内閣総理大臣演説等

内閣総理大臣式辞



 本日ここに、天皇皇后両陛下御臨席の下、全国戦没者追悼式を挙行するに当たり、政府を代表し式辞を申し述べます。

 先の大戦が終わりを告げてから今日まで、55年の歳月が過ぎ去りました。苦難に満ちた往時をしのぶとき、今なお悲痛の念が胸に迫り来るのを禁じ得ません。

 あの苛烈を極めた戦いの中で、祖国を思い、家族を案じつつ戦場に散り、戦禍に倒れ、あるいは戦後、遠い異郷の地で無念のうちに亡くなられた3百万余の戦没者の方々に思いを馳せ、ここにその御冥福を心からお祈りの申し上げます。

 また、あの戦いは、我が国のみならず多くの国々、とりわけアジアの近隣諸国に対しても多くの苦しみと悲しみを与えました。私は、このことを謙虚に受け止め、深い反省とともに、謹んで哀悼の意を表したいと思います。

 戦後我が国は、平和を国是として焦土の中から立ち上がり、国民のたゆまぬ努力により、幾多の困難を乗り越え、目覚しい発展を遂げてまいりました。

 この平和で豊かな今日においてこそ、我々は、過去を謙虚に振り返り、戦争の悲惨さや、そこに幾多の尊い犠牲があったことを次の世代に語り継ぎ、再び戦争の惨禍を繰り返すことのないよう、恒久平和の確立に力を尽くしていかねばなりません。そして、この責務を十分に果たしていくことこそが、過去に対する償いとなり、犠牲者の方々の御霊を鎮めることとなると確信するものであります。

 二十世紀は、世界の多くの国々が、科学技術や生活水準の面で、歴史的な進歩を遂げた世紀でありましたが、一方で戦争により多くのいたましい犠牲を生んだ世紀でもありました。

 二十世紀の終わりという大きな節目の年に行われるこの式典に当たり、私は、先の大戦から学びとった多くの教訓を改めて深く心に刻み、来るべき二十一世紀に向けて世界の平和と繁栄により一層貢献していくとともに、心豊かに暮らせるより良い社会の実現に向け、全力を尽くしていくことを改めてお誓い申し上げます。

 終わりに、戦没者御遺族の方々の今なお消えぬ深い苦しみ、悲しみに思いを致し、今後の御平安を切に祈念申し上げ、式辞といたします。

     平成12年8月15日

内閣総理大臣   森   喜朗