内閣総理大臣演説等

追悼の辞

 本日ここに、皇太子殿下の御臨席を仰ぎ、震災で犠牲となられた方々の御遺族を始め多数の関係者の御参列の下、阪神・淡路大震災五周年犠牲者追悼式典が執り行われるに当たり、謹んで追悼の辞を捧げます。

 六千四百名を超える尊い命を奪い、この地に未曾有うの被害をもたらした阪神・淡路大震災の発生から、早くも五年の歳月が経過いたしました。最愛の御親族を失われた御遺族の方々の深い悲しみに思いを致すとき、今なお悲痛の思いが胸に迫ってまいります。ここに、亡くなられた方々の御霊に対し、改めて哀悼の意を表する次第であります。

 阪神・淡路大震災は、近代的な大都市を襲った戦後最大の災害でありました。その後の関係市町村及び府県の皆様方の懸命の御協力により、主要なインフラ施設につきましては、既に復旧が完了し、また、最大時には約四万八千世帯の方々が生活されておられました仮設住宅につきましても、今月解消いたしました。

 このように、復旧、復興が着実に進展してきたことは、国内外から驚きをもって受け止められておりますが、これはひとえに、地元の皆様を始め関係者の方々による御努力の賜物であり、改めて深く敬意を表します。

 政府と致しましても、震災後直ちに阪神・淡路復興対策本部を設置し、様々な施策を講じることにより、全力を尽くして皆様方の御努力を支えてまいりました。

 しかしながら、震災時の暗く辛い記憶に悩まされ、新たな生活の場になじめない方々がおられることも事実であります。また、地域の雇用・経済情勢につきましても、最近では明るい兆しが見られてはいるものの、依然として厳しい状況が続いております。

 本年二月二十三日には、阪神・淡路復興対策本部の設置期限を迎えることとなりますが、政府としても、引き続き、この地域の更なる復興に向けて必要な施策を講じていく所存であります。地方公共団体及び国が一体となって、支援を必要とされている被災者の方々に対するきめ細かなケア、安定した雇用確保を可能とする産業の一層の復興、安全で快適な市街地の整備などに引き続き取り組んでまいります。

 私たちは、この大震災を後世への教訓として決して忘れてはなりません。政府としても、兵庫県による「阪神・淡路大震災メモリアルセンター」設立構想につきまして、十分な支援を行うこととしております。

 さらに、災害時の危機管理体制の強化を始め、総合的な防災対策を積極的に推進することにより、目前に迫った二十一世紀に向けて「安全への架け橋」を築くべく、国民が安心して暮らせる社会の実現に全力を挙げてまいります。

 今後とも、阪神・淡路地域の創造的復興に向けて、地元の皆様、県、市町村及び国が一体となった努力を積み重ねることにより、全ての被災者の方々が自立した生活を再建され、この地域が二十一世紀のモデルとなるような安全で住みよい魅力ある街へと再生していくことを、心から願ってやみません。

 最後に、犠牲となられた方々の御冥福をお祈りするとともに、御遺族の方々の深い悲しみをかみしめ、今後とも復興に向けて更に努力していくことをお誓い申し上げまして、追悼の言葉といたします。


   平成十二年一月十七日

                       内閣総理大臣 小 渕  恵 三