総合的なエネルギー需要抑制対策を中心とした
地球温暖化対策の基本的方向について

−環境負荷の小さな社会の構築を目指して−






平成9年11月

地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議


目   次

1.はじめに−合同会議開催の背景と課題
2.地球温暖化問題への対応の基本的考え方
(1)基本的認識
(2)対応の基本的考え方
3.産業、運輸、民生部門における対策の基本的方向
(1)対策の視点
(2)産業、運輸、民生部門におけるエネルギー消費・CO2排出の現状と問題点
(3)産業、運輸、民生部門における対策の基本的方向
(4)講ずべき政策の体系
(5)地域での取り組みへの支援
4.大量消費・大量廃棄型のライフスタイルの見直しに向けて
(1)見直しの視点
(2)ライフスタイルの見直しに向けた仕組み作り
5.革新的な技術によるブレイクスルー
6.発展途上国における取り組みへの国際協力
7.おわりに


1.はじめに−合同会議開催の背景と課題

 1992年、リオ・デ・ジャネイロにおける地球環境サミットにおいて、地球温暖化問題は現在の人類の生活と将来の生存に直接関わる深刻な問題であるとの認識が共有され、問題の解決に向けた人類の決意が国連気候変動枠組条約として採択された。その後、94年に発効し、現在169カ国の批准を得ている。その条約をより実効性のあるものとし、世界的な取り組みを加速するため、議定書の作成を目指した気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が本年12月に我が国京都において開催される。現在、各国による交渉の最終段階を迎えている。

 我が国は、石油危機以降、官民を挙げた積極的な省エネルギー努力を行った結果、今やエネルギーの利用効率は世界最高水準となり、GDP当たりの一次エネルギー消費は、米国の約3分の1、独の約2分の1(94年、世界銀行、国際エネルギー機関資料による。)と、他の先進国と比較して低い水準にある。しかしながら、我が国が地球温暖化対策に着手した90年以降においても、運輸、民生部門を中心としたエネルギー消費の伸びに伴い、我が国の二酸化炭素(CO2)の排出量は、その削減努力にもかかわらず、顕著に増加しており、地球温暖化問題の重要性の認識を進め、一層の対応を図っていくことが必要な状況となっている。

COP3の開催国であるとともに、世界のCO2の排出量の約5%を占める我が国としては、地球温暖化問題の解決に向け、世界に訴えかけ得る理念を示すとともに、自ら率先して取り組むことが必要である。その対応のためには、国民各層において地球温暖化防止に向けた問題意識と強い決意を共有することが必要であり、特に、国内対策としては、国民、産業界等の理解と協力を得て、抜本的なエネルギー需要抑制対策を中心として、ライフスタイル(生活様式)の見直しを含む、総合的かつ徹底した地球温暖化対策を講じることが不可欠である。

地球温暖化問題への対応のためには、広範な政策分野にわたる対策と広く国民各層における取り組みとが必要である。本合同会議は、内閣総理大臣からの要請を受け、地球温暖化問題への基本的な国内対策に関係する9つの審議会の代表が一堂に集まり、我が国の地球温暖化への対応の基本的な方向付けを行う目的で開催されたものである。本合同会議は、8月27日の第1回会合以降、COP3における国際的な取り組みを支えるための国内政策の実施、さらには今後長期にわたる地球温暖化問題の抜本的な解決を目指し、関係省庁の連携の下、広範な対策の洗い出しを得るとともに、東京、大阪において公聴会を行って意見を聴取し、短期間とはいえ、集中的かつ精力的に審議を行い、ここに報告書を取りまとめた。

2.地球温暖化問題への対応の基本的考え方

(1)基本的認識

地球温暖化問題を本質的に解決するためには、温室効果ガスの大気中濃度を安定化し、温暖化の進行をくい止めることが必要である。このことは気候変動枠組条約でも究極の目標として明記されているが、その実現のためには温室効果ガスの排出を現在のレベルより少なくとも5割以上削減しなくてはならない。人類が商用エネルギーの9割を化石燃料に依存し、しかも発展途上国が急速な経済成長を続けている現状では、このような削減はほとんど不可能である。しかし、温暖化のもたらす多様な影響を考慮すれば、現在から温室効果ガスの排出をできるだけ低減する努力が必要なことは明瞭であって、この究極目標の達成のために、人類は現在を出発点にして、100年ないしそれ以上の長期にわたって、温室効果ガスの削減に努めなければならない。温暖化問題は、そのような長期的問題であることに常に留意すべきである。

他方、温室効果ガス、中でもその中心となるCO2の排出を抑制しようとすれば、化石燃料に依存する人類文明の経済発展は当然大きな影響を受けることとなる。したがって、どこまでCO2を削減し、その一方でどこまでその経済的影響を少なくして経済の発展を維持していくかという整合的な目標の設定が今後の人類の重大な選択となる。温室効果ガスの長期排出目標を取り決めるに当たって、この整合性を前提とするとともに、各国の異なる立場を衡平に評価して目標を定めるべきであることは、「意味のある」「現実的」かつ「衡平な」目標の設定という形で、本年6月のデンヴァーサミットにおいて首脳間で明確に合意されたところである。

現在、本年12月に開かれるCOP3における2010年前後の温室効果ガス排出抑制目標の制定を目指して、各国間の交渉が続けられている。その目標は、現在の情勢からすれば趨勢に比べて温室効果ガスの排出を大きく抑える目標となることは確実であり、本合同会議の主たる目的も、このような目標の達成の基盤となる温室効果ガス削減の諸方策と、その実行のための政策手段について具体的に検討を行うことにある。本合同会議では、限られた時間の中で、需要面に重点を置いて議論したが、供給面の対策はこれに劣らず重要であり、今後の関係審議会での議論に期待したい。

また、2010年前後の目標はあくまで温室効果ガスの大気中濃度の安定化という究極の目標達成のための一里塚ととらえるべきであり、上記の方策や政策手段もそのような長期の目標の達成につながるものでなければならないことを常に銘記すべきであろう。

(2)対応の基本的考え方

地球温暖化問題は、その問題が目に見えるようになった時には手後れで不可逆的な問題でもある。本問題は、前項で述べたように、100年単位で取り組むべき息の長い問題であるとともに、我々が直ちに取り組むべき、我々の目前にある危機でもあることを認識しなければならない。したがって、その解決の視点には短期的に今直ちに取り組むべき課題と中長期的に取り組むべき課題という複眼的なアプローチを行う必要がある。

 本合同会議では、まず、短期的に取り組むべき課題については、COP3における2010年頃を視野に入れた国際的な枠組みの形成を念頭に、企業、国民のCO2排出削減に向けた自主的な努力を第一とし、政府が洗い出した、産業、運輸、民生の各部門で技術的、経済的に実施可能な対策について報告を受け、これを検討した。単に削減量だけではなく、個別の対策とその裏付けとなる政策手法を議論の俎上にのせた。これらは、包括的かつ政策の実行可能性を伴った対策の積み上げを国民に提示するものである。また、持続的発展が可能な社会の構築を進め、環境対策を我が国経済に組み込む試みでもある。

 第二に、国民各層が、地球温暖化問題の解決のために、環境負荷の小さな社会の構築を目指した自主的かつ積極的な努力を行うことが、必要不可欠である。国民一人一人が地球市民として自ら地球温暖化問題に取り組むとの自覚の下、環境負荷をできる限り小さくするため、大量消費型、大量廃棄型のライフスタイルを見直すことが必要である。

 第三に、中長期的に取り組むべき課題は、革新的な技術によるブレイクスルー(問題解決)である。現在の段階で考えられる実施可能な対策の適用などによる取り組みだけではいずれ限界があることは明白であり、CO2の大幅な削減のためには、従来の対策を量的に拡大するのみでは不十分であり、質的に変革し得るような革新的な技術の開発を強力に推進し、できるだけ早期に実用化、普及させるべきである。

 これらの対策は、企業等に、省エネルギー技術・設備の開発、導入、中長期的な技術革新のための投資を求めるものであり、一定のコスト負担が必要となることも事実である。我が国は、過去2度の石油危機を通じて、産業部門を中心に相当の省エネルギー努力を積み重ねてきており、更なる省エネルギーの徹底のために要する費用は相対的に高いものと予想される。したがって、地球温暖化問題の解決に向け、こうしたコストを負担し、環境負荷の小さな社会を実現していくためには、我が国経済が引き続き活力を維持することが必要不可欠である。

 他方、対策は、適正な規制的手法と誘導的手法を始めとする多様な政策の組み合わせにより達成されることとなる。このような政策手段の組み合わせは、新規需要や環境産業の創出、技術革新の誘発などの経済的な効果があり、我が国が環境調和型の産業構造に転換し、経済の活力を維持していく上で重要であることを指摘したい。

3.産業、運輸、民生部門における対策の基本的方向

(1)対策の視点

 地球温暖化問題の解決に向けた第一歩として、まず、我が国が先頭に立って対策を早急に講じることが必要である。政府は、従来の行政手法や発想にとどまることなく、実効ある政策措置を講じるべきである。

 地球温暖化問題は、温室効果ガスの大部分が産業活動、国民生活におけるエネルギー消費に伴い発生するものであることから、環境問題であるとともに、経済問題、エネルギー問題でもある。運輸・交通政策、住宅・建築政策などにも密接に関連をする。したがって、対策は、産業、運輸、民生の各部門において、広範な政策分野にわたっており、各施策の整合的かつ有機的な連携を保つ必要があることを忘れてはならない。

(2)産業、運輸、民生部門におけるエネルギー消費・CO2排出の現状と問題点

 エネルギー消費、CO2の排出は、80年代後半から、経済活動の拡大に伴い、ほぼ一貫して増加してきた。バブル崩壊後、一時、伸び率は低下したものの、エネルギー消費量、CO2排出量は近年再び伸び率を高めている。これは、産業部門においては、エネルギー消費、CO2排出の伸びが微増又は横這いであるのに対し、利便性と快適性を求める国民のライフスタイルの変化に伴い、運輸、民生部門が大幅な増加となっているためである。

今後、エネルギー消費やCO2排出量の伸び率は、これまでに比べ鈍化すると見込まれるものの、2010年までに我が国の最終エネルギー消費は90年比31%、CO2排出量は90年比21%程度伸びるものと見込まれる。

(これらの試算に用いた経済成長率、人口の伸び、非化石エネルギーの導入や省エネルギー対策の進展といった社会経済のフレームは、気候変動枠組条約に基づく第2回日本国報告書(政府案)のものを用いている。以下の記述における見込みについても同様。)

(産業部門)

 産業部門においては、第1次石油危機以降、省エネルギーが大きく進展し、例えば、鉄鋼業の高炉炉頂圧発電導入率、ソーダ工業のイオン交換膜法導入率、製紙業の高温高圧回収ボイラー導入率、セメント工業の高効率焼成窯の普及率、電気事業の火力発電所の熱効率などを国際的に比較しても、今や我が国産業における省エネルギーへの取り組みは世界でも最高水準となっている。

90年度以降は、多品種少量生産、製品の高付加価値化などの市場ニーズへの対応などに伴い、エネルギー消費原単位が若干悪化した結果、産業部門におけるエネルギー消費は5%伸びたものの(CO2排出量は横這い)、依然として第1次石油危機時のエネルギー消費と同じレベルに止まっているが、今後、特段の対策を講じなければ、産業部門におけるエネルギー消費は2010年に90年比16%、CO2排出量は90年比5%伸びるものと見込まれる。

(運輸部門)

 運輸部門は、エネルギー消費、CO2排出において、今後とも大幅な伸びが見込まれる分野である。過去、交通輸送需要の増加に伴い、第1次石油危機以降、貨物部門が第2次石油危機時に減少したほかは、エネルギー消費はほぼ一貫して増加しており、95年度には第1次石油危機のほぼ2倍のエネルギー消費量となっている。特に、旅客部門は国民の生活の利便性や快適性の追求により、約2.5倍と大幅な伸びとなっている。

 90年度から95年度にかけて、運輸部門におけるエネルギー消費、CO2排出量はそれぞれ16%の大幅な伸びとなっている。これは、主として自家用乗用車、貨物自動車のエネルギー消費の増加に伴うものである。これらは、輸送需要全体の増加、自動車台数の増加、輸送分担率の変化による自動車輸送量の増加や、渋滞などに伴う実走行燃費の悪化、自動車の大型化、平均乗車人数・積載率の減少などの要因によっている。

 今後、特段の対策を講じなければ、運輸部門におけるエネルギー消費、CO2排出量は、2010年に90年比それぞれ40%と大幅に伸びるものと見込まれる。

(民生部門)

 民生家庭部門は、国民の生活の利便性や快適性の追求により、エネルギー消費はほぼ一貫して大きく増加してきている。また、民生業務部門は、第1次石油危機以降、エネルギー原単位の改善により、ほぼ横這いで推移したが、近年は増加傾向にある。

この結果、民生部門全体では第一次石油危機時のほぼ2倍のエネルギー消費量となっており、90年度から95年度にかけて、エネルギー消費は19%、CO2排出量は16%の大幅な伸びとなっている。

 民生家庭部門のエネルギー消費、CO2排出量の伸びは、世帯数の増加に加え、世帯当たりエネルギー消費の伸びによるものが大きい。その背景には、パーソナル化などにより電気製品の普及台数が増加するとともに、機器のエネルギー消費効率が、同一機能の機器については向上したものの、大型化、多機能化や待機時消費電力を消費する製品の増加により、機器1台当たりのエネルギー消費が増大していることなどが挙げられる。

他方、民生業務部門におけるエネルギー消費量、CO2排出量の伸びは、床面積の増加に大きく依存している。用途別に見ると、照明・電気製品用が大きく増加している。その背景には、OA機器の普及と技術開発の進展による情報機能化(メモリ、リモコン機能等付加)などが挙げられる。

 今後、特段の対策を講じなければ、民生部門におけるエネルギー消費は2010年に90年比54%、CO2排出量は90年比38%と大幅に伸びるものと見込まれ、運輸部門と同様エネルギー消費全体の伸びの大きな要因となっている。

(3)産業、運輸、民生部門における対策の基本的方向

上記の将来のエネルギー需要、そしてそれに伴うCO2排出量の増加の見込みを踏まえて、本合同会議は政府から提出された以下のような対策について審議を行った。合同会議は、時間の制約の中で審議を行ったが、対策全体の方向については基本的に妥当なものと考えるものである。

本対策は、エネルギー供給側において、現行「石油代替エネルギーの供給目標(平成6年9月閣議決定)」に基づき、2010年時点でCO2排出削減に役立つ新エネルギーを現状の約3倍の1910万kl(一次エネルギー総供給の約3%)、また、原子力を7050万kW(今後約20基の原子力発電所の増設に相当)導入することを基本とし、その実現のためには、安全の確保はもちろん、広く国民の合意を得るように努力することが必要である。

これとともに、エネルギー需要側では、以下のような省エネルギー、CO2排出削減への取り組みを強化することが不可欠である。

(産業部門)

産業部門は、これまでの業界挙げての省エネルギー努力により、既に世界最高水準のエネルギー消費効率となっており、更なる省エネルギーの余地は小さくなっているものの、CO2排出量が全体の4割を占めている。したがって、今後とも産業部門においては、技術的、経済的に実現可能な対策を最大限追求し、格段の努力を産業界に求めることが必要である。政府は、エネルギー使用の合理化を総合的に進めるために必要な措置等を規定した省エネルギー法に基づく措置の強化等により、この産業界の取り組みの徹底を図る。

 具体的には、あらゆる産業の自主的な行動による取り組みを促す。特に、経済団体連合会の環境自主行動計画やその追加的な措置を確実に実施することが重要である。このため、各業界ごとの取り組みを公的な場において定期的にフォローアップしていくことが必要である。

 同時に、省エネルギー法や必要に応じた誘導措置などを通じて、エネルギー使用の大きい工場に対する一層のエネルギー削減の強化、中堅工場などの省エネルギーの推進、革新的な省エネルギー技術の開発、導入の加速的な推進、燃料転換の抜本的な推進などを図る。

 これらの対策により、2010年のエネルギー消費量を95年からほぼ横這いに抑えることができ、エネルギー供給におけるCO2排出原単位の低減により、2010年にCO2排出量を90年比7%削減することが期待される。

(運輸部門)

 運輸部門においては、これまでのエネルギー消費の大幅な増大傾向を転換させるため、強力な対策を講じることが必要である。エネルギー消費及びCO2排出の大半が自動車によるものであることから、自動車を中心にエネルギー消費効率の向上を図らなければならない。

自動車の燃費については、省エネルギー法において、燃費基準の設定にトップランナー方式(注)の考え方を採用し、その基準の着実な遵守を求める。例えば、ガソリン乗用車の新車について2010年度までに95年度比で燃費を20%超向上させる。

また、低燃費車の普及促進のための税制上を含めた経済的誘導措置の強化について検討するとともに、クリーンエネルギー自動車・低公害車の加速的な技術開発・普及促進、鉄道、船舶、航空機のエネルギー消費原単位の向上(鉄道7%、船舶3%、航空機7%)を進めることとする。

さらに、鉄道・内航貨物輸送の推進、国際コンテナ貨物の国内陸上輸送距離の削減のための港湾整備、トラックの積載効率の向上、トレーラー化及び車両の大型化の促進、情報化の推進など物流の効率化、公共交通機関の整備と利用促進、交通対策の積極的な推進(交通需要マネジメント施策、高度道路交通システムの推進、情報通信を活用した交通代替など)、渋滞の緩和解消のための着実な道路整備などを図り、実走行燃費の向上などを図る。さらに、短距離自動車交通を徒歩や自転車に転換すること、駐停車時のアイドリングストップやエコ・ドライブ(環境に優しい運転方法など)など、国民の努力を促す。

 これらの対策により、2010年のエネルギー消費量を95年とほぼ同様の水準に抑えることができるが、産業部門や民生部門と異なり、エネルギー供給におけるCO2排出原単位の低減効果がほとんどないことから、90年度から95年度までに既に16%増加したCO2排出量を削減することまではできず、2010年に90年比17%の増加が予想される。

(注)トップランナー方式とは、機器の各カテゴリーにおける最良のエネルギー効率を有する商業化された製品を目標にした水準、もしくは、技術的、経済的に可能であればそれを上回る水準を念頭において基準値を定める方式のことである。

(民生部門)

 民生部門においても、これまでのエネルギー消費の大幅な増大傾向を転換させるため、強力な対策を講じることが必要である。機器単体のエネルギー消費効率の向上及び住宅・建築物の断熱化を図るとともに、国民一人一人が機器の適正利用を実践するなど国民のライフスタイルの変革を図ることにより、相当の省エネルギー、CO2排出削減を実現することが必要不可欠である。

 具体的には、民生用機器については、省エネルギー法において、トップランナー方式による省エネルギー基準(現行基準より更に8〜30%の基準強化に相当)を採用し、着実な遵守を求める。さらに、省エネルギー機器の技術開発の促進等により機器単体のエネルギー消費効率の大幅な向上を図る。

また、冷暖房用エネルギー消費の大幅な削減に向け、住宅・建築物の省エネルギー性能の向上のため省エネルギー法に基づく省エネルギー基準の強化(現行基準と比較し、住宅では約20%、住宅以外の建築物では約10%の省エネルギーに相当)などを講じる。

さらに、国民のライフスタイル面においては、冷暖房の適正な温度調整(冷房28度以上、暖房20度以下)、電気機器・照明等のこまめなスイッチオフなどの努力を促すとともに、国民に対する適切な情報提供、教育、広報や省エネルギーに関するラベリング制度の強化により、国民の省エネルギー、CO2排出削減の努力を促す。

 これらの対策により、2010年のエネルギー消費を95年比11%の伸びに抑えることが可能であり、エネルギー供給におけるCO2排出原単位の低減により、2010年にはCO2排出量を90年と同水準に抑えることが期待される。

(対策の効果)

 エネルギー供給側、エネルギー需要側(産業、運輸、民生の各部門)において、上記対策が所期の効果を発揮すれば、2010年時点のエネルギー起源のCO2排出量は90年レベルとほぼ同レベルとなる。その実現のためには、エネルギー需要は現在に比べてほぼ横這いに抑えなければならず、この対策の達成が決して容易なものでないことを示している。一方において、冒頭で述べたように、温暖化の進行をくい止めるためには、長期的には温室効果ガスを現在に比べて大幅に削減する必要がある。このことを考えれば、上記の対策に満足することなく、現在の想定には含まれないような革新的技術の開発、エネルギー起源のCO2以外の温室効果ガスの削減方策の実現、国民各層における省エネルギー努力の強化など、更なる温室効果ガスの削減に向けての一層の努力を継続的に行わなければなるまい。

(4)講ずべき政策の体系

(政策の体系)

 以上述べてきたエネルギー需要抑制対策を中心とする地球温暖化対策の体系は以下のとおり整理することができる。

@ 企業の自主的取り組みや、適切な情報提供などによる国民のライフスタイルの見 直しによる省エネルギー、CO2排出削減の努力

企業の自主的取り組みによる生産設備等の省エネルギー化を促進するとともに、適切な情報提供、広報により、エネルギーの生活面での使い方の省エネルギー化を促す。

A 機器の効率化などによる省エネルギー、CO2排出削減の誘導

 省エネルギー型の設備、機器、技術の開発及びその導入やエネルギー管理の効率化を税、補助金等のインセンティブにより促進する。

B インフラの整備など間接的措置による省エネルギー、CO2排出削減の誘導

 エネルギー消費量及びCO2排出量の削減につながるインフラ面、制度面の改善を図る。

C 省エネルギーの義務付け

 経済的かつ技術的に予見し得る最高エネルギー効率の設備の工場等における導入などにより、最大限のエネルギー使用の合理化を行うよう法制面の整備を行う。また、自動車や民生用機器のエネルギー消費効率を商業化されている製品の中で最高水準の、もしくは、経済的、技術的に可能であればそれを上回る水準に向上させることを義務付ける。

国民生活に関しては、まずは国民の省エネルギーに関する自主的努力に期待する。その取り組みについてフォローアップを行い、実効が上がらない場合には、その実施を確実とする規制を含む新たな措置の検討も必要となる。

 本合同会議では、上記@からCの体系の中で可能な限りの対策をすべて講じることが必要と考える。

(経済的手法についての考え方)

経済的手法は、市場メカニズムを通じ経済的な誘因を与えることにより、各経済主体が環境保全に適合した行動をとるよう促そうとするものである。CO2排出削減に資する経済的手法としては、補助金、融資、税制上の優遇措置といった経済的助成措置や炭素税、排出権取引等の経済的負担措置が考えられる。また、自動車保有者から寄付金を募るなど、寄付を活用する手法も考えられる。経済的手法については、そのCO2排出削減上の効果、国民生活・経済活動や財政への影響等を総合的に検討する必要がある。

炭素税については、その有効性、経済に及ぼす影響などについて審議を行った。現時点においての炭素税の導入については慎重を期すべきであるが、その導入の是非については今後の状況に応じて引き続き検討することが必要である。

(5)地域での取り組みへの支援

 地方公共団体は、地域の温暖化対策の重要な担い手であり、その活動が活性化していくことが望まれる。地方公共団体においては、高効率ゴミ発電、学校における環境副読本の配布、市民の環境行動への支援、さらには、国際協力など地球温暖化問題に積極的に取り組んでいるところもみられるが、今後、運輸、民生部門での対策の重要性にかんがみ、市民に身近な行政を行う地方公共団体の果たすべき役割はより一層増大するものと考えられる。地方公共団体による地域の温暖化対策への取り組みに対し、国からの必要に応じた支援が求められる。

 また、環境NGOやボランティア団体など民間団体の自発的な活動は地球環境問題への国民の取り組みの中で重要な役割を果たしている。地球温暖化防止に向けた健全な発展を期待するとともに、必要に応じ支援を行うべきである。

4.大量消費・大量廃棄型のライフスタイルの見直しに向けて

(1)見直しの視点

 近年における地球環境問題の顕在化は、大量消費・大量廃棄型の現代文明とライフスタイルに疑問を投げかけている。21世紀の新しいライフスタイルとして、省エネルギー・省資源的な生活がより望ましい姿であると再認識すべき時期にある。地球温暖化問題は我々自身の問題であるとの厳しい自覚の下に、地球温暖化につながる環境負荷の小さな社会の構築を目指して、いかに身近なところから具体的な行動を進めていくかが極めて重要な課題である。

 国民の取り組みの実効を上げるためには、何をすれば温暖化防止につながり、何をすれば温暖化を悪化させるのかについての情報を提供するとともに、国民が自主的な取り組みを行うきっかけを作り、その取り組みを促していくことが必要である。

同時に、地球温暖化につながる環境負荷の小さな社会の構築を目指した国民の選択と行動が、今日の社会システムの中では、必ずしも可能となっていない面が指摘されている。社会システムの変革には多様な要素が含まれ、一朝一夕に実現することには困難を伴うが、一歩一歩進めていくことが必要である。政府は、改めて環境負荷の小さな社会の構築のための環境整備といった視点で検討を進めることが必要である。また、企業行動についても、量的拡大に走ることなく、環境に留意した行動が望ましい。この観点から、自由時間の拡充、一極集中の排除、過当競争の防止などの課題が指摘されている。これらライフスタイルの見直しは、今日の豊かさの追求を断念させるものではなく、地球とともに生きることが豊かさであるという建設的なものとして進められるべきものと考える。

(2)ライフスタイルの見直しに向けた仕組み作り

@ 地球温暖化への負荷に関する消費者への情報の開示、提供

 国民一人一人が地球温暖化問題に積極的に対応するためには、自らの地球温暖化への負荷に関する適切な情報が入手できることが重要である。このため、国、地方公共団体、事業者などが持っている情報をできる限り開示、提供することが必要である。

 具体的には、国、地方公共団体は、エネルギー消費やCO2排出の削減に資する試みの紹介、機器の情報提供、民間事業者の情報提供への取り組みの促進などを行う必要がある。事業者は、製品がエネルギー消費やCO2排出の削減にどう役立つのか、どのような使い方が最も温暖化への負荷が小さいかなどきめ細かな情報提供、表示に努めるべきであり、このような取り組みは、事業者の自主行動計画に含められることが必要である。また、情報の開示、提供に当たって、インターネット等の情報通信を活用することも有効である。

A 環境に優しい消費者行動の実践への支援

地球温暖化防止に資するグリーンコンシューマイズム(環境保全に力点を置いた消費者行動)の普及、省エネルギーやリサイクルへの積極的な取り組みなど環境に優しい消費者行動の実践が図られるべきである。このため、国民が日常生活の中での地球温暖化対策への取り組みを円滑化させる手法(環境家計簿、省エネ家計簿、エコ・ライフ(環境に配慮した生活)のヒント集など)を充実させる必要がある。

 他方、産業においては、消費者が地球温暖化につながる環境負荷の小さい製品を選択することを待つだけでなく、こうした製品の開発、販売に取り組むことが必要である。

B 将来を担う子供たちや若い世代への働きかけ

 地球温暖化問題の根本的な解決は、今の子供たちや若い世代の選択と行動にかかっていると言っても過言ではない。豊かさと便利さの中で生まれ育った世代への働きかけは、新しいライフスタイルの形成、環境負荷の小さな社会の構築の重要な鍵である。このため、環境問題、エネルギー問題と社会経済システムやライフスタイルとの関わりについて理解を深め、環境に優しい行動を実践する態度を身に付けるよう、環境教育、エネルギー教育を充実することが重要である。

C 広報の徹底

 国民一人一人が日常生活の中で、地球温暖化問題を実感でき、省エネルギー、CO2排出削減の必要性が具体的に描ける広報を展開することが必要である。関係省庁が連携しつつ、効果的な広報の実施を進めるべきである。特に、国民にとって省エネルギー、CO2排出削減が、我慢、節制という消極的なイメージ(生活像)ではなく、21世紀に向けた新しいライフスタイルといった積極的なイメージで捉えられるよう、広報に工夫を行うことが必要である。

5.革新的な技術によるブレイクスルー

 地球温暖化問題を抜本的に解決するためには、温室効果ガスの大幅な削減が必要である。中長期的視点に立った抜本的な省エネルギー・CO2排出削減のための革新的技術開発が鍵となる。

 従来の対策の量的な拡大や現在の技術水準を前提とした省エネルギーの推進といった短期的に効果のある対策を講じていくのみでは不十分であり、現在想定されていないような新技術の開花を見込んだダイナミックな対応が不可欠である。質的な変革を可能とするようなエネルギー需給の両面での革新的技術の開発に加え、温室効果ガスの貯留、固定の分野も追求すべきである。

 このような革新的な技術開発の過程において、環境ビジネスが産業として確立する余地が十分にあり、新規需要、新規産業の創出や国際競争力の向上という効果も期待される。

このため、革新的技術の開発に当たっては、企業のみではなく、国が積極的な役割を果たすべきである。

6.発展途上国における取り組みへの国際協力

地球温暖化問題は、人類の活動により排出されるCO2等の温室効果ガスにより引き起こされる問題であることから、その解決のためには世界一体となった取り組みが不可欠である。特に、途上国においてCO2の排出量が経済発展に伴い今後急速に増加することが見込まれる。また、一般に途上国におけるエネルギー効率は低い水準にあるため、省エネルギー技術の導入による効果は先進国におけるそれよりも大きい。

 このため、我が国が持つ技術、知見を発展途上国に移転し、世界全体としてのCO2削減に貢献することが重要である。具体的には、デンヴァーサミットで我が国が提案した「グリーンイニシアティブ」(地球温暖化防止総合戦略)の下、先進国が有する省エネルギー技術、非化石エネルギーに関する技術、世界的な植林・森林保全に関する技術、革新的なエネルギー環境技術といった「グリーンテクノロジー」を、ODA・民間協力、人材育成、社会・経済・制度整備、情報提供などからなる「グリーンエイド」により途上国へ移転すべきである。

7.おわりに

 本合同会議が示した地球温暖化対策の基本的方向を踏まえ、関係省庁の連携の下に、地球温暖化対策を深く掘り下げ、具体的な実効性ある対策が総合的かつ計画的に講じられるべきである。その際、対策が着実に効果を上げていくためには、エネルギー供給側の対策、エネルギー需要側(産業、運輸、民生)の各部門ごとの対策の推進及びその実施状況の厳格なフォローアップを行うことが必要である。その一方で、技術や社会の変化に対応するよう、技術的、経済的な実現可能性を踏まえて対策を見直していくべきである。

さらに、政府は、公共施設などにおける省エネルギーの強化、新エネルギーの積極的導入を図るとともに、環境負荷の少ない製品を選択するなど、率先して自らの活動の中で温暖化対策を講じるべきである。

我々は、我々の所属するそれぞれの審議会において、地球温暖化防止に密接な関連を有する政策を提言するという重大な役割を担っている。本合同会議での審議を経て、我々は、異なる審議会に属するものの、地球温暖化問題に関する認識と解決に向けた強い決意を共有するものであり、今後、それぞれの審議会において、2010年及びそれ以降に向けた政策の具体化に着手するものとする。

本合同会議の審議を通じて、国民各層から多数の有意義な意見が寄せられた。今後、我々が、それぞれの審議会において、地球温暖化対策について審議を深めるに当たり、国民の意見により一層耳を傾け、同時に積極的に情報を提供することに努めることとする。

本合同会議の開催をきっかけとして、国、地方公共団体、企業、そして国民一人一人が地球温暖化問題への対応の重要性、緊急性を一層認識し、それぞれの立場での取り組みを深めていくことを希望する。