司法制度改革審議会

司法制度改革審議会 集中審議第1日 議事概要



1 日 時 平成12年8月7日(月)13:30〜18:00

2 場 所 三田共用会議所 第2特別会議室

3 出席者

@ 委 員(敬称略)
佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、井上正仁、北村敬子、高木 剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝、吉岡初子

A 文部省「法科大学院構想(仮称)に関する検討会議」委員
小島武司座長、伊藤 眞、田中成明

B 事務局
樋渡利秋事務局長

4 議 題
1 「法曹養成」について
・ 文部省「法科大学院構想(仮称)に関する検討会議」の審議状況等の報告
・ 意見交換
2 「法曹人口」について
・ 意見交換

5 会議経過

@ 文部省・法科大学院構想(仮称)に関する検討会議の小島武司座長から、同検討会議における審議状況等の報告が行われた。(別紙1及び2)

A 同検討会議の審議状況等に関し、質疑応答が行われた。主な内容は以下のとおり(順不同)。

○ 標準修業年限について、法科大学院に進学する者の相当部分は法学部出身者になると考えられるが、原則3年ということとの整合性をどう考えるか。
(回答:法学部出身者と非法学部出身者との2種類が出て来るだろうが、現時点でその割合は予測しがたい。それぞれの枠を作って選抜すべきかどうかについても意見は分かれる。法曹養成に基本的責任を負うのは法科大学院であって、法学の知識が全く無い人が入って来ても修習に耐えるところまで教育する必要があるというのが3年制の動機。学部で法科大学院の基礎部分を履修済みの者に対しては、短縮型で対応すべきではないかという考え方だ。)

○ 司法試験受験資格を法科大学院修了者に限定する考え方との関連で、恵まれない家庭の受験生には、奨学資金の手当だけでは不十分ではないか。特別な検定試験を作って、法科大学院を出なくても平等に司法試験を受けさせる(人数はかなり絞ってもよい)途は考えられないか。
(回答:法科大学院修了と受験資格が全く関係無いものとすると、本来は独学でできることを3年もかけて教育するのか、ということにもなる。経済的困難には奨学金、時間的困難には夜間制や場合によっては通信制が考えられる。)

○ 「法曹」の範囲をどのように考えているか。
(回答:当面は狭義の法曹三者を考えているが、行政・企業・国際機関等も考え得る。教育内容面でも、訴訟を中心とする事後的紛争解決だけでなく、予防的なことやコンプライアンスにもコミットしていく必要がある。)

○ 新司法試験の合格率をどのように考えているか。
(回答:7〜8割という大学側の意見も多いが、どのような内容・水準の法科大学院ができるかということとの見合いであり、「相当程度」としか現段階では言えない。設置基準をどうするかという点とも関連する。)

○ 法科大学院を修了して新司法試験に受からなかった者はどうなるのか。
(回答:新司法試験に合格できなくても、修了者の活動できる範囲は適材適所でかなり広くなるのではないか。)

○ 法学部教育が、法科大学院の創設によって変質して、リベラルアーツ的な色彩が強まるとすると、現在4万7千人いる法学部生の大半は法科大学院には進まないのだから、法学部卒業者が社会の要請に十分対応できなくなるおそれがあるのではないか。
(回答:法学部である限りは、全くのリベラルアーツ化ではなく、専門基礎も教育するのであり、そちらが基本である。また、法学だけでなく関連する諸科学についても履修をする副専攻制も考えられる。)

○ 3年制案と2・3年制併用案の両論あるのはなぜか。法学部がリベラルアーツ化するのならば、法学部出身者であっても法科大学院で3年の課程が必要というのも理解できるが、法学部との関係で3年制案はなぜ出て来るのか。
(回答:法科大学院に対応した教育を学部段階でどこまで行うかは各法学部に任せるべきとの意見が強い。一方、法学部出身者にも必ず3年の教育を課すべきとの意見もある。短縮型を認める場合でも、法学部卒なら誰でもということではなく、法科大学院で試験を課した上で判断すべき。また、学生自身がまだ自信が無いのでじっくり勉強したいということであれば、法学部卒でも3年制に入れてしかるべきだ。)

○ 少なくとも制度創設当初は、現在の大学教員が法科大学院での専門教育の多くの部分を担うこととなるが、理論と実務を架橋した教育が行われるようになるにはどのくらいの時間がかかると考えるか。
(回答:理論と実務を架橋した教育の実現のためには法曹三者の協力が不可欠。公務員法上の兼職制限や弁護士法30条を緩和して環境整備を行う必要がある。将来的には、法科大学院の教員は法科大学院修了者であるのが通常となるべきだが、そのようになるには早くても10年くらいの時間はかかるのではないか。)

○ 法科大学院の前に法学部を前提とし、後に研修所を前提とするのでは、在るべき姿と現行の姿が混同されてしまうのではないか。研修所をどう考えるのか。
(回答:司法(実務)修習を前提とするというのは審議会から示されていることなので、その前提で検討している。ただ、その修習が現在の研修所であるのかどうかは一つの問題である。最も重要なのは、理論を意識した実務教育、実務を意識した理論教育が構築できるかということで、それができれば、修習制度の姿は考えやすくなる。また、クリニック等の実践が、理論と実務の融合のきっかけとなることも期待される。)

B 引き続き、意見交換が行われた。主な内容は以下のとおり(順不同)。

○ 審議会から検討を依頼するときにも「修習」とは何を意味するのかが議論になった。現行の研修所を前提とするのではなかったはずだ。

○ 修習制度そのものをどう設計するかは、法科大学院との関係も考慮しながら当審議会で検討すべき事項だ。検討会議へは、その前提として、法科大学院でどの程度のことができるのかを、まず考えてもらうということだったはずだ。

○ 現に法科大学院が出来た後の修習というものは、実際に現場に出ることがイメージであったはずだ。

○ そのとおりではあるが、4月25日の取りまとめでは、「少なくとも実務修習は…」として、和光の研修所で行う集合教育の部分については未定ということであった。

○ 修習をどう考えるかは、当審議会として議論する必要がある。

○ 標準修業年限について、始めから法学部出身者に2年の短縮を認めるというのはいかがなものか。法科大学院がいかにあるべきかをまず考えれば、3年制を大原則とすべきではないか。

○ 法学部全体にとっては、研究者養成が大切であるとともに、リーガルマインドを持つ人材を大量に養成することも大切だ。狭義の法曹養成はこれらとは全く違う機能であって、法学部と法科大学院をつなげて考えようとすると無理が出て来るのではないか。

○ 隣接法律専門職種と法科大学院との関係については、まず狭義の法曹をどう養成するかということで制度設計を検討し、その上で隣接の養成をどう入れるかを考えるという順序が適切だ。

○ 法学部をどうするかということは、法科大学院制度の創設を踏まえて各大学が検討すればよいことであって、当審議会の任務からはずれるのではないか。

○ 自大学法学部卒を優遇し、自前で勉強してくる人を排斥するようなことになってはいけない。

○ 法学部生4万7千人のうちわずかしか法科大学院へ進まないのだから、法科大学院を前提として法学部の在り方を考えるのはおかしい。法学部教育は狭義の法曹を養成するためだけにあるのではない。2年3年併存案がよいのではないか。

○ 隣接法律専門職種については、例えば税理士は、会計学も含めて法科大学院で対応するのではなく、会計大学院といったものを別途構想すべきなのではないか。

○ 原則3年では、仮に修習を1年とすると、養成期間が長くなり過ぎるのではないか。原則は2年とし、別途、法科大学院で学ばなくても新司法試験を受験できるショートカットを設けるべきではないか。また、フランスのように、選抜試験を4回行い、各回ごとに対象者を違えている例もあるのだから、法科大学院修了を受験資格としないと法科大学院の意味が無くなるとは言えないのではないか。

○ 養成期間の長期化が好ましくないのは事実だが、現状との比較で考えれば、むしろ現在の方が長期かつ高額となっているのが平均的ではないか。大平光代弁護士の手記は大変感動的で、今後は、このような人も例外ではなくて、ごく普通に資格が取得できるように、法科大学院を含めた新しい法曹養成制度を構想すべきだ。

○ 検討会議の案は別枠の救済的な試験を排除する趣旨ではないと考えるので、当審議会でどのように要件を絞って途を作るかを考えればよいのではないか。

○ 既存の大学の影響を受けない独立大学院型が望ましいと考えるが、「例えば、弁護士会や地方自治体など…」として視野が広げられているのは評価できる。

○ 抽象的な法適用だけでなく、事実に立脚した教育を行う必要がある。

○ 要件事実教育等をどこまで法科大学院に取り入れることができるのか、十分に検討する必要がある。

○ 司法試験が養成制度全体の制約要因となってはいけない。7〜8割は合格させるべきだ。法科大学院では、法律相談等もしっかり行って、あとは現場に出る修習を行えば一人前の弁護士になれるというところまで教育してほしい。

○ 法曹養成が課題となったのは、質の問題、即ち、基礎的な力がついていない、基本書も読んでいないといったことからであった。魅力ある教育を行えば学生はどんどん勉強し力がつくはずである。そして、力をつけた優秀な人材であればどんどん採用すべきだが、はじめから何人とりますというような制度設計は良くないのではないか。

○ 能力、質を強調し過ぎると、法曹人口の問題が捨象されてしまう。各大学が最も気にしているのは、人口の見通しがつかないと、自分の大学が投資をして参入すべきかどうかの判断がいつまでもつかないことだ。ある程度の数を設定しながら、質の面をいかに考慮していくかを考えるべきではないか。

○ 質と量の問題は本来相容れない面があるが、今回の司法改革では、どちらかというと量を重視すべきではないか。

○ 合格者数を決めてしまうと、法科大学院の数も規定されてしまう。合格者数の目安を出すためには相当な議論が必要だ。また、法科大学院入学者数と修了者数と新司法試験合格者数は同じであってはいけない。落第も当然あるという設計にすべきだ。7〜8割が合格ということが一人歩きすると良くない。

○ 手厚い教育を行うとなると、授業料が相当高額になることが予想されるので、その点への何らかの配慮が必要だ。

○ 入口では共通試験型が適切ではないか。LSAT方式に限定して考える必要は無いが、最低限の適性が無ければ排除するというのは、利用者の権利義務に関わる重大な職業なので当然だと思う。ただ、質が重要といっても、合格水準の上げ下げで数を調節するという発想は本末顛倒だ。修業年限については、他学部からの受入れも積極的に考えれば、3年が妥当ではないか。

○ 隣接法律専門職種の取扱いが大きく影響するということを検討会議でも念頭に置いてほしい。量よりやはり質の維持が大前提なのではないか。最近の修習生のレベルの低下は研修所教官を驚かせているほどだ。新しい養成制度が軌道に乗るまでの間は、特に水準維持のための何らかの工夫が必要だ。

○ 受験回数制限は丁寧な教育を行うことが前提で停滞防止を図るものだ。

○ 質の確保の関連では、現在の合格者は1,000人だが、その中でも下の方のレベルには問題がある。印象としては、合格者の下半分と、不合格者の上の方とはそれほどの差は無いので、この層を丁寧に教育して底上げすれば全体のレベルアップが期待できるのではないかと思う。ただ、実際の養成数や制度設計は、法曹人口の目標値と計画的な実現方法との見合いで決まって来るべきものだ。

○ 「研究重視から真の教育重視へ」という視点が、困難ではあるが、非常に重要だ。

○ 法科大学院をシステムとして採用して法曹を養成するとなれば、法曹人口が増え過ぎと評価されるようになった時点で、今度は一転して数を絞る必要が生じるかも知れないが、法曹人口の需給調整的な観点から法科大学院の数を減らすことはできない。その調整をどう考えるか、工夫が必要だ。法科大学院が軌道に乗るまでは数のレベルは少し低くてもよいのではないか。

○ 法科大学院の認可は文部省が行うとしても、そこに法曹三者も絡むという趣旨か。

○ 大学院としての設置認可と法科大学院としての事後的評価の関係をどう考えるかは、今後具体的に検討することになる。

○ 司法試験や司法(実務)修習との関係についても、検討会議で大いに実質的な議論をお願いしたい。

なお、検討会議からは9月頃までに最終的な報告を提出してもらうこと、それをも踏まえつつ、当審議会として、法曹養成制度全般につき改めて審議する予定であることが確認された。

C 法曹人口に関し、意見交換が行われた。主な内容は以下のとおり(順不同)。

○ 法曹人口が足りないという認識では一致している。ただ質の問題も考え併せないといけない。国民の法的需要を見極めながら、その都度その都度検証しながら増員を図っていくべきだ。

○ 合否ラインの前後ではそれほどの差が無いという先ほどの話を前提とすれば、合否ラインを少し下げるだけで1,500人や2,000人はすぐに養成できるということか。

○ 現在の司法試験の得点分布を前提とした印象なので、そのような手法で簡単に適格者が数多く得られるのかを具体的に判断することは難しい。

○ 法曹人口が過剰になってくれば社会が自ずと調整して増加に歯止めがかかるものだ。現状で法曹人口が足りないのだから、とにかく増やす方策をまず考えるべきだ。

○ 弁護士の兼業制限の撤廃や、隣接法律専門職種のことも考慮に入れていくべきだ。

○ フランス並みの5〜6万人を目指すとすれば、仮に養成数を年3,000人とすると、死亡等が年500人として、毎年の増加は2,500人となるから、現在の弁護士数1万7千人から計算すると、新しい法曹養成制度の立ち上がりも考慮して2018年頃にやっと5万人となる。「相当数」とか「急激に」増加するというだけでは国民に伝わらない。法的需要も確かに考慮しなければならないが、ミニマムの数字として年3,000人の養成を審議会として提案すべきだ。

○ 法科大学院が出来ると、3,000人の養成を後から2,000人や1,500人に減らすわけには行かなくなるのではないか。多少の上下はあってもほぼこの水準で行くという定め方が必要なのではないか。

○ 数字を打ち出す意義は理解できるが、もう少し慎重に段階的に考えるべきではないか。

○ 米国では1970年から80年にかけて最も弁護士数が増えたが、その後は頭打ちになっている。また、90年代に入ってからは犯罪が減少する一方で民事訴訟が増加している。法曹人口は将来的には再度の調整が必要だろうが、現在必要な数をまず増やすという発想で良いのではないか。

○ 増員には賛成だが、一気に増やすべきか、段階的に増やすべきかは慎重な検討が必要だ。今は1,000人の増員でもいろいろ問題が生じている。質の確保がやはり必要で、一気に3,000人というのは無理ではないか。

○ 日本もグローバル化の中で外国人弁護士問題やWTO等の場面で頑張り切れないことも予想される。どんどん外から入って来てくださいと国民から見放されないように考えるべき。当面は隣接も視野に入れることが必要。確かに質も大事だが、それだけでなく複眼的に考えていくべきだ。

○ 法科大学院は、どんなに早く進んでも第1期卒業生が出るのは2,006年頃だろうから、それまでの間は段階的に増員し、以降は3,000人規模とすべきではないか。

○ 法科大学院の定員規模は構想によりまちまちで、単独大学で作るとも限らないので、法科大学院は一気に整備されるのではなく、徐々に参入してくるという流れになるのではないか。だとすれば、数的な予測はますます困難になる。

○ 利用者の立場で考えれば、養成可能な水準を基準とするのでなく、養成が必要な数を検討すべきだ。

○ 司法制度改革を提言すべき当審議会としては、ある程度のメッセージを国民に対して発信すべきではないか。

○ 数を増やせば必然的に質は下がる。また、適正規模はマーケットが決めるものであって、社会的要素や法科大学院の整備状況を見ながら考えて行くべきではないか。例えば3,000人というような数を出す必要は無いのではないか。

○ 数を出すのならば、国民の信頼を得ることが大切なので、実現見込を勘案して、当面は1,500人とか2,000人がせいぜいではないか。

○ 隣接の問題や弁護士改革について、まだ、十分に議論を尽くしていない現段階で、いきなり数字だけを出すのは疑問だ。

○ 当審議会も1年が経過しており、この集中審議の中で、会長の裁定で2回くらいは議論の総まとめを出すべきではないか。

 以上のような意見交換を踏まえて、法曹人口の問題については、明日(8日)に弁護士の在り方及び隣接の問題を更に議論した上で、改めて議論することとされた。

以上

(文責 司法制度改革審議会事務局)

速報のため、事後修正の可能性あり