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首相官邸 Prime Minister of Japan and His Cabinet
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平成24年3月27日ソウル核セキュリティ・サミットにおける総理ステートメント

1.3月27日午前セッション(9時00分~11時30分)
 テーマ:核セキュリティ強化のための国際協力、国内措置、将来への約束


(序)

李議長、このような発言の機会を与えて頂きありがとうございます。

東日本大震災から1年あまりを経ました。これまでに各国から寄せられた心温まる励ましと支援の数々に改めて感謝します。それらに勇気を得て、被災地の復興は着実に進展しています。

今般の事故は自然災害に起因するものでしたが、そこで得られた知見や教訓は、原子力施設へのテロリストによる攻撃などの「人為的な危害」に対する備えにも生かしていかなければなりません。

東京電力福島第一原発の事故からの教訓については、昼食時に譲り、このセッションでは我が国の国内的取組と国際的取組について申し述べます。


(核セキュリティ強化のための国内的取組)

まずは、我が国の国内における取組です。

今般の原発事故を踏まえ、我が国は、新設予定の原子力規制庁をその中心に据えた体制を整備し、国内の核セキュリティのための措置を抜本的に強化します。私からは、そうした措置について紹介し、各国の参考に供したいと思います。

まず、我が国は、今回の事故で露呈された原子力施設の脆弱性を克服します。

  1. 今回の事故で、全電源喪失が、施設全体の安全を脅かすことが明らかとなりました。このような事態は十分に想定されていませんでした。我が国は、電源装置を増強し、電源の脆弱性を補強します。これはテロ対策にも資するものです。
  2. また、今回の事故の収束作業は、予想を超えた高放射線量との闘いでありました。我が国は、高放射線量下でも即応行動を可能とするため、放射線防護車、サーベイメータ、防護服等の装備を充実させます。
  3. さらに、今回の事故では現場の要員の訓練の不十分さが露呈し、ハードのみならず、ソフトの重要性も明らかとなりました。特に、現場での異なる組織の間での連携が欠かせません。我が国は、対応手順、連携要領を強化して訓練の徹底を図るとともに、今後、警察と陸上自衛隊の師団等との間、海上保安庁と海上自衛隊の間で、共同実動訓練を実施します。

次に、対テロ特有のセキュリティ対策も強化します。

  1. 第一は、人的警備体制の強化です。武装治安要員を増強し、巡視体制も強化します。個人のプライバシーに配慮しつつ、施設で働く者の信頼性を確認する制度についてもさらに検討を進めます。
  2. 第二に、施設防護・装備の充実です。原子力施設の防護本部の二重化、屋外の重要設備の防護の強化などを行います。
  3. 第三は、情報セキュリティ強化です。サイバー攻撃に備え、原子力施設のコンピューターシステムを外部ネットワークから遮断しました。

(核セキュリティ強化のための国際的取組)

次に我が国の国際的な取組についてです。

「核セキュリティ」は、「不拡散」や「軍縮」と同様に、一国のみでは成し遂げられません。防護が手薄な国で盗み取った核物質を、別の国でテロ行為に使われることを回避するためにも、すべての関係国が連携を密にし、国際協力を深めることが不可欠です。

今後の研究開発によって、核物質の検知・鑑識技術が確立すれば、核不拡散の取組の進展にも貢献することができます。

この点に関連して、イランや北朝鮮の核開発は憂慮せざるを得ない事態であります。また、最近北朝鮮が予告した「人工衛星」と称するミサイルの発射については、国際社会の不拡散の努力にも反し、国連安保理決議違反であり、北朝鮮が発射を自制することが国際社会の強い要請であります。

我が国は、核セキュリティ分野での国際協力を促す基盤整備のため、次の3点の協力にコミットいたします。

  1. 第一に、途上国への人的・物的支援の充実です。特に、一昨年末に設立した「核不拡散・核セキュリティ総合支援センター」を通じ、人材の受入れや研修を拡充します。
  2. 第二に、志を同じくする国々との連携を強化します。今般のサミットにおいても、輸送分野での危険回避の取組のとりまとめを担い、各国主導の取組に幅広く参画します。今後とも、各国の先頭に立って核セキュリティの啓発に努めます。
  3. 第三に、IAEAとの連携も強化します。「IAEA核セキュリティ基金」に引き続き資金を拠出するとともに、IAEA勧告の実施に関するベストプラクティスを各国と広く共有します。

なお、兵器用核物質の生産を停止させることは、核軍縮と共に、核セキュリティの観点からも有意義です。兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の早期交渉開始を参加各国に呼びかけたいと思います。


(結語)

未曽有の災害によって、被災地の経済社会には大きな影響が生じました。しかし、科学を基礎に発展してきた人類には、事故の経験を将来の発展に生かしていく力と知恵があると確信します。

ここに集まる我々は、科学技術の成果をテロ攻撃から守るため、知見や教訓を分かち合い、協力し、資源を有効に活用しながら、将来の世代に安全と繁栄を引き継いでいく責務があると信じます。そうした責務を果たしていく決意を申し述べ、私の発言とさせていただきます。


2.3月27日ランチ・セッション(12時30分~14時00分)
 テーマ:核セキュリティと原子力安全の相乗効果


(序)

李議長ありがとうございます。

東京電力福島第一原発の事故は、大規模な津波という未曽有の「自然災害」に起因するものであり、核セキュリティの議論が念頭に置いているのは、原子力施設に対するテロリストの攻撃などの「人為的な危害」によるものです。

なお一層の精査が必要であり、すべての具体的な対応策が相互補完的であるとは限りませんが、原子力災害の「発生要因」が異なっていたとしても、いずれにも共通する教訓があるはずです。


(3つの教訓)

技術的な反省点や教訓は多岐に渡りますが、この場において各国首脳の皆様と是非とも共有したい3つの「大きな教訓」があります。これらは、自然災害に起因する事故だけでなく、原子力施設へのテロリストによる攻撃などにも共通する「戒め」です。

  1. 第一に、「想定外を想定する」ことの重要性です。
    • 将来の危機に備えた対応策を練り上げるには、一定の仮定に基づく「想定」を置く必要があります。しかし、この「想定」が《起こりうる最悪の事態》として独り歩きしてしまうと、「想定」を超える事態へのしなやかな対応力が奪われてしまいます。
    • 今般の事故では、まさにそうした状況が生まれてしまいました。東京電力福島第一原発で震災前に「想定」した津波の高さは5メートル余りでしたが、実際に到来した津波は15メートルを超えました。非常用の電源やポンプが水没する場所に設置された不備も、炉心損傷に至る過酷事故を想定した準備の不足も、周辺住民の避難に関する混乱も、こうした甘い想定に囚われていたことに起因します。
    • 原子力災害がひとたび発生してしまうと、いかなる要因でもたらされたものでも、長期かつ広範囲に悪影響をもたらします。だからこそ、「想定外の事象も起こりうる」という前提で、対応策を突き詰めて考え抜いておかなければなりません。
    • 大自然の営みは時に人知を超えますが、人間の想像力にも際限はありません。人為的な破壊行為には、自然災害以上に、我々の想像力の幅が試されることを肝に命じなければなりません。
  2. 第二に「現場を疎かにしてはならない」ということです。
    • 事故対応の過程では、電源車を確保しても地震後の道路が寸断され渋滞で現場に辿り着けない、現場に着いても電源プラグの形状が異なって接続できない、高放射線量に阻まれてベントを手動で操作することができなかった、といった現場レベルでの不具合が次から次へと生じました。
    • 原子力災害は、時間との戦いです。全ての電源が失われれば、一日も経たずして炉心が損傷し、大きな危機が訪れます。にもかかわらず、自衛隊や警察を含めた関係者の連携を確立するためにも、貴重な時間が多く費やされてしまいました。
    • 関係者が実地訓練を通じ「具体的に何をすべきか」という点をきめ細かく検証し、あらかじめ共有できていれば、事故対応はより円滑に進められたはずだと思わずにはいられません。
  3. 第三に、「安全確保は不断の取組である」ということです。
    • 「最高水準の安全を達成した」と立ち止まった瞬間に、「過信」と「安全神話」の誘惑が始まります。常に、「最悪の事態にどう対処するか」という厳しい問いかけを続けなければなりません。
    • 残念ながら、我が国は「安全神話」に囚われ、「全ての電源が失われた場合にどうするか」といった問に対して、電源車を配備するといった当然の答を用意しておくことができませんでした。
    • どのような事象であれ、絶対的な安全などあり得ません。安全確保のための取組に決して終わりはないのです。そのことを核セキュリティに取り組む全ての関係者は心に刻まなければなりません。

(結語)

  • 立ち向かうべき相手が「自然災害」であれ「テロ攻撃」であれ、人間の「知恵」が問われていることに変わりはなく、自然の脅威を侮らず、テロリストとの「知恵比べ」に負けないよう、各国との協力を密にし、英知を結集して立ち向かわなければなりません。
  • 事故や災害への対処にあたって最大の敵となるのは、人間の記憶の「風化」です。知見と教訓をきちんと将来に語り継いでいくことが実は最も重要で困難な課題であり、各国の指導者が意識的に取り組まなければならない「歴史に対する責任」であることを強調したいと思います。
  • 本年末、我が国は、IAEAと協力して、世界の原子力の安全を高めるための国際会議を被災地の福島で開催予定です。こうした会議も、そうした「知見と教訓の伝承」に大きな役割を果たすはずです。多くの諸国の参加を期待しています。

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