コンピュータ西暦2000年問題に関する顧問会議(第1回)議事要旨

1.日 時:平成10年9月8日(火)午後5時〜6時30分
 
2.場 所:官邸大客間
 
3.出席者:
(顧問)荒木浩、井植敏、氏家齊一郎、岡部敬一郎、岸暁、椎名武雄、関本忠弘、坪井栄孝、西室泰三、野村吉三郎、平松一朗、三次衛 各顧問
(政府)小渕内閣総理大臣、古川内閣官房副長官、竹島内閣内政審議室長
 
4.議 題:コンピュータ西暦2000年問題に関する行動計画(案)について

5.会議経過
(1)最初に、小渕内閣総理大臣が挨拶された。次に、関本顧問が議長に選任された。
(2)竹島内閣内政審議室長から資料に沿って「コンピュータ西暦2000年問題について」及び「コンピュータ西暦2000年問題に関する行動計画(案)」について説明があった。
(3)引き続き、自由討議が行われた。意見の概要は次のとおり。

I.2000年問題への対応についての周知徹底

○(1)〜(5)では(5)「自らの対応状況等の情報について自主的に提供する」が最も重要であるが、100%達成するのはあり得ないので、何か仕掛けを考えて、できるだけそれに近づけるようにもっていく必要がある。国民の理解を得るためにも徹底した情報提供をしていく必要がある。中央官庁等官への要請はいいが、民に対しては、自主的な対応ということになるので、各企業別に千差万別のものになる可能性がある。そのため、民に対しては、何か基準を設けるなど親切にやった方がよい。それから、来年の6月までは200何日しかないが、4半期ごとの報告でいいのかという疑問がある。

○2000年問題は、システムの問題ではなく、危機管理の問題。単にコンピュータ業界の問題ではなく、大小かかわらずすべての企業に関わる問題であり、企業のトップが認識する必要がある。

○総理がリーダーシップを発揮していることを国民が分かることが重要。

U.中央省庁の対応及び地方公共団体への要請

○地方公共団体の中でも市町村が特に2000年問題に対応できるか心配している。予算上の配慮を行えないものか。

V.民間部門における対応

[金融]
○金融業界の取組については、昨年の8月にアンケート調査を実施した時には、問題としては認識しているという状況であったが、先頃、大蔵省と各銀行が対応状況を明らかにした対応状況としては100%対応というものであり、海外では、日本の対応は遅れているという印象であったが、その後PRを重ねた結果、よく対応が進んでいると理解が進んだ。(「新聞情報によれば、日本では全国銀行19行が2000年問題に使っている費用の平均が81億円なのに対し、シティ・コープやモルガン銀行では、数百億ドル使っているとあるが、日米差の理由如何。」との質問に対し)日本の金融業界では10年前に基幹システムを抜本的に再構築した。その時に、2000年問題についても対応し、システムを4ケタ対応にした。そのときの費用は、そこには入っていない。

[エネルギー(電力)]
○電力業界では、電気料金の支払いなど、事務処理系システムや電力供給の制御系システムについて、それぞれ2000年問題への対策を講ずる必要があるが、それぞれ対応を進めてきているところである。
 しかしながら、電気料金の支払いは、中小金融機関やコンビニでも取扱っており、こうしたところでの対応が適切になされるかという心配がある。中小企業への支援が盛り込まれているが、資金面や税制面での政府の取組が重要であると考える。
 電力業界としても、自らのシステムについて、計画に基づいた、漏れのない、きめの細かい対応をしていかなければならない。
 電力供給の制御系システムに関しては、年月日を使用した制御がなされておらず、リアルタイムで処理されているので、安定供給についての支障はない。ただし、運転履歴の記録に関しては対応が必要であり、既に改修を進めている。
 一部の機器については、内蔵されているチップの交換で対応するものもある。
 いずれにしても、現場での模擬テストを西暦2000年までに着実に実施し、遺漏のないよう対応していきたい。
 電力業界では従前からこの問題に積極的に取り組んできたが、一層の努力をしてまいりたい。

[エネルギー(石油)]
○2000年問題は、基本的な社会整備に関するものであり、官民あげて必要があり、まず国がトップダウンで行うことは評価する。民間では、産業単位で検討していくも、実際に作業を行う企業単位では、トップダウンで行う必要がある。中小企業については、強制的な話ではないし、費用がかかるので、どうしても意識が高くなく、意識を高めるとともに、支援していく必要がある。国ベース、民ベース、産業ベースでのPRが必要。石油業界については、エネルギーの安定供給という観点から、事務系システム、リファイナリー系システム、流通系システムの3つのシステムについて、99年の半ばにおおむね対応が完了するスケジュールで現在進んでいる。リファイナりーの制御システムの基本的な仕組みには、暦は入れていないので、問題はないと考えている。

[情報通信]
○通信分野では、大きい企業が多いが、中小企業も少なからず存在しており、年商3000億円の企業もあれば、50億円以下の企業も存在する。また、企業間でネットワークを組んでいるところもあれば、単独でコンピュータを活用している企業もある。これまでにも様々な問題が指摘されたが、やはり、放送局のうち、小さいところをどうするのかが一番の問題であると思う。通信分野では、ほとんどをコンピューターで制御しており、問題が発生すると大変なことになってしまう。そのため、業界での対応を徹底しているところである。
 放送分野の対応については、30%弱が対応済であり、約7割が対応作業中となっている。1999年までに3社くらいを除き、完全に対応がなされる予定である。その3社については、やはり中小、零細企業であるが、2000年問題に対応するとなると、企業当たり約5億円の費用がかかる見込みである。年商50億円以下で5億円という金額は相当大きな負担になる。放送分野ではデジタル化が進行中ということともあいまって、地方局にはかなりの負担となっている。繰り返しになるが、中小企業をどうするのかが一番の問題であろう。

[ベンダー]
○ベンダーの立場としては、平成8年頃からパンフレット発行し、ガイドブックも作成した。昨年の夏に2回ユーザーに対してアンケートを実施したが、それぞれメーカーがもっている客については徹底しているという前提に立ち、販売会社経由のものを対象に調査した。昨年10月と今年7月に調査したところ、対応済が35%で、対応中が65%とのことであった。しかし、未対応の65%のうち、実際に対応中であるのは68%であるため、35%くらいは手付かずとなっている。そのほとんどは中小企業、零細企業である。耐用期限がすぎたものについてはトレースできないという問題がある。

[交通(航空)]
○安全の観点から、ANAのみならず、JAL、JASの対応も順調に進んでいる。また、国際航空運送協会による国際連携も官民一体となって進めている。後進国の対応をどうするかが問題。

[交通(鉄道)]
○模擬テストを平成11年6月末までに終了せよとのことだが、もう少しご猶予いただきたい。また、4半期ごとの所管省庁への報告内容については、優先順位をつけた上で絞り込んでいただきたい。

[医療]
○主要な分野においてはかなり対応が進んでいる。医療分野も同様。14項目に分けて調査を実施したところ、14分野については、対応できているし、2000年になっても問題は起きない。しかし、やってみなければわからない面もある。医療の分野では「やってみなければわからない」では困る。手術の際に麻酔コンピュータで管理しているし、生命維持装置についてもそう。厚生省と十分対応を検討しておくことが必要。重要なのは、自分の意識の中で、ひょっとしたら大変なことがあるのではないか、という危機意識を持つこと。

[中小企業]
○中小企業における状況は深刻であり、我々が啓発をしてもなかなか対応がなされていない。政府としても各種優遇措置を既に講じられているが、そこまで入っていけないのが実情である。特に、大阪では、「2000年問題よりも貸し渋りの解決が先だ。」という声が強く、2000年問題まで手が回らない。そのため、ある程度強制的な措置も考えていかねばならないと思うが、その場合でも中小企業の負担にならないような配慮が必要であろう。
 中小企業の中でもオフコンを使用している場合にネットワークでつながっており、こうしたところだけでも徹底的に対応すべきである。オフコンの場合は、ディーラー側が顧客管理のために名簿を作成していると思われるので、そうした情報を活用して対策を呼びかけてはどうか。
 また、アメリカにある私の会社の場合には、政府ではなく、ベンダー側からの要請が強いようであり、2000年問題の対策なしには部品を供給しないとも言われているとのことである。日本でも、中小企業に対して親会社が積極的に取組を呼びかける必要があるのではないだろうか。
 大阪では、中小企業に対してオフコンの買い替えを呼びかけるなどの啓発活動を昨年から行っており、引き続き徹底した取組を展開していくつもりであるが、先ほど述べたような資金面での問題があるので、これについて何らかの対応が必要であろうと考えている。

W.情報提供体制の構築

○もちろん個々のPRも必要であろうが、巨大メディアによるPRが大変有効ではないかと思う。この問題は中身が難しいことから、特に活字メディアを中心にPRを展開してはどうか。新聞協会や雑誌協会に対して、政府が重要な問題であることを説明し、協力を願うなどの努力が必要であろう。

○この1年に限り、政府広報の予算をこの問題に集中して割くということになろうか。

○それだけではなく、新聞に記事として取り上げてもらうような働きかけも行ってほしい。

○今までの皆さんの発言を聞いて考えると、一番心配なのは、気がついていないところ。徹底的にPRをやってもそれでも気がつかないところはどうするのか。メーカーなどは顧客リストがあるから、前からサポート体制などを整備して対応している。ただし、どこに何があるかわからないものや、チップに組み込んである場合などはどうするのか。要するに、落ちこぼれについてどういう対応をするのか。「駆け込み寺」のようなものは考えられないだろうか。こういうことを知っている人は退職している人が多いので、そういった人に対応してもらうのも一案。国にこういったものを作って、何でも相談する仕組みにすればいいのではないか。

○全国銀行協会では、お客様向けリーフレットを配っている。

○2000年問題について、日本は対応が遅れているというイメージがある。今回のキャンペーンでそのイメージを払拭しべく、世界に向けてメッセージを発進すべき。

○情報サービス産業協会では、既に相当なPR活動を行っているが、効果が出ていない。より大衆に知れ渡るようなPR方法を検討すべき。平成10年2月の世界情報サービス機構の会議において、米国クリントン大統領及びゴア副大統領がテレビで訴えていたのは、インパクトがあった。日本も総理によるアピールを行えば、効果があるかもしれない。

○米国ではアニュアルレポートの中で、2000年問題に対してどういう準備をしているかが重要。ムーディーズの格付けにも影響する。まずかった時にどうするのかを考えることが重要。

(5)最後に、関本議長から「本日の顧問の皆様の御意見を行動計画に反映していただくことをお願いしたい。次回は、民間重要分野等の対応について10月下旬を念頭に調整する。」と発言があった。

−以上−
(文責  内閣内政審議室  速報のため事後修正の可能性あり)


コンピュータ西暦2000年問題について

平成10年9月

1.対応の基本的方向
(1) 中央省庁等の保有するシステムについては、国民生活等に支障を生じさせることのないよう2000年問題による影響を回避すること。
(2) 金融、エネルギー、情報通信、交通、医療など経済社会にとって重要な分野における重大な影響を回避すること。
(3) 相対的に対応の遅れが懸念される中小企業について、可能な限りの支援を実施すること。
(4) 金融分野をはじめ、国際的なネットワークで結ばれたシステムについては、我が国のみならず諸外国との協調した対応が必要(既にG8等で指摘)。

2.我が国におけるこれまでの対応
(1) 平成8年から9年にかけて、総務庁等各省庁が中央省庁システムの対応、大蔵省、通商産業省、郵政省等が所管産業分野への周知徹底等に着手。
(2) 関係省庁連絡会議の開催
  @ 内閣官房に「コンピュータ西暦2000年問題関係省庁連絡会議」(課長クラス)を設置(平成9年12月16日)。
  A 中央省庁、地方公共団体の保有する情報システム、主要業界の情報システムの対応状況の定期的な把握と早期対応を徹底。
(3) 実態の把握(平成10年4月 関係省庁連絡会議発表)
  [中央省庁]
  国民生活と関わりの深いシステム−対応済38%、対応作業中62%
  [地方公共団体]
  都道府県−対応済 4%、対応作業中 81%
  市区町村−対応済 14%、対応作業中 18%
  [民間部門]
  金融分野
都銀−対応作業中 100%
  エネルギー分野(制御系システム)
電力−対応作業中 78%
石油−対応済 5%、対応作業中 63%
  通信放送分野
通信−対応済 26%、対応作業中 38%
放送−対応済 20%、対応作業中 28%
  交通分野
鉄道−対応済 13%、対応作業中 48%
航空−対応済 27%、対応作業中 25%
  医療分野
病院−対応済 34%、対応作業中 61%

(参考) 2000年問題対応に活用できる制度等
・政府系金融機関による低利融資(開銀、北東公庫、中小公庫、国民公庫)
・債務保証(IPA)
・中小企業等に対する税制の活用
・プログラム修正費用の損金扱い
・リース補助
・地方公共団体への特別交付税措置(プログラム修正費等)

3.諸外国の対応
(1) 米国
 1998年2月、2000年問題に関する大統領の諮問委員会を設置。また98年7月14日、大統領が2000年問題に対する総合的対策を発表。
(2) 英国
 1997年12月、ブレア首相の発案により、貿易産業省ベケット大臣を議長とする関係閣僚からなる委員会を内閣に設置。社会のインフラとなる分野(電気、ガス、鉄道、通信、医療など)の対応が目的。
(3) アジア
 シンガポールは政府に対策本部を設置し、融資等で早期対応を支援。
(4) 関連事項
 G8首脳会合(1998年5月15〜17日、バーミンガム)
 ・コミュニケ(抜粋)
 ‥‥‥‥2000年問題は、国際社会に対して、特に、国防、運輸、電気、通信、金融サービス、エネルギー及び環境セクターにおいて、甚大な影響をもたらす重要な課題となっており‥‥‥(中略)。我々は、更なる緊急の行動をとり、短期的かつより長期的に混乱の予防に資する情報を、我々自身の間で及び他の諸国と共に共有することに合意した。


コンピュータ西暦2000年対策推進会議の設置について

平成10年9月7日
高度情報通信社会推進本部長決定

1. 関係行政機関相互の緊密な連携の下、コンピュータ西暦2000年問題への適切な対応を図るため、高度情報通信社会推進本部にコンピュータ西暦2000年対策推進会議(以下「推進会議」という。)を設ける。
2. 推進会議の構成員は、次のとおりとする。ただし、本部長は、必要があると認めるときは、構成員を追加することができる。
 
議   長内閣官房副長官(事務)
構 成 員内閣法制次長
すべての事務次官
警察庁長官
内閣官房内閣内政審議室長
総理府次長
金融監督庁長官
公正取引委員会事務総長
オブザーバー日本銀行理事
3. 推進会議の庶務は、郵政省、通商産業省、総務庁、自治省等関係省庁の協力を得て、内閣官房において処理する。
4. その他、推進会議の運営に関する事項その他必要な事項は、議長が定める。


コンピュータ西暦2000年問題に関する顧問会議について

平成10年9月7日
高度情報通信社会推進本部長決定

1. コンピュータ西暦2000年問題への適切な対応を図るため、高度情報通信社会推進本部の下、コンピュータ西暦2000年問題に関する顧問会議(以下「顧問会議」という。)を開催する。
2. 顧問会議は、高度情報通信社会推進本部長が顧問として委嘱するコンピュータ西暦2000年問題に関し専門的かつ優れた見識を有する者若干名に、その参集と同問題に関する意見の開陳を求める。
3. 顧問は、非常勤とし、その任期は、2年とする。ただし、顧問が欠けた場合の後任者の任期は、前任者の残任期間とする。
4. 顧問会議の議長は、顧問の互選による。
5. 顧問会議には、必要があると認めるときは、参考人を招いて意見を 聞くことができる。
6. 顧問会議の庶務は、郵政省、通商産業省、総務庁、自治省等関係省 庁の協力を得て、内閣官房において処理する。


完了