令和3年1月4日菅内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問と回答

(質問)
 今月22日に発効する核兵器禁止条約について伺います。政府はこれまで、核保有国の米国との同盟関係に基づく「核の傘」を前提とした我が国の安全保障体制を踏まえ、核兵器禁止条約への署名・批准をしない立場を取っています。同条約の発効について、改めて菅総理の御所感をお聞かせください。12月にもオーストリアで第1回締約国会議が開かれる予定です。連立与党の公明党は山口那津男代表自ら、自民党でも一部議員から、日本政府のオブザーバー参加を求める声が挙がっています。政府は従来から参加に対して慎重な姿勢を示しています。発効後に何らかの参加への検討を行う予定があるのかどうか、また、こういった与党からの声について今月開会する通常国会で、どのように対応していく予定なのか教えてください。【中国新聞】

(回答)
 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリードする使命を有しており、核兵器禁止条約が目指す核廃絶というゴールは、共有しています。
 一方で、核兵器のない世界を実現するためには、核兵器国を巻き込んで核軍縮を進めていくことが不可欠ですが、現状では、同条約は米国を含む核兵器国の支持が得られていません。さらに、多くの非核兵器国からも支持を得られていません。
 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、抑止力の維持・強化を含めて、現実の安全保障上の脅威に適切に対処しながら、地道に、現実的に、核軍縮を前進させる道筋を追求していくことが適切であると考えています。
 こうした我が国の立場に照らし、同条約に署名する考えはなく、また、御指摘の会議へのオブザーバー参加については、慎重に見極める必要があると考えています。その上で、我が国としては、引き続き、立場の異なる国々の橋渡しに努め、核軍縮の進展に向けた国際的な議論に積極的に貢献していく考えです。
 こうした政府の考え方について、国会においても、丁寧に説明していく考えです。

(質問)
 政府はこの間、「緊急事態宣言を出さないために」とコロナ対策を呼び掛けてきました。結果的に感染拡大が止まらず、宣言検討に至った政府のコロナ対策の自己評価をお聞かせください。感染状況によっては、宣言地域を首都圏以外にも拡大するのでしょうか。コロナについて様々なことが分かってきており、若者の人の流れが減らないなど前回発令時よりメッセージが届きにくくなるとの懸念がある。リーダーとしていかにして国民にメッセージを届けるお考えか。【北海道新聞】

(回答)
 感染拡大が続いている背景には、専門家によれば、気温の低下の影響に加え、直近の感染拡大については、飲食をする場面が主な感染拡大の要因とされていると承知しております。
 こうした中、これまでも全国各地で飲食店の営業時間短縮を進めてきており、北海道、大阪など営業時間短縮をしっかり行った地域ではその効果が出ているものと承知しております。
 他方、東京とその近県では、この3が日も感染者数は減少せずに、極めて高い水準となっており、こうした状況を深刻に捉えて、より強いメッセージが必要だと判断し、今般、緊急事態宣言の検討に入ることとしたものです。
 緊急事態宣言の対象地域については、ここ2週間は1都3県で全国の感染者数の半分を占め、明らかに感染拡大の中心となっていることを踏まえ、これらの地域を対象とすることが念頭にありますが、具体的には感染状況を見て早急に検討してまいります。
 この感染拡大を減少に転じさせるためには、国、自治体、そして国民の皆様が同じ方向に向かって行動することが何より大切です。このため、国民の皆様には、引き続き、様々な場を活用して、政府として、施策の考え方を丁寧に説明しながら、進めていきたいと考えております。

(質問)
 総理にお聞きします。全国的にPCR検査の一日の能力は11万件ですが、実施件数は1日当たり最大でその能力の半分強です。にもかかわらず、症状があってもPCR検査を受けることができない事例が多数あります。日本でのPCR検査体制は不十分だと言わざるを得ません。例えば、検査を増やすために、外国と同じように薬局などで検査することが可能ではないでしょうか。政府は検査を制限していますか。【西村カリン氏(Radio France)】

(回答)
 検査の必要がある人が、迅速かつスムーズに検査を受けられるようにすることが重要であると考えております。
 御指摘のような症状がある場合については、抗原検査キットによる検査が可能であり、これまでも、季節性インフルエンザの流行に備え、1日平均20万件程度、シーズンを通じて約2,000万件程度の需要にも対応できる検査能力を確保するとともに、都道府県において、全国約2.8万か所の診療・検査医療機関を指定するなど、発熱等の症状のある方が確実に検査を受けることができる体制の整備を進めてきております。
 併せて、医師が必要と判断した検査がきちんと行われるよう、全額国の負担で検査機器の整備等を行っております。
 今後とも、検査の必要性を踏まえて、検査体制の拡充を図ってまいります。

(質問)
 昨年12月27日、羽田雄一郎参議院議員が急逝されました。羽田議員は同月24日深夜に発熱などの症状を訴え、25日、26日は自宅待機。27日に新型コロナウイルスのPCR検査をクリニックで受ける前に容態が急変して亡くなられました。羽田議員に限らず、亡くなった後にPCR検査で陽性が判明する事例は少なからず発生しています。政府はこうした不幸なケースから何を学び、どのような対策を講じるお考えでしょうか。【畠山理仁氏(フリーランス)】

(回答)
 亡くなられた羽田議員の御冥福をお祈り申し上げます。
 御指摘の羽田議員に関する経過の詳細については承知しておりませんが、検査が必要な方がより迅速かつスムーズに検査を受けられるようにすることが重要であると考えております。
 このため、これまでも、季節性インフルエンザの流行に備え、1日平均20万件程度、シーズンを通じて約2,000万件程度の需要にも対応できる検査能力を確保するとともに、PCR検査についても全額国の負担により機器の整備を図るなど、その体制整備を進めてきております。
 今後とも、検査の必要性を踏まえて、検査体制の拡充を図ってまいります。

(質問)
 政府のメッセージの実効性についてお伺いします。政府は総理を先頭に、会見やぶら下がり取材などで、不要不急の外出自粛を呼び掛けましたが、昨年4月の緊急事態宣言時のような劇的な人流減少は首都圏を中心に見られていません。総理も先ほどの会見で「東京都と近県で12月の人出があまり減らなかった」ことを新規感染者数が高いレベルで推移している背景に挙げました。このように、政府の要請がなかなか届きにくい現状をどう考え、こうした状態を踏まえて今後、どうやって国民に行動変容を促しますか。また、新たに首都圏への週内発出検討を表明された緊急事態宣言は、強制力が限定的な現行の特措法に基づく発出になりますが、こうした国民の「自粛疲れ」や、メッセージがなかなか届きにくい現状がある中、どうやって実効性を持たせますか。【西日本新聞】

(回答)
 正に東京とその近県で、この3が日も感染者数は減少せずに、極めて高い水準となっており、こうした状況を深刻に捉えて、より強いメッセージが必要だと判断し、今般、緊急事態宣言の検討に入ることとしたものです。
 また、昨年以来、対策に取り組む中で判明したこととして、経路不明の感染の原因の多くは飲食が原因であると専門家が指摘しています。このため、現下の感染拡大を抑えるためには、飲食での感染リスクの軽減を図る対策が重要であり、これを実効的なものとする観点から、緊急事態宣言の内容を早急に検討いたします。
 併せて、特措法については、給付金と罰則をセットで、より実効的な措置が採られるように、その改正法案を次期通常国会に提出いたします。

(質問)
 緊急事態宣言を発出する場合の狙いについてお伺いします。現時点では特措法に罰則はなく、宣言が発令されても要請・指示を守らない事業者名への強い対応は「公表」にとどまるわけですが、実効性はどの程度上がると考えていますか。【朝日新聞】

(回答)
 東京とその近県で、この3が日も感染者数は減少せずに、極めて高い水準となっており、こうした状況を深刻に捉えて、より強いメッセージが必要だと判断し、今般、緊急事態宣言の検討に入ることとしたものです。
 また、昨年以来、対策に取り組む中で判明したこととして、経路不明の感染の原因の多くは飲食が原因であると専門家が指摘しています。このため、現下の感染拡大を抑えるためには、飲食での感染リスクの軽減を図る対策が重要であり、これを実効的なものとする観点から、緊急事態宣言の内容を早急に検討いたします。
 併せて、特措法については、給付金と罰則をセットで、より実効的な措置が採られるように、その改正法案を次期通常国会に提出いたします。

(質問)
 菅義偉首相は昨年12月25日の記者会見で、「桜を見る会」前日の夕食会を巡る安倍晋三前首相の国会質疑について「中身を見ていない。これから精査したい」と述べられました。その後、精査はされましたでしょうか。改めて、安倍前首相は説明責任を果たされたとお考えかを含め、御認識をお聞きします。【共同通信】

(回答)
 安倍前総理は、できる限りの説明をされたと思いますが、説明が十分であったかどうかは国民の皆様が判断されることであり、私が申し上げるべきものではないと思います。
 いずれにせよ、国会等における安倍前総理の説明が事実と異なっていたことが明らかになったことは、重く受け止めています。

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