小渕総理がほれこんでいる人物が明治維新の先覚者・坂本竜馬です。小渕総理と竜馬の出会いは、昭和38年に総理が衆議院議員に初当選したちょうどその頃、司馬遼太郎さんの「竜馬がゆく」の連載がはじまったのがきっかけです。坂本竜馬の何が魅力かという問いに、総理は「やはりその人物であり、生き方である」と答えています。日本が開国して100有余年。そして今、また日本は世界国家として新たな“開国”の時期を迎えています。幕末の乱世を疾風のように駆け抜けた竜馬のけれんみのない生きざまが、また時代を見据えた雄大な行動力とダイナミズムが、第二の開国に向けて日本丸の舵をとる小渕総理を鼓舞し続けています。
竜
馬に惚れているのは、何もおりょうさんだけではない。実は、この小渕もぞっこん惚れている。今日の政界にも、むろん尊敬する方々はいるが、男が男に惚れるというレベルでは、この坂本竜馬しかいない。
議員仲間でも、幕末の英雄として、竜馬は大久保利通や西郷隆盛と同じく、人気のある人物だ。もちろん、私も大久保や西郷には敬意を抱いている。だが、竜馬に対してはいささか傾注の度合いが違う。政界広しと言えども、私ほど彼に執心している者は、ちょっといないのではないか。
ま
ず、竜馬の研究書は大冊のものから小誌までほとんど揃えてある。そして、十数冊のスクラップブックには、司馬さんが新聞に掲載されてからこれまで、目につく限りの竜馬関連の記事が張り付けてある。むろん、有志の集まりである「竜馬の会」にも名を連ねている。
私
は昭和三十八年に群馬三区から衆議院議員として初当選した。そして、ちょうどその頃から、司馬さんの『竜馬がゆく』は新聞連載され始めたのだ。
一
年生議員として、体中にみなぎる意欲とともに、やはり不安もあった。身命を賭して日本の政治に尽力するという気概は、いわば阿修羅とも言えるだろうか。そんな私の気持ちと、幕末の乱世を疾風のように駆け始めた竜馬の心境が、ちょうど重なり合ったのかもしれない。
そ
のときから、私の中に竜馬という人物が、しっかりと焼きついてしまったのだ。いわば政治家としてのバイブルのような存在である。
(プレジデント 96年4月号初出)
写真提供・共同通信社 JTBフォト