コンピュータ西暦2000年問題

コンピュータ西暦2000年問題 に関する報告書

平成12年3月30日

内閣コンピュータ西暦二千年問題対策室


( 目次 )

T はじめに

U 2000年問題により発生した事象及 びその評価

1.発生事象とその評価
(1)発生した事象等
(2)発生した事象の分析

2. 国民の反応

V 我が国の対応についての評価対応すべき課題

1.内閣を中心とする政府のイニシアティブと 民間等における積極的対応

2.発生し得る事象についての冷静な評価
(1)予想された問題の態様
(2)プログラムに起因する問題への対応
(3)組み込みチップに起因する問題への対応
(4)結論

3.不安軽減に役立った危機管理
(1)本問題にかかる危機管理の考え方
(2)各主体毎の危機管理計画の策定・運用
(3)年末年始を中心とする官民を挙げた情報連絡網
(4)国民の準備

4.積極的な情報提供
(1)1999年末までの対応とその結果
(2)年末年始の期間等における対応結果

5.積極的な国際的対応

6.適切な規模の対応

W 2000年問題から学ぶべきことと今後の対応

【今後の参考とすべきもの】

1 国民各層による参画の重要性

2 国民参画型の対応に不可欠な情報公開

3 強力な指導力の必要性

4 危機管理における的確かつ豊富な情報提供の必要性

5 効果的な国際協力

【今後の課題として更に対応すべきもの】

6 インターネット社会への対応が急務
(6−2)危機管理における活用
(6−3)広報における活用

7 社会的に影響の大きい技術問題のブラックボックス化への対応

X 結び

(別添)政府等の対応の経緯


〔主な用語〕 必要に応じ、以下の略称等を使用する。

「2000年問題」:コンピュータ西暦2000年問題の略称。
 これは、従来のコンピュータが、西暦を下2桁で認識する様式を基本としていたために、2000年以降のデータを処理する場合にシステムの誤表示、誤動作或いは停止等が発生するという問題である。これに対応するためには、システムの保有者はプログラムの修正、システムの再構築が必要となる。

「推進本部」:「高度情報通信社会推進本部」の略称。本部長は小渕総理。

「行動計画」:98年9月11日に推進本部で策定された「コンピュータ西暦2000年問題に関する行動計画」の略称。

「推進会議」:98年9月7日に推進本部に設置された「コンピュータ西暦2000年問題対策推進会議」の略称。

「顧問会議」:98年9月7日に推進本部に設置された「コンピュータ西暦2000年に関する顧問会議」の略称。

「民間重要分野」:次の5分野をいう。

金融:銀行、保険会社、証券会社等     
エネルギー:電力、都市ガス、石油
情報通信:電気通信、放送
交通:航空、鉄道、海運
医療分野:医療用具、医療機関

「危機管理体制の強化」:99年7月30日に推進本部で決定された「コンピュータタ西暦二千年     問題に関する危機管理体制の強化について」の略称。

「国民の準備」:99年10月29日に推進本部で決定された「コンピュータ西暦2000年問題       に関する年末年始に向けた準備」の略称

「国際Y2K協力センター」:98年12月の国連主催のY2K会合での提案に基づき、99年2月に設立された、国連加盟国をメンバーとする国際的Y2K活動と情報共有のための国際組織

「RTC(リアルタイムクロック)」:RTCとは、年、月、日、曜日、時、分、秒のカウンターを有するIC。水晶振動子の発振信号を利用して1秒毎にカウンターの繰り上げ処理を行うことにより、カレンダー機能(絶対時間管理機能)を実現。


T.はじめに

(1)2000年問題は、@コンピュータ社会が初めて経験する世界共通の解決すべき問題である、A高度情報通信社会に至る過程において、避けて通れない問題である、B企業、個人、地方公共団体、政府の如何を問わず影響を受ける問題であるという特性を持っていた。
 このため、個人、企業、地方公共団体、政府等の国を挙げての対応が必要とされ、これを誤れば、その国一国の社会経済が大きく混乱するのみならず、世界全体への悪影響が懸念された。
 特に我が国は、世界最高レベルの情報先進国かつ経済大国として、最も早く西暦2000年を迎えるという地理的条件故に、国際的にもその動向が注目されていた。

(2)我が国における本問題に対する官民の取り組みは、実質的には、96年ごろから情報関連の団体等により始められていた。しかし、政府として、民間等との連携による総合的な対応を本格化させたのは、98年8月に小渕総理の指示に基づき、総理が本部長を務める高度情報通信社会推進本部で行動計画を策定した以降であった。

(3)具体的には、コンピュータ利用者及び供給者双方の真摯な努力に加え、本行動計画に基づき、金融、エネルギー、情報通信、交通、医療の民間重要分野を中心にシステム点検や危機管理計画の策定の促進、積極的な情報提供等が行われた。この成果もあり、99年10月末には、本問題に起因して国民生活に重大な支障を与える事象の発生は考えられないと判断される段階にいたったが、政府は、万一の事態に備えるため、民間等と連携して、正確な情報提供を行うとともに、国民に無用の混乱を生ずることのないよう、この機に便乗したテロ的行為等への対応を含め、万全の体制を敷いた。

(4)この間、日本の対応については、当初、海外における情報の不足もあり、米国等で、取り組みが遅れていると報道され、これが国内の不安を高めることがあったが、98年以降の官民を挙げた我が国の積極的かつ集中的取り組みと、それが目に見える形で、対外的に周知されるに従い、そのような懸念は次第に払拭され、99年秋ごろには同様の指摘はほとんど聞かれなくなった。

(5)結果的にも、最も警戒すべきとされた年末年始及び閏日を国民生活にほとんど支障や混乱を生じることなく乗り切ることができた。また、この結果については、迅速に内外に発信することができ、国際的にもこのような我が国の対応は評価を得るに至った。

(6)本報告は、最も警戒すべきとされた年末年始及び閏日等の経験から、2000年問題に関し、対応等について分析・評価するとともに、今後の課題として、本問題から何を学んだかということを検討し、とりまとめるものである。

U.2000年問題により発生した事象及びその評価

1.発生事象とその評価
(1)2000年問題に関し発生した事象は、関係者の徹底した事前対応と危機管理により、国民生活に対し、短期的な不都合等をもたらすような事例もみられたものの、ほとんどが外部への影響のない日付の誤表示等の不具合であり、大きな混乱等深刻な事態は発生しなかった。
(2)これは、社会インフラ等において日常生活に深刻な影響を与えるようなサービスの停止等の大きな混乱は生じないものと考えるとした政府の事前評価の範囲内であったと言える。
(3)しかし、仮にシステムの点検や修正等を広範な分野で行わなかった場合には、外部に影響が出る問題が、社会インフラ分野を含め大量に発生し、国民の生活に少なからぬ影響が生じていたとみられる。
(4)したがって、このように総じて的確に対応できているのは、関係者の努力によるところが大きい。

(1)発生した事象等

@注目されていた年末年始及び閏日等の時期を経て、システムの修正漏れ等が原因で、外部への影響のない日付の誤表示等のほか、国民生活に対し、短期的な不都合等をもたらすような事例もみられたものの、いずれも大きな混乱の発生等深刻な事態とはなっていない。このような中で、年始における原子力発電所の監視システムの不具合や閏日における郵便局のATM、「アメダス」データの一部不具合などが国民の関心を集めた。

[主な事例]
金融     ;金融機関の現金計数機の不具合
電力     ;原子力発電所の制御棒位置表示の不具合
情報通信   ;電気通信会社(1社)における監視系日付処理の不具合
鉄道     ;オレンジカード専用券売機の不具合
医療     ;骨密度測定装置の日付機能についてのトラブル 
政府部門   ;郵便局のATM、「アメダス」データの一部の不具合
地方公共団体 ;市役所の外国人登録済み証明書発行システムの日付処理の不具合
核燃料施設  ;核燃料施設の運転制御・監視システムの一部表示不良

Aまた、本問題の全体的な影響の度合いを、当室が関係省庁を協力を得て行った重要分野等に対する「コンピュータ西暦2000年問題に関する状況についての調査」(以下「状況調査」という。参考1)でみると、全体のうち、11.6%の組織でシステムの不具合等が発生したが、外部に対し影響が出たとする組織は全体の3.1%だった。

B危険視されていた途上国等を含め、海外においても大きな問題の報告がなかった。

(2)発生した事象の分析

@2000年問題に起因して、国民生活に対し、短期的な不都合等をもたらすような事例は少数みられたものの、大きな混乱等深刻な事態は発生しなかった。この結果については、V.2で詳細に述べるように、行動計画等に基づく事前の対応が全体的に進んでいたためと考えられる。

(注)「状況調査」において、主要な不具合として回答があったものをみると、
表示印字不良33.6%、データ転送不良9.9%、データ検索等不良9.3%、データ入力不良7.9%などとなっている。

A他方、2000年問題の潜在的なリスク、すなわち、「もし、行動計画等に基づくシステム点検等の対応を行わなかった場合にはどのような影響があったのか」、「事前対応に不安があるとされていた発展途上国等でも大きな問題が生じていないのはなぜか。」という点の検討が必要となる。

Bこの点については、「状況調査」の結果ををみると、「仮に2000年問題に何ら対応をとらなかった場合」には、
・「システムに何らかの不具合が発生し、外部への影響が出たと思われる」66.6 %
・「システムに何らかの不具合が発生するものの、外部には影響は出なかったと思われる」27.9%
・「何ら対応をとらなかったとしても、特に不具合が発生したとは考えられない」 4.2%となっている。
 特に、電力、ガス、石油、電気通信、放送、金融、航空、鉄道、医療、地方公共団体等では、「外部への影響が出たと思われる」という回答の割合が高い。
 このように、仮にシステム点検を徹底して行わなかった場合には、組織の外部にかなりの影響が出たものと推定される。

C実際、既に述べているように、2000年になって以降、例えば、金融機関の現金計数機や発電所等の監視システム等の事務処理系や監視系で不具合等が発生したり、「アメダス」データや郵便局のATMの一部の不具合のように国民生活に短期的な不都合をもたらす事例も発生している。これらは個々の主体の対応により、深刻な事態には至らなかったが、仮に修正等を行わなかった場合には、同様の問題が広域的に金融、エネルギー、交通、情報通信、医療を含め各分野で生じていたと考えられる。

D以上の点を別の角度からみれば、2000年問題は高度情報通信社会にとって、潜在的脅威であったが、関係者の広範かつ徹底したシステム点検の努力等により、克服できたと評価できる。

Eなお、途上国等でも大きな問題が報告されていない点については、
(ア)これらの国においては日米のようにコンピュータ利用等が進んでいなかったこ と、
(イ)金融等の重要分野で多く発生する可能性のあった不具合等については、様々な 国際的な要請等もあり、大きな問題とならないように対応が進んでいたこと、
(ウ)日米のような詳細な情報把握がなされていないこと、
(エ)先進国と同様に、制御系においてRTCが広く使用されているという事前にあ った懸念は事実ではなかったと推定されること
(オ)我が国のように、途上国を含む海外に輸出・設置したコンピュータについても 供給者が国内と同様に把握・調査・修正・監視等を進めたこと
等がその要因と考えられる。

2.国民の反応
事前、事後の対応において、国民は冷静に行動した。

@2000年問題は、社会インフラ分野のサービスからパーソナル・コンピュータに至るまで広範なコンピュータ利用に伴う、国民の日常生活に直結する問題であり、2000年に近づくに従い、関心が高まっていった。こうした中で、本問題に起因して、社会インフラ分野等で深刻な事態が生じるといった過度に深刻な予測や、これに過敏に反応して、生活関連物資の事前確保等においてパニックが生じるのではないか等の懸念があった。

Aこのため、V.4で詳細に述べるように、政府は、事前において、
(ア)身の回り品の2000年問題や過度に深刻な予測等に係る事実関係等について の情報提供、
(イ)本問題に起因して大きな混乱は発生しないという旨の見解表明(99年10月 末)
(ウ)年末年始に向けた必要最小限の準備としての、11項目についての「国民の準備」の作成・広報等(同年10月末以降)を行った。
また、年末年始や閏日について、官邸を起点とする官民を挙げた情報連絡網等の危機管理体制を敷いた。

Bこの結果、事前には、日頃から国等が準備することを普及している防災用品等の需要増、年末年始の海外旅行の減少等の若干の警戒感はみられたものの、現金の大幅引き落とし等もなく冷静な準備が進められた。また、事後的にも、実際に大きな混乱は生ぜず、かつかかる状況を迅速に国民に伝達することができたため、国民は、終始冷静に対応し、いわゆるパニック的な現象は一切発生しなかった。

(注1)事前準備として防災用品、海外旅行等では目立った動きがみられた。

《総務庁「家計調査」による項目別支出の増減(99年12月:対前年同月比)》
食料品等  (即席麺  17.1%、ミネラルウォーター等 46.6%)
ガスボンベ  202.7%
旅行 (国内  ▲5.6%  海外  ▲44.1%)

《通産省「エネルギー生産需給統計」による販売量の増(99年12月:対前年同月比)》
灯油12.3%、   ガソリン4.9%

(注2)現金の引き出しは大幅なものではなかった。
・99年12月末残の現金通貨の対前年同月比は9.4%増(米国の同様の数値は約13 %増)、
・同年8〜11月までは、趨勢として、前年比で5%台の増、
・したがって、12月の特殊要因による増は4%程度。概算として、この4%程度を国民は余分に現金として保有したものと推定される。

(注3)大晦日から元旦にかけて、電力の消費パターンに変化があったものの、おおむね3割前後の予備率をキープし、全く支障はなかった。また、電話についても、例年通り、神社仏閣、催し物会場周辺で携帯電話の輻輳があったが、2000年問題に起因した大きな混乱はなかった。

V.我が国の対応についての評価

 2000年問題に関しては、政府、地方公共団体、企業等の関係主体は、次のような課題に、計画的、総合的に対応する必要があった。

(1)未然防止のためのシステム点検
社会の隅々まで浸透しつつあるコンピュータに係る問題であったため、特に我が国のような情報先進国においては、コンピュータの利用者や関連産業等の広範な参画のもと、システム点検や修正等の未然防止を徹底する必要があった。

(2)危機管理
システムの技術や利用形態の分析、点検等の進捗を踏まえて、発生し得る事象を的確に評価するとともに、テロ的行為等突発事象への柔軟な対応に配慮しながら、万一の場合に備えた危機管理を行う必要があった。

(3)情報提供
2000年問題は、情報通信社会が初めて経験する問題であったため、国民各層の不安をでき得る限り軽減する必要があった。このため、問題の所在、未然防止対応、発生事象の影響度の事前評価、危機管理、要注意日における発生状況等多岐に亘る情報を国民各層に迅速かつ大量に提供する必要があった。

(4)国際対応
2000年問題は、世界共通の課題であるとともに、ネットワーク社会において相互に影響を受ける性格の問題であったことから、各国における対応を国際的な連携の中で行うのが効率的であった。また、情報先進国の中でも我が国が地理的に特に早い時間に2000年を迎えるということもあり、我が国の事前対応と2000年直後の情報発信に国際的な関心が集まっており、これに適切に対応する必要があった。

このような課題に対し、我が国においては、98年9月に推進本部が策定した行動計画等を中心にシステム点検、危機管理計画の策定、情報提供、国際対応等が進められた。これら対応の経緯については、別添で詳細に述べられているが、ここではこの政府等の対応について分析・評価する。

1.内閣を中心とする政府のイニシアティブと民間等における積極的対応

(1)2000年問題が広範な範囲に影響を持つことを踏まえ、内閣及び関係省庁は、これへの対応を最重点課題の一つとして位置づけ、行動計画に基づくシステム点検等を徹底的に促進した。

(2)これを踏まえ、民間重要分野等を中心とするコンピュータ利用者等がシステム点検、危機管理計画の策定、国民への情報提供等を積極的に進めた。

(3)このような官民の適切な協力が大きな効果をあげた結果、不具合等の発生が抑制され、影響が限定された。

@2000年問題は、基本的に、関係企業・機関、中央省庁、地方公共団体等が、システムの点検等に個別に対応しなければ、解決できない問題であった。これに対し、政府は、この問題の重要性を国民、企業・機関内の各層に周知を図り、各主体がそれに積極的に取り組めるような状況、環境を整備して、本問題に起因する社会的混乱を未然に防止することをその役割と認識した。

Aかかる観点から、政府は、システム点検等について、
(ア)内閣がイニシアティブをとって、個別分野毎でなく、総合的に促進する、
(イ)中でも、国民生活や経済に特に影響の大きい民間重要分野、中小企業、中央省 庁、地方公共団体等に重点を置き、四半期毎にフォローアップする、
(ウ)システムの停止等による影響度を基準として、優先順位をつけて、効率的に点 検を進める
との方針で、行動計画という形で目標を設定し、対応した。

Bこれにより、民間重要分野等を中心とした取り組みが加速的に進み、その過程において、当初立ち後れが懸念された中小企業、医療、市町村等の分野においても、99年秋から年末にかけて急速に対応が進んだ。この結果、2000年問題に起因して発生する可能性のあったトラブルは抑制され、かつ影響が限定されることとなった。

Cこのように、システム点検等につき、政府が明確な目標とその実現のための計画を策定し、これを民間、政府、地方公共団体等各部門の主体が積極的かつ確実に達成していったが、この手法は、各主体の努力もあって今回の場合極めて有効であった。

Dまた、内閣を中心に政府として、本問題を最重点課題の一つと位置づけ、これに徹底して取り組む姿勢を内外に明確にしたこと自体が、本問題について国民の関心を高め、関係者の対応を大きく促進する上で、また、V.5で述べるように、日本に対する国際的な認識を改め、結果的に米国等から評価を受ける上で有効であったと考える。

2.発生し得る事象についての冷静な評価
2000年問題に起因して発生し得る事象については、極端な悲観論等もみられたが、政府は、民間重要分野等における進捗状況や事象についての技術的分析等を踏まえ、安心感と適度な警戒感のバランスに配慮した事前評価を行った。結果的にもこのような評価の範囲内であった。

@2000問題に起因して起こる社会的混乱については、世紀末論的な極端な悲観論から楽観論まで様々な説が流布した。例えば、一部で「組み込みチップ」による大混乱が発生する等の過度な予測があった。(例.石油の油田や海水淡水化プラントが停止する。家電が誤作動する。心臓ペースメーカーが故障する。)

Aこのような中、政府は、我が国の場合、社会の隅々までコンピュータ利用が進んでいるため、2000年問題への対応漏れ等があった場合の影響等を完全に否定することはできないが、民間重要分野等における対応が進捗していることからみて、社会インフラ等では大きな問題は発生しないと判断した。また、2000年問題そのものではないが、この機に便乗したサイバー・テロ等の突発事象への警戒は必要と考えた。

Bこのため、対応の早い段階からQ&A集の作成などにより誤解の是正を図るとともに、99年10月の顧問会議等における行動計画のフォローアップや「国民の準備」においては、「重要分野等において徹底したシステム点検等を行ったので、2000年問題に起因して、社会インフラ等において、日常生活に深刻な影響を与えるような大きな混乱は生じないと考えるが、小規模或いは短期的な不都合を含め、万一の場合に備えることは重要」という事前の評価を行った。

C既に述べているように、実際に発生した事象は、年末年始の時期には原子力関連等の不具合等が、また閏日問題に関連して、「アメダス」データや郵便局のATMの一部不具合が注目されたが、上記の評価の範囲内であったと言うことができる。

(注)参考2の国際Y2K協力センターの最終報告書3〜4ページ9及び10を参照。

D上記のような事前評価は、次のように行動計画のフォローアップ等の中で形成された。

(1)予想された問題の態様

@まず、2000年問題が実際に起こるケースとしては、
(ア)ハードウェア、オペレーティング・システム、アプリケーション・ソフト等のコンピュータのプログラムに起因する場合
(イ)機器等に組み込まれたマイクロコンピュータ(以下「組み込みチップ」という。)で、リアルタイム・クロック(RTC)を持つものに起因する場合
が考えられ、当初特にこれらが機器の動作等に関わる制御系で生ずることがあれば、物的、人的被害の危険性があるとみられた。

(2)プログラムに起因する問題への対応
上記(1)(ア)の2000年問題未対応のプログラムについては、記録、会計処理等の事務系、管理データの把握等の監視系など様々な形で問題が発生する可能性があった。
 しかし、業務用等の個々のコンピュータについては、対象となるプログラムを通常の場合特定し得るので、この修正等を確実に行えば、問題を回避できる。このため、実際、行動計画に基づき、四半期毎に金融、エネルギー等の重要分野を中心に修正等の対応状況の把握を行っていたが、99年10月の段階で概ね対応の終了に目途が立つものとなっていた。

(3)組み込みチップに起因する問題への対応

@一方、上記(1)(イ)の組み込みチップについては、様々な機器に搭載されているのですべてを修正できないのではないか、またこれを原因として制御系システム等で大きな問題が発生するのではないかという悲観的な指摘があった。

Aしかし、制御系の中でも影響が大きいライフライン等の分野については、
・電力供給やガスの製造・供給を直接コントロールする機能は、マイクロチップを含め、日付情報を用いていない
・水道については、多くの場合、日付による管理を行っていない
・マイクロチップ搭載医療用具のうち2000年問題の発生により重篤な健康被害につながるおそれのある機器は放射線治療器1機種のみ
・「白物家電に2000年問題は生じない」
・「心臓ペースメーカー等についても問題が発生することはない」等
が確認された。また、以上のような見解については、事業者自らの情報発信に加え、顧問会議等の資料として、官邸ホームページ等で情報提供を行った。

B原理的にも、機器の作動を制御する場合には、電圧、圧力等瞬時の変化を感知できるものを利用するのが通常であるが、RTCを制御に直結させることについては、RTCは一定の期間には誤差が生じるものであり、プログラムも複雑になることから、想定しにくい。

Cしたがって、組み込みチップに起因する問題についても、日付の表示、事務処理、監視等の利用形態ではともかく、特に懸念されてた制御系では、大きな問題が生じる可能性は限りなくゼロに近いとの心証が得られた。

(4)結論
 以上から2000年問題未対応のプログラムについても、また、組み込みチップについても、行動計画に基づき、重要分野等を中心にシステムの影響度を踏まえた点検を確実に行っているので重大な支障が生じることは極めて可能性が低く、仮に対応漏れがあっても、表示等の問題であり、制御系では問題は発生せず、事務処理系等においても、修正漏れ等の場合に対し危機管理計画の運用により、大きな混乱をもたらす事態は避けられるであろうとの評価となった。
 結果的にも、上述のように、この評価は概ね的確であった。

3.不安軽減に役立った危機管理
 危機管理についても、個別機関における危機管理計画の策定、年末年始における官民を挙げた危機管理体制等の整備、「国民の準備」の作成・広報等の事前の準備が周到に行われ、実際の対応や国民の不安の軽減等の面で大きな効果をあげた。

(1)本問題に係る危機管理の考え方

@本問題については、行動計画等に基づきシステム点検等を徹底しても、最終的には点検漏れや点検ミス等を全てなくすことは困難であり、更に2000年問題に直接起因しなくとも、この機に便乗したテロ的行為や電力需要の予想を超えた大幅変動等事業者等がコントロールし得ない問題の発生の可能性もあった。このため、主に
(ア)確率は低くとも、万一の大きな問題が発生した場合にも経済や国民生活への影響が最小限となるよう準備をする必要がある
(イ)かかる準備を行うこと自体が、2000年問題に対する国民の不安感を低くする
という観点から万一に備えた危機管理対応が進められることとなった。

A具体的には、
(ア)各主体毎の危機管理計画の策定・運用、
(イ)年末年始を中心とする官民をあげた情報連絡網の整備・運用、
(ウ)「国民の準備」の策定・呼び掛け、
(エ)年末年始等における官民のコンピュータ・セキュリティ対策の徹底
等の対応をとり、以下のような結果等となった。

(2)各主体毎の危機管理計画の策定・運用

@広範な関係者による危機管理の基本として、自らのコンピュータ・システム等の利用状況を最もよく知る立場にある各保有主体が実態に応じた危機管理が行い得るよう、行動計画に基づき危機管理計画の策定を促進した。この結果、99年末までには、民間重要分野、中央省庁、地方公共団体等において、必要な対応が完了した。

A事後的な結果を「状況調査」からみると、外部への影響如何にかかわらず、不具合等が発生した組織が全体の11.6%あったが、外部に影響が出たのは全体の3.1%と少ないことから、危機管理計画が機能したものと考えられる。

(3)年末年始を中心とする官民を挙げた情報連絡網の整備・運用

@本問題に関し、起こっている事象を正確かつ迅速に国民に伝え無用の混乱が生じないようにするとともに、万一の事態に対して的確かつ迅速に対応するため、年末年始の時期を中心に、官邸危機管理センターを起点とした情報連絡網の整備を行った。また、事前に3回に亘り、この連絡網を使った情報連絡の訓練を行った。
 更に、コンピュータ・セキュリティに関し、研修等を開催し、政府部内の徹底、民間への注意喚起を行うとともに、年末年始には、専門家の協力を得て警戒体制を敷いた。

A上記の連絡網の活用によって、2000年1月1日には、1時間弱の間に、電力、情報通信、鉄道、核燃料施設等について大きな問題が生じていないことを把握し、総理からこの旨の発表を行った。また、この総理の発表を含め、大晦日から1月5日までの間、官邸において、状況についての会見或いはプレス発表を積極的に行った。
 更に海外との関係では、外務省が中心となって、国際Y2K協力センター及び諸外国政府等に対し我が国の発生事象について通報等を行うとともに、在外公館等を通じて海外情報を積極的に収集した。あわせて公的あるいは民間の関係機関において、海外の情報を収集する体制がとられた。

B2000年2月29日においても、閏日に生じた事象について、この連絡網を活用して情報の把握を行うとともに、官房長官の会見等により国民への情報提供を行った。
 また、外務省が国際Y2K協力センターの場を活用して、主要国と情報交換を行った。

C以上のように、幸い万一の場合への対応は必要とされなかったが、この情報連絡網は、起こっている事象の迅速、正確、かつ体系的な収集・公表について期待どおりの機能を発揮し、国民の安心感を高めることに寄与したものと考える。

(4)「国民の準備」の策定・呼びかけ

@国民に対しては、官邸のホームページ等を活用して、身の回り品の2000年問題や極端に深刻な予測に係る事実関係等について積極的に情報提供していたが、年末が近づくに従い、食料、水や現金等の備えについて、年末年始に向けてどのような準備をしたらよいかとの問い合わせが増えてきた。

Aかかる状況を踏まえ、99年10月8日の閣議で、総理が「国民自らが年末年始に向けて準備を行うに際して参考となる具体的な事項の検討」を指示した。この検討に当たっては、本問題に関し、国民の不安を十分に軽減するとともに、過度な準備とならない内容とするよう特に注意が払われた。

B10月29日に推進本部で取りまとめられた成案においては、まず、前文でV.2で述べたような「大きな混乱は生じないと考えるが、万一の場合に備えて、国民が念のための準備を行うことが重要」という旨の基本認識を示した。また、過度な準備とならぬよう、正月休暇のために例年行う準備等の中で、各家庭において無理なく対応するよう奨めた。

C各項目においても、例えば、特に関心の強かった食料、飲料水については、「関連のサービスについては、本問題に起因して大きな問題が発生することはないと考える」としつつ、地震、風水害等への対応として、防災基本計画において国等が国民に普及等を図るものとされている準備(2、3日分の備蓄)について、点検を奨める等必要かつ最小限の準備となるよう配慮した。

Dこの「国民の準備」については、次の4.で述べるように、政府広報、マスメディア等各種の媒体を通じて積極的な情報提供が行われた。その結果、U.2で述べたように、年末にかけて、これが国民一人一人、或いは地域のレベルで浸透し、適度な警戒感の表れとして、防災用品の補充等が進んだ。かかる準備もあり、国民は、本問題に対し総じて冷静に対応したものと考える。

4.積極的な情報提供
情報提供については、本問題の影響に対する必要以上に深刻な論調への反論が十分伝わらなかった面もあったが、政府広報、マスメディア等を通じて、問題の所在、行動計画の重要性、システム点検等の進捗、年末年始に向けた危機管理の重要性及び必要な具体的対応等を積極的に行い、これが国民の冷静な対応に資するものとなったと考えられる。

 以下のように、事前の広報活動、情報提供等については、様々な媒体や場において新たな試みを含め、積極的に行われ、かつ危機管理の過程における情報提供についても迅速かつ的確に実施されたことにより、国民の本問題に対する不安が軽減されたものと考えられる。

(1)99年末までの対応とその結果

@情報提供については、99年末までの事前の対応として、
(ア)システム点検や危機管理計画を策定すべき主体への問題の周知徹底、
(イ)官民等における対応の進捗に係る情報の国民への提供、
(ウ)身の回りの2000年問題、Q&A集、質問箱等より分かり易い国民への情報 提供、
(エ)年末年始に向けた国民一人一人のレベルの備えとしての「国民の準備」
など政府広報、官邸等のホームページ、マスメディアの協力等様々な媒体により、時宜に応じて行ってきた。

A特に、「国民の準備」については、
(ア)新聞、テレビ・スポット、ポスター等で総理が自ら呼び掛けを行う、
(イ)学校(冬休みのお知らせ)やコンビニエンスストア(店頭貼りだし)に配布する等新たな試みを含め、積極的な情報提供等を行った。

Bこの結果、各主体によるシステム点検や危機管理計画の策定等の対応の必要性、本問題の事実関係や的確な危機管理対応についての国民の理解が進み、国民の冷静な対応に役立ったものと考える。

C併せて、マスメディアや民間団体により様々な情報提供がなされたことが、本問題についての国民の関心を高め、企業トップ等を中心とした対応を促進し、国民の冷静な反応のベースを形成したものと評価される。

(注)ただし、一部において、「組み込みチップが至るところで使用されているため、大混乱が生じる」といった極端な議論や、「2〜3日分の食料・水の備え」については、震災対応等として国等が普及することとなっている準備を引用したにもかかわらず、2000年問題固有の理由からこれが必要であるとしたり、或いは、これでは不十分であるといった誤解を生じるような議論がなされた。これらについては、政府の見解が国民に十分伝わらなかった面もあり、必要以上に本問題を深刻に受け止めた層があったのではないかという懸念は残った。

(2)年末年始の期間等における対応結果

@年末年始においては、危機管理対応として、官邸危機管理センターを起点とする官民をあげた情報連絡網を活用し、内外で生じている事象に関し情報収集を行い、その結果について、官邸においては大晦日から1月5日の間に11回記者発表等を行うとともに、関係省庁においても所管分野について記者発表等を行った。また、同様の内容を官邸、関係省庁のホームページで公表した。

Aさらに、この期間においては、民間重要分野のサービスの提供状況、関連機器の不具合等の状況、地域の状況等についての国民からの問い合わせに対応するため、民間関係団体・企業、地方公共団体、政府において問い合わせ窓口を開設した。

Bまた、閏日問題については、まず、2月22日に本問題の影響等についての見解や政府の体制について、事前の記者発表を行った。
 さらに28日夜から29日の夕刻にかけての官邸連絡室の対応の中では、官房長官の会見を含め4回記者発表を行い、これを官邸ホームページに掲載するとともに、マスメディアからの個別の問い合わせに対応した。

Cこれらの対応がこの期間における国民の冷静な対応に大きく貢献したものと考えられる。

5.積極的な国際的対応
我が国の積極的な対応は国際的にも評価された。

@ 政府は、国際協力の観点から、我が国の2000年問題への対応状況の情報提供やAPEC・Y2K週間の開催による国際的対応の促進等を図った。また、APEC・Y2K・100日協力イニシアティブ等に基づき発展途上国等への危機管理対応に係る情報提供等を行った。
 さらに、アジア・太平洋諸国において、事後的に不測の事態が発生した場合に対応 できるよう、国連の仕組みを活用し、技術的実態の把握、技術者の派遣等を行えるよう準備した。

A一方、我が国は、世界有数の情報化が進んだ国であり、かつ地理的に早い時間に2000年を迎える国ということもあり、本問題に適切に対応できるか国際的にも大きな関心を呼んでいた。
 特に、99年春ごろまでは、我が国の対応状況につき、英文情報が不足していたこともあり、我が国に対する評価は、実態以上に低くみられる傾向にあり、広い意味で国の信用にも影響を与えかねない状況にあった。

Bしかしながら、小渕総理のリーダーシップにより、対応が本格的に進捗していることが、政府のみならず金融、エネルギー、情報通信、航空等の分野の関係者の対外情報発信や政府の英文による対外情報発信の質量の向上により、対外的に明確となり、これらの懸念は払拭され、それ以降は日本の対外信用が揺らぐことはなかった。この過程では、特に政府が対外情報発信を積極的に行うという姿勢を対外的に明確にしたことと、民間を含めた幅広い関係者の努力が行われたことが評価される。

C事後的にも米国等からは、日本が目標を定め、短期間に問題を解決していく能力は賞賛すべき点があるとされた。(参考3;米国の大統領Y2K委員会のコスキネン委員長のプレス・ブリーフィング)

6.適切な規模の対応
結果的にみて、我が国の対応の規模は適切であった。

@我が国が2000年問題にかけた費用は、いくつかの試算はあるものの明確な数字はない。ただ、政府が講じた予算措置は、明確なものだけで約300億円となっている。我が国のおける関係費用については、事前には米国等に比し極めて少ないのではないかとの指摘が広範になされる一方、事後的には、逆に対応が過大だったのではないかとの指摘もあり得た。

A結果的にみれば、
(ア)徹底したシステム点検等によって、大きな問題を防止できた一方、これを行わなければ問題が深刻化した可能性が明らかなこと、
(イ)コンピュータ社会が初めて経験する本問題について、国民に安心感を与える危機管理を行えたこと、
(ウ)事態をほぼ正確に評価していたこともあり、無駄が少なかったと考えられること、
(エ)米国等に比し過小と言われることはあっても過大と言われるような規模の対策は講じなかったことなどから、
適切な規模で行えたものと評価できる。

(注1)97年10月の(社)情報サービス産業協会の調査に基づく試算では、約1.3〜2.4兆円となっている。また、金融監督庁によれば、金融機関等の費用の見積もりは、99年6月末時点で、約7000億円とされている。
(注2)米国で本問題にかかった費用は約1000億ドルとされている。(2000年1月1日コスキネン委員長談)
(注3)我が国の場合、平成年号の採用時や銀行等の第3次オンライン化に係る投資により、明示化されない2000年問題対策の投資が相当行われていたとの見方もある。また、米国では2000年問題関連で、ソフトウェア技術者の人件費が急騰したとの見方があるが、我が国ではかかる現象はみられなかった模様である。 

W.2000年問題から学ぶべきことと今後の対応

(1)2000年問題からの学ぶべきこととしては、まず、「この経験を今後の参考として活用すべきもの」として、
@社会全体が関係する難問については、国民各層の参画を図ること
Aその際には積極的な情報公開が不可欠であること
B一方において、このような場合、強力な指導力が必要なこと
C危機管理においては、的確かつ豊富な情報提供が必要なこと
D情報分野の対応には、国際協力が必要なこと
があげられる。

(2)また、「この経験では課題として残ったが、今後更に対応すべきもの」として、
E行政分野を始め、インターネット社会への対応が急務であること
F社会的に影響の大きい技術問題のブラックボックス化に対応していくこと
があげられる。

【今後の参考とすべきもの】

1.国民各層による参画の重要性
情報通信社会においては、広範な影響のある問題に対し、国民の多くの参画を得て情報提供・交換等の対応するのが必須。

@2000年問題は、社会インフラ分野のサービスからパーソナル・コンピュータに至るまで広範なコンピュータ利用に伴う、国民の日常生活に直結した問題であった。 そのため、極めて技術的問題(ある意味で、通常人が正確に認識することが困難な問題)でありながら、社会全体、市民生活全体に影響を及ぼす可能性があったため、国民が関心を持たざるを得ない問題だった。

Aこのため、政府、地方公共団体、企業のみならず、かつてないほど多くの市民団体、マスメディア、政党などが、特に情報提供・交換等に積極的に参画した。例えば、地域においては、率先して危機管理に取り組むグループなどがみられた。

Bこのような状況を踏まえ、政府広報についても、学校や視覚障害者等への情報提供等きめ細かい情報提供を行うに当たって、外部関係者の意見等も幅広く参考とされた。
 また、マスメディア等も様々な角度から情報提供を行い、国民の判断材料を豊富にした。

Cこのように、本問題は、単に企業等の情報部門に限った問題ではなく、国民全体の問題となり、このため、政府、地方公共団体、企業等の取り組み姿勢も最大限のものとなった。

Dその結果、かかる情報提供・交換等の中で、企業等のシステム点検等が進展し、問題の発生を極小化するとともに、国民全体を巻き込んだ危機管理においても、過度に深刻な予測等攪乱要因はあったものの、豊富な判断材料が流通したため、一定の幅の認識が形成され、国民は総じて冷静に対応した。

(注)ただし、本問題については、国際的にみても、多数者の参画の中で不正確な情報が相当に流通することがあったため、今後は、同様のケースにおいて、いかに正確な情報をきめ細かく提供し、誤りのあった場合には是正していくかということが重要になる。

2.国民参画型の対応に不可欠な情報公開
1.のような 国民各層の参画のよる対応を実現するためには、情報の積極的公開が前提となる。

@今回、政府は、本問題の所在、影響度、システム点検、危機管理等様々な関連情報について多様な媒体で積極的に情報提供した。

A特に、政府の広報としては、
(ア)官邸を始めとする政府のホームページの従来以上の活用、
(イ)学校での資料配布、コンビニエンスストアの店頭等での啓発ポスターの掲示、(ウ)テレビ・スポット等による広報、
(エ)テレビ・新聞等のマスメディアの協力による多頻度の情報提供等
新たな手段に積極的に取り組み、これが個々の家庭を含む国民各層への関連情報の浸透に大きな効果をあげた。

Bまた、地方公共団体においても地域の事情に応じた情報提供を様々な媒体を通じて積極的に行った。更に、民間重要分野や情報分野の関係団体等においても関連情報が多く発信された。

Cこの結果、かかる情報は、地方公共団体、民間企業、マスメディアのみならずや市民グループ 等を通じて大量に流通し、国民に豊富な判断材料を提供し、本問題への国民の参画を容易にしたものと考えられる。

Dこのように、今後も国民参画型の対応を行うためには、積極的な情報公開が前提条件となり、インターネット等多様な情報提供手段の活用を図りながら、対応すべきである。

3.強力な指導力の必要性
社会に広範な影響を持ち、かつ対応が遅れがちな問題には、あらゆる関係主体において、指導力が発揮される必要がある。

@2000年問題の対応の構造をみると、国民参画型であったと同時に、各主体或いは主体間の対応の中で、指導力がみられたということが注目される。

A本問題は、国民全体の問題であると同時に、各主体にとっては、資金的にも人的にも大変な負担であり、一部門等だけでは対応できず、特に危機管理の局面にみられるように、全組織的対応が必要とされた。

Bこのような中、政府においては、小渕総理のイニシアティブのもと、行動計画の策定、それに基づく事前対応の促進、積極的な情報提供、年末年始等における危機管理等が進められるとともに、関係大臣等が所管分野においてリーダーシップを発揮した。この過程では、顧問会議や推進会議等における検討が有益な参考となった。

Cまた、企業等組織においても、トップマネージメントの指揮の下、システム点検や危機管理が全組織ベースで行われた。地域においても、地方公共団体の長等が事前対応や危機管理について、指導力を発揮した。

D重要民間分野等についても、医療、中小企業等すそ野の広い分野を始め、関係団体等のイニシアティブが顕著であった。

E以上のようなリーダーシップにより、2000年問題対応は加速的に進んだが、このような、資金的、人的に大きな負担が伴う等のために対応が進みにくい社会上、経済上の問題については、今回の対応が参考になるものと考えられる。

4.危機管理における的確かつ豊富な情報提供の必要性
危機管理については、発生事象の態様についての知識、予防措置の普及等の事前の情報を的確かつ豊富に提供するとともに、緊急時のための迅速・的確な情報収集、提供体制を整備しておくことが重要。

@2000年問題に対する今回の危機管理においては、関係主体における危機管理計画、情報連絡網の整備、国民への関連情報の積極的な提供、国民のレベルの備えとしての「国民の準備」等体系的な対応が行われた。

A特に、本問題は、初めての経験であり、不確実性を完全には払拭できない問題であったため、この危機管理においては、発生し得る事象についての的確な情報提供が必要であった。すなわち、極端に深刻な予想に対しては、「未然防止策が進み、大きな混乱は発生しない」旨を伝えることにより、安心感を高める一方で、適度の警戒感は形成する必要があった。

Bこのようなバランスのとれた対応を招来するためには、国民の基本的な疑問に対する丁寧な説明や「国民の準備」に係る情報を、その浸透に要する時間も考慮しながら、多岐かつ豊富に提供することが必要となった。
 また、年末年始等においては、国民に対しては、不安が高まらないよう、事前に整備した官民をあげた情報連絡網を活用し、収集した情報を迅速かつ的確に情報提供した。

C危機管理については、態様が一様ではないが、今回の対応でも確認されたように、
(ア)関係者に対しては、日頃から、危機管理意識の浸透を図りつつ、危機管理計 画の策定等予防措置の整備を促す、
(イ)国民に対しては、あらかじめ、起こり得る事象の態様等について、不正確な情報の是正を含め、的確な関連情報を豊富かつ広範に提供し、その浸透を図る、
(ウ)緊急時等においては、事前に整備された体系的な連絡網や広報体制等により、 迅速かつ的確な情報提供を行うといったことが対応の基本となると考えられる。

(注)2000年問題については、国民各層、更には、海外等の反応が極めて重要な要素となったが、多くの誤解や杞憂が流布する中で、実際、これらに対する正確な情報が浸透するまでには、かなりの時間がかかった。すなわち、関連情報が我が国において国民のレベルまで浸透するまでに相当の時間を要し、更には、それが海外の政府、マスメディア等に至るまでにはより多くの時間を要した。(参考2、4ページ、12)

5.効果的な国際協力
今後も地球規模で進展する情報化にかかる共通の課題については、国際対応が重要。 その際、英語による情報発信の充実が必要。

@2000年問題については、一義的には、それぞれの国が責任を持って対応を図ったが、一方、高度情報通信社会が当面する世界各国共通の課題という面もあった。かかる観点から、国際Y2K協力センターや米国等が、また我が国もAPEC等の場を通じて、計画的なシステム点検や危機管理の方法等の情報交換の促進を図る等リーダーシップを発揮した。国際的対応の過程においては、不正確な面もあったが、各国の対応が比較され、結果的にこれを促進することとなった。

A今後も地球規模の高度情報化の進展の中で、世界共通の問題が発生していくものと考えられるが、今回の経験から、このような問題については、国際的協力の枠組の中で解決することが極めて有効であることが立証された。
 例えば、サイバーテロ対策、ウィルス対策や電子商取引の問題等今後高度情報通信社会の構築に向けて取り組むべき課題については、政府のみならず、情報通信、金融、交通等の専門家等を始め、国際的な情報交換や発展途上国への協力などを国際的な枠組みの中で実施していくことが一層期待される。

B以上のような対応を行う場合、情報の発信、共有、公開が、英語中心でなされることに十分配慮しなければならない。既に述べているように、2000年問題においても、我が国の対応状況についての英語情報が少ないことが要因となって、海外から対応が遅れているとの誤った指摘を受け、これが逆流して、国内で若干の混乱を発生する場面もあった。
 本問題に限らず、情報分野においては、インターネットなどにみられるように米国が国際的に大きく先行したこともあり、英語が標準的に使用されている。この分野における情報発信は、国際Y2K協力センターの報告書にもあるように、官民の如何を問わず、英語化されない限り国際的にはほとんど意味を持たない。今後は、官庁ホームページ、政府の発表等において、かかる英語情報の大量かつ迅速な発信を可能とするよう対応していく必要がある。

(注)参考2、5ページ、14参照

C2000年問題は、論理的には30年程前から予測し得たが、関係者の対応が遅れているうちに世界的にコンピュータ利用が大幅に拡大し、問題が地球規模で大きくなったと言われる。これは、コンピュータのみならず社会の基本に関わるシステムについては、企業等が当初の設計等の段階から注意しなければならないことを示唆するものである。一方、かかる先見性のある対応をすべて各々の企業等に期待することは難しく、かかる共通課題について対応していくためには、地球規模での情報の共有化、情報提供の徹底等を図ることが重要である。このため、国際的な標準規格等を活用しつつ、関係者が適切に情報を入手し、対応し得る環境を整備していくことが必要である。

【今後の課題として更に対応すべきもの】

6.インターネット社会への対応が急務
今回の2000年問題の対応にも、インターネットが相当に活用されたが、今後も危機管理、情報提供・交換等において、より効率的、効果的な対応が可能となるよう、その活用の拡大を図っていく必要がある。

@2000年問題に関しては、我が国や諸外国の関係者による事前の対応状況、我が国の対応に対する海外からの評価や報道振り、また、世界諸国における本問題に係る事象の発生状況等様々な情報が、インターネットのメーリング・システム等を通じて、政府や専門家を含む様々なレベルのグループの間で、地球規模かつ即時に提供、共有され、極めて大きな効果を上げた。
 すなわち、2000年問題への対応の過程において、インターネットが今後の最重要情報伝達手段であることを再認識することとなった。

A一方、2000年問題について不安を増大させるような風評、ウイルス等もインターネットを介し世界中に流れ、また年明け以降、政府関係機関等のホームページがハッカー(クラッカー)に攻撃される等インターネット時代の「影」の部分も生じた。

Bこのように、今後の政策遂行において、インターネット時代への対応は必須のものとなっているが、今回政府はホームページの活用や、メーリングリストの活用、更に関連インターネット情報の収集活用等を図ったものの、その活用は限定された。

C今後は、インターネット等のコンピュータネットの一層の活用を念頭においたシステムの整備、情報セキュリティ対策の強化、人的、物的体制さらに法制面の整備を図っていく必要がある。

Dまた、現代の情報通信社会においては、インターネットの利用拡大もあり、情報発信数が飛躍的に増大している。加えて、2000年問題のような結果が完全に予測できない問題については、根拠の有無にかかわらず様々な情報が流通し、国民の不安が高まりやすい。したがって、政府として的確な情報を責任をもって広報していくことはもちろんのこと、事実誤認や根拠の乏しい予想等の情報に対しては、誤りを正し、正確な理解を求めるべく積極的に対応していく必要がある。

(6−2)今後は、危機管理において、特に電子ネットワークを活用した情報伝達等工夫が必要。

@今回、年末年始等においては、万一の場合に備えて、官民を挙げた情報連絡体制を敷き、発生している事象について、迅速、的確な情報収集、情報発信を行うができた。

A しかし、一方、今回は、あらかじめ予測された時期に向けた事前準備と、結果的には、幸いにも緊急対応を伴わない、体系的な情報連絡網体制についての経験であったとみることもできる。

Bすなわち、今回の対応においては、整然と訓練された連絡網によって情報伝達が行われ、かつ重大な事態が発生しないという状況下でリレー方式はほころびなく機能したが、緊急時に、対策を行う主体のみならず国民一般を含め、それぞれのニーズに応じた情報を即時、大量に伝達するという、災害時等にも必要とされるような対応については、引き続き、課題として残った。

Cこの点については、現在、危機管理用のネットワークとして、新官邸の情報通信網の整備が進められているので、このような対応などの中で解決していく必要がある。

(6−3)インターネットを活用した広報手法の多様化が必要

@2000年問題に係る広報については、既に述べているように、今回様々な試みが行われ効果をあげたが、中でもホームページの活用は重要であった。ホームページは企業のみならず、政府広報、報道の重要手段になりつつあったが、インターネットの急速な利用拡大とともにその重要性は更に高まっている。

A残念なことに、現在のところ、十分即時性のある広報・報道の手段として位置づけられるに至っていないが、今後、政府は、インターネットの積極的活用を念頭において、セキュリティ対策等の強化を図りつつ、そのサービスのスピード・アップ、英文化等質の向上を進めるべきである。
 他方、現時点では、ホームページの設置・活用は、一般国民のみならずマスメディアや専門家などでも浸透しているとは言い難いので、引き続き、ホームページ掲載だけでなく、様々な広報手段を併用していく必要がある。

Bまた、インターネットについては、特に双方向の情報伝達という点を注目しておく必要がある。今回も官邸ホームページの「コンピュータ西暦二千年問題質問箱」で国民の質問に対し、メーリング・システムで回答したり、官邸を起点とする危機管理や年末年始の国際Y2K協力センターへの通報等において、メーリング・リストや電子掲示板を活用する等一部実験的な試みが行われた。このような双方向の情報伝達の必要性の増大は、今後も必然の流れとなっているので、海外との間を含め、かかる情報伝達を広報或いは報道の手段として柔軟かつ多頻度に活用していく必要がある。

7.社会的に影響の大きい技術問題のブラックボックス化への対応
(1)社会的に影響の大きい技術的な問題な問題については、その態様等を徹底的に究明し、ブラック・ボックス化させないようにするとともに、これを平易に説明する能力を高める必要がある。
(2)また、年始や閏日に発生した修正漏れによる不具合等により、多重的な危機管理対応の重要性が再認識された。

@上述のように、本問題についての情報提供・交換は総じて的確なものであったが、一方、このような中で、組み込みチップによる影響の波及等については、情報の正確さ等において問題が残り、最後まで根拠が乏しい情報が一部マスメディア、市民団体等で流布した。これについては、企業、情報関連団体、政府、地方公共団体などによる正確な情報の提供もあり、99年末までには状況は改善したものの、これら情報が十分生かされ切れなかった面がある。

Aこのような情報が流布した大きな原因は、例えば、マイクロ・コンピュータ搭載機器に内蔵されているチップの役割についての技術的な「詰め」が十分に行われず、システム全体をいわばブラックボックスのまま、深刻な影響を予測する向きがあったことによる。

(注1)この点については、国際Y2K協力センターの最終報告書においても、『組み込みチップを使った機器については、多くの国々の中核をなす電力・通信インフラにとっての不安材料であったが、Y2Kの不具合による影響は、サービスが停止してしまうことではなく、管理情報が不正確になるということであった。これは、「Y2K未対応」という話について、「だったらどうなるのか」という必要な問いが発せられることがあまりにも少なかったということである。』という指摘がみられる。(参考2、4ページ、11)
(注2)上記のような深刻な影響を予測する者だけでなく、一般に、(ア)コンピュータにトラブルは付き物であり、(イ)それを前提に様々なシステムは構成されているという、コンピュータに接していれば、ある程度常識と理解できることが、こと2000年問題に限っては、この点を考慮せずに事態を深刻に捉えたり、誤作動に過敏に反応したりする傾向もあり、深刻な予想を受け入れる素地が形成されていたとみられる。

B他方、かかる状況に対して、個別の機器に関する情報については、製造メーカー等から多くの情報が発信されたが、一般論としての組み込みチップについて、コンピュータの専門家や技術者からの正確な知識、情報は年末近くになるまで多くは発信されず、かつ、発信されても、それが必ずしも正しく国民に伝わらなかった面がある。
 このため、リスクがいかに低くてもゼロとは言えないために「可能性」があるという表現で断じてしまう等の用語の曖昧さも相まって、上記のような本来専門分野でない者による必要以上に深刻なコメントが影響力を持った。

C今後も情報、バイオ、原子力などの科学技術が経済社会に与える影響は大きいものと予想されるが、このような中において、技術のブラックボックス化が、国民の不安感を増幅することのないようにする必要がある。このため、政府としても、これまで以上に技術情報等の積極的提供に努めるとともに、例えば、技術系人材が社会への関わりを踏まえ、平易な言葉で技術を説明できるような、また、文科系人材がコンピュータ等基本的な科学技術についての基礎知識を修得できるような環境の整備に一層努力する必要がある。

Dまた、年始においては、原子力発電所における不具合が社会的に注目されたが、日頃から内外の関心が高い分野については、このような場合に、技術的な面を含め、平易にわかるよう対外的に説明する工夫と正確かつ頻繁な情報交換を行うことが必要ということが再認識させられた。

E他方、この事例や郵便局のATM、「アメダス」データの一部の不具合を含め、年末年始や閏日等におけるコンピュータ関連の不具合に特別な関心が集まったが、こうした中で、一般に、コンピュータ・ソフトの修正やシステム点検等が最終的には人の手によるものである以上、完璧ではなく、不具合等は発生し得るという視点が重要であるとともに、かかる視点から既に行われている多重的な管理の徹底とその事実関係の周知が必要であるということが改めて認識された。

X.結び

(1)2000年問題に関し、特に警戒すべきとされていた年末年始及び閏日を、大過なく終えることができた。この結果或いはこれまでの過程を踏まえれば、我が国の対応は、大局的にみて、極めて成功したものと評価することができる。これは、何よりも、本問題の解決に取り組んだ官民の多くの関係者の大変な努力と、これを支えた国民の幅広い関心、冷静な対応の賜物ということができる。

(2)一方、2000年問題は、我々にとって大きな障害であったが、既に述べたように多くの経験を資産として残した。今後は、インターネットに代表される高度な情報通信社会の確立に向け、これらの経験を最大限生かしていく必要がある。

(3)更に、この問題を無事乗り越えたことにより、21世紀の情報通信社会が直面するであろう様々な障害についても、国内外の協力の中で、積極的に対応していけば克服し得るという自信が形成された。また、副次的には、今回の2000年問題の対応の中で、行われた投資は、多くの革新的要素を含んでおり、今後我が国の情報化が飛躍的に進展する足場となるであろう。

(4)確かに、2000年問題は、20世紀の終盤に本格化したコンピュータ社会が初めて経験する大問題であった。しかし、我々は、後になって、この試練が、21世紀における地球規模の高度な情報通信社会の確立の上での出発点であったと振り返ることができると確信している。


(別添)

政府等の対応の経緯

(1)我が国における本問題に対する官民の取り組みは、実質的には、96年ごろから情報関連の団体等により始められ、また98年12月には政府に関係省庁連絡会議が発足し、所管業種等の実態把握等が行われた。
(2)しかし、政府として、民間等との連携によるの総合的な対応を本格化させたのは、98年8月の小渕総理の行動計画の策定指示以降であり、これを契機として、以下のように、2000年に向けて入念な事前対応を加速的に進めるとともに、2000年以降は全国規模の特別な危機管理を行い対応した。

1.行動計画に基づくシステムの点検等の推進

(1)コンピュータ西暦2000年問題に関する総理の指示
 2000年まで残り500日を切った98年8月21日に、本問題の重要性、緊急性にかんがみ、小渕総理が行動計画の策定を指示した。

(2)顧問会議等の設置
 本問題ヘの適切な対応を図るため、高度情報通信社会推進本部(以下「推進本部」)の下に、各省庁の事務次官等からなる「コンピュータ西暦2000年対策推進会議」(以下「推進会議」)及び民間の有識者からなる「コンピュータ西暦2000年問題に関する顧問会議」(以下「顧問会議」)を1998年9月7日に設置した。

(3)行動計画の策定

@(1)の総理指示を踏まえ、本問題に対する官民を挙げた具体的な行動の徹底を図るため、98年9月11日に、推進本部において「コンピュータ西暦2000年問題に関する行動計画」(以下「行動計画」)を策定した。

A行動計画においては、
(ア)2000年問題対応についての政府広報等による周知徹底
(イ)中央省庁、地方公共団体等におけるによるシステム点検(修正・模擬テスト等)、危機管理計画の策定等
(ウ)金融、エネルギー等の民間重要分野等におけるシステム点検、危機管理計画策定の促進、中小企業の取組の支援等
(エ)インターネット等を活用した政府の取組に関する情報の公開
(オ)顧問会議、推進会議による行動計画のフォローアップ
等を行うこととした。

(4)行動計画のフォローアップ等によるシステム点検等の促進

@行動計画に基づく民間重要分野や中央省庁等におけるシステム点検、危機管理計画の策定等の進捗状況をフォローアップするため、4半期毎に推進会議及び顧問会議、更には必要に応じ推進本部で報告を行い、適切な対応がなされるよう努めた。

Aこの結果、99年6月末の段階で、民間重要分野については、可能な限り模擬テストを完了する等の行動計画策定時からの目標を概ね達成することができた。(99年7月末の顧問会議等)

B99年9月末の段階では、民間重要分野等におけるシステム点検が更に進捗し、ほとんどが完了し、残りも完了の目途がついたことから、「2000年問題に起因して、社会インフラ等において日常生活に深刻な影響を与えるようなサービスの停止等大きな混乱は生じないと考えられる」等との評価となった。(99年10月末の顧問会議等)

2.年末年始に向けた危機管理の準備、情報提供等の強化

(1)政府等における年末年始に向けた危機管理の準備

@危機管理については、98年9月以降行動計画に基づき民間重要分野等における危機管理計画の策定等を進めてきた。更に、2000年まで残り5ヶ月となった7月30日の段階で、民間分野、地方公共団体との密接な連携の下、政府の危機管理体制を強化するため、推進本部において、「コンピュータ西暦二千年問題に関する危機管理体制の強化について」(以下「危機管理体制の強化」という。)を決定した。

A「危機管理体制の強化」では、以下の対応を行うこととした。
(ア)内閣におけるコンピュータ西暦二千年問題総合会議及びコンピュータ西暦二千年問題対策室の設置等の政府における体制の強化
(イ)万一の場合の対応体制の整備、官民が連携した情報連絡網の整備等年末に向けての体制整備
(ウ)官邸危機管理センターと関係省庁間の連携による内外の情報集約・公表及び万一の場合への対応等年末年始の期間における政府の危機管理体制の整備
(エ)中央省庁、地方公共団体、民間重要分野等の重要システムに関する年末年始における稼働点検
(オ)コンピュータ西暦二千年問題質問箱やQ&A集の官邸ホームページによる提供、政府広報等の活用、マスメディアへの協力要請等国民の視点に立った情報提供の強化

Bまた、上記(イ)の体制整備の一環として、99年9月8日、11月26日、12月17日の3回に亘り、官民の連携による情報連絡網の模擬訓練を試行した。

(2)年末年始に向けた国民の準備の作成・公表

@2000年まで残り3ヶ月となって、国民から本問題に関する年末年始の問い合わせが増えていることを踏まえ、99年10月8日の閣議において、総理から「国民自らが年末年始に向けて準備を行うに際して参考となる具体的な事項の検討を早急に行うよう」指示が行われた。

Aこれを受け、推進会議、顧問会議等の検討を経て、10月29日の推進本部において「コンピュータ西暦2000年問題に関する年末年始に向けた準備について」(以下「国民の準備」)を決定・公表した。

B「国民の準備」においては、まず、9月末までの民間重要分野等の対応の進捗を踏まえ、「2000年問題に起因して、社会インフラ等において大きな混乱は生じないと考えるが、小規模或いは短期的な不都合を含め、万一の場合に備えて、国民一人一人が念のための準備を行うことが重要」という旨の認識を表明した。

Cこの趣旨に沿って、「食料、飲料水等」、「預貯金の記録等」11項目について具体的な留意事項を示した。特に関心の強かった食料、飲料水については、関連のサービスについては、本問題に起因して大きな問題が発生することはないと考えるという点を強調しつつ、かねてから地震、風水害等に対し国等が普及することとなっている準備(2、3日分の備蓄)の点検を奨めることとした。

(3)情報提供の推進

@98年9月11日の行動計画に基づき、新聞、雑誌テレビ、ラジオ番組等様々な媒体を通じた政府公報等により、本問題の周知徹底や官民等における対応の進捗に係る情報の提供を行うとともに、官邸や関係省庁等において2000年問題についてのホームページを設置する等情報提供に努めた。

A99年7月30日の「危機管理体制の強化」に基づき、官邸の2000年問題に係るホームページにおいて、問答形式で情報を分かり易く提供するQ&A集と国民から2000年問題に関する質問を直接受ける質問箱を設置・運用した。

B99年10月29日の「国民の準備」について、新聞、テレビ、ラジオによる政府広報、官邸ホームページでの掲載、広報素材の配布(地方公共団体、郵便局、学校、点字図書館、コンビニエンスストア等を対象)、テレビ・スポット(総理が自ら出演)、ポスターによる情報提供等を行った。

C「国民の準備」を含めて、新聞、雑誌、テレビ等のマスメディアに対して本問題に係る関連情報を積極的に提供し、その掲載について協力を求めた。

(4)年末年始に向けた情報セキュリティ対策

@事前の対策として、政府部内において研修等により不正アクセス対策、ウィルス対策を徹底するとともに、民間向けにセキュリティ対策等についての注意喚起を行った。

A年末年始の体制として、警察庁、各都道府県警察においてハイテク犯罪捜査体制の強化を図るとともに、外部専門家の活用等を含め、緊急時の情報連絡・対処体制の整備を行った。

(5)政府等の年末年始の対応についての確認
 99年12月27日の推進会議で政府の危機管理体制について最終的な確認を行うとともに、28日の閣僚懇談会において総理から関係閣僚に対し、所管分野の危機管理について指導力を発揮するよう最終的な要請が行われた。

3.その他の事前対応

(1)国際協力等の推進

@ 海外に対しては、我が国の2000年問題への対応状況の情報提供やAPEC・Y2K週間の開催による国際的対応の促進等に努めてきた。さらにAPEC・Y2K・100日協力イニシアティブ等に基づき発展途上国等への危機管理対応に係る情報提供等を行った。

Aまた、アジア・太平洋諸国において我が国の国際的リーダーシップを具体的に発揮するため、2000年1月以降、これらの諸国において不測の事態が発生した場合に対応できるよう、国連の組織であるUNDP緊急事態対応部に基金を創設し、技術的実態の把握、技術者の派遣等を行えるよう準備した。

(2)中小企業に対する支援

@中小企業に対しては、行動計画等に基づき、政府系金融機関による低利融資制度、コンピュータの入れ替えの際の税制措置等のほか、専門家の派遣、相談窓口の設置、広報等により、事前の対応を支援した。

Aさらに、2000年1月以降において、本問題に起因して万一の場合が発生した場合には、当該中小企業に専門家を派遣し、起こっている状況を分析した上でアドバイス等を行うとともに、本問題に起因する紛争についての法律相談ができるよう準備した。

(3)与党プロジェクトチームとの連携

@99年3月以来、本問題に関し、政府が推進する民間重要分野の対応、中小企業対策、APEC等国際対応、「国民の準備」等につき幅広い検討・政策提言等を行ってきた与党コンピュータ問題検討チームと、年末年始の危機管理等について連携を図るため、99年12月10日及び27日に政府と同チームとの連絡会議を開催した。

A会議では与党側から、
(ア)関係閣僚等が中心となった危機管理体制の整備
(イ)「国民の準備」について学校やコンビニエンスストアを通じた、或いは視聴 覚障害者等への広報
(ウ)未対応の中小企業の危機管理対応の徹底
(エ)中小企業や海外において、事後的な影響が生じた場合の準備
(オ)年末年始におけるコンピュータ・ウィルス等への対応
等について、提案がなされ、政府の危機管理対応において反映された。

4.年末年始における危機管理の実施

(1)政府における危機管理対応

@年末年始においては、内外で生じる事象についての情報収集・提供に努めるとともに、万一の場合への危機管理に万全を期すため、官邸危機管理センターを起点とする官民をあげた情報連絡網を整備し、12月29日から1月5日間状況の監視を行った。

A特に31日のコンピュータ西暦2000年問題官邸対策室(以下「官邸対策室」)の設置以降は、内閣官房においては、総理の指示を仰ぎながら官房長官、政務及び事務の3官房副長官、危機管理監が中心となって対応する体制を敷き、以下のように状況の把握、公表等を行った。
(主な対応)
12月29日官邸危機管理センターに官邸連絡室を開設。
12月31日18時官邸連絡室を官邸対策室へ移行(冒頭官房長官訓辞)。
20時30分総理が官邸対策室を視察、在NZ日本大使から同国の2000年直後の状況を聴取。
 1月 1日 0時50分総理が自ら1月1日午前0時直後の電力、情報通信、鉄道、核燃料施設等について重大な問題が発生していない模様である旨等を発表。
    6時   額賀官房副長官が早朝の民間重要分野等の状況について大きな問題がないことを確認している旨等を発表。
 1月 4日11時   官房長官から仕事始め直後の状況について、金融部門等を含め大きな問題が生じていない旨等を発表。
 1月 5日10時50分官房長官から重要分野等において大きな問題が生じておらず、年末年始の時期を大禍なく過ごすことができた旨及び5日午前中で官邸対策室による対応を終了する旨等を発表。

B一方、海外については、外務省が内閣及び関係省庁の協力を得ながら、次のような対応を行った。

C以上の対応に当たっては、内閣官房及び関係中央省庁でこの期間中に延べで約1万人の体制(12月29日〜1月3日ごろまで)をとった。(12月31日〜1月1日のピーク時は約2,000人)

(2)相談窓口等の開設

@年末年始の期間において、民間重要分野のサービスの状況、関連機器の不具合等の状況、地域の状況等について国民から多くの問い合わせが寄せられることが予想されたため、民間関係団体・企業、地方公共団体、政府において窓口を開設した。

A内閣及び関係省庁においては、これら窓口のうち主要なものの連絡先をホームページで網羅的に公表した。

Bまた、内閣は相談窓口を12月29日から1月4日までの間開設した。
(問い合わせ件数は総計で約550件であった。)

C2000年問題に係る官邸ホームページへのアクセスは、12月29日から1月4日までの間に約53万件あり、特に12月31日が約13.6万件、1月1日が約15万件と多かった。(99年12月1日から28日の一日当たりの平均は、約1.6万件)

(3)年末年始の対応結果についての顧問会議の開催

@年末年始の対応が終了したことを踏まえ、1月20日に総理の出席のもと顧問会議を開催した。

A同会議では、(ア)2000年問題への対応については、総理のリーダーシップが明確に示され、事前準備も十分整ったため、大過なく年末年始の時期を過ごすことができた、(イ)ただし、一部にシステムの誤作動等もみられるので、2月29日の閏日問題等に注意が必要である等の評価が行われた。

5.2月29日(閏日)における危機管理の実施

@2月29日についても、日付の誤表示、金利計算等の会計上のトラブルなど事務処理系等における問題の潜在性を踏まえ、万一の場合の緊急連絡等に対応するために、官邸の危機管理センターに官邸連絡室を設置するとともに、関係省庁との情報連絡網を整備することとした。

Aかかる体制の下、以下のように発生した事象の情報収集、公表等を行った。
2月28日20時   官邸危機管理センターに官邸連絡室を開設。
2月29日 9時50分官房長官から定例記者会見において、「アメダス」データや郵便局のATMの一部不具合等の報告はあるが、そのほかは我が国の国民生活に大きな影響を及ぼすような事象が発生したとの報告はない旨等を発表。
     14時   官邸連絡室から閏日問題に関連して、それまでに7件の日付の誤表示等が関係省庁から報告されている旨等を発表。
     17時   官房長官から定例記者会見において、(ア)閏日問題に関連して、一部故障等は報告されたが、深刻な事態とはなっていない旨、(イ)当日夕刻で官邸連絡室における対応から通常の内閣と関係省庁による対応に戻す予定である旨等を発表。
     18時   官邸連絡室から(ア)閏日問題に関連して、17時30分までに17件の事例が報告されたが、そのうち16件が復旧する等深刻な事態となっていない旨、(イ)この発表をもって、官邸連絡室の対応から通常の対応に戻す旨等を発表。