コンピュータ西暦2000年問題

コンピュータ西暦2000年問題に関する顧問会議(第5回)議事要旨


1.日時:平成11年7月29日(木)午後4時30分〜6時
 
2.場所:総理大臣官邸大客間
 
3.議事:
(1)コンピュータ西暦2000年問題に関する行動計画の推進状況等について
(2)コンピュータ西暦2000年問題に関する危機管理体制の強化について

4.会議経過

(1)内閣内政審議室長より行動計画の推進状況及び危機管理体制の強化について説明した後、総務庁、自治省、金融監督庁、通商産業省、郵政省、運輸省、厚生省より各所管分野について説明。

(2)顧問からの主な発言内容は以下の通り。

○医療機関については、対応が遅れているという感は否めず、申し訳なく思っている。厚生省とも連絡を密にし、積極的に勧奨していきたい。

○Q&Aに、「年末年始は、医療機関で治療を受けない方がよいのか。」との設問があるが、この質問の及ぼす影響が心配である。年末年始に医療機関で治療を受けている人たちについては、確かに我々医療関係者は神経質になっているが、年末年始に急に病気になって新たに病院にかかることとなった人々については、機械が動かなくなっても対応が可能な場合もある。このままの設問だと、不安が不必要に大きくなるのではないか。

○設問のあり方、という問題は全分野に関してある。質問の形式があまりにも不安を呼び寄せることではいけないし、他方、誰もが出しそうな質問には、答えていく必要がある。そのバランスを取ることが肝要。

○(内政審議室より欠席された顧問の意見を紹介)全銀協では、4月から2000年問題を専門に検討する検討部会を立ちあげている。全銀システム、日銀ネットをつないだいわゆるインダストリーワイドテストという対外接続テストを既に昨年12月以降6回にわたって実施した。その結果は満足のいくものであった。
 また、2000年1月2日には、日銀ネットの確認テストに合わせて、全銀システム、手形交換システム、外為円決済システム等の接続確認テストを実施する。
 更に、後方活動として、万一システムがダウンした場合の預金データのバックアップの確保体制を確立している。
 3月には危機管理計画の第一版を策定済みであり、現在代版の作成に向け適宜見直し中である。
 今後、全銀協では情報センターを設置する予定。
 コンピュータ・ベンダー業界としては、年末年始の顧客サポートについて24時間体制を取っている。クリスマスから1月12日あるいは2月29日、閏年前後の特別対応機関を準備する予定。また、9月には相談窓口を開設し年末年始にはこれを拡大して2000年対策室と致したい。
 航空分野については、航空各社は既にプログラムの修正、模擬テスト及び危機管理計画の骨子の策定を終えた。航空機製造メーカーでもデモンストレーションフライトを実施し、問題がないことを確認した。また、ICAOの決議に基づいて7月1日付で航空情報を通じて世界の締約国及び航空会社に対して問題無く対応が進捗している旨を公示した。8月には、航空管制について取りまとめ、10月をめどに航空会社の方ではIATAで運行計画の具体化を行う。

○最終目標が12月となっている分野があるが、これは要注意である。行政の方でもこれを11月にするように指導してほしい。

○中小企業については、このままだと10%ぐらいは対応ができないことになる可能性がある。そもそもコンピュータを理解していない小企業の人たちが大勢いるので、こういう人まで含めて対応するのは困難。むしろ今後は、危機管理という観点から各商工会議所の対応を考えていくべきではないか。

○政府も、通産省、商工会議所、工業会等を通じてさまざまな啓蒙活動が行われているが、未だ関心を持っていない向きもある。最後まで啓蒙活動はやっていくべきである。少し脅迫的なことも必要かも知れないが、他方であまりやり過ぎると国民の間にパニック状態を起こしてしまうこととなるので、気をつける必要がある。

○週刊誌等では今年に入ってから、やはり不安を助長するような記事の見出しが多い。このようなことが年末になって起きると取り返しのつかないこととなるので政府として正しく啓蒙活動をしていって欲しい。

○電力については、制御部門ではコンピュータを使っていない。したがって、停電が電力自身の2000年問題で発生することはありえない。また、電気は止まるとあらゆる都市機能が停止してしまうという意味で、電力業界の本業が危機管理であるとも言える。従って、常日頃から災害対策等の訓練の実施、マニュアルの策定を行っている。しかし、念のため、この2000年問題に関しても危機管理計画を策定したし、要員面でも全国で常時保持している4700名に加えて、1万1千名を1月1日の危機管理対策として用意している。

○また、他のトラブルにより電力需要がベース以下に落ちた場合、周波数と電圧に非常に影響を及ぼすので、火力発電所を予備的にスタンバイさせておき、スタンバイしている火力を絞る。その上で未だオーバーフローとなった場合は、揚水発電所で余剰電力の吸収を図るなど、需給対策面で対応を図ることとしている。
 更に燃料の調達先でトラブルがあった場合でも、他の供給先からの調達を考える等、迷惑をかけないようにしている。

○広報面でもテレビ等を通じて、目で見える形で電力のコンピュータ2000年問題で停電することはない旨、強調していきたい。

○訴訟が頻発した場合の中小企業としての対応については、まず商工会議所法に基づき、調停、仲介等を行うこととなろうが、今回は問題が複雑であるので、弁護士等の費用につき政府の方である程度予算を組んでほしい。

○マスコミが興味本位の報道をし、危機を煽る場合に国として指導が必要ではないか。また、灯油等の買占めが起こることも考えられるので注意が必要である。

○医療に関し、地方の診療所は中小企業に似ており、大変数が多い。次回の会議ではもっとよいデータが出てくるよう努力したい。民間病院や民間診療所に対する啓発を強めていきたい。また、危機管理体制に関しては、厚生省と連携しつつ、日本医師会として独自にシミュレーションを行い、データ採取に努めていきたい。
 広報に関しては、現在、既存のメディアシステムを使っているが、今後はもう一本ダイレクトに2000年問題の情報収集というアクションを早速起こしていきたい。

○民営鉄道については、既に模擬テストを実施済みであり、対応できていると考えている。また、危機管理という点については、事故対策は常日頃行っており、2000年問題にあたっては、これにソフトウェアの問題を加味して対処することとしている。更に、顧客へのPRについては、ホームページ経の掲載を通じて行っている。

○情報サービス産業協会としても、やはり大手のユーザーの対応は非常に進んでいるが、零細企業は遅れていると考えている。期限ぎりぎりまで個別の対応を続けていくが、他方、業界としてのサポートのポジションを明確化して、ユーザーに安心感を与えていきたい。更に、年末年始については、各々の顧客の営業スタイルの違いを念頭に置きつつ、対応を考えていきたい。

○通信については、通話をつなげる際に年号情報は使用していないので、つながらなくなることはない。他方、、課金情報の顧客への提供についてはコンピュータを使用しているが、これについては、既に重要部分はチェック済み。NTT再編を利用してソフトも見直しを済ませた。更に、6月末までに危機管理計画も策定済みである。また、年末年始には3200人を張り付ける予定。

○明日の高度情報通信社会推進本部で決定される予定の危機管理体制の強化については、危機というものはマニュアルに書いてないことが起こることである。過去の我が国の危機への対応振りを見るに、スピードに欠けるきらいがあるので、今回は臨機応変に速やかに対処できるしくみを作って欲しい。

○[小渕総理より、米国商務省作成のCD−ROM(日本語版)の紹介があった後、]
 このCD−ROMをくれた公文、舛添両氏から、2000年問題について民間でさまざまな活動をしている人々の意見をどのように聞いていくかについて、政府の考えを聞きたい、との要望があった。
 余り危機感ばかりではいけないし、他方、ある程度の危機感を持つ必要もある。そのバランスは非常に難しいが、頑張っていきたい。

(3)最後に小渕総理より、以下の通り御挨拶がなされた。

 「コンピュータ西暦二千年問題は、高度情報通信社会の構築に向けた信任を揺るがしかねない重大な問題であります。かねてより私自身その重要性、緊急性を強く認識しており、昨年九月に、この問題に関する行動計画を策定するとともに、官民挙げた推進を強力に行ってきたところであります。
 行動計画の最新の推進状況をみますと、関係閣僚からも最新の進捗状況を御議論いただき、金融、エネルギーなど民間重要五分野や政府のシステムの対応について、昨年九月の行動計画において設定した「本年六月末での模擬テストの原則完了」という目標は、おおむね達成できたものと考えております。また、各分野における危機管理計画の策定も、目に見えて進展しております。
 しかしながら、二千年まで残り五ヶ月となった今日、二千年に対する備えに万全を期すべく、行動計画に基づく徹底した未然防止に加え、万一の場合に的確に対処するため、本日「コンピュータ西暦二千年問題に関する危機管理体制の強化について」を決定し、政府として二千年問題の対応に万全を期すことといたしました。
 年末年始における危機管理体制を始めとする政府における危機管理体制を強化するとともに、国民の視点に立った情報提供に積極的に取り組んでいかねばなりません。
 このような危機管理体制の強化は、民間各分野、地方公共団体との密接な協力、連携が不可欠であり、金融等民間重要分野、地方公共団体等には、強く協力をお願いすることが必要であります。
 政府として、国民の皆様が二千年を真に安心して迎えられるよう、全力を尽くしていかねばなりません。関係閣僚におかれましても、誤りなき対応に向け、引き続き最大限の御尽力をいただきますようお願いいたします。」