令和3年5月14日新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問と回答

(質問)
 政府が東京オリンピック・パラリンピックの開催方針を堅持することに対し、国民の間からは「政府は国民に自粛を求めているのに、オリンピックだけは特別扱いか」といった疑念や、「政府は国民よりオリンピック優先ではないか」といった疑念の声が出ています。総理はこうした疑念の声に、どう答えますか。【テレビ東京】

(回答)
 まずは、現在の感染拡大を食い止めて、国民の命と健康を守ることが最優先です。
 開催に当たっては、選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守ってまいります。
 ファイザーから各国選手へのワクチンの無償の提供が実現し、さらに、選手や大会関係者と一般の国民が交わらないようにするなど厳格な感染対策を検討しています。
 こうした対策を徹底することで、国民の命や健康を守り、安全・安心の大会を実現することは可能と考えており、しっかり準備を進めていきます。

(質問)
 変異株が主流になりつつある中、尾身先生も指摘されたようにクラスターも多様化しています。まん延防止等重点措置は時短要請命令、酒類提供自粛の対策で果たして十分なのでしょうか? まん延防止等重点措置でも、市区町村レベルで休業要請命令を出せるといった、制度設計の見直しの必要性についてどのようにお考えでしょうか?【ジャパンタイムズ】

(回答)
 まん延防止等重点措置では、営業時間短縮要請を始め、酒類提供の停止やカラオケ設備等の利用の停止等を要請することができる仕組みになっています。
 4月5日からまん延防止等重点措置を適用した宮城県においては、20時までの時短営業等の取組の徹底により、5月11日には解除に至るなど、一定の効果が見られます。
 まん延防止等重点措置の実効性の確保という観点では、専門家の意見等も伺いながら、引き続き対策の効果を見極めていく必要があると考えていますが、いずれにせよ、感染が落ち着いた段階で、しっかりと検証を行い、政府の権限も含めて、必要な対応を検討してまいります。

(質問)
 東京や北海道のように、まん延防止等重点措置をしても感染が収まらず、宣言に格上げされたり、福岡や広島、岡山のように、まん延防止措置を適用しないまま、いきなり宣言が出たりする事例が出てきた。宣言が出て約3週間経つ東京などでは感染者が高いままだ。変異株の出現で、まん延防止措置、緊急事態宣言という現行の仕組みが機能しなくなっているのではないか。改善点があるとすればどこか。見解をお願いします。【西日本新聞】

(回答)
 感染状況は地域において異なっていますが、例えば、早くからまん延防止等重点措置を実施した宮城県については、感染状況が改善し、5月11日に同措置が解除されました。また、東京や大阪では、緊急事態宣言により、1週間前と比べて新規陽性者数が減少するなど、一定の効果も見られており、まずはこれらの措置に基づく対策を徹底してまいります。
 その上で、対策の効果については、専門的な分析が必要と考えており、今後、感染が落ち着いた段階で、しっかりと検証を行い、必要な対応を検討してまいります。

(質問)
 東京オリンピック、パラリンピックについて、総理は記者会見で、対策をしっかり講じることで実現可能と考えると述べ、改めて開催に強い意欲を示されました。パラリンピックは、オリンピックよりきめ細かな対応が不可欠です。パラリンピック開催については別途、対策をお考えなのでしょうか。その上で、開催については、オリンピック、パラリンピック一体で判断されるのでしょうか。また、コロナの状況によっては、オリンピックのみ開催し、パラリンピックは中止、その逆の判断もありえるのでしょうか。【文化放送】

(回答)
 まずは、現在の感染拡大を食い止めるために全力を挙げてまいります。
 オリンピック・パラリンピック共に東京大会については、IOC(国際オリンピック委員会)、IPC(国際パラリンピック委員会)は7月からの開催を既に決定していますが、開催に当たっては、選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていきます。
 ファイザーから各国選手へのワクチンの無償の提供が実現し、さらに、選手や大会関係者と一般の国民が交わらないようにするなど厳格な感染対策を検討しています。
 さらに、パラリンピックについては、車椅子や介助などが必要となるアスリートのために追加的にきめ細かく感染対策を講じてまいります。
 こうした対策を徹底することで、国民の命や健康を守り、安全・安心の大会を実現することは可能と考えており、しっかり準備を進めてまいります。

(質問)
 新型コロナウイルスの高齢者ワクチン接種時期をめぐる全国調査についてお尋ねします。兵庫県は全ての自治体が7月末に完了見込みと回答していますが、自治体からは「できるというまで県を通じて国から調査がきた」「計画だけでもいいと言われた」などと、国から強い働きかけがあったことに不満の声が上がっています。国からの圧力と取れる働きかけで、当初予定から前倒しした自治体があることについてどのように考えますか。また、今回の調査が信頼性のあるものだと思われますか。【神戸新聞】

(回答)
 今回の調査は、各自治体における接種計画の前倒しの状況について行われたものであり、その過程において、自治体が抱える課題等について個別に丁寧にお伺いしたものであります。
 その上で、今回の調査結果については、住民が速やかなワクチン接種を切望する中で、政府一丸となった自治体支援の取組等も踏まえ、多くの自治体において、できる限りの前倒しに努めていただいた結果と受け止めています。
 引き続き、自治体の状況を個別に丁寧にお聞きし、接種に関する課題に政府を挙げて対処するなど、自治体の計画に基づき円滑な接種が進み、国民の皆さんが一日でも早くワクチン接種を受けられるよう、全力を尽くしてまいります。

(質問)
 新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種についてお伺いします。政府は接種完了の目標を7月末としていますが、市民の間では「いざ予約をしたら8月になっている、これはどういうことなのか」と困惑する人が出ています。京都府は、国の調査に対して府内全26市町村が7月末に完了する見込みと報告をしていますが、京都新聞社が5月10~13日に全26市町村を対象として、7月末までに2回接種が可能か独自に調査を行ったところ、6市町が「困難」と回答しました。総理はそもそも、どんな根拠で「7月末」としたのでしょうか。また、こうした状況が生じている背景には、ワクチンの副反応への懸念が薄まり、接種を希望する人が各自治体の当初の想定より増えていることもあるのでないかと思われますが、接種完了時期のめどをもう一度見直すつもりはありますか。【京都新聞】

(回答)
 政府としては、自治体の接種の状況を個別に丁寧にお聞きしつつ、接種に際しての課題があれば、政府を挙げて対処することなどにより、御質問にあるように7月末までに高齢者の接種を完了させることができると考えています。
 具体的には、自治体に対して接種スケジュールを確認する中で、7月末までに高齢者への接種を終了できない自治体の主な課題としては、ワクチンの具体的な供給スケジュールと医療従事者の確保でありました。
 このため、ワクチンの供給については、先月末に供給量と配送時期を各都道府県にお知らせしたところです。
 また、医療従事者の確保については、関係団体に要請するとともに、更なる接種を促進するような支援の拡充や歯科医師の接種を認めるなど様々な対応を講じているところです。
 引き続き、自治体と緊密に連携しながら、自治体の計画に基づき円滑な接種が進み、国民の皆さんが一日でも早くワクチン接種を受けられるよう、全力を尽くしてまいります。

(質問)
 拉致問題についてお伺いします。北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんの父、滋さんがお亡くなりになって6月5日で1年となります。この1年の菅総理の思いをお聞かせください。また、2002年に拉致被害者5人が帰国して約20年、具体的な進展が見られず、家族の高齢化も進む中、政府には結果が求められています。菅政権では、拉致問題を「最重要課題」に掲げ、アメリカのバイデン大統領とも即時解決を求めることで一致していますが、解決に向け、具体的にどのような道筋、手立てを考えているのでしょうか。もう時間がありません。本気で解決しようという気構えはお持ちなのでしょうか。お聞かせください。【新潟日報】

(回答)
 めぐみさんを始めとする拉致被害者を取り戻そうと、御家族の先頭に立って、全身全霊を捧(ささ)げて救出活動に取り組んでこられた横田滋さんが、めぐみさんとの再会を果たすことなくお亡くなりになられたことは、まさに痛恨の極みであり、政府として、また、一政治家として、大変申し訳なく思っております。
 先月7日には、拉致被害者御家族など皆様と面会し、もはや一刻の猶予もないとの切実な思いを直接伺い、改めてこれを胸に刻んだところです。
 拉致問題は菅内閣の最重要課題です。私自身、条件を付けずに金正恩(キム・ジョンウン)委員長と向き合う決意の下、北朝鮮に対して働きかけを行っています。
 引き続き、全ての拉致被害者の一日も早い帰国実現に向けて、自ら先頭に立ち、米国を含む関係国と緊密に連携をしながら、拉致問題を何としても解決したいとの思いで、あらゆるチャンスを逃すことなく全力で取り組んでまいります。

(質問)
 今から1年2か月前、2020年3月14日に、当時の安倍総理に対し、コロナ対策のために行う特措法による緊急事態宣言と自民党の改憲案4項目の中にある緊急事態条項との違いを私は質問いたしました。そうしたところ、コロナ対策に対して用いられるのは、特措法に基づく緊急事態宣言であり、報道の自由も守られる等々とお答えになり、同時に特措法による非常事態宣言と、改憲による緊急事態条項は、全く別のものである、と安倍前総理は明白にお答えになりました。しかるに菅総理は5月7日の会見で産経新聞記者の改憲による緊急事態条項についての質問に、「コロナの感染が拡大する中で海外の国を見ると強制的な執行を私権制限がない中でできる」とか「コロナ禍の中で、緊急事態(これは改憲による緊急事態条項という意味だと思われます)への国民の皆様の関心は高まっている」とお答えになっており、コロナ禍を理由として、改憲による緊急事態条項の導入と発令に前向きとも取れる姿勢を示されました。5月3日のビデオメッセージでも同様のことを話されています。
 ※憲法記念日 総理“改憲で「緊急事態条項」新設を”(ANN NEWS CHANNEL、2021年5月3日)
 https://www.youtube.com/watch?v=wNT9kNkhjfo&t=15s
 自民党内の有力政治家も同じように、コロナと改憲による緊急事態条項を結びつける発言を次々とされています。石破茂さん1人を除いては、です。菅総理は、安倍前総理と全く違う姿勢を見せたわけですが、その違いについての理由をお聞かせ願いたいと存じます。実際には、感染症対策は、法レベルで対処可能であり、改憲による緊急事態条項は国家権力の過度の集中を招き、有害であると多くの憲法学者ら有識者が批判しています。まして自民党の改憲案4項目の緊急事態条項は、他国の国家緊急権とは比べものにならないほど制約のない危険な代物であり、ナチスの全権委任法に匹敵する、万能で、期限を定めず、解除の規定もない、半永久的な戦時内閣独裁条項であり、憲法秩序を心肺停止にさせるものです。コロナ対策に必要で、かつ相変わらず不足しているのはPCR検査の拡充であり、独裁条項がコロナ対策のために必ず必要であるとは到底思えませんし、そう称してコロナ禍を奇貨として「スガ独裁」の準備を押し進めようとされるのであれば、国民が苦しんでいる今のコロナ禍を政治的に悪用していると批判されてしかるべきではないでしょうか。お考えをお聞かせください。【岩上安身氏(フリーランス)】

(回答)
 憲法改正については、安倍前総理も述べられたとおり、国会が発議し、最終的には、国民投票により、主権者である国民の皆様が決めるものです。
 いずれにせよ、新型コロナへの対応を受けて、緊急事態への備えに対する関心が高まる中、まずは、憲法審査会において、与野党の枠を超えて、様々な論点について建設的な議論を行い、国民的な議論につなげていただきたいと思います。

(質問)
 首相は14日の会見で「国民の命と健康を守る」と繰り返していました。ですが、コロナによる死者は既に1万人を超え、大阪や神戸などの感染拡大地域では入院できないまま亡くなる人が相次ぐなど、現場からは既に医療は崩壊状態にあるとの指摘が出ています。また、会見では「大阪は新規感染者は減少傾向」としていましたが、死者は11日と12日の2日連続で50人を超え、厳しい状況に変わりはありません。つまるところ現状、「国民の命と健康を守る」ことができていないわけですが、そのような状況になってしまった理由についてどのようにお考えですか。また、ワクチンが国民全員に行き渡り、その効果が出るまでの間、どのようにして「国民の命と健康を守る」お考えですか。【朝日新聞】

(回答)
 関西以外の地域でも、従来株から、感染力が強いとされる変異株への置き換わりが進んでいます。こうした中で、新規感染者数は大都市部を中心に引き続き高い水準にあり、大阪や兵庫などでは、病床のひっ迫も続いている状況にあります。
 このため、これまでも、新型コロナ患者を受け入れる病院への強力な支援を行うとともに、必要な病床確保に自治体と協力しながら対応してきました。例えば、大阪府では、国と市、府が一体となって病床確保を行ってきており、現時点では4月以降約940床の病床を確保したところです。
 また、先般、緊急事態宣言を5月31日まで延長し、飲食店への20時までの営業時間短縮要請に加え、酒類・カラオケの提供の停止を継続することとしました。また、大規模施設やイベントの時短措置を行っています。
 引き続き、これらの効果的な対策を一層徹底し、感染拡大を食い止めるとともに、ワクチン接種を加速化し、一日でも早く希望する方々にワクチンをお届けできるよう、全力を尽くしてまいります。

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