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鳥インフルエンザ緊急総合対策について

平成16年3月16日
鳥インフルエンザ対策に関する関係閣僚による会合


 近年、アジア、欧州、北米の各地域に流行している高病原性鳥インフルエンザ(以下「鳥インフルエンザ」という。)については、今年の1月以降、国内の鶏等にも数例発生している。
 この問題は、まん延防止等の家畜衛生上の問題のみならず、食の安全・安心の確保や人への感染防止等の国民の健康確保といった国民生活の身近な問題とも関連する課題であり、関係する府省庁が緊密な連携をとって対応措置を講じてきた。
 今後、これらの措置を引き続き推進するとともに、関連する法制度の整備、予算措置を含め、影響を受けた関係者・関係機関に対する措置、試験研究の充実等も含めた総合的な対策を早急に講じていくこととしている。
 こうした考え方に立って、政府は関係閣僚による会合において、鳥インフルエンザ緊急総合対策として、当面、以下のとおりの対策を講ずることとした。
 今後、この対策に従い、関係府省庁間のより一層の連携の下に、鳥インフルエンザを早急に封じ込めて感染防止を図るとともに、食に対する不安の払拭、人への感染の防止と国民の健康確保、関連する事業者と自治体等への対策等を確実に推進することとする。
 また、対応の進捗状況を速やかに点検するとともに、本問題に係る事態の推移に応じて、関係府省庁及び関係自治体の緊密な連携の下、必要に応じ、適切な措置を検討・実施していく。


1.まん延防止対策の徹底
  鳥インフルエンザは、鳥から鳥に感染する感染症であるが、生きた鳥との濃密な接触等により人に感染することもあり、また、ウイルスが変異し人から人に強い感染力を有する新型インフルエンザウイルスとなる可能性もある。
 従って、鳥インフルエンザのまん延防止は、鶏肉・鶏卵の安全・安心な供給にとって重要であるばかりでなく、人の感染症の予防のためにも極めて重要であり、関係府省庁が緊密に連携し、全力で取り組んできた。


(1)発生防止のための措置
 これまでの発生事例の感染経路は解明されていないが、ウイルスを持っている可能性のある野鳥・ネズミ等の侵入防止、鶏舎等への出入りに際しての消毒の徹底が何よりも重要であることから、次の発生防止措置を講じていく。
1) 養鶏業者がこの取組を厳格に行うとともに、学校・家庭を含めて家きんを飼養している者は、野鳥との接触を避けるよう、引き続き周知徹底を図る。
2) 養鶏業者に対しては、野鳥・ネズミ等の侵入を防止できるウインドレス鶏舎等の整備を推進するため、補助事業、リース事業等を活用した支援措置を講じる。
3) 海外からのウイルスの侵入を防止するため、引き続き鳥インフルエンザ発生国からの家きん・家きん肉の輸入停止措置を的確に実施するとともに、発生国から帰国する人に対して靴底消毒への協力を求める。


(2)早期発見・早期通報のための措置
 鳥インフルエンザが発生した場合には、早期発見・早期通報により、防疫マニュアルに基づく防疫措置を迅速、的確に講ずることが最も重要であることから、次の措置を講じていく。
1) 既に家畜伝染病予防法第52条に基づき、千羽以上の養鶏農家に対して、感染が疑わしい事例を直ちに報告すること及び死亡羽数等を定期的に報告することを求めることとしたが、今後ともこの措置の適切な運用を図る。
2) 千羽未満の養鶏農家、ペットとしての飼養者等に対して早期通報の必要性を徹底するとともに、3月9日に食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省、環境省の4府省連名で取りまとめ、公表した「国民の皆様へ(鳥インフルエンザについて)」に記載されている死亡した野鳥の取扱いに関する注意事項について、引き続きその周知徹底を図る。
3) 食鳥処理場において、都道府県等が行う食鳥検査の際、異状のない養鶏場から出荷された鶏である旨の確認を行ってきたところであり、引き続きそのことを徹底する。
4) 今後、食鳥検査において高率の死亡や呼吸器症状などを呈する鳥インフルエンザに感染している疑いがある鶏に対し、簡易検査キットを用いたスクリーニング検査を試行するとともに、国立感染症研究所において確認検査を行う。
5) 死亡し、又は捕獲調査の対象となったカラス等について、既にサンプルを選んで検査を実施することとしたところであり、今後その結果を踏まえて適切に対応する。


(3)発生した場合の防疫措置
 発生した場合は、発生農場における殺処分と焼却又は埋却、周辺地域における移動制限と清浄性確認を迅速・的確に進めることが何よりも重要である。これまでも、防疫マニュアルに基づき、地方自治体によって対応が行われているところであり、今後とも適切な措置を講じていく。
1) 発生の疑いが確認された場合、関係する機関において、連携を密にした対応体制が迅速に整備されるよう、日頃から、地方自治体内、地方自治体間、国と地方自治体、関係府省庁間の連絡・協調体制を構築し、発生した場合を想定した準備を行っておく。
2) 移動制限については、その実効がより確保されるよう、防疫上の安全性が確保されることを前提として、移動制限期間の短縮や保管・加熱処理等のための家きん卵の移動、十分に発酵処理された鶏糞の移動を認めること等を内容とする防疫マニュアルの改訂を行ったところであり、今後その趣旨を徹底し、発生した場合の対応について、実効がより確保されるよう適切な対応を行う。
3) 移動制限区域内の鶏卵等について、伝染病のまん延防止の観点から問題ないと判断されたものの処理が円滑に進むよう、引き続き、各都道府県に対し必要な指導を行う。
4) トラック事業者に対して、引き続き、移動制限区域の範囲・制限内容等の周知徹底を図るとともに、関係車両の消毒・清掃の励行等必要な指導を行う。
5) これまで発生が確認された地域においては、家畜防疫等の関係機関と連携しつつ、警察官等による現場周辺での警戒活動や、自治体が設置した消毒ポイント等での交通整理を実施してきたところであり、今後とも発生地域の実情に応じ、適切な措置を講ずる。


(4)鳥インフルエンザ・ワクチンの今後の取扱い
 食品安全委員会において、鳥インフルエンザ・ワクチンの接種に係る鶏肉・鶏卵等の食品としての安全性評価について、3月中に方向性を明確にする。
 また、薬事法に基づくワクチンの製造・輸入承認については、実験施設内におけるワクチン接種実験の実施、ワクチン開発への協力や承認手続の迅速化を行う。


(5)感染経路の解明
 より効果的なまん延防止対策の検討に資するため、感染経路について野鳥の関与も可能性の一つとして指摘されていることから、既に、科学技術振興調整費による緊急調査研究等による対応を開始しているところであるが、今後その枠組みの中で、関係省庁の連携の下に野鳥の生息調査や捕獲による検体の採取を進めつつ、ウイルスの検査、病原性の解析等を行う。また、この問題が世界的に発生している事案であることにかんがみ、今後、国際的な連携強化を含む調査研究の充実を検討する。
 また、農林水産省に専門家による「感染経路究明チーム」を直ちに設置し、これまでの発生事例について感染経路の究明を早急に進める。


2.国民の食に対する不安を払拭するための措置
 鳥インフルエンザについては、これまで鶏肉・鶏卵を食べることによって人に感染したという事例の報告はない。
 しかしながら、3例目の発生農場では、通報が行われなかったばかりではなく、鶏が大量死した後も出荷を続けた結果、出荷先の食鳥処理場で他の鶏に感染するなどの問題が生じ、食品として流通したため、発生農場からの鶏肉・鶏卵の安全性についての不安や混乱を招いた。
 こうした食品(鶏肉・鶏卵)に対する不安を払拭するためには、鳥インフルエンザについての科学的な知識や処理・流通の過程で講じられている安全性の確保のための措置に関し、正確で分かりやすい情報の提供に努め、国民の理解を深めていくことが重要である。
 こうした観点から、引き続き、以下の措置を講じていく。
1) 鶏肉・鶏卵の食品としての安全性も含め、鳥インフルエンザに関する国民への正しい知識の普及を図るために作成した国民向けの資料(前述の「国民の皆様へ(鳥インフルエンザについて)」)により、既に都道府県を通じて啓発を依頼しているところであるが、今後、その内容の周知に努める。
2) 食品安全委員会における科学的議論も踏まえ、引き続き関係府省庁が連携して、政府広報、ホームページ、講演会等の多様な媒体・手法を用いて情報発信に努め、国民の理解の一層の促進を図る。
3) 文部科学省において、関係府省庁と連携しつつ、学校給食の現場において無用の混乱が生じることのないよう、引き続き、指導等を徹底する。


3.人への感染防止、国民の健康確保のための措置
 鳥インフルエンザについては、感染した鳥のフンを吸い込むなど、大量のウイルスが体内に入った場合にごくまれに人に感染することが知られているが、通常の生活を送る中で感染する可能性は極めて低い。
 国民に対する正しい知識の啓発を図るため、既に国民向けの資料をとりまとめているところであり、これの活用を図るとともに、海外において数十例ほど人への感染例が確認されていることを踏まえ、防疫作業に従事する者などに対する感染防止対策について万全を期すことが極めて重要である。
 また、鳥インフルエンザと人インフルエンザに同時にかかった場合には、その者の体内で人から人への強い感染力を有する新型インフルエンザウイルスが発生する可能性がある。このような事態を回避し、国民の健康を確保するため最大限の努力を行うとともに、万一、新型インフルエンザが発生した場合に、その被害を最小限にとどめるため、新型インフルエンザ対策の充実を図ることが必要である。
 こうした観点から、以下の措置を講じていく。


(1)鳥インフルエンザについての正しい知識の啓発
 鳥インフルエンザについては、人への感染の可能性について国民に不安があることから、これを払拭するために作成した国民向けの資料(前述の「国民の皆様へ(鳥インフルエンザについて)」)により、既に都道府県を通じて啓発を依頼しているところであるが、今後、政府広報等の媒体を通じて更なる正しい知識の啓発を図る。


(2)鳥インフルエンザウイルスの鳥から人への感染防止対策
1) 鳥インフルエンザウイルスと接触しうる作業に従事する防疫従事者に対して、感染防御や健康状態の確認を行うとともに、万一、鳥インフルエンザを疑う症状が出た場合には速やかに治療できる体制を既に整えたところであり、今後ともこれらの措置を徹底する。
2) 防疫従事者以外の者についても、今後、鳥インフルエンザにかかったと疑われる者を早期に発見し、治療を行うとともに、国内におけるまん延状況を迅速に把握するため、監視体制の強化を行う。


(3)新型インフルエンザに対する国民の健康確保対策
1) 万一海外又は国内において、新型インフルエンザウイルスの発生が確認された場合には、感染力や重篤度を考慮しながら、指定感染症への速やかな指定について検討する。
2) 鳥インフルエンザの治療として有効とされている抗インフルエンザウイルス薬(リン酸オセルタミビル)の備蓄について検討する。
3) 前述の緊急調査研究等により、鳥インフルエンザウイルスの哺乳類に対する病原性の解析及び人用ワクチンの候補株の開発・特許問題の解消等新型インフルエンザ対策に資する研究開発を引き続き推進するとともに、その充実を図る。


4.早期通報促進と被害拡大防止のための法制度の整備
 今後、鳥インフルエンザが発生した場合に、より迅速かつ的確な対応が図られるようにするには、法制度の整備も重要である。
1) このため、早期通報を促進するとともに関係農家の協力の下に移動制限措置をより的確に実施する観点から、通報義務違反に対するペナルティの強化、移動制限命令に協力した養鶏農家に対する助成措置の制度化等を内容とする家畜伝染病予防法の改正案を速やかに作成し、今通常国会に提出する。
2) なお、山口県で発生した事例に対しては、農畜産業振興機構からの助成が臨時緊急的に措置されたが、他の発生事例についても、養鶏農家に対する助成措置が法制度化されるまでの間も、国による緊急助成措置を確実に実施することとし、このための経費の一部について15年度予備費(高病原性鳥インフルエンザまん延防止緊急対策事業)により対応する。


5.養鶏事業者・関連事業者対策
 今回の鳥インフルエンザの発生では、養鶏農家のみならず、外食事業者や小売店等にも影響が生じていることから、養鶏事業者、関連事業者の経営対策として、次の措置を講じていく。
1) 発生農家の経営再開、移動制限等により影響を受けた農家の経営継続を支援するための融資制度について、今後、償還期間の延長、移動制限区域外の農家への適用等の改善措置を講ずる。
2) 中小企業者を対象として、既に関係機関に特別相談窓口を設置するとともに、セーフティネット貸付として、運転資金を一般貸付と別枠などで貸し付けることとしたところであり、その適切な運用を図る。
3) 今後、影響を受けた中小企業や中堅外食事業者に対するセーフティネット保証等の債務保証対策について、農林水産省で実施する影響調査を踏まえ、農林水産省、経済産業省が連携をとって、適切に対応する。


6.地方自治体に対する対応
 鳥インフルエンザが発生した場合、当該地方自治体は、急遽、感染した大量の鶏の処分や消毒作業に追われることになることにかんがみ、次のとおりの支援措置を講じていく。
1) 今後とも、鳥インフルエンザが発生した場合において、農林水産省をはじめ関係府省庁の連携の下に専門家の現地派遣等最大限の支援を行うとともに、消毒作業や埋却・焼却に必要な場所・施設等の確保及びこれら作業に従事する人の安全確保について万全を期する。
2) 今後とも、今回の京都の例のように、被害が大規模であるなど、緊急に対応する必要があり、地方自治体による対応が困難である等止むを得ないと認められる場合には、地方自治体からの求めに応じ、自衛隊の部隊等により支援する。
3) 今後とも、地方自治体の家畜伝染病予防法に基づく防疫措置に係る財政負担については、当該地方自治体の財政運営に支障を生じないよう適切な対応を図る。
 なお、関係地方自治体においては、既に多額の財政支出を余儀なくされており、今年度については、その財政運営に支障が生じないよう特別交付税により暫定的な財政支援を講じる。