【司会】それでは、ただいまから内閣総理大臣の記者会見を行います。まず、総理からお願いいたします。
【森総理】明けましておめでとうございます。冒頭、私から、1月6日に実施されます中央省庁等改革について申し上げたいと思います。
この改革は、我が国の経済社会全体の構造改革であります「日本新生」に向けまして、まず、国が自らを率先改革し、国政に機動性と弾力性を取り戻し、国本来の役割を果たすことができるよう、「政府の新生」を図るものであります。
これまでの1府22省庁が、行政目的別に大くくりに再編されまして、1府12省庁となります。私は、この改革に万全の備えをする必要があると考え、昨年12月に内閣改造を行いましたが、これにより名実ともに新生政府がスタートすることになります。
改革の本旨は、「国民の立場に立った総合的、機動的な行政」の確立であります。
これまでの組織の所管や利害を超えて、政策の融合化、合理化・統合化を進め、省庁再編のメリットが国民にとってより明確になりますように努力していく考えであります。
例えば、新しい国土交通省では道路、鉄道、空港などをより一体的に整備してまいります。
厚生労働省では、保育などの子育て支援サービスと育児休業などの働く人への対策等を組み合わせ、総合的な少子化対策に取り組むことができます。
総務省では、ワンストップサービスなど地方公共団体と郵便局の連携などが、より円滑に進められると思います。
文部科学省では、類似するプロジェクトを統合することで、より効率的な研究開発が可能になります。
また、環境庁を環境省に格上げし、より強力な環境行政を進めてまいります。
既に平成13年度の予算編成でも施策の整理合理化を進めるとともに、省庁の枠組みを超えた施策の連携を進め、合理化・効率化を進めております。
省庁改革を進める大きな目的に、政治主導の確立がございます。政治主導の確立のためには、まず、内閣が実質的な政策論議を行い、各省庁に対して強い指導力を発揮しなければなりません。今回の改革により設置される内閣府は、経済財政諮問会議、総合科学技術会議などが置かれ、横断的な企画・調整機能を担うものであります。私は、これらの会議を活用し、幅広い視野からの政策を検討するほか、民間の優秀な人材を積極的に登用しながら、内閣の首長として国政に対し強力なリーダーシップを発揮していく決意であります。
同時に、各省庁においても、大臣の政治的な政策判断を補佐し、政治主導を確立するため、多くの政治家が副大臣、政務官として行政府に入ることになります。
一方で、政治と行政に対する国民の信頼を確保することも必要であります。このため、私は、新たに「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」を設け、大臣を始めとする政府の要職にある政治家が、規範にのっとって自らを律し、「国民全体の奉仕者」として、その職責を十分果たすことができるよう特段の意を用いる考えであります。
省庁改革は、行政改革の入口であります。行政改革には不断に取り組まなければなりません。昨年12月に決定いたしました行政改革大綱は、21世紀の行政の在り方を示す指針であり、特殊法人改革、公務員制度改革、公益法人改革や、規制改革、地方分権などを引き続き強力に推し進めていかなければなりません。このため、橋本元総理に行政改革担当大臣をお願いしておりますが、1月6日の省庁改革に合わせて専任の事務局も発足させることといたしておりまして、内閣を挙げて行政改革に取り組んでいく考えであります。
省庁改革は、新しいシステムが実際の政策遂行に活かされてこそ、その成果が国民のものとなります。
現在、各省庁では明後日の実施に向けて最終的な準備を行っておりますが、新たな行政システムの下で政府が持てる力を政策の遂行に糾合し、国民の皆様の御期待に応えられますように最大限の努力をしていく考えであります。
国民の皆様の御理解と御協力を心からお願いいたします。
【司会】ありがとうございました。それでは質問に移らさせていただきます。
【質問】第1の質問で、地方分権と首都機能移転について首相の意欲をお聞きしたいんですけれども、地方分権で税財源の委譲を何年ごろまでに実行されますか、それから、首都機能移転地を首相として何年ごろまでに具体化させようとされますか、お隣りにおられます扇長官とか、石原都知事らをどう説得されますか、その点をお願いします。
【森総理】真の地方分権実現に向けて、地方公共団体が活力のある地域社会の実現に責任を持って取り組めるようにするために、財政面におきましても自律的な運営を行えるようにすることが重要であると考えております。このため、国と地方の役割の分担を考えながら、国・地方を通ずる行財政制度の在り方を見直しますとともに、国・地方の税源の配分の在り方について検討することが必要であると考えております。
しかし、現在のようなこういう危機的な財政状況の下では、国と地方の税源の配分の見直しするということは現実的にはなかなか難しいことではないかというふうに考えておりまして、それにはまず、今、我が内閣として最も大事な重点政策であります景気回復を、まず確かなものにしたい。そしてそのことが、こうしたこれからの行財政全体に対する取組のベースになっていくのではないかというふうに考えております。
したがいまして、今後景気が本格的な回復軌道に乗りました段階において、国・地方を通ずる財政構造改革の議論の一環として取り組んでまいりたいと、このように考えております。
それから、首都機能についてのお尋ねでございますが、首都機能移転に関しましては、平成11年の12月20日に移転先候補地に関する国会等移転審議会の答申が出されたわけでありまして、翌21日に小渕前総理から衆・参両院の議長に答申が報告をされたものであります。
各方面には多くの御意見があることは十分承知をいたしております。今後は国会等の意見に関する法律に基づきまして、国会において大局的な観点から御検討いただけるものと我々は考えております。
政府といたしましては、法に定める移転の具体化に向けた検討責務に基づいて、国会における審議が円滑に進められますように積極的に協力していきますとともに、国民に幅広く議論を喚起していきたいと、このように考えております。
【質問】それでは2番目の質問ですけれども、特に地元の伊勢市の記者クラブの方から要望がありまして質問させていただきますが、中部電力さんが北川知事の県議会発言を受けて南島・紀勢両町の芦浜原発計画を断念されました。しかし、地元では、まだ原発立地を巡る動きが完全に消えておらず、中電さんも正式に候補地先はまだ県内にあるというふうに言われています。
それから、世界の原発を巡る動きは大きく変化しておりますし、チェルノブイリ原発は先ほど完全に発電を停止しましたが、世界では今、新規の原発の建設をやめたり、見直す考えが出てきております。
こうした内外の情勢を踏まえ、国はこれまでの原発計画を見直す考えはないでしょうか。
それから、閣議決定での芦浜原発計画の正式撤回はないのでしょうか。御所見をお伺いしたいと思います。
【森総理】原子力政策を含むエネルギー政策の在り方については、エネルギー資源の輸入依存度等、各国固有のエネルギー事情がございます。また、環境問題への対応等の観点もございまして、各国がそれぞれの条件、環境に応じて独自に判断をしていくものであろうと私はまず認識をいたしております。
エネルギー資源の大部分を輸入に頼らざるを得ない、そしてエネルギー供給構造が非常に脆弱に我が国におきましては、環境保全及び効率化の要請に対応しながら、エネルギーの安定供給を確保するための総合的な施策を講ずることが必要であると、このように考えております。
原子力発電につきましては、燃料供給や価格の安定性に加えまして、発電過程においてCO2 を発生しないという環境特性を持っているわけでありまして、このため原子力発電は引き続き我が国のエネルギー供給におきましては、重要な位置付けを有している。そういう判断の下に、今後とも相当程度原子力発電に依存していくものになる、このように認識をいたしております。
したがいまして、政府といたしましては、引き続き、安全確保を大前提にしまして、地元の御理解と御協力を得つつ、一歩一歩着実に原子力立地を進めてまいりたいと考えております。
【質問】冒頭の発言にもございましたが、昨年12月に閣議決定した行政改革大綱に記されたように、行革の次なる大きな課題は、特殊法人、公益法人改革だと思います。大綱では5年という期限を区切り、特殊法人などを大幅に整理、廃止する方針を打ち出していますが、自社さ政権以来これまでも改革が叫ばれながら、なかなか進展してこなかった経緯があります。今後、具体的にどう取り組んでいくのか、総理の考えをお聞かせください。
また、橋本龍太郎行革・沖縄担当相は、5年でなく最初の1年で終わる決意で臨むと語っています。この考えについてはいかがでしょうか、お願いします。
【森総理】今、御質問の中にございましたように、行政改革は我が内閣にとりまして最重要課題の1つでありまして、1月6日に新たな府省体制が発足いたしますが、この新たな体制にやはり魂を吹き込むという意味からも、引き続き本格的な改革を進めてまいりたい、私は昨年から常にこのことを申し上げてまいりました。
先般、政府と与党が一体となりまして取りまとめました行政改革大綱は、正に21世紀の行政の在り方を示す指針として、これを策定したものでございまして、平成17年度末までを集中改革期間として、特殊法人、公務員制度及び公益法人の改革等を進めて、特に平成13年度中に、これらの改革の具体的な青写真を策定してまいりたいと考えております。
このため、1月6日の省庁改革時を期しまして、私が本部長となりまして、新たな「行政改革推進本部」を設置いたしますとともに、専任の行政改革推進事務局、約50名の体制を準備いたしておりますが、これを内閣官房に新設いたしまして、特殊法人等改革、公益法人改革及び公務員制度改革に、政府としてもまず先頭を切って取り組んでいきたいと考えております。
このうち、特殊法人、公益法人等の改革については内外の経済社会情勢の変化を踏まえまして、特殊法人等については法人の事業目的の達成度、官民の役割分担の在り方、その事業に関わる費用対効果等の観点から、公益法人につきましては官民の役割分担及び規制改革の観点等から、それぞれその抜本的な見直しを行わなければなりませんが、その際13年度中に整理合理化計画を策定するという基本スケジュールを確実に実現するため、できるだけ見直し作業のスピードを早めまして、早期に改革の方向性を明らかにしていくことが必要であると考えております。
また、公務員制度の改革につきましては、今年6月には基本設計をまとめることといたしておりまして、これを実現するための法改正を含め、着手可能なものから逐次実施することが必要であると考えております。
この件につきましては、昨年末、橋本担当特命大臣と我が党の野中本部長、当然、与党3党で協議をしまして、この政府与党の両責任者が話し合っておりまして、その結果も私は橋本さんから直接電話で報告を承っております。
いずれにいたしましても、これらの改革につきましては、正にこれからが正念場でございまして、私としては、強い決意を持って全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。
【質問】昨年も1度伺っていますが、日朝国交正常化交渉についてです。ここ数年間、対北朝鮮政策については、日米韓の緊密な連携を保ちながら進めてきましたが、昨年末クリントン大統領が、準備を進めていた訪朝計画を断念すると発表しました。ブッシュ共和党政権に移ると、ペリープロセスも停滞するのではないかという分析も出ています。
こうした、国際的な状況変化を踏まえて、総理は日朝国交正常化をどうのように取り組んでいかれるおつもりなのでしょうか。中断している政府間交渉再開の目途も含めまして、お考えをお願いいたします。
【森総理】日朝国交正常化交渉につきましては、昨年の4月に約七年半ぶりに交渉が再開をされたわけであります。それ以来、10月末の北京での会談まで、3回にわたりまして交渉が行われました。これらの交渉を通じまして、双方の各々の基本的立場が明らかにされまして、交渉は双方の立場の共通点を今、探っていく、そういう段階に入っているというふうに考えております。
次回の会談につきましては、前回会談での協議を踏まえまして、更によく検討を行いまして、双方の準備が整ったところで行うこととなっておりますが、いずれにいたしましても、政府としては、韓米両国と緊密に連携をしつつ、北東アジアの平和と安定に資するような形で、第二次世界大戦後の日朝間の正常でない関係を正すという基本方針の下に、日朝国交正常化交渉に粘り強く取り組んでいく考えでございます。
今、アメリカのことも御質問の中にございましたけれども、北朝鮮がこうして国際社会の中に責任を持っていこうという動きが見られたということは、これは非常に好ましいことだと私も考えておりますし、沖縄のサミットでもG8首脳国でこれを促進をさせて、バックアップ体制を取ろうという決議をしたところでございます。
こうした北朝鮮の窓を開くと言いましょうか、ドアを開くと言いましょうか、そういう御判断になってこられたということは、これはやはり、これまでの日韓米3国の、より協調した対応の仕方が、そうした北朝鮮が国際社会の中に参加していくという好ましい姿になってきたものだろうと思いますので、これは我々としては歓迎をしなければならないと思っております。
しかし、それぞれの国よっては、それぞれ北朝鮮との経緯や過去のいろいろな事柄については、それぞれ違うわけでございますから、私どもとしては特に人道上の問題、あるいは安全保障上の問題、こうした懸案の解決に向けて全力を傾けていきたいと考えております。
【司会】ありがとうございました。これで内閣総理大臣の記者会見を終了いたします。ありがとうございました。
【森総理】ありがとうございました。本年もよろしくお願いいたします。