小川内閣審議官より、新たな地球温暖化対策推進大綱(案)の骨子について説明があった後、意見交換が行われた。概要は以下のとおり。
(佐和委員)
○ 様々な地球温暖化対策の実施や京都メカニズムの活用には費用がかかるので、その費用を誰がどのようにして負担するのか政府で十分議論いただきたい。
○ 対策の財源を確保するためには、例えば、炭素税の導入を考えざるを得ないが、日本経済の現況からすればとても増税などを直ちに実行するのは難しい。どのような形で導入するのが望ましいかについて十分な検討が必要だが、北欧3国、オランダ、デンマーク、ドイツ、イギリス、フランス、イタリアなど、欧州の大部分の国が既に導入しているか、あるいは導入予定である。欧州ではバッズに課税してグッズに減税するという考え方で、増減税同額ないし税収中立のような導入の仕方が多く、日本の財政の現況からすれば、非常に薄い税金をかけて、対策のための財源を確保することに主眼を置くべきと、個人的には思っている。
例えば、炭素1トン当たり3,000 円の税金をかければ1兆円の税収が見込まれるが、その際の物価上昇はガソリンについて2円程度であり、これを微々たるものと言うべきかどうかは分からないが、そういう薄い課税によって十分な財源が得られる。
○ これを実施する際、是非希望するのは、エネルギー税制一般の見直しとタイアップすべきということと、エネルギー多消費型産業に対してどのような免税措置あるいは減免措置を講じるかということである。
(今井委員)
○ 内閣官房を中心に、「環境と経済の両立」という観点から大綱の見直しが行われたことを高く評価する。
○ 私はこの場では、交通政策審議会の代表として出席しているが、運輸部門は90年比+17%の目標に対し現状20%の増加なので、ここで掲げられた対策を進めれば+17%に戻ることは可能と聞いている。
○ この場では、むしろ、経団連の立場から何点か申し上げたい。
第1に、経団連は環境自主行動計画に基づいて2010年の排出量を1990年レベルにすることを目標としており、現在ほぼ達成している。今後、自主行動計画の透明性、説得力を高めるために、第三者機関の認証等も視野に入れて登録機関の設置を考えているので、今後とも自主性を尊重した対策を是非貫いていただきたい。
第2は、環境問題は地球的規模、国レベルで言えば国の規模でやるべきものであるので、例えば、地方で協議会をつくって議論する場合でも、あくまでも市民生活に関係のあるような問題に限定し、産業の目標は国レベルで見ていただきたい。
第3は、やはりブレイクスルーをするような技術開発が非常に大事であるので、産業界も努力をするが、国として全力を挙げていただきたい。
第4は、アメリカや発展途上国が入らないと本当の意味での実効性は上がらないので、今後ともこの京都議提書とアメリカの考えているものを一体化するような努力が是非必要である。
最後に、京都議提書の発効を目指すことを日本政府として決断したのは遵守の制度の法的拘束力がないことが大前提になっているので、今後とも法的拘束力がないことを担保できるような方向で議論していただきたい。
(浅野委員)
○ 中央環境審議会の答申を大筋で取り入れていただき大変感謝している。特にステップ・バイ・ステップのアプローチが重要で、節目節目の評価を大綱の中でしっかり書いていただいているが、この評価に当たりとりわけ重要なのは、情報の集まり方が大変遅いため、評価のタイムラグがあり過ぎるということである。
○ この点については大幅な改善が必要であり、環境情報システムの整備を最優先でやらなければいけないが、従来どちらかというと、環境情報システムという場合には、政府なり行政が情報を集めて発信し、ストックしておくものであった。今後、温暖化問題に取り組むに当たっては、情報の共有や双方向の情報交流などをもっと環境情報システムに組み込まなければいけない。既にPRTRでその第一歩を踏み出しているので、情報をお互いが確認し、共有し、それぞれの取組に活かしていく、そういう新たな環境情報システムの構築が非常に重要である。
○ とりわけ政府は、省庁再編によって大分よくなったと思うが、なお、各省の情報の共有が十分ではないような気がする。温暖化問題に関しては、各セクター毎の情報を完全に共有できるようにすること、また、できるだけリアルタイムで現場の情報がうまくコントロールタワーに反映できるようなシステムをつくることが重要である。この点は大綱案でも触れられているが、是非とも十分に進めていただきたい。
(加藤委員)
○ 代替フロン等3ガスについては、基準年比+2%程度の影響にとどめることが目標となっているが、かなり緩いのではないのか。また、吸収源対策では、3.9%を見込んでいるが、そのためには相当の森林管理をきちんとしていかないと困難な数値と思うが見通しは大丈夫なのか。
○ また、6%という数字をどのように割り振っていくかというとき、役所だけではなくていろいろなセクター、特に環境問題に一生懸命取り組んでいるNGOなどと一緒に公開の場で作成していくと関係者の人数も増え、目標達成に対して関心の高い人と努力する人が増える。是非そのようなプロセスであったらいいのだが、今回の大綱作成はそのようにはなっていないと認識している。
○ 国民への十分な情報提供、国民参加がないと、テレビの視聴時間を減らすことについて1時間もテレビを見ていない人はテレビを見てはいけないのか、というような誤解が生じてくるわけで、情報の環流をよくして国民の自発的努力による対策を促すような努力がもう一段必要ではないか。
(河野委員)
○ 基本方針として、環境と経済の両立を明確化したことは大変に評価している。ステップ・バイ・ステップのアプローチが環境省、経済産業省間で合意されたのは画期的なことである。
○ ただし、どの程度の負担があれば6%削減が達成可能なのか、この大綱の中では示されていない。EUと比べて日本は非常に削減コストが高いことも含めて、国民全体に温暖化対策を呼びかけるのならば、負担の話がいずれは個別具体的に出てくる。その呼びかけをしておくべき。
○ 経済的手法の活用については、ステップ・バイ・ステップのアプローチの第2ステップに議論が具体的になってくると思うが、アイデアは山ほどある一方、現実的にどうすべきかについては何も集約できていない。政府の税制調査会だけで処理できる問題ではないので、環境省、経済産業省も具体的アイデアを政府税調に持ち込んでほしい。
○ 民生部門の▲2%は容易ではない。普及・啓蒙をやるのはよいが、理念的に分かっていても行動と結びつく可能性が極めて薄い層が8割いる。それが分かった上で呼びかけをやらなければならない。そこから始めなければならないことは明らかであるから、大いにやっていただきたい。
○ 温暖化問題に大きな影響があるのは原子力であるが、電力自由化の問題と原子力の問題が非常に矛盾をはらんで議論が進んでいるので、それを皆さんの頭に入れておいていただきたい。
(佐々木委員)
○ 林政審議会の代表として発言する。現行大綱では、吸収源対策が0.3%とされているが、今回の大綱では、最近策定した森林・林業基本計画に基づき様々な施策に尽力することにより、3.9%としている。これはかなりの量である。京都議定書では、いろいろな人為を入れて森林を良くしていった分を見るということであり、ただ森林を放っておいて森林が吸収する二酸化炭素の量を測ればよいものではないことをまず認識していただきたい。
しかし、森林所有者は大変な赤字でどちらかというと破産状態になっており、公的な資金なども全部含めて考えていかないと3.9%はいかない。その際には、国民の合意を得るやり方が必要であり、NGOの参加や町ぐるみで森林を守るなど、皆が一緒になって森林を守っていくことをどんどん進めるべき。
○ 木材の使い道の開拓も必要で、木造の家を都会に建て「都会にも森林をつくる」という感覚を持っていただくことや、バイオマスや木材のプラスチック化など木材を使用した新しい産業の創造も進めていっていただきたい。
○ 吸収量の報告・検証体制の整備も急務である。
(千速委員)
○ 大綱案では、産業部門は▲7%、民生部門が▲2%、運輸部門が+17%となっているが、これは、産業界の努力に加えて国民が相当思い切ったライフスタイルの転換を図るとともに、CO2排出抑制の最大の鍵である原子力の推進等を国が責任を持って強力に推進することによって初めて達成できるものであり、あくまでも試算される目安であるということを確認しておきたい。
○ 産業界も省エネや革新的技術開発を引き続き強力に推進し、自主行動計画を達成していく所存なので、政府も強力にご支援いただきたい。
(南委員)
○ 地球温暖化問題は、エネルギー問題と同一語のようなものである。我々としては、電力のCO2排出原単位を20%改善するという自主行動計画を是非達成したい。
○ 環境と経済の両立や段階的取組等は非常に結構なことであり、今後もこの方向で続けていただきたいが、2点程お願いしたい。
1点目は、本大綱では、エネルギー起源のCO2を90年レベルに抑制し、そのために省エネ、新エネ、燃料転換等の追加対策を実施し、その対策毎の削減量を目標という形で位置づけている。しかし、この目標は、総合資源エネルギー調査会の報告に試算値として出されたものであり、不確定要素が多分にあるので、評価に当たっては数値の見直しを含めて柔軟に対応いただくことが必要である。
もう1点は、今度の大綱の目標は非常に大変な目標であり、従来の発想や行動を大転換しなければならないような課題である。特に民生・運輸部門において国民の全面的な理解と協力が必要であるが、大綱改正のプロセスにおいて、国から国民への情報提供などの機会が少なかったことは残念である。今後、国民全体が大変な覚悟で取り組まなければならないということを早急に国民各層を交えて議論をする場、意見を相互に闘わせる場を設けて、国民的課題として取り組んでいくことが重要である。
○ 我が国においては、地球温暖化とエネルギーの安定供給を両立させていくためには原子力の利用が不可欠であると考えているので、その努力を更に一生懸命重ねていきたいが、政府においても一層の御支援をお願いしたい。
(村上委員)
○ 社会資本整備の観点から発言する。民生部門において建築分野は大変大きな割合を占めており、約860万klの削減目標は実は相当厳しい数字である。建物の維持管理時だけでなく、建設時も含めたライフサイクルの視点で建築分野の省エネを考える方針を導入し、建物の長寿命化やエコ建材の利用などを進めてほしい。
(石委員)
○ 10年後に「やはり達成できなかった、守れなかった」という結論にならないか、恐らく多くの方が考えているのではないかと思う。そういう大変困難なことをこれから始めるわけだが、もう少し決意であるとか、裏付けとなる資金であるとかが議論されないと、皆、何となく疑問に思いながらやっている面があるのではないかという気がする。
(小川内閣審議官)
○ 御意見を伺ったが、新大綱の基本的な考え方については御理解いただけたと思う。この考え方に即して全編を貫く形で作業を続けたいと考えている。
○ 炭素税については、ステップ・パイ・ステップのアプローチの下で、新大綱案の骨子のポリシーミックスで述べている考え方をとっている。
○ 今後いろいろな対策を打つことが活性化につながっていく、あるいは新しい産業が起こっていくというプラスの面があるので、そういうプラス面をできるだけ活かしていくことを進めていきたい。他方、負担という意味ではこの目標達成は決して容易なものではなく、国民各界各層それぞれの立場から御努力をいただく必要があるので、そのための情報提供や各主体が一体となって取り組む機運の醸成についてこれから工夫をしていきたいと考えている。
○ 地球温暖化対策推進法が国会で成立した後、この大綱をベースに新しい京都議定書目標達成計画を作成していく際には、パブリックコメントなど、国民の皆様の意見を聞く機会を考えていきたい。
○ ステップ・バイ・ステップのアプローチに当たって節目節目の評価が大事だというご指摘はそのとおりで、情報をできるだけ速やかに収集し、皆で共有することを考えていきたい。
(日下経済産業省産業技術環境局長)
○ 代替フロンについては半導体の製造プロセス及び製品そのものから出てくるものとの両方があるが、製品の方は今後出てくる部分もある中で法的な整備も進んでいるので、代替物質の技術開発も含め、しっかりと対応を進めていきたい。
○ 民生部門については行動に期待することが難しい面もあるが、省エネ法によるトップランナー基準の対象機器の拡大等を通じた省エネ機器の普及など、確実な部分をできるだけ多く取り入れて対応を強化していきたい。
○ 温暖化政策とエネルギー、原子力など、他の政策との整合性についてのご指摘は重く受け止めて検討を進めていきたい。
○ 佐和委員ご指摘の温暖化対策の実施に係る費用に関しては、マクロ経済全体としての負担についてはいろいろな試算が既に行われているが、今回、個別の対策が明確化されることに伴い、改めてそれぞれの対策における費用負担の問題についても勉強を深めていきたい。
○ 南委員ご指摘のそれぞれの対策による温室効果ガス削減量の性格については、試算の位置づけではあるが、個別の対策の有効性を高め、各対策に係る政策の実施を担う関係省庁が責任を持って実施していくために設けている性格のものであり、しっかりと対応していきたいと考えている。
(森元外務省国際社会協力部参事官)
○ 今井委員からご指摘のあった米国、途上国を含めた全ての国が参加する共通のルールの必要性については全く同じ認識である。残念ながら、米国は京都議定書の手法と約束に合意をしていないが、引き続き気候変動枠組条約の中にはとどまり、2012年に進捗状況を評価し、科学的知見も踏まえ更なる行動をとると言っている。我々としては米国、更には途上国を加える形でどのような新たなルールができるかという可能性について今後とも追及していきたい。
○ 途上国については2008年から12年までの第1約束期間については義務が免除されることが10年前に決まっている。ただし、我々はそれを良しとしているわけではなく、中国やインドのような大きな排出国については、当面はその自主的な措置を促進していく必要がある。中国については、今年の初めASEM(アジア欧州会合)環境大臣会合を自ら主催したことや、次の5か年計画でいかに温室効果ガスを抑制していくかという自主的な努力をしているところである。インドも今年の気候変動枠組条約第8回締約国会議をニューデリーで開くことなど環境問題への取組に前向きな姿勢を見せている。我々としては、このような傾向を強力に後押ししていきたい。
(岡澤環境省地球環境局長)
○ 民生部門の取組について補足させていただくと、同部門は▲2%の削減を見込んでいるが、どうしても規制的な手法が取りにくいため、自主的な取組中心とならざるを得ず、なかなか難しいということは重々承知している。2月から環境省では「環(わ)の国くらし会議」という会議を始め、それを梃子にしてキャンペーンを展開しようとしている。こうした啓発活動を通じて最終的にはライフスタイルの変更につなげたい。
○ ただ、ライフスタイルの変更には時間がかかり、余り細かいところまで国が口出しするわけにもいかなので、意識の変革はいい省エネ機器などをつくったときに、それを買ってもらう動機付けというのが非常に重要だと考えている。産業界にはトップランナー方式など、使えば省エネになるようなものを開発していただき、そして、それを買っていただくという意識を消費者に持っていただくということが非常に大事ではないか。
そういう意味で、双方向の情報提供あるいは負担の面も含めて情報提供して、民生部門の取組を進めていきたいと考えている。
○ 今井委員からご指摘のあった自治体の協議会については、民生部門を中心に活用をしていきたい。
(加藤林野庁長官)
○ 森林吸収源については、1990年以降人為活動を行ったところが吸収源として算入できることになっている。現状の森林整備の水準で考えていくと、3.9%の達成は容易でないと認識しており、大変大きな課題であるとの認識の下に森林施策の充実を図っていきたい。
(茅議長代理)
○ 今後の予定については、本日配布した骨子をベースに、皆様方の今日の御意見を勘案して新大綱案を作成し、3月19日の地球温暖化対策推進本部で正式に大綱を決定するという運びとなっている。
○ 今日の皆様方からの御意見にもあったように、京都議定書の目標は口で言うのは簡単だが、達成は非常に大変である。私も大綱のベースになっているエネルギー需給見通しの作成に加わったが、本当に大変な目標だと実感している。今後いろいろな柔軟な形で対応を図っていかなければ到底達成はおぼつかないと思っているので、委員の皆様方の御協力をよろしくお願いしたい。