| (1)コンピュータ西暦2000年問題は、20世紀終盤に本格化したコンピュータ社会が初めて経験する問題であり、対応を誤れば、高度情報通信社会に対する信任を揺るがしかねない問題とみられていた。
(2)現在までのところ、特に注意を要するとされた年末年始及び閏日を経て、短期的な不都合等をもたらす事象や外部への影響のない日付の誤表示等は報告されているものの、深刻な事態は発生していない。 (3)しかし、一方、仮に事前のシステム点検・修正等を広範に実施しなければ、外部に影響の生じる問題が、社会インフラ分野を含め大量に発生し、国民生活に少なからぬ影響が生じたとみられる。 (4)したがって、このように本問題に的確に対応できているのは、官民の関係者の努力と国民の冷静な対応の賜物ということができる。(以上「参考1」参照) |
2000年問題への対応は、その広がりの大きさ等から広範な関係者の参画を得て、計画的、総合的に実施される必要があり、次のような視点から官民をあげた対応を行った。また、その過程において、政府は起こり得る事象について的確な評価を行うとともに、適切な規模の対応を行った。
| 1.未然防止のためのシステム点検
社会の隅々まで浸透しつつあるコンピュータにかかる問題であったため、特に我が国のような情報先進国においては、コンピュータの利用者や関連産業等の広範な参画のもと、システム点検や修正等の未然防止を徹底する必要があった。 |
| 2.危機管理
システムの技術や利用形態の分析、点検等の進捗を踏まえて、発生し得る事象を的確に評価するとともに、テロ的行為等突発事象への柔軟な対応に配慮しながら、万一の場合に備えた危機管理を行う必要があった。 |
| 3.情報提供
2000年問題は、情報通信社会が初めて経験する問題であたため、国民各層の不安をでき得る限り軽減する必要があった。このため、問題の所在、未然防止対応、発生事象に係る事前評価、危機管理、要注意日における発生状況等多岐に亘る情報を国民各層に迅速かつ大量に提供する必要があった。 |
| 4.国際対応
2000年問題は、世界共通の課題であるとともに、ネットワーク社会において相互に影響を受ける性格の問題であったことから、各国における対応を国際的な連携の中で行うのが効率的であった。また、情報先進国の中でも我が国が地理的に特に早い時間に2000年を迎えるということもあり、我が国の事前対応と2000年直後の情報発信に国際的な関心が集まっており、これに適切に対応する必要があった。 |
| 1.国民各層による参画の重要性
@2000年問題は、社会インフラ分野のサービスからパーソナル・コンピュータ に至るまで広範なコンピュータ利用に伴う、国民の日常生活に直結した問題であったため、正確な理解が難しい技術的問題でありながら、国民全体が関心を持たざるを得なかった。 Aこのため、政府、地方公共団体、企業のみならず市民団体、マスメディア等あらゆる組織やグループが、システムの点検、危機管理等のほか、特に情報提供・交換に積極的に参画した。 Bこの結果、広範な対応が必要であったシステム点検等が加速的に進むとともに、様々な形態の情報交換等の中で、攪乱要素はあったものの、関連情報について一定の幅の認識が形成され、国民の冷静な対応が可能となるような素地となった。 C今後も情報化が進展する中で、同様の国民全体を巻き込むような問題が発生した場合には、一部の関係者だけでなく、広く国民各層の参画を得て、対応の効果をあげるよう工夫していく必要がある。 |
| 2.国民参画型の対応に不可欠な情報公開
@今回、政府は、本問題の所在、影響度、システム点検、危機管理等様々な関連情報について政府広報、ホームページ、マスメディアの協力等多様な媒体で積極的に情報提供した。また、民間重要分野や情報分野の関連団体等からも多くの情報が発信された。 Aかかる情報は、地方公共団体、民間企業、マスメディアのみならず、市民グループ 等を通じて大量に流通し、国民に豊富な判断材料を提供し、本問題への国民の参画を容易にしたものと考えられる。 Bこのように、今後も国民参画型の対応を行うためには、積極的な情報公開が前提条件となり、インターネット等多様な情報提供手段の活用を図りながら、対応すべきである。 |
| 3.強力な指導力の必要性
@2000年問題の対応の構造をみると、国民参画型であったと同時に、各主体或いは主体間の対応の中で、指導力がみられたということが注目される。 A政府の中では、98年秋以降、小渕総理のイニシアティブのもと、行動計画の策定、それに基づく事前対応の促進、積極的な情報提供、年末年始等の危機管理等が進められるとともに、関係大臣等が所管分野において指導力を発揮した。 Bまた、企業等組織においては、一部門等の対応では困難との認識のもと、トップマネージメントの指揮により、システム点検や危機管理が全組織ベースで行われた。 地域においても、地方公共団体の長等が事前対応や危機管理について、指導力を発揮した。 C重要民間分野等についても、医療、中小企業等すそ野の広い分野を始め、関係団体等のイニシアティブが顕著であった。 D以上のような様々な指導力により、2000年問題対応は加速的に進んだが、このような、対応に資金的、人的に大きな負担が伴う社会上、経済上の問題については、今回の対応が参考になるものと考えられる。 |
| 4.危機管理における的確かつ豊富な情報提供の必要性
@2000年問題については、初めての経験であり、不確実性を完全には払拭できない問題であったため、今回の危機管理においては、特に発生し得る事象についての的確な情報提供が必要であった。すなわち、極端に深刻な予想に対しては、「未然防止策が進み、大きな混乱は発生しない」旨を伝えることにより、安心感を高める一方で、適度な警戒感は形成する必要があった。 Aこのようなバランスのとれた対応を招来するためには、国民の基本的な疑問に対する丁寧な情報提供や「国民の準備」の浸透を始め、多岐かつ豊富な情報提供が必要となった。また、年末年始等においては、国民に対しては、不安が高まらないよう、事前に整備した官民をあげた情報連絡網を活用し、収集した情報を迅速かつ的確に情報提供した。 B危機管理については、態様は一様ではないが、今回の対応でも確認されたように、 (ア)関係者に対しては、日頃から、危機管理意識の浸透を図りつつ、危機管理計画の策定等予防措置の整備を促す、 (イ)国民に対しては、あらかじめ、起こり得る事象の態様等について、不正確な情報の是正を含め、的確な関連情報を豊富かつ前広に提供し、その浸透を図る、 (ウ)緊急時等においては、事前に整備された体系的な連絡網や広報体制等により、迅速かつ的確な情報提供を行うといったことが対応の基本となると考えられる。 |
| 5.効果的な国際協力
@今後も地球規模の高度情報化の進展の中で、世界共通の問題が発生していくものと考えられるが、今回の経験から、このような問題については、国際的協力の枠組の中で解決することが極めて有効であることが立証された。 A例えば、サイバーテロ対策、ウィルス対策や電子商取引の問題等今後高度情報通信社会の構築に向けて取り組むべき課題については、政府のみならず、情報通信、金融、交通等専門家等を始め、情報交換や発展途上国への協力などを国際的な枠組みの中で解決していくことが一層期待される。 Bこの場合、情報の共有が、英語中心でなされることに十分配慮しなければならない。本問題に限らず、情報分野における情報発信については、英語が標準的に使用されているので、官民の如何を問わず、ホームページの情報や発表等において英語情報を大量かつ迅速に発信できるよう、対応していく必要がある。 |
| 6.インターネットの一層の活用
@2000年問題に関しては、我が国や諸外国の関係者による事前の対応状況、我が国の対応に対する海外の見解や報道振り、また、世界諸国における事後的な発生状況等様々な情報が、インターネットのメーリング・システム等を通じて、政府や専門家を含む様々なレベルのグループの間で、地球規模かつ即時に提供、共有され、極めて大きな効果を上げた。 A一方、2000年問題について不安を増大させるような風評、ウイルス等もインターネットを介し世界中に流れ、また年明け以降、政府関係機関等のホームページがハッカー(クラッカー)に攻撃される等インターネット時代の「影」の部分も生じた。 Bこのように、今後の政策遂行において、インターネット時代への対応は必須のものとなっているが、今回政府はホームページの活用や、メーリングリストの活用、更に関連インターネット情報の収集活用等を図ったものの、その活用は限定された。 Cしたがって、今後は、危機管理や広報をはじめ、新たなニーズに対応するため、インターネット等のコンピュータネットの一層の活用を念頭においたシステムの整備(例;新官邸の情報通信網の整備)、コンピュータ・セキュリティ対策の強化、人的、物的体制さらに法制面の整備を図っていく必要がある。 |
| 7.社会的に影響の大きい技術問題のブラックボックス化への対応
@2000年問題に対する対応の中で、組み込みチップによる影響等については、政府をはじめ、正確な情報の提供に努めたが、99年末に至るまで、根拠の乏しい情報が一部マスメディア、市民団体等で流布し、国民の不安を高める要素として残った。 Aその大きな原因は、例えば、マイクロ・コンピュータ搭載機器に内蔵されているチップの役割についての技術的な「詰め」が十分に行わずに、システム全体をいわばブラックボックスのまま、深刻な影響を予測する向きがあったこと等による。 B他方、かかる状況に対して、個別の機器に関する情報については、メーカー等から多くの情報が発信されたが、一般論としての組み込みチップ等について、コンピュータの専門家や技術者からの正確な知識、情報は多くは発信されず、かつ、発信されても、それが必ずしも正しく国民に伝わらなかった面がある。 このため、上記のような本来専門分野でない者による必要以上に深刻なコメントが影響力を持った。 C今後も情報、バイオ、原子力などの科学技術が、経済社会に与える影響は大きいものと予想されるが、このような中において、技術のブラックボックス化が、国民の不安感を増幅することのないようにする必要がある。 このため、政府としても、これまで以上に技術情報等の積極的提供に努めるとともに、例えば、技術系人材が社会への関わりを踏まえ、平易な言葉で技術を説明できるような、文科系人材がコンピュータ等基本的な科学技術についての基礎知識を修得できるような環境の整備について一層努力する必要がある。 Dまた、年始や閏日に発生した修正漏れによる不具合等により、多重的な危機管理対応の重要性が再認識された。 |