テクノスーパーライナーの運航


ミレニアム・プロジェクト「テクノスーパーライナーの運航」
TSLトータル・サポート・システム最終評価報告書


1.ミレニアム・プロジェクト「テクノスーパーライナーの運航」の概要
(1)ミレニアム・プロジェクト
 平成11年12月、夢と活力に満ちた新しいミレニアム(千年紀)を迎えるため、今後の我が国経済社会にとって重要性や緊要性の高い情報化、高齢化、環境対応の3つの分野について、技術革新を中心とした産官学共同プロジェクト(ミレニアム・プロジェクト)が内閣総理大臣により決定された。
(2)「テクノスーパーライナーの運航」の概要
1)目標
 2002年度までに、画期的な超高速船(テクノスーパーライナー)の運航を開始し、海上輸送へのモーダルシフトを推進する。
2)プロジェクトの概要
TSL保有管理会社の設立 : TSLの建造・保有・管理等を行い、運航事業者にリースするTSL保有管理会社を、民間主体(造船会社等)の出資により設立し、TSL第1船の建造を行う。
TSLトータル・サポート・システムの開発 : 2000年度までに、運航中のTSLの船体・機関の状態及び部品の劣化状況などをリアルタイムで監視・解析しながら最適な運航支援や保守管理を行う、総合的な技術支援システム(トータル・サポート・システム)を開発する。
TSLの運航開始、トータル・サポート・システムの改良 : 2002年度までに、TSL第1船を運航するとともに、トータル・サポート・システムの運用を開始。TSLの実運航により得られたデータを収集・解析し、トータル・サポート・システムを改良。
(3)TSLトータル・サポート・システム評価・助言会議の経緯
 ミレニアム・プロジェクトについては、有識者による評価・助言体制の確立を図るという新しい試みが取り入れられた。これを受けて、「テクノスーパーライナーの運航」プロジェクトのうち、TSLトータル・サポート・システムについて、専門的見地から客観的・中立的な評価を行うため、国、運輸施設整備事業団、有識者等で構成される「TSLトータル・サポート・システム評価・助言会議」(別紙1)が設置され、平成12年6月に第1回評価・助言会議が開催された。
 その後、平成13年6月の第3回会議で平成12年度評価報告書、平成14年6月の第5回会議で平成13年度評価報告書をまとめ、公表してきた。今回は、平成14年度事業実施報告書を基に、これまでの実施事業の評価を行い、本評価・助言会議としての最終報告書をまとめる。
 
2.最終評価報告
2.1研究開発の経緯
 TSLの研究開発(平成元―7年度)の終了後、TSLの事業化について検討が行われ、その結果、建造コストが従来の船舶に比べ高額であることや、低コストで信頼性の高い保守管理システムや合理的な検査システムが確立されておらず、新技術の使用環境が未成熟であること等が事業化の障害になっていることが明らかになった。これを受け、TSLの事業化を支援するためのスキーム(別紙2)[PDF]が整備されてきたところである。
 トータル・サポート・システム(以下、TSS)の開発は、本支援スキーム構築の一環として、平成12年度より実施されてきたものである。
2.2評価
(1)推進体制
 (株)テクノ・シーウェイズを中心とした開発体制は、全体計画の立案、要素技術の開発、実船ベースでの各種システムの構築及び実用化へのスムーズな技術移転等において極めて効率的な研究推進体制である。
 また、(株)テクノ・シーウェイズが直接に本事業を実施することは、実船ベースでの各種システムの構築が円滑に進むことが期待され、システムの信頼性、実用性がより高まるものと判断する。
(2)研究・調査方法の適切性
 研究・調査方法は適切であり、気象海象予測システムを例にとれば着実な改善が見られる。また総じて各システムは、分析・予測結果をビジュアル化し操船者や関係者にとってわかりやすいものとなってきており、同時に「希望」船長ヒアリング等を絶えず実施する等、単なる技術先行ではないTSSの目的に合致した進め方となっている。
(3)実施目標の達成度
 高度モニタリングシステム、運航支援システム及び保守管理システムの要素技術において優れた成果を挙げ、実施目標を十分に達成している。また当初の計画にはなかったものの状況の変化に対応して浮上機関保守管理システムを新規に開発したことも適切である。
 ナショナル・プロジェクトにおいて、開発された技術成果がなかなか実用化に繋がらない例が少なくなかった。本プロジェクトは、その成果が、TSLの運航に繋がり、東京―小笠原間の時間的距離を大幅に短縮するという公共政策的にも高い成果を挙げている。
2.3研究開発の成功の要因
 TSSの研究開発は、平成14年度までに要素技術の開発が終了し、所期の目標を達成している。効率よく研究開発を推進できた要因として次の点が上げられる。
1)技術的基盤
 当該分野の研究開発は、これまで、我が国造船業において先駆的な研究が行われ多くの成果を上げており、TSSの研究開発を進める上の技術や情報等、効率よく研究を進める上での技術的基盤があった。
2)明確な研究開発目標
 TSSの研究開発は、2.1に示すように、TSL実用化の中での課題の位置付けが明確であること、また、実用化第1船が平成17年春に小笠原航路に就航することが確定し、TSSの実用化第1船搭載スケジュールの詳細が決定されたこと等、実施にあたっての明確な目標があった。
3)効率のよい研究開発体制
 TSSの開発は、(株)テクノ・シーウェイズにより行われてきている(平成14年以前は、(株)TSLシステムズ )。(株)テクノ・シーウェイズでは、TSLの研究開発に携わってきた技術者が社員となってTSSの開発を実施しており、その人のもつ有形・無形のTSLのノウハウを研究開発に反映させることができた。
 また、ノウハウ以外に、(株)テクノ・シーウェイズは実用化第1船を建造・保有・保守管理することから、同船の建造・保有・保守管理に係わる情報を即座に入手しTSSの開発に効率的に反映することができること、さらに、同社がTSSの研究開発を実用化まで一貫して行うことから、成果の「研究開発フェーズ」から「実用化フェーズ」の円滑な移行が可能である点もあげられる。
 
3.今後の進め方について
 平成15年度以降、TSL実用化第1船への搭載するためのTSSの設計・製作を行うにあたり、以下の点に配慮して開発を進められたい。
※(株)テクノ・シーウェイズの前身であり、資本金2億円、三井造船の100%子会社として平成12年12月発足。(株)テクノ・シーウェイズは(株)TSLシステムズの増資により社名・定款を変更し設立(平成14年6月)。
(1)システムの信頼性の向上
1)陸上/海上試験、実船による検証を通じてデータ及びノウハウを蓄積し、それをシステム改良に生かすことで、システム全体としての信頼性、経済性を高めて頂きたい。
他国でも高速船の建造が盛んであるが、それらのデータも参照し、故障予知や運航支援に活用すべき。
当初の開発計画からずれてしまったが、新開発計画に沿って、確実な実船でのデータ収集を行ってほしい。
平成14年度までの設計、振動解析、従来の陸上データの評価等に引き続き、平成15年度の地上試験並びに平成16年度からの実船検証によるデータの蓄積並びにその分析を有効に進めてほしい。(性能値及び音響・振動特性のトレンド評価、予防診断評価など)
平成15年度の各システムの設計・製作、動作チェックについては、十分確認、検証することが重要であると思われる。(特に、音響分析、振動分析などは実例が少ないため)
TSSを装備したTSLが運航に供されることにより、貴重なデータが蓄積されていくので、そのデータを有効に活用することが大切である。
2)今後の改良等に活用するため、TSSの効果を定量的に評価する手法の確立が望ましい。
3)今後各システムを完成し、システムの実作動を確認する事になろうが、どの内容、どのレベルで満足とするかのクライテリアを明確にしておくことが必要。実運航でのトラブルを最小限とするため、当初の検証時の達成レベルは通常より厳しい設定とすべきである。
4)本成果の活用により、ガスタービンのオーバーメンテナンスの回避等、合理的な整備が可能となり、TSL普及のための課題であったメンテナンスコスト削減が達成できるものと期待する。
(2)システムの運用
1)例えばガスタービンのオーバーホール時間を延長するためには検査機関の判断が必要となる。検査機関も含めた(あるいは検査機関を想定した)業務フローを検討するべき。
TSSの有用性が証明されれば、それが保険や法規に反映されるように希望する。
2)TSSの円滑かつ有効な運用を行うため、陸上の支援体制だけでなく、乗組員の役割を明確にするとともに、乗組員の教育、訓練などを行うことが重要と思われる。
各危険度レベルに応じて具体的な指示が出ると考えられるが、陸側と本船側で認識・理解度の統一化を確実にすべき。
管理体制、運航パターンがほぼ分かってきたので、システムが乗組員−陸上運航管理員−メーカ間等でどう現実的に運用・利用されるかの検討が必要と思われる。
3)TSL本体プロジェクトの進捗とも連携し、自主的な保守整備に向けた体制の確立が望まれる。
タービンについては、緊急時の部品供給やバックアップ対策も視野に入れた保守計画とすべき。
(3)最新技術の取り入れ
1)センサー技術は日々進歩しているので、既存のTSSシステムを活用しつつ、改善の努力も期待したい。
2)通信系のシステムについては、今後とも技術進展にキャッチアップしつつ、コスト、精度、リスク回避等の制約はあるが、最適な仕組みづくりを継続されたい。
3)実験を今後も継続することで新しいアイデア、技術が出てくることもあると思うので、それらを積極的に取り入れるよう配慮されたい
(4)システムの汎用性
1)本成果のうち推進機関保守管理システムは他のガスタービン船にも将来的には利用できるものと考えられることから、これを念頭においてシステムの汎用性を向上させることを期待する。
本システムがTSLのみならず他の船舶にも売れるような取り組みを継続的になされたい。


(別紙1)


TSLトータル・サポート・システム評価・助言会議



議 長影 山 和 郎東京大学大学院工学系研究科教授
波 江 貞 弘独立行政法人海上技術安全研究所
環境・エネルギー研究領域長
大和田 英 二(財)日本海事協会検査技術部主管
金 子  仁(株)日本海洋科学海技監督
笠 島 勝 治(株)三菱総合研究所関西研究センター長
辻  一 郎運輸施設整備事業団技術部長
矢 部  哲国土交通省大臣官房技術審議官