内閣総理大臣演説等

全国戦没者追悼式

内閣総理大臣式辞

 本日ここに、天皇皇后両陛下の御臨席を仰ぎ、戦没者御遺族及び各界代表多数の御参列を得て、全国戦没者追悼式を挙行いたしますことは、誠に意義深いものがあります。

 先の大戦が終わりを告げてから、早くも五十三年の歳月が過ぎ去りました。苦難に満ちた往時をしのびますとき、今なお感慨新たなものがあります。特に、苛烈を極めたあの戦いの中で、祖国の安泰を願い、家族を案じつつ、戦場に散り、戦禍に倒れ、あるいは戦後、遠い異郷の地に亡くなられた三百万余の戦没者の方々に思いを馳せ、残された御遺族の深い悲しみを思うとき、今なお悲痛の思いが胸に迫り来るのを禁じ得ません。ここに心から御冥福をお祈りするものであります。

 また、あの戦いは、我が国のみならず多くの国々、とりわけアジアの近隣諸国に対しても多くの苦しみと悲しみを与えることとなりました。私は、このことを謙虚に受けとめ、深い反省とともに、ここに謹んで哀悼の意を表したいと思います。

 戦後我が国は、焦土の中から立ち上がり、平和を国是とし、幾多の困難を乗り越え、国民のたゆまぬ努力により目覚ましい発展を遂げてまいりました。

 この平和で豊かな今日においてこそ、戦争の悲惨さと、そこに幾多の尊い犠牲があったことを思い、次の世代に語り継ぐとともに、国際社会において、再び戦争の惨禍を繰り返すことのないよう、恒久の平和を確立することが、我々に課せられた重大な責務であります。そして、このことこそが、過去に対する償いとなり、犠牲となられた方々の御霊を鎮めることとなると確信いたしております。

 本日のこの式典に当たり、先の大戦から学びとった多くの教訓を改めて深く心に刻み、国際社会において重要な地位を占める一員として、世界の恒久平和の確立と、心豊かに平和に暮らせるより良い社会の実現のため全力を尽くすことを、ここに改めてお誓いするものであります。

 終わりに、戦没者御遺族の皆様の今なお消えぬ深い苦しみ、悲しみに思いを致すとともに、皆様方の今後の御平安を切に祈念申し上げまして、式辞といたします。

   平成十年八月十五日
                    内閣総理大臣  小渕 恵三