審査を行っている。特にミッションペイロード、インターフェイス等についてはミッション側の要求を満たしつつ機体システム側の負担を最小とするため、機体システム開発側とミッション側との実施機関間で充分な調整を行い、機体の基本仕様に反映した(図2-5)。これまでの検討の結果として策定された成層圏滞空飛行試験の計画概要を表2-1に示す。

表2-1.成層圏滞空飛行試験計画の概要
目 的 無人、無動力の飛行船を成層圏高度に到達させ、成層圏プラットフォームに必要な材料・構造基盤技術を確立するとともに、温室効果気体を含む高層大気採取を実施する。
実験期間 平成15年度中に成層圏に到達する飛行試験を実施。
試験機の仕様 上昇高度 15km以上
ペイロード 40kg(ミッション機器用電源を含む)以上
運用方法 ・未明の凪の時間帯に陸上より離陸。
・約1時間で目標高度(15km)に到達し、上空で高層大気採取を実施。
・膜を引き裂いてヘリウムガスを放出降下し、離陸地点より200km圏内の海上に着水させ回収。
・飛行試験全体で2〜3時間を予定。
・GPS、慣性航法により現在位置を把握。
安全措置 ・事前のシミュレーションにより、陸域、航空路に影響を与えないことを確認。
・緊急時には地上からの指令により、膜を引き裂いてヘリウムガスを放出降下。
研究開発スケジュール 平成12年度平成13年度平成14年度平成15年度
基本設計詳細設計
試験機製作
試験機組立
地上機能確認試験
大気採取実験
(夏期を予定)

(2)大気採取測定システム
 成層圏滞空試験機によって二酸化炭素等の温室効果気体の直接観測を行う機器について、平成12年度は、まず概念設計において要求性能の要目を決定し、引き続き詳細設計において主要構成部品のテストを行い、要求性能を満足できることを確認するとともに機体側との調整による積載重量40Kg、一辺45cmの立方体内2個に収められる目途を立てた。これを基に基本設計図面を作成した。
 二酸化炭素の自動測定は、赤外線の吸収を利用したセンサー(NDIR)を使用するが、常に同量の気体を計るようにセンサー内の圧力・温度を一定に保つ必要がある。このため、
    吸入ポンプ
    センサー(NDIR)
    バルブシーケンサ
について、地上のチャンバーを使用して、飛行試験時に受けると想定される気圧・気温変化に対しその性能を満足するか確認した(図2-6)。

 今後の予定としては、平成13年度に、詳細設計を基にプロトタイプの機器製作を行い、平成14年度にシステムの諸テストを行い、平成15年度の実搭載に備える予定である。

2.3 定点滞空飛行試験

(1)設計の進捗
 定点滞空飛行試験については平成12年4月から6月まで概念設計を実施し、システム概念等の検討を行った(図2-7)。特に定点滞空飛行試験機の開発にあたっては、成層圏プラットフォームの構造様式として可能な限り軽量化する一方で安定した上昇、姿勢制御、降下が可能で、離陸、回収、飛行に充分な剛性の確保が出来る構造様式を選定する必要があり、このためフィージビリティスタディの段階で検討してきた二重膜キール構造様式以外の5つ程度の構造様式を検討し、そのうちのマルチセル様式、マルチバロネット様式を残した(図2-8)。この結果を受けて7月から平成13年3月にかけて予備設計を行い、マルチセル方式、マルチバロネット方式の2つの構造様式について機体システム、またその運用概念の検討を行い、システム様式の最終決定のためのデータを揃えた。マルチセル方式には上昇・降下時の姿勢安定性が比較的高いこと等の利点がある一方、マルチバロネット方式には比較的軽量化が可能であること等の利点があり、現在実施している船体様式・浮力制御試験の結果も踏まえて早急にシステム様式を決定する予定である。また、機体開発側とミッション側との実施機関の間でミッションペイロード、インターフェイス等の調整を開始した。これまでの検討の結果として策定された定点滞空飛行試験の計画概要を表2-2に示す。

表2-2.定点滞空飛行試験計画の概要
目 的 動力付の飛行船により、定点滞空に必要な制御系設計技術、追跡・管制・運用技術を確立する。
試験機の仕様 到達高度4km以上
ペイロード250kg以上
耐風能力15m/s
実験期間 ・平成15年度に飛行実験を開始。
・平成16年度に繰り返し飛行実験を実施。
・実験頻度、回数は天候条件に依存。今後ミッション側との調整を行っていく予定。
運用方法 ・陸上より離陸、基本的に陸上回収。
・一定空域内に滞空し、ミッション試験を実施。
安全措置 ・事前の風観測・予測により安全を確認。
・風観測・予測制御システムは通信・放送機構において開発中。
研究開発スケジュール 平成12年度平成13年度平成14年度平成15年度平成16年度
概念設計
予備設計
基本設計詳細設計
試験機製作
試験機組
立地上機能確認試験
飛行実験開始
飛行実験

2.4 飛行試験場の選定

 ミレニアム・プロジェクトの各飛行試験を実施するためには、適切な条件を備えた試験場が必要である。このため、試験場の備えるべき各種条件として
 ・ 飛行試験を実施可能とする気象・地理 条件(強風域、突風域)
 ・ 飛行試験の安全性を確保するための 条件(面積、平坦、海側)
を考え、これらの条件に適合する試験場を選定するため、候補地の調査を実施した。先ず、気象条件、地理的条件等から望ましい地域を抽出するため、気象条件として飛行船の地上運用時に係る低層風速、想定している運用形態を満足するための上空風速、海上回収を行う(定点滞空飛行試験機は不時着時のみ)ための風向条件、突風による構造荷重等にかかわる突風係数について制限値を設定し、気象庁の全国150箇所の気象官署についての気象データに基づいて条件を満たす地域を抽出した。この結果に過去の実績等も加味して選択した自治体に飛行試験の安全性を確保するための条件として用地の条件等を提示して最適な実験場所の調査を依頼し、結果として得られた候補地について比較検討を行った。その結果、成層圏滞空飛行試験については飛行船の飛行実績を持ち、支援要員も揃っている茨城県日立市北河原地区、定点滞空飛行試験については試験に必要な十分な土地面積の獲得の観点から、北海道大樹町多目的航空公園を平成13年4月に選定した(図2-9)。

2.5 開発協議会関係

 産学官の連携の下、研究開発を推進するため、平成10年3月に「成層圏プラットフォーム開発協議会」が発足した。平成12年度以降の主な活動は以下の通りである。
第4回 成層圏プラットフォーム開発協議会 平成12年 4月26日
第6回 技術連絡会議 平成12年 5月30日
第6回 飛行船部会 平成12年10月16日
第7回 技術連絡会議 平成12年11月28日
第5回 地球観測部会 平成13年 3月 8日
第6回 通信・放送部会 平成13年 3月27日
第5回 成層圏プラットフォーム開発協議会 平成13年 4月 3日
第8回 技術連絡会議 平成13年 6月 8日

2.6 広報活動

 平成12年9月21日〜22日に品川コクヨホールにて「第2回成層圏プラットフォームワークショップ (SPSW2000) を開催し、外国からの43人を含めて総数378人の参加申し込みがあった。さらに、展示、講演等以下の事業を実施。
21世紀夢の技術展 東京ビッグサイト 平成12年 7〜8月
未来の交通手段に関するセミナー 宮崎 平成12年 8月
航空技術フォーラム 名古屋 平成12年 9月
第1回インドネシアHAPS2000セミナー ジャカルタ 平成12年 9月
国際新技術フェア 東京ビッグサイト 平成12年 9月
細くて長い形の文化展 京都繊維工芸大学 平成12年11月
 この他、ホームページ等を活用して、プロジェクト紹介等を行っている。

3. 平成13年度以降の研究開発スケジュール

 平成13年度の政府予算として、成層圏プラットフォームは、文部科学省に18億円(うち、ミレニアム・プロジェクト分11億円)、総務省に13億円(うち、ミレニアム・プロジェクト分8億円)の予算が認められた。
 成層圏滞空飛行試験については、平成13年度に詳細設計及び成層圏滞空飛行試験機の製造に着手。平成14年度までに機体の組立を終了させ、地上にて各種機能確認試験を開始し、平成15年度夏季に成層圏高度に到達する飛行試験を実施する予定である。
 定点滞空飛行試験については、平成13年度に基本設計を実施。引き続き、平成14年度に詳細設計と機体の製造を開始する。平成15年度中に組立を終了させ、地上にて機能試験を開始し、飛行試験を実施する予定である。
 追跡管制分野の研究開発では、平成13年度から平成14年度前半にかけて追跡管制設備の設計・製作・試験を行いつつ、風観測・予測制御システム、飛行・運用シミュレータの開発を継続・完了し、総合調整を行う。さらに、平成14年度末までに、追跡管制設備と風観測・予測制御システム、飛行・運用シミュレータを統合した追跡管制システムを構築し、統合試験を行う。平成15年度には、追跡管制システムの実証試験及び運用準備を行い、平成15年度末から定点滞空飛行試験機を用いた追跡管制システムの運用試験を開始予定である。
 成層圏プラットフォームの今後の研究開発スケジュールを図3に示す。


(調査票1)

ミレニアム・プロジェクト「成層圏プラットフォーム」事業実施報告書

【府省名:総務省】

事  項説     明
実施施策名 成層圏プラットフォーム(追跡管制分野)
実施目標 飛行船の追跡管制に必要な風観測・予測制御技術、飛行・運用シミュレーション技術等の各要素技術の開発・評価等を実施し、これら要素技術を統合した成層圏プラットフォーム運用のための追跡管制技術を確立する。
平成12年度の事業実施状況 (総括:本年度の目標に対する達成状況、来年度以降の課題)
1.システム技術
追跡管制システムの基本設計、基本的な運用方法の明確化等を実施。来年度以降、衛星を介した通信回線方式の反映等、飛行船設計に影響する部分についても、本体側と調整を行いつつ、随時設計に反映し、設備の整備に着手。
2.風観測・予測制御技術
予測制御モデルを試作し、所期の気象予測を可能とした。また、予測シミュレーションを実施し、その結果の評価を実施。
引き続き、シミュレーションの実施と、その予測結果の精度評価を行い、予測精度の改善を進めるとともに、処理速度の高速化を進める。
3.飛行・運用シミュレーション技術
飛行経路予測シミュレータ(プログラム)を試作し、種々の風条件のもとでの飛行経路予測を可能とした。また飛行経路を予測するシミュレーションを実施し、その模擬結果の精度評価を実施している。
引き続きシミュレーションを行い、理論的な解析と考察による模擬精度の評価及び精度を高めるための方策についての検討を進める。

(具体的な事業実施内容)
1.システム技術
飛行船システム並びにミッションからの要求を満足する追跡管制システムの基本設計を行い、風観測・予測制御システム、飛行・運用シミュレータ及びこれらと統合する追跡管制設備の要求仕様の設計を実施した。また、正常時及び異常時の種々のケースに対する基本的な運用方法を明確にした。
2.風観測・予測制御技術
風観測・予測制御システムの最適な構成を設定し、各構成要素に対する仕様を明確にした。また、予測制御モデルを試作し、局地領域の成層圏下部(25km)までの予測シミュレーション及びその予測結果の精度評価を行い、ゾンデデータとの比較では、概ね良好な結果を得ている。さらに、気象庁GPVデータの予測制御モデルへのオンライン取り込みを可能とし、観測機器からのデータ取り込みによる予測精度の改善方法の検討を実施。
3.飛行・運用シミュレーション技術
飛行・運用シミュレータのシステム構成、仕様を明確にし、構成ソフトウェアのアルゴリズム等の検討に着手した。また、飛行経路予測シミュレータを試作し、これによる運用方法等の定量的検討を実施。さらに、飛行経路予測シミュレータの性能向上を目指して数学モデルを改良するとともに、電波リンク、電力管理シミュレータを試作した。
4.そのほか
気象環境検討委員会を開催し、気象・大気観測の有識者による成層圏高度までの気象データの調査・解析とシステム設計への反映を実施した。
成層圏滞空試験及び定点滞空試験の試験場を選定。また、開発協議会、広報活動を行った。

平成13年度以降の事業実施計画・方針(本年度の改善点) 平成12年度の研究開発の成果を踏まえ、各技術の研究開発を継続する。

1.システム技術
追跡管制設備に対する要求仕様を満足する各装置の詳細設計・製作・試験を行うとともに、この追跡管制設備と風観測・予測制御システム、飛行・運用シミュレータを統合した追跡管制システムを構築し、統合試験を行う。
また、上記の作業と並行して、定点滞空飛行船による追跡管制システムの運用試験を行うために必要となる詳細な運用方法を検討し、運用手順を作成する。
2.風観測・予測制御技術
風観測・予測制御システムの開発を継続し、@予測制御システムの構築と評価・改良、A観測システムの設計・構築、B実観測データの取得による局地気象データの蓄積と気象特性の把握、C局地気象特性の反映による予測制御システムの最適化等を行い、予測制御システムと観測システムを結合し、総合調整を行う。
3.飛行・運用シミュレーション技術
飛行・運用シミュレータの開発を継続し、@飛行船本体の要素技術試験(風洞、水槽、熱特性等の各試験)の結果の反映による模擬精度の向上、A実時間処理機能付加、B遠隔操縦機能付加、CGo/NoGo判断支援機能付加、等を行い、総合調整を行う。

関係機関や民間との連携の状況 本プロジェクトは総務省、文部科学省及び両省の関係機関である通信・放送機構、航空宇宙技術研究所、地球科学技術推進機構、海洋科学技術センター、宇宙開発事業団との密接な連携により実施している。また、産学官の連携を図るため成層圏プラットフォーム開発協議会が設けられ、プロジェクトの方針検討、評価、普及活動などを実施している。さらに、招聘研究員、研究フェロー等の制度を利用し、産学との人材交流を実施している。
当該テーマにかかる外的な研究環境(国際動向、研究動向等)など参考事項 平成12年9月21、22日に「第2回成層圏プラットフォームワークショップ」を開催。(参加申し込み総数378名、海外の実施機関等外国からの出席者43名)
平成12年度所要経費
平成13年度予算措置
当初:660百万円(うち特別枠180百万円)、補正:700百万円
760百万円(うち特別枠300百万円)

1. 概 要

 地球温暖化対策等に必要な地球観測の手段として、成層圏に飛行船を滞空させる成層圏プラットフォームが期待されている。このため、平成15年度(2003年度)までに成層圏滞空飛行船(成層圏プラットフォーム)による二酸化炭素等の温室効果気体の直接観測(図1)を実現することを目的として、成層圏滞空飛行試験、定点滞空飛行試験の2つの飛行試験を計画し、平成12年度からミレニアム・プロジェクトとして研究開発活動が開始された。

 追跡管制技術の研究開発は、飛行船の打上げ・滞空・回収を安全かつ効率的に行うために必要な追跡管制システムを開発・構築し、このシステムを用いた飛行船システムの運用技術を確立することを目標としている。具体的には、局地領域の成層圏下部までの気象、特に風をきめ細かく観測し、精度よい予測を行うための風観測・予測制御技術及び気象予測情報に基づき飛行船の経路予測などを行うための飛行・運用シミュレーション技術を高度な技術課題を有する要素技術と位置づけ、重点的な研究開発を行うとともに、追跡管制設備と風観測・予測制御システム、飛行・運用シミュレータを統合した追跡管制システムを構築する技術及び飛行船の運用技術をシステム技術と位置づけ研究開発を実施している。

 平成12年度においては、機体システム、追跡管制、地球観測の各分野において成層圏、定点滞空飛行試験機、追跡管制システム、搭載ミッション機器等のシステムの設計検討が開始されるとともに、両飛行試験の実現に必要な要素技術の研究開発等が実施された。また、飛行試験に向けた飛行試験場の選定、開発協議会を通じた産学官の連携のための活動、広報活動等も実施された。
 以下に、平成12年度に実施した事業内容のうち、追跡管制分野について報告する。

2.平成12年度事業実施内容

2.1 システム技術

 飛行船の安全かつ効率的な運用を確保するためには、飛行中に常にその位置・搭載機器の状態を監視し、必要に応じて地上から指令を送信し、搭載機器の電源オン・オフ等の設定を行うとともに、場合によっては、誘導のための位置パラメータの設定等の運用が必要になる。  
 また、飛行船は風の影響を強く受けることから、予め風を観測・予測し、飛行船システムが飛行中に規定の空域を逸脱することなく、安全に飛行を継続できることを確認することが必要になる。これらの要求から導かれる飛行船の追跡管制の概念は図2-1に示すとおりである。

 これまでに実施した追跡管制システムの概念設計の結果、目標を達成するために必要なシステムとして、飛行船の位置・搭載機器の状態を常に監視し、必要に応じて指令を送信するための追跡管制設備と風観測・予測制御システム、飛行・運用シミュレータを統合した追跡管制システムの構築・開発が必要であるとの結論に至っており、その統合型追跡管制システムの構成は図2-2に示すとおりである。

 これまでの要求条件の検討、概念設計の結果及び飛行船システム本体の設計の進捗を踏まえて、本年度は追跡管制システムの基本設計として風観測・予測制御システム、飛行・運用シミュレータ及びこれらと統合する追跡管制設備に最適な構成、機能、性能並びに追跡管制設備の構成要素である運用管制設備、運用計画設備、地上TTC装置、及び搭載追跡管制機器である搭載TTC機器、航法システム等に最適な構成、機能、性能を検討し、図2-3に示すような追跡管制設備の構成を設計した。なお、この追跡管制設備は、飛行船の追跡・搭載機器の状態監視を行うとともに、必要に応じて飛行船に指令を送信する機能を有している。

 また、飛行船の打上げから定点滞空を経て回収に至るまでの一連の運用の流れと各運用において追跡管制システムで行うべき作業を検討し、異常時の対応を含め、運用者が行う操作、判断、指示等とそのために必要な情報、タイミング等を明確にした。なお、これに合わせ、運用者が運用時に監視、判断に使用する操作画面の試作を行っている。

 これにより、基本設計を終了し、平成13年度以降の設備整備に着手できる状態に至った。ただし、衛星を介した通信回線方式の反映等、飛行船設計に影響する部分については、速やかに本体側と調整を行いつつ、システム開発に反映していく必要がある。

2.2 風観測・予測制御技術

 本技術は、飛行船システムの運用計画立案及び打上げ・回収実行の判断に必要となる気象情報を提供するための風観測・予測制御技術を確立するものであり、@飛行試験場において長期(数年間)にわたって気象観測を行い、局地の気象特性の把握を行うことにより長期の運用計画立案に資すること、また、A飛行船の運用にあたっては、予め気象を観測し、打上げから回収までの間の気象を予測すること、さらに、B飛行船の飛行中の気象の急変に備えて、常に気象を観測し、短期(数時間先まで)の気象予測を行うこと、を目的としている。

 本年度は、次に示す風観測・予測制御に対する構成・機能・性能要求を検討するとともに、風観測・予測システムの中核をなす予測制御モデルを試作し、予測シミュレーション及びその精度評価を実施しているところであるが、下記(c)項にも示すように、現状において良好な結果を得ている。

(a)風観測・予測制御要求の検討
 飛行船システム本体からの風観測・予測制御に対する要求を受け、風観測・予測制御システムの達成目標を表2に示すとおり設定した。 水平方向 : 200km×200km
高度方向 : 地上から25kmまで水平方向 : 5km
高度方向 : 35層
表2.風観測・予測制御システムの達成目標
予測可能領域
距離分解能
予測結果の出力出力範囲 : 36時間以上
予測対象風向・風速、降雨域、発雷域、乱流域、着氷域
観測対象風向・風速、降雨域、発雷域、ウインドシア域
 なお、この達成目標は、飛行船本体側と合意に至っているものではあるが、今後、飛行船本体の進捗に応じて、見直しを行っていくこととしている。

 また、国内の気象・大気観測に関する有識者(国家機関、大学の教授等)を委員とする気象環境検討委員会において実施された対流圏及び成層圏の気象データの調査・解析の結果を風観測・予測制御システムの設計の妥当性確認、成層圏における風向反転時の検出方式等に反映している。

(b)風観測・予測制御システムの機能・構成の検討
 上記の目標を達成可能な風観測・予測制御システムの検討を行った結果、図2-4に示すとおり、予測精度向上のためには地上から上空にわたる風速、風向の観測と短時間で変化する降雨を観測する機材を組み合わせる構成をとることが、局地の気象特性を把握するために必要な長期の観測を可能とし、また飛行船の運用時の観測・予測を可能とし、さらに費用対効果の点においても優れていることから、最適であるとの結果を得た。

 観測用器材の機能・性能は以下のとおりである。なお予測制御システム機器については表2に示した。
・気象ドップラーレーダ:半径約100km以上の範囲の降雨・雷・風の観測
・ウィンドプロファイラ :高度約400〜16kmの上空の風向風速の3次元観測
・境界層レーダ     :高度約200〜5kmの上空の風向風速の3次元観測
・ドップラーソーダ   :高度約50〜400mの上空の風向風速の3次元観測
・GPSゾンデ     :高度約30kmまでの上空の風向風速の水平成分の観測
・風向・風速計     :設置高度の風向風速の観測
 今後、観測設備を整備し、検証を進めることとしている。
 なお、現時点においては、表2に観測対象として示す項目以外について、下記(c)項に示す予測制御モデルの試作により、その目標を実現している。

(c)予測制御モデルの試作とシミュレーションの実施
 予測制御モデルの開発ステップを図2-5に示す。これまでに、予測制御モデルを試作し、気象庁GPV(格子点値)データを初期値、境界値として取り込んだ局地領域の成層圏下部(高度25km)までを5kmメッシュで気象予測を行うことを可能とした。

 この予測制御モデルによる予測計算結果例を図2-6及び図2-7に示す。高高度までの気象予測と気象現象による危険域の予測が可能になった。ここで、図2-6(の左図)においては、高度がジェット気流域を越えたあたりから西風は弱まり、さらに上空では(高度18kmを越えたあたり)、逆に東風に変わるという、夏季の日本上空の風の様子が表現されており、実際の現象と対応していることが確認された。図2-7では、雲の生成と気象予測データを加工して算出した発雷、着氷という危険域が表現されていることが確認できている。今後は更に実データとの比較による検証を進めていく計画である。

 また、気象庁からのGPVデータの配信は、平成12年10月より始まったところであり、精度評価のためのデータは少ない状況ではあるが、図2-8に示すように、ゾンデ観測による風速データとの比較において差は正負に分布しており、片寄った偏差は出ていないことから、概ね妥当な結果が得られているものと判断している。なお、今後、詳細な分析を行うこととしている。

2.3 飛行・運用シミュレーション技術

 本技術は、飛行船システム本体の運用方法を定量的に検討するため、また運用計画の立案及び打上げ・回収等の実行判断に必要な飛行経路予測情報を提供するための飛行・運用シミュレーション技術を確立することを目的としており、平成12年度においては、飛行船システム及び追跡管制システムからの飛行・運用シミュレータに対する要求並びに構成等の検討を行うとともに、飛行・運用シミュレータの核となる、地上から成層圏までの空域を飛行する飛行船の飛行経路予測シミュレーションプログラムを試作するとともに、シミュレーションを試行し、模擬精度の評価及び改良方法の検討を開始した。なお、シミュレーション模擬精度については、航空機及びロケットのシミュレ−ションと同等のレベルを目指している。
(a)飛行・運用シミュレータ要求の検討  飛行・運用シミュレータは、飛行船の諸元、大気環境条件を計算条件として、運用者に飛行船の姿勢及び位置・経路等のデータ、運用を行うための支援情報を提供することが求められる。このため、飛行・運用シミュレータは、飛行に先立つ事前の運用検討のための、時間を忠実に再現する必要はないが多くの現象を模擬しなければならないシミュレーションと、訓練や飛行中のオンラインの飛行経路予測に必要な実時間処理シミュレーションが要求される。
 前者では、飛行船システムの挙動に伴って変化する発電電力、消費電力及びそれらの需給管理、追跡管制の通信回線の状態、飛行安全の状況を解析・計算することも必要であり、後者においては、飛行経路予測が主体となる。
 これらの要求に応えることのできる飛行・運用シミュレータの構成は図2-9に示すとおりである。

(b)飛行経路予測シミュレーションプログラムの試作とシミュレーションの実施
 (a)項に述べた要求を反映し、まず、実用機を対象とした飛行経路予測シミュレーションプログラム及び分散解析系プログラムを試作した。これは、成層圏までの空域、太陽位置の季節及び日変化等を考慮した物理・力学的な理論モデルに基づくものであり、風洞試験データ、風の観測データ等を反映している。
 具体的には、空域の大気は標準大気を基準として、高度に応じて空気の温度、圧力、密度を変化させている。また、太陽との相対角度に対応した太陽輻射量、太陽光発電量の変化を考慮している。基本となる飛行船の運動方程式については、3次元6自由度の方程式を扱い、通常の航空機のシミュレーションでは無視する仮想質量等の動特性を考慮に入れている。
 試作プログラムを用いてシミュレーションを行い、得られた飛行船の上昇速度等を理論的に検証した結果、不合理な部分のあることが分かり、飛行船の吸排気に伴うエネルギーの変化、排気バルブの流量等、主に内部ガスの状態変化に関する解析に改良を加えて模擬精度の向上を図った。更に、最初に飛行船システム側が概念を検討した実用機だけでなく、その後検討が進んだ飛行船の諸元、内部の具体的な膜構造を反映し、定点滞空試験機への適用を可能とした。
 これらの結果、シミュレーションによる運用方法等の定量的検討並びに種々の風条件に基づく飛行経路の解析が可能になった。一例として、空間的に分布する風の条件下で成層圏へ上昇し、降下する飛行のシミュレーションを行った結果、得られた飛行経路を図2-10に示す。
 引き続き、理論的な解析と考察による模擬精度の評価及び改良方法の検討を行っていくが、特に、模擬精度の向上という課題に対しては、内部ガスの圧縮、膨張、伝熱等に伴う温度変化、飛行機に比べて影響が顕著な動的空気力等、飛行船固有の現象について、飛行船システムの要素技術試験データを適切に反映することにより解決を図っていく。

(c)飛行・運用シミュレータ装置等の製作
 飛行船の研究開発成果を反映しつつ、飛行・運用シミュレータの設計・製作を実施している。
   ・電力管理、電波リンク関連のプログラムの試作
   ・飛行・運用シミュレータ装置の製作(試作した各種プログラムを搭載)
   ・飛行安全関連プログラム、飛行計画策定支援ツール、Go/NoGo判断支援ツール等、ソフトウェアの設計検討

2.4 飛行試験場の選定

 ミレニアム・プロジェクトの各飛行試験を実施するためには、適切な条件を備えた試験場が必要である。このため、試験場の備えるべき各種条件として
 ・ 飛行試験を実施可能とする気象・地理条件(強風域、突風域)
 ・ 飛行試験の安全性を確保するための条件(面積、平坦、海側)
を考え、これらの条件に適合する試験場を選定するため、候補地の調査を実施した。先ず、気象条件、地理的条件等から望ましい地域を抽出するため、気象条件として飛行船の地上運用時に係る低層風速、想定している運用形態を満足するための上空風速、海上回収を行う(定点滞空飛行試験機は不時着時のみ)ための風向条件、突風による構造荷重等にかかわる突風係数について制限値を設定し、気象庁の全国150箇所の気象官署についての気象データに基づいて条件を満たす地域を抽出した。この結果に過去の実績等も加味して選択した自治体に飛行試験の安全性を確保するための条件として用地の条件等を提示して最適な実験場所の調査を依頼し、結果として得られた候補地について比較検討を行った。その結果、成層圏滞空飛行試験については飛行船の飛行実績を持ち、支援要員も揃っている茨城県日立市北河原地区、定点滞空飛行試験については試験に必要な十分な土地面積の獲得の観点から、北海道大樹町多目的航空公園を平成13年4月に選定した(図2-11)。

2.5 開発協議会関係

 産学官の連携の下、研究開発を推進するため、平成10年3月に「成層圏プラットフォーム開発協議会」が発足した。平成12年度以降の主な活動は以下の通りである。
第4回 成層圏プラットフォーム開発協議会 平成12年 4月26日
第6回 技術連絡会議 平成12年 5月30日
第6回 飛行船部会 平成12年10月16日
第7回 技術連絡会議 平成12年11月28日
第5回 地球観測部会 平成13年 3月 8日
第6回 通信・放送部会 平成13年 3月27日
第5回 成層圏プラットフォーム開発協議会 平成13年 4月 3日
第8回 技術連絡会議 平成13年 6月 8日

2.6 広報活動

 平成12年9月21日〜22日に品川コクヨホールにて「第2回成層圏プラットフォームワークショップ (SPSW2000) を開催し、外国からの43人を含めて総数378人の参加申し込みがあった。さらに、展示、講演等以下の事業を実施。
21世紀夢の技術展 東京ビッグサイト 平成12年 7〜8月
未来の交通手段に関するセミナー 宮崎 平成12年 8月
航空技術フォーラム 名古屋 平成12年 9月
第1回インドネシアHAPS2000セミナー ジャカルタ 平成12年 9月
国際新技術フェア 東京ビッグサイト 平成12年 9月
細くて長い形の文化展 京都繊維工芸大学 平成12年11月
 この他、ホームページ等を活用して、プロジェクト紹介等を行っている。

3. 平成13年度以降の研究開発

3.1 研究開発スケジュール

 平成13年度の政府予算として、成層圏プラットフォームは、文部科学省に18億円(うち、ミレニアム・プロジェクト分11億円)、総務省に13億円(うち、ミレニアム・プロジェクト分8億円)の予算が認められた。
 成層圏滞空飛行試験については、平成13年度に詳細設計及び成層圏滞空飛行試験機の製造に着手。平成14年度までに機体の組立を終了させ、地上にて各種機能確認試験を開始し、平成15年度夏季に成層圏高度に到達する飛行試験を実施する予定である。
 定点滞空飛行試験については、平成13年度に基本設計を実施。引き続き、平成14年度に詳細設計と機体の製造を開始する。平成15年度中に組立を終了させ、地上にて機能試験を開始し、飛行試験を実施する予定である。
 追跡管制分野の研究開発では、平成13年度から平成14年度前半にかけて追跡管制設備の設計・製作・試験を行いつつ、風観測・予測制御システム、飛行・運用シミュレータの開発を継続・完了し、総合調整を行う。さらに、平成14年度末までに、追跡管制設備と風観測・予測制御システム、飛行・運用シミュレータを統合した追跡管制システムを構築し、統合試験を行う。平成15年度には、追跡管制システムの実証試験及び運用準備を行い、平成15年度末から定点滞空飛行試験機を用いた追跡管制システムの運用試験を開始予定である。
 成層圏プラットフォームの今後の研究開発スケジュールを図3-1に示す。

3.2 追跡管制分野の事業実施計画・方針

 追跡管制分野における平成13年度以降の事業実施計画・方針は次のとおりである。
(a)システム技術
 平成13年度から、追跡管制設備の整備に着手する。
 具体的には、運用管制装置、運用計画装置、地上TTC装置等の追跡管制設備並びに飛行船搭載の追跡管制機器である搭載TTC機器、航法システム等の製作を開始し、平成14年度上期までに単体試験を終了し、その後飛行試験場に輸送、設置する。
 また、平成14年度下期には、この追跡管制設備と風観測・予測制御システム、飛行・運用シミュレータを統合した追跡管制システムを構築し、追跡管制システムの総合的な機能・性能を確認するための統合試験を行う計画である。

 一方、技術実証機並びに実用化に向けて解決が必要な課題(特に、成層圏高度における運用技術、システム技術)についても、並行して対策を検討していくこととする。

(b)風観測・予測制御技術
(i)平成13年度

  • 予測制御システムの構築と評価・改良
    予測制御シミュレーションと予測精度評価を継続し、誤差要因の分析と予測精度の改良を図る。

  • 観測システムの設計・構築
    気象ドップラーレーダ、ゾンデシステム、風向・風速計の設計・製作を行い、飛行試験場に設置し、観測システムを構築する。

  • 実観測データの取得による局地気象データの蓄積と気象特性の把握
    飛行試験場に設置した観測システムによる実観測を開始する。得られたデータを蓄積し、局地の気象特性の把握に用いる。

  • 局地気象特性の反映による予測制御システムの最適化
    観測システムで得られるデータとの比較による誤差要因の抽出と予測制御モデルへの反映、設置場所の地形、土地属性を取り込んだパラメータの最適化により、予測制御精度の最適化を図る。

(ii)平成14年度

  • 風観測・予測制御システムの総合調整
    予測制御システムと観測システムを結合し、風観測・予測制御システムを構築し、システム単体の機能・性能確認、調整を行う。

 なお、実用化に向けて解決が必要な課題として、成層圏の風の実態が明らかになってきており、成層圏突然昇温*1)に伴い30m/sを越える強風が数日に亘り継続して発生していることが分かっている。これは年平均で1回程度の割合で冬季のみに発生するもので、過去に発生した最大のものを図3-2に示す。
 その対策としては、飛行船システムの推進制御力の向上、衛星回線を用いた追跡管制技術の確立の他、強風の発生を精度よく予測し、上昇/下降あるいは回収の判断を下すために必要な高度な風観測・予測技術の確立を進めていくことが必要であり、これらについては、今後具体的に検討していく計画である。
 また、この1月に稚内で実施したゾンデ観測の結果、高度により風速の強弱が数時間の周期で変化していることが確認されている(図3-3参照)。
 この様子は、風の弱い高度を適切に選び、飛行船を上昇/下降させることにより強風を回避することができ、運用率の向上につながることを示しているとも考えられることから、高度20km前後の風の詳細な調査も併せて行うこととしたい。
 さらに、将来の多数のプラットフォームの運用を考慮した場合の経済的な風観測・予測システムの構成などについても検討も行う予定である。 *1)成層圏突然昇温:
冬季において、高緯度域成層圏の気温が突然25度以上も上昇する現象で、統計的に年平均1回程度発生していると言われている。結果として、気圧配置が変わり、日本付近の上空で気圧間隔が狭まり、通常よりはるかに強い風が観測されることがある。

(C)飛行・運用シミュレーション技術
(i)平成13年度

  • 飛行船システムの要素技術試験結果の反映による模擬精度の向上
    風洞試験及び水槽試験により得られる飛行船の静的、動的な空力特性、プロペラ推進特性のデータを解析・処理し、結果をシミュレーションモデルに適用する。また、熱特性試験及び浮力制御システム試験における外部の熱環境による内部ガスの状態変化及び吸排気ブロア、バルブの作動に伴う飛行船の姿勢変化、位置変化等を再現できるようシミュレーションモデルの表現式及びパラメータ値の調整を行う。

  • 実時間処理機能の付加
    飛行船の動作は比較的遅いので、実際の時間に合わせた訓練や飛行中のオンラインシミュレーションを行うために計算の中に待ち時間を設ける。また、搭載コンピュータの早い動きにも合わせる手段を付加する。

  • 遠隔操縦機能の付加
    通常は自律的に制御して飛行する飛行船に、必要に応じて指令信号を地上から送信して、制御を行う。その際、数値コマンドの送信の他、遠隔操縦として、操縦桿を運用者が動かすことによって作られるコマンドデータを送信できる機能を付加する。

  • Go/NoGo判断支援機能の付加
    運用シーケンスにおける各イベントにおいて運用の開始又は続行の可否を判断するための情報を作成、出力する機能を付加する。この情報は、飛行経路、電力需給状態、通信回線状態、飛行安全等のシミュレーションの結果により作成する。

(ii)平成14年度

  • 飛行・運用シミュレータの総合調整
    飛行・運用シミュレータ装置、実時間処理飛行シミュレータ装置、飛行計画策定支援装置、Go/NoGo判断支援装置を結合して飛行・運用シミュレータを構築し、機能確認及びインターフェース調整を行う。