地球温暖化問題への国内問題に関する関係審議会合同会議(第1回)議事要旨

1.日 時  平成9年8月27日(水)午後2時〜4時
2.場 所  内閣総理大臣官邸 大客間
3.出席者
(委員)
近藤次郎議長、茅陽一議長代理、荒木浩、今井敬、茅陽一、久米豊、河野光雄、小林陽太郎、佐和隆光、篠原滋子、豊田章一郎、中村英夫、松尾陽、水口弘一、森嶌昭夫、吉岡初子、鷲尾悦也各委員
(政府)
橋本内閣総理大臣、石井環境庁長官、佐藤通商産業大臣、与謝野内閣官房副長官、古川内閣官房副長官 他
4.議 題
(1)気候変動枠組条約第3回締約国会議に至る経緯と現状
(2)我が国のCO2排出量の現状と見通し
(3)我が国の長期エネルギー需給見通しとその実施状況
(4)産業、民生、運輸各部門におけるCO2排出及びエネルギー消費の現状と要因分析 を踏まえた政策課題

5.会議経過

(1)最初に、橋本内閣総理大臣が挨拶された。次に、古川内閣官房副長官より「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議を巡る現状と課題」について説明。その後、近藤次郎委員が議長に、茅陽一委員が議長代理に選任。近藤議長からは、「地球温暖化問題に対する日本の役割は重い。サイエンスの面から、IPCC報告にあるように地球が温暖化してきているのは事実であり、技術面からこれをどう避けるかが問題。新エネルギー開発、エネルギーの効率化、CO2の固定化、CO2の再利用など様々な提案があるがいずれも困難な面がある。政策としてどのように推進していくかは、結論はでていないが、補助金や税金、規制の強化などが考えられる。COP3は、人類の将来のために、是非とも成功させなくてはならない。産業、運輸、民生の各部門、また、国民のライフスタイルを変えていかなくてはならない」との趣旨の挨拶があった。

(2)引き続き、自由討議が行われた。意見の概要は次のとおり。

○情報通信の先端技術により従来に比べCO2の排出量が少なくなると考えられる。テレワーク(情報通信の活用による在宅勤務)と高度道路交通システム(ITS)については、CO2の削減について試算もある。インターネットなどは環境問題にもアクセスできるように整備が必要。

○エコドライブやアイドリング・ストップの啓蒙や、経済的手法として、排気量ではなくCO2排出量に応じて課税してはどうかとの提案がある。しかし、運輸部門はこれだけでは不十分。環境税等経済的手法は政治的・社会的に簡単には受け入れられないと思われる。ドライバーからの寄付金により、低公害車を開発するなど、もっとボランタリーな形でやれないか。また、世界に対し日本がもっとイニシアチブを取る必要があり、まず、日本国内からはじめ、それを外にアピールすべき。皆が加害者だとの意識を持ってもらう必要がある。

○これまでの温暖化対策は、現実の需要を前提として、どのくらいの削減が可能かをそれぞれの分野で検討してきたが、このアプローチでは間に合わない。これまでのライフスタイルを変革していくことが必要であり、そのためには、トップダウンの政治的意思で決めていくことが必要。中央環境審議会では、技術的に可能な範囲として、7.6%削減が可能ではないかとの考え方も披露された。

○政府、産業界、国民が一体となった取組が必要だが、最近は危機的状況が迫っている割にはあまり実感がなく、国民の関心をまき起こす広い意味での教育が重要。

○国民生活の質を落とすことなく、CO2排出量を削減していくことが重要な課題。石油ショック以来、省エネや技術開発によって、日本は世界最高のエネルギー効率を達成。経団連は6月に自主行動計画を取りまとめた。しかし、本問題は、100年単位の問題であり、技術によるブレークスルーなくしては解決しない。公平で実効性のある政策が重要であり、産業界の自主的活動に対する一層の支援が必要。

○先般の日米財界人会議においても、京都会議の問題が日米共通の関心事項。その際、EUの15%削減の目標達成はEU自身にとっても難しいとの意見がかなり技術的バックグラウンドの強い人からあった。米国がリーダーシップを発揮することが不可欠であり、また、技術的な観点からの検討も必要。

○温暖化ガス排出量を90年レベルに戻すのは大変な困難を伴う課題であり、できる限りの対策とシナリオを洗いざらい抽出して、検討のテーブルにのせるべき。考え得る手段の積み残しを出さないようにすることが必要。

○まずトップダウンでの目標設定ありきで、具体的な対策はその目標に合わせて策定すべきとの意見については反対。地球温暖化問題は、同時にエネルギー問題であり、かつてトップダウン方式で行われたNOx規制のようなものとはケタ違いに難しい問題。単純にターゲットを作ればいいというものではなく、できないことはできない。

○経済的手法については、実は消費者の行動はそれほど価格に左右されない。ボランタリーな手法の導入(寄付等の手段)には限界があり、ある程度思い切った手段を導入しなければ真の問題解決にはつながらない。

○地球温暖化問題は中長期的に対策を考えねばならない問題であり、排熱のシステム化や産業排熱の再利用等、欧米で例が多いこれらの対策にも取組んでいく必要があるのではないか。

(3)ここで、橋本内閣総理大臣から所感が述べられた。その概要は次のとおり。

○地球温暖化問題については、非常に心配している。73年と88年にエベレスト登頂に挑戦したが、ヒマラヤ地域においても目にみえて温暖化の影響が出てきている。

○EUバブルについては、日本としては、衡平性の観点から同調できない。EUバブルは、東独地域が組み込まれたことや英国が石炭からの転換を行うなどの特殊事情により達成できるもの。ポルトガルに40%増を認めるなど、これは差別化以外のなにものでもない。これらの点については、サンテールEU委員長やコック蘭首相などとも激しく議論した。

○日本は、議長国の責任を果たすという意味でも、また先進国として途上国の取組み強化を促進するためにも、日本自身の痛みを伴う目標設定が必要である。時期もそうずらすわけにはいかない。6月の国連特別総会の際、ジンバブエの代表は、先進国は発展するまで好き放題しておいて今になってもし途上国にも環境対策を要求するならそのための資金も手法も先進国が提供しろと言っていた。途上国の立場から見ればそういうところがある。この点、対途上国の技術移転も考えねばならない。

○最近心配しているのは、日本はこれまでCO2のみを対象に考えてきたが、その他の複数の種類のガスについても議論しようという動きがある。例えばメタンなどはそもそも畜産業界でメタンの排出量の測定機能があるのかどうか疑問であり、その排出規制も行うということになれば、予め十分議論をする必要がある。

○我が国としてやれることを洗いざらいテーブルの上に載せて、日本として果たすべき責任は果たしていかねばならないと考えており、委員はじめ関係者のご努力をお願いしたい。

(4)ここで、総理大臣が退室された。その後、「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議運営要領(案)」が了承された。気候変動枠組条約第3回締約国会議に至る経緯と現状」について外務省田邊地球環境問題担当大使から説明があり、引き続き、「我が国のCO2排出量の現状と見通し」について環境庁田中企画調整局長から、「我が国の長期エネルギー需給見通しとその実施状況」について通産省資源エネルギー庁稲川長官から、「産業、民生、運輸各部門におけるCO2排出及びエネルギー消費の現状と要因分析を踏まえた政策課題」について通産省並木環境立地局長から説明があった。

(5)その後、質疑応答及び自由討論が行われた。その概要は次のとおり。

○EUバブルは、加盟15ヶ国の中で、排出権取引をしているものとみなせる。先進国のうち、それ以外の20ヶ国で排出権取引をするとすれば、その際、値段をどうするかが問題。二国間で取引をしていくとしても、難しい問題。EUは、ユニットで対応しており、EUバブルは域内15カ国で排出権取引を無償で行っているのと同じ。EUバブルに対する批判とアメリカが主張する排出権取引に対する理解はダブルスタンダードのようなもので、ロシアと一緒にバブルを作ろうということではないか。EUバブルに対する批判と排出権取引に対する支持がどういう関係にあるのか、との質問があり、これに対しては、以下の説明があった。

○排出権取引はあくまでも経済合理性を前提として意味がある仕組み。EUバブルの問題は、EU内でも経済合理性に則ってやるのであれば、メリットはあるが、無償では経済合理性を否定。EUのやり方は、ポルトガルは40%増、ドイツは25%減、イギリスは10%減などに見られるように1つのフィクションであり、その決まり方も経済合理性はなく、政治的に決まっており、よく分からない。EUが、そういうやり方をしておきながら15%削減と主張しているのは、衡平性の観点から問題。また、今回は、法的拘束力があり、違反した場合にはペナルティを課すことになるが、15%削減できなかった時に誰が責任をとるのか、EUかそれとも各国か、という点が曖昧。EUで15%削減というのであれば、最初から全ての国が協定上15%削減の義務を負い、その上で経済合理性に基づき、排出権取引をすればいい。排出枠が余った際、もし日本のオファーが良ければ日本がドイツから買ってもいいということになるべき。内外無差別であるはずのものを、EUの特殊性として、最終的な責任を曖昧にするのは問題。EUも法的拘束力についてはまだ回答できていない。

○総理が決断をするまでに2つのことが重要。1つは、EUバブルの評価。EUは15%削減で立派な案、日本は後ろ向きと分けやすい。EUバブルは、ドイツの特殊性を加味してやっとできるもので、あくまでも特殊事情。2つ目は、国内でも善悪で区分けされて議論されがちだが、それは実態から浮いた間違った議論。まだ、時間はあり、具体的にどうやったとしてもいかに困難な問題であるかという共通の理解を得るようにし、現実に足を据えた議論をすべき。上から決めてやればいいというものではない。簡単にやれる話ではないという認識を国民に持ってもらうことが必要。総理のリーダーシップで決め、それに従って個別政策を進めていくということになると思うが、総理が決断した時に、国内外でいい案だとなるように、マスコミも含めた理解を得る必要がある。

(6)議論の締めくくりとして、通産大臣、環境庁長官から所感が述べられた。

(佐藤通商産業大臣)
各国では、地球温暖化問題について産業からと環境からの見方が最近になって一本化されてきている。日本では、政府内で複数の省庁にまたがっており、京都会議における議長もこれから決定される。温暖化問題は我が国にとって焦眉の急の課題である。産業や運輸部門においては中心となり責任を持っている大臣がはっきりしているが、民生部門においては複数の大臣にまたがっている。民生部門の対策を進めるには、国民意識の改善が必要。国全体として白熱した議論ができるよう委員の皆様にはお願いしたい。昨日、メルケル環境大臣と話をした。日本として、EUバブルは撤回してほしいと強く申し入れた。相手方から、日本は数値を出してほしいといわれた。西ドイツだけで安定化は可能であると表明している。いつ数値を出し、これを日本の主張としていくのかはこれから議論が必要。私からは、ギリギリどのくらいの目標達成が可能か事務方に検討させている。技術革新を含めて、数値をどのようにしていくのか、委員の皆様方には知恵を借りたいと思っている。

(石井環境庁長官)
ボンにおいてエストラーダ議長からベルリンマンデート第7回会議において日本は数値を出していないと指摘を受けた。数値目標を提示していくことは、日本として責任があると考えている。京都会議においては、議定書が全ての賛同の下に採択できるかどうかが焦点。日本は、議長国として、各国の意見集約に向けたリーダーシップを発揮していかなければならない。地球温暖化対策は、エネルギーの需給はもちろん、広汎な分野に及ぶものであり、総合的な環境保全の観点から取組を行うことが不可欠。関係省庁が一体となって取り組むことが必要。合同会議の委員の皆様方におかれては、従来の発想や行政手法を超えて、CO2などの大幅な削減も可能とする道筋を是非明らかにして頂きたい。

(7)最後に、「今後の審議スケジュール」に沿って進めることが了承され、次回会合は9月26日(金)午前10時から開催することとなった。

−以上−
(文責 内閣内政審議室 速報のため事後修正の可能性あり)


第1回議事要旨橋本内閣総理御挨拶