本日ここに、被爆五十五周年長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典が執り行われるに当たり、原子爆弾により尊い命を奪われた数多くの方々の御霊に対し、謹んで哀悼の意を捧げます。そして、今もなお、原子爆弾の後遺症に苦しんでおられる方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。また、原子爆弾で破壊された廃墟の中から立ち上がり、今日の「国際文化都市長崎」を見事に築かれました市民の皆様の御尽力に対し、心から敬意を表します。
人類史上唯一の被爆国である我が国は、長崎、広島の悲劇を再び繰り返してはならないとの固い決意の下、日本国憲法を守り、「非核三原則」を堅持するとともに、あらゆる機会を捉え、核兵器がない世界と恒久平和の実現を訴え続けてまいりました。
東西冷戦が終焉した後、米ロ等核兵器国の核軍縮が大きく進展し、包括的核実験禁止条約が採択されるなど、大変勇気付けられる動きが見られました。然るにその後、核軍縮・不拡散を巡る国際情勢は厳しくなり、新たに核実験に踏み切る国が出現するなど、核不拡散体制は新たな挑戦をつきつけられ、核兵器廃絶への道のりは依然として厳しい状況にあります。こうした中、去る五月にニューヨークの国連本部で開催された核兵器不拡散条約運用検討会議において、核軍縮及び核不拡散のため今後とるべき実際的な措置が盛り込まれた最終文書が採択されました。これは核不拡散体制を堅持・強化するとともに、核軍縮を一層推進していく上で、大いに歓迎すべきことであります。会議においては、我が国も、包括的核実験禁止条約の早期発効と発効までの核実験モラトリアムや、カットオフ条約の交渉の早期開始、第二次戦略兵器削減条約の早期発効とその完全な実施といった内容の「八項目提案」を積極的に提出し、その成功に大きく貢献しました。更に先般の九州・沖縄サミットにおいても、我が国は議長国として核兵器不拡散条約運用検討会議の成果に基づき、核軍縮・不拡散に向けた取組を促進することでG8の合意形成に尽力し、沖縄から世界に向けて明るく力強い平和へのメッセージを発出したところです。
こうした中、国内外のNGOが核兵器廃絶に向けて取組を進めており、今年十一月には、長崎市において「核兵器廃絶ー地球市民集会ナガサキ」が開催され、世界のNGOが結集されますことは、まことに意義深いことであります。
我が国政府は、引き続き核不拡散体制を堅持・強化し、核軍縮の一層の進展により核兵器のない世界を実現するとともに、全ての人々がより安定した世界に生きられるよう、今後とも積極的な役割を果たしてまいります。それが唯一の被爆国である我が国に課せられた使命であると考えます。
また、被爆者の方々に対しましては、平成六年十二月に制定されました「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」に基づき、保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護施策の充実を図ってまいりました。今後とも高齢化の進行など被爆者の方々の実状を十分酌み取りながら、被爆者の方々に対する援護施策の推進に向けて誠心誠意努めてまいります。
終わりに、原子爆弾の犠牲者の方々の御冥福と御遺族並びに被爆者の皆様の今後の御多幸を心からお祈りし、併せて、参列者並びに長崎市民の皆様の御健勝を祈念いたしまして、私のあいさつといたします。
平成十二年八月九日
内閣総理大臣 森 喜 朗