地球温暖化問題への国内問題に関する関係審議会合同会議(第2回)議事要旨

1.日 時  平成9年9月26日(金)午前10時〜12時
2.場 所  内閣総理大臣官邸 大客間
3.出席者
(委員)
近藤次郎議長、茅陽一議長代理、荒木浩、今井敬、茅陽一、久米豊、河野光雄、小林陽太郎、佐和隆光、篠原滋子、豊田章一郎、鶴田卓彦、中村英夫、松尾陽、水口弘一、森嶌昭夫、吉岡初子、鷲尾悦也各委員
(政府)
古川内閣官房副長官、田波内閣内政審議室長、平林外政審議室長、上村内閣広報官 他
4.議 題
(1)産業部門における今後の省エネルギー対策のあり方
(2)運輸部門における今後の省エネルギー対策等温暖化対策のあり方
(3)地球温暖化問題に関する世論調査について
(4)地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議ヒアリングの開催について

5.会議経過

(1)「産業部門における今後の省エネルギー対策のあり方」について稲川通商産業省資源エネルギー庁長官から、また、「運輸部門における今後の省エネルギー対策等温暖化対策のあり方」について並木通商産業省環境立地局長、土井運輸省運輸政策局長、佐藤建設省道路局長、山本警察庁交通局長及び高原郵政省大臣官房審議官から説明を行った。

(2)引き続き、自由討議が行われた。意見の概要は次のとおり。

○CO2の削減は、産業廃棄物、NOX、SOXの削減とは次元の違う問題。後者が回収可能かつ資源化できる物質であるのに対し、前者は量も膨大で除去・回収が困難。したがって、我々ができるのは排出の抑制という手段に限られる。そうなると、太陽光や風力エネルギーなどの代替エネルギーと原子力であるが、代替エネルギーは、密度や効率の観点から見ても、将来にわたって基幹エネルギーにはなり得ない。残るは原子力しかなく、もっと原子力への国民の理解を得ることが重要。現在の原子力発電を火力で行うこととするとCO2排出量は約2割増えることとなるとの試算がある。エネルギーを考える際には、供給の量・コスト・安定性の3点を検討することが必要。

○地球温暖化問題のポイントは、地球規模の問題であることと、持続可能な開発を維持できるように対策を考えねばならないこと、の2点。1点目に関しては、先進国が議論をリードして、韓国やメキシコといった最近OECDに加盟した国や中国を始めとする途上国をいかにして参画させていくかを検討する必要がある。2点目については、経済成長やエネルギー需給とのバランスを考慮する必要がある。この問題は、2100年といった長期にわたる対策を視野に入れる必要があり、2010年といった目標年次は通過点。短兵急な施策は、産業の国際競争力の喪失、経済成長の低下、雇用の不安、国民の豊かさの低下などを招くこととなる。エネルギー消費の伸びが著しい運輸・民生部門について国民の理解を得た社会全体の総合的かつ抜本的な改革を図っていく必要がある。一方、産業界としては、石油危機以降、可能な限りの省エネ対策を行い、世界最高のエネルギー効率を達成しており、今後も引続き省エネ・CO2削減に取組んでいく所存。例えば、鉄鋼業界は2010年までに総消費量を10%削減する自主行動計画をとりまとめている。省エネ・CO2削減対策については技術的経済的に熟知したそれぞれの産業の自主的取組みに委ねることが最も効率的で実効も上がる。経済性を度外視した強制的な施策は、経済力を弱めるだけでなく、環境的観点からも、生産効率の悪い途上国への産業移転によりかえって地球規模でのダメージが大きくなる。現実的で、過去の努力も勘案した、国際的に衡平な施策が必要である。EUバブルについては、ドイツと英国の削減がEU全体の削減に寄与しているが、これは東独合併等の特殊要因によるものであり、経済活動を犠牲とするものではない。また、米国においては労使が一緒になって経済性を無視した施策への一大アンチ・キャンペーンをはっており、日本だけが経済成長を度外視した政策を採るべきではない。この点、総理が提唱されたグリーン・イニシアティブは、ODAや民間レベルでの協力を通じて途上国への技術移転を行っていくというもので実効的。最近の数値目標を巡る議論については、産業の実態、これまでの各業界での努力、実現可能性が考慮されていない。したがって、各部門が最大限の削減努力を積み上げることをベースとして、これに技術開発を加味して、持続可能で実現可能な目標を出してほしい。なお、炭素税については、世界一斉に導入するのならばともかく、日本1国だけで実施することは我が国の貿易構造や産業構造を歪めることとなり、効果よりも悪影響が大きいので反対。

○運輸部門についても、CO2抑制についてはその重要性について十分理解しており、また努力も行ってきた。実現可能な目標設定にする必要がある。経済実態、技術可能性から乖離した議論を懸念。技術の熟度・リードタイム、コストの受入可能性、安全・排ガス対策とのトレードオフについて理解願いたい。「地域」環境と「地球」環境を混同した議論もみられる。自動車部門についていえば、電気自動車に替えても、走行によりCO2は排出しないが、それに伴う電力需要の増加により発電所地域ではCO2は増加する。CO2が100%減るわけではない。自動車業界としては、2010年に90年比15%の燃費改善が限度。直噴エンジンを使用すれば30%以上削減できるとの主張もあるが、これは直噴以外の技術も含めた新しい車全体としての話である。自動車単体だけでの対応には限界があり、運転環境の改善、運転マナーの3つをやらなければならない。特に、運転環境の改善には力を入れていただきたい。

○経済、産業、環境、技術といった観点からの検討が多いが、温暖化問題は1国の問題ではなく、地球規模の問題。国際政治、外交の観点が不可欠。今まで日本は様々な分野でグローバル・スタンダードを受入れてきたが、京都会議は、日本が世界に向けて発進するチャンス。日本がリーダーとなって、国際的に守れるグローバル・スタンダードを作る意気込みで対応すべき。産業界からは批判があろうが、経済成長を犠牲にしてまでとは誰も思っていない。この枠の中でどう工夫するかということ。

○重要なのは安定成長。総理が言われたように、衡平で実現可能性を持ったものであるべき。優れて経済の問題。マクロ経済分析におけるシュミレーションでは、環境対策の実施による経済成長への影響は小さいという結果を見受ける。しかし、日本のエネルギー効率は既に世界最高水準にあり、今までと同じようにその効率を高めていくことは困難。また、価格効果は産業界に影響を与えるが、運輸・民生には影響がない。国際協力については、発展途上国に対し、環境保全に資する技術・資金の援助を行っていくのもコストと効率の観点から有効な対策であろう。産業・民生・運輸の各部門で規制を加えることによってライフスタイルを変えていくことを考えるよりは、まず実現性の高いことから始めるべき。例えば、複数の官庁が連携し、地球温暖化対策に資するとされているITS(高度道路交通システム)やTDM(交通需要マネジメント)の実用性を確認するといった施策を行うのもよい。もう一つは、温暖化は100年タームの大問題であり、革新的な技術開発を強力に進めていく必要がある。

○地球温暖化の問題に対する国民の危機意識は強く、将来世代に配慮すると、地球温暖化問題への対策は先送りできない。努力は分かるが、現在考えられる技術的・経済的に実現可能なことを積み上げて対策とするのではなく、まず何を達成しなければならないかという発想で対策を決めるという発想の転換が肝要。CO2削減についても、14.8%以上の削減が可能というNGOの試算もあり、内容を精査し、きちんと議論すべき。地球環境問題への取組では、より効率的な道路・鉄道の整備等のハード面の対策が目立っているが、道路幅の拡張など道路整備が全体として環境にどう影響を与えるのかトータルとして考え直す必要あり。そのためには、広く情報を流し、国民の声を聞き、世論を喚起していくソフト面の対策が重要。また、アイドリング・ストップの実践など個人の意識だけでは限界があり、規制を考えることも必要。電気製品の大型化、自動販売機など、必要なのか考え直すべき。

○米国の労働組合は、産業界と組んで、雇用が失われる政策には合意できないと主張しており、逆に、ヨーロッパの労働組合は、雇用が守られても命と健康が失われるようではいけないと主張している。我が国はその両方を追及することを考えなければいけない。問題はコストパフォーマンス。国の予算も念頭に置きながら、コストと利便性とをどこで分担させるかということ。どういう施策を組み合わせるのがベストミックスかを考えることが政策決定のスタンス。例えば、鉄鋼に関しこれだけのことをすれば3兆円かかるとか、自動車の燃費改善にしても、それは運輸環境、運転の仕方、技術によるが、どの程度のコストをかければ燃費改善ができるのか、運輸環境のためのハード投資にどれくらいかかるのかなどの比較衡量で議論をしていくということ。代替エネルギーにしても、いくら金がかかるか分からない。投資と経費を勘案した議論が必要。都市輸送に関しても、路面電車の復活などについては、現在の路面電車は赤字経営であり、補助金で対応するのか、それとも高い運賃で乗るのか、必要なコストをどこがどう分担するかということ。対外的な視点から考えてみても、国内で1兆円を投資するなら、国外で同じ1兆円を投資する方がいいという議論にもなる。

○先般の中央環境審議会においても産業・運輸部門について議論。現在までの産業のエネルギー効率は極めて優れていること、自動車等様々な分野の技術的な削減可能性については現在の技術で相当程度可能であるということなどの指摘があった。エネルギー需要の動向をそのまま伸ばすと、技術的に削減しても伸びていくことになる。しかし、経済成長を犠牲にしないとCO2排出量の伸びは抑えられないというのは疑問。1990年度から1995年度の5年間でエネルギー消費量は伸びている中にあって産業部門は優等生。CO2の排出が経済成長に必然的に伴うものという考え方については疑問。また、必ず経済成長率を維持するとしても、この5年間のCO2排出量の伸びが本当に必要なものであったのだろうか。自動車のRV化、大型化、テレビの大型化などによる伸びをそのまま将来に投影するのはいかがなものか。低コストで経済にダメージを与えないように、国、政府としての意思決定を行い、実現可能なあるターゲットに向けてベストな政策措置の組合せを選択することが必要。IPCCの試算でも、CO2による温暖化については後になってCO2の残存効果の影響が出てくる。他の国が何もやっていないから、日本も何もせずに待つこととしてよいことではない。途上国を巻き込むべきという議論については、COP3の時点で、先進国としてすべきことをせず、途上国に資金援助を行うとしても、途上国から削減するということにはならない。途上国を巻き込むためにも、日本としてのきちんとした態度を示し、アメリカを説得して、2010年までのなるべく早い時期に削減に進まないといけない。

○CO2の排出削減が経済にダメージを与えるという意見が出たが、例えば、炭素税は国民から政府への所得移転であり、炭素税の税収を政府の温暖化対策のために使うことにより中長期的にはプラスになるとも考えられ、一概に経済的ダメージを与えるとは言えない。仮にプラスであろうとマイナスであろうと、影響は軽微と考えられる。問題はマクロ経済には影響はなくとも、勝者と敗者が生じること。石炭産業には壊滅的な打撃を与えるので、オーストラリアが反対するのは当然。アメリカも自動車業界が反対するのは当然。我が国の主要産業はエネルギー効率のよい製品を作るので、多分勝者の側になるだろう。燃費効率のよい自動車を生産した者が中長期的には勝者。国際競争力の問題に関しても、国境措置を活用することが考えられ、例えば、CO2の排出に配慮した製鉄業者の生産した鉄鋼を輸出する時は払い戻し、逆に配慮していない外国の鉄鋼を輸入する時に税金を課すということも一案。産業部門について、2010年までにCO2排出量を対1990年比7%減としても、一気に7%削減するわけではないので、悪影響は小さい。運輸部門についても、総需要の増大が1995年から2010年にかけて伸び率が高くなっているが、逆の結果となっている試算がある。

○産業部門も相当努力してきたことが分かった。国民にいかにアナウンスしていくかが重要。そうすると実感がわく。努力していることを他のプロジェクトを通じて国民に知らしめることも考えるべき。

○総理が前回の会合で述べたバスケットアプローチについて、バスケットアプローチを採用することにより、例えば、温暖化ガス全体で5%削減するとした場合、メタン、N2Oが減らせないと、CO2に上積みされて7.5%くらいの削減が必要となってしまうのではないかと懸念。

○大事なのはどこに焦点を当ててしぼるかを議論すること。国民が生活の中でぜいたくしている面があるのではないか。そこにどれだけしばりがかけられるか。産業界は世界の優等生。どこにゆとりとムダを遊びがあるのか。国際競争力を維持するためには、政府だけでなく国民全体で取り組む必要がある。この機会に、CO2排出の削減について国民全体に広げていくことが重要。しかし、単なる啓蒙だけではなく、どのように政府として取り組むのかが課題。具体的には、自動車と家庭を中心とするということではないか。

○産業部門については、経団連の自主行動計画によって90年レベルに抑えるのがギリギリの線。EUが削減できるといっているのは、これからエネルギー転換を行うため。日本は既に最高のエネルギー効率を達成しており、十分慎重に。

(3)次に、上村内閣広報官から本年6月に実施した「地球温暖化問題に関する世論調査」について報告があった。

(4)最後に、近藤議長から「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議ヒアリングの開催」について説明があり、10月27日(月)に東京において、10月20日(木)に大阪において開催することが了承された。

(5)次回会合は10月13日(月)午前10時から開催することとなった。

−以上−
(文責 内閣内政審議室 速報のため事後修正の可能性あり)