内閣総理大臣演説等

広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式

内閣総理大臣挨拶

 本日ここに、被爆53周年の広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式が執り行われるに当たり、原子爆弾により尊い命を奪われた数多くの方々の御霊に対し、謹んで哀悼の意を捧げます。そして、今なお原爆の後遺症に苦しんでおられる方々に対し、心からお見舞い申し上げます。また、廃墟の中から立ち上がり、今日百十万人の人口を擁するこの広島を見事に築かれました市民の皆様の半世紀にわたる並々ならぬ御尽力に対し、深い敬意を表するものであります。

 人類史上唯一の被爆国である我が国は、広島、長崎の悲劇を再び繰り返してはならないとの堅い決意の下、日本国憲法を守り、非核三原則を堅持するとともに、核兵器のない世界と恒久平和の実現を訴えてまいりました。

 そのような中で、本年5月、インド、パキスタンが核実験を行ったことは、極めて遺憾なことであります。我が国は、世界のほとんど全ての国が締結をしている核不拡散条約を、世界の平和と安全の柱のひとつとして極めて重視しています。核不拡散体制の堅持・強化のため、我が国政府としては、インド、パキスタン両国政府に対し、核実験の即時停止、包括的核実験禁止条約の無条件締結、核兵器及びその運搬手段たるミサイルの開発の停止、核不拡散条約の無条件締結等を強く求めております。また、核兵器のない世界を実現するため、核兵器保有国自身の核軍縮努力が重要であることを強調し、その関連で、米露間の第二次戦略兵器削減条約の早期発効、第三次交渉の早期開始・妥結、更に包括的核実験禁止条約の速やかな締結等を求めております。

 また、核不拡散・核軍縮問題を進展させるために、我が国は、広島平和研究所と日本国際問題研究所の協力を得て、「緊急行動会議」を今月30日に発足させ、1年以内に世界に向けた具体的な提言を得る予定であります。このような様々な努力を通じ、我が国は、核不拡散体制を堅持・強化するため、また核兵器国の核軍縮を一層進展させるため、今後とも全力で取り組んでまいります。それが、被爆国である我が国に与えられた崇高な使命であると考えます。

 また、被爆者の方々に対しましては、平成6年12月に制定されました「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」に基づき、保健、医療、福祉にわたる総合的な被爆者援護施策の充実を図ってまいりました。今後とも、高齢化の進行など被爆者の方々の実情を十分汲み取りながら、被爆者の方々に対する援護施策の推進に向けて誠心誠意努めてまいります。

 終わりに、本日の式典に臨み、平和への決意を新たにするとともに、亡くなられた方々の御冥福と、御遺族並びに被爆者の皆様の今後の御多幸を心からお祈り申し上げ、併せて参列者並びに広島市民の皆様の御健勝を祈念いたしまして、私のあいさつといたします。

平成10年8月6日

    内閣総理大臣  小 渕 恵 三